(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092050
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】吹き出しユニット、風量制御方法、制御装置及びシステム天井
(51)【国際特許分類】
F24F 3/044 20060101AFI20230626BHJP
F24F 13/06 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
F24F3/044
F24F13/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207027
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(72)【発明者】
【氏名】青山 剛士
(72)【発明者】
【氏名】秋山 正浩
(72)【発明者】
【氏名】平原 美博
【テーマコード(参考)】
3L053
3L080
【Fターム(参考)】
3L053BB01
3L080BA06
3L080BA09
3L080BB01
(57)【要約】
【課題】主ダクトに設けられたダンパによって風量が絞られても、吹き出しユニットの吹き出し口からの吹き出し風速を所定の値に維持する。
【解決手段】吹き出し部110に設けられた開口率が可変な吹き出し口と、ケーシング101内において吹き出し部110の上流側に配置された、開口率が可変な風量調整部120と、風量調整部120の上流側の流路内に設けられた風速センサ130とを有し、風速センサ130が検出した風速に基づいて、風量調整部120の開口率を制御し、吹き出し口からの吹き出し風速が所定の風速となるように、吹き出し口の開口率をコントローラ102が制御する。
【選択図】
図21
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吹き出し口から目的空間に給気を吹き出す吹き出しユニットであって、
吹き出し側端面に設けられた開口率が可変な吹き出し口と、
ユニットのケーシング内において前記吹き出し口の上流側に配置され、開口率が可変な風量調整部と、
前記風量調整部の上流側の流路内に設けられた風速測定部材と、
制御部とを有し、
前記制御部は、
前記風速測定部材の測定結果に基づいた風量が、所定の風量となるように前記風量調整部の開口率を制御し、
前記風量調整部の開口率の制御に伴う風量の変化に基づいて、前記吹き出し口からの吹き出し風速が所定の風速となるように、前記吹き出し口の開口率を制御することを特徴とする、吹き出しユニット。
【請求項2】
前記風量調整部は、ひし形の開口部を複数有する第1の通気板と、当該第1の通気板と相対的に平行移動可能な、ひし形の開口部を複数有する第2の通気板とを有し、前記平行移動によって前記第1の通気板と第2の通気板の各開口部の一部または全部が重なることを特徴とする、請求項1に記載の吹き出しユニット。
【請求項3】
吹き出す給気の風量を制御する風量制御方法であって、
給気を吹き出す吹き出し口の開口率を可変とし、
前記吹き出し口の上流側に、開口率が可変な風量調整部を配置し、
前記風量調整部の上流側の流路内に風速測定部材を配置し、
前記風速測定部材の測定結果に基づいた風量が、所定の風量となるように前記風量調整部の開口率を制御し、
前記風量調整部の開口率の制御に伴う風量の変化に基づいて、前記吹き出し口からの吹き出し風速が所定の風速となるように、前記吹き出し口の開口率を制御することを特徴とする、風量制御方法。
【請求項4】
吹き出す給気の風量を制御可能な吹き出しユニットを制御する制御装置であって、
前記吹き出しユニットは、
吹き出し側端面に設けられた開口率が可変な吹き出し口と、ユニットのケーシング内において前記吹き出し部材の上流側に配置され、開口率が可変な風量調整部と、前記風量調整部の上流側の流路内に設けられた風速測定部材と、を有し、
前記制御装置は、
前記風速測定部材の測定結果に基づいた風量が、所定の風量となるように前記風量調整部の開口率を制御し、前記風量調整部の開口率の制御に伴う風量の変化に基づいて、前記吹き出し口からの吹き出し風速が所定の風速となるように、前記吹き出し口の開口率を制御するように、
構成されていることを特徴とする、制御装置。
【請求項5】
請求項1または2のいずれか一項に記載した吹き出しユニットを、複数台、天井部に配置されたシステム天井であって、
