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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091882
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】融着方法及び融着装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/18 20060101AFI20230626BHJP
【FI】
B29C65/18
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206730
(22)【出願日】2021-12-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】岩永 知也
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AD19
4F211AH31
4F211AK02
4F211AK13
4F211AR06
4F211TA01
4F211TC03
4F211TD11
4F211TH06
4F211TN07
4F211TQ11
4F211TW15
(57)【要約】
【課題】コ・コンソリデーションにおいて、未加圧部分に内部欠陥が発生する可能性を低減できる融着方法及び融着装置を提供する。
【解決手段】重ね合わせられた第1部材210及び第2部材220が接する融着面230を加熱する加熱工程と、加熱工程と同時又は加熱工程の後に、第1部材210及び第2部材220において、融着面230を有する第1部材210及び第2部材220の所定部分を加圧する加圧工程と、加熱工程において、所定部分以外の第1部材210及び第2部材220の部分を冷却する冷却工程と、を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね合わせられた熱可塑性樹脂を含む部材同士が接する接触面を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程と同時又は前記加熱工程の後に、前記接触面を有する前記部材の所定部分を加圧する加圧工程と、
前記加熱工程において、前記所定部分以外の前記部材の部分を冷却する冷却工程と、
を含む融着方法。
【請求項2】
前記冷却工程では、前記所定部分以外の前記部材の部分に熱容量体を熱的に接触させる請求項1に記載の融着方法。
【請求項3】
前記熱容量体は、金属製のブロックとされている請求項2に記載の融着方法。
【請求項4】
前記部材は、底部及び該底部の対向する2辺から立設した側壁部を有し、
前記底部が前記加圧工程で加圧され、
前記側壁部が前記冷却工程で冷却される請求項1から3のいずれかに記載の融着方法。
【請求項5】
前記冷却工程では、前記側壁部の外側面及び端面が冷却される請求項4に記載の融着方法。
【請求項6】
重ね合わせられた熱可塑性樹脂を含む部材同士が接する接触面を加熱する昇温部と、
前記接触面を有する前記部材の所定部分を加圧する加圧部と、
前記所定部分以外の前記部材の部分を冷却する冷却部と、
を備えている融着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、融着方法及び融着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば航空機に採用される構造体として、熱可塑複合材に強度を付与するために他の熱可塑複合材を融着して一体化する手法(コ・コンソリデーション/co-consolidation)がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-49776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コ・コンソリデーションでは、熱可塑複合材の融着部分を熱可塑性樹脂の融点以上の温度になるまで昇温させる。
このとき、融点以上の温度に到達した熱可塑複合材の部分を加圧する必要がある。加圧をしない場合、内部欠陥の発生に繋がるおそれがあるからである。内部欠陥としては、熱可塑複合材の層間に発生した空隙や層間剥離等が例示される。
【0005】
熱可塑複合材の板厚方向にシートが積層された構造を採る熱可塑複合材において、熱は、熱可塑複合材の板厚方向よりも面内方向(繊維方向)に伝わりやすい傾向にある。
【0006】
このため、例えば図8に示すように、融着面530を含む熱可塑複合材の部分(融着部分510)を昇温させるために熱可塑複合材を加熱した場合、熱が、融着部分510の全体に伝わる前に、融着部分から面内方向に離れた融着部分ではない部分520(図8においてクロスハッチングで示した部分)に伝わる可能性がある。
