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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091951
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】床の設計方法、及び、設計支援装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/13 20200101AFI20230626BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20230626BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20230626BHJP
   E04B 5/43 20060101ALI20230626BHJP
   G06F 119/14 20200101ALN20230626BHJP
【FI】
G06F30/13
G06F30/20
G06Q50/08
E04B5/43 H ESW
G06F119:14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206849
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】山下 仁崇
【テーマコード(参考)】
5B146
5L049
【Fターム(参考)】
5B146AA04
5B146DJ02
5B146DJ11
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】 設計時点で床の振動性能を評価することが可能な床の設計方法、及び、設計支援装置が実現を提供する。
【解決手段】 床パネルと床組とを有する床の設計方法において、仮想的な床を規定した床モデルに対して外力を入力した場合の、床モデルの床における振動の特徴量を推定する。また、実際の床に対して外力を入力した場合の、実際の床の床組における振動に関する指標値と、実際の床における振動に対する人の感性に基づく評価値との第1対応関係を特定する。そして、上記の特徴量の推定結果と、第1対応関係とに基づいて、特徴量と評価値との第2対応関係を特定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床パネルと該床パネルを支持する梁群とを有する床の設計方法であって、
仮想的な前記床を規定した床モデルに対して外力を入力した場合の、前記床モデルの前記梁群における振動の特徴量を推定する工程と、
実際の前記床に対して外力を入力した場合の、実際の前記床の前記梁群における振動に関する指標値と、実際の前記床における振動に対する人の感性に基づく評価値と、の第1対応関係を特定する工程と、
前記特徴量の推定結果と、前記第1対応関係とに基づいて、前記特徴量と前記評価値との第2対応関係を特定する工程と、を含む床の設計方法。
【請求項2】
前記梁群に含まれる梁に振動が生じる場合の前記特徴量と前記梁のたわみ量との関係、及び前記第2対応関係に基づいて、前記たわみ量と前記評価値との第3対応関係を特定する工程と、
設定された前記評価値と対応する前記たわみ量である特定たわみ量を、前記第3対応関係に基づいて導出する工程と、をさらに含む請求項1の床の設計方法。
【請求項3】
前記梁群は、間隔を空けて並べて配置された複数の梁を含み、
前記特徴量を推定する工程では、前記間隔の大きさが異なる複数の前記床モデルの各々について、前記梁群における振動の前記特徴量を推定し、
前記第2対応関係を特定する工程では、前記間隔の大きさ毎に、前記第2対応関係を特定し、
前記特定たわみ量を導出する工程では、選択された前記間隔の大きさと対応する前記第2対応関係に基づいて、前記特定たわみ量を導出する、請求項2に記載の床の設計方法。
【請求項4】
前記床モデルの前記梁群における振動の前記特徴量を推定する工程では、前記床を有する建物の用途に応じた前記床モデルを前記用途毎に構築し、前記用途毎の前記床モデルを用いて、前記床モデルの前記梁群における振動の前記特徴量を前記用途毎に推定し、
前記第2対応関係を特定する工程では、前記用途毎に、前記第2対応関係を特定し、
前記特定たわみ量を導出する工程では、選択された前記用途に応じて前記評価値の設定値を決め、該設定値と、選択された前記用途と対応する前記第3対応関係とに基づいて、前記特定たわみ量を導出する、請求項2又は3に記載の床の設計方法。
【請求項5】
前記第3対応関係を特定する工程では、前記梁群に含まれる梁に生じる振動の前記特徴量と前記梁のたわみ量との関係として、前記梁の一次モードにおける振動数と前記たわみ量との関係を表す式を用いる、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の床の設計方法。
【請求項6】
床パネルと該床パネルを支持する梁群とを有する床の設計に用いられる設計支援装置であって、
仮想的な前記床を規定した床モデルに対して外力を入力した場合の、前記床モデルの前記梁群における振動の特徴量を推定する推定部と、
実際の前記床に対して外力を入力した場合の、実際の前記床の前記梁群における振動に関する指標値と、実際の前記床における振動に対する人の感性に基づく評価値と、の第1対応関係を記憶する第1記憶部と、
