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  • 特開-注入ホース送り装置 図1
  • 特開-注入ホース送り装置 図2
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  • 特開-注入ホース送り装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091917
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】注入ホース送り装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20230626BHJP
【FI】
E02D3/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206790
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】390036504
【氏名又は名称】日特建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 潤
【テーマコード(参考)】
2D040
【Fターム(参考)】
2D040DA05
2D040DB00
2D040DC00
(57)【要約】
【課題】掘削孔への注入ホースの挿入作業や掘削孔からの注入ホースの引き上げ作業を容易に行うことができる注入ホース送り装置を提案する。
【解決手段】注入ホースHを地盤に造成した掘削孔DHに挿入する又は掘削孔DHから引き上げるための注入ホース送り装置1は、注入ホースHの外周面に接触する第一駆動ローラ3と、第一駆動ローラ3に対向して設けられ、注入ホースHの外周面に接触する第二駆動ローラ4と、第二駆動ローラ4を第一駆動ローラ3に向けて押し付ける弾性体6と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入ホースを地盤に造成した掘削孔に挿入する又は当該掘削孔から引き上げるための注入ホース送り装置であって、
前記注入ホースの外周面に接触する第一駆動ローラと、
前記第一駆動ローラに対向して設けられ、前記注入ホースの外周面に接触する第二駆動ローラと、
前記第二駆動ローラを前記第一駆動ローラに向けて押し付ける弾性体と、を備える注入ホース送り装置。
【請求項2】
前記第一駆動ローラの外周面に、前記注入ホースの外周面に接触する第一凹状面を有し、
前記第二駆動ローラの外周面に、前記注入ホースの外周面に接触する第二凹状面を有する、請求項1に記載の注入ホース送り装置。
【請求項3】
前記第一駆動ローラの外周面及び前記第二駆動ローラの外周面に、径方向外側に向けて突出する突出部を有する、請求項1又は2に記載の注入ホース送り装置。
【請求項4】
前記突出部は、前記第一駆動ローラ及び前記第二駆動ローラの径方向外側からの視点でV字状になるV字状凸部が当該第一駆動ローラ及び当該第二駆動ローラの周方向に沿って複数配置されて形成されている、請求項3に記載の注入ホース送り装置。
【請求項5】
前記注入ホースの外周面に接触し、送り出される当該注入ホースとともに回転して当該注入ホースの送り出し量を計測する計測手段を有する、請求項1~4の何れか一項に記載の注入ホース送り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注入ホース送り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば砂礫層や崩壊性の高い未固結層の地盤を改良する工法として、薬液注入工法が知られている。薬液注入工法の一例としては、ダブルパッカーやトリプルパッカーを用いる工法が挙げられる(例えば特許文献1)。
【0003】
一般に、ダブルパッカー等を用いる薬液注入工法においては、ケーシングパイプ等を用いて所定深度まで削孔して掘削孔を造成し、次いで注入ホースを掘削孔に挿入して(厳密には、掘削孔内に残されたケーシングパイプ内に注入ホースを挿入して)、シーリンググラウト等の薬液を注入ホースから注出させる。そしてスリーブパイプを建て込んだ後、ケーシングパイプを引き抜き、パッカーを備えるインジェクションパイプをスリーブパイプに挿入し、パッカーを拡径させた状態でインジェクションパイプに薬液を注入して、地盤改良体を造成する(例えば特許文献2参照)。なお、注入ホースを掘削孔に挿入する作業は、従来、人力によって行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-314940号公報