前記天井部を構成する天井パネル間に、前記吹き出しユニットが設けられ、
前記天井パネルの上方空間に配置された給気ダクトに、前記吹き出しユニットにおける前記風量調整部の上流側の流路が接続されたことを特徴とする、システム天井。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吹き出しユニット、風量制御方法、吹き出しユニットの制御装置及び吹き出しユニットを有するシステム天井に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されたように、従来は天井吹き出しユニットごとに直接空調空気の風量を調節するものはなく、VAV方式によって主ダクトに設けられたダンパの開度を調整して、一括して風量を調節していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の天井吹き出しユニットの吹き出し口は、開口面積が一定なため、例えば省エネルギー運用などで吹き出し口からの必要風量が減らされるなどして、主ダクト(所定の領域ごとの集合ダクト)に設けられたダンパ(VAVユニット)によって風量を絞られると、吹き出し口からの吹き出し風速が低下して、給気の到達距離が短くなるという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、主ダクトに設けられたダンパによって風量が絞られても、ユニットの吹き出し口からの吹き出し風速を維持するようにして、前記問題の解決を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、吹き出し口から目的空間に給気を吹き出す吹き出しユニットであって、
吹き出し側端面に設けられた開口率が可変な吹き出し口と、ユニットのケーシング内において前記吹き出し口の上流側に配置され、開口率が可変な風量調整部と、前記風量調整部の上流側の流路内に設けられた風速測定部材と、制御部とを有し、
前記制御部は、前記風速測定部材の測定結果に基づいた風量が、所定の風量となるように前記風量調整部の開口率を制御し、前記風量調整部の開口率の制御に伴う風量の変化に基づいて、前記吹き出し口からの吹き出し風速が所定の風速となるように、前記吹き出し口の開口率を制御することを特徴としている。
【0007】
本発明によれば、風速測定部材の測定結果に基づいた風量が、所定の風量となるように前記風量調整部の開口率を制御し、前記風量調整部の開口率の制御に伴う風量の変化に基づいて、前記吹き出し口からの吹き出し風速が所定の風速となるように前記吹き出し口の開口率を制御するので、例えば主ダクトに設けられたダンパによって吹き出しユニットに送られる風量が絞られても、ユニットの吹き出し口からの吹き出し風速を維持することが可能である。
【0008】
前記風量調整部は、ひし形の開口部を複数有する第1の通気板と、当該第1の通気板と相対的に平行移動可能な、ひし形の開口部を複数有する第2の通気板とを有し、前記平行移動によって前記第1の通気板と第2の通気板の各開口部の一部または全部が重なるような構成としてもよい。
【0009】
かかる構成を有する風量調整部によれば、第1の通気板と第2の通気板とを相対的に平行移動させることにより、開口部の開口率を平行移動距離の2乗に比例して変化させることができる。そのため、丸形の開口部を複数有する通気版を用いる場合と比較してイコールパーセント特性に近くなり、したがって開口率の制御、風速の制御が容易である。また、有効開口面積を大きく取ることができる。
【0010】
別な観点による本発明は、吹き出す給気の風量を制御する風量制御方法であって、給気を吹き出す吹き出し口の開口率を可変とし、前記吹き出し口の上流側に、開口率が可変な風量調整部を配置し、前記風量調整部の上流側の流路内に風速測定部材を配置し、前記風速測定部材の測定結果に基づいた風量が、所定の風量となるように前記風量調整部の開口率を制御し、前記風量調整部の開口率の制御に伴う風量の変化に基づいて、前記吹き出し口からの吹き出し風速が所定の風速となるように、前記吹き出し口の開口率を制御することを特徴としている。
【0011】
さらに別な観点による本発明は、吹き出す給気の風量を制御可能な吹き出しユニットを制御する制御装置であって、
前記吹き出しユニットは、吹き出し側端面に設けられた開口率が可変な吹き出し口と、ユニットのケーシング内において前記吹き出し部材の上流側に配置され、開口率が可変な風量調整部と、前記風量調整部の上流側の流路内に設けられた風速測定部材と、を有し、
