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特開2023-92033多層膜塗装、多層膜フラッシュオフシステム
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  • 特開-多層膜塗装、多層膜フラッシュオフシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092033
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】多層膜塗装、多層膜フラッシュオフシステム
(51)【国際特許分類】
   B05B 15/00 20180101AFI20230626BHJP
   B05B 16/20 20180101ALI20230626BHJP
【FI】
B05B15/00
B05B16/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206994
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】504378283
【氏名又は名称】株式会社ユニパック
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(72)【発明者】
【氏名】松江 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 伴成
【テーマコード(参考)】
4D073
【Fターム(参考)】
4D073AA01
4D073BB03
4D073CB03
4D073CB15
4D073DD02
4D073DD10
4D073DD11
4D073DD15
4D073DD19
4D073DD22
4D073DD24
(57)【要約】
【課題】本発明は、液状抗菌剤を濾面に密着コーテイングする作業を行う際、前記液状抗菌剤が落下してタレることがなく、よって落下した分材料のロスが発生することがなく、また、複数のフィルター部材のフラッシュオフ作業において、濾面に所定の厚膜を一律に確保してフラッシュオフすることが出来、材料コストが上昇することのないフィルター部材への抗菌剤フラッシュオフシステムを提供する
【解決手段】本発明は、濾面7に液状抗菌剤4がスプレーされたフィルター部材3がセットされる乾燥ボックス9が縦方向に複数段設けられた乾燥棚10と、セットされたフィルター部材3により乾燥ボックス9内に一方側空間と他方側空間が設けられ、前記一方側空間からフィルター部材3の濾面7を通過し、他方側空間に移動する空気と、前記空気の移動状態を制御し、前記フィルター部材3の好ましいフラッシュオフ状態を設定する制御手段とを有することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾面に液状抗菌剤がスプレーされたフィルター部材がセットされる乾燥ボックスが縦方向に複数段設けられた乾燥棚と、
セットされたフィルター部材により乾燥ボックス内に一方側空間と他方側空間が設けられ、前記一方側空間からフィルター部材の濾面を通過し、他方側空間に移動する空気と、
前記空気の移動状態を制御し、前記フィルター部材の好ましいフラッシュオフ状態を設定する制御手段と、を有する、
ことを特徴とする多層膜塗装、多層膜フラッシュオフシステム。
【請求項2】
フィルター部材の濾面に抗菌剤をスプレーする塗装設備と、スプレーされたフィルター部材の濾面をフラッシュオフするフラッシュオフ設備とを有し、
フラッシュオフ設備は、前記スプレーされたフィルター部材がセットされる乾燥ボックスが縦方向に複数段設けられた乾燥棚と、該乾燥棚が複数列設けられて構成された乾燥ブースを備え、
セットされたフィルター部材により乾燥ボックス内には一方側空間と他方側空間が設けられ、前記一方側空間からセットされたフィルター部材の濾面を通過し、他方側空間に移動する空気と、
前記空気の移動状態を制御し、前記フィルター部材の好ましいフラッシュオフ状態を設定する制御手段と、を有し、
前記空気は外部空気を熱し、熱した空気を循環手段により前記一方側空間から他方側空間へ移動させる、