前記特徴量の推定結果と前記第1対応関係とに基づいて特定された、前記特徴量と前記評価値との第2対応関係を記憶する第2記憶部と、を備える設計支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床の設計方法及び設計支援装置に係り、特に、床パネルと床パネルを支持する梁群とを有する床の設計方法、及び、当該床の設計に用いられる設計支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の床の性能として、床の振動に関する性能を確保する方法は、従来から開発されてきており、例えば、床組を構成する梁のたわみに対して構造上の制限値を設定する方法、あるいは、たわみ量から推定される振動数に応じて床の振動特性を制御する方法が知られている。
【0003】
上記の方法では、過去の床仕様に基づく経験値が用いられるが、建物の施工計画が変わって床仕様が過去の仕様と異なる場合には、経験値が適用できない場合がある。この場合、たわみの制限値を正確に設定できず、若しくは振動特性を適切に制御できない虞がある。
【0004】
一方、床の振動に対する性能を確保するにあたり、床の振動性能を評価することがある。これまで、床の性能に関する評価方法については、建設会社や住宅メーカ等の各社が、それぞれ独自に開発していた。各社の評価方法は、例えば、事前に床を試作し、試作品を通じて床(つまり、試作品の床)の設計に問題がないか否かを確認するものであった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-219323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、試作品を用いて振動性能を評価する場合には、実際に床を構築するまで、床の振動性能を評価できないことになる。そのため、設計段階で振動性能を評価する方法の開発が求められており、そのような方法が利用できれば、床の設計時点で所望の振動性能を確保することが可能となる。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、設計時点で床の振動性能を評価することが可能な床の設計方法及び設計支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は、本発明の床の設計方法によれば、床パネルと床パネルを支持する梁群とを有する床の設計方法であって、仮想的な床を規定した床モデルに対して外力を入力した場合の、床モデルの梁群における振動の特徴量を推定する工程と、実際の床に対して外力を入力した場合の、実際の床の梁群における振動に関する指標値と、実際の床における振動に対する人の感性に基づく評価値と、の第1対応関係を特定する工程と、特徴量の推定結果と、第1対応関係とに基づいて、特徴量と評価値との第2対応関係を特定する工程と、を含むことで解決される。
【0009】
上記の方法によれば、床パネルを支持する梁群の設計値から、床における振動に対する人の感性に基づく評価値を予測することができる。これにより、床の設計時点で、その床の振動性能を評価することが可能となる。
【0010】
また、本発明の床の設計方法において、梁群に含まれる梁に振動が生じる場合の特徴量と梁のたわみ量との関係、及び前第2対応関係に基づいて、たわみ量と評価値との第3対応関係を特定する工程と、設定された評価値と対応するたわみ量である特定たわみ量を、第3対応関係に基づいて導出する工程と、をさらに含むと、好適である。
上記の方法によれば、設定された評価値と対応するたわみ量(すなわち、特定たわみ量)に基づいて、建物の床を適切に設計することができる。
【0011】
また、本発明の床の設計方法において、梁群は、間隔を空けて並べて配置された複数の梁を含むものとしてもよい。この場合、上記の特徴量を推定する工程では、間隔の大きさが異なる複数の床モデルの各々について、梁群における振動の特徴量を推定するとよい。また、第2対応関係を特定する工程では、間隔の大きさ毎に、第2対応関係を特定するとよい。また、特定たわみ量を導出する工程では、選択された間隔の大きさと対応する第2対応関係に基づいて、特定たわみ量を導出するとよい。
上記の方法によれば、梁同士の間隔の大きさ毎に特定たわみ量を導出するため、床の構造(具体的には、梁組の仕様)に適した特定たわみ量を割り出し、その特定たわみ量に基づいて、床を適切に設計することができる。
【0012】
また、本発明の床の設計方法において、床モデルの梁群における振動の特徴量を推定する工程では、床を有する建物の用途に応じた床モデルを用途毎に構築し、用途毎の床モデルを用いて、床モデルの梁群における振動の特徴量を用途毎に推定してもよい。この場合、第2対応関係を特定する工程では、用途毎に、第2対応関係を特定するとよい。また、特定たわみ量を導出する工程では、選択された用途に応じて評価値の設定値を決め、当該設定値と、選択された用途と対応する第3対応関係とに基づいて、特定たわみ量を導出するとよい。
上記の方法によれば、建物の用途毎に特定たわみ量を導出するため、建設対象の建物の用途に応じた特定たわみ量を求め、その特定たわみ量に基づいて床を適切に設計することができる。
【0013】
また、本発明の床の設計方法において、第3対応関係を特定する工程では、梁群に含まれる梁に生じる振動の特徴量と梁のたわみ量との関係として、梁の一次モードにおける振動数とたわみ量との関係を表す式を用いてもよい。