【0007】
融着部分ではない部分520は、加圧を予定していない部分なので、そのまま熱可塑複合材同士をコ・コンソリデーションした場合、熱によって未加圧部が変形し、その状態で冷却されることにより、未加圧部に内部欠陥が発生する可能性がある。
【0008】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、コ・コンソリデーションにおいて、未加圧部分に内部欠陥が発生する可能性を低減できる融着方法及び融着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示の融着方法及び融着装置は以下の手段を採用する。
すなわち、本開示の一態様に係る融着方法は、重ね合わせられた熱可塑性樹脂を含む部材同士が接する接触面を加熱する加熱工程と、前記加熱工程と同時又は前記加熱工程の後に、前記接触面を有する前記部材の所定部分を加圧する加圧工程と、前記加熱工程において、前記所定部分以外の前記部材の部分を冷却する冷却工程と、を含む。
【0010】
また、本開示の一態様に係る融着装置は、重ね合わせられた熱可塑性樹脂を含む部材同士が接する接触面を加熱する昇温部と、前記接触面を有する前記部材の所定部分を加圧する加圧部と、前記所定部分以外の前記部材の部分を冷却する冷却部と、を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、コ・コンソリデーションにおいて、未加圧部分に内部欠陥が発生する可能性を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の一実施形態に係る融着方法の様子及び融着装置の正面図を示した図である。
図2】重ね合わせられた第1部材及び第2部材の斜視図である。
図3】本開示の一実施形態に係る融着方法の様子及び融着装置の正面図を示した図である。
図4】本開示の一実施形態に係る融着方法の様子及び融着装置の正面図を示した図である。
図5】本開示の一実施形態の変形例1に係る融着方法の様子及び融着装置の正面図を示した図である。
図6】本開示の一実施形態の変形例2に係る融着方法の様子及び融着装置の正面図を示した図である。
図7】本開示の一実施形態の他の例に係る融着方法の様子及び融着装置の正面図を示した図である。
図8】参考例に係る融着方法の様子及び融着装置の正面図を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
[熱可塑複合材について]
図1に示すように、融着装置100は、第1部材210及び第2部材220をコ・コンソリデーション(以下、単に「融着」ともいう。)するための装置である。
【0015】
第1部材(熱可塑性樹脂を含む部材)210は、熱可塑性樹脂を含有する繊維強化樹脂(例えば、CFRTPやGFRTP)等の熱可塑複合材とされている。
図2に示すように、第1部材210は、例えば、板状のウェブ211及びウェブ211の対向する2辺のそれぞれから高さ方向に沿って下方に向かって立設する板状のフランジ212を有しており、横断面形状がC型やハット型とされている。
【0016】
第2部材(熱可塑性樹脂を含む部材)220は、熱可塑性樹脂を含有する繊維強化樹脂(例えば、CFRTPやGFRTP)等の熱可塑複合材とされている。
第2部材220は、例えば、板状のウェブ221及びウェブ221の対向する2辺のそれぞれから高さ方向に沿って上方に向かって立設する板状のフランジ222を有しており、横断面形状がC型やハット型とされている。
【0017】
第1部材210及び第2部材220は、ウェブ211とウェブ221とが重ね合わせられて外面同士が接触した状態、かつ、フランジ212の端部とフランジ222の端部とが反対側を向き合った状態で配置される。
【0018】
ここで、ウェブ221と接触するウェブ211の外面を接触面211aと呼び、ウェブ211と接触するウェブ221の外面を接触面221aと呼ぶ。また、接触面211a及び接触面221aを合わせて融着面230と呼ぶ。
【0019】
図1に示すように、融着装置100は、このように配置された第1部材210及び第2部材220において、ウェブ211とウェブ221とを融着する。
【0020】
なお、ウェブ211が融着される第1部材210において、2つのフランジ212は必須の構成ではない。第2部材220のフランジ222についても同様である。
また、上記で説明した第1部材210及び第2部材220の形状は例示であって、重なり合った板状の部分同士が面で接する形態であれば、第1部材210及び第2部材220の形状は問わない。
