(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092021
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】ウイルス不活化用組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 37/36 20060101AFI20230626BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20230626BHJP
A01N 59/26 20060101ALI20230626BHJP
A01N 25/02 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
A01N37/36
A01P1/00
A01N59/26
A01N25/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206976
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000149181
【氏名又は名称】株式会社大阪製薬
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 知佳
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA04
4H011BA01
4H011BA06
4H011BB06
4H011BB18
4H011BC03
4H011DA13
4H011DF04
(57)【要約】
【課題】 ウイルス不活化用組成物を提供する。
【解決手段】 (A)酸類0.15~1w/v%、(B)塩類0.05~2w/v%を含有し、(C)低級アルコール含有量が10w/v%以下、pHが3~5である、ウイルス不活化用組成物を調製する。このようなウイルス不活化用組成物として、好ましくは(C)低級アルコールを全く含まないか、実質的に含まない組成とすることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸類0.15~1w/v%、(B)塩類0.05~2w/v%を含有し、(C)低級アルコール含有量が10w/v%以下、pHが3~5である、ウイルス不活化用組成物。
【請求項2】
前記(A)成分が、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、乳酸、ソルビン酸、フィチン酸及びリン酸からなる群より選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載のウイルス不活化用組成物。
【請求項3】
前記(B)成分が、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、リンゴ酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、及びリン酸三ナトリウムからなる群より選択される1種又は2種以上である、請求項1又は2に記載のウイルス不活化用組成物。
【請求項4】
前記(C)成分を含有しない、請求項1~3のいずれか1項に記載のウイルス不活化用組成物。
【請求項5】
前記ウイルスが、エンベロープを有するRNAウイルスである、請求項1~4のいずれか1項に記載のウイルス不活化用組成物。
【請求項6】
(A)酸類0.15~1w/v%、(B)塩類0.05~2w/v%を含有する組成物において、(C)低級アルコール含有量を10w/v%以下、pHを3~5とすることによって、該組成物に、適用対象に対する皮膚の荒れ又は劣化抑制作用を付与する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルス不活化組成物に関する。より詳細には、ウイルスに対して不活化作用を有し、かつ低級アルコールの含有量が特定量以下である、ウイルス不活化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の病原性ウイルスの脅威は、生活に大きな影響を与えている。例えば、COVID-19ウイルス感染症の発生は、人間に対する脅威となっており、生活様式を一変させている状況である。また、この他にも毎年冬季を中心に流行を繰り返す季節性のインフルエンザを始め、新たなウイルスが、トリやブタからヒトの世界に入り、ヒト間の感染能力を獲得する場合もあり、ウイルスに関しては、常に新たな危険にさらされていると言える。
【0003】
ウイルスは、自然変異や回避変異により、自らの能力を変化させて進化する。ウイルスの中和抗体などの報告は頻繁になされ、治療手段も存在するが、このような常に変化するウイルスの性状に鑑みて、感染を未然に防止することが非常に重要と考えられており、抗ウイルス性を備える薬剤等に対するニーズが高まっている。
【0004】
現在、ウイルス不活化用組成物には、低級アルコールが広く用いられている。例えば低級アルコール、カチオン界面活性剤及びアルカリ剤を含むことを特徴とする殺菌・ウイルス不活化組成物などが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エタノールを始めとする低級アルコールを含む製品の多用により、皮膚の荒れや適用対象物の性状の劣化や変化が問題となる。例えば、ウイルスに効果のあるスプレーはエタノールなどを高配合されているものが多く、対象物へスプレーした際に、付着対象物の素材によってはその対象物の品質が変性するという課題があった。
【0007】
本発明は、皮膚や対象物への影響が少ない、安全性の高いウイルス不活化用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、本課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定濃度の酸と塩を含有させpHを調整することで、エタノールなどの低級アルコール濃度を低く抑制しても、ウイルス不活化効果を発揮できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記に掲げるウイルス不活化用組成物を提供する。
項1.
(A)酸類0.15~1w/v%、(B)塩類0.05~2w/v%を含有し、(C)低級アルコール含有量が10w/v%以下、pHが3~5である、ウイルス不活化用組成物。
項2.
前記(A)成分が、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、乳酸、リン酸、ソルビン酸、及びフィチン酸からなる群より選択される1種又は2種以上である、項1に記載のウイルス不活化用組成物。
項3.
前記(B)成分が、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、及びリン酸三ナトリウムからなる群より選択される1種又は2種以上である、項1又は2に記載のウイルス不活化用組成物。
項4.
前記(C)成分を含有しない、項1~3のいずれか1項に記載のウイルス不活化用組成物。
項5.
