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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091990
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/007 20060101AFI20230626BHJP
【FI】
F24F7/007 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206916
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】張 成
(72)【発明者】
【氏名】矢野 聡之
(72)【発明者】
【氏名】小林 佑輔
【テーマコード(参考)】
3L056
【Fターム(参考)】
3L056BD04
3L056BE01
3L056BF06
(57)【要約】
【課題】室利用率が大幅に低下した場合には、余剰エネルギーを有効利用することにより、無駄なエネルギー損失を招くことなく、給気ファンがインバータ制御の下限値よりも低い値で運転されることに起因した不具合の発生を防止する。
【解決手段】空調制御装置9は、全利用室R1~R8への給気に必要な利用室総風量が、給気ファン14をインバータ制御の下限値で運転する場合の下限風量以下になると、給気ファン14をインバータ制御の下限値で運転する下限値運転モードを実行し、下限値運転モードでは、利用室に応じた風量制御装置7,8の必要開放数が、下限値運転モードで開放可能な風量制御装置7,8の上限開放数よりも少ない間は、それらの差に応じた数の未開放の風量制御装置7,8を必要開放数の風量制御装置7,8とともに開放して未利用の室R1~R8を換気する未利用室換気処理を行う。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給気ダクトを介して複数の室に給気する給気ファンと、
前記給気ダクトに並列に接続された前記室のそれぞれへの風量を一定に維持する複数の風量制御装置と、
前記給気ファンを前記室の利用率に基づいてインバータ制御して総給気風量を調節するとともに、前記風量制御装置を制御する空調制御装置とが備えられた空調システムであって、
前記空調制御装置は、
利用される全ての前記室への給気に必要な利用室総風量と、前記給気ファンをインバータ制御の下限値で運転する場合に得られる下限風量とを比較する風量比較処理を行い、
前記風量比較処理にて前記利用室総風量が前記下限風量以下になる場合は、前記給気ファンを前記インバータ制御の下限値で運転する下限値運転モードを実行し、
前記下限値運転モードでは、利用される前記室に応じた前記風量制御装置の必要開放数と、前記下限値運転モードで開放可能な前記風量制御装置の上限開放数とを比較する開放数比較処理を行い、
前記開放数比較処理にて前記必要開放数が前記上限開放数よりも少ない間は、それらの差に応じた数の未開放の前記風量制御装置を前記必要開放数の前記風量制御装置とともに開放して未利用の前記室を換気する未利用室換気処理を行う空調システム。
【請求項2】
前記空調制御装置は、前記未利用室換気処理では、未開放の前記風量制御装置を開放してから所定時間が経過するごとに、前記必要開放数と前記上限開放数との差に応じて開放する未開放の前記風量制御装置を所定順位で切り替えて未利用の前記室を順次換気する請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記空調制御装置は、
前記風量比較処理にて前記利用室総風量が前記下限風量を上回る場合に実行する運転モードとして通常運転モードと未利用室換気併用運転モードとに選択可能に構成され、
前記通常運転モードでは、前記室の利用率に応じて前記総給気風量を調節しながら、利用されるそれぞれの前記室への風量を一定に維持し、
前記未利用室換気併用運転モードでは、前記利用室総風量に所定数の未利用の前記室に供給する風量を加えた未利用室含有総風量に基づいて、前記給気ファンをインバータ制御するとともに前記風量制御装置を制御して、利用中の前記室のそれぞれへの風量を一定に維持しながら、所定数の未利用の前記室に対応する未開放の前記風量制御装置を開放して未利用の前記室を換気する請求項1又は2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記空調制御装置は、前記未利用室換気併用運転モードでは、未開放の前記風量制御装置を開放してから所定時間が経過するごとに、所定数の未利用の前記室に対応して開放する未開放の前記風量制御装置を所定順位で切り替えて未利用の前記室を順次換気する請求項3に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給気ダクトを介して複数の室に給気する給気ファンと、前記給気ダクトに並列に接続された前記室のそれぞれへの風量を一定に維持する複数の風量制御装置と、前記給気ファンを前記室の利用率に基づいてインバータ制御して総給気風量を調節するとともに、前記風量制御装置を制御する空調制御装置とが備えられた空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景技術としては、部屋の使用状況に応じて、給気ダクトを介して多数の部屋に給気する給気ファンをインバータ制御して総給気風量を調節するとともに、給気ダクトと部屋との間に設けられた多数の給気ダンパの開閉を制御する技術がある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
又、給気通路を介して第1の部屋と第2の部屋とに給気する給気ファンをインバータ制御するとともに、給気通路に設けられた第1の定風量装置と第2の定風量装置により、第1の部屋と第2の部屋とに一定の風量を給気する技術がある(例えば特許文献2参照)。
