(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092012
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】バックアップ材、及びガラス戸
(51)【国際特許分類】
E06B 3/54 20060101AFI20230626BHJP
E06B 3/06 20060101ALI20230626BHJP
E06B 5/16 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
E06B3/54 Z
E06B3/06
E06B5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206956
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】506054811
【氏名又は名称】ハイランド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】金子 正道
(72)【発明者】
【氏名】角 義衛
【テーマコード(参考)】
2E014
2E016
2E239
【Fターム(参考)】
2E014AA03
2E014BB00
2E016AA02
2E016AA03
2E016AA04
2E016BA00
2E016CA01
2E016CB01
2E016CC01
2E016CC02
2E016DA06
2E016DA07
2E016DD01
2E239CA04
2E239CA23
2E239CA30
2E239CA46
2E239CA66
(57)【要約】
【課題】ガラス戸のサッシの美粧性を保つことができ、サッシ枠に装着する作業の効率を向上できるバックアップ材、及びガラス戸を提供すること。
【解決手段】バックアップ材5は、ガラス戸100のサッシ枠1の溝1aに装着される。バックアップ材5は、一方向に長く、長手方向に直交する断面が矩形状である基材7と、基材7の長手方向に沿う一面に設けられた、基材7と異なる色調のシート8と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス戸のサッシ枠に装着されるバックアップ材であって、
一方向に長く、長手方向に直交する断面が矩形状である基材と、
前記基材の前記長手方向に沿う一面に設けられた、前記基材と異なる色調のシートと、
を備えるバックアップ材。
【請求項2】
前記基材は、無機繊維を含み、
前記基材の前記無機繊維の重量組成が85重量%以上であることを特徴とする請求項1に記載のバックアップ材。
【請求項3】
前記シートは樹脂製不織布であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のバックアップ材。
【請求項4】
前記シートは、厚みが0.1~0.6mmであり、目付が30~70g/m2であるポリプロピレン製長繊維不織布であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のバックアップ材。
【請求項5】
前記サッシ枠の色はグレー色、シルバー色、または黒色であり、
前記シートの色は前記サッシ枠と同じ色または同系色である、
請求項1~4のいずれか1項に記載のバックアップ材。
【請求項6】
前記シートの色は、白と異なる色である、請求項1~4のいずれか1項に記載のバックアップ材。
【請求項7】
溝を有するサッシ枠と、
前記溝内に配置されるガラス板と、
前記溝の内側面と前記ガラス板との間に、前記シートが前記ガラス板に向く姿勢で装着される請求項1~6のいずれか1項に記載のバックアップ材と、
を備えるガラス戸。
【請求項8】
前記ガラス板は、2枚が前記溝の間に空間層を有して幅方向に並んで配置され、
前記2枚の前記ガラス板の間にスペーサが設けられ、
