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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091878
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/36 20200101AFI20230626BHJP
   D06F 105/42 20200101ALN20230626BHJP
   D06F 105/46 20200101ALN20230626BHJP
【FI】
D06F33/36
D06F105:42
D06F105:46
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206719
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大久保 晴加
【テーマコード(参考)】
3B167
【Fターム(参考)】
3B167AA01
3B167AA05
3B167AA11
3B167AA32
3B167AE02
3B167AE04
3B167AE05
3B167AE11
3B167BA08
3B167FB01
3B167FB08
3B167HA11
3B167HA31
3B167HA53
3B167JA03
3B167JA52
3B167JA54
3B167JA55
3B167JB15
3B167KA02
3B167KA18
3B167KA52
3B167KA71
3B167KB16
3B167LA39
3B167LC02
3B167LC09
3B167LC12
3B167LD13
3B167LD15
(57)【要約】
【課題】洗濯物を劣化しないように洗濯できる洗濯機を提供する。
【解決手段】洗濯機1は、洗濯物Lを収容するドラム7と、制御部20とを含む。制御部20は、トリートメント剤によってドラム7内の洗濯物Lの繊維をケアするケア工程と、ケア工程の後にドラム7内の洗濯物Lを洗濯する洗濯工程とを実行する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯物を収容する洗濯槽と、
トリートメント剤によって前記洗濯槽内の洗濯物の繊維をケアするケア工程と、前記ケア工程の後に前記洗濯槽内の洗濯物を洗濯する洗濯工程とを実行する制御部とを含む、洗濯機。
【請求項2】
前記洗濯機が、トルクを発生する駆動部をさらに含み、
前記洗濯槽が、前記駆動部のトルクを受けて回転するドラムであって、
前記制御部が、前記ケア工程の前の準備工程として、乾燥状態の洗濯物を収容した前記ドラムを前記駆動部によって回転させる、請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記洗濯機が、前記ドラム内に給水するための給水部をさらに含み、
前記制御部が、前記ケア工程において、
前記給水部によって前記ドラム内に給水して、前記トリートメント剤が溶けた水であるトリートメント水を前記ドラム内に溜める給水処理と、
前記給水処理の後に、静止状態の前記ドラム内で洗濯物を前記トリートメント水に浸すつけおき処理と、
前記つけおき処理の後に、前記トリートメント水が溜まった状態の前記ドラムを前記駆動部によって回転させる回転処理と、
前記回転処理の後に、前記トリートメント水が溜まった状態の前記ドラムを前記駆動部によって揺動させる揺動処理とを実行する、請求項1又は2に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記制御部が、前記つけおき処理、前記回転処理及び前記揺動処理を繰り返し実行する、請求項3に記載の洗濯機。
【請求項5】
前記トリートメント剤が、柔軟剤であり、
前記洗濯機が、前記ドラム内に柔軟剤を投入するための投入部をさらに含み、
