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特開2023-91933無励磁作動型ブレーキ、無励磁作動型ブレーキの制御方法、及び工作機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091933
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】無励磁作動型ブレーキ、無励磁作動型ブレーキの制御方法、及び工作機械
(51)【国際特許分類】
   F16D 66/00 20060101AFI20230626BHJP
   F16D 65/16 20060101ALI20230626BHJP
   B25J 19/00 20060101ALI20230626BHJP
   B23Q 5/54 20060101ALI20230626BHJP
   H01F 7/06 20060101ALI20230626BHJP
   F16D 121/22 20120101ALN20230626BHJP
【FI】
F16D66/00 Z
F16D65/16
B25J19/00 C
B23Q5/54 A
H01F7/06 P
F16D121:22
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206816
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】二川 正康
【テーマコード(参考)】
3C707
3J058
5E048
【Fターム(参考)】
3C707HS27
3C707HT40
3C707KS37
3J058AA53
3J058AA58
3J058AA78
3J058AA88
3J058BA60
3J058CC07
3J058CC72
3J058CC77
3J058FA32
5E048AB06
5E048AD07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コストを抑制しつつ、ブレーキがロックされている状態であるか否かを判定できる無励磁作動型ブレーキを提供する。
【解決手段】電磁石(11)を有する固定子(10)と、当該固定子内部に設けられ、当該固定子に対して回転可能な回転子(20)と、当該電磁石に対向するように当該固定子に設けられ、当該電磁石が磁力発生状態である場合に当該回転子から離間され当該電磁石に対して吸着状態となり、当該電磁石が磁力非発生状態である場合に当該電磁石に対して非吸着状態となり当該回転子に接触し当該回転子の回転を固定する制動部(30)と、当該電磁石を駆動する電圧に交流電圧が重畳された重畳電圧を当該電磁石に供給する電圧供給部(40)と、当該電磁石に流れる電流を測定する測定部(50)と、測定電流に従って、当該制動部への当該電磁石の吸着状態を判定する判定部(60)とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される電圧に従って磁力を発生させる電磁石を有する固定子と、
前記固定子の内部に設けられ、前記固定子に対して回転可能な回転子と、
前記電磁石に対向するように前記固定子に設けられ、前記電磁石が磁力発生状態である場合に前記回転子から離間されるとともに前記電磁石に対して吸着状態となり、前記電磁石が磁力非発生状態である場合に前記電磁石に対して非吸着状態となるとともに前記回転子に接触し前記回転子の回転を固定する制動部と、
前記電磁石を駆動する電圧に交流電圧が重畳された重畳電圧を前記電圧として前記電磁石に供給する電圧供給部と、
前記電磁石に流れる電流を測定する測定部と、
前記測定部が測定した電流に従って、前記制動部が前記電磁石に吸着しているか否かを判定する判定部と、
を備えることを特徴とする無励磁作動型ブレーキ。
【請求項2】
前記判定部は、前記測定部が測定した前記電流の振幅が所定の値未満である場合、前記電磁石に対して前記制動部が前記吸着状態であると判定し、前記測定部が測定した前記電流の振幅が前記所定の値以上である場合、前記電磁石に対して前記制動部が前記非吸着状態であると判定することを特徴とする請求項1に記載の無励磁作動型ブレーキ。
【請求項3】
前記判定部は、前記測定部が測定した電流の値が第一の値から第二の値まで遷移する時間が所定の時間以上である場合、前記電磁石に対して前記制動部が前記吸着状態であると判定し、前記測定部が測定した電流の値が前記第一の値から前記第二の値まで遷移する時間が前記所定の時間未満である場合、前記電磁石に対して前記制動部が前記非吸着状態であると判定することを特徴とする請求項1に記載の無励磁作動型ブレーキ。
【請求項4】
前記回転子の回転を制御するとともに、前記電磁石に対して前記制動部が前記非吸着状態であると前記判定部が判定する場合、前記回転を行わないように前記回転子を制御する制御部をさらに備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の無励磁作動型ブレーキ。
【請求項5】
供給される電圧に従って磁力を発生させる電磁石を有する固定子と、前記固定子の内部に設けられ前記固定子に対して回転可能な回転子と、前記電磁石に対向するように前記固定子に設けられ、前記電磁石が磁力発生状態である場合に前記回転子から離間されるとともに前記電磁石に対して吸着状態となり、前記電磁石が磁力非発生状態である場合に前記電磁石に対して非吸着状態となるとともに前記回転子に接触し前記回転子の回転を固定する制動部と、を備える無励磁作動型ブレーキの制御方法であって、