【0004】
更に、給気側主風路と複数の給気側分岐風路とを介して複数の対象室に給気する給気用ファンをインバータ制御するとともに、各給気側分岐風路に介装された定風量装置により各対象室への風量を目標風量に調整する技術がある(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-108427号公報
【特許文献2】特許第5360844号公報
【特許文献3】特許第4428753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、複数の室が備えられたホテルやオフィスビルなどにおいては、感染症対策に向けた人流抑制などの影響により、室の利用率が大幅に低下する場合がある。
このような室利用率の大幅な低下が、給気ファンがインバータ制御される空調システムが設置されたホテルやオフィスビルなどにおいて生じると、利用される各室への給気に必要な利用室総風量が、給気ファンをインバータ制御の下限値で運転する場合に得られる下限風量を下回る場合がある。
このような場合に、例えば、給気ファンをインバータ制御の下限値よりも低い値(回転数)で運転すると、給気ファンのモータが発熱する、又は、インバータ出力が不安定になる、などの不具合を招くことがある。又、この不具合を回避するために給気ファンをインバータ制御の下限値で運転すると、無駄にエネルギーを損失する不具合を招くことになる。
【0007】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、室利用率が大幅に低下した場合には、余剰エネルギーを有効利用することにより、無駄なエネルギー損失を招くことなく、給気ファンがインバータ制御の下限値よりも低い値で運転されることに起因した不具合の発生を防止する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1特徴構成は、給気ダクトを介して複数の室に給気する給気ファンと、
前記給気ダクトに並列に接続された前記室のそれぞれへの風量を一定に維持する複数の風量制御装置と、
前記給気ファンを前記室の利用率に基づいてインバータ制御して総給気風量を調節するとともに、前記風量制御装置を制御する空調制御装置とが備えられた空調システムであって、
前記空調制御装置は、
利用される全ての前記室への給気に必要な利用室総風量と、前記給気ファンをインバータ制御の下限値で運転する場合に得られる下限風量とを比較する風量比較処理を行い、
前記風量比較処理にて前記利用室総風量が前記下限風量以下になる場合は、前記給気ファンを前記インバータ制御の下限値で運転する下限値運転モードを実行し、
前記下限値運転モードでは、利用される前記室に応じた前記風量制御装置の必要開放数と、前記下限値運転モードで開放可能な前記風量制御装置の上限開放数とを比較する開放数比較処理を行い、
前記開放数比較処理にて前記必要開放数が前記上限開放数よりも少ない間は、それらの差に応じた数の未開放の前記風量制御装置を前記必要開放数の前記風量制御装置とともに開放して未利用の前記室を換気する未利用室換気処理を行う点にある。
【0009】
本構成によると、室の利用率が大幅に低下することで、前述した利用室総風量が下限風量以下になると、空調制御装置が給気ファンを前述した下限値運転モードで運転し、この下限値運転モードにおいて、前述した風量制御装置の必要開放数と上限開放数とに差が生じると、その差が生じている間は、空調制御装置が前述した未利用室換気処理を行う。
これにより、給気ファンをインバータ制御の下限値よりも低い値(回転数)で運転する場合に招くことのある、給気ファンのモータが発熱する、又は、インバータ出力が不安定になる、などの不具合の発生を回避することができる。
又、このときの運転で発生する給気ファンからの余剰風量は未利用室の換気に有効利用されることから、無駄なエネルギー損失を回避することができる。
その結果、室利用率が大幅に低下しても、無駄なエネルギー損失を招くことなく、各利用室への給気を適正な状態に維持することができるとともに、未利用室の換気を自動的に行うことができ、感染症対策を含めた未利用室の衛生面での改善を合理的に行うことができる。
【0010】
本発明の第2特徴構成は、前記空調制御装置は、前記未利用室換気処理では、未開放の前記風量制御装置を開放してから所定時間が経過するごとに、前記必要開放数と前記上限開放数との差に応じて開放する未開放の前記風量制御装置を所定順位で切り替えて未利用の前記室を順次換気する点にある。
【0011】
本構成によると、室利用率の大幅な低下で前述した未利用室換気処理が継続されている間は、空調制御装置が、所定時間が経過するごとに換気する未利用室を自動的に順次切り替えることから、無駄なエネルギー損失を招くことなく、複数の未利用室を好適に換気することができる。
その結果、未利用室の衛生面での改善をより合理的に行うことができる。
【0012】
本発明の第3特徴構成は、前記空調制御装置は、
前記風量比較処理にて前記利用室総風量が前記下限風量を上回る場合に実行する運転モードとして通常運転モードと未利用室換気併用運転モードとに選択可能に構成され、
前記通常運転モードでは、前記室の利用率に応じて前記総給気風量を調節しながら、利用されるそれぞれの前記室への風量を一定に維持し、
前記未利用室換気併用運転モードでは、前記利用室総風量に所定数の未利用の前記室に供給する風量を加えた未利用室含有総風量に基づいて、前記給気ファンをインバータ制御するとともに前記風量制御装置を制御して、利用中の前記室のそれぞれへの風量を一定に維持しながら、所定数の未利用の前記室に対応する未開放の前記風量制御装置を開放して未利用の前記室を換気する点にある。
【0013】