前記バックアップ材は、前記溝の内側面と一方の前記ガラス板の間、及び、前記溝の内側面と他方の前記ガラス板の間の双方にそれぞれ設けられる、請求項7に記載のガラス戸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス戸のサッシ枠に装着されるバックアップ材、及びガラス戸に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス戸サッシは、サッシ枠の溝内に組み込まれたガラス板とサッシ枠の溝の内側面との間にバックアップ材を装着してガラス板を保持し、バックアップ材にシーリング材を塗布してガラス板とサッシ枠の隙間をシールする構造が知られている。
【0003】
一般的なガラス戸では、グレー色に着色した丸棒状または角棒状の発泡ポリエチレン製のバックアップ材が多く用いられている。一方、防火ガラス戸では、無機繊維を含む不燃性バックアップ材が用いられる。不燃性のバックアップ材を用いることで、火災時にもガラス板を保持できるので、ガラス戸からの延焼を防止できる。
【0004】
不燃性のバックアップ材として、ポリエステル不織布層と無機繊維層とを接合し、バックアップ材全体に繊維間結合材を含浸して固化させたバックアップ材が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガラス戸サッシには、単層ガラス構造、及び複層ガラス構造があり、近年では複層ガラス構造のガラス戸サッシが普及している。複層ガラス構造のガラス戸サッシでは、複数のガラス板の間にスペーサが配置され、複数のガラス板の間が空間層となっている。
【0007】
この為、サッシ枠の溝内において、スペーサに比較してバックアップ材が浅いと、換言すると、サッシの溝の底面に対するスペーサの高さに比較してバックアップ材の高さが高いと、バックアップ材がガラス板を通して見え易くなる。
【0008】
防火ガラス戸サッシに用いる不燃性バックアップ材は、着色が困難な無機繊維を主成分とするため例えば白色系の色調になっている。この為、バックアップ材がガラス板を通して見える場合、白色系のバックアップ材がガラス板を通して見えてしまうため、見栄えが良くないという問題があった。
【0009】
また、バックアップ材は、例えば矩形板状のマットを裁断加工することで断面が矩形状の角棒状に形成される。バックアップ材はガラス板を保持する機能があり、ガラス板とサッシ枠の溝の内側面との隙間寸法に合った寸法のバックアップ材を選定し、正しい姿勢で装着する必要がある。しかしながら、角棒状のバックアップ材は、丸棒状のバックアップ材と異なり、サッシ枠の溝に嵌め込む際の正しい姿勢であるか否かがわかりにくいという問題があった。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みて為されたもので、ガラス戸のサッシの美粧性を保つことができ、サッシ枠に装着する作業の効率を向上できるバックアップ材、及びガラス戸を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のバックアップ材は、ガラス戸のサッシ枠に装着されるバックアップ材であって、一方向に長く、長手方向に直交する断面が矩形状である基材と、前記基材の前記長手方向に沿う一面に設けられた、前記基材と異なる色調のシートと、を備える。
【0012】
本発明のガラス戸は、溝を有するサッシ枠と、前記溝内に配置されるガラス板と、前記溝の内側面と前記ガラス板との間に、前記シートが前記ガラス板に向く姿勢で装着される上述のバックアップ材と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明のバックアップ材は、ガラス戸のサッシの美粧性を保つことができ、サッシ枠に装着する作業の効率を向上できるバックアップ材、及びガラス戸を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るガラス戸の構成を示す斜視図。
【
図3】同ガラス戸のバックアップ材の構成を示す斜視図。
【
図4】同バックアップ材の製造に用いられる第1装置の構成を模式的に示す説明図。
【
図5】同バックアップ材の製造に用いられる第2装置の構成を模式的に示す説明図。
【
図6】同バックアップ材の製造方法の一例を説明する図。
【
図7】同バックアップ材の変形例の構成を模式的に示す側面図。
【