前記電磁石を駆動する電圧に交流電圧が重畳された重畳電圧を前記電圧として前記固定子に供給することと、
前記電磁石に流れる電流の振幅を測定することと、
前記電流の振幅が所定の値未満である場合、前記制動部が前記電磁石に対して前記吸着状態であると判定することと、
前記電流の振幅が前記所定の値以上である場合、前記制動部が前記電磁石に対して前記非吸着状態であると判定することと、
を含むことを特徴とする無励磁作動型ブレーキの制御方法。
【請求項6】
供給される電圧に従って磁力を発生させる電磁石を有する固定子と、前記固定子の内部に設けられ、前記固定子に対して回転可能な回転子と、前記電磁石に対向するように前記固定子に設けられ、前記電磁石が磁力発生状態である場合に前記回転子から離間されるとともに前記電磁石に対して吸着状態となり、前記電磁石が磁力非発生状態である場合に前記電磁石に対して非吸着状態となるとともに前記回転子に接触し前記回転子の回転を固定する制動部と、前記電磁石を駆動する電圧に交流電圧が重畳された重畳電圧を前記電圧として前記電磁石に供給する電圧供給部と、前記電磁石に流れる電流を測定する測定部と、前記測定部が測定した前記電流に従って、前記制動部が前記電磁石に吸着しているか否かを判定する判定部と、を有する無励磁作動型ブレーキと、
前記回転子に接続され、前記回転子の回転軸に従って回転可能な軸体と、
前記軸体の回転を制御するモータと、
を備えることを特徴とする工作機械。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無励磁作動型ブレーキ、無励磁作動型ブレーキの制御方法、及び工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、装置に設けられ、電源供給が停止した時にブレーキがロックされ、電源が供給されるとブレーキのロックが解除される無励磁作動型ブレーキが知られている。無励磁作動型ブレーキは、装置が非常停止した際に、当該装置の状態を安全に保つ目的で使用されている。
【0003】
これに関し、特許文献1には、無励磁作動型電磁ブレーキの励磁コイルに流れるコイル電流を取得して、励磁コイルに電圧を印加した後の電流変化に基づいて電圧の印加時点からアーマチュアの吸引時点までのアーマチュアの吸引時間を推定し、推定した吸引時間に基づいてロボットを制御することが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、ブレーキコイルが巻装された固定鉄心と可動鉄心との間のギャップの変化を検出するための低圧交流電源と、ブレーキコイルを励磁するための励磁用交流電源と、低圧交流電源及び励磁用交流電源のうちいずれかをブレーキコイルに接続するスイッチ手段と、を備えることが開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、可動鉄心が磁気吸着位置に移動しているか否かに従ってON動作又はOFF動作するスイッチと、スイッチの動作に従って励磁コイルが励磁されている状態で可動鉄心が磁気吸着位置に移動しているか否かを区別する回路と、を備えることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-185595号公報
【特許文献2】特開1990-164266号公報
【特許文献3】特開2015-100878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、励磁コイルに流れる電流変化によって励磁コイルへの電圧の印加時点からアーマチュアの吸引時点まで、あるいは、励磁コイルへの電圧印加を停止した時点からアーマチュアが釈放されるまでの時間を推定している。このため、無励磁作動型電磁ブレーキをロック又は解除するタイミングでしか異常を検出できないという問題があった。すなわち、特許文献1に記載の技術では、通常運転時に、何らかの不具合などにより、励磁コイルにコイル電流が流れているにも関わらずアーマチュアが励磁コイルに吸着しておらず無励磁作動型電磁ブレーキがロック状態となっている状態を検出できないという問題があった。
【0008】
また、特許文献2に記載の技術では、励磁用交流電源と低圧交流電源のいずれかがブレーキコイルに接続される。このため、励磁用交流電源から電圧が供給されているにも関わらずアーマチュアがブレーキコイルに吸着しておらず電磁ブレーキがロック状態となっている状態を検出できないという問題があった。
【0009】
さらに、特許文献3に記載の技術では、可動鉄心が磁気吸着位置に移動しているか否かを判定するためにスイッチ及び回路を使用しており、部品数や配線数の増大に伴いコストが増大するという問題があった。