上記の方法によれば、梁群に含まれる梁に生じる振動の特徴量と梁のたわみ量との関係を適切に特定することができる。
【0014】
また、前述の課題は、本発明の設計支援装置によれば、仮想的な床を規定した床モデルに対して外力を入力した場合の、床モデルの梁群における振動の特徴量を推定する推定部と、実際の床に対して外力を入力した場合の、実際の床の梁群における振動に関する指標値と、実際の床における振動に対する人の感性に基づく評価値と、の第1対応関係を記憶する第1記憶部と、特徴量の推定結果と第1対応関係とに基づいて特定された、特徴量と評価値との第2対応関係を記憶する第2記憶部とを有することで解決される。
上記の設計支援装置を用いることにより、床の設計時点で当該床の振動性能を評価することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、床の設計時点で当該床の振動性能を評価することが可能な床の設計方法、及び、設計支援装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一つの実施形態に係る床の設計手順を示す図である。
図2】本発明の一つの実施形態に係る設計支援装置のハードウェア構成を示す図である。
図3】本発明の一つの実施形態に係る設計支援装置の機能を示す図である。
図4】本発明の一つの実施形態に係る床の設計手順のうち、第1フェーズの流れを示す図である。
図5】本発明の一つの実施形態に用いられる床モデルを示す図である。
図6】第1対応関係の一例を示す図である。
図7】第2対応関係の一例を示す図である。
図8】本発明の一つの実施形態に係る床の設計手順のうち、第2フェーズの流れを示す図である。
図9】第3対応関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一つの実施形態(以下、本実施形態)について、添付の図面を参照しながら説明する。
なお、本明細書に記載する「装置」という概念には、特定の機能を一台で発揮する単一の装置が含まれるとともに、分散してそれぞれが独立して存在しつつも協働(連携)して特定の機能を発揮する複数の装置も含まれることとする。
【0018】
<<本実施形態に係る床の設計方法>>
先ず、本実施形態に係る床の設計方法(以下、床設計方法)について、その概要を説明する。
床設計方法は、建物内に設けられる床の設計方法である。建物としては、例えば、住宅、賃貸用物件、事務所、店舗、施設、又は建屋等のような様々な用途の建物が該当する。また、建物の構造体(躯体)は、木造、鉄骨構造、又は鉄筋コンクリート造(RC構造)のうち、いずれの構造でもよい。
【0019】
床は、床パネルと梁組とによって構成される。床パネルの材質は、特に限定されないが、例えば、軽量気泡コンクリート(Autoclaved Lightweight aerated Concrete: ALC)及びプレキャストコンクリート(Precast Concrete: PCa)等が利用可能である。梁組は、床パネルを支持する梁群であり、桁行方向及び梁間方向において間隔を空けて並べて配置された複数の梁(詳しくは、大梁)によって構成される。
なお、以下では、桁行方向における大梁の間隔を「スパン」とも呼び、梁間方向における大梁の間隔を「ピッチ」とも呼ぶ。ピッチは、床パネルを支持する際に一本の大梁が負担する幅(負担幅)に相当する。
【0020】
床設計方法は、床の振動性能を評価し、その評価結果に基づいて床を設計する。振動性能とは、建物内で生じる振動に関する性能であり、具体的には、日本建築学会で策定された「建築物の振動に関する居住性能評価指針」に則って評価される居住性能である。
【0021】
ところで、従来、所望の振動性能を確保する方法として、例えば、床組を構成する梁のたわみに対して構造上の制限値を設定する方法が知られている。ただし、住宅のような一般的な建物では、床の上を歩いた際の歩行荷重(加振力)が床重量に対して大きくなる場合がある。また、一般的な建物では、床パネルが梁に簡易的に取り付けられ、床組に対する床パネルの固定性が低くなる場合がある。このような場合には、床組と床パネルが一体的に振動せず、それぞれが別体として振動するために、床の振動性能が梁のたわみと対応しなくなる。この結果、たわみに対する制限値を設定しても、その制限値と対応する振動性能を精度よく評価することができない虞がある。
【0022】
一方、上記の理由から、建設会社や住宅メーカ等は、これまで、各社独自に評価方法を開発しているが、各社の評価方法は、床を試作し、試作品を通じて床の仕様を評価するものである。しかし、このような評価方法では、試作品(すなわち、実棟の床)を用いて振動性能を評価するので、実際に床を作成するまで評価できないことになる。
【0023】
これに対して、本実施形態では、設計段階で床の振動性能を評価することができる。すなわち、本実施形態の床設計方法では、所望の振動性能が確保されるように床を設計することが可能である。
【0024】
本実施形態の床設計方法は、図1に示すように、2つのフェーズによって構成されれる。前半のフェーズ(以下、第1フェーズS001)では、モデル化された床の振動をシミュレーションして振動の特徴量(物理的特徴量)を推定するとともに、振動に対する人の感性に基づく評価値(心理的尺度)と上記の特徴量との対応関係を特定する。後半のフェーズ(以下、第2フェーズS002)では、第1フェーズS001によって特定された対応関係に基づいて、所望の評価値が得られる床の設計値(具体的には、後述の特定たわみ量)を導出する。