本構成によると、運転モードとして未利用室換気併用運転モードを選択することにより、室の利用率が高い場合にも、空調制御装置が未利用室の換気を行うようになる。
その結果、未利用室の衛生面での改善をより効果的に行うことができる。
【0014】
本発明の第4特徴構成は、前記空調制御装置は、前記未利用室換気併用運転モードでは、未開放の前記風量制御装置を開放してから所定時間が経過するごとに、所定数の未利用の前記室に対応して開放する未開放の前記風量制御装置を所定順位で切り替えて未利用の前記室を順次換気する点にある。
【0015】
本構成によると、運転モードとして未利用室換気併用運転モードを選択すれば、室の利用率が高い場合にも、空調制御装置が、所定時間が経過するごとに換気する未利用室を自動的に順次切り替えるようになる。
その結果、未利用室の衛生面での改善をより効果的かつ合理的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】通常運転モードと未利用室換気併用運転モードの通常運転状態での客室の空調制御状態を示す説明図
図2】未利用室換気併用運転モードの第2未利用室換気併用運転状態での客室の空調制御状態を示す説明図
図3】下限値運転モードでの客室の空調制御状態を示す説明図
図4】客室空調制御での空調制御装置の制御作動を示すフローチャート
図5】客室空調制御での空調制御装置の制御作動を示すフローチャート
図6】客室空調制御での空調制御装置の制御作動を示すフローチャート
図7】客室空調制御での空調制御装置の制御作動を示すフローチャート
図8】客室空調制御での空調制御装置の制御作動を示すフローチャート
図9】別実施形態の客室空調制御での空調制御装置の制御作動を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明にかかる空調システムを、複数の室として複数の客室が備えられた宿泊施設の一例であるホテルに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
尚、本発明にかかる空調システムは、ホテル以外の宿泊施設や、複数の室として複数のオフィスや会議室などが備えられたオフィスビルなどに適用することができる。
【0018】
本実施形態で例示する空調システムには、図1~3に示すように、複数の客室R1~R8に供給する空調空気の温度や湿度などを調整する空調機としてのAHU(エアハンドリングユニット)1と、AHU1に冷水又は温水などの熱媒体を循環供給する熱源機2と、AHU1に外気を導く外気ダクト3と、AHU1からの空調空気を各客室R1~R8に導く給気ダクト4と、各客室R1~R8内の空気を屋外に導く排気ダクト5と、排気ダクト5を介して各客室R1~R8内の空気を室外に排出する排気ファン6とが備えられている。更に、空調システムには、給気ダクト4に並列に接続された各客室R1~R8への風量を一定に維持する客室数に応じた複数のCAVユニット(給気用の定風量制御装置の一例)7と、排気ダクト5に並列に接続された各客室R1~R8からの風量を一定に維持する客室数に応じた複数のCAVユニット(排気用の定風量制御装置の一例)8と、空調システムの客室空調制御を司る空調制御装置9と、空調制御装置9に対する客室空調制御に必要な情報の手動入力を可能にする入力機器(図示せず)などが備えられている。
【0019】
尚、本実施形態では、本発明にかかる空調システムを理解し易くするために、図1~3に示すように、本発明にかかる空調システムを、各客室R1~R8の広さが同じで、各客室R1~R8における給気用と排気用の各CAVユニット7,8の装備数が1台ずつに設定されたホテルに適用した場合を例示するが、これに限らず、本発明にかかる空調システムは、例えば、広さの異なる複数の客室が混在し、各客室の広さに応じて各客室での各CAVユニット7,8の装備数が異なるホテルなどに適用することも可能である。
又、空調システムとしては、例えば、各客室R1~R8からの排気をAHU1に返す還気ダクトなどが備えられたものであってもよく、給気用と排気用の各風量制御装置7,8としては、CAVユニットに限らず、例えば、VAVユニット(可変風量制御装置)やモータダンパなどを採用することができる。
【0020】
図示は省略するが、各CAVユニット7,8には、それらの内部を通る風量を調節するダンパと、ダンパの開度を調節する電動モータと、各CAVユニット7,8内での風速を検出する風速センサと、風速センサの検出などに基づいて電動モータの作動を制御してダンパの開度を調節する制御装置などが備えられている。
【0021】
図1~3に示すように、AHU1には、外気に含まれた塵埃などを捕集するエアフィルタ11と、各客室R1~R8に供給する空調空気の温度を熱源機2からの熱媒体との熱交換で調節する熱交換器12と、各客室R1~R8に供給する空調空気の湿度を熱源機2からの蒸気で調節する加湿器13と、給気ダクト4を介して各客室R1~R8に空調空気を供給する給気ファン14などが備えられている。
【0022】
空調制御装置9は、ホテル内の各システムを統括して監視制御する中央監視装置20に通信ネットワークにて通信可能に接続されている。空調制御装置9は、入力機器や中央監視装置20などから得られる空調システムの客室空調制御に関する各種の情報に基づいて、客室R1~R8の利用率(以下、客室利用率と称する)の算出などを行い、算出した客室利用率などに基づいて、給気ファン14と排気ファン6とをインバータ制御して、給気ファン14からの総給気風量と排気ファン6による総排気風量とを調節するとともに、給気用と排気用の各CAVユニット7,8を制御して各客室R1~R8のエアバランスを調整する。
【0023】
給気ファン14及び排気ファン6には、それらをインバータ制御する場合の下限値が設定されており、この下限値以上の値で給気ファン14及び排気ファン6を運転することにより、ファンモータの発熱やインバータ出力の不安定化などの不具合の発生を回避することができる。