【0021】
[融着装置について]
図1に示すように、融着装置100は、第1ユニット110及び第2ユニット120を備えている。
【0022】
第1ユニット110及び第2ユニット120は、重ね合わせられた状態の第1部材210及び第2部材220を挟み込むような形態で、かつ、融着面230に対して対称的に配置されている。
このとき、第1ユニット110は、第1部材210のフランジ212同士の内側に領域に収容されたような形態となり、また、第2ユニット120は、第2部材220のフランジ222同士の内側の領域に収容されたような形態となる。
【0023】
第1ユニット110は、金属製のブロックであって、電気によって発熱するヒータ(例えば、グラファイトヒータ)を内部に含んでいる。ヒータは、第1ユニット110の全体を均一に昇温させることができる。これによって、第1ユニット110で接触面211aを含む第1部材210を加熱することができる。すなわち、第1ユニット110は、融着面230を加熱する昇温部として機能する。
第1ユニット110の幅方向(図2参照)の寸法は、ウェブ211の幅方向の寸法に略一致している。また、第1ユニット110の長さ方向(図2参照)の寸法は、ウェブ211の長さ方向の寸法に略一致している。
【0024】
第2ユニット120は、金属製のブロックであって、電気によって発熱するヒータ(例えば、グラファイトヒータ)を内部に含んでいる。ヒータは、第2ユニット120の全体を均一に昇温させることができる。これによって、第2ユニット120で接触面221aを含む第2部材220を加熱することができる。すなわち、第2ユニット120は、融着面230を加熱する昇温部として機能する。
第2ユニット120の幅方向(図2参照)の寸法は、ウェブ221の幅方向の寸法に略一致している。また、第2ユニット120の長さ方向(図2参照)の寸法は、ウェブ221の長さ方向の寸法に略一致している。
【0025】
また、第1ユニット110と第2ユニット120との間には、第1部材210及び第2部材220が重ね合わせられた状態で挟み込まれているので、第1ユニット110及び第2ユニット120によって第1部材210のウェブ211及び第2部材220のウェブ221を同時に加圧することができる。すなわち、第1ユニット110及び第2ユニット120は、それぞれ加圧部として機能する。
【0026】
以上のように構成された融着装置100は、更に、冷却部を備えている。
冷却部とは、第1ユニット110及び第2ユニット120によって熱可塑性樹脂の融点以上に加熱したくない第1部材210の部分及び第2部材220の部分を冷却する機能を有する部分、機構又は構造である。
【0027】
なお、ここでいう「冷却」とは、対象部分の温度を積極的に下げることを意味している。つまり、例えば高温の部材を強制対流のない室内(空気中)に放置して自然に冷却されるような現象を除外しており、少なくともそのような場合と比較して短時間で温度が低下するように熱の移動を調節することを意味している。
【0028】
冷却部について詳細に説明する前に、まずは、第1ユニット110及び第2ユニット120によって加熱したい部分(第1部材210の所定部分及び第2部材220の所定部分。以下、単に「加熱部分」ともいう。)について説明する。
また、第1ユニット110及び第2ユニット120によって加熱したくない部分(所定部分以外の第1部材210の部分及び第2部材220の部分。以下、単に「非加熱部分」ともいう。)についても説明する。
【0029】
加熱部分とは、熱可塑性樹脂の融点以上の温度に加熱することで樹脂を溶融させたい第1部材210の部分及び第2部材220の部分である。
加熱部分は、内部欠陥が発生しないように、第1ユニット110及び第2ユニット120によって加圧される部分でもある。
本実施形態の場合、加熱部分は、第1ユニット110及び第2ユニット120によって加熱及び加圧される部分、すなわちウェブ211及びウェブ221とされている。
【0030】
一方で、非加熱部分とは、熱可塑性樹脂の融点未満の温度にしておくことで樹脂が溶融しない状態にしておきたい第1部材210の部分及び第2部材220の部分である(図1においてクロスハッチングで示した部分)。すなわち、加熱部分以外の第1部材210の部分及び第2部材220の部分である。
また、非加熱部分は、第1ユニット110及び第2ユニット120によって加圧されない部分(未加圧部分)でもある。
本実施形態の場合、非加熱部分は、第1ユニット110及び第2ユニット120によって積極的に加熱及び加圧されない部分、すなわちフランジ212及びフランジ222とされている。
【0031】