前記制御部が、前記給水処理において、前記投入部によって前記ドラム内に柔軟剤を投入する、請求項3又は4に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載のドラム式洗濯乾燥機は、洗濯物を収容するドラムと、ドラムを回転させるモータとを含む。ドラム式洗濯乾燥機の洗い工程及びすすぎ工程では、水が溜められたドラムが回転することにより、ドラム内の洗濯物がある程度持ち上げられてから水面に自然落下するというタンブリングが繰り返される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-23720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
洗濯物は、図1に示す繊維Sを多数編むことによって構成されることが一般的である。特許文献1のドラム式洗濯乾燥機に限らず、一般的な洗濯機では、洗濯中に繊維S同士が直接接触することによって洗濯物がごわつくおそれがある。
【0005】
また、繊維Sがウールなどの獣毛である場合には、繊維Sの表面は、多数のキューティクルKによって覆われる。図1において2点鎖線で囲まれた部分の拡大図である図2に示すように、それぞれのキューティクルKは、うろこ状であって、これらのキューティクルKは通常では整列した状態にあるので、繊維Sの表面は滑らかである。しかし、洗濯機での洗濯中に繊維Sが濡れると、図3に示すように、それぞれのキューティクルKが開いて乱れることによって繊維Sの表面が羅列した状態(かさついた状態)になる。すると、繊維S同士が引っ掛かって絡まることによって、洗濯物が縮むおそれがある。
【0006】
使用者は、洗濯物がごわつきや縮みによって劣化することなく、新品の風合をいつまでも保つことを望む場合には、毎回の洗濯をクリーニング業者に依頼すればよいが、クリーニング業者に洗濯物を持ち込む手間や費用が負担になる。そこで、洗濯物を劣化しないよう自宅の洗濯機で洗濯できることが望まれる。
【0007】
本発明は、かかる背景のもとでなされたもので、洗濯物を劣化しないように洗濯できる洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、洗濯物を収容する洗濯槽と、トリートメント剤によって前記洗濯槽内の洗濯物の繊維をケアするケア工程と、前記ケア工程の後に前記洗濯槽内の洗濯物を洗濯する洗濯工程とを実行する制御部とを含む、洗濯機である。
【0009】
また、本発明は、前記洗濯機が、トルクを発生する駆動部をさらに含み、前記洗濯槽が、前記駆動部のトルクを受けて回転するドラムであって、前記制御部が、前記ケア工程の前の準備工程として、乾燥状態の洗濯物を収容した前記ドラムを前記駆動部によって回転させることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記洗濯機が、前記ドラム内に給水するための給水部をさらに含み、前記制御部が、前記ケア工程において、前記給水部によって前記ドラム内に給水して、前記トリートメント剤が溶けた水であるトリートメント水を前記ドラム内に溜める給水処理と、前記給水処理の後に、静止状態の前記ドラム内で洗濯物を前記トリートメント水に浸すつけおき処理と、前記つけおき処理の後に、前記トリートメント水が溜まった状態の前記ドラムを前記駆動部によって回転させる回転処理と、前記回転処理の後に、前記トリートメント水が溜まった状態の前記ドラムを前記駆動部によって揺動させる揺動処理とを実行することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記制御部が、前記つけおき処理、前記回転処理及び前記揺動処理を繰り返し実行することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記トリートメント剤が、柔軟剤であり、前記洗濯機が、前記ドラム内に柔軟剤を投入するための投入部をさらに含み、前記制御部が、前記給水処理において、前記投入部によって前記ドラム内に柔軟剤を投入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、洗濯機では、洗濯槽内の洗濯物は、ケア工程においてトリートメント剤によって繊維がケアされた後に、洗濯工程において洗濯される。トリートメント剤によってケアされた繊維は、繊維の表面がトリートメント剤によってコーティングされた状態にある。そのため、洗濯工程では、繊維同士が直接接触しないので、繊維同士の摩擦による洗濯物のごわつきを抑制できる。また、繊維においてトリートメント剤によってコーティングされた表面は、キューティクルが整列した滑らかな状態で維持されることから、洗濯工程において繊維同士が絡みにくいので、洗濯物の縮みを抑制できる。以上により、洗濯物を劣化しないように洗濯できる。