前記制御装置は、前記風速測定部材の測定結果に基づいた風量が、所定の風量となるように前記風量調整部の開口率を制御し、前記風量調整部の開口率の制御に伴う風量の変化に基づいて、前記吹き出し部からの吹き出し風速が所定の風速となるように、前記吹き出し口の開口率を制御するように、構成されていることを特徴としている。
【0012】
また本発明にかかるシステム天井は前記した吹き出しユニットを、複数台、天井部に配置されたシステム天井であって、前記天井部を構成する天井パネル間に、前記吹き出しユニットが設けられ、前記天井パネルの上方空間に配置された給気ダクトに、前記吹き出しユニットにおける前記風量調整部の上流側の流路が接続されたことを特徴としている。
【0013】
本発明によれば、天井部に設けられた複数の吹き出しユニットが個々に風量制御が可能で、吹き出し風速を所定の速度に維持できるから、例えば間仕切り等で室内空間が複数のゾーンに仕切られた場合、個々のゾーンに対して最適な給気環境を実現でき、しかも間仕切りが移動してゾーン構成が変更になっても、天井裏空間のダク配置を変更することなく、最適な給気環境を実現可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、主ダクトに設けられたダンパによって風量が絞られても、ユニットの吹き出し口からの吹き出し風速を維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態にかかるシステム天井における天井下地構造の構成の概略を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1の天井下地構造の構成の概略を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図1の天井下地構造の構成の概略を模式的に示す側面図である。
【
図4】
図1の天井下地構造で採用された耐震接続部材の構成の概略を模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図4の耐震接続部材の構成の概略を模式的に示す正面図である。
【
図6】
図4の耐震接続部材の構成の概略を模式的に示す側面図である。
【
図7】
図4の耐震接続部材に設けられる筒状部材の配置例を模式的に示す横断面図である。
【
図8】
図4の耐震接続部材に設けられる筒状部材の他の配置例を模式的に示す横断面図である。
【
図9】
図4の耐震接続部材の架橋部材の配置例を模式的に示す平面図である。
【
図10】
図4の耐震接続部材の架橋部材の配置例を模式的に示す側面図である。
【
図11】
図4の耐震接続部材の架橋部材の他の配置例を模式的に示す側面図である。
【
図12】
図1の天井下地構造に対する設備配管の施工例を模式的に示す側面図である。
【
図13】
図1の天井下地構造に対する設備器具の施工例を模式的に示す側面図である。
【
図14】
図1の天井下地構造に対する設備器具の施工例を模式的に示す側面図である。
【
図15】風量調整機構の構成の概略を示す説明図である。
【
図16】
図1の天井下地構造における設備器具の配置替えにかかる施工方法の一例を模式的に示す側面図である。
【
図17】他の天井下地構造の構成の概略を模式的に示す側面図である。
【
図18】
図1の天井下地構造の施工方法の概略を模式的に示す説明図である。
【
図19】
図1の天井下地構造の施工方法の概略を模式的に示す説明図である。
【
図20】
図1の天井下地構造の施工方法の概略を模式的に示す説明図である。
【
図21】実施の形態にかかる吹き出しユニットの正面図である。
【
図22】実施の形態にかかる吹き出しユニットの底面図である。
【
図23】実施の形態にかかる吹き出しユニットにおける風量調整部の平面図である。
【
図24】実施の形態にかかる吹き出しユニットにおける風量調整部の平面図である。
【
図25】従来のVAV方式を採用したシステム天井を模式的に示した説明図である。
【
図26】
図25のシステム天井において間仕切りを移動させた後の説明図である。
【
図27】実施の形態にかかる吹き出しユニットを採用したシステム天井を模式的に示した説明図である。
【
図28】
図27のシステム天井において間仕切りを移動させた後の説明図である。
【
図29】