【特許文献2】特開2021-172983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで近年は、地下50mを超えるような大深度に構造物を築造することがあり、それに伴い大深度での地盤改良も求められている。このような大深度まで注入ホースを挿入し、また挿入した注入ホースを引き上げる場合、注入ホースの長さが長くなるうえ重量も増すことから、作業員の負担が大きくなっている。特にこのような注入ホースは、水や薬液が注入ホース内に導入された状態で掘削孔に挿入され、又は掘削孔から引き上げられるため、重量が一段と増えて作業員の負担は一層大きくなっている。
【0006】
このような問題点に鑑み、本発明では、掘削孔への注入ホースの挿入作業や掘削孔からの注入ホースの引き上げ作業を容易に行うことができる注入ホース送り装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、注入ホースを地盤に造成した掘削孔に挿入する又は当該掘削孔から引き上げるための注入ホース送り装置であって、前記注入ホースの外周面に接触する第一駆動ローラと、前記第一駆動ローラに対向して設けられ、前記注入ホースの外周面に接触する第二駆動ローラと、前記第二駆動ローラを前記第一駆動ローラに向けて押し付ける弾性体と、を備える注入ホース送り装置である。
【0008】
このような注入ホース送り装置において、前記第一駆動ローラの外周面に、前記注入ホースの外周面に接触する第一凹状面を有し、前記第二駆動ローラの外周面に、前記注入ホースの外周面に接触する第二凹状面を有することが好ましい。
【0009】
またこの注入ホース送り装置において、前記第一駆動ローラの外周面及び前記第二駆動ローラの外周面に、径方向外側に向けて突出する突出部を有することが好ましい。
【0010】
またこの注入ホース送り装置において、前記突出部は、前記第一駆動ローラ及び前記第二駆動ローラの径方向外側からの視点でV字状になるV字状凸部が当該第一駆動ローラ及び当該第二駆動ローラの周方向に沿って複数配置されて形成されていることが好ましい。
【0011】
またこの注入ホース送り装置において、前記注入ホースの外周面に接触し、送り出される当該注入ホースとともに回転して当該注入ホースの送り出し量を計測する計測手段を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
上述した構成になる本発明の注入ホース送り装置によれば、弾性体によって第一駆動ローラと第二駆動ローラで挟まれた状態になる注入ホースは、この状態で第一駆動ローラと第二駆動ローラをともに回転させることにより、これらのローラの回転方向に応じて掘削孔へ挿入したり掘削孔から引き上げたりすることができる。なお注入ホースは、注入ホースの外径よりも大径になるジョイントを用いて複数本をつないで用いられることがある。本発明の注入ホース送り装置は、弾性体によって第二駆動ローラを第一駆動ローラに向けて押し付けていて、注入ホースとは外径が異なるジョイントも第一駆動ローラと第二駆動ローラの間を通過できるため、このようなジョイントで接続された注入ホースも問題なく使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る注入ホース送り装置の一実施形態に関する模式図である。
図2図1に示した注入ホース送り装置の駆動部に関する模式図である。
図3図1に示した矢印Xに沿う矢視図である。
図4図1に示した第一駆動ローラと第二駆動ローラにおける径方向外側からの部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明に係る注入ホース送り装置の一実施形態について説明する。図1は、本発明に係る注入ホース送り装置の一実施形態を模式的に示した図である。図示した注入ホース送り装置1は、地盤に造成した掘削孔DHに注入ホースHから薬液を注入する薬液注入工法を行うにあたり、掘削孔DHに注入ホースHを挿入する、又は掘削孔DHから注入ホースHを引き上げる際に使用される。なお、ダブルパッカーやトリプルパッカーを用いる薬液注入工法においては、ケーシングパイプ等を用いて地盤に掘削孔DHを造成し、掘削孔DH内に残されたケーシングパイプ内に注入ホースHを挿入するが、図1ではケーシングパイプを省略して示している。また図示した注入ホースHは、ジョイントJを介して複数本をつないだものである。なおジョイントJの外径は、注入ホースHの外径よりも大径である。
【0015】
本実施形態の注入ホース送り装置1は、図1において仮想線で示すベース2を備えている。また注入ホース送り装置1には、第一駆動ローラ3、第二駆動ローラ4、駆動側揺動アーム5、弾性体(駆動側弾性体6)、調整部7、駆動部8、第一従動ローラ9、第二従動ローラ10、従動側揺動アーム11、弾性体(従動側弾性体12)、エンコーダ13が設けられている。
【0016】
