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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091970
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】提示装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16B 45/00 20190101AFI20230626BHJP
   G16H 50/20 20180101ALI20230626BHJP
【FI】
G16B45/00
G16H50/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206884
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】521557551
【氏名又は名称】塩津 行正
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】塩津 行正
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】がん遺伝子検査の結果として得られる情報から、一般的な医療関係者であれば理解できる情報を提示する。
【解決手段】提示装置は、がん遺伝子検査により得られる検査結果であって、がん遺伝子の異常に関する核酸情報と、アミノ酸情報と、頻度とを含む前記検査結果を取得する検査結果取得部と、取得した前記検査結果に含まれる遺伝子異常の頻度と、対応する遺伝子異常の価値とに基づいて、遺伝子異常の重要度を算出する算出部と、予め定められたパスウェイに含まれる複数の遺伝子について、前記遺伝子異常の重要度を積算することにより、前記パスウェイ毎のスコアを算出する積算部と、積算された前記スコアに基づいて、遺伝子異常を有する遺伝子が多く含まれる前記パスウェイを提示する提示部とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん遺伝子検査により得られる検査結果であって、がん遺伝子の異常に関する核酸情報と、アミノ酸情報と、頻度とを含む前記検査結果を取得する検査結果取得部と、
取得した前記検査結果に含まれる遺伝子異常の頻度と、遺伝子異常の種類に応じて定められる遺伝子異常の価値とに基づいて、遺伝子異常の重要度を算出する算出部と、
予め定められたパスウェイに含まれる複数の遺伝子について、前記遺伝子異常の重要度を積算することにより、前記パスウェイ毎のスコアを算出する積算部と、
積算された前記スコアに基づいて、遺伝子異常を有する遺伝子が多く含まれる前記パスウェイを提示する提示部と
を備える提示装置。
【請求項2】
前記算出部は、予め選択された複数の遺伝子について、前記遺伝子異常の重要度を算出し、
前記選択された複数の遺伝子は、複数のがん遺伝子パネルにそれぞれ含まれる遺伝子であって、複数のがん遺伝子パネルに重複して含まれる複数の遺伝子のうち少なくとも半数を含む
請求項1に記載の提示装置。
【請求項3】
前記パスウェイは、前記選択された複数の遺伝子に基づいて予め定められる
請求項2に記載の提示装置。
【請求項4】
コンピュータに、
がん遺伝子検査により得られる検査結果であって、がん遺伝子の異常に関する核酸情報と、アミノ酸情報と、頻度とを含む前記検査結果を取得する検査結果取得ステップと、
取得した前記検査結果に含まれる遺伝子異常の頻度と、対応する遺伝子異常の価値とに基づいて、遺伝子異常の重要度を算出する算出ステップと、
予め定められたパスウェイに含まれる複数の遺伝子について、前記遺伝子異常の重要度を積算することにより、前記パスウェイ毎のスコアを算出する積算ステップと、
積算された前記スコアに基づいて、遺伝子異常を有する遺伝子が多く含まれる前記パスウェイを提示する提示ステップと