【0024】
尚、空調システムとしては、排気ファン6を備えずに各客室R1~R8のエアバランスを適正に調整することが可能であれば、排気ファン6が備えられていないものであってもよい。
【0025】
空調制御装置9には、空調システムの客室空調制御に必要な各種の情報などが記憶された記憶部(図示せず)が備えられている。記憶部には、各種の情報として、例えば客室利用率などに応じた好適な客室空調制御を可能にする複数の運転モード、各客室R1~R8に応じて個別に設定された適正風量や各CAVユニット7,8の装備数、各客室R1~R8に応じた各CAVユニット7,8の識別情報、給気ファン14及び排気ファン6をインバータ制御する場合の下限値、給気ファン14及び排気ファン6をインバータ制御の下限値で運転した場合に得られる下限風量、及び、その下限風量で開放可能な各CAVユニット7,8の上限開放数などが記憶されている。
【0026】
尚、本実施形態では、前述したように、本発明にかかる空調システムが適用されるホテルとして、各客室R1~R8の広さが同じで、各客室R1~R8に給気用と排気用の各CAVユニット7,8が1台ずつ備えられているものを例示することから、記憶部に記憶されている各客室R1~R8の適正風量は同じであり、各客室R1~R8における各CAVユニット7,8の装備数は1台である。又、下限風量で開放可能な各CAVユニット7,8の上限開放数は2台とする。
【0027】
空調制御装置9の記憶部には、複数の運転モードとして通常運転モード(図1参照)と未利用室換気併用運転モード(図1~2参照)と下限値運転モード(図3参照)とが備えられている。通常運転モードと未利用室換気併用運転モードは、利用される客室(図1~2ではR2、R5、R6)への給気に必要な利用室総風量が前述した下限風量を上回る場合に実行される運転モードであり、ホテルの管理者などが、入力機器に備えられた運転モード選択部(図示せず)を操作することで択一的に選択することができる。下限値運転モードは、利用室総風量が下限風量以下になる場合に実行される運転モードである。又、記憶部には、未利用室換気併用運転モードにおいて換気される未利用客室数として予め設定された設定換気室数や、未利用室換気併用運転モード及び下限値運転モードなどで使用する未利用客室の換気順位などが記憶されている。
【0028】
尚、本実施形態では、図1~3に示すように、未利用室換気併用運転モードでの設定換気室数を2部屋とし、未利用客室の換気順位は、部屋番号の大きいものから順に換気するように設定されているものを例示するが、これに限らず、例えば、設定換気室数としては、1部屋のみ又は3部屋以上であってもよく、又、利用客室数が少なくなると設定換気室数が多くなるように利用客室数に応じて増減されるものであってもよい。未利用客室の換気順位は、例えば、部屋番号の小さいものから順に、又は、狭い部屋から順に換気するように設定されていてもよい。
【0029】
以下、図1~3の説明図と図4~8のフローチャートに基づいて、空調システムの客室空調制御における空調制御装置9の制御作動について説明する。
【0030】
空調制御装置9は、図4に示すように、先ず客室空調制御に必要な各種の情報を取得する情報取得処理を行い(ステップ#1)、取得した情報などに基づいて、利用される全客室(図1~2では客室R2、R5、R6、図3では客室R2)への給気に必要な利用室総風量や客室利用率などを算出する算出処理を行う(ステップ#2)。具体的には、空調制御装置9は、情報取得処理においては、例えば、中央監視装置20を介してホテルの客室予約システムが保有している各客室R1~R8の予約情報を受け取り、受け取った予約情報に基づいて、現時点での利用・未利用客室の部屋数や部屋番号などの各種の情報を取得する。そして、算出処理においては、記憶部に記憶されている各客室R1~R8の適正風量と情報取得処理にて取得した利用客室の部屋数と部屋番号とに基づいて利用室総風量を算出する。又、情報取得処理にて取得した全客室のうちの利用客室の部屋数に基づいて客室利用率を算出する。
【0031】
尚、情報取得処理においては、各客室R1~R8の予約情報以外に、例えば、ホテルの入退室管理システムが保有しているフロントの端末機で入力された各客室R1~R8のチェックイン・チェックアウト情報や、各客室R1~R8に備えられたカードリーダなどによる各客室R1~R8の入退室情報などに基づいて、各種の情報を取得するようにしてもよい。
又、各客室R1~R8のエアバランスを調整する上において、各客室R1~R8への給気風量は各客室R1~R8からの排気風量と同じであることから、上記の算出処理で算出した利用室総風量は、利用される各客室への総給気風量であるとともに利用される各客室からの総排気風量となる。
【0032】
次に、空調制御装置9は、算出処理にて算出した利用室総風量と記憶部に記憶されている下限風量とを比較する風量比較処理を行う(ステップ#3)。具体的には、この風量比較処理では、利用室総風量と下限風量とを比較して利用室総風量が下限風量を上回るか否かを判別する。
【0033】
空調制御装置9は、風量比較処理にて利用室総風量が下限風量を上回る場合(図4のステップ#3にてYesの場合)は、運転モード選択部にて選択されている運転モードを判別する運転モード判別処理を行う(ステップ#4)。具体的には、前述したように、運転モード選択部にて選択される運転モードが通常運転モード又は未利用室換気併用運転モードであることから、この運転モード判別処理では、選択されている運転モードが通常運転モードか否かを判別する。そして、この運転モード判別処理にて運転モードが通常運転モードである場合(図4のステップ#4にてYesの場合)は、空調システムの運転モードを通常運転モードに切り替える通常運転モード切り替え処理を行い(ステップ#5)、運転モードが通常運転モードでない場合(図4のステップ#4にてNoの場合)は、選択されている運転モードが未利用室換気併用運転モードであることから、空調システムの運転モードを未利用室換気併用運転モードに切り替える未利用室換気併用運転モード切り替え処理を行う(ステップ#6)。