第一駆動ローラ3は、略円板状になるものであって、ベース2に回転可能に支持されている。第二駆動ローラ4は、第一駆動ローラ3と同径の略円板状になるものであって、駆動側揺動アーム5に回転可能に支持されている。本実施形態の第一駆動ローラ3と第二駆動ローラ4において、外周面を構成する部位はゴム等の弾性部材で形成されている。なお、第一駆動ローラ3と第二駆動ローラ4の詳細な構成については後述する。
【0017】
駆動側揺動アーム5は、その一端部がベース2に対して揺動可能に取り付けられている。本実施形態の駆動側揺動アーム5は、ベース2に対して、第二駆動ローラ4が第一駆動ローラ3に対向する位置で揺動軸C1を中心に揺動するように取り付けられている。ベース2には調整部7が取り付けられていて、駆動側揺動アーム5の他端部は、調整部7に取り付けられた駆動側弾性体6に接続され、第二駆動ローラ4が第一駆動ローラ3に近づく向きに付勢されている。ここで調整部7とは、駆動側揺動アーム5の他端部に付与される駆動側弾性体6の付勢力を調整するものである。本実施形態の調整部7は、一端部に駆動側弾性体6が取り付けられるボルトと、このボルトをベース2に固定するナットにより構成されていて、ベース2に固定する際のボルトの長さを変更することにより、駆動側弾性体6が駆動側揺動アーム5に付与する付勢力を調整できるようにしている。
【0018】
駆動部8は、第一駆動ローラ3と第二駆動ローラ4を同期させて回転させるものである。図2に示すように本実施形態の駆動部8は、モータ14、2つの駆動スプロケット15、2つのアイドラースプロケット16、チェーン17、アイドラー18、アイドラー用揺動アーム19、アイドラー用弾性体20で構成されている。
【0019】
モータ14は、第一駆動ローラ3を回転させるものである。第一駆動ローラ3の回転軸には、駆動スプロケット15が取り付けられている。第二駆動ローラ4の回転軸にも駆動スプロケット15が取り付けられている。2つのアイドラースプロケット16は、ベース2に回転可能に支持されている。そして2つの駆動スプロケット15と2つのアイドラースプロケット16には、図2に示すようにチェーン17が掛けられていて、モータ14を駆動させることによって2つの駆動スプロケット15は同期して逆方向に回転する。すなわち、2つの駆動スプロケット15のそれぞれが取り付けられた第一駆動ローラ3と第二駆動ローラ4は、同期して逆方向に回転する。
【0020】
なお、第二駆動ローラ4は駆動側揺動アーム5に取り付けられていて、駆動側揺動アーム5が揺動することによって第二駆動ローラ4の回転軸に取り付けられた駆動スプロケット15も移動する。従って、駆動側揺動アーム5が揺動すると、2つの駆動スプロケット15と2つのアイドラースプロケット16を周回する長さが変動し、チェーン17の長さが余る又は不足することになる。これに対して本実施形態では、アイドラー18、アイドラー用揺動アーム19、アイドラー用弾性体20によって、チェーン17における長さの過不足を吸収している。本実施形態の具体的な構成について説明すると、アイドラー用揺動アーム19は、一端部にアイドラー18が回転可能に取り付けられていて、他端部は、アイドラー18がチェーン17に接触する位置においてベース2に揺動可能に支持されている。またアイドラー用揺動アーム19は、全長が可変できるようになっていて、アイドラー用弾性体20は、アイドラー用揺動アーム19の全長が長くなる向きにアイドラー用揺動アーム19を付勢している。すなわちアイドラー18は、アイドラー用揺動アーム19によって移動しつつアイドラー用弾性体20によってチェーン17に対して一定圧で接触するため、チェーン17の長さに過不足が生じる場合でもそれを吸収することができる。
【0021】
そして第一従動ローラ9は、略円板状になるものであって、ベース2に回転可能に支持されている。また第二従動ローラ10は、従動側揺動アーム11に回転可能に支持されている。
【0022】
従動側揺動アーム11は、その一端部がベース2に対して揺動可能に支持されている。本実施形態の従動側揺動アーム11は、ベース2に対して、第二従動ローラ10が第一従動ローラ9に対向する位置で揺動軸C2を中心に揺動するように取り付けられている。従動側揺動アーム11の他端部には、ベース2に取り付けられた従動側弾性体12が取り付けられていて、従動側揺動アーム11は、第二従動ローラ10が第一従動ローラ9に近づく向きに付勢されている。
【0023】
そして第一従動ローラ9の中心軸には、エンコーダ13が取り付けられていて、第一従動ローラ9の回転量は、エンコーダ13によって把握することができる。なおエンコーダ13は、本明細書等における「計測手段」に相当する。
【0024】