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、提示装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検査者から採取したサンプルを用いて、異常を有する遺伝子を検査する遺伝子検査技術があった(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-112499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来技術を用いて、がん遺伝子検査が提供されている。がん遺伝子検査の検査結果に示される情報は、遺伝子情報の羅列に過ぎない場合があり、がん遺伝子に詳しくない一般の医療関係者では、容易に検査結果を理解できないといった問題があった。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、がん遺伝子検査の結果として得られる情報から、一般的な医療関係者であれば理解できる情報を提示可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る提示装置は、がん遺伝子検査により得られる検査結果であって、がん遺伝子の異常に関する核酸情報と、アミノ酸情報と、頻度とを含む前記検査結果を取得する検査結果取得部と、取得した前記検査結果に含まれる遺伝子異常の頻度と、遺伝子異常の種類に応じて定められる遺伝子異常の価値とに基づいて、遺伝子異常の重要度を算出する算出部と、予め定められたパスウェイに含まれる複数の遺伝子について、前記遺伝子異常の重要度を積算することにより、前記パスウェイ毎のスコアを算出する積算部と、積算された前記スコアに基づいて、遺伝子異常を有する遺伝子が多く含まれる前記パスウェイを提示する提示部とを備える。
【0007】
また、本発明の一態様に係る提示装置において、前記算出部は、予め選択された複数の遺伝子について、前記遺伝子異常の重要度を算出し、前記選択された複数の遺伝子は、複数のがん遺伝子パネルにそれぞれ含まれる遺伝子であって、複数のがん遺伝子パネルに重複して含まれる複数の遺伝子のうち少なくとも半数を含む。
【0008】
また、本発明の一態様に係る提示装置において、前記パスウェイは、前記選択された複数の遺伝子に基づいて予め定められる。
【0009】
また、本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、がん遺伝子検査により得られる検査結果であって、がん遺伝子の異常に関する核酸情報と、アミノ酸情報と、頻度とを含む前記検査結果を取得する検査結果取得ステップと、取得した前記検査結果に含まれる遺伝子異常の頻度と、対応する遺伝子異常の価値とに基づいて、遺伝子異常の重要度を算出する算出ステップと、予め定められたパスウェイに含まれる複数の遺伝子について、前記遺伝子異常の重要度を積算することにより、前記パスウェイ毎のスコアを算出する積算ステップと、積算された前記スコアに基づいて、遺伝子異常を有する遺伝子が多く含まれる前記パスウェイを提示する提示ステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、がん遺伝子検査の結果として得られる情報から、一般的な医療関係者であれば理解できる情報を提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る提示装置が適用される場合の一例について説明するための図である。
図2】実施形態に係る提示装置の機能構成の一例を示す図である。
図3】実施形態に係る遺伝子の選択の一例について説明するための図である。
図4】実施形態に係るパスウェイの一例について説明するための図である。
図5】実施形態に係るパスウェイの一覧の一例について説明するための図である。
図6】実施形態に係る遺伝子異常の価値の一例を示す図である。
図7】実施形態に係るパスウェイ毎のスコアの一例について説明するための図である。
図8】実施形態に係る提示装置が提示する情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施形態は、以下の実施形態に限られない。
また、本願でいう「XXに基づいて」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また、「XXに基づいて」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば、任意の情報)である。
【0013】
[実施形態]
図1は、実施形態に係る提示装置が適用される場合の一例について説明するための図である。同図を参照しながら、提示装置10が適用される場合の一例について説明する。