【0014】
また、本発明によれば、洗濯槽がドラムである洗濯機では、ケア工程の前の準備工程において、乾燥状態の洗濯物を収容したドラムが回転するので、洗濯物の奥に詰まった埃などの異物を事前に叩き出すことができる。これにより、その後のケア工程では、異物が取り除かれた洗濯物の繊維の細部にまでコーティング剤を行き渡らせることによって繊維を十分にケアすることができる。
【0015】
また、本発明によれば、洗濯機のケア工程では、給水処理と、つけおき処理と、回転処理と、揺動処理とが、この順に実行される。給水処理では、トリートメント剤が溶けた水であるトリートメント水がドラム内に溜められる。その後のつけおき処理では、静止状態のドラム内で洗濯物がトリートメント水に浸されることによって、洗濯物の繊維をトリートメント剤によってじっくりコーティングすることができる。回転処理では、トリートメント水が溜まった状態のドラムが回転することによって、洗濯物においてトリートメント水に触れる領域を変更することができる。これにより、洗濯物の全体において奥までトリートメント水を浸透させて多くの繊維をトリートメント剤によって効果的にコーティングすることができる。揺動処理では、トリートメント水が溜まった状態のドラムが揺動することによって洗濯物を優しく揺動させて、その際に、洗濯物の全体における繊維をトリートメント剤によって一層効果的にコーティングすることができる。そのため、洗濯物のごわつきや縮みを一層抑制できる。
【0016】
また、本発明によれば、つけおき処理、回転処理及び揺動処理が繰り返し実行されることにより、洗濯物の全ての繊維をトリートメント剤によって満遍なくコーティングすることができる。
【0017】
また、本発明によれば、トリートメント剤として柔軟剤を使用することができる。また、洗濯機では、給水処理において投入部によってドラム内に柔軟剤が自動投入されるので、自動的にトリートメント水を生成してドラム内に溜めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】洗濯物を構成する繊維を1本抜き出して示した模式図である。
図2図1の要部の拡大図である。
図3図1の要部の拡大図である。
図4】本発明の一実施形態に係る洗濯機の模式的な縦断面右側面図である。
図5】洗濯機の電気的構成を示すブロック図である。
図6】洗濯機において実行される洗濯運転を示すフローチャートである。
図7】洗濯運転における準備工程を示すフローチャートである。
図8】準備工程中における洗濯機の内部の模式的な正面図である。
図9】洗濯運転におけるケア工程を示すフローチャートである。
図10】ケア工程の回転処理中における洗濯機の内部の模式的な正面図である。
図11】ケア工程の揺動処理中における洗濯機の内部の模式的な正面図である。
図12】揺動処理中における洗濯機の内部の模式的な正面図である。
図13】揺動処理中における洗濯機の内部の模式的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下には、図面を参照して、本発明の実施形態について具体的に説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る洗濯機1の模式的な縦断面右側面図である。図4の紙面に直交する方向を洗濯機1の左右方向Xといい、図4における左右方向を洗濯機1の前後方向Yといい、図4における上下方向を洗濯機1の上下方向Zという。
【0020】
左右方向Xのうち、図4の紙面における奥側を左側X1といい、図4の紙面における手前側を右側X2という。前後方向Yのうち、図4における左側を前側Y1といい、図4における右側を後側Y2という。上下方向Zのうち、上側を上側Z1といい、下側を下側Z2という。左右方向X及び前後方向Yは、横方向に含まれる。横方向は、水平方向Hであってもよいし、水平方向Hに対して若干傾斜した略水平方向であってもよい。