【0010】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、コストを抑制しつつ、ブレーキがロックされている状態であるか否かを判定できる無励磁作動型ブレーキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第一態様に係る無励磁作動型ブレーキは、供給される電圧に従って磁力を発生させる電磁石を有する固定子と、前記固定子の内部に設けられ、前記固定子に対して回転可能な回転子と、前記電磁石に対向するように前記固定子に設けられ、前記電磁石が磁力発生状態である場合に前記回転子から離間されるとともに前記電磁石に対して吸着状態となり、前記電磁石が磁力非発生状態である場合に前記電磁石に対して非吸着状態となるとともに前記回転子に接触し前記回転子の回転を固定する制動部と、前記電磁石を駆動する電圧に交流電圧が重畳された重畳電圧を前記電圧として前記電磁石に供給する電圧供給部と、前記電磁石に流れる電流を測定する測定部と、前記測定部が測定した電流に従って、前記制動部が前記電磁石に吸着しているか否かを判定する判定部と、を備える。
【0012】
また、本発明の第二態様に係る無励磁作動型ブレーキでは、前記判定部は、前記測定部が測定した前記電流の振幅が所定の値未満である場合、前記電磁石に対して前記制動部が前記吸着状態であると判定し、前記測定部が測定した前記電流の振幅が前記所定の値以上である場合、前記電磁石に対して前記制動部が前記非吸着状態であると判定する。
【0013】
また、本発明の第三態様に係る無励磁作動型ブレーキでは、前記判定部は、前記測定部が測定した電流の値が第一の値から第二の値まで遷移する時間が所定の時間以上である場合、前記電磁石に対して前記制動部が前記吸着状態であると判定し、前記測定部が測定した電流の値が前記第一の値から前記第二の値まで遷移する時間が前記所定の時間未満である場合、前記電磁石に対して前記制動部が前記非吸着状態であると判定する。
【0014】
また、本発明の第四態様に係る無励磁作動型ブレーキは、前記回転子の回転を制御するとともに、前記電磁石に対して前記制動部が前記非吸着状態であると前記判定部が判定する場合、前記回転を行わないように前記回転子を制御する制御部をさらに備える。
【0015】
また、本発明の第五態様に係る無励磁作動型ブレーキの制御方法は、供給される電圧に従って磁力を発生させる電磁石を有する固定子と、前記固定子の内部に設けられ前記固定子に対して回転可能な回転子と、前記電磁石に対向するように前記固定子に設けられ、前記電磁石が磁力発生状態である場合に前記回転子から離間されるとともに前記電磁石に対して吸着状態となり、前記電磁石が磁力非発生状態である場合に前記電磁石に対して非吸着状態となるとともに前記回転子に接触し前記回転子の回転を固定する制動部と、を備える無励磁作動型ブレーキの制御方法であって、前記電磁石を駆動する電圧に交流電圧が重畳された重畳電圧を前記電圧として前記固定子に供給することと、前記電磁石に流れる電流の振幅を測定することと、前記電流の振幅が所定の値未満である場合、前記制動部が前記電磁石に対して前記吸着状態であると判定することと、前記電流の振幅が前記所定の値以上である場合、前記制動部が前記電磁石に対して前記非吸着状態であると判定することと、を含む。
【0016】
また、本発明の第六態様に係る工作機械は、供給される電圧に従って磁力を発生させる電磁石を有する固定子と、前記固定子の内部に設けられ、前記固定子に対して回転可能な回転子と、前記電磁石に対向するように前記固定子に設けられ、前記電磁石が磁力発生状態である場合に前記回転子から離間されるとともに前記電磁石に対して吸着状態となり、前記電磁石が磁力非発生状態である場合に前記電磁石に対して非吸着状態となるとともに前記回転子に接触し前記回転子の回転を固定する制動部と、前記電磁石を駆動する電圧に交流電圧が重畳された重畳電圧を前記電圧として前記電磁石に供給する電圧供給部と、前記電磁石に流れる電流を測定する測定部と、前記測定部が測定した前記電流に従って、前記制動部が前記電磁石に吸着しているか否かを判定する判定部と、を有する無励磁作動型ブレーキと、前記回転子に接続され、前記回転子の回転軸に従って回転可能な軸体と、前記軸体の回転を制御するモータと、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、無励磁作動型ブレーキは、コストを抑制しつつ、ブレーキがロックされている状態であるか否かを判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】本実施形態に係る無励磁作動型ブレーキの正面図である。
図1B図1A中のI―I線に沿う無励磁作動型ブレーキの断面を斜め上から見た図である。
図2A図2Aは、図1A中のI―I線に沿う無励磁作動型ブレーキがロック状態である場合の断面図である。
図2B図2Bは、図1A中のI―I線に沿う無励磁作動型ブレーキが解除状態である場合の断面図である。
図3図1Aに示す無励磁作動型ブレーキの回路構成を示す図である。
図4A図1Aに示す無励磁作動型ブレーキにおける各信号の電流の遷移の一例を示すタイミングチャートである。
図4B図1Aに示す無励磁作動型ブレーキにおける各信号の電流の遷移の他の例を示すタイミングチャートである。
図5図1Aに示す無励磁作動型ブレーキの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素及びステップに対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0020】
<構成>
図1Aは、本実施形態に係る無励磁作動型ブレーキ1の正面図である。また、図1Bは、図1A中のI―I線に沿う無励磁作動型ブレーキ1の断面を斜め上から見た図である。
【0021】