図8】同バックアップ材の変形例の構成を模式的に示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係るバックアップ材5及びガラス戸100を、
図1乃至
図8を用いて説明する。
【0016】
図1は、ガラス戸100の構成を示す斜視図である。
図2は、ガラス戸100の構成を示す断面図である。
図3は、ガラス戸100のバックアップ材5のシート8の構成を示す斜視図である。
【0017】
本実施形態では、ガラス戸100は、不燃性のバックアップ材を備える構成を一例に説明する。
図1及び
図2に示すように、ガラス戸100は、例えば、サッシ枠1と、セッティングブロック2と、ガラス板3と、スペーサ4と、バックアップ材5と、シーリング材6と、を備えている。
【0018】
サッシ枠1は、建物の壁に形成される窓枠に設けられる。サッシ枠1は、枠形状に形成される。サッシ枠1は、溝1aを有する。溝1aは、セッティングブロック2、ガラス板3の一部、スペーサ4、バックアップ材5、及びシーリング材6を配置可能に形成される。溝1aは、底面1bと、一対の内側面1cと、を有する。
【0019】
セッティングブロック2は、サッシ枠1の溝1aの底面1bに固定される。ガラス板3は、1枚または複数枚用いられる。ガラス板3は、本実施形態では例えば2枚用いられる。2枚のガラス板3は、溝1aの幅方向に並び、セッティングブロック2上に載置される。スペーサ4は、2枚のガラス板3間の端部に設置されている。2枚のガラス板3同志の間は空間層9となっている。
【0020】
バックアップ材5は、ガラス板3と溝1aの内側面1cとの間に、シート8がガラス板3に接する姿勢で嵌め込まれる。バックアップ材5は、ガラス板3を保持する。本実施形態では、ガラス板3が2枚用いられることから、バックアップ材5は、溝1aの一方の内側面1cと一方のガラス板3との間、及び、溝1aの他方の内側面1cと他方のガラス板3との間、の双方にそれぞれ設けられる。
【0021】
図3に示すように、バックアップ材5は、基材7と、シート8と、を備える。バックアップ材5は、一方向に長く、長手方向に直交する断面が矩形状に形成された基材7の、長手方向に沿う1つの外面にシート8が設けられた構成を有している。バックアップ材5は、シート8がガラス板3に対向する姿勢で、サッシ枠1の溝1aに設けられる。
【0022】
バックアップ材5の寸法は、例えば、厚みTが3mm~20mm、幅Wが4mm~20mm、長さが100mm~1500mmである。厚みTは、バックアップ材5のシート8の外面、及び当該シート8の外面に対して反対側の外面となる基材7の外面の間の寸法である。幅Wは、バックアップ材5の厚み方向と直交する方向の寸法である。バックアップ材5の厚み方向は、本実施形態の例では、基材7の材料となるマット7aの厚み方向である。バックアップ材5の幅方向は、本実施形態の例では、マット7aの主面に沿う方向であり、厚み方向に直交する方向である。なお、バックアップ材5の形状や寸法はこれに限定されるものではない。バックアップ材5は、本実施形態の例では、厚み方向がバックアップ材5とガラス板3とが並ぶ方向に沿い、幅方向が溝1aの深さ方向に沿う姿勢で、サッシ枠1に設けられる。
【0023】
基材7は、例えば、バックアップ材5を防火ガラス戸に用いることを可能とする材料で形成される。基材7は、例えば無機繊維を含む。基材7中の無機繊維の重量組成が85重量%以上であることが好ましく、基材7中の無機繊維の重量組成が90重量%以上であることがさらに好ましい。
【0024】
基材7に用いる無機繊維としては、ガラス繊維、セラミック繊維、ロックウールなどの長繊維あるいは短繊維を挙げることができる。無機繊維は、中でも、ガラス繊維、セラミック繊維が好ましい。なお、無機繊維は、これらに限定されるものではない。
【0025】
さらに基材7の硬度を上げ、取り扱い時の形状を安定させるため、有機バインダを用いて基材7の繊維間の結合状態を高めることができる。有機バインダとしては、デンプン系バインダのほか、水溶性樹脂などを用いることができる。
【0026】
ガラス戸100のバックアップ材5は、ガラス戸100のサッシ枠1の溝1aに嵌め込まれたガラス板3を固定し、風圧などの外力に耐える必要があるため、圧縮硬さと圧縮回復性が求められる。すなわち、バックアップ材5の圧縮硬さが小さいと、ガラス板3に外力がかかった場合にガラス板3が押されてずれることになる。