【0034】
空調制御装置9は、ステップ#3の風量比較処理にて利用室総風量が下限風量を上回らない場合(図4のステップ#3にてNoの場合)は、利用室総風量が下限風量以下であることから、空調システムの運転モードを下限値運転モードに切り替える下限値運転モード切り替え処理を行う(ステップ#7)。
【0035】
空調制御装置9は、通常運転モードでは、図4に示すように、算出処理にて算出した利用室総風量に基づいて、給気ファン14と排気ファン6とをインバータ制御して、給気ファン14の総給気風量と排気ファン6の総排気風量とを調節する総風量調節処理を行う(ステップ#8)。又、情報取得処理にて取得した利用・未利用客室の各部屋番号と記憶部に記憶されている各CAVユニット7,8の識別情報とに基づいて、利用客室(図1のR2、R5、R6)に応じた各CAVユニット7,8を開放するとともに未利用客室(図1のR1、R3、R4、R7、R8)に応じた各CAVユニット7,8を閉鎖して利用客室への風量を一定に維持する利用室風量維持処理を行う(ステップ#9)。
これにより、通常運転モードでは、客室利用率に応じて給気ファン14の総給気風量と排気ファン6の総排気風量とを調節しながら、利用客室への風量を一定に維持する通常運転状態で空調システムが運転される。
【0036】
空調制御装置9は、未利用室換気併用運転モードでは、図5~6に示すように、先ず、前述した総風量調節処理と利用室風量維持処理とを行い(ステップ#10,11)、これにより、空調システムを前述した通常運転状態で運転する(図1参照)。又、情報取得処理にて取得した未利用客室の部屋数から未利用客室が存在するか否かを判別する未利用室判別処理を行い(ステップ#12)、未利用客室が存在しない場合(図5のステップ#12にてNoの場合で満室の場合)は、前述した総風量調節処理と利用室風量維持処理とを継続し(ステップ#13)、これにより通常運転状態を継続する。
【0037】
空調制御装置9は、未利用室判別処理にて未利用客室が存在する場合(図5のステップ#12にてYesの場合)は、存在する未利用客室の未利用時間が換気を要する所定時間を経過したか否かを判別する経過時間判別処理を行い(ステップ#14)、未利用時間が所定時間を経過していない場合(図5のステップ#14にてNoの場合)は、前述した総風量調節処理と利用室風量維持処理とを継続し(ステップ#13)、これにより、未利用時間が換気を要する所定時間を経過するまでの間は通常運転状態を継続する。
【0038】
空調制御装置9は、経過時間判別処理にて未利用時間が所定時間を経過すると(図5のステップ#14にてYesの場合)、存在する未利用客室の部屋数(以下、存在未利用客室数と称する)と記憶部に記憶されている設定換気室数とを比較する室数比較処理を行う(ステップ#15)。具体的には、この室数比較処理では、存在未利用客室数(図1では5部屋)と設定換気室数(本実施形態では2部屋)とを比較して存在未利用客室数が設定換気室数以下か否かを判別する。
【0039】
空調制御装置9は、室数比較処理にて存在未利用客室数が設定換気室数以下の場合(ステップ#15にてYesの場合で本実施形態では存在未利用客室数が1~2部屋の場合)は、存在する未利用客室に応じた適正風量を未利用室総風量として算出するとともに、この未利用室総風量を前述した利用室総風量に加えた第1未利用室含有総風量を算出する第1未利用室含有総風量算出処理を行い(ステップ#16)、算出した第1未利用室含有総風量に基づいて給気ファン14と排気ファン6とをインバータ制御することで、給気ファン14の総給気風量と排気ファン6の総排気風量とを、利用客室の部屋数に存在未利用客室数を加えた風量調節対象室数と各風量調節対象室に対する適正風量とを考慮した適正な風量に調節する第1未利用室含有総風量調節処理を行う(ステップ#17)。又、情報取得処理にて取得した未利用客室の各部屋番号と、記憶部に記憶されている各CAVユニット7,8の識別情報とに基づいて、利用客室に応じた各CAVユニット7,8に加えて、所定数の未利用客室に応じた各CAVユニット7,8を開放して未利用客室を換気する第1未利用室換気処理を開始する(ステップ#18)。
これにより、空調システムの運転状態を、通常運転状態から、各利用客室に対する給排風量を適正風量で一定に維持しながら存在未利用客室数(所定数)の未利用客室を換気する第1未利用室換気併用運転状態に切り替えることができる。
【0040】
その後、空調制御装置9は、第1未利用室換気併用運転状態に切り替わってから所定の換気時間が経過したか否かを判別する経過時間判別処理を行い(ステップ#19)、所定の換気時間が経過していない場合(図5のステップ#19にてNoの場合)は、所定の換気時間が経過するまで第1未利用室換気併用運転状態を継続する。そして、所定の換気時間が経過した場合(図5のステップ#19にてYesの場合)は、所定数の未利用客室に応じた各CAVユニット7,8を閉鎖して第1未利用室換気処理を終了し(ステップ#20)、前述した総風量調節処理を行い(ステップ#21)、これにより、空調システムの運転状態を第1未利用室換気併用運転状態から通常運転状態に切り替える。
【0041】