【0025】
本実施形態では、評価対象の床がロングスパン梁の床であることを前提としている。これは、ロングスパン梁の床とすることで、床の振動に及ぼす床パネルの影響を小さくし、床組に含まれる大梁の振動挙動に基づいて、精度よく振動性能を評価するためである。ここで、ロングスパン梁の床とは、床組においてスパン(間隔)の大きさが所定値以上に設定された床である。ロングスパン梁の床におけるスパンの大きさは、6P以上であることが好ましく、8P以上であることがより好ましい。なお、Pとは、ピッチ及びスパンを設定する際の単位となる長さであり、1Pが約910mm(尺貫法での三尺)に相当する。
【0026】
なお、ロングスパン梁の床では、床組における振動(厳密には、床組を構成する大梁に生じる振動)が支配的になるため、床組における振動を床の振動と同視することができる。そのため、以下では、ロングスパン梁の床の床組における振動、すなわち大梁に生じる振動を、単に「床の振動」とも呼ぶこととする。
【0027】
<<本実施形態に係る設計支援装置について>>
次に、本実施形態において建物の床を設計する際に用いられる設計支援装置(以下、設計支援装置10)について、図2及び3を参照しながら説明する。
設計支援装置10は、コンピュータによって構成され、具体的にはクライアント端末用のコンピュータ、サーバコンピュータ、若しくは、クライアント端末とサーバコンピュータとの組み合わせによって構成される。設計支援装置10は、図2に示すように、プロセッサ11、メモリ12、ストレージ13、入力装置14及び出力装置15を有する。
【0028】
プロセッサ11は、例えばCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、MCU(Micro Controller Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、TPU(Tensor Processing Unit)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって構成される。
メモリ12は、例えばROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等の半導体メモリによって構成される。
【0029】
ストレージ13は、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)、FD(Flexible Disc)、MOディスク(Magneto-Optical disc)、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、SDカード(Secure Digital card)、又はUSBメモリ(Universal Serial Bus memory)等によって構成される。なお、ストレージ13は、設計支援装置10を構成するコンピュータ本体内に内蔵されてもよく、外付け形式でコンピュータ本体に取り付けてもよく、あるいは、ネットワーク上に存在する外部サーバ(例えば、データベースサーバ)によって構成されてもよい。
入力装置14は、例えばキーボード、マウス又はタッチパネル等によって構成される。
出力装置15は、例えばディスプレイ及びスピーカ等によって構成される。
【0030】
また、設計支援装置10を構成するコンピュータには、ソフトウェアとして、オペレーティングシステム(OS)用のプログラム、及び、床設計用のアプリケーションプログラムがインストールされている。
【0031】
設計支援装置10の構成について機能面から改めて説明すると、設計支援装置10は、図3に示すように、推定部21、第1特定部22、第1記憶部23、第2特定部24、第2記憶部25、第3特定部26、第3記憶部27、及び導出部28を有する。これらの機能部は、設計支援装置10を構成するコンピュータに備わるハードウェア機器と、そのコンピュータにインストールされたソフトウェアとしてのプログラムとの協働によって実現される。なお、設計支援装置10が備える上記の各機能部については、後の項で説明することとする。
【0032】
<<床設計フローについて>>
次に、本実施形態の床設計方法を用いて建物の床を設計する手順(以下、床設計フロー)について説明する。
床設計フローの各工程、具体的には図4及び8に示す各ステップは、主として、設計支援装置10によって実施される。なお、床設計フローにおいて、設計支援装置10のユーザ(人)が設計支援装置10を補助してもよく、例えば、床の設計に必要な情報を設計支援装置10が取得する際に、ユーザがその情報を入力装置14により入力してもよい。また、床設計フローには、設計支援装置10の代わりにユーザが実施する工程が含まれてもよく、例えば、後述の第1対応関係を特定するのに必要な試験データ等をユーザが入手してもよい。
【0033】
床設計フローは、前述したように、第1フェーズS001と第2フェーズS002とに分かれる。以下では、各フェーズの流れについて、フェーズ毎に説明することとする。
【0034】
[第1フェーズについて]