図1A及び図1Bに示すように、無励磁作動型ブレーキ1は、固定子10と、回転子20と、制動部30と、電圧供給部40と(図3参照)、測定部50(図3参照)と、判定部60(図3参照)と、制御部70(図3参照)とを含んで構成される。ここでは、固定子10、回転子20及び制動部30について説明する。制動部30、電圧供給部40、測定部50、判定部60及び制御部70については、追って図3を参照しつつ、説明する。なお、無励磁作動型ブレーキ1は、例えば、回転力を発生させ当該回転を制御するモータと、モータに接続され回転力に従って回転可能な軸体と、軸体に接続されるアームとを含んで構成される工作機械(例えばロボットなど。図示せず)に設けられる。
【0022】
固定子10は、プレート13と、電磁石11を有するステータ12とを含んで構成される。プレート13は、外周に凹凸がある薄い円筒状に形成されており、ボルト及びナットなどの接続具によってステータ12と接続される。
【0023】
ステータ12は、円筒状に形成されており、中心軸及び内周がそれぞれプレート13の中心軸及び内周と一致し、かつ所定の距離が離れるように、中心軸に平行に設けられたボルト及びナットなどの接続具によってプレート13と接続される。また、ステータ12は、プレート13側の面に露出するように、外周及び内周の間に電磁石11が埋め込まれている。
【0024】
電磁石11は、例えば、コイルである。電磁石11は、供給される電圧に従い励磁して当該電圧に従う磁場を発生させ磁力発生状態となる一方で、当該電圧の供給の停止に従い磁場の発生を停止させ磁力非発生状態となる。電磁石11は、磁場を発生させることによって、後述する制動部30のアーマチュア32を電磁石11に引き寄せる。
【0025】
回転子20は、例えば、ロータハブ21と、ロータ22とを含んで構成される。回転子20は、中心軸Oを回転軸として回転可能であり、中心軸Oがステータ12及びプレート13の中心軸と一致するように、固定子10の内部(内周の内側)に設けられる。
【0026】
ロータハブ21は、回転子20の中心部に設けられ、軸体(図示しない)などから伝達される力に従って中心軸Oを回転軸とする回転方向に回転可能である。ロータハブ21は、円筒状や多角筒状に形成されている。また、ロータハブ21は、外周にロータ22が接続される。ロータ22は、輪状に形成されており、内周がロータハブ21の外周に接続される。また、ロータ22は、無励磁作動型ブレーキ1においてステータ12及びプレート13の間に収まるように設けられる。
【0027】
制動部30は、弾性体31と、アーマチュア32とを含んで構成される。制動部30は、アーマチュア32とプレート13とでロータ22を挟み込むことによって、回転子20が回転しないように回転子20を固定する(ロック状態にする)一方で、電磁石11が発生させる磁場に従って、ロータ22の挟み込みを解除し回転子20が回転できるようにする(解除状態にする)。
【0028】
弾性体31は、例えば、金属バネであり、一端がステータ12に他端がアーマチュア32にそれぞれ接続される。弾性体31は、弾性によってアーマチュア32をプレート13の方向に押し付ける。弾性体31は、電磁石11が発生させた磁場がアーマチュア32を電磁石11に引き付ける力よりも、弾性体31がアーマチュア32をプレート13の方向に押し付ける力が弱くなるような固有の弾性係数を有する。
【0029】
アーマチュア32は、薄い円筒状の磁性体を含んで形成されており、中心軸がステータ12及びプレート13の中心軸と、回転子20の回転軸とに一致するように、ステータ12及びロータ22の間に設けられ、さらに弾性体31の他端に接続される。また、アーマチュア32は、電磁石11、ステータ12及びロータ22に対向するように設けられる。一方、アーマチュア32は、電磁石11が磁場を発生させていない場合(磁力非発生状態)、弾性体31の弾性によってロータ22に接触し、ロータ22をプレート13に押し付けることによってロータ22の回転を固定するとともに、電磁石11に対して吸着しない非吸着状態となる。他方、アーマチュア32は、電磁石11が磁場を発生させている場合(磁力発生状態)、電磁石11の磁場に引き寄せられてロータ22から離間するとともに電磁石11に吸着し、電磁石11に対して吸着状態となり、ロータ22を解放する。
【0030】
以上、無励磁作動型ブレーキ1の構成について説明した。尚、図1A図1Bに示した無励磁作動型ブレーキ1の構成は、あくまでも一例であり、上記構成に限定されない。次に、無励磁作動型ブレーキ1の動作について詳しく説明する。図2Aは、図1A中のI―I線に沿う無励磁作動型ブレーキ1がロック状態である場合の断面図である。また、図2Bは、図1A中のI―I線に沿う無励磁作動型ブレーキ1が解除状態である場合の断面図である。
【0031】
図2Aに示すように、電磁石11に電圧が供給されていない場合、アーマチュア32は、弾性体31の弾性によってロータ22に押し付けられる。これにより、ロータ22がアーマチュア32及びプレート13に挟み込まれ、摩擦によって回転しないように固定されるため、無励磁作動型ブレーキ1は、ロック状態となる。
【0032】
図2Bに示すように、電磁石11に電圧が供給されている場合、アーマチュア32は、電磁石11が発生させた磁場によってロータ22から離間して電磁石11に引き寄せられ、電磁石11に吸着する。これにより、ロータ22がアーマチュア32及びプレート13との挟み込みから解放され回転可能になるため、無励磁作動型ブレーキ1は、解除状態となる。
【0033】