前記ウイルスが、エンベロープを有するRNAウイルスである、項1~4のいずれか1項に記載のウイルス不活化用組成物。
【0010】
さらに、本発明は、下記に掲げる方法を提供する。
項6.
(A)酸類0.15~1w/v%、(B)塩類0.05~2w/v%を含有する組成物において、(C)低級アルコール含有量を10w/v%以下、pHを3~5とすることによって、該組成物に、適用対象に対する皮膚の荒れ又は劣化抑制作用を付与する方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、皮膚や対象物への影響が少ない、安全性の高いウイルス不活化用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、含有量の単位「w/v%」は、「g/100ml」と同義である。
【0013】
[ウイルス不活化用組成物]
本発明のウイルス不活化用組成物は、(A)酸類0.15~1w/v%、(B)塩類0.05~2w/v%を含有し、(C)低級アルコール含有量が10w/v%以下、pHが3~5である。
【0014】
((A)酸類)
本発明のウイルス不活化用組成物には、(A)酸類が含まれる。酸類としては、有機酸、無機酸のいずれも好ましく、その中でも、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸又は乳酸などのヒドロキシ酸、リン酸、ソルビン酸、フィチン酸等のその他の酸が例として挙げられる。これらは単独で用いても、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、及びリン酸からなる群より選択される1種又は2種以上が特に好ましい。
【0015】
本発明のウイルス不活化用組成物の全量に対する酸類の含有量は、本発明の効果を発揮する観点から、0.15w/v%以上1w/v%以下が好ましく、0.2w/v%以上0.8w/v%以下がより好ましく、0.4w/v%以上0.8w/v以下がさらに好ましい。
【0016】
((B)塩類)
本発明のウイルス不活化用組成物には、塩類が含まれる。塩類としては、有機酸又は無機酸の塩が好ましく、その中でも、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等が例として挙げられる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。
【0017】
例えば、本発明において、塩類は、限定はされないが、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、リンゴ酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、コハク酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、乳酸ナトリウム等が挙げられる。これらは単独で用いても、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、及びリン酸三ナトリウムからなる群より選択される1種又は2種以上が特に好ましい。限定はされないが、(A)成分の酸類と同じ酸の塩であることも好ましい。
【0018】
本発明のウイルス不活化用組成物の全量に対する塩類の含有量は、本発明の効果を発揮する観点から、0.05w/v%以上2w/v%以下が好ましく、0.1w/v%以上1.5w/v%以下がより好ましく、0.5w/v%以上1.2w/v%以下がさらに好ましい。
【0019】
本発明のウイルス不活化用組成物において、酸類に対する塩類の割合は、酸類1質量部に対して、0.3質量部以上3質量部以下が好ましく、0.5質量部以上2質量部以下がより好ましく、1質量部以上1.5質量部以下がさらに好ましい。
【0020】
(低級アルコール)
本明細書で「低級アルコール」というときは、C1-3アルコールを指す。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール及びプロパノールを指す。
【0021】
本発明のウイルス不活化用組成物において、ウイルス不活化用組成物の全量に対する低級アルコールの含有量は、10w/v%以下であり、好ましくは、10w/v%未満であり、より好ましくは、5w/v%以下であり、さらに好ましくは、1w/v%以下である。本発明のウイルス不活化用組成物においては、低級アルコールを実質的に含まないか、全く含まないことが特に好ましい。ここで、実質的に含まないとは、ウイルス不活化用組成物の全量に対する低級アルコールの含有量が、例えば、0.1w/v%以下、好ましくは、0.01w/v%以下であることを指す。
【0022】