なお、「非加熱部分」という用語は、部分を特定するための用語であって、全く加熱されないことを意味するものではない。
また、図1において、加熱部分と非加熱部分との境界が表示されているが、これは説明のための便宜上の表示であって、実際にこのような境界が生じることを意味するものではない。
【0032】
次に、冷却部について、具体例を用いて説明する。
【0033】
図1及び図3に示すように、冷却部は、吸熱ブロック131とされている。
吸熱ブロック131は、熱容量体によって形成されたブロック部材とされている。熱容量体とは、例えば第1部材210よりも熱伝導率が高い物体である。熱容量体の材料としては、銅合金やアルミ合金の金属が例示される。
吸熱ブロック131のサイズは第1部材210のサイズに応じて決定することが好ましく、例えば、熱解析ソフトを用いることで第1部材210の内部での熱の動きを確認して決定することもできる。
【0034】
吸熱ブロック131は、フランジ212と熱的に接触するように配置されている。
具体的には、吸熱ブロック131は、フランジ212の外側面212a及び端面212bに接触している。
【0035】
これによって、加熱部分(ウェブ211)から第1部材210の面内方向に移動して非加熱部分(フランジ212)に伝わった熱が吸熱ブロック131によって奪われる。熱の移動は、図3において矢印で簡易的に示されている。
このため、フランジ212の過度な昇温、すなわち、熱可塑性樹脂の融点以上に加熱される可能性を低減できる。
【0036】
なお、本実施形態のように、内側面212c同士の内側の領域にヒータを含む第1ユニット110が配置されている場合、吸熱ブロック131と第1ユニット110が近接することで、吸熱ブロック131が第1ユニット110から直接的に熱的な影響を受けないように、同時に、吸熱ブロック131が第1ユニット110に熱的な影響を与えないように、吸熱ブロック131を内側面212cまで拡大しないことが好ましい。すなわち、無理に吸熱ブロック131をフランジ212の内側面212cに接触させる必要はない。
ただし、第1ユニット110から受ける熱的な影響が無視できる場合は、吸熱ブロック131をフランジ212の内側面212cに接触させてもよい。
【0037】
[融着方法について]
まずは、図3に示すように、ウェブ211の接触面211aとウェブ221の接触面221aとが重ね合わせられた第1部材210及び第2部材220に対して第1ユニット110及び第2ユニット120設置する。
また、第1部材210の各フランジ212に対して吸熱ブロック131を設置する。
【0038】
次に、第1ユニット110に含まれているヒータ及び第2ユニット120に含まれているヒータを発熱させて、加熱部分(接触面211aを含むウェブ211及び接触面221aを含むウェブ221)を加熱する(加熱工程)。
これによって、加熱部分にある熱可塑性樹脂が溶融する。
【0039】
このとき、非加熱部分(フランジ212及びフランジ222)は加熱の対象ではない。ただし、非加熱部分は、ウェブ211及びウェブ221から面内方向に伝わる熱によって不可避的に加熱されてしまう。
【0040】
また、加熱工程で加熱された第1部材210及び第2部材220において、第1ユニット110をウェブ211に押し付けるとともに、第2ユニット120をウェブ221に押し付けることで、加熱部分を加圧する(加圧工程)。
これによって、加熱部分に内部欠陥が発生する可能性を低減している。
なお、加熱工程及び加圧工程は同時に行われてもよいし、加熱工程の後に加圧工程が行われてもよい。要するに、現に加熱されている又は過去に加熱されたことによって昇温した第1部材210及び第2部材220が加圧工程に供されるような方法であればよい。
【0041】
更に、加熱工程において、吸熱ブロック131で非加熱部分(ここではフランジ212のみ)から熱を奪って非加熱部分の冷却を行う(冷却工程)。具体的には、非加熱部分を熱可塑性樹脂の融点未満の温度にしておく。
これによって、第1ユニット110及び第2ユニット120によって未加圧部分に内部欠陥が発生する可能性を低減している。
【0042】
なお、上記の冷却工程において、冷却対象をフランジ212のみとした理由は次の通りである。
すなわち、フランジ212の高さ方向の寸法がフランジ222の高さ方向の寸法よりも小さい場合、フランジ212の熱容量がフランジ222の熱容量よりも小さくなる。このため、フランジ212の方がフランジ222よりも昇温しやすく内部欠陥が発生する可能性が高いからである。
【0043】
ただし、図4に示すように、当然ながら、フランジ222に冷却部としての吸熱ブロック133を設置してもよい。
【0044】