このような構成になる注入ホース送り装置1は、図1に示すように、掘削孔DHの近傍に設置される。ここで注入ホースHは、水平方向に延在するように第一駆動ローラ3と第二駆動ローラ4の間、及び第一従動ローラ9と第二従動ローラ10の間を通過し、更に第一従動ローラ9から垂直方向に延在して掘削孔DHに挿入される状態で注入ホース送り装置1に設置される。
【0025】
この状態において注入ホースHは、駆動側弾性体6の付勢力によって第一駆動ローラ3と第二駆動ローラ4に挟まれた状態にある。そして注入ホースHを掘削孔DHに挿入するには、図1において第一駆動ローラ3が反時計回りに回転する向きにモータ14を駆動させる。これにより第二駆動ローラ4は、チェーン17を介して第一駆動ローラ3と同期して回転する。なお第二駆動ローラ4は、図1において時計回りに回転する。従って第一駆動ローラ3と第二駆動ローラ4で挟まれた状態の注入ホースHは、第一駆動ローラ3と第二駆動ローラ4によって図1に示した矢印Aの向きに送り出されるため、掘削孔DHの奥側に向けて注入ホースHを挿入することができる。またモータ14の回転方向を逆にすれば、第一駆動ローラ3は時計回りに回転して第二駆動ローラ4は反時計回りに回転し、注入ホースHは矢印Bの向きに送り出されるため、掘削孔DHから注入ホースHを引き上げることができる。なお、第一駆動ローラ3と第二駆動ローラ4は同径であって、第一駆動ローラ3が注入ホースHを送り出す量と第二駆動ローラ4が送り出す量は等しいため、第一駆動ローラ3と注入ホースHとの間での滑りと第二駆動ローラ4と注入ホースHとの間での滑りが生じにくくなる。また、駆動側弾性体6が駆動側揺動アーム5を介して第二駆動ローラ4に付与する付勢力は、調整部7によって変更することができるため、注入ホースHが潰れずに且つ第一駆動ローラ3と第二駆動ローラ4との間で注入ホースHが滑らないように駆動側弾性体6の付勢力を調整することができる。なお、掘削孔DHの深さが深くなると必要となる注入ホースHの長さも長くなり、それに伴い注入ホースHの重量も増すことになるため、駆動側弾性体6の付勢力を変更する必要がある。これに対して本実施形態の注入ホース送り装置1は、調整部7を備えているため、駆動側弾性体6の付勢力を注入ホースHの長さに応じて変更することができる。
【0026】
ところで、注入ホースHの送り出しに伴ってジョイントJが第一駆動ローラ3と第二駆動ローラ4の間に入り込むと、駆動側弾性体6の付勢力によって第一駆動ローラ3に向けて押し付けられている第二駆動ローラ4は、第一駆動ローラ3から離れる向きに移動する。すなわち本実施形態の注入ホース送り装置1によれば、ジョイントJで接続した注入ホースHであっても問題なく使用することができる。
【0027】
また第一駆動ローラ3と第二駆動ローラ4によって注入ホースHが送り出される際、注入ホースHは第二従動ローラ10によって第一従動ローラ9に押し付けられているため、第一従動ローラ9は注入ホースHの移動とともに回転する。ここで第一従動ローラ9の回転量は、エンコーダ13によって把握されるため、第一従動ローラ9の直径、及びエンコーダ13から得られる第一従動ローラ9の回転量に基づいて、注入ホースHの移動量を計測することができる。
【0028】
すなわち、注入ホースHを掘削孔DHに挿入する際は、エンコーダ13の計測値から注入ホースHの先端が掘削孔DHの底部に至るまで挿入されたかを知ることができる。また注入ホースHを掘削孔DHから引き上げる際は、エンコーダ13の計測値から注入ホースHの引き上げ量を知ることができる。ここで薬液注入工法においては、注入ホースHから所定量の薬液を注出した後、注入ホースHを所定長さ引き上げ、再び注入ホースHから薬液を所定量注出して注入ホースHを所定長さ引き上げる、といった手順で掘削孔DHに薬液が注入される。すなわち、作業員が人力で注入ホースHを引き上げていた従来の作業では、例えば注入ホースHに所定の間隔で目印を付け、作業員はその目印を目安にして注入ホースHを所定量引き上げるようにしていたが、本実施形態の注入ホース送り装置1によれば、エンコーダ13の計測値から注入ホースHの引き上げ量を把握することができるため、このような目印を廃止することができ、また注入ホースHの引き上げ量を確認する作業員の負担を減らすことができる。なお、エンコーダ13で得られる計測値を利用する場合は、注入ホース送り装置1の動作を制御する制御部に対し、注入ホースHを所定量引き上げた後はモータ14を自動的に停止させるように構成することが好ましい。また注入ホースHから薬液を注出させる薬液注入装置と注入ホース送り装置1との間で情報のやり取りができるように構成し、注入ホースHを所定量引き上げてモータ14を自動的に停止させた後は、薬液注入装置から注入ホースHに対して自動的に所定量の薬液を注入し、その後は自動的に注入ホースHを所定量引き上げる、といった作業ができるように構成してもよい。
【0029】