ことを特徴とする多層膜塗装、多層膜フラッシュオフシステム。
【請求項3】
フィルター部材濾面へのスプレーは複数回実施可能で、スプレー後、複数回フラッシュオフ可能とされ、フラッシュオフする乾燥棚の各段につきスプレーの回数毎に分けてフィルター部材がセットでき、フラッシュオフ回数毎にフィルター部材を判別可能とした、
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の多層膜塗装、多層膜フラッシュオフシステム。
【請求項4】
前記乾燥ボックスの一方側空間からフィルター部材の濾面を通過し、他方側空間に移動する空気の移動手段は、一方側空間側に設けられた空気押し出し手段と他方側空間側に設けられた空気引き込み手段との双方である、
ことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の多層膜塗装、多層膜フラッシュオフシステム。
【請求項5】
空気の濾面通過抵抗が異なるフィルター部材のフラッシュオフについては、空気の濾面通過抵抗が異なるフィルター部材毎に最適な空気の通過状態にする最適通過状態生成装置からの値を検出し、該検出値に基づいて前記制御装置が前記最適通過状態生成装置を制御する、
ことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3または請求項4記載の多層膜塗装、多層膜フラッシュオフシステム。
【請求項6】
前記フィルター部材の両濾面に液状抗菌剤をスプレーできる、
ことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4または請求項5記載の多層膜塗装、多層膜フラッシュオフシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばAG(銀)粒子を含んだ液状抗菌剤を空気清浄機あるいは空調機などに使用されているフィルター部材へフラッシュオフするフィルター部材の多層膜塗装、多層膜フラッシュオフシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水溶性の抗菌剤で、粘度が低く、水に近い液状抗菌剤をフィルター部材の濾面などに密着コーテイングをする場合、前記液状抗菌剤が落下してタレてしまうとの課題があった。そして、その落下した分材料のロスが発生するとの課題もあった。
さらに、従来では複数のフィルター部材の密着コーテイング処理作業において、濾面に所定の膜厚を一律に確保してフラッシュオフすることが極めて困難であった(膜厚のバラツキが発生)。
また、液状抗菌剤を貯留した貯留ケースにフィルター部材をどぶずけする等の方法も採用されていたが、該方法ではフィルター部材の濾面に目詰まりをおこしてしまい不良製品が生じて歩留まりが悪化し、材料コストが上昇するとの課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-166082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記従来の課題を解決するために創案されたものであり、液状抗菌剤を濾面に密着コーテイングする作業を行う際、前記液状抗菌剤が落下してタレることがなく、よって落下した分材料のロスが発生することがなく、また、複数のフィルター部材のフラッシュオフ作業において、濾面に所定の膜厚を一律に確保してフラッシュオフすることが出来、さらには、液状抗菌剤を貯留した貯留ケースにフィルター部材をどぶずけする等の密着コーテイング法ではないため、フィルター部材の濾面に目詰まりをおこしてしまい不良製品が生じて歩留まりが悪化し、材料コストが上昇することのないフィルター部材への抗菌剤フラッシュオフシステムを提供することを目的とするものである。
【0005】
すなわち、本発明によるフィルター部材への抗菌剤フラッシュオフシステムは、例えば、ハイドロAG(登録商標)フラシュシステムとも指標され、スピ-デイな抗菌フィルターの抗菌材密着コーテイングの量産製造を目的として開発されたシステムなのである。
【0006】