提示装置10は、がん遺伝子検査(生体検査)を行うがんゲノム病院、がん遺伝子検査の結果を用いた解析を行う検査会社、又は当該解析結果を用いる医療機関等において用いられる。
【0014】
図1(A)は、提示装置10を用いない場合の一例について説明するための図である。検査会社ICは、被験者からサンプルを取得し、がん遺伝子検査を行う。がん遺伝子検査では、数十個から数百個の遺伝子を解析する。検査会社ICは、検出された遺伝子異常に関する情報をがん遺伝子検査結果IRとして医療関係者MPに提供する。
がん遺伝子検査結果IRには、がん遺伝子の異常に関する核酸情報、アミノ酸情報、及びその頻度等が示される。多くの場合、がん遺伝子検査によって数個から20個程度の遺伝子異常が検出される。
【0015】
ここで、医療関係者MPは、必ずしもがんゲノムについて詳しくない場合がある。がんゲノムについて詳しくない医療関係者MPは、数個から20個程度の遺伝子異常が掲載された個々の検査データを正しく理解できていない場合があった。
【0016】
図1(B)は、提示装置10を用いる場合の一例について説明するための図である。本実施形態において、提示装置10は、検査会社ICから提供されたがん遺伝子検査結果IRに基づいて、がん遺伝子の異常に関する解析を行う。
提示装置10は、がん遺伝子検査結果IRを解析することにより、単なる異常を有する遺伝子情報の羅列から、がんゲノムについて詳しくない医療関係者MPであっても理解可能な情報に変換する。提示装置10は、解析した結果である解析結果ARを医療関係者MPに提示する。
【0017】
[機能構成]
図2は、実施形態に係る提示装置の機能構成の一例を示す図である。同図を参照しながら、提示装置10の機能構成の一例について説明する。
提示装置10は、検査結果取得部110と、算出部120と、積算部130と、提示部140とを備える。
【0018】
検査結果取得部110は、検査会社ICが行うがん遺伝子検査により得られる結果であるがん遺伝子検査結果IRを取得する。がん遺伝子検査結果IRは、がん遺伝子の異常に関する核酸情報と、アミノ酸情報と、頻度とを含む。
ここで、がん遺伝子検査結果IRを、単に検査結果とも記載する。すなわち、検査結果取得部110は、がん遺伝子検査により得られる検査結果であって、がん遺伝子の異常に関する核酸情報と、アミノ酸情報と、頻度とを含む検査結果を取得する。
検査結果取得部110は、取得したがん遺伝子検査結果IRを算出部120に提供する。
【0019】
算出部120は、検査結果取得部110から、がん遺伝子検査結果IRを取得する。算出部120は、取得したがん遺伝子検査結果IRに示される情報に基づいて、遺伝子異常の重要度SOV(Significance of Variants)を算出する。
ここで、遺伝子異常の種類によって、遺伝子異常の重要度SOVが異なる場合がある。遺伝子異常の種類とは、例えば、治療対象となり得る異常、意義が明確でない異常、治療薬が効かなくなる異常、遺伝性の異常等である。遺伝子異常の重要度SOVは、これら異常の種類に応じて算出される。
【0020】
算出部120は、がん遺伝子検査結果IRに含まれる複数の遺伝子のうち、既知の遺伝子パネルに基づいた所定の方法により予め選択された複数の遺伝子について、遺伝子異常の重要度を算出する。
【0021】
より具体的には、算出部120は、取得したがん遺伝子検査結果IRに含まれる遺伝子異常の頻度FOV(Folds of Variants)と、対応する遺伝子異常の価値VOV(Value of Variants)とに基づいて、遺伝子異常の重要度SOVを算出する。
算出部120は、算出した遺伝子異常の重要度SOVを積算部130に提供する。
【0022】
ここで、本実施形態におけるパスウェイ(Pathway)について説明する。パスウェイとは、予め選定された複数の遺伝子を16程度の集団に分類した場合における1つの集団である。予め選定された複数の遺伝子とは、例えば任意に選択された100程度の重要な(コアな)遺伝子であってもよい。本実施形態においてパスウェイは、100程度の重要な遺伝子に基づいて予め定められる。
【0023】
積算部130は、算出部120から、遺伝子異常の重要度SOVを取得する。積算部130は、パスウェイに含まれる複数の遺伝子について、遺伝子異常の重要度SOVを積算する。積算部130は、パスウェイ毎に遺伝子異常の重要度SOVを積算することにより、パスウェイ毎のスコアPSを算出する。パスウェイ毎のスコアPSとは、すなわち、当該パスウェイの異常の程度を示すスコアである。