以上、無励磁作動型ブレーキ1の動作について説明した。次に、無励磁作動型ブレーキ1の回路構成について詳しく説明する。図3は、図1Aに示す無励磁作動型ブレーキ1の回路構成を示す図である。
【0034】
図3に示すように、無励磁作動型ブレーキ1は、固定子10、回転子20及び制動部30に加えて、電圧供給部40と、測定部50と、判定部60と、制御部70とをさらに含んで構成される。
【0035】
上述したように、電磁石11は、固定子10に設けられる。電磁石11は、電圧供給部40から供給される電圧に従って、磁場を発生させ、発生させた磁場によって制動部30のアーマチュア32を電磁石11に引き寄せる。また、電磁石11は、電圧供給部40からの電圧の供給がない場合、磁場を発生させず、したがって、制動部30のアーマチュア32の電磁石11への引き寄せも行わない。電磁石11は、一端が電圧源43に接続され、他端が重畳部42のトランジスタTRのドレイン端子に接続される。
【0036】
電圧供給部40は、制御部70の制御に従って、固定子10の電磁石11に電圧を供給する。電圧供給部40は、例えば、交流電圧源41と、重畳部42と、電圧源43と、抵抗R1、R2及びR3とを含んで構成される。
【0037】
交流電圧源41は、例えば、電圧源VINと、電圧源vとを含んで構成される。交流電圧源41は、制御部70の制御に従って、交流電圧を生成し、抵抗R1を介して、生成した交流電圧を重畳部42に供給するか、又は重畳部42への交流電圧の供給を停止する。ここで、交流電圧源41から重畳部42に供給される電圧は、電位VINの分だけ正側にオフセットされた振幅vを有する正弦波の波形を有する交流電圧VIN+vとなる。
【0038】
電圧源VINは、例えば、直流電圧源である。電圧源VINは、制御部70の制御に従って電位VINを生成し、生成した電位VINを電圧源vに供給するか、又は電圧源vへの電位VINの供給を停止する。
【0039】
電圧源vは、制御部70の制御に従って、振幅vである正弦波の波形を有する交流電圧を生成し、抵抗R1を介して、生成した交流電圧を重畳部42に供給するか、あるいは重畳部42への交流電圧の供給を停止する。ここで、正弦波の周波数は、例えば、100kHzであるが、これに限られるものではない。なお、本実施形態では、電圧源vは、正弦波の波形を有する交流電圧を生成するが、これに限られるものではなく、電圧源vは、例えば、矩形波や三角波など周期性のある波形を有する他の交流電圧を生成しても良い。
【0040】
以上のように構成される交流電圧源41は、電位VINの分だけ正側にオフセットされた振幅vを有する正弦波の波形を有する交流電圧VIN+vを生成するが、これに限られるものではない。他の実施形態では、交流電圧源41は、無励磁作動型ブレーキ1がスイッチング駆動により動作する場合、振幅VINである矩形波の交流電圧を生成しても良い。この場合、交流電圧源41は、電圧源VIN及び電圧源vに代えて、振幅VINである矩形波VINを生成する電圧源VIN2(図示せず)を含んで構成される。
【0041】
抵抗R1は、例えば、抵抗素子である。抵抗R1は、一端が交流電圧源41に接続され、他端が抵抗R2の一端とトランジスタTRのゲート端子とに接続される。抵抗R1は、重畳部42に対する入力抵抗として機能する。具体的には、抵抗R1は、交流電圧源41から供給される交流電圧VIN+vを抵抗R1及び抵抗R2で分圧し、分圧した電圧を重畳部42に出力する。
【0042】
抵抗R2は、例えば、抵抗素子である。抵抗R2は、一端が抵抗R1の他端とトランジスタTRのゲート端子とに接続され、他端が基準線W_GNDに接続される。抵抗R2は、重畳部42に対するプルダウン抵抗として機能する。すなわち、抵抗R2は、重畳部42に交流電圧源41から電圧が供給されていない場合に、重畳部42に基準線W_GNDの電位である基準電位GNDを供給することによって、重畳部42への入力が不定状態となることを防ぐ。
【0043】
抵抗R3は、例えば、抵抗素子である。抵抗R3は、測定部50の分流器として機能する。抵抗R3は、測定部50と並列に接続されることによって、測定部50が測定できる電流値の範囲を拡大する。抵抗R3は、一端がトランジスタTRのソース端子と測定部50の2つの入力端子のうちの一方とに接続され、他端が基準線W_GNDに接続される。
【0044】
電圧源43は、例えば、直流電圧源VDDを含んで構成される。直流電圧源VDDは、電磁石駆動電圧である電位VDDを生成し、制御部70の制御に従って、生成した電位VDDを電磁石11の一端に供給するか、又は電磁石11の一端への電位VDDの供給を停止する。なお、電位VDDの値は、交流電圧源41が交流電圧VIN+vを重畳部42に供給する場合、例えば24Vであり、交流電圧源41が矩形波VINを重畳部42に供給する場合、例えば48Vであるが、これに限られるものではない。
【0045】
重畳部42は、電圧源43が生成した電位VDDに対して、交流電圧源41から供給される交流電圧VIN+v又は矩形波VINを重畳し、重畳した交流電圧である重畳電圧を電磁石11に供給する。重畳部42は、例えば、トランジスタTRを含んで構成される。
【0046】
トランジスタTRは、例えば、N型MOSトランジスタである。トランジスタTRは、ゲート端子に入力される電圧に従って、ドレイン端子からソース端子に流れる電流を生成する電圧-電流変換素子として機能する。トランジスタTRは、変換した電流を電磁石11、抵抗R3及び測定部50に供給する。トランジスタTRは、ゲート端子が抵抗R1の他端と抵抗R2の一端とに接続され、ドレイン端子が電磁石11の他端に接続され、ソース端子が抵抗R3の一端と測定部50とに接続される。