ウェブ211及びウェブ221が融着面230で融着したら、第1ユニット110及び第2ユニット120による加熱を終了して、第1部材210及び第2部材220が一体化された部材を冷却する。これにより、融着が完了する。
なお、この冷却は、冷却部(吸熱ブロック131等)による冷却とは異なり、一体化された部材の温度を常温、室温まで下げることを意味する。
【0045】
[変形例1]
図5に示すように、吸熱効果を促進させるために、吸熱ブロック131に多数の放熱フィン131aや流路131bを設けてもよい。また、融着装置100に、冷却ファン132を追加してもよい。
【0046】
放熱フィン131aは、吸熱ブロック131の表面に形成されており、吸熱ブロック131の表面積を増大させることで吸熱ブロック131が吸収した熱が効率的に放熱されるようになっている。
【0047】
流路131bは、吸熱ブロック131の内部に形成されており、内部に冷却水を流すことで昇温した吸熱ブロック131が効率的に冷却されるようになっている。
【0048】
冷却ファン132は、吸熱ブロック131に向けて送風可能な電動ファンであって、強制対流によって吸熱ブロック131が効率的に冷却されるようになっている。
【0049】
なお、放熱フィン131a、流路131b及び冷却ファン132のいずれか1つを採用してもよいし、複数を同時に採用してもよい。
【0050】
[変形例2]
図6に示すように、冷却部としての吸熱ブロック131を延長複合部材134に替えてもよい。
延長複合部材134は、例えば第1部材210と同じ材料のブロックとされており、フランジ212の端面212bに接触させることで、実質的にフランジ212を高さ方向に延長することになる。
【0051】
具体的には、第2部材220のフランジ222と同じ高さ寸法になるようにフランジ212を延長することが好ましい。
これによって、見かけ上、第1部材210及び第2部材220が融着面230に対して対称的に配置されることになる。
【0052】
このように配置された第1部材210及び第2部材220を融着する場合、フランジ212(延長複合部材134を含む)の熱容量とフランジ222の熱容量とが同じになり、一方だけが昇温しやすいという状態を回避できる。
この結果、フランジ212及びフランジ222の過度な昇温、すなわち、熱可塑性樹脂の融点以上に加熱される可能性を低減できる。
【0053】
なお、上記の実施形態においては、C型の横断面形状を有する第1部材210及び第2部材220が重ね合わせられて全体としてH型の部材を構成していた。しかし、例えば図7に示すように、第2部材220を高さ方向の軸(図2参照)の周りに回転させてもよい。
【0054】
つまり、第1部材210のウェブ211と第2部材220のウェブ221とが重ね合わされて融着面230が形成されさえすれば、第1部材210及び第2部材220の姿勢は限定されない。
更には、第1部材210と第2部材220が重ね合わされて融着面230が形成されさえすれば、第1部材210及び第2部材220の形状は限定されない。
【0055】
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、融着面230を加熱する加熱工程と、第1部材210及び第2部材220の加熱部分を加圧する加圧工程と、加熱工程において、第1部材210及び第2部材220の非加熱部分を冷却する冷却工程と、を含むので、加熱部分が熱可塑性樹脂の融点に到達するまでの間に、非加熱部分(未加圧部分)が融点に到達する、或いは融点近くまで昇温することを抑制できる。これによって、未加圧部分に内部欠陥が発生する可能性を低減できる。
【0056】
また、冷却工程では、第1部材210の非加熱部分(例えばフランジ212)に吸熱ブロック131を熱的に接触させるので、吸熱ブロック131の接触によって第1部材210の非加熱部分を冷却することがきる。
吸熱ブロック131は、例えば金属製とされている。金属としては、銅合金、アルミ合金等が例示される。
【0057】
また、第1部材210の横断面形状がC型の場合、フランジ212の外側面212a及び端面212bを冷却すれば、吸熱ブロック131が第1ユニット110から直接的に熱的な影響を受ける可能性を低減できる。
また、吸熱ブロック131がウェブ211に熱的な影響を与える可能性を低減できる。
【0058】
なお、本実施形態の冷却方法は、ヒータを有する第1ユニット110及び第2ユニット120で第1部材210及び第2部材220を加熱及び加圧する融着だけでなく、押圧部材で第1部材210及び第2部材220を加圧しつつ超音波振動を与えて接触面211a及び接触面221aを加熱する超音波融着や、第1部材210と第2部材220との間に挿入した発熱抵抗体に電流を流すことで加熱しつつ押圧部材で第1部材210及び第2部材220を加圧する抵抗融着にも適用できる。