近年の世界的感染症拡散状況に鑑みると、フィルター部材の濾面に付着したゴミ粒子に含まれる感染症ウイルスを確実に不活化させることが必要となる。また、フィルター部材の濾面に例えばハイドロAG(登録商標)抗菌剤被膜をスピ-デイに均一密着形成させることが重要となる。
【0007】
本発明によるフィルター部材への抗菌剤密着コーテイングシステムに、換言すれば、ハイドロAG(登録商標)の多層膜塗装、多層膜形成塗装システムによれば、いわゆる落下寸前のタレ限界での薄膜塗装の塗り重ねによって抗菌剤、例えば抗菌AG被膜粒子からなる液状抗菌剤を確実にフィルター部材の濾面に密着コーテイングすることができ、また抗菌剤被膜の膜厚をコントロールすることが可能なのである。
【0008】
すなわち、WETスプレ-状態で一度に密着コーテイングする抗菌剤(例えばハイドロAG(登録商標))の膜厚は3ミクロン~5ミクロンであり、塗装後、すぐにフラッシュオフ設備投入し、フィルター内部に染み込んでいるアルコ-ル分を揮発させることで、直ちに2回目あるいは3回目のフラッシュオフ作業もでき、もって量産性を確保できると共に、毎回のフラッシュオフ作業により密着コーテイング塗膜を濾面に確実に付着させて濾面への密着性を向上させることが出来るのである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
濾面に液状抗菌剤がスプレーされたフィルター部材がセットされる乾燥ボックスが縦方向に複数段設けられた乾燥棚と、
セットされたフィルター部材により乾燥ボックス内に一方側空間と他方側空間が設けられ、前記一方側空間からフィルター部材の濾面を通過し、他方側空間に移動する空気と、
前記空気の移動状態を制御し、前記フィルター部材の好ましいフラッシュオフ状態を設定する制御手段と、を有する、
ことを特徴とし、
または、
フィルター部材の濾面に抗菌剤を均一にスプレーするエア霧化塗装設備と、スプレーされたフィルター部材の濾面を密着コーテイングキュアするフラッシュオフ設備とを有し、
フラッシュオフ設備は、前記スプレーされたフィルター部材がセットされる乾燥ボックスが縦方向に複数段設けられた乾燥棚と、該乾燥棚が複数列設けられて構成された乾燥ブースを備え、
セットされたフィルター部材により乾燥ボックス内には一方側空間と他方側空間が設けられ、前記一方側空間からセットされたフィルター部材の濾面を通過し、他方側空間に移動する空気と、
前記空気の移動状態を制御し、前記フィルター部材の好ましいフラッシュオフ状態を設定する制御手段と、を有し、
前記空気は外部空気を熱し、熱した空気を循環手段により前記一方側空間から他方側空間へ移動させる、
ことを特徴とし、
または、
フィルター部材濾面へのスプレーは複数回実施可能で、スプレー後、複数回フラッシュオフ可能とされ、フラッシュオフする乾燥棚の各段につきスプレーの回数毎に分けてフィルター部材がセットでき、フラッシュオフ回数毎にフィルター部材を判別可能とした、
ことを特徴とし、
または、
前記乾燥ボックスの一方側空間からフィルター部材の濾面を通過し、他方側空間に移動する空気の移動手段は、一方側空間側に設けられた空気押し出し手段と他方側空間側に設けられた空気引き込み手段との双方である、
ことを特徴とし、
または、
空気の濾面通過抵抗が異なるフィルター部材のフラッシュオフについては、空気の濾面通過抵抗が異なるフィルター部材毎に最適な空気の通過状態にする最適通過状態生成装置からの値を検出し、該検出値に基づいて前記制御装置が前記最適通過状態生成装置を制御する、
ことを特徴とし、
または、
前記フィルター部材の両濾面に液状抗菌剤をスプレー及びフラッシュオフできる、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液状抗菌剤を濾面に密着コーテイングする作業を行う際、前記液状抗菌剤が落下してタレることがなく、よって落下した分材料のロスが発生することがなく、また、複数のフィルター部材のフラッシュオフ作業において、濾面に所定の均一な膜厚を一律に確保してフラッシュオフすることが出来、さらには、液状抗菌剤を貯留した貯留ケースにフィルター部材をどぶずけする等の密着コーテイング法ではないため、フィルター部材の濾面に目詰まりをおこしてしまい不良製品が生じて歩留まりが悪化し、材料コストが上昇することのないフィルター部材への抗菌剤膜厚形成及びフラッシュオフシステムを提供出来るとの優れた効果を奏する。