図27のシステム天井の吹き出しユニットからの風量信号を作業員がタブレットPCで受信している様子を示す説明図である。
【
図30】
図27のシステム天井に採用できる空調ユニットの構成を模式的に示した説明図である。
【
図31】
図30の空調ユニットを天井裏空間に設けたシステム天井を模式的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。
図1~
図3は、それぞれ実施の形態にかかるシステム天井における天井下地構造1の構成の概略を示す斜視図、平面図及び側面図である。なお、以下の説明において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
天井下地構造1は、建築構造物における居室Rの天井裏空間Sを画成する構造体であり、居室Rの仕上げ天井として機能する後述の天井パネル42が下面に取り付けられる。天井裏空間Sは、かかる天井パネル42と建築構造物の天井スラブCとの間に形成される空間である。
【0018】
天井下地構造1は、建築構造物の天井スラブCから吊下される複数の吊下部材10と、それぞれの吊下部材10の下部に接続される耐震接続部材20と、隣接する耐震接続部材20の間を接続するように架設される架橋部材30と、耐震接続部材20の下部に接続される仕上天井ユニット40と、を有している。
【0019】
吊下部材10は、建築構造物の天井スラブCに所定間隔で埋設されたインサート11から垂下して設けられ、天井下地構造1及び当該天井下地構造1に配設される天井裏設備Pを天井スラブCから吊下して固定する。吊下部材10としては、例えばインサート11に接続される全ネジ(図示参照)や、例えばインサート11に接続されたフック等に引っ掛けて支持されるワイヤ等(図示省略)を採用できる。
【0020】
吊下部材10(インサート11)は、平面視において後述の架橋部材30を格子状に配置できるように、天井スラブCに対して等間隔で設置される。吊下部材10の設置間隔は、例えば後述の天井裏設備Pに規定される支持間隔よりも小さく設定される。
【0021】
耐震接続部材20は、天井スラブCから垂下される複数の吊下部材10と、水平方向に架設される後述の架橋部材30とを接続するための部材である。天井下地構造1においては、このように耐震接続部材20により吊下部材10と架橋部材30とを接続して、後述の仕上天井ユニット40が設置される枠体を形成する。
【0022】
図4~
図6は、耐震接続部材20の構成の概略を示す斜視図、正面図及び側面図である。
【0023】
耐震接続部材20は、架橋部材30が接続され得る接続口をなす筒状部材21と、筒状部材21を挟み込むようにして固定する上板状部材22a及び下板状部材22b(以下、これらを併せて単に「板状部材22」という場合がある。)と、下板状部材22bの下面から下方に延伸して設けられる耐震プレート23と、を有している。
【0024】
筒状部材21は、上述したように平面視において後述の架橋部材30が格子状に配置されるように、平面視において複数の架橋部材30を直交して接続可能に配置されている。具体的には、例えば
図7に示すように、4本の架橋部材30がそれぞれの交差角度が90°となるように接続可能に構成される。また例えば、
図8に示すように、1本の架橋部材30を貫通して設けるとともに、貫通して設けられた架橋部材30と直交するように2本の架橋部材30を接続可能に構成されていてもよい。
【0025】
なお、筒状部材21は架橋部材30を挿通して接続可能な断面形状を有している。すなわち、例えば架橋部材30が角パイプである場合には断面形状が四角形状で形成され(図示参照)、例えば架橋部材30が管部材である場合には断面形状が円環形状で形成される(図示省略)。
【0026】
上板状部材22a及び下板状部材22bは筒状部材21を上下方向から挟み込むように対向して配置され、筒状部材21の位置関係(接続される架橋部材30の延伸方向)を固定する。また、上板状部材22aには貫通孔24が形成され、当該貫通孔24に吊下部材10を例えば螺合することにより、吊下部材10に耐震接続部材20を固定可能に構成されている。
【0027】
なお、板状部材22は平面視において矩形状や円形状等、任意の形状により形成することができるが、例えば図示のように板状部材22を矩形状に形成する場合、筒状部材21の設置方向(架橋部材30の延伸方向)を当該板状部材22の頂部に対応させることにより、耐震接続部材20の構造的な強度を向上できる。