【0027】
また、バックアップ材5の圧縮回復性が小さいと、ガラス板3が押された場合にガラス板3を押し戻す力が小さくなる。バックアップ材5は、10%圧縮強度は0.02~0.20MPaが好ましく、さらに好ましくは0.04~0.15MPaである。バックアップ材5は、50%圧縮後の圧縮回復率は90%以上が好ましい。
【0028】
すなわち、基材7は、バックアップ材5の10%圧縮強度が0.02~0.20MPaであり、さらに好ましくは0.04~0.15MPaとなり、バックアップ材5の50パーセント圧縮後の圧縮回復率が90パーセント以上となるように構成される。
【0029】
シート8は、基材7の長手方向に沿う一面に形成される。シート8は、着色可能なシート状の部材を用いることができる。シート8は、基材7に固定可能な程度の厚みを有する部材であり、例えば不織布などがあるが、これに限定されるものではない。
【0030】
シート8は、基材7の色調と異なる色調を有する。ここで色調は、彩度及び明度を示す。シート8の色調は、サッシ枠1の色調と同じ色調またはサッシ枠1の色調に近い色調を有する。ここで、サッシ枠1の色調と近い色調とは、ガラス戸100からシート8が露出した場合であっても、ガラス戸100の美粧性を保つことができる程度に近い色調である。また、シート8は、サッシ枠1の色相と同じ色または同系色であることが好ましい。サッシ枠1の色相は、例えば、シルバー色、グレー色、黒色などがある。同系色は、換言すると類似色である。すなわち、サッシ枠1の色相がシルバー色である場合、シート8の色相はシルバー色またはシルバー色の同系色である。サッシ枠1の色相がグレー色である場合、シート8の色相はグレー色またはグレー色の同系色である。サッシ枠1の色相が黒色である場合、シート8の色相は黒色または黒色の同系色である。
【0031】
シート8は、例えば、着色可能な材料で構成される。そして、シート8は、上述の色調及び色相に着色される。または、シート8は、上述の色調及び色相を有する材料で形成されることで、着色せずに上述の色調及び色を有する構成であってもよい。
【0032】
シート8は、例えば、樹脂製不織布、樹脂シートなどが挙げられる。シート8の樹脂の材質は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロンなどを用いることができる。樹脂の中でも軽量で嵩高性に優れたポリプロピレンが好ましい。
【0033】
また、シート8の表面は滑り性の良いものが好ましい。樹脂製不織布は、シート表面の滑らかさの点で好ましい。
【0034】
また、シート8の厚みは、0.1~0.6mmであり、0.2~0.4mmがさらに好ましい。0.6mmを超える厚みでは、火災時にシート8が燃焼するとガラス板3の保持が緩むことでバックアップ材5とガラス板3との間に隙間が生じ、隙間から熱風や火炎が回り込む恐れがある。また、シート8の厚みが0.1mmより小さい場合は、シート8を基材7に積層する際、しわが寄るなどして積層加工が難しくなる。なお、本実施形態では、一例として、後述するように、基材7の材料となるマット7aにシート8の材料となるシート部材8aを積層する。マット7aにシート部材8aを積層する場合においても、シート部材8aの厚みが0.1mmより小さい場合は、しわが寄るなどして積層加工が難しくなる。シート8の厚みを0.1~0.6mmの範囲にすることで、防火ガラス戸用として好適に使用することができる。
【0035】
また、シート8に樹脂製不織布を用いる場合には、ポリプロピレン製の不織布が好ましい。また、ポリプロピレン製の不織布は、目付が20~100g/m2が好ましく、30~70g/m2がさらに好ましい。
【0036】
シート8は、基材7に、例えば、結合剤層11を介して積層されている。結合剤層11を形成する結合剤11aとしては、粘着剤、接着剤などを用いることができるが、これに限定するものではない。
【0037】