第1フェーズS001は、図4に示す流れに従って進行する。第1フェーズS001では、先ず、仮想的な床を規定した床モデルを構築し、床モデルに対して外力を入力した場合の、床モデルの床組における振動の特徴量を推定する(S011)。この工程S011は、設計支援装置10の機能、詳しくは推定部21によって実施される。
【0035】
床モデルは、設計対象の床に生じる振動を解析するために構築される構造モデルであり、例えば、図5に示すように、床の床組(梁群)に含まれる複数の梁の各々を線材としてモデル化した線材モデルである。床モデルを構築するには、梁組を構成する梁の数、梁間の間隔(スパン及びピッチ)の大きさ、梁の断面形状や断面係数等の断面に関する値、並びに、床パネルの材質及び厚み等が必要となり、これらの値は、例えばユーザによって入力される。また、床モデルでは、構造体(床組)以外の要素である床パネルが、床組に作用する荷重(重量)として考慮される。
【0036】
床モデルでは、例えば、梁間のスパンが8P~11Pの範囲内で設定され、且つ、梁間のピッチが3P~6Pの範囲内で設定される。つまり、床モデルは、ロングスパン梁の床として設定される。これにより、床モデルの振動では、床組における振動、厳密には、床組に含まれる大梁のたわみ挙動が支配的となり、床パネル自体の振動による影響を極力小さくすることができる。この結果、床モデルを用いた振動解析では、構造体のみの解析計算を前提とすることができ、信頼性の高い解析結果が得られるようになる。
【0037】
工程S011において、設計支援装置10(詳しくは、推定部21)は、床モデルに対して歩行荷重が加振力として入力された場合に生じる振動の特徴量を推定する。より詳しく説明すると、床組を構成する複数の梁のうち、梁間方向の中央位置に配置された大梁に所定の歩行荷重が入力された場合の特徴量を推定する。振動の特徴量は、床モデルの振動、詳しくは床モデルに含まれる床組における振動に関する物理的な特徴量である。換言すると、振動の特徴量とは、床組に含まれる大梁のたわみ(変形)に関する特徴量であり、具体的には、たわみ振動している大梁の振動数及び加速度等が振動の特徴量に該当する。
【0038】
特徴量の推定(すなわち、振動解析)には、公知の解析手法及び解析用プログラムを利用することができ、その一例としては、(株)構造ソフト製の『SNAP』が挙げられる。ただし、当然ながら、振動解析には、上記以外の解析用プログラムを利用してもよい。
なお、特徴量は、静的計算によって算出(推定)してもよく、あるいは動的計算によって算出(推定)してもよい。
【0039】
また、工程S011は、床モデルにおける梁間の間隔(ピッチやスパン)の大きさを変えて、間隔の大きさ毎に繰り返し実施される。これにより、上記間隔の大きさが異なる複数の床モデルの各々について、床組における振動の特徴量を推定することができる。
また、工程S011を建物の用途毎に実施してもよい。具体的には、用途に応じて床の仕様(例えば、床組についての設定値、及び床パネルの厚みや材質等)を変更し、床モデルを用途毎に構築し、用途毎の床モデルを用いて、床組における振動の特徴量を用途毎に推定してもよい。
【0040】
第1フェーズS001では、図4に示すように、実際の建物の床を用いて行われる振動試験の結果に基づき、床の振動の指標値と評価値との対応関係である第1対応関係を特定する(S012)。この工程S012は、設計支援装置10の機能、詳しくは第1特定部22によって実施される。
なお、図4に示すフローでは、工程S012が工程S011の後に実施されることになっているが、これに限定されず、工程S012が工程S011の前に実施されてもよく、あるいは工程S011と同時期に実施されてもよい。
【0041】
振動試験について説明すると、振動試験では、実際の建物の床(以下、実際の床)の上を人が歩行し、つまり加振力としての歩行荷重が実際の床に対して入力された場合の振動(歩行振動)を測定する。また、振動試験では、実際の床の上に検査員を配置し、歩行振動に対する検査員の感性に基づく評価、詳しくは官能試験を実施する。
なお、振動試験に用いられる床(被験床)は、ロングスパンの床であり、スパンの大きさは、8P以上である。
【0042】
歩行振動の測定では、実際の床の裏面のうち、受振点として設定された箇所に加速度計又は変位計を取り付け、これらの計器によって、各受振点における歩行振動中の加速度又は変位量を一定の時間間隔で測定する。
【0043】
歩行振動に対する官能試験では、検査員の感性によって歩行振動の大きさ、度合い又は規模を数値化する。歩行振動の大きさは、検査員が歩行振動に気付くか、あるいはどの程度大きく感じるかを表す心理的尺度(以下、認知大きさ尺度)によってn段階(nは2以上の自然数)で評価される。認知大きさ尺度は、例えば0~7の8段階とし、数値が大きくなるほど、認知度合いが大きくなる(つまり、振動を大きく感じる)ように設定される。そして、官能試験での評価結果、すなわち、認知大きさ尺度で評価された歩行振動の大きさが、振動に対する評価値となる。
なお、歩行振動に対する心理的尺度としては、検査員にとって歩行振動がどの程度気になるかを表す尺度(気になり具合評価尺度)を用いてもよい。
【0044】