積算部130は、算出したパスウェイ毎のスコアPSを提示部140に提供する。
【0024】
提示部140は、積算部130から、パスウェイ毎のスコアPSを取得する。提示部140は、取得したパスウェイ毎のスコアPSに基づいて、遺伝子異常を有する遺伝子が多く含まれるパスウェイを提示する。提示部140は、パスウェイ毎のスコアPSを提示してもよい。
具体的には、提示部140は、液晶ディスプレイ等の不図示の表示部に提示してもよいし、スマートフォンやタブレット等の不図示の情報処理装置に送信することにより提示してもよい。
【0025】
[重要な遺伝子の選択]
図3は、実施形態に係る遺伝子の選択の一例について説明するための図である。同図を参照しながら、提示装置10が解析に用いる複数の遺伝子の選択方法の一例について説明する。同図には、がん遺伝子パネル検査に用いられるパネルにそれぞれ含まれる複数の遺伝子が互いに重複する範囲を示す。
【0026】
範囲A1は、Guardant360によるがん遺伝子パネル検査の対象であるがん関連遺伝子の範囲を示す。範囲A1には、74種類の遺伝子が含まれる。範囲A2は、FoundationOne(登録商標)によるがん遺伝子パネル検査の対象であるがん関連遺伝子の範囲を示す。範囲A2には、324種類の遺伝子が含まれる。範囲A3は、PleSSision(登録商標)検査(プレシジョン検査)の対象であるがん関連遺伝子の範囲を示す。範囲A3には、160種類の遺伝子が含まれる。範囲A4は、NCCオンコパネル検査の対象であるがん関連遺伝子の範囲を示す。範囲A4には、114種類の遺伝子が含まれる。
【0027】
範囲A0は、本実施形態に係る提示装置10が解析の対象とするがん関連遺伝子の範囲を示す。本実施形態において、範囲A0は、100程度の遺伝子が選択されている場合の一例について説明する。なお、本実施形態では、100程度の遺伝子が選択される場合の一例に限定されず、80程度でもよいし、105程度でもよい。範囲A0に含まれる遺伝子は、任意に選択されてもよい。
【0028】
なお、提示装置10が解析に用いる複数の遺伝子の範囲は、範囲A1及び範囲A2に基づいて選択されてもよい。好適には、提示装置10が解析に用いる複数の遺伝子の範囲は、更に範囲A3に基づいて選択されてもよい。より好適には、提示装置10が解析に用いる複数の遺伝子の範囲は、更に範囲A4に基づいて選択されてもよい。
【0029】
換言すれば、範囲A1から範囲A4のうち、範囲A1及び範囲A2が特に重要である。例えば、範囲A0は、範囲A1及び範囲A2に含まれる遺伝子から、半分以上が選択されてもよい。具体的には、範囲A0に100程度の遺伝子が含まれる場合、範囲A1及び範囲A2に含まれる遺伝子から50以上の遺伝子が選択されてもよい。より好適には、範囲A0は、範囲A1及び範囲A2に含まれる遺伝子から、8割以上が選択されてもよい。具体的には、範囲A0に100程度の遺伝子が含まれる場合、範囲A1及び範囲A2に含まれる遺伝子から80以上の遺伝子が選択されてもよい。
【0030】
また、範囲A0は、範囲A1及び範囲A2が重複する範囲のうち半分以上を含んでいてもよい。すなわち、範囲A0として選択された複数の遺伝子は、複数のがん遺伝子パネルに重複して含まれる複数の遺伝子のうち少なくとも半数を含んでいてもよい。具体的には、範囲A0に100程度の遺伝子が含まれる場合、範囲A1及び範囲A2が重複する範囲に含まれる遺伝子から50以上の遺伝子が選択されてもよい。
【0031】
範囲A0が範囲A1から範囲A3に基づいて定められる場合、範囲A1から範囲A3が重複する範囲は、全て範囲A0に含まれてもよい。また、範囲A0が範囲A1から範囲A4に基づいて定められる場合、範囲A1から範囲A4が重複する範囲は、全て範囲A0に含まれてもよい。すなわち、それぞれの範囲が重複する遺伝子は、重要な(コアな)遺伝子である。
【0032】
ここで、範囲A4に示されるNCCオンコパネル検査は、日本国内では有名であるが、世界的には必ずしも有名であるとはいえない。そこで、提示装置10が日本国以外の他国で使用される場合、範囲A4には、NCCオンコパネル検査に代えて、提示装置10の使用国における特有の遺伝子パネルを採用してもよい。