粘着剤は硬化剤を混合したものを用いることができ、硬化剤の架橋効果により固化せず液状を保持するため塗布しやすくて好ましい。粘着剤としては、粘着性を有するものであれば特に限定されない。例えば、アクリル系、ウレタン系、シリコン系、ゴム系の粘着剤を用いることができる。
【0038】
バックアップ材5は、サッシ枠1への装着寸法に合わせて例えば作業現場で所要寸法に裁断するため、結合剤11aの塗布量が多いことにより結合剤層11が厚く硬くなっていると現場での裁断が行いにくい。結合剤11aの塗布量は、結合剤11aが乾いたドライ状態で40~80g/m2とすることが好ましく、50~70g/m2がさらに好ましい。
【0039】
このようなバックアップ材5は、例えば、
図4及び
図5に示すように第1装置20及び第2装置30を用いて製造される。
【0040】
図4は、第1装置20の構成を示している。
図4に示すように、第1装置20は、シート部材8a、結合剤層11、及び離型紙12の一体物14を製造する。シート部材8aは、シート8と同じ材料で形成され、同じ厚さを有し、シート8に対して面方向で大きい形状を有するシート状に形成される。換言すると、シート部材8aは、シート8をその面方向で大きくしたものである。さらに換言すると、シート部材8aを裁断加工することで、シート8が形成できる。
【0041】
図4に示すように、第1装置20は、例えば、第1供給部21と、複数のローラ22と、粘着剤供給部23と、ヒータ25と、第2供給部26と、圧縮機27と、第1回収部28と、を備える。
【0042】
第1供給部21は、離型紙12を供給する。第1供給部21は、例えば、離型紙12が巻回されたローラである。複数のローラ22は、第1供給部21から繰り出された離型紙12が搬送される搬送路を形成する。粘着剤供給部23は、第1供給部21の二次側に設けられる。粘着剤供給部23は、離型紙12の一方の面に、結合剤11aの一例である粘着剤を塗布する。粘着剤供給部23から供給される粘着剤は、例えば溶剤を含んでいる。
【0043】
ヒータ25は、粘着剤供給部23の二次側に設けられる。ヒータ25は、粘着剤が塗布された離型紙12を加熱し、粘着剤に含まれる溶剤を除去する。
【0044】
第2供給部26は、ヒータ25の二次側に設けられる。第2供給部26は、粘着剤が塗布された離型紙12の粘着剤が塗布された面にシート部材8aを供給する。
【0045】
圧縮機27は、第2供給部26の二次側に設けられる。圧縮機27は、粘着剤が塗布された離型紙12とシート部材8aとを圧縮する。
【0046】
第1回収部28は、圧縮機27で圧縮された、離型紙12、結合剤層11、及びシート部材8aとの一体物14を回収する。第1回収部28は、例えば、一体物14を巻き取るローラである。
【0047】
図5は、第2装置30の構成を示している。
図5に示すように、第2装置30は、シート部材8a、結合剤11a及びマット7aの一体物15を製造する。第2装置30は、例えば、第3供給部31と、第2回収部32と、プレス機33と、複数のローラ34と、を備える。マット7aは、基材7と同じ材料で形成され、基材7と同じ厚みを有する。換言すると、マット7aは、基材7をその面方向で大きくした形状を有する。さらに換言すると、マット7aを裁断加工することで、基材7が形成できる。基材7が有機バインダを有する構成である場合、有機バインダをマット7aの全体に浸み込ませた後、マット7aを加熱圧縮加工することでマット7aの硬度を上げることができる。
【0048】
第3供給部31は、一体物14を供給する。第3供給部31は、例えば、一体物14を供給するローラである。第2回収部32は、離型紙12を回収する。第2回収部32は、例えば、離型紙12を巻き取るローラである。第2回収部32は、マット7aが供給される位置よりも一次側で剥がされた離型紙12を回収する。
【0049】
プレス機33は、マット7aが供給される位置より二次側に設けられる。プレス機33は、粘着剤により形成された結合剤層11上に積層されたマット7aをプレスする。プレス機33により、マット7aと、結合剤層11と、シート部材8aとの一体物15が形成される。
複数のローラ34は、第3供給部31から繰り出された一体物14が搬送される搬送路を形成する。
【0050】
次に、バックアップ材5の製造方法の一例を、
図6を用いて説明する。