振動試験は、試験対象とする床を変えて複数回実施される。各回の振動試験では、床組における梁間の間隔の大きさ(スパン及びピッチ)、梁の断面形状や断面係数、小梁若しくはパネル受け材の種類及び間隔、並びに、床パネルの質量及び剛性のうち、少なくとも一つの条件を変更する。これにより、様々な条件の下で作成された床について、歩行振動の測定値、及び官能試験の評価値が得られる。
【0045】
なお、振動試験における歩行振動の測定方法、及び官能試験の実施方法については、『横山裕,黒田 瑛一,福田 眞太郎、「剛性の高い床に適用する性能値に関する基礎的検討 木造大スパン床の歩行振動の居住性からみた評価方法(その2)」、日本建築学会論文集、2015年6月、第80巻、第712号、509-518ページ』(以下、「非特許文献1」と略記)に記載の方法を利用してもよい。
【0046】
振動試験における歩行振動の測定値を得た後、測定値から、歩行振動に関する指標値(つまり、実際の床の床組における振動の指標値)を求める。具体的には、測定された歩行振動の加速度の時間変化から、非特許文献1に記載された性能値を求める。詳しくは、加速度の時間変化(すなわち、加速度-時間曲線)に対して時定数処理を実施し、レベル換算された波形から性能値を求める。換算後のレベルとしては、以下に示す2つのレベルwVAL、VL(単位はdB)とが挙げられる。
・wVAL:非特許文献1の513ページに記載された補正式により換算された補正振動加速度レベル(単位はdB)
・VL:加速度-時間曲線を1/3オクターブバンドごとに分離した上で時定数処理して各バンドのレベルを合成した振動レベルVL(単位はdB)
【0047】
性能値としては、各レベルの波形について、下記4つの値V1~V4のいずれか1つ、又は2以上の値の組み合わせを採用してもよい。各性能値V1~V4は、非特許文献1に記載された要領に従って算出することができる。
・性能値V1:各レベルの波形の最大値
・性能値V2:各レベルの波形における1歩ごとの最大値の和
・性能値V3:各レベルの波形において、参照値を超える部分の積分値
・性能値V4:各レベルの波形の最大値に対して、加速度が参照値以上を継続する時間(継続時間)に応じた値を加算した値
【0048】
以上の要領で、複数回の振動試験のそれぞれについて振動の性能値を求めた後、各振動試験にて得られた性能値と評価値(官能試験の結果)とを、2次元座標空間上にプロットする。これを振動試験毎に繰り返すことで、図6に示すように、性能値と評価値との関係を関係図として視覚化することができる。関係図の横軸の値は、性能値(図6では、性能値V2)を表しており、縦軸の値は、評価値を示す認知大きさ尺度を表している。
【0049】
そして、関係図におけるプロットの座標値から、性能値と評価値との関係を近似する近似式を算出する。このように性能値と評価値との関係を近似する近似式を算出することで、性能値と評価値との対応関係、すなわち第1対応関係が特定される。特定された第1対応関係は、設計支援装置10のメモリ12又はストレージ13に記憶され、詳しくは、第1記憶部23に記憶される。また、性能値と評価値との対応関係については、図6に示すように曲線にて近似してもよいし、あるいは直線にて近似してもよく、また、公知の方法により近似式を求めるとよい。
【0050】
以上のように、歩行振動に対する人の感性に基づく評価結果を数値化することで、歩行振動の物理的特徴と心理的尺度との対応関係(つまり、性能値と評価値との第1対応関係)を定量的に把握することができる。そして、本実施形態では、定量化された対応関係を床の設計に反映させることにより、評価値が目標値以下に抑えるように床の仕様を決めることができる。その詳細については、後に説明することとする。
【0051】
第1フェーズS001についての説明に戻ると、第1対応関係を特定した後には、工程S011における特徴量の推定結果と、工程S012で特定した第1対応関係とに基づいて、特徴量と評価値との対応関係である第2対応関係を特定する(S013)。この工程S13は、設計支援装置10の機能、詳しくは第2特定部24によって実施される。
【0052】
工程S013では、床モデルを用いた解析によって推定された振動の特徴量(例えば、応答加速度の時間変化等)を上述の性能値に変換し、変換された性能値を上述の近似式に代入する。これにより、推定された特徴量となる振動に対する評価値が求められる。かかる評価値の算出処理を、工程S011で推定された特徴量のそれぞれについて実行する。
【0053】
以上の要領で、工程S011で推定された特徴量のそれぞれについて、振動の評価値が求められる。その後、特徴量と評価値との組み合わせを2次元座標空間上に特徴量毎にプロットする。これにより、図7に示すように、特徴量と評価値との関係を関係図として視覚化することができる。ここで、関係図の横軸の値は、特徴量を表しており、縦軸の値は、評価値(具体的には、認知大きさ尺度)を表している。なお、図7は、住宅の床であって、ALCボードを床パネルとして用いた床を想定した場合の関係図である。
【0054】
なお、図7では、特徴量として振動数を用いているが、振動の振動数と加速度とは、相互に変換可能であるので、例えば、加速度から評価値を求め、求めた評価値と、加速度から変換された振動数との関係を示す関係図を取得してもよい。反対に、振動数から評価値を求め、求めた評価値と、振動数から変換された加速度との関係を示す関係図を取得してもよい。
【0055】