【0028】
耐震プレート23は、地震等による天井下地構造1の揺動、より具体的には耐震接続部材20の下方に設けられる仕上天井ユニット40の揺動を吸収するための板状の部材であり、下板状部材22bから下方に延伸して設けられる。耐震プレート23は、例えば上辺23aが下辺23bと比較して長く形成された、正面視において略台形に形成される。耐震プレート23は、長辺である上辺23aを水平方向に折り曲げることで、当該折り曲げ部分が下板状部材22bの下面に固定される。また耐震プレート23は、短辺である下辺23bを水平方向に折り曲げることで、当該折り曲げ部分が後述の仕上天井ユニット40のパネル用枠体41と接続される。
【0029】
耐震プレート23は、このように上辺23a及び下辺23bに折り曲げ部分が形成されることで、当該耐震プレート23の構造的な強度を向上できる。
【0030】
また耐震プレート23は、図示のように上辺23aが架橋部材30の延伸方向と一致するように、換言すれば架橋部材30により形成される格子形状に沿うように、下板状部材22bの下面に固定される。天井下地構造1は、格子形状を構成する架橋部材30の延伸方向に対する揺動が特に懸念されるが、このように耐震プレート23を格子形状に沿って設けることで、天井下地構造1で懸念される揺動を適切に減衰できる。
【0031】
また実施の形態にかかるシステム天井における天井下地構造1においては、図示のように、1つの架橋部材30により接続される、2つの耐震接続部材20を、それぞれの耐震プレート23の面方向が互いに交差(望ましくは直交)するように交差配置で設置する。これにより、架橋部材30の延伸方向(直交方向)のそれぞれに対する天井下地構造1の揺動を適切に吸収でき、当該天井下地構造1の耐震性を向上できる。
【0032】
なお、図示は省略するが、このように架橋部材30の延伸方向(直交方向)のそれぞれに対する天井下地構造1の揺動を吸収する観点から、耐震接続部材20の耐震プレート23は、架橋部材30の延伸方向に沿って、平面視において十字状に配置されていてもよい。
【0033】
なお、図示は省略するが、天井下地構造1の耐震性を向上させる観点からは、下板状部材22bの下面に設けられる耐震プレート23に加えて、上板状部材22aの上面から上方に延伸するように、更に耐震プレート23が設けられていてもよい。このとき、上板状部材22aの上面側に設けられる耐震プレート23を、平面視において下板状部材22bの下面側に設けられる耐震プレート23と交差して設けることで、天井下地構造1の耐震性を更に適切に向上できる。
【0034】
また耐震接続部材20には、
図6に示すように、上辺23aの折り曲げ部分と下辺23bの折り曲げ部分とを接続するように縦材25が設けられていてもよい。縦材25は、このように上辺23aと下辺23bとを接続するように、耐震プレート23の板面と並行して設けられる。そして、このように縦材25が設けられることにより、耐震プレート23の構造的な強度を向上できる。縦材25としては、例えば全ネジ(図示参照)やワイヤ等(図示省略)を採用できる。また、縦材25として全ネジを用いる場合には、天井スラブCから吊下される吊下部材10と縦材25を一体に構成してもよい。すなわち、板状部材22を貫通させ、耐震プレート23の下辺23bに吊下部材10を接続するようにしてもよい。
【0035】
なお、この例では筒状部材21に対して架橋部材30を挿通して接続したが、例えば筒状部材21の端部と架橋部材30の端部を相互に嵌め込んで接続されるように、筒状部材21を構成してもよい。
【0036】
再び
図1~
図3を参照した天井下地構造1の説明に戻る。架橋部材30は、吊下部材10の下部において、水平方向に延伸するように配設される部材であって、2つの耐震接続部材20の間を接続するように架設されることで、建築構造物の天井スラブCから吊下される。架橋部材30としては、例えばステンレスやアルミニウム等から成る角パイプや管部材等を採用できる。架橋部材30は、耐震接続部材20の筒状部材21と接続されることで、上述したように平面視において格子形状を形成する。
【0037】
また、天井下地構造1の端部に配置される架橋部材30は、
図9及び
図10に示すように、その先端部が建築構造物の天井スラブCに形成された大梁Bに当接して設けられることで、建築構造物に対して固定されることが望ましい。端部に配置される架橋部材30の長さは、例えば所定長さの架橋部