【0011】
すなわち、本発明によるフィルター部材への抗菌剤フラッシュオフシステムは、例えば、ハイドロAG(登録商標)の多層膜塗装、多層膜フラッシュオフシステムとも指標され、スピ-デイな抗菌フィルターの抗菌膜密着コーテイングフラッシュオフの量産製造を目的として開発されたシステムであり、本発明によるフィルター部材への抗菌剤フラッシュオフシステムであれば、近年の世界的感染症拡散状況に鑑み、フィルター部材の濾面に付着したゴミ粒子に含まれる感染症ウイルスを確実に不活化させることができ、また、フィルター部材の濾面に例えばハイドロAG(登録商標)抗菌剤多層被膜をスピ-デイに形成させることが出来る。
【0012】
さらに、本発明によるフィルター部材への抗菌剤フラッシュオフシステムによれば、いわゆる落下寸前のタレ限界での薄膜塗装の塗り重ねによって抗菌AG被膜粒子からなる液状抗菌剤を確実にフィルター部材の濾面にフラッシュオフすることができ、また抗菌剤被膜の膜厚をコントロ-ル出来る。
【0013】
すなわち、一度にコーテイングスプレ-をする抗菌剤(例えばハイドロAG(登録商標))の膜厚は3ミクロン~5ミクロンであり、コーテイングスプレ-作業後、すぐにフラッシュオフ炉に投入し、フィルター内部に染み込んでアルコ-ル分を揮発させることで、直ちに2回目あるいは3回目のフラッシュオフ作業ができ、もって量産性を確保できると共に、毎回のフラッシュオフ作業により抗菌被膜を濾面に確実に付着させて濾材への密着性を向上させることが出来るとの優れた効果を奏するのである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るエア-霧化式塗装設備の概略構成を説明する構成説明図(1)である。
図2】本発明に係るエア-霧化式塗装設備の概略構成を説明する構成説明図(2)である。
図3】本発明に係るフラッシュオフ設備の概略構成を説明する正面図である。
図4】本発明に係るフラッシュオフ設備の概略構成を説明する右側面図である。
図5】本発明に係るフラッシュオフ設備の概略構成を説明する左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図に示す実施例に基づいて説明する。
図1図2は本発明による多層膜塗装、多層膜フラッシュオフシステムの主要ブースの1つであるエア-霧化式塗装設備1の構成を示す概略説明図である。
【0016】
エア-霧化式塗装設備1には、作業者がスプレーガン2によって中性能フィルターなどのフィルター部材3の濾面7にAG(銀)粒子を含んで構成された液状抗菌剤(例えばハイドロAG(登録商標))4をスプレー塗装する作業台5が設けられている。そして、作業者はフィルター部材3の両面の濾面7をスプレー塗装する。該エア-霧化式塗装設備1の上方には換気扇6が取り付けられており、作業中の安全性を確保すべく充分な換気が企図されている。
【0017】
次に、図3図4に本発明における他の主要ブースであるフラッシュオフ設備8を示す。
該フラッシュオフ設備8は、乾燥ボックス9が縦方向に複数段積み上げて構成された乾燥棚10が横方向に数列設けられて乾燥ブース11が形成されている。図3図4に示す実施例では、乾燥ボックス9が縦方向に3段積み上げて構成された乾燥棚10が横方向に6列設けられて乾燥ブース11が形成されている。しかし、この3段や6列の数に限定されるものではない。すなわち、抗菌フィルターの生産量ニーズによりすみやかに増減出来る構成にすることが出来る。
【0018】
符号12は空気循環設備を示し、該空気循環設備12には、外部の空気を導入する導入開口13が設けられており、該導入開口13近傍位置には導入した外部空気を暖めて所定温度の温風にする例えばヒーター及びヒーター温度調節部材などを用いた温度調節装置22が設けられている。
【0019】
また、空気循環設備12内には導入開口13から取り込んだ外部空気につき、強制的に乱気流を、すなわち空気中に渦を生じさせて乱れさせ、不規則になった気流を、おこさせて奥側に誘導する空気誘導路14が設けられている。そのため空気誘導路14内にはバッフルプレート15が設けられており、外部空気につき強制的に乱気流を起こさせるものとしている。乱気流にする理由については後述する。