【0033】
なお、範囲A1から範囲A4に含まれない遺伝子が、範囲A0に含まれることはない。すなわち、範囲A0として選択された複数の遺伝子は、複数のがん遺伝子パネル(例えば、範囲A1から範囲A4)のいずれかに、それぞれ含まれる。
【0034】
[パスウェイ]
図4は、実施形態に係るパスウェイの一例について説明するための図である。同図を参照しながら、本実施形態におけるパスウェイの一例について説明する。
同図には、上述した方法により選択された遺伝子が示される。本実施形態においては100程度の遺伝子が選択されることが好適だが、同図に示す一例では、遺伝子1から遺伝子42の、42の遺伝子が選択されている。ここで、パスウェイとは、選択された遺伝子同士のつながりである。具体的には、遺伝子を100程度選択した場合、パスウェイは16程度となる。同図に示す一例では、パスウェイPW1からパスウェイPW16までの、16のパスウェイが示されている。
【0035】
ここで、がん遺伝子検査結果IRには、重要な遺伝子と、重要でない遺伝子が含まれる。重要な遺伝子とは、多くのパスウェイを通る遺伝子である。上述した方法では、多くのパスウェイを通る遺伝子を選択しているとも言うことができる。すなわち、パスウェイは、選択された複数の遺伝子に基づいて予め定められる。
換言すれば、重要な遺伝子とは、多くの他の遺伝子との繋がりを有する遺伝子である。図4に示す一例では、遺伝子13は、遺伝子4、遺伝子8、遺伝子12、及び遺伝子24の、4つの遺伝子と繋がりを有するため、重要な遺伝子と言うことができる。同様に、遺伝子24は、遺伝子13、遺伝子20、遺伝子35、及び遺伝子42の、4つの遺伝子と繋がりを有し、遺伝子22は、遺伝子23、遺伝子21、遺伝子27、及び遺伝子28の、4つの遺伝子と繋がりを有し、遺伝子23は、遺伝子22、遺伝子24、遺伝子29、及び遺伝子32の、4つの遺伝子と繋がりを有するため、重要な遺伝子と言うことができる。
【0036】
図5は、実施形態に係るパスウェイの一覧の一例について説明するための図である。同図は、選択された100程度の遺伝子に基づく16のパスウェイを示す。
具体的には、同図には、“ERBB RTK”、“RAS”、“MAP”、“JAK STAT”、“HR(Hormone Receptor)”、“G-protein Others”、“PIK3 AKT”、“Angiogenesis”、“Wnt βCat”、“Epigennetics”、“Cell Cycle Ubiquitin”、“MM(Mismatch) Repair”、“Metabolite Anti-oxidant”、“Apoptosis”、“DNA Repair”及び“ICI(Immuno Check Inhibitor)”の16のパスウェイが示されている。これら16のパスウェイは、例えば図4を参照しながら説明したパスウェイPW1からパスウェイPW16の具体例である。
【0037】
選択された100程度の遺伝子は、図5に示すパスウェイのいずれかに分類される。医療関係者MPは、遺伝子レベルでは、理解できなくとも、パスウェイレベルであれば理解できることがある。すなわち、提示装置10は、遺伝子レベルをパスウェイレベルに変換することにより、医療関係者MPが理解できる形式にすることができる。
【0038】
[スコアの算出]
次に図6及び図7を参照しながら算出部120が行うパスウェイ毎のスコアPSの算出について説明する。
図6は、実施形態に係る遺伝子異常の価値の一例を示す図である。まず、同図を参照しながら、遺伝子異常の価値VOVの一例について説明する。同図は、遺伝子異常を5つに分類した場合の一例について示している。
【0039】
具体的には、図6に示す一例では、遺伝子異常を、“1.Targetable/Actionable Variants”として標的になりそうな異常、“2.Variants between 1 and 3”として1と3の中間である異常、“3.Variants Uncertain Significance (VUS)”として意義が明確でない異常、“4.Resistant Variants”として薬が効かなくなるような異常、“5.Germline Variants”として遺伝性の異常の5つに分類している。
【0040】