【0021】
洗濯機1として、縦型の全自動洗濯機や、二槽式洗濯機も含まれるが、以下では、ドラム式洗濯機を例に取って洗濯機1について説明する。洗濯機1は、筐体2と、筐体2内に配置された水槽3と、水槽3に接続された給水路4及び排水路5と、水槽3内に洗剤や柔軟剤などを投入するための投入部6とを含む。洗濯機1は、水槽3内に収容されて洗濯物Lを収容する洗濯槽の一例としてのドラム7と、ドラム7を回転させる駆動部の一例としてのモータ8とをさらに含む。洗濯機1は、ドラム7内の洗濯物Lを乾燥させる乾燥機能を有してもよく、その場合には、ドラム7内に熱風を供給するための構成(図示せず)を含む。
【0022】
筐体2は、ボックス状に形成される。筐体2の前面2Aは、例えば垂直面である。前面2Aには、筐体2の内外を連通させる開口2Bが形成される。前面2Aには、開口2Bを開閉する扉9が設けられる。以下の説明では、扉9が開口2Bを閉じた状態を基準とする。
【0023】
水槽3は、筐体2の底壁2Cから上側Z1へ延びるダンパ10によって支えられ、ばね(図示せず)によって吊り下げられる。これにより、水槽3及びその内側のドラム7の全体が、筐体2によって弾性支持される。水槽3は、水平方向Hに沿って前後方向Yに延びる軸線Jを中心とした円筒状の円周壁3Aと、円周壁3Aの中空部分を後側Y2から塞いだ円盤状の背面壁3Bと、円周壁3Aの前端縁につながったリング状の正面壁3Cとを有する。
【0024】
背面壁3Bは、上下方向Zに沿って垂直に配置される。背面壁3Bの中心には、軸線Jに沿って背面壁3Bを前後方向Yに貫通した貫通穴3Dが形成される。正面壁3Cは、円周壁3Aの前端縁から軸線J側へ張り出した円環状の第1部3Eと、第1部3Eの内周縁から前側Y1へ突出した円筒状の第2部3Fと、第2部3Fの前端縁から軸線J側へ張り出した円環状の第3部3Gとを有する。第3部3Gの内側には、円周壁3Aの中空部分に前側Y1から連通した出入口3Hが形成される。出入口3Hは、筐体2の開口2Bに対して後側Y2から対向して連通した状態にある。
【0025】
給水路4は、蛇口(図示せず)に接続される一端4Aと、水槽3の正面壁3Cの第2部3Fにおける、例えば上部に接続された他端4Bとを有する。排水路5は、水槽3の下端部、例えば円周壁3Aの下端部に接続される。
【0026】
洗濯機1は、給水路4に設けられた開閉可能な給水バルブ11と、排水路5に設けられた開閉可能な排水バルブ12とを含む。開状態の給水バルブ11は、給水路4を開いたON状態にあり、閉状態の給水バルブ11は、給水路4を閉じたOFF状態にある。開状態の排水バルブ12は、排水路5を開いたON状態にあり、閉状態の排水バルブ12は、排水路5を閉じたOFF状態にある。
【0027】
排水バルブ12が閉じた状態で給水バルブ11が開くと、蛇口からの水道水が給水路4を流れる。水道水を、以下では単に「水」ということがある。給水路4を流れた水は、給水路4の他端4Bから水槽3内に流入して溜まる。水槽3に水が溜まった状態で排水バルブ12が開くと、水槽3内の水は、排水路5から筐体2の外、つまり機外に排出される。
【0028】
投入部6は、洗剤投入部6Aと柔軟剤投入部6Bとを含む。洗剤投入部6A及び柔軟剤投入部6Bのそれぞれは、洗剤又は柔軟剤を収容するケース13と、ケース13から延びて給水路4につながった投入路14と、投入路14に設けられた開閉可能な投入バルブ15とを含む。
【0029】
ケース13は、筐体2内において水槽3よりも上側Z1の領域に配置される。ケース13の少なくとも一部は、筐体2の前面2A又は上面2Dから露出される。ケース13において前面2A又は上面2Dから露出された露出部分は、開閉可能な蓋、又は、引出しであってもよい。使用者は、当該露出部分を開いたり引き出したりしてケース13内に洗剤又は柔軟剤を補充することができる。洗剤投入部6Aのケース13と、柔軟剤投入部6Bのケース13とは、図4に示すように別々に存在してもよいし、一体化されてもよい。
【0030】
投入路14は、ケース13の下部から下側Z2へ延びて、給水路4において給水バルブ11よりも他端4B側の部分に接続される。開状態の投入バルブ15は、投入路14を開いたON状態にあり、閉状態の投入バルブ15は、投入路14を閉じたOFF状態にある。