【0047】
以上のように構成される重畳部42は、交流電圧源41からトランジスタTRのゲート端子に入力される電圧に従う振幅を有する電流を生成し、電圧源43から電磁石11と、トランジスタTRと、抵抗R3及び測定部50とを介して基準線W_GNDに至る電流経路に当該電流を供給する。これにより、当該電流経路の各素子(電磁石11、トランジスタTR、並びに抵抗R3及び測定部50)の両端には、当該電流及び各素子のインピーダンスに従う電位差が発生する。当該電流には交流電圧源41が供給する交流電圧の交流成分が重畳されているため、電磁石11には、重畳部42から供給される当該電流に含まれる交流成分が重畳された重畳電圧が供給されることとなる。
【0048】
測定部50は、電磁石11に流れる電流の電流値を測定し、測定結果を判定部60に送信する。測定部50は、2つの入力端子のうち一方がトランジスタTRのソース端子と抵抗R3の一端とに接続され、他方が基準線W_GNDに接続され、出力端子が判定部60に接続される。
【0049】
他の実施形態では、測定部50は、電流値が第一の値から第二の値まで遷移するのにかかる時間と、電流値が第二の値から第一の値まで遷移するのにかかる時間とを測定し、測定結果を判定部60に送信する。ここで、第一の値とは、例えば、トランジスタTRのゲート端子に電位VINが供給されている場合に電磁石11に流れる電流IDDに0以上であり1.0未満である第一の係数0.1を乗じた値(すなわち0.1×IDD)である。また、第二の値とは、例えば、電流IDDに第一の係数より大きく1.0以下である第二の係数0.9を乗じた値(すなわち0.9×IDD)である。なお、第一の係数及び第二の係数の値は、一例であり、それぞれ0以上かつ1.0以下であり、さらに第二の係数が第一の係数より大きければ、いずれの値であっても良い。
【0050】
判定部60は、測定部50が測定した測定結果に従って、制動部30のアーマチュア32が電磁石11に吸着しているか否かを判定し、判定結果を制御部70に送信する。具体的には、判定部60は、測定結果が示す電流値が所定の値未満である場合、制動部30のアーマチュア32が電磁石11に吸着していると判定する。また、判定部60は、測定結果が示す電流値が所定の値以上である場合、制動部30のアーマチュア32が電磁石11に吸着していないと判定する。
【0051】
他の実施形態では、判定部60は、測定結果が示す電流値が第一の値から第二の値まで遷移するのにかかる時間が所定の時間以上であり、かつ測定結果が示す電流値が第二の値から第一の値まで遷移するのにかかる時間が所定の時間以上である場合、制動部30のアーマチュア32が電磁石11に吸着していると判定する。また、判定部60は、測定結果が示す電流値が第一の値から第二の値まで遷移するのにかかる時間が所定の時間未満であるか、又は測定結果が示す電流値が第二の値から第一の値まで遷移するのにかかる時間が所定の時間未満である場合、制動部30のアーマチュア32が電磁石11に吸着していないと判定する。
【0052】
制御部70は、判定部60の判定結果に従って、回転子20の回転の制御と、電圧供給部40の制御とを行う。一方、制御部70は、判定部60が制動部30のアーマチュア32が電磁石11に吸着していないと判定する場合、回転子20の回転を停止するか又は回転させないように制御するとともに、交流電圧源41及び電圧源43の電圧の生成及び供給を停止するように電圧供給部40を制御する。他方、制御部70は、判定部60が制動部30のアーマチュア32が電磁石11に吸着していると判定する場合、記憶部(図示しない)から取得した制御プログラムや入力部(図示しない)から取得した制御命令に従って回転子20の回転を制御する。
【0053】
以上、無励磁作動型ブレーキ1の回路構成について説明した。次に、無励磁作動型ブレーキ1における各信号の電流の遷移について詳しく説明する。図4Aは、図1Aに示す無励磁作動型ブレーキ1における各信号の電流の遷移の一例を示すタイミングチャートである。同図(b)の電流波形において、実線は、制動部30のアーマチュア32が電磁石11に吸着している場合の電流波形を示す。また、同図(b)の電流波形において、破線は、制動部30のアーマチュア32が電磁石11に吸着していない場合の電流波形を示す。
【0054】
時刻t30で、制御部70は、交流電圧VIN+vを重畳部42に供給するように交流電圧源41の電圧源VIN及び電圧源vを制御する。これにより、交流電圧源41は、電位VINだけ正方向にオフセットがかかった振幅vである正弦波の波形を有する交流電圧VIN+vを重畳部42に供給する。
【0055】
一方、制動部30のアーマチュア32が電磁石11に吸着していない場合、電磁石11には電流IDDだけ正方向にオフセットがかかった振幅αである正弦波の波形を有する交流電流IDD+αが流れる。他方、制動部30のアーマチュア32が電磁石11に吸着している場合、電磁石11には電流IDDだけ正方向にオフセットがかかった振幅βである正弦波の波形を有する交流電流IDD+βが流れる。ここで、振幅βの値は、アーマチュア32が電磁石11に吸着しているため、アーマチュア32のインピーダンスの影響により、振幅αの値よりも小さくなる。なお、上述した判定部60が判定に用いる所定の値は、振幅βの値以上であり振幅αの値未満であり、例えば、(振幅βの値+振幅αの値)/2などの値である。