本発明のウイルス不活化用組成物において、ウイルス不活化用組成物の全量に対するエタノールの含有量を、10w/v%以下とすることもでき、好ましくは、10w/v%未満であり、より好ましくは、5w/v%以下であり、さらに好ましくは、1w/v%以下である。本発明のウイルス不活化用組成物においては、エタノールを実質的に含まないか、全く含まないことが特に好ましい。ここで、実質的に含まないとは、ウイルス不活化用組成物の全量に対するエタノールの含有量が、例えば、0.1w/v%以下、好ましくは、0.01w/v%以下であることを指す。
【0023】
本発明のウイルス不活化用組成物の全量に対する低級アルコールの含有量は、本発明の効果を発揮する観点から、例えば、0.01w/v%以上10w/v%以下、0.01w/v%以上10w/v%以下、0.0w/v%以上5w/v%以下等であっても良い。
【0024】
(水)
本発明のウイルス不活化用組成物は、水を配合することができる。かかる水としては、イオン交換水等の精製水や、通常の水道水や工業用水等が挙げられる。
ウイルス不活化用組成物の全量に対する水の含有量は、80w/v%以上が好ましく、90w/v%以上がより好ましく、95w/v%以上がより好ましく、97w/v%以上がさらに好ましい。
【0025】
(多価アルコール)
本発明のウイルス不活化用組成物は、水の代わりに、あるいは水と共に多価アルコールを配合することができる。かかる多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、プロパンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。ウイルス不活化用組成物の全量に対する多価アルコールの含有量は、80w/v%以上、90w/v%以上、さらには95w/v%以上とすることもできる。
【0026】
(ウイルス)
本明細書でいうウイルスとしては、限定はされないが、エンベロープを有さず、アルコールに抵抗性のあるノンエンベロープウイルス、エンベロープを有するウイルスのいずれも含む。好ましくは、エンベロープを有するウイルスが対象であり、その中でも、コロナウイルス科、オルトミクソウイルス科、フラビウイルス科、トガウイルス科、パラミクソウイルス科、ラブドウイルス科、ブニアウイルス科、又はフィロウイルス科等のRNAウイルス、又は、ヘルペスウイルス科、ポックスウイルス科、ヘパドナウイルス科等のDNAウイルスがより好ましい対象であり、エンベロープを有するRNAウイルスがさらに好ましい対象であり、オルトミクソウイルス科のウイルスがさらにより好ましい対象である。
【0027】
(pH)
本発明のウイルス不活化用組成物は、成分の安定性又は安全性の観点等から、pH3~5の液性を備えていることが好ましい。より好ましくはpH3~4.5のウイルス不活化用組成物である。ウイルス不活化用組成物のpHは、20℃において、市販のpHメーター(例えば株式会社堀場製作所製、F-52(登録商標)型等)を使用して測定できる。
【0028】
(粘度)
本発明のウイルス不活化用組成物は、成分の安定性等の観点等から、25℃、SPINDLE No.M1、100rpmにおける粘度が、好ましくは0.5~1000mpa・s程度、より好ましくは3~100mpa・s程度、である。ウイルス不活化用組成物の粘度は、25℃において、市販の粘度計(例えば東機産業株式会社製、TVB-10M型)を使用して測定できる。
【0029】
(その他の成分)
本発明の効果を阻害しない限り、本発明のウイルス不活化用組成物には、(A)酸類、(B)塩類、及び(C)低級アルコールの他に、任意成分が適宜配合されていても良い。一例を挙げると、任意成分は、界面活性剤、キレート剤、高分子、防腐剤、天然物エキス、分散剤、酸化防止剤、増粘剤、減粘剤、安定化剤、消臭剤、香料、色素等が挙げられる。
【0030】
本発明のウイルス不活化用組成物はまた、塩素酸化物(塩素、次亜塩素酸、亜塩素酸、二酸化塩素など)を全く含まないかあるいは実質的に含まない組成物とすることも好ましい。
【0031】
ここで、実質的に含まないとは、該当成分の含有量が、例えば、0.1w/v%以下、好ましくは、0.01w/v%以下であることを指す。
【0032】
(用途等)
本発明のウイルス不活化用組成物は、限定はされないが、皮膚や性状変化が望ましくない対象物に直接適用され得る。特には、手指や腕などの皮膚;食器、調理台、調理器具等;トイレ周辺の便座、便器、便器フタ、水洗レバー、ドアノブ、電気スイッチ、手すり等の部位;又は、テーブル、椅子、医療器具、携帯電話、スマートフォン、タブレットパソコンやマウスやキーボードなどのパソコン周辺機器等に用いることもできる。
【0033】
本発明のウイルス不活化用組成物は、塗布、浸漬、噴霧等の方法で対象物に接触させる形態で提供される。本発明のウイルス不活化用組成物は、好ましくは、対象物に噴霧して接触させることができる。
【0034】
本発明のウイルス不活化用組成物は、限定はされないが、エアゾール、スプレー、繊維や不織布等に含浸させたシート状の形態等で提供され得る。エアゾール、スプレーの場合、本発明のウイルス不活化用組成物は、好ましくは、トリガースプレーやディスペンサー等の容器に収容して用いることができる。不織布等に含浸させたシート状の形態等で提供される場合、好ましくは、シートの素材として、再生繊維、合成繊維、植物繊維、不織布、織布、網布等が例示できる。