【0031】
給水バルブ11が開いた状態で洗剤投入部6Aの投入バルブ15が開くと、洗剤投入部6Aのケース13内の洗剤が、投入路14を通って給水路4に流入し、給水路4内の水に乗って他端4Bから水槽3内に投入される。給水バルブ11が開いた状態で柔軟剤投入部6Bの投入バルブ15が開くと、柔軟剤投入部6Bのケース13内の柔軟剤が、投入路14を通って給水路4に流入し、給水路4内の水に乗って他端4Bから水槽3内に投入される。洗剤や柔軟剤が溶けた水も、水道水と同様に、以下では単に「水」ということがある。
【0032】
ドラム7は、軸線Jと一致した中心軸線を有する円筒体であって、水槽3よりも一回り小さい。ドラム7は、本実施形態では中心軸線が水平方向Hに沿うように水平に配置されるが、中心軸線が水平方向Hに対して傾斜するように斜めに配置されてもよい。ドラム7は、水槽3の円周壁3Aと同軸上に配置された円筒状の円周壁7Aと、円周壁7Aの中空部分を後側Y2から塞いだ円盤状の背面壁7Bと、円周壁7Aの前端縁から軸線J側へ張り出した円環状の環状壁7Cとを有する。
【0033】
ドラム7において少なくとも円周壁7Aには、複数の貫通穴7Dが形成され、水槽3内の水は、貫通穴7Dを介して、水槽3とドラム7との間で行き来する。そのため、水槽3内の水位とドラム7内の水位とは、一致する。前述したように開状態で水槽3内に水を供給する給水バルブ11は、ドラム7内に給水するための給水部の一例として機能する。
【0034】
ドラム7の背面壁7Bの中心には、軸線Jに沿って後側Y2へ延びる支持軸7Eが設けられる。支持軸7Eの後端部は、水槽3の背面壁3Bの貫通穴3Dを通って背面壁3Bよりも後側Y2に配置される。
【0035】
環状壁7Cの内側には、円周壁7Aの中空部分に前側Y1から連通した出入口7Fが形成される。出入口7Fは、水槽3の出入口3H及び筐体2の開口2Bに対して後側Y2から対向して連通した状態にある。出入口3H及び出入口7Fは、開口2Bとともに、扉9によって一括開閉される。使用者は、開放された開口2B、出入口3H及び出入口7Fを介して、ドラム7内に洗濯物Lを出し入れする。扉9には、扉9が開口2B、出入口3H及び出入口7Fを閉じたときに水槽3の正面壁3Cの第3部3Gに密着するパッキン16が設けられる。
【0036】
モータ8は、筐体2内において、水槽3の背面壁3Bの後側Y2に配置される。モータ8の一例として、DD(ダイレクトドライブ)モータを採用できる。モータ8は、ドラム7に設けられた支持軸7Eに連結される。モータ8が発生したトルクは、支持軸7Eに伝達されるので、モータ8のトルクを受けたドラム7が、支持軸7Eを伴って軸線Jまわりに回転する。なお、モータ8と支持軸7Eと間には、モータ8のトルクを支持軸7Eに伝達したり遮断したりするクラッチ機構(図示せず)が設けられてもよい。
【0037】
図5は、洗濯機1の電気的構成を示すブロック図である。洗濯機1は、表示操作部17と、水位センサ18と、回転数センサ19と、制御部20とをさらに含む。
【0038】
表示操作部17は、液晶操作パネルなどで構成され、筐体2の前面2Aなどに配置される(図1参照)。使用者は、表示操作部17を操作することによって、洗濯機1で実行される洗濯運転についての運転条件やコースなどを選択したり、洗濯機1に対して洗濯運転の開始や停止などを指示したりすることができる。表示操作部17には、使用者向けの情報が表示される。
【0039】
水位センサ18は、水槽3内の水位、つまりドラム7内の水位を検出するセンサである。水位センサ18として、公知のセンサを採用できる。
【0040】
回転数センサ19は、モータ8の回転数を検出するセンサであって、例えばホールICで構成される。本実施形態では、モータ8の回転数とドラム7の回転数とは同じなので、回転数センサ19は、モータ8の回転数を検出することによって、実際にはドラム7の回転数を検出する。なお、モータ8とドラム7の支持軸7Eと間に、前述したクラッチ機構(図示せず)が設けられる場合には、ドラム7の回転数は、クラッチ機構での減速比などの所定の定数をモータ8の回転数に乗じて得られる値である。回転数センサ19は、支持軸7Eの回転数を検出することによって、ドラム7の回転数を直接検出してもよい。