図6は、バックアップ材5の製造工程の一部の一例を示す説明図である。
【0051】
図6に示すように、第1供給部21から供給された離型紙12の一方に面に粘着剤供給部23で粘着剤が塗布され、粘着剤が塗布された離型紙12がヒータ25により加熱される(ステップST1)。
【0052】
次に、粘着剤供給部23で一方の面に粘着剤が塗布された離型紙12の粘着剤上にシート部材8aが供給され、離型紙12、結合剤層11,及びシート部材8aが圧縮機27で圧縮され、一体物14が形成される(ステップST2)。シート部材8aが圧着されることで、離型紙12の結合剤層11がシート部材8aに転写される。一体物14は、第3供給部31に巻回される。
【0053】
次に、第2装置30の第3供給部31から供給された一体物14から、離型紙12を剥す(ステップST3)。剥された離型紙12は、第2回収部32に回収される。
【0054】
次に、結合剤11aが転写されたシート部材8aの結合剤11aに、マット7aを積層して一体物15を形成する(ステップST4及びステップST5)。
【0055】
次に、一体物15を、ガラス戸100に応じた寸法に裁断加工することで、バックアップ材5を形成する。
【0056】
本実施形態のバックアップ材5は、シート8がガラス板3に対向する姿勢で、サッシ枠1とガラス板3との間に装着される。この為、例えば
図1に示すように、ガラス板3を通してバックアップ材5が露出する場合であっても、シート8が露出する。シート8は、基材7の色調とは異なる色調を有している。この為、ガラス戸100の美粧性を保つことができる。さらに、シート8はサッシ枠1の色調と同じ色調またはサッシ枠1の色調と近い色調を有している。この為、ガラス戸100の美粧性を保つことができる。バックアップ材5が露出する場合は、例えば、スペーサ4の高さ面より浅くバックアップ材5が装着された場合、あるいは、室内側と室外側でサッシ枠1の高さが異なる場合である。
【0057】
さらに、シート8は、バックアップ材5をサッシ枠1の溝1aに装着する際のバックアップ材5の姿勢を正しい姿勢とする案内となる。すなわち、バックアップ材5を溝1aに装着する際には、バックアップ材5を、シート8がガラス板3に対向する姿勢にすればよい。この為、バックアップ材5を、溝1aに装着する際にバックアップ材5の姿勢を正しい姿勢にしやすいので、バックアップ材5の装着作業の効率を向上できる。
【0058】
さらに、バックアップ材5の基材7は無機繊維を含むので、バックアップ材5を防火ガラス戸に用いることができる。さらに、基材7は、無機繊維の重量組成が85重量%以上である。この為、火災時にバックアップ材5が火にさらされても、基材7の体積が小さくなることを抑えることができるので、バックアップ材5によるガラス板3の保持が大きく緩むことを防止できる。
【0059】
さらに、バックアップ材5は、基材7の表面の一部がシート8で覆われる。すなわち、シート8によって、基材7の露出する範囲が小さくなるので、基材7に毛羽立ちが生じても、基材7の無機繊維が作業者の例えば手や衣服に付着することを抑えることができるので、バックアップ材5の取扱い性を向上できる。
【0060】
さらに、バックアップ材5は、シート8が基材7の補強材として機能することで、バックアップ材5が折れ曲がることや、基材7の形状が崩れることを抑えることができる。さらに、シート8により、バックアップ材5を溝1aに装着する作業時にバックアップ材5のガラス板3と擦る外面を滑らかにできる。この為、バックアップ材5の装着作業を行いやすくできる。さらに、シート8に、表面の滑り性の良い部材を用いることで、ガラス板3とサッシ枠1との間にバックアップ材5を押し込みやすく、作業性を良くすることができる。さらに、シート8として、樹脂製の不織布を用いることで、シート8の表面を滑らかにすることができる。
【0061】
さらに、シート8は、厚み0.1~0.6mmであり、目付30~70g/m2であるポリプロピレン製長繊維不織布である。この為、バックアップ材5の取り扱い性を、より一層向上できる。
【0062】