【0056】
図4Bは、図1Aに示す無励磁作動型ブレーキ1における各信号の電流の遷移の他の例を示すタイミングチャートである。同図(b)の電流波形において、実線は、制動部30のアーマチュア32が電磁石11に吸着している場合の電流波形を示す。また、同図(b)の電流波形において、破線は、制動部30のアーマチュア32が電磁石11に吸着していない場合の電流波形を示す。
【0057】
時刻t40で、制御部70は、矩形波VINを重畳部42に供給するように交流電圧源41の電圧源VIN2を制御する。これにより、交流電圧源41は、基準電位GNDと電位VINを繰り返す矩形波VINを重畳部42に供給する。時刻t40で、重畳部42に供給される電位は、基準電位GNDから電位VINに遷移する。また、時刻t40で、電磁石11に流れる電流は、0Aから電流値IDDに向かって遷移を開始する。
【0058】
一方、制動部30のアーマチュア32が電磁石11に吸着していない場合、時刻t41で、電磁石11に流れる電流は、電流値IDDに到達する。他方、制動部30のアーマチュア32が電磁石11に吸着している場合、時刻t41より後の時刻である時刻t42で、電磁石11に流れる電流は、電流値IDDに到達する。
【0059】
時刻t43で、重畳部42に供給される電位は、電位VINから基準電位GNDに遷移する。また、時刻t43で、電磁石11に流れる電流は、電流値IDDから0Aに向かって遷移を開始する。
【0060】
一方、制動部30のアーマチュア32が電磁石11に吸着していない場合、時刻t44で、電磁石11に流れる電流は、0Aに到達する。他方、制動部30のアーマチュア32が電磁石11に吸着している場合、時刻t44より後の時刻である時刻t45で、電磁石11に流れる電流は、0Aに到達する。
【0061】
以上、無励磁作動型ブレーキ1における各信号の電流の遷移について説明した。次に、無励磁作動型ブレーキ1の一連の処理の流れについて詳しく説明する。図5は、図1Aに示す無励磁作動型ブレーキ1の一連の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0062】
<無励磁作動型ブレーキ1に係る一連の動作の流れ>
(ステップSP10)
無励磁作動型ブレーキ1は、交流電圧を生成し、生成した交流電圧を重畳部42に供給するように、制御部70によって交流電圧源41を制御する。また、無励磁作動型ブレーキ1は、電磁石駆動電圧である電位VDDを生成し、生成した電位VDDを電磁石11に供給するように、制御部70によって電圧源43を制御する。そして、処理は、ステップSP12の処理に移行する。
【0063】
(ステップSP12)
無励磁作動型ブレーキ1は、測定部50によって、電磁石11に流れる電流の特性を測定する。具体的には、無励磁作動型ブレーキ1は、測定部50によって、電磁石11に流れる電流値を測定する。また、他の実施形態では、無励磁作動型ブレーキ1は、測定部50によって、電磁石11に流れる電流値が第一の値から第二の値まで遷移するのにかかる時間と、電流値が第二の値から第一の値まで遷移するのにかかる時間とを測定する。そして、処理は、ステップSP14の処理に移行する。
【0064】
(ステップSP14)
無励磁作動型ブレーキ1は、判定部60によって、電磁石11に流れる電流の特性が所定の条件を満たすか否かを判定する。具体的には、無励磁作動型ブレーキ1は、判定部60によって、電磁石11に流れる電流値が所定の値未満であるか否かを判定する。他の実施形態では、無励磁作動型ブレーキ1は、判定部60によって、電磁石11に流れる電流値が第一の値から第二の値まで遷移するのにかかる時間が所定の時間以上であり、かつ電流値が第二の値から第一の値まで遷移するのにかかる時間が所定の時間以上であるか否かを判定する。
【0065】
一方、無励磁作動型ブレーキ1が判定部60によって電磁石11に流れる電流の特性が所定の条件を満たすと判定する場合、処理は、ステップSP16の処理に移行する。他方、無励磁作動型ブレーキ1が判定部60によって電磁石11に流れる電流の特性が所定の条件を満たさないと判定する場合、処理は、ステップSP18の処理に移行する。
【0066】
(ステップSP16)
無励磁作動型ブレーキ1は、判定部60によって制動部30のアーマチュア32が電磁石11に吸着しており、無励磁作動型ブレーキ1のロックが解除されている状態(解除状態)であると判定する。また、無励磁作動型ブレーキ1は、当該判定結果をディスプレイやランプなどの出力部(図示しない)から出力し、図5に示す一連の処理の流れを終了する。
【0067】
(ステップSP18)
無励磁作動型ブレーキ1は、判定部60によって制動部30のアーマチュア32が電磁石11に吸着しておらず、無励磁作動型ブレーキ1がロックされている状態(ロック状態)であると判定する。また、無励磁作動型ブレーキ1は、当該判定結果をディスプレイやランプなどの出力部(図示しない)から出力する。そして、処理は、ステップSP20の処理に移行する。
【0068】
(ステップSP20)
無励磁作動型ブレーキ1は、制御部70によって、回転を停止するか、又は回転しないように回転子20を制御する。そして、無励磁作動型ブレーキ1は、図5に示す一連の処理の流れを終了する。
【0069】
<効果>