【0041】
制御部20は、例えば、CPUと、ROMやRAMなどのメモリと、計時用のタイマとを含むマイコンとして構成され、筐体2内に内蔵される(図4参照)。表示操作部17、水位センサ18、回転数センサ19、並びに、前述したモータ8、給水バルブ11、排水バルブ12及び投入バルブ15のそれぞれは、制御部20に対して電気的に接続される。
【0042】
使用者による表示操作部17の操作内容は、制御部20に入力される。制御部20は、表示操作部17の表示内容を制御する。水位センサ18及び回転数センサ19のそれぞれの検出結果は、リアルタイムで制御部20に入力される。制御部20は、回転数センサ19から入力されたドラム7の回転数に基いて、モータ8に印加する電圧のデューティ比を制御することによって、ドラム7が所望の回転数で回転するようにモータ8を制御する。制御部20は、給水バルブ11、排水バルブ12及び投入バルブ15のそれぞれの開閉、つまりON・OFFを制御する。
【0043】
制御部20は、洗濯運転を実行する。本実施形態に係る洗濯運転は、序盤の準備工程と、準備工程の後のケア工程と、ケア工程の後の洗い工程と、洗い工程の後に1回又は複数回実行されるすすぎ工程と、最後のすすぎ工程の後に実行される脱水工程とを含む。洗濯機1が乾燥機能を有する場合の洗濯運転は、脱水工程後に実行される乾燥工程も含む。
【0044】
図6のフローチャートを参照して、洗濯運転を開始した制御部20は、まず、モータ8を作動させて、例えば100rpmの低速でドラム7を回転させ、その際のモータ8の電流の抵抗値などに基いて、ドラム7内の洗濯物Lによる負荷量を検出する(ステップS1)。負荷量は、ドラム7内の洗濯物Lの収容量に相当する。洗濯物Lの収容量の一例は、洗濯物Lの重量であり、その場合の単位はkgである。
【0045】
制御部20は、検出した負荷量に基いて、洗剤及び柔軟剤のそれぞれの必要量と、ケア工程、洗い工程及びすすぎ工程のそれぞれにおける水槽3内の目標水位とを、洗濯条件として決定する(ステップS2)。負荷量毎の洗剤及び柔軟剤のそれぞれの必要量と、負荷量毎の目標水位とは、予め定められて制御部20のメモリに記憶される。
【0046】
洗濯条件を決定した制御部20は、準備工程を実行する(ステップS3)。具体的には、制御部20は、ケア工程の前の準備工程として、図7に示すように、ドラム7に水が無い状態でモータ8を作動させることによって、乾燥状態の洗濯物Lを収容したドラム7を、例えば45rpmで回転させる(ステップS11)。
【0047】
これにより、ドラム7内の洗濯物L(図8において実線で示した洗濯物Lを参照)は、ドラム7の回転に応じてドラム7内の最上部まで上昇すると(図8において2点鎖線で示した洗濯物Lを参照)、自重によって真下に落下する。これにより、乾燥状態の洗濯物Lを収容したドラム7が回転するので、洗濯物Lの奥に詰まった埃などの異物を事前に叩き出すことができる。このように、準備工程は、異物除去工程である。
【0048】
そして、ドラム7の回転が始まってから所定時間が経過すると(ステップS12でYES)、制御部20は、モータ8を停止させることによってドラム7の回転を停止する。これにより、準備工程が終了する。
【0049】
次に、制御部20は、ケア工程を実行する(ステップS4)。ケア工程とは、柔軟剤をトリートメント剤として用いることによってドラム7内の洗濯物Lの繊維S(図1参照)をケアする工程である。前述したようにケア工程の前の準備工程において洗濯物Lから異物を除去してあるので、ケア工程では、異物が取り除かれた洗濯物Lの繊維Sの細部にまでコーティング剤を行き渡らせることによって繊維Sを十分にケアすることができる。ケア工程は、給水処理と、給水処理の後のつけおき処理と、つけおき処理の後の回転処理と、回転処理の後の揺動処理とを含む。
【0050】
図9に示すように、制御部20は、給水処理(ステップS21)では、排水バルブ12を閉じた状態で給水バルブ11を開くことによってドラム7内に給水する。その際、制御部20は、柔軟剤投入部6Bの投入バルブ15を開くことによって、必要量の柔軟剤を水槽3内、つまりドラム7内に自動投入する。これにより、柔軟剤が溶けた水であるトリートメント水が自動的に生成されてドラム7内に溜まる。ドラム7内の水位が目標水位まで上昇すると、制御部20は、給水バルブ11及び投入バルブ15を閉じることによって給水処理を終了する。