さらに、シート8の色は、サッシ枠1の色と同じ色、または、サッシ枠1の色と同系色である。本実施形態ではサッシ枠1の色相は、グレー色、シルバー色、または黒色であり、シート8の色相は、サッシ枠1の色相に合わせて、グレー色、シルバー色、黒色、グレー色と同系色、シルバー色と同系色、または、黒色と同系色である。この為、ガラス戸100の美粧性を保つことができる。
さらに、シート8の色相を、グレー色、シルバー色、黒色、グレー色と同系色、シルバー色と同系色、または、黒色と同系色とすることにより、シート8の色相が、一般的なサッシ枠1の色と同色、または、一般的なサッシ枠1の色と近い色となる場合が多い。この為、バックアップ材5を、異なるサッシ枠1に用いても、この異なるサッシ枠1を有するガラス戸100の美粧性を保つことができる。
【0063】
さらに、バックアップ材5を製造する際に、マット7a、シート部材8aを含む一体物15を形成し、一体物15を例えばスリッタを用いて裁断加工してバックアップ材5を形成することで、所望の形状のバックアップ材5を供給できる。さらに、
図4に示すように、シート部材8aに、結合剤11aが塗布された離型紙12を積層し、離型紙12を剥し、マット7aを積層する方法を用いることで、シート部材8a、結合剤層11、及びマット7aを備える一体物15の製造において、作業性、生産性、仕上がりの均一性を向上できる。
【0064】
なお、上述の例では、バックアップ材5の基材7は、防火ガラス戸100で用いられる為、無機繊維を含み、さらに基材7中の無機繊維の重量組成が85重量%以上である構成が一例として説明された。しかしながら、バックアップ材5の基材7は、防火ガラス戸100に用いられることに限定されない。バックアップ材5は、防火ガラス戸以外のガラス戸に用いられてもよい。バックアップ材5が防火ガラス戸以外のガラス戸に用いられる場合は、基材7は、不燃性を有さない材料で形成されてもよい。
【0065】
また、上述の例では、ガラス戸100は、複数のガラス板3を備える、複数ガラス構造が一例として説明されたが、これに限定されない。他の例では、ガラス戸100は、ガラス板3とサッシ枠1との間にバックアップ材5を装着し、シーリング材6を塗布する構造のものであれば、ガラス板3が一枚である単層ガラス構造であってもよい。
【0066】
また、上述の例では、バックアップ材5は、1つの基材7を備える構成が一例として説明されたが、これに限定されない。他の例では、バックアップ材5は、複数の基材7を備える構成であってもよい。この一例として、
図7に示すように、シート部材8aを積層させる前のマット7aを所定の幅、長さに裁断して基材7を形成したのち、裁断した基材7同志を積層させて結合剤層11などで一体化した後で、一体化された複数の基材7から構成される基材の長手方向に沿う一面に例えば結合剤層11を介してシート8を積層させることもできる。この方法では、基材7の厚みの組み合わせにより、各種の厚みのバックアップ材5を加工供給できる。
【0067】
また、バックアップ材5は、サッシ枠1の溝の内面に固定可能に構成されてもよい。この一例として、バックアップ材5のサッシ枠1の溝の内面に対向する面に、結合剤層11が設けられ、この結合剤層11を介して、サッシ枠1に固定されてもよい。この構成の一例を、
図8を用いて説明する。
図8に示すように、バックアップ材5のシート8の積層面と反対側の面に、結合剤11aを塗布した離型紙12を貼り付けることができる。これはサッシ枠1内でガラス板3を挟んで両側にバックアップ材5を装着する際、先付けするバックアップ材5をサッシ枠1に貼り付けて固定するためのものである。
【0068】
まず、先付するバックアップ材5の離型紙12を剥がして、先付けするバックアップ材5をサッシ枠1に貼付けて固定した後、ガラス板3をサッシ枠1内に嵌め込み、その後で後付けのバックアップ材5をサッシ枠1とガラス板3との隙間に押し込むことで、ガラス戸100の組立作業を行い易くするためのものである。
【0069】
また、上述の例では、バックアップ材5は、基材7の長手方向沿う一面にシート8が設けられる構成が一例として説明されたが、これに限定されない。例えば、バックアップ材5は、基材7の長手方向に沿う少なくとも一面に形成される構成であってもよい。この例として、基材7のガラス板3側の面、及びこの面に相対する面にシート8が設けられる構成であってもよい。