そして、関係図におけるプロットの座標値から、特徴量と評価値との関係を近似する近似式を算出する。このように特徴量と評価値との関係を近似する近似式を算出することで、特徴量と評価値との対応関係、すなわち第2対応関係が特定される。なお、特定された第2対応関係は、設計支援装置10のメモリ12又はストレージ13に記憶され、詳しくは、第2記憶部25に記憶される。特徴量と評価値との対応関係については、図7に示すように直線にて近似してもよいし、あるいは曲線にて近似してもよく、また、公知の方法により近似式を求めるとよい。
【0056】
第2対応関係が特定されることで、ある評価値が得られる振動の特徴量を導出することができる。これにより、目標とする設定値(許容値)以下に評価値を抑えることができる床組(詳しくは、大梁)の振動数を導出することができる。例えば、図7に示す第2対応関係が得られたケースを想定した場合、ピッチを4.5Pとし、許容値を図7中、横軸と平行な太線で表される値に設定するケースにおいて、評価値を許容値以下にするには、大梁の振動数が10Hz以上になるように床組を設計すればよいことになる。
【0057】
また、第2記憶部25に記憶された第2対応関係、具体的には、特徴量と評価値との関係を近似する近似式は、設計支援装置10の出力装置15であるディスプレイに可視化して表示してもよく、あるいは近似式が示す曲線を含む座標図をプリンタによって印刷してもよい。これにより、床の設計者である設計支援装置10のユーザは、ディスプレイ又は印刷物を見て第2対応関係、つまり特徴量と評価値との対応関係を把握することができ、これを考慮して床を設計することができる。
【0058】
また、工程S011において、梁間の間隔(ピッチ及びスパン)の大きさを変えて、振動の特徴量を間隔の大きさ毎に推定するため、工程S013では、振動の評価値を間隔の大きさ毎に求められる。これにより、図7に示すように、第2対応関係を示す近似式が間隔の大きさ毎に特定されることになる。
なお、図7には、ピッチの大きさを3P、4P及び5Pに変えたときの第2対応関係、すなわち近似直線が示されている。図7から分かるように、ピッチが大きくなるほど、同じ振動数であっても、振動に対する評価値が小さくなる。これは、ピッチが大きくなるほど、床組を構成する各大梁が負担する床パネルの荷重が大きくなり、加振力である歩行荷重が相対的に小さくなることに起因する。
【0059】
また、工程S011では、建物の用途と対応する床の仕様に応じた床モデルを構築し、用途毎に振動の特徴量を推定することができる。この場合、工程S013では、用途毎に振動の評価値を求めることができ、結果として、第2対応関係(詳しくは、第2対応関係を示す近似式)を建物の用途毎に特定することができる。
【0060】
工程S013が終了すると、その時点で、第1フェーズS001が終了する。第1フェーズS001が終了した後には、第2フェーズS002が開始される。第2フェーズS002は、図8に示す流れに従って進行する。
【0061】
第2フェーズS002では、先ず、床組に含まれる大梁に振動が生じる場合の大梁のたわみ量と、床組における振動に対する評価値との対応関係である第3対応関係を特定する(S021)。この工程S021は、設計支援装置10の機能、詳しくは第3特定部26によって実施される。
【0062】
工程S021では、大梁に生じる振動の特徴量と大梁のたわみ量との対応関係、及び、工程S013で特定された第2対応関係に基づいて、第3対応関係を特定する。振動の特徴量と梁のたわみ量との対応関係は、大梁の一次モードにおける振動数(以下、固有振動数)と大梁のたわみ量との対応関係であり、公知の関係式によって表される。公知の関係式は、例えば、建物の固有周期を推定する重力式である。重力式は、構造物の固有振動数が、振動する重さ(質点)と、その重さの動きを制御する剛性とによって決まるという物理的法則から導き出される式であり、重力式を展開することで、固有振動数とたわみ量との関係(厳密には、近似式)を導くことができる。
【0063】
そして、大梁の固有振動数とたわみ量との対応関係を、振動数と評価値との対応関係である第2対応関係と組み合わせることにより、図9に示すたわみ量と評価値との対応関係、すなわち第3対応関係を示す曲線(以下、評価曲線)を得ることができる。図9の横軸の値は、評価値(認定大きさ尺度)を表しており、縦軸の値は、たわみ量を表している。
なお、図9には、住宅の床であって、ALCボードを床パネルとして用いた床を想定した場合の評価曲線が示されている。
【0064】
以上の要領で特定された第3対応関係、具体的には評価曲線を表す式は、設計支援装置10のメモリ12又はストレージ13に記憶され、詳しくは、第3記憶部27に記憶される。
【0065】
また、第1フェーズS001の工程S013では、床組における梁間の間隔の大きさ毎に第2対応関係が特定されるため、これに伴い、工程S021では、評価曲線を間隔の大きさ毎に得ることができる。
なお、図9には、ピッチの大きさを3Pから6Pまで0.5Pずつ変えたときの評価曲線が示されている。
また、工程S013では、建物の用途毎に第2対応関係を特定することができる。この場合、工程S021では、評価曲線を用途毎に得ることができる。
【0066】
第2フェーズS002についての説明に戻ると、第3対応関係を特定した後には、特定たわみ量を第3対応関係に基づいて導出する(S022)。この工程は、設計支援装置10の機能、詳しくは導出部28によって実施される。
【0067】