【0059】
以上の通り説明した一実施形態に係る融着方法及び融着装置は、例えば、以下のように把握される。
すなわち、本開示の一態様に係る融着方法は、重ね合わせられた熱可塑性樹脂を含む部材(210,220)同士が接する接触面(230)を加熱する加熱工程と、加熱工程と同時又は加熱工程の後に、前記接触面を有する前記部材の所定部分を加圧する加圧工程と、前記加熱工程において、前記所定部分以外の前記部材の部分を冷却する冷却工程と、を含む。
【0060】
本態様に係る融着方法によれば、重ね合わせられた熱可塑性樹脂を含む部材同士が接する接触面を加熱する加熱工程と、前記加熱工程と同時又は前記加熱工程の後に、接触面を有する部材の所定部分を加圧する加圧工程と、加熱工程において、所定部分以外の部材の部分を冷却する冷却工程と、を含むので、接触面近傍の部材の部分が熱可塑性樹脂の融点に到達するまでの間に、未加圧部分が融点に到達する、或いは融点近くまで昇温することを抑制できる。これによって、未加圧部分に内部欠陥が発生する可能性を低減できる。
ここで、未加圧部分とは、所定部分以外の部材の部分、すなわち、加圧工程で加圧されない部材の部分である。
【0061】
また、本態様に係る融着方法において、前記冷却工程では、前記所定部分以外の前記部材の部分に熱容量体(131)を熱的に接触させる。
【0062】
本態様に係る融着方法において、冷却工程では、前記所定部分以外の前記部材の部分に熱容量体を熱的に接触させるので、熱量量体としての物体の接触によって部材を冷却することがきる。
【0063】
また、本態様に係る融着方法において、前記熱容量体は、金属製のブロックとされている。
【0064】
本態様に係る融着方法において、熱容量体は、金属製のブロックとされているので、熱伝導率の高い金属を熱容量体として使用できる。
使用される金属としては、銅合金、アルミ合金等が例示される。
【0065】
また、本態様に係る融着方法において、前記部材は、底部(211,221)及び該底部の対向する2辺から立設した側壁部(212,222)を有し、前記底部が前記加圧工程で加圧され、前記側壁部が前記冷却工程で冷却される。
【0066】
本態様に係る融着方法において、部材は、底部及び底部の対向する2辺から立設した側壁部を有し、底部が加圧工程で加圧され、側壁部が冷却工程で冷却されるので、例えばハット型の部材において、未加圧部分であるフランジに内部欠陥が発生する可能性を低減できる。
【0067】
また、本態様に係る融着方法において、前記冷却工程では、前記側壁部の外側面(212a)及び端面(212b)が冷却される。
【0068】
本態様に係る融着方法において、冷却工程では、側壁部の外側面及び端面が冷却されるので、例えば横断面形状がC型とされた部材のフランジを冷却する場合において、加熱部分及び加圧部分であるウェブへの影響を回避しつつ、フランジを冷却することができる。
【0069】
また、本態様に係る融着装置は、重ね合わせられた熱可塑性樹脂を含む部材同士が接する接触面を加熱する昇温部と、前記接触面を有する前記部材の所定部分を加圧する加圧部と、前記所定部分以外の前記部材の部分を冷却する冷却部と、を備えている。
【符号の説明】
【0070】
100 融着装置
110 第1ユニット(昇温部、加圧部)
120 第2ユニット(昇温部、加圧部)
131 吸熱ブロック(冷却部)
131a 放熱フィン
131b 流路
132 冷却ファン
133 吸熱ブロック(冷却部)
134 延長複合部材(冷却部)
210 第1部材(熱可塑性樹脂を含む部材)
211 ウェブ(底部)
211a 接触面
212 フランジ(側壁部)
212a 外側面
212b 端面
212c 内側面
220 第2部材(熱可塑性樹脂を含む部材)
221 ウェブ(底部)
221a 接触面
222 フランジ(側壁部)
230 融着面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-02-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱及び加圧の対象である加熱部分及び前記加熱部分以外の部分であり加圧の対象でない非加熱部分を有するとともに熱可塑性樹脂を含む部材同士を融着する融着方法であって、
前記加熱部分に含まれるとともに重ね合わせられた前記部材同士が接する接触面を、前記熱可塑性樹脂の融点以上の温度に加熱する加熱工程と、
前記加熱工程と同時又は前記加熱工程の後に、前記加熱部分を加圧する加圧工程と、
前記加熱工程において、前記非加熱部分を冷却する冷却工程と、
前記加熱工程の前に、前記加熱部分と前記非加熱部分とを各前記部材に設定する工程と、