【0051】
その後、制御部20は、つけおき処理(ステップS22)として、静止状態のドラム7内で洗濯物Lをトリートメント水が浸す。これにより、洗濯物Lの繊維S(図1参照)をトリートメント剤によってじっくりコーティングすることができる。つけおき処理の開始から、例えば数分の所定時間が経過すると(ステップS23でYES)、制御部20は、回転処理を実行する(ステップS24)。
【0052】
制御部20は、回転処理では、引き続きトリートメント水がドラム7内に溜まった状態でモータ8を作動させることによって、例えば45rpmでドラム7を回転させる。この際、ドラム7を同一方向に連続回転させてもよいし、ドラム7の正回転と逆回転とを交互に繰り返してもよい。いずれにせよ、ドラム7内の洗濯物L(図10において実線で示した洗濯物Lを参照)は、ドラム7の回転に応じてドラム7内の最上部まで上昇すると(図10において2点鎖線で示した洗濯物Lを参照)、自重によってドラム7内の水面Wに真下に落下する。
【0053】
このような回転処理により、洗濯物Lにおいてトリートメント水に触れる領域を変更することができるので、洗濯物Lの全体において奥までトリートメント水を浸透させて多くの繊維Sをトリートメント剤によって効果的にコーティングすることができる。そして、ドラム7の回転が始まってから、例えば数分の所定時間が経過すると(ステップS25でYES)、制御部20は、モータ8を停止させることによってドラム7の回転を停止する。これにより、回転処理が終了する。
【0054】
その後、制御部20は、揺動処理を実行する(ステップS26)。制御部20は、揺動処理では、引き続きトリートメント水がドラム7内に溜まった状態でモータ8を作動させることによってドラム7をゆりかごのように揺動させる。一例として、図11に示すように正面視で軸線Jを通って上下方向Zに延びる基準線Pに対して水面Wが直交した状態でのドラム7の回転方向の位置を0度とした場合において、制御部20は、反時計回りに+30度へのドラム7の揺動(図12参照)と、時計回りに-30度へのドラム7の揺動(図13参照)とを交互に繰り返す。
【0055】
このような揺動処理により、洗濯物Lを優しく揺動させて、その際に、洗濯物Lの全体における繊維Sをトリートメント剤によって一層効果的にコーティングすることができる。そして、ドラム7の揺動が始まってから、例えば数分の所定時間が経過すると(ステップS27でYES)、制御部20は、モータ8を停止させることによってドラム7の揺動を停止する。これにより、揺動処理が終了する。
【0056】
制御部30は、これらのつけおき処理、回転処理及び揺動処理を、それぞれの実行回数が、例えば3回の規定回数に達するまで繰り返し実行する。これにより、洗濯物Lの全ての繊維Sをトリートメント剤によって満遍なくコーティングすることができる。その後(ステップS28でYES)、制御部30は、排水バルブ12を開いてトリートメント水を排出した後に、ケア工程を終了する。図6に戻り、制御部30は、ケア工程の後にドラム7内の洗濯物Lを洗濯する洗濯工程である洗い工程(ステップS5)及びすすぎ工程(ステップS6)を実行する。
【0057】
制御部30は、洗い工程(ステップS5)では、排水バルブ12を閉じた状態で給水バルブ11を開く。これにより、給水路4からの水が水槽3内に流入して溜まるので、水槽3内の水位が上昇する。水槽3内の水位が目標水位まで上昇すると、制御部20は、給水バルブ11を閉じる。この際に、制御部20は、洗剤投入部6Aの投入バルブ15を開くことによって、必要量の洗剤を水槽3内に自動投入する。なお、洗剤は、使用者によって水槽3内に手動投入されてもよい。洗剤が水道水に溶けることによって生成された洗剤水が、水槽3内に溜まる。
【0058】