【0020】
符号16は例えばファンと該ファンを起動するモータなどで構成された強制空気循環装置であり、前記乱気流となった外部空気と後述する既に循環している循環空気とを合流させるべく前記外部空気や循環空気が常に流動する様に構成している。
前記強制空気循環装置16から送出された外部空気と循環空気は、下側空気流通路17から複数列、本実施例では6列に配列されたそれぞれの乾燥棚10内に導入されるよう構成されている。
【0021】
ここで前記下側空気流通路17とそれぞれの乾燥棚10との境には調節ダンパ18が設けられており、乾燥棚10内に導入される乾燥用の前記外部空気と循環空気の空気量が調節できる様に構成されている。この調節ダンパ18による暖波開閉幅の調節は後述する制御装置23によって行っても構わないし、手動で行えるよう構成しても構わない。
【0022】
符号19は上側空気流通路であり、それぞれの乾燥棚10に導入された空気をフィルター部材3の両濾面7間を通過させ、前記フィルター部材3をフラッシュオフさせた後、前記空気はフラッシュオフ設備8の上側に配置された該上側空気流通路19に送出される。
【0023】
そして、この側空気流通路19に送出された一部の空気、すなわち前記両濾面7間を通過し、フラッシュオフする際に、濾面7に塗布された液状抗菌剤4に含有されたアルコール分を含んだ空気を天井吊り換気ファン20によって排気口21により外部へ排出するのである。そして、前記空気の一部は循環して空気誘導路14に戻るよう構成されている。
【0024】
しかして、エアー噴霧式塗装設備1で両側濾面7にAG(銀)粒子を含んで構成された液状抗菌剤(例えばハイドロAG(登録商標))4がスプレー塗装されたフィルター部材3は、前記フラッシュオフ設備8のそれぞれの乾燥棚10にある乾燥ボックス9内に配置される。
その後、空気循環設備12が起動され、外部空気が所定温度に暖められ、かつ乱気流になって前記強制循環装置16により下側空気流通路17へ誘導される。
【0025】
さらに、前記空気はそれぞれの乾燥棚10に設置された乾燥ボックス9内のフィルター部材3の一方側濾面7から他方側の濾面7に通過するよう構成され、該空気が通過することによって両濾面7にスプレーされたAG(銀)粒子を含んで構成された液状抗菌剤(例えばハイドロAG(登録商標))4が前記両濾面7に固着され、いわゆるフラッシュオフされる。
【0026】
すなわち、前記空気は、フィルター部材3の一方側濾面7から他方側の濾面7に通過し、各乾燥棚10を通過した空気は上側空気流通路19に導入され、一部は外部へ排出されるが、一部は循環する。
【0027】
上記のように、本発明の多層膜塗装、多層膜フラッシュオフシステムは、前述の各主要ブースを有しており、例えば左側主要ブースには、エア-霧化式塗装設備1が設けられ、右側にはフラッシュオフ設備8が設けられる。
そして、左右の主要ブースでの塗装及びフラッシュオフ作業の繰り返しで例えばフルター部材3につきハイドロAG(登録商標)被膜形成が完成できるシステムとなっているのである。
【0028】
ここで、フラッシュオフ設備8における空気の送気ループは、新鮮な外部空気の取り入れ及びヒーテイングルートを有している。すなわち、該ルートは導入開口13、温度調節装置22などで構成される。
【0029】
次に、メイン循環送気ループは、空気誘導路14、強制循環装置16、下側空気流通路17、調節ダンパ18、各乾燥棚10、セットされたフィルター部材3の両濾面7の間、上側空気流通路19で構成される。また、排気エア-ルートは、天井吊り換気ファン20、排気口21で構成される。
【0030】
なお、前記強制循環装置16に用いられる例えば循環用ファンや天井吊り排気ファン20はファンの回転数が変更できて、これにより空気の流通速度などが変更できるよう構成されている。さらに、前記調節ダンパ18によって各乾燥棚10に導入される空気の風量を変えることも出来、フィルター部材3へ塗装された液状抗菌剤が含有する濾面7の内部に染み込んでいるアルコ-ルの揮発乾燥スピ-ドに基づくフラッシュオフスピ-ドがきめ細かに調整できる構成となっている。
【0031】