を含む融着方法。
【請求項2】
前記冷却工程では、前記非加熱部分に熱容量体を熱的に接触させる請求項1に記載の融着方法。
【請求項3】
前記熱容量体は、金属製のブロックとされている請求項2に記載の融着方法。
【請求項4】
前記部材は、底部及び該底部の対向する2辺から立設した側壁部を有し、
前記加熱部分としての前記底部が前記加圧工程で加圧され、
前記非加熱部分としての前記側壁部が前記冷却工程で冷却される請求項1から3のいずれかに記載の融着方法。
【請求項5】
前記冷却工程では、前記側壁部の外側面及び端面が冷却される請求項4に記載の融着方法。
【請求項6】
加熱及び加圧の対象である加熱部分及び前記加熱部分以外の部分であり加圧の対象でない非加熱部分を有するとともに熱可塑性樹脂を含む部材同士を融着する融着装置であって、
前記加熱部分に含まれるとともに重ね合わせられた前記部材同士が接する接触面を、前記熱可塑性樹脂の融点以上の温度に加熱する昇温部と、
前記加熱部分を加圧する加圧部と、
前記非加熱部分を冷却する冷却部と、
を備えている融着装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示の融着方法及び融着装置は以下の手段を採用する。
すなわち、本開示の一態様に係る融着方法は、加熱及び加圧の対象である加熱部分及び前記加熱部分以外の部分であり加圧の対象でない非加熱部分を有するとともに熱可塑性樹脂を含む部材同士を融着する融着方法であって、前記加熱部分に含まれるとともに重ね合わせられた前記部材同士が接する接触面を、前記熱可塑性樹脂の融点以上の温度に加熱する加熱工程と、前記加熱工程と同時又は前記加熱工程の後に、前記加熱部分を加圧する加圧工程と、前記加熱工程において、前記非加熱部分を冷却する冷却工程と、前記加熱工程の前に、前記加熱部分と前記非加熱部分とを各前記部材に設定する工程と、を含む。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
また、本開示の一態様に係る融着装置は、加熱及び加圧の対象である加熱部分及び前記加熱部分以外の部分であり加圧の対象でない非加熱部分を有するとともに熱可塑性樹脂を含む部材同士を融着する融着装置であって、前記加熱部分に含まれるとともに重ね合わせられた前記部材同士が接する接触面を、前記熱可塑性樹脂の融点以上の温度に加熱する昇温部と、前記加熱部分を加圧する加圧部と、前記非加熱部分を冷却する冷却部と、を備えている。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱及び加圧の対象である加熱部分及び前記加熱部分以外の部分であり加圧の対象でない非加熱部分を有するとともに熱可塑性樹脂を含む部材同士を融着する融着方法であって、
前記加熱部分に含まれるとともに重ね合わせられた前記部材同士が接する接触面を、前記熱可塑性樹脂の融点以上の温度に加熱する加熱工程と、
前記加熱工程と同時又は前記加熱工程の後に、前記加熱部分を加圧する加圧工程と、
前記加熱工程において、前記非加熱部分を冷却する冷却工程と、
前記加熱工程の前に、前記加熱部分と前記非加熱部分とを各前記部材に設定する工程と、
を含み、
前記部材は、底部及び該底部の対向する2辺のうち少なくとも1辺から立設した少なくとも1つの側壁部を有し、
前記加熱部分としての前記底部が前記加圧工程で加圧され、
前記非加熱部分としての前記側壁部が前記冷却工程で冷却される融着方法。
【請求項2】
前記冷却工程では、前記非加熱部分に熱容量体を熱的に接触させる請求項1に記載の融着方法。
【請求項3】
前記熱容量体は、金属製のブロックとされている請求項2に記載の融着方法。
【請求項4】
前記側壁部は、前記底部の対向する2辺から立設しており、
前記非加熱部分としての2つの前記側壁部が前記冷却工程で冷却される請求項1から3のいずれかに記載の融着方法。
【請求項5】
前記冷却工程では、前記側壁部の外側面及び端面が冷却される請求項4に記載の融着方法。
【請求項6】
加熱及び加圧の対象である加熱部分及び前記加熱部分以外の部分であり加圧の対象でない非加熱部分を有するとともに熱可塑性樹脂を含む部材同士を融着する融着装置であって、
前記加熱部分に含まれるとともに重ね合わせられた前記部材同士が接する接触面を、前記熱可塑性樹脂の融点以上の温度に加熱する昇温部と、
前記加熱部分を加圧する加圧部と、
前記非加熱部分を冷却する冷却部と、
を備え
前記部材は、底部及び該底部の対向する2辺のうち少なくとも1辺から立設した少なくとも1つの側壁部を有し、
前記加圧部は、前記加熱部分としての前記底部を加圧するように構成され、
前記冷却部は、前記非加熱部分としての前記側壁部を冷却するように構成されている融着装置。