空調制御装置9は、ステップ#15の室数比較処理にて未利用客室の部屋数が設定換気室数よりも多い場合(図5のステップ#15にてNoの場合)は、図7に示すように、記憶部に記憶されている未利用客室の換気順位に基づいて、現段階で換気順位の最も高い設定換気室数の未利用客室(図2の客室R7,R8)に応じた適正風量を未利用室総風量として算出するとともに、この未利用室総風量を前述した利用室総風量に加えた第2未利用室含有総風量を算出する第2未利用室含有総風量算出処理を行い(ステップ#22)、算出した第2未利用室含有総風量に基づいて給気ファン14と排気ファン6とをインバータ制御することで、給気ファン14の総給気風量と排気ファン6の総排気風量とを、利用客室の部屋数に設定換気室数の未利用客室を加えた風量調節対象室数と、各風量調節対象室に対する適正風量とから得られる風量に調節する第2未利用室含有総風量調節処理を行う(ステップ#23)。又、情報取得処理にて取得した未利用客室の各部屋番号と、記憶部に記憶されている各CAVユニット7,8の識別情報と未利用客室の換気順位とに基づいて、利用客室に応じた各CAVユニット7,8に加えて、現段階で換気順位の最も高い設定換気室数の未利用客室(図2の客室R7,R8)に応じた各CAVユニット7,8を開放して、換気順位の最も高い設定換気室数の未利用客室を換気する第2未利用室換気処理を開始する(ステップ#24)。
これにより、空調システムの運転状態を、通常運転状態(図1参照)から、各利用客室に対する給排風量を適正風量で一定に維持しながら換気順位の最も高い設定換気室数(所定数)の未利用客室を換気する第2未利用室換気併用運転状態(図2参照)に切り替えることができる。
【0042】
その後、空調制御装置9は、未利用客室に応じた各CAVユニット7,8を開放してから所定の換気時間が経過したか否かを判別する経過時間判別処理を行い(ステップ#25)、所定の換気時間が経過していない場合(図7のステップ#25にてNoの場合)は、所定の換気時間が経過するまで第2未利用室換気併用運転状態を継続する。そして、所定の換気時間が経過した場合(図7のステップ#25にてYesの場合)は、開放した未利用客室の各CAVユニット7,8を閉鎖するCAVユニット閉鎖処理と、換気順位が3番目以降の未利用客室の順位を順次繰り上げるとともに換気後の未利用客室の順位を最下位にして更新する換気順位更新処理と、前述した未利用室判別処理とを行い(ステップ#26~28)、未利用室判別処理にて未利用客室が存在する場合(図7のステップ#28にてYesの場合)は、図5のステップ#15の室数比較処理に遷移する。
これにより、未利用室換気併用運転モードにおいて未利用客室の部屋数が設定換気室数よりも多い間は、図2に示すように、各利用客室に対する給排風量を適正風量で一定に維持しながら、設定換気室数の未利用客室を所定の順位で自動的に換気する状態を循環して行うことができる。
【0043】
空調制御装置9は、ステップ#28の未利用室判別処理にて未利用客室が存在しない場合(図7のステップ#28にてNoの場合で満室の場合)は前述した総風量調節処理を行い(ステップ#29)、これにより、空調システムの運転状態を第2未利用室換気併用運転状態から通常運転状態に切り替える。
【0044】
空調制御装置9は、下限値運転モードでは、図8に示すように、給気ファン14と排気ファン6とをインバータ制御の下限値で運転する下限値運転処理を行う(ステップ#30)。又、情報取得処理にて取得した利用客室の各部屋番号と記憶部に記憶されている各CAVユニット7,8の識別情報とに基づいて、利用客室(図3のR2)に応じた各CAVユニット7,8の必要開放数を算出する必要開放数算出処理を行い(ステップ#31)、算出した必要開放数と記憶部に記憶された各CAVユニット7,8の上限開放数とを比較する開放数比較処理を行う(ステップ#32)。具体的には、この開放数比較処理では、各CAVユニット7,8の必要開放数と上限開放数(本実施形態では2台)とを比較して、必要開放数が上限開放数と同じか否かを判別する。そして、開放数比較処理にて各CAVユニット7,8の必要開放数が上限開放数と同じである場合(図8のステップ#32にてYesの場合)は、利用客室に応じた各CAVユニット7,8を開放するとともに未利用客室に応じた各CAVユニット7,8を閉鎖して利用客室への風量を一定に維持する利用室風量維持処理を行う(ステップ#33)。
【0045】
空調制御装置9は、ステップ#32の開放数比較処理にて各CAVユニット7,8の必要開放数が上限開放数よりも少ない場合(図8のステップ#32にてNoの場合)は、それらの差を算出する差数算出処理を行うとともに、前述した利用室風量維持処理を行う(ステップ#34,35)。又、算出した差数と、情報取得処理にて取得した利用・未利用客室の各部屋番号と、記憶部に記憶されている各CAVユニット7,8の識別情報と未利用客室の換気順位とに基づいて、ステップ#35の利用室風量維持処理では未開放となる未利用客室に応じた各CAVユニット7,8のうち、現段階で換気順位の最も高い未利用客室(図3の客室R8)の各CAVユニット7,8を開放してこの未利用客室を換気する第3未利用室換気処理を開始する(ステップ#36)。その後、換気順位の最も高い未利用客室に応じた各CAVユニット7,8を開放してから所定の換気時間が経過したか否かを判別する前述した経過時間判別処理を行い(ステップ#37)、所定の換気時間が経過していない場合(図8のステップ#37にてNoの場合)は、所定の換気時間が経過するまで第3未利用室換気処理を継続する。そして、所定の換気時間が経過した場合(図8のステップ#37にてYesの場合)、開放した未利用客室の各CAVユニット7,8を閉鎖するCAVユニット閉鎖処理と、換気順位が2番目以降の未利用客室の順位を順次繰り上げて更新する換気順位更新処理とを行う(ステップ#38,39)。
これにより、全利用客室への給気に必要な利用室総風量が給気ファン14及び排気ファン6をインバータ制御の下限値で運転した場合に得られる下限風量以下になる場合には、空調システムの運転モードが下限値運転モード(図3参照)に切り替えられ、この下限値運転モードにおいて、利用客室に応じた各CAVユニット7,8の必要開放数が、下限値運転モードでの各CAVユニット7,8の上限開放数よりも少ない間は、図3に示すように、それらの差に応じた数の未開放の各CAVユニット7,8を、必要開放数の各CAVユニット7,8とともに開放して未利用客室を換気することができるのに加えて、換気順位の最も高い未利用客室に応じた各CAVユニット7,8を開放してから所定の換気時間が経過するごとに、必要開放数と上限開放数との差に応じて開放する未開放の各CAVユニット7,8を所定の換気順位で切り替えて未利用客室を順次換気することができる。