なお、前記濾面7内部に染み込んでいるアルコ-ルの揮発乾燥スピ-ドは、強制循環装置16の例えば循環ファンの回転速度を可変化することで調整出来ることは前述の通りであるが、ファン自体を大型化したり、小型化したりして調節することも出来る。
【0032】
ところで、フィルター部材3の両濾面7に液状抗菌剤(例えばハイドロAG(登録商標))4をスプレー塗装する回数は1回に限定されるものではない。2回、3回と複数回行われることもある。よって、そのような場合、3段になっている乾燥棚10において、下1段目は1回塗装のフィルター部材3、2段目が2回塗装のフィルター部材3、3段目が3回塗装したフィルター部材3としてフィルター部材3を分けて配置することも可能である。段を増加させれば、4回塗装のものや5回塗装のフィルター部材3を組み込むことも可能である。
【0033】
また、外部空気は温度調節装置22によってその温度が所定の温度になるよう各乾燥棚10へ送出される際の基本設定温度を35℃乃至40℃とするが如く設定ることが可能である。
尚、循環する空気の高温度になり過ぎる高温度異常は、ハイカットコントロ-ラなどの安全装置を設けることにより検知することができ、検知の際には、ヒータOFFを行うなどの安全インタ-ロックなどの操作を行うことが出来る。
【0034】
ところで、塗装されたフィルター部材3は、前述のようにフラッシュオフ揮発乾燥され、フィルター濾面7内部に染み込んでいるアルコ-ル分を含んだ前記空気を50%乃至60%を排気する必要がある。なお、約40%程度は再度リサイクルされるべく戻り空気誘導路25に戻すことが可能である。
しかし、前記60%及び40%の比率に限定されるものではなく、フラッシュオフするフィルター部材3の種類や循環している空気の流量や速度によって変化させることが出来る。
【0035】
すなわち、排気側には排気調節装置24が設けられて排気量が調節でき、戻り空気誘導路25内には戻り量調節装置26が設けられて前記の比率が変更できるように構成されている。
天井吊り排気ファン20、強制循環装置16には、風量制御用の回転可変ファンが採用されており、乾燥完了後は省エネモードの運転にすることが出来る。
【0036】
さらに、本発明では、フラッシュオフ設備8で用いられるフラッシュオフに使用される空気の総循環風量および排気風量は前述した強制循環装置16や天井吊り排気ファン20の回転数を制御する動作のほか調節ダンパ18での開口幅調節にて前記総循環風量および排気風量の調整が可能となっており、かつ新鮮な外部空気の取り入れ量も連動して制御できるシステムとなっている。すなわち、制御装置23によってフラッシュオフ設備8で用いられるフラッシュオフに使用される空気の総循環風量および排気風量が制御でき、強制循環装置16や天井吊り排気ファン20の回転数をも制御出来、調節ダンパ18での開口幅調節も場合によっては制御できる様に構成できる。もって前記総循環風量および排気風量、さらには新鮮な外部空気の取り入れ量も連動して制御できる構成が採用できる。
【0037】
ところで、本発明によるフラッシュオフ設備8は、いわゆる強制プッシュ・プル式の加圧・引き圧印加でフィルター部材3の両濾面7間を温風通過させて乾燥させる方式となっており、もって前記温風がフィルター部材3の濾面7間を通過する速度を変化させることで、フラッシュオフ乾燥速度が可変できるものともなっている。すなわち、図3を参照して説明すると、各乾燥棚10において、セットしてあるフィルター部材3の右側空間には強制空気循環装置16によりプッシュ(加圧)された空気が導入される。そしてフィルター部材3の両濾面7間を通過してフィルター部材3の左側空間に移動する。左側空間に移動した空気は天井吊り排気ファン20によってプルされて(引っ張られて)上側空気流通路19に至る。
【0038】
しかるに前記強制プッシュ・プル式の加圧・引き圧印加の程度は若干引き圧が勝る程度が好ましく、前記制御装置23は、強制循環装置16や天井吊り排気ファン20の回転数、調節ダンパ18での開口幅調節、排気調節装置24の調節、戻り量調節装置26等を制御して前記強制プッシュ・プル式の加圧・引き圧印加の程度を設定しているのである。
【0039】