【0035】
本発明のウイルス不活化用組成物は、1日に1~20回、好ましくは、2~15回程度、より好ましくは5~10回程度の頻度で使用することができる。本発明のウイルス不活化用組成物の特性に鑑みて、例えば1日に5~15回などの頻回にわたる使用も可能である。
【0036】
本発明のウイルス不活化用組成物の使用量は、抗ウイルス効果の点では、例えば、1回あたり、0.2~3ml程度となる量が好ましく、0.5~2ml程度となる量がさらにより好ましい。
【0037】
[皮膚の荒れ又は劣化抑制方法]
本発明はまた、(A)酸類0.15~1w/v%、(B)塩類0.05~2w/v%を含有する組成物において、(C)低級アルコール含有量を10w/v%以下、pHを3~5とすることによって、該組成物に、適用対象に対する皮膚の荒れ又は対象物の劣化抑制作用を付与する方法に関する。ここで、本発明の劣化抑制方法において、(A)酸類、(B)塩類、(C)低級アルコール、pH、その他の条件については、前記ウイルス不活化用組成物で記載した内容に準じる。
【実施例0038】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、表における各成分量の単位は、表中特に断りがない限り、w/v%である。
【0039】
[1]ウイルス不活化効果評価試験
表1に示す実施例及び比較例の組成物を常法により調製し、それらの組成物について、ウイルス不活化効果の評価を行った。
【0040】
ウイルス不活化効果の評価は、以下のようにして行った。
【0041】
(対象ウイルス)
インフルエンザウイルスA(H1N1)型
(A/PR/8/1934;ATCC VR-1469)
【0042】
(使用細胞)
MDCK細胞
【0043】
(培養に用いる培地)
E-MEM培地にウシ胎児血清(FBS)を添加して使用した。
【0044】
(ウイルス液の調製方法)
あらかじめ用意しておいた細胞に、ウイルスを加え、一定期間培養後、培養液を凍結融解処理し、遠心分離にて得られた上清をウイルス液とした。
【0045】
(実験方法)
表1に示す実施例及び比較例の液0.9mLにウイルス液を0.1mL加え、30秒間間作用させた後反応を停止させ、段階希釈した。この希釈液0.1mLをあらかじめ細胞を培養しておいたプレートに入れ、37℃、5% CO2の条件下で3~4日間培養した。培養後、顕微鏡観察にて細胞変性効果を確認し、Reed Muench法により50%組織培養感染量ウイルス(TCID50:培養細胞にウイルスを感染させ、その50%が感染するウイルス量をTCID50という)を求め、作用液1mL当たりのウイルス感染価(TCID50/mL)に換算した。
【0046】
作用前のウイルス感染価(TCID50/mL)の対数値(logTCID50/mL)と作用後のウイルス感染価(TCID50/mL)の対数値(logTCID50/mL)の差を算出し、ウイルス感染価の減少値とした。このように得られたウイルス感染価の減少が4.0以上のものを◎と評価し、ウイルス感染価の減少が2.0以上4.0未満のものを○と評価し、ウイルス感染価の減少が2.0未満のものを×と評価した。これらのうち、◎及び○を良好、×を不良と判断した。
【0047】
【0048】
評価試験の結果、実施例の組成物では、比較例の組成物と比較して、高いウイルス不活化効果が示された。
【0049】
[2]対象物への影響評価試験
表2に示す実施例及び比較例の組成物を常法により調製し、それらの組成物について、対象物に約0.5mlスプレーし、拭き取らず、直後に変化を確認した。評価基準は表3に示す通りである。下記の評価基準により評価を行った。総合的に判断し、全て〇のものを総合評価〇とし、良好とした。
【0050】
【0051】
【0052】
評価試験の結果、実施例の組成物では、比較例の組成物と比較して、対象物への影響が見られず、対象物を良好な状態に保つことが示された。
【0053】
[3]皮膚への刺激評価試験
実施例及び比較例の各組成物0.5mLを前腕に1時間間隔で5回連続塗布した後、(1)刺激性、及び(2)皮膚の乾燥(荒れ)状態を1点から3点の3段階の官能評価にて評価した。試験は5名で実施し、平均点を求めた。評価基準を以下に示す。
【0054】
<評価項目及び評価基準>
(1)刺激性(灼熱感、痛み、かゆみ、など)
感じない=3点、やや感じる=2点、感じる=1点
(2)皮膚の乾燥(荒れ)
感じない=3点、やや感じる=2点、感じる=1点
【0055】
◎:平均点が2.5以上
○:平均店が2.0以上、2.5未満
×:平均点が2.0未満
(1)刺激性、(2)皮膚の乾燥(荒れ)ともに〇以上のものを良好とした。
【0056】
【0057】
評価試験の結果から、実施例の組成物は、比較例の組成物と比べて、皮膚への刺激や皮膚の乾燥を引き起こしにくいことがわかった。