【0046】
要するに、本実施形態で例示する空調システムにおいては、空調制御装置9が、全利用客室への給気に必要な利用室総風量と、給気ファン14と排気ファン6とをインバータ制御の下限値で運転する場合に得られる下限風量とを比較する風量比較処理を行い、この風量比較処理にて利用室総風量が下限風量以下になる場合は、給気ファン14と排気ファン6とをインバータ制御の下限値で運転する下限値運転モードを実行し、この下限値運転モードでは、利用客室に応じた各CAVユニット7,8の必要開放数と、下限値運転モードで開放可能な各CAVユニット7,8の上限開放数とを比較する開放数比較処理を行い、この開放数比較処理にて必要開放数が上限開放数よりも少ない間は、それらの差に応じた数の未開放の各CAVユニット7,8を必要開放数の各CAVユニット7,8とともに開放して未利用客室を換気する第3未利用室換気処理を行うように構成されている。そして、この第3未利用室換気処理では、空調制御装置9が、未開放の各CAVユニット7,8を開放してから所定の換気時間(所定時間)が経過するごとに、必要開放数と上限開放数との差に応じて開放する未開放の各CAVユニット7,8を所定順位で切り替えて未利用客室を順次換気するように構成されている。
【0047】
上記の構成により、ホテルでの客室利用率が大幅に低下することで、全利用客室への給気に必要な利用室総風量が下限風量以下になると、空調制御装置9が、給気ファン14と排気ファン6とを下限値運転モードで運転し、この下限値運転モードにおいて、各CAVユニット7,8の必要開放数と上限開放数とに差が生じると、その差が生じている間は、空調制御装置9が、所定の換気時間が経過するごとに換気する未利用客室を自動的に順次切り替える第3未利用室換気処理を行う。
【0048】
これにより、給気ファン14と排気ファン6とをインバータ制御の下限値よりも低い値で運転する場合に招くことのある、給気ファン14及び排気ファン6のモータが発熱する、又は、インバータ出力が不安定になる、などの不具合の発生を回避することができる。
【0049】
又、このときの運転で発生する給気ファン14及び排気ファン6からの余剰風量は未利用客室の換気に有効利用されることから、無駄なエネルギー損失を回避することができる。
【0050】
その結果、客室利用率が大幅に低下しても、無駄なエネルギー損失を招くことなく、各利用客室への給気を適正な状態に維持することができるとともに、未利用客室の換気を自動的に行うことができ、感染症対策を含めた未利用客室の衛生面での改善を合理的に行うことができる。
【0051】
又、本実施形態で例示する空調システムにおいては、全利用客室への給気に必要な利用室総風量が下限風量を上回る場合に実行する運転モードとして通常運転モードと未利用室換気併用運転モードとに選択可能に構成され、未利用室換気併用運転モードでは、空調制御装置9が、前述した利用室総風量に所定数の未利用客室に供給する風量を加えた未利用室含有総風量に基づいて、給気ファン14と排気ファン6とをインバータ制御するとともに各CAVユニット7,8を制御して、各利用客室への風量を一定に維持しながら、所定数の未利用客室に対応する未開放の各CAVユニット7,8を開放して未利用客室を換気する第1未利用室換気処理又は第2未利用室換気処理を行うように構成されている。そして、第2未利用室換気処理では、空調制御装置9が、未開放の各CAVユニット7,8を開放してから所定の換気時間(所定時間)が経過するごとに、所定数の未利用客室に対応して開放する未開放の各CAVユニット7,8を所定順位で切り替えて未利用客室を順次換気するように構成されている。
【0052】
これにより、全利用客室への給気に必要な利用室総風量が下限風量を上回る場合であっても、運転モードとして未利用室換気併用運転モードを選択することにより、客室利用率が高い場合にも、空調制御装置9が未利用客室の換気を行うようになり、第2未利用室換気処理では、換気される未利用客室が所定の換気時間が経過するごとに自動的に順次切り替えられることから、未利用室の衛生面での改善を効果的かつ合理的に行うことができる。
【0053】
〔別実施形態〕
本発明の別実施形態について説明する。
尚、以下に説明する各別実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、上記の実施形態や他の別実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0054】
(1)上記の実施形態においては、第2未利用室換気処理及び第3未利用室換気処理として、空調制御装置9が、未開放の各CAVユニット(風量制御装置)7,8を開放してから所定の換気時間(所定時間)が経過するごとに、未開放の各CAVユニット(風量制御装置)7,8を所定順位で切り替えて未利用の室を順次換気するものを例示したが、これに限らず、例えば、管理者にて任意に選択された未利用の室を換気するものであってもよい。
【0055】
(2)上記の実施形態においては、未利用室換気併用運転モードとして、未利用客室の部屋数が設定換気室数よりも多い場合に行われる未利用客室の換気モードが、未利用客室の換気を所定の順位で循環させる循環換気モードとなるものを例示したが、これに限らず、例えば、未利用客室の換気モードが、未利用客室の換気を所定の順位で一巡させる一巡換気モードとなるものであってもよい。
【0056】