さらに、フラッシュオフ設備8の制御装置23による制御は、全体循環フラッシュスピ-ドの調整可変化、複数列の乾燥棚10内において、前記複数列の各列別での風量可変による調整可変化、乾燥ボックス9毎での風量可変調整を可能としている。すなわち乾燥棚10の下段は風量が強く、上段になるほど風量が弱くなるため、下段側と上段側に配置するフィルター部材3の種類を代えるが如きである。
【0040】
上記の様に全体風量を可変化でき、また各ファンの回転数を可変化させて循環風量を調整でき、乾燥棚10の各列毎の温風取り入れ量を可変化させ(調節ダンパー18によって下部の入口開度調整)、さらには各乾燥ボックス9内に配置されるフィルター部材3のフィルター種別圧損配列をも調整でき、もっていかなる種類のフィルター部材3であってもフラッシュオフスピ-ドを自在に調整できる構成となっている。
【0041】
例えば、本実施例のフラッシュオフ設備8の、全18室のすべてに空気抵抗110PASのフィルターを使用したいわゆる「薫風」と称されるフィルター部材3をセットし、そのフラッシュオフを行うことが出来るが、異なった空気抵抗のフィルターを使用したフィルター部材3をセットして直ちにフラッシュオフ作業を行うことも出来るのである。
【0042】
すなわち、いわゆる「涼風」と称される空気抵抗60PAS レベルのフィルターを用いたフィルター部材3にセット変えしたとしても、風量、空気の流速、空気の温度などが簡単に制御装置によって変えられる構成であり、いずれの種類のフィルター部材3であったとしても確実なフラッシュオフ乾燥作業が行える。
【0043】
ここで、本発明による多層膜塗装・多層膜フラッシュオフシステムの一運用例につき、簡単に説明する。
例えば左側にエア-霧化式塗装設備1を設け、該エア-霧化式塗装設備1で1回目の塗装が施されたフィルター部材3は右側のフラッシュオフ設備8へ移動される。
1回目の塗装が施されたフィルター部材3は、フラッシュオフ設備8に運ばれて乾燥棚10における下段1番目の乾燥ボックス9へ収納され、フラッシュオフ作業が行われる。
フラッシュオフ後、フィルター部材3はすぐにエア-霧化式塗装設備1に移動され、2回目の塗装が施される。
そして、2回目の塗装後、再度フラッシュオフ設備8に運ばれ、乾燥棚10における2段目の乾燥ボックス9へセットされ、2回目の乾燥作業が行われる。
その後、3回目の塗装後、再度フラッシュオフ設備8に運ばれ、乾燥棚10における3段目の乾燥ボックス9へセットされ、3回目の乾燥作業が行われる。
【0044】
上記のように本発明であれば、乾燥棚10の段毎に乾燥回数の異なるフィルター部材3をセットする構成が採用でき、フラッシュオフ乾燥するフィルター部材3は何回目の塗装乾燥のフィルター部材3であるのかが、混乱しない構成にできるとともに、迅速な作業が出来るようエアー噴霧塗装設備1とフラッシュオフ設備8とを例えば左右対象の配置とすることも相まって量産製造がスムーズ出来るように構成されている。
【0045】
なお、1回塗装でのWET(濡れた状態)での膜厚は3乃至5ミクロン程度であり、フラッシュオフ乾燥すると0.1ミクロン程度の被膜となるが、塗装を3回繰り返すと膜厚は0.3ミクロン乃至0.4ミクロンレベルの多層膜が構成される。
【0046】
よって、AG粒子の密度が向上することとなり充分な抗菌性を取得でき、優良な抗菌フィルターとして空気圧損を大きく増加させずに機能させることが出来る。
尚、前記の3回塗装、3回被膜に限定されるものではなく、4回塗装、4回被膜、5回塗装、5回被膜の抗菌フィルターを構成することも可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 エアー噴霧式塗装設備
2 スプレーガン
3 フィルター部材
4 液状抗菌剤
5 作業台
6 換気扇
7 濾面
8 フラッシュオフ設備
9 乾燥ボックス
10 乾燥棚
11 乾燥ブース
12 空気循環設備
13 導入開口
14 空気誘導路
15 バッフルプレート
16 強制循環装置
17 下側空気流通路
18 調節ダンパ
19 上側空気流通路
20 天井吊り排気ファン
21 排気口
22 温度調節装置
23 制御装置
24 排気調節装置
25 戻り空気誘導路
26 戻り量調節装置
図1
図2
図3
図4
図5