遺伝子異常の価値VOVは、上述した5つの遺伝子異常の種類に応じて定められる。具体的には、“1.Targetable/Actionable Variants”の遺伝子異常の価値VOVは“++++”であり、“2.Variants between 1 and 3”の遺伝子異常の価値VOVは“+++”であり、“3.Variants Uncertain Significance (VUS)”の遺伝子異常の価値VOVは“++”であり、“4.Resistant Variants”の遺伝子異常の価値VOVは“――――”であり、“5.Germline Variants”の遺伝子異常の価値VOVは“+”である。
なお、“+”又は“-”の数は価値の大きさを示している。“+”は正の価値を、“-”は負の価値を示している。
なお、遺伝子異常の価値VOVは、重み付けとも記載することができる。
【0041】
なお、本実施形態において、“+”又は“-”の符号を用いて遺伝子異常の価値VOVを表現したが、例えば、“High”、“Mid”又は“Low”のような定性的な形式で表現してもよいし、“-10”から“+10”といった定量的な数値を用いて表現してもよい。
【0042】
次に、算出部120は、遺伝子異常の頻度FOVを算出する。遺伝子異常の頻度FOVは、検出された遺伝子異常の頻度VAFに基づいて、所定の計算により算出される。検出された遺伝子異常の頻度VAFは、検査会社ICから取得したがん遺伝子検査結果IRに含まれる。
算出部120は、選択された100程度の遺伝子について、それぞれ遺伝子異常の頻度FOVを算出する。
【0043】
算出部120は、算出された遺伝子異常の頻度FOVと、遺伝子異常の価値VOVとに基づいて、遺伝子異常の重要度SOVを算出する。具体的には、算出部120は、遺伝子異常の頻度FOVと、遺伝子異常の価値VOVとを乗じることにより、遺伝子異常の重要度SOVを算出してもよい。
算出部120は、選択された100程度の遺伝子について、それぞれ遺伝子異常の重要度SOVを算出する。
【0044】
次に、積算部130は、パスウェイ毎に算出部120により算出された複数の遺伝子異常の重要度SOVを積算することにより、パスウェイ毎のスコアPSを算出する。
図7は、実施形態に係るパスウェイ毎のスコアの一例について説明するための図である。同図を参照しながら、パスウェイ毎のスコアPSの一例について説明する。同図には、一例としてパスウェイが“ERBB”である場合の一例について説明する。パスウェイ“ERBB”は、図4を参照しながら説明したパスウェイPW1からパスウェイPW16のうち、いずれかのパスウェイの一例である。
【0045】
パスウェイ“ERBB”には、“EGFR”、“ERBB2”、“ERBB3”及び“ERBB4”の4つの遺伝子が含まれる。これら遺伝子は、図4を参照しながら説明した遺伝子1から遺伝子42のうち、いずれかの遺伝子の一例である。これら4つの遺伝子のうち“EGFR”、及び“ERBB2”は遺伝子異常を有し、“ERBB3”及び“ERBB4”は遺伝子異常を有しない。
具体的には、“EGFR”についての遺伝子異常の重要度SOVは“10.5”であり、“ERBB2”についての遺伝子異常の重要度SOVは“5.5”である。“ERBB3”及び“ERBB4”は遺伝子異常を有しないため、遺伝子異常の重要度SOVは“0”である。
【0046】
よって、パスウェイ“ERBB”のスコアは、遺伝子異常の重要度SOVを積算した値である“16”となる。パスウェイ毎のスコアPSとは、すなわちパスウェイの異常の度合いであり、数値が大きい程、異常である可能性が高いことを示す。
【0047】
[提示情報]
図8は、実施形態に係る提示装置が提示する情報の一例を示す図である。同図を参照しながら、提示部140が提示する情報の一例について説明する。
提示部140は、例えば、パスウェイ毎のスコアPSをヒートマップ及び数値により提示する。同図には、パスウェイ毎のスコアPSをヒートマップ及び数値により提示した場合の一例を示す。
【0048】
この一例において、パスウェイ“RAS”、パスウェイ“PIK3 AKT”、パスウェイ“Cell Cycle Ubiquitin”及びパスウェイ“DNA Repair”が異常を有する。
遺伝子異常の重要度SOVは、パスウェイ“RAS”が“10”であり、パスウェイ“PIK3 AKT”が“120”であり、パスウェイ“Cell Cycle Ubiquitin”が“60”であり、パスウェイ“DNA Repair”が“0.5”である。