ところで注入ホースHを掘削孔DHに挿入する、又は掘削孔DHから引き上げる際は、注入ホースH内に導入された水や薬液、又は注入ホースHから掘削孔DH内に注入された薬液によって、多くの場合、注入ホースHの外周面は濡れた状態になっている。そしてこのように注入ホースHの外周面が濡れていると、上述した第一駆動ローラ3と第二駆動ローラ4を同径にすることによる注入ホースHが滑りにくくなる効果や、駆動側弾性体6の付勢力を調整部7で調整して注入ホースHを滑りにくくする効果にもかかわらず、注入ホースHが第一駆動ローラ3や第二駆動ローラ4に対して滑ってしまい、注入ホースHが送り出されないことがあった。
【0030】
このため本実施形態の第一駆動ローラ3と第二駆動ローラ4には、図3に示すように、外周面の幅方向中央部を径方向内側に窪ませた第一凹状面3aと第二凹状面4aを設けている。すなわち、注入ホースHが第一凹状面3aと第二凹状面4aに接触する接触面積は、第一駆動ローラ3と第二駆動ローラ4の外周面が径方向外側からの視点で平坦状である場合に比して大きくなるため、注入ホースHが第一駆動ローラ3や第二駆動ローラ4に対して滑りにくくなり、注入ホースHの外周面が濡れていてもこれを送り出すことができる。
【0031】
また注入ホースHの外周面が濡れている場合の第一駆動ローラ3や第二駆動ローラ4との滑りを抑制するには、第一駆動ローラ3と第二駆動ローラ4の外周面に、径方向外側に向けて突出する突出部を設けることが好ましい。突出部は、例えば図4(a)に示すように径方向外側からの視点で円形状になる円形状凸部P1を、第一駆動ローラ3と第二駆動ローラ4の周方向及び幅方向に複数配置したものでもよいし、図示は省略するが径方向外側からの視点で多角形状(三角形状、四角形状等)になるものを複数配置したものでもよい。また突出部は、図4(b)に示すように径方向外側からの視点でV字状になるV字状凸部P2を周方向及び幅方向に複数配置したものでもよい。
【0032】
ところで本発明者が突出部について検討を重ねたところ、図4(a)に示した円形状凸部P1を第一凹状面3aと第二凹状面4aに複数配置した第一駆動ローラ3及び第二駆動ローラ4に比して、図4(b)に示したV字状凸部P2を第一凹状面3aと第二凹状面4aに複数配置した方が、注入ホースHの外周面が濡れていても滑りを抑制できる効果が高いことが認められた。ここで、滑り抑制の原理について予測すると、V字状凸部P2を複数配置したものの方が円形状凸部P1を複数配置したものよりも排液性が高く、注入ホースHと第一駆動ローラ3(又は第二駆動ローラ4)との間に水や薬液が溜まりにくくなって、これらの間の摩擦力の低下が抑制できることが挙げられる。
【0033】
なお、V字状凸部P2について更に検討を重ねたところ、注入ホースHの外周面が濡れていた状態での滑りを抑制できる効果に関し、V字状凸部P2の幅、及びV字状凸部P2が幅方向に隣り合う列間のピッチによって有意差があることが認められた。図4(b)に示すように、第一凹状面3aと第二凹状面4aに設けるV字状凸部P2の幅をL1、幅方向に隣り合う列間のピッチをL2とする場合、L1が11mmでL2が12mmのV字状凸部P2に比して、L1が6mmでL2が6.5mmのV字状凸部P2の方が滑りを抑制できる効果が高いことが認められた。なお、L1とL2の公差は±2mm程度である。よってV字状凸部P2は、幅L1が6±2mm、ピッチL2が6.5±2mmであることが好ましい。
【0034】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0035】
例えば、第一駆動ローラ3と第二駆動ローラ4の外周面に上述した突出部を設ける場合は、第一駆動ローラ3等の外周面を構成するゴム等の弾性部材からV字状凸部P2等が一体的に突出するようにしてもよいし、この弾性部材に対してV字状凸部P2等を備えるゴム製のシートを固着するようにしてもよい。このようなV字状凸部P2等を備えるゴム製のシートを固着する場合は、使用を重ねてV字状凸部P2等がすり減った場合でも、新たにシートを固着させることによって第一駆動ローラ3等を容易に再生することができる。
【0036】
また本実施形態では、第一従動ローラ9の中心軸に設けたエンコーダ13によって注入ホースHの送り出し量を計測するように構成したが、例えば注入ホースHの外周面に設けた所定間隔の目印を読み取る計測器を設ける等のように、他の計測手段を用いてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1:注入ホース送り装置
3:第一駆動ローラ
3a:第一凹状面
4:第二駆動ローラ
4a:第二凹状面
6:駆動側弾性体(弾性体)
DH:掘削孔
H:注入ホース
P1:円形状凸部(突出部)
P2:V字状凸部(突出部)
図1
図2
図3
図4