その後、制御部20は、モータ8によってドラム7を回転させる。これにより、ドラム7内の洗濯物Lが、たたき洗いされる。たたき洗いでは、洗濯物Lがある程度持ち上げられてから水面に自然落下するというタンブリングが繰り返される。タンブリングによる衝撃や、ドラム7内に溜まった洗剤水に含まれる洗剤成分によって、洗濯物Lから汚れが取り除かれる。タンブリングの開始から所定時間が経過した後に、制御部20が排水バルブ12を開いて排水する。
【0059】
洗い工程の最後に、制御部20は、脱水処理を実行する。制御部20は、脱水処理では、排水バルブ12を開いた状態で、ドラム7を脱水回転させる。ドラム7の脱水回転により生じた遠心力によって、ドラム7内の洗濯物Lが脱水される。脱水により洗濯物Lから染み出た水は、排水路5から機外に排出される。
【0060】
次に、制御部20は、すすぎ工程を実行する(ステップS6)。制御部20は、すすぎ工程では、排水バルブ12を閉じた状態で、給水バルブ11を所定時間開いて水槽3に目標水位まで水道水を溜めてから、モータ8によってドラム7を回転させる。すると、前述したタンブリングが繰り返されるので、洗濯物Lがドラム7内の水道水によってすすがれる。なお、制御部20は、給水バルブ11を開く際に柔軟剤投入部6Bの投入バルブ15も開くことによって、必要量の柔軟剤を水槽3内に自動投入してもよい。ケア工程で投入する柔軟剤の必要量と、すすぎ工程における柔軟剤の必要量とは、同じとは限らない。タンブリングの開始から所定時間が経過した後に、制御部20が排水バルブ12を開いて排水して、前述した脱水処理を実行すると、すすぎ工程が終了する。
【0061】
次に、制御部20は、脱水工程(ステップS7)として、排水バルブ12を開いた状態で、ドラム7を脱水回転させる。つまり、脱水工程の内容は、洗い工程の終盤の脱水処理やすすぎ工程の終盤の脱水処理の内容と、ほぼ同じである。脱水処理を中間脱水工程といって、脱水工程を最終脱水工程といってもよい。最終脱水工程と中間脱水工程とでは、ドラム7の回転数や回転時間などに違いがあってもよい。脱水工程の終了に応じて、今回の洗濯運転が終了する。
【0062】
以上のように、ドラム7内の洗濯物Lは、ケア工程においてトリートメント剤によって繊維Sがケアされた後に、洗濯工程において洗濯される。トリートメント剤によってケアされた繊維Sは、繊維Sの表面がトリートメント剤によってコーティングされた状態にある。
【0063】
そのため、洗濯工程では、繊維S同士が直接接触しないので、繊維S同士の摩擦による洗濯物Lのごわつきを抑制できる。また、トリートメント剤によってケアされた繊維Sの表面は、キューティクルKが整列した滑らかな状態(図2参照)で維持されることから、洗濯工程において繊維S同士が絡まりにくいので、洗濯物Lの縮みを抑制できる。これにより、洗濯物Lを劣化しないように洗濯できる。また、既に傷んだ状態にある繊維Sについては、ケア工程によって補修及び再生することもできる。
【0064】
さらに、繊維Sの表面がトリートメント剤によってコーティングされた洗濯物Lでは、水が繊維Sの内部に染み込みにくいことから水分保有率が低下する。そのため、前述した脱水処理や脱水工程では、短時間で洗濯物Lを脱水することができる。脱水は、洗濯物Lを劣化させる原因の一つであるので、短時間で洗濯物Lを脱水できることにより、洗濯運転による洗濯物Lの劣化を一層抑制できる。
【0065】
本発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0066】
例えば、ケア工程において、柔軟剤以外のトリートメント剤を用いてもよく、その場合には、トリートメント剤専用の投入部6(図示せず)を洗剤投入部6A及び柔軟剤投入部6Bとは別に設けてもよい。
【0067】
また、洗濯運転には、前述したように準備工程及びケア工程も実行するケア専用コースの他に、準備工程及びケア工程が省略された通常コースが存在して、使用者は、表示操作部17を操作することによって、どちらかのコースを選択できてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 洗濯機
6 投入部
7 ドラム
8 モータ
11 給水バルブ
20 制御部
L 洗濯物
S 繊維
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13