【0070】
また、上述の例では、基材7は、無機繊維で形成される構成、及び、無機繊維で形成されさらに有機バインダを用いて基材7の繊維間の結合状態を高める構成が一例として説明されたが、これに限定されない。他の例では、基材7は、無機繊維と有機繊維とを含んでもよい。基材7に用いられる有機繊維としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などを挙げることができる。なお、有機繊維は、これらに限定されるものではない。
【0071】
例えば、基材7は、有機繊維で形成された有機繊維層、及び無機繊維で形成された層を備える構成であってもよい。この構成の一例としては、有機繊維層の一例であるポリエステル不織布層と、無機繊維で形成された無機繊維層と、を備える構成がある。ポリエステル不織布層は、無機繊維層を保持するためのものである。
【0072】
例えば有機繊維層及び無機繊維層を備える基材7の材料となるマット7aの製法には、例えばニードルパンチ法がある。ニードルパンチ法は、例えば、有機繊維層と、有機繊維層を保持する無機繊維層とを備えるマット7aの製法として用いることができる。ニードルパンチ法は、有機繊維層と無機繊維層とをニードルパンチにより接合する製法である。有機繊維層として、例えばポリエステル不織布層が用いられる。ニードルパンチ法では、ニードルを無機繊維層に突き刺して有機繊維層に無機繊維層を絡めさせるものである。
マット7aの製法には、ニードルパンチ法のほか、ケミカルボンド加工法、水流絡合法などが挙げられるが、いずれの加工法も用いることができる。
【0073】
また、上述の例では、バックアップ材5の製造方法は、シート部材8aに結合剤11aが塗布された離型紙12を圧着して結合剤11aをシート部材8aに転写し、離型紙12を剥し、マット7aを圧着する方法が一例として説明された。換言すると、マット7aの表面に、結合剤11aを積層させたシート部材8aを貼り付ける方法が説明された。しかしながら、これに限定されない。他の例では、マット7aの表面に結合剤11aを、例えば刷毛あるいはスプレーで塗布したのち、シート部材8aを貼り付ける方法が用いられてもよい。または、マット7aに両面粘着シートを貼り付け、この粘着シートにシート部材8aを貼り付ける方法が用いられてもよい。マット7aとシート8とを結合剤層11を介して積層させる方法として、例えばこれらのいずれの方法も用いることができる。
また、上述の例では、シート8の色調が基材7の色調と異なり、サッシ枠1の色がグレー色、シルバー色、及び黒色のいずれか1であり、シート8の色がサッシ枠1と同じ色またはサッシ枠1の色と同系色である構成が一例として説明されたが、これに限定されない。他の例では、シート8は、シート8の色調が基材7の色調と異なり、さらに、シート8の色が白と異なる色すなわち白以外の色であってもよい。この構成の場合は、シートの8の色は、サッシ枠1と同じ色、またはサッシ枠1の色と同系色であることに限定されない。
例えば、無機繊維を含む基材7の色は、白色または白色の同系色となる場合がある。このように、基材7の色が白色または白色と同系色である場合に、上述のように、シート8の色調が基材7の色調と異なり、さらに、シート8の色が白と異なる色であることで、ガラス戸100の美粧性を保つことができる。
【0074】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。さらに、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のバックアップ材は、防火ガラス戸サッシ、あるいは耐火性を求められるガラス戸に用いる不燃性バックアップ材として利用でき、ガラス戸サッシ内で目立ちにくい色調であり、美粧性の高い防火用ガラス戸を提供できるとともに、取扱い性に優れたバックアップ材を提供するものである。
【符号の説明】
【0076】
1…サッシ枠、1a…溝、2…セッティングブロック、3…ガラス板、4…スペーサ、5…バックアップ材、6…シーリング材、7…基材、7a…マット、8…シート、8a…シート部材、9…空間層、11…結合剤層、11a…結合剤、100…ガラス戸。