特定たわみ量とは、設定された評価値、つまり評価値の許容値として設定される設定値と対応するたわみ量であり、分かり易く言うと、評価値を許容値以下に抑えることができるたわみ量の上限値が特定たわみ量に該当する。
【0068】
特定たわみ量を導出する手順について図9を参照しながら説明すると、評価曲線が描画された2次元座標空間において、上記の許容値を通る縦線(図9中、縦軸に平行な太線)と、評価曲線との交点を求める。このとき、梁間の間隔の大きさ毎に評価曲線が存在する場合には、設計対象となる床の仕様に合致した間隔の大きさと対応する評価曲線を選択し、選択された評価曲線について上記の交点を求める。
【0069】
そして、求めた交点の座標から、特定たわみ量が導出される。この特定たわみ量を、大梁のたわみの制限値として設定し、制限値を超えないように床の仕様を決めれば、評価値を許容値以下に抑えることができる。この結果、設計対象の床について所望の振動性能(居住性能)が確保され、そのことを設計段階で確認できるようになる。つまり、本実施形態の床設計方法によれば、床を試作することなく、設計時点で、設計対象の床の振動性能を評価することができる。
なお、特定たわみ量は、評価値を許容値以下にする大梁の振動数、つまり、許容値と第2対応関係とに基づいて導出される大梁の振動数と対応している。
【0070】
上記の要領で導出された特定たわみ量は、設計支援装置10の出力装置15であるディスプレイに可視化して表示してもよい。これにより、床の設計者である設計支援装置10のユーザは、表示された特定たわみ量を確認し、特定たわみ量を考慮して床を設計することができる。なお、特定たわみ量を表示する代わりに、あるいは、特定たわみ量を表示するとともに、上述の評価曲線をディスプレイに表示してもよく、あるいは評価曲線を含む座標図をプリンタによって印刷してもよい。
【0071】
また、建物の用途毎に評価曲線を得た場合には、設計対象となる床を備える建物の用途を選択し、選択された用途に応じて上記の許容値を設定する。その上で、選択された用途と対応する評価曲線と、選択された用途に応じた許容値とに基づき、上述の要領にて特定たわみ量を導出する。これにより、用途に応じた特定たわみ量を導出することができ、結果として、建物の用途を考慮して、所望の振動性能が確保されるように床を設計することができる。
【0072】
以上のように、本実施形態では、第1フェーズS001において、建物の用途、詳しくは用途に応じた床仕様等の各種条件を変えて、床組における振動の特徴量を推定し、推定された特徴量に対応した評価値を求めるこができる。さらに、第2フェーズS002において、それぞれの条件に対する特定たわみ量を導出することができる。これにより、床の設計仕様に関する解析(パラメトリックスタディー)を容易に行うことができる。
【0073】
<<その他の実施形態について>>
以上までに、本発明の床の設計方法、及び設計支援装置に関する一つの実施形態を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得る。また、本発明には、その等価物が含まれることは勿論である。
【0074】
また、上記の実施形態では、第1フェーズS001にて、床組における振動の特徴量と振動に対する評価値との対応関係(第2対応関係)を特定した後、第2フェーズS002にて、第2対応関係に基づいて、設定された評価値に対する特定たわみ量を導出することとした。ただし、これに限定されるものではなく、第2フェーズS002を必ずしも実施しなくてもよい。すなわち、特定たわみ量を導出する代わりに、第1フェーズS001にて特定された第2対応関係を、床の設計者に対して提示してもよい。この場合にも、床の設計者は、提示された第2対応関係を考慮して、所望の振動性能が得られる床を設計することができる。
【0075】
また、上記の実施形態では、振動試験にて得られた性能値と官能試験による評価値との対応関係、すなわち第1対応関係を特定する上で、両者の関係を近似した近似式を求めることとした。同様に、振動の特徴量と評価値との対応関係(第2対応関係)を特定する上で、両者の関係を近似した近似式を求めることとした。ただし、これに限定されず、例えば、複数の性能値のそれぞれについて対応する評価値を求め、性能値と評価値との対応関係をテーブル化して記憶してもよい。同様に、複数の特徴量のそれぞれについて対応する評価値を求め、特徴量と評価値との対応関係をテーブル化して記憶してもよい。
【0076】
また、上記の実施形態では、床モデルの床組における振動の特徴量として、床モデルに対して歩行荷重を入力した際に生じる振動の特徴量を推定することとした。また、第1対応関係として、実際の床の上に対して歩行荷重を入力した際に生じる振動についての指標値と評価値との第1対応関係を特定することとした。ただし、振動の特徴量を推定する場面、又は第1対応関係を特定する場面において、入力される加振力としては、歩行荷重に限定されず、それ以外の荷重(例えば、外部振動)であってもよい。
【符号の説明】
【0077】
10 設計支援装置
11 プロセッサ
12 メモリ
13 ストレージ
14 入力装置
15 出力装置
21 推定部
22 第1特定部
23 第1記憶部
24 第2特定部
25 第2記憶部
26 第3特定部
27 第3記憶部
28 導出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9