以上、本実施形態では、無励磁作動型ブレーキ1は、供給される電圧に従って磁力を発生させる電磁石11を有する固定子10と、固定子10の内部に設けられ固定子10に対して回転可能な回転子20と、電磁石11に対向するように固定子10に設けられ、電磁石11が磁力発生状態である場合に回転子20から離間されるとともに電磁石11に対して吸着状態となり、電磁石11が磁力非発生状態である場合に電磁石11に対して非吸着状態となるとともに回転子20に接触し回転子20の回転を固定する制動部30と、電磁石(11)を駆動する電圧に交流電圧が重畳された重畳電圧を電磁石11に供給する電圧供給部40と、電磁石11に流れる電流を測定する測定部50と、測定部50が測定した電流に従って、制動部30が電磁石11に吸着しているか否かを判定する判定部60と、を備える。
【0070】
この構成によれば、無励磁作動型ブレーキ1は、電磁石駆動電圧に交流電圧を重畳した重畳電圧を電磁石11に供給する。そして、無励磁作動型ブレーキ1は、電磁石11に流れる電流を測定し、測定した電流に従って、制動部30のアーマチュア32が電磁石11に吸着しているか否かを判定できる。したがって、無励磁作動型ブレーキ1は、コストを抑制しつつ、無励磁作動型ブレーキ1が回転子20の回転を固定している状態(ロック状態)なのか、回転子20の固定を解除している状態(解除状態)なのかを判定できる。
【0071】
また、本実施形態では、判定部60は、測定部50が測定した電流の振幅が所定の値未満である場合、制動部30が電磁石11に対して吸着状態であると判定し、測定部50が測定した電流の振幅が所定の値以上である場合、制動部30が電磁石11に対して非吸着状態であると判定する。
【0072】
この構成によれば、無励磁作動型ブレーキ1は、電磁石11に流れる電流の振幅の値によって制動部30のアーマチュア32が電磁石11に吸着しているか否かを判定する。したがって、無励磁作動型ブレーキ1は、コストを抑制しつつ、容易に無励磁作動型ブレーキ1が回転子20の回転を固定している状態(ロック状態)なのか、回転子20の固定を解除している状態(解除状態)なのかを判定できる。
【0073】
また、他の実施形態では、判定部60は、測定部50が測定した電流の値が第一の値から第二の値まで遷移する時間が所定の時間以上である場合、制動部30が電磁石11に対して吸着状態であると判定し、測定部50が測定した電流の値が第一の値から第二の値まで遷移する時間が所定の時間未満である場合、制動部30が電磁石11に対して非吸着状態であると判定する。
【0074】
この構成によれば、無励磁作動型ブレーキ1は、無励磁作動型ブレーキ1がスイッチング駆動で動作する場合においても、コストを抑制しつつ、無励磁作動型ブレーキ1が回転子20の回転を固定している状態(ロック状態)なのか、回転子20の固定を解除している状態(解除状態)なのかを判定できる。
【0075】
また、本実施形態では、回転子20の回転を制御し、制動部30が電磁石11に対して非吸着状態であると判定部60が判定する場合、回転を行わないように回転子20を制御する制御部70をさらに備える。
【0076】
この構成によれば、無励磁作動型ブレーキ1は、無励磁作動型ブレーキ1が回転子20の回転を固定している状態(ロック状態)では、回転しないように回転子20を制御する。したがって、無励磁作動型ブレーキ1は、ロック状態で回転を行うことによって回転子20に無理な力が加わることを防止できる。
【0077】
<変形例>
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。すなわち、上記の実施形態に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。また、上記実施形態及び後述する変形例が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【0078】
例えば、上記実施形態では、電磁石駆動電圧である電位VDDを電圧源43から電磁石11に供給し、電磁石11を含む電流経路に流れる電流値を重畳部42で調整することによって、交流電圧が重畳された重畳電圧を電磁石11に供給する場合を説明したが、単に、電圧源43から重畳電圧を直接供給しても良い。
【0079】
この構成によれば、無励磁作動型ブレーキ1は、簡素な構成で、無励磁作動型ブレーキ1が回転子20の回転を固定している状態(ロック状態)なのか、回転子20の固定を解除している状態(解除状態)なのかを判定できる。
【0080】
また、上記実施形態では、測定部50は、電磁石11に流れる電流を測定したが、これに限られるものではない。測定部50は、電磁石11の両端の電位差を測定しても良い。また、判定部60は、測定部50が測定した電位差に従って、制動部30のアーマチュア32が電磁石11に吸着しているか否かを判定しても良い。
【0081】
この構成によれば、無励磁作動型ブレーキ1は、電流の測定が容易でない場合などにおいても、電圧を測定することによって、コストを抑制しつつ、無励磁作動型ブレーキ1が回転子20の回転を固定している状態(ロック状態)なのか、回転子20の固定を解除している状態(解除状態)なのかを判定できる。
【符号の説明】
【0082】
1…無励磁作動型ブレーキ、10…固定子、20…回転子、30…制動部、40…電圧供給部、50…測定部、60…判定部

図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5