【0049】
提示部140は、例えば遺伝子異常の重要度SOVの値に応じた色で、パスウェイの名称が記載されたセルを表示することにより、ヒートマップとしてパスウェイ毎のスコアPSを表示する。
すなわち、提示装置10は、遺伝子についての情報の羅列であるがん遺伝子検査結果IRを、パスウェイ毎の異常として表示することにより、がん遺伝子について詳しくない医療関係者MPであっても理解できる形式で表示する。
【0050】
なお、提示部140は、パスウェイ毎のスコアPSをヒートマップ及び数値により提示する場合の一例に限定されず、その他の、医療関係者MPがより理解し易い形式により提示してもよい。
【0051】
[実施形態のまとめ]
以上説明した実施形態によれば、提示装置10は、検査結果取得部110を備えることによりがん遺伝子検査結果IRを取得し、算出部120を備えることにより取得したがん遺伝子検査結果IRに含まれる遺伝子異常の頻度FOVと対応する遺伝子異常の価値VOVとに基づいて遺伝子異常の重要度SOVを算出し、積算部130を備えることにより予め定められたパスウェイに含まれる複数の遺伝子について遺伝子異常の重要度SOVを積算しパスウェイ毎のスコアPSを算出し、提示部140を備えることにより積算されたスコアに基づいて、遺伝子異常を有する遺伝子が多く含まれるパスウェイを提示する。すなわち、本実施形態によれば、遺伝子異常について、遺伝子ごとではなくパスウェイ毎に異常を示すことができる。
よって本実施形態によれば、提示装置10は、がん遺伝子検査の結果として得られる情報から、一般的な医療関係者であれば理解できる情報を提示することができる。
【0052】
また、以上説明した実施形態によれば、遺伝子異常の価値VOVは、遺伝子異常の種類に応じて定められる。したがって、提示装置10によれば、パスウェイ毎のスコアPSを算出する際、遺伝子異常の種類に応じた重みづけがされる。したがって、遺伝子異常の価値VOVが高い遺伝子を含むパスウェイのスコアは高くなり、遺伝子異常の価値VOVが低い遺伝子を含むパスウェイのスコアは低くなる。よって、本実施形態によれば、提示装置10は、精度よく、パスウェイ毎の異常を提示することができる。
【0053】
また、以上説明した実施形態によれば、算出部120は、予め選択された複数の遺伝子について、遺伝子異常の重要度SOVを算出する。また、選択された複数の遺伝子は、複数のがん遺伝子パネルにそれぞれ含まれる遺伝子であって、複数のがん遺伝子パネルに重複して含まれる複数の遺伝子のうち少なくとも半数を含む。したがって、本実施形態によれば、重要な(コアな)遺伝子を選択することができる。よって、本実施形態によれば、提示装置10は、容易に、パスウェイ毎の異常を提示することができる。
【0054】
また、以上説明した実施形態によれば、パスウェイは、選択された複数の遺伝子に基づいて予め定められる。したがって、本実施形態によれば、提示装置10は、容易に、パスウェイ毎の異常を提示することができる。
【0055】
なお、上述した実施形態における提示装置10が備える各部の機能の全体あるいはその機能の一部は、これらの機能を実現するためのプログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0056】
また、「コンピュータにより読み取り可能な記録媒体」とは、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶部のことをいう。さらに、「コンピュータにより読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークを介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【符号の説明】
【0057】
10…提示装置、110…検査結果取得部、120…算出部、130…積算部、140…提示部、IC…検査会社、MP…医療関係者、IR…がん遺伝子検査結果、AR…解析結果、FOV…遺伝子異常の頻度、VOV…遺伝子異常の価値、SOV…遺伝子異常の重要度、VAF…検出された遺伝子異常の頻度、PW…パスウェイ、PS…パスウェイ毎のスコア
図1
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図8