(3)上記の実施形態においては、未利用室換気併用運転モードとして、未利用客室の部屋数が設定換気室数よりも多い場合に行われる未利用客室の換気モードが1つ(循環換気モード)のものを例示したが、これに限らず、例えば、未利用客室の換気モードが、未利用客室の換気を所定の順位で一巡させる一巡換気モードと、未利用客室の換気を所定の順位で循環させる循環換気モードとに選択可能に構成されたものであってもよい。
【0057】
上記の構成について詳述すると、空調制御装置9の記憶部には、前述した未利用客室の換気モードとして、一巡換気モードと循環換気モードとが備えられ、これらの選択は、例えば、ホテルの管理者などが、入力機器に備えられた換気モード選択部を操作することで択一的に行うことができる。
【0058】
以下、図9のフローチャートに基づいて、前述した未利用客室の換気モードの切り替えに関する空調制御装置9の制御作動について説明する。
尚、図9のフローチャートは、上記の実施形態で例示した客室空調制御のうち、図7のフローチャートに記載したステップ#28~29をステップ#40~43に変更したものであることから、以下には、前述した客室空調制御において、図7のステップ#24にて第2未利用室換気処理が開始されて、空調システムの運転状態が、通常運転状態から第2未利用室換気併用運転状態に切り替えられた段階から説明する。
【0059】
空調制御装置9は、ステップ#24にて第2未利用室換気処理が開始されると、未利用客室に応じた各CAVユニット7,8を開放してから所定の換気時間が経過したか否かを判別する経過時間判別処理を行い(ステップ#25)、所定の換気時間が経過していない場合(図9のステップ#25にてNoの場合)は、所定の換気時間が経過するまで第2未利用室換気併用運転状態を継続する。そして、所定の換気時間が経過した場合(図9のステップ#25にてYesの場合)は、開放した未利用客室の各CAVユニット7,8を閉鎖するCAVユニット閉鎖処理と、換気順位が3番目以降の未利用客室の順位を順次繰り上げるとともに換気後の未利用客室の順位を最下位にして更新する換気順位更新処理と、未利用客室の換気が所定の順位で一巡したか否かを判別する換気一巡判別処理とを行う(ステップ#26~27,#40)。そして、未利用客室の換気が一巡していない場合(図9のステップ#40にてNoの場合)は、前述した未利用室判別処理を行い(ステップ#41)、未利用室判別処理にて未利用客室が存在する場合(図9のステップ#41にてYesの場合)は、図5のステップ#15の室数比較処理に遷移して、未利用客室の換気を継続する。
【0060】
空調制御装置9は、ステップ#40の換気一巡判別処理にて未利用客室の換気が一巡している場合(図9のステップ#40にてYesの場合)は、換気モード選択部にて選択されている換気モードを判別する換気モード判別処理を行う(ステップ#42)。具体的には、前述したように、換気モード選択部にて選択される換気モードが一巡換気モード又は循環換気モードであることから、この換気モード判別処理では、選択されている運転モードが一巡換気モードか否かを判別する。そして、この換気モード判別処理にて換気モードが一巡換気モードである場合(図9のステップ#42にてYesの場合)は、前述した総風量調節処理を行い(ステップ#43)、これにより、空調システムの運転状態を第2未利用室換気併用運転状態から通常運転状態に切り替えて未利用客室の換気を終了する。
【0061】
空調制御装置9は、ステップ#42の換気モード判別処理にて換気モードが一巡換気モードでない場合(図9のステップ#42にてNoの場合)は、選択されている換気モードが循環換気モードであることから、ステップ#41の未利用室判別処理に遷移し、未利用室判別処理にて未利用客室が存在する場合(図9のステップ#41にてYesの場合)は、図5のステップ#15の室数比較処理に遷移して、未利用客室の換気を継続する。
【0062】
空調制御装置9は、ステップ#41の未利用室判別処理にて未利用客室が存在しない場合(図9のステップ#41にてNoの場合で満室の場合)はステップ#43の総風量調節処理に遷移し、これにより、空調システムの運転状態を第2未利用室換気併用運転状態から通常運転状態に切り替える。
【0063】
つまり、未利用室換気併用運転モードにおいて、未利用客室の換気モードとして一巡換気モードが選択されている場合は、未利用客室の部屋数が設定換気室数よりも多ければ、未利用客室の換気が所定の順位で一巡するまでの間は、空調システムの運転状態として第2未利用室換気併用運転状態が継続されることから、図2に示すように、各利用客室に対する給排風量を適正風量で一定に維持しながら、設定換気室数の未利用客室を所定の順位で自動的に換気することができる。そして、未利用客室の換気が一巡すると、空調システムの運転状態が第2未利用室換気併用運転状態から通常運転状態に切り替わることで、未利用客室の換気が自動的に終了する。
【0064】
一方、未利用室換気併用運転モードにおいて循環換気モードが選択されている場合は、未利用客室の部屋数が設定換気室数よりも多ければ、その間、第2未利用室換気併用運転状態が継続されることから、各利用客室に対する給排風量を適正風量で一定に維持しながら、設定換気室数の未利用客室を所定の順位で自動的に換気する状態を循環して行うことができる。この点から、例えば、客室数の多い大規模のホテルにおいて客室利用率が長期的に低下する場合には、循環換気モードを選択することで、未利用客室の換気を定期的に設定換気室数ずつ行えるようになり、感染症対策を含めた未利用室の衛生面での改善を合理的に行うことができる。
【符号の説明】
【0065】
4 給気ダクト
7 CAVユニット(風量制御装置)
8 CAVユニット(風量制御装置)
9 空調制御装置
14 給気ファン
R1 客室(室)
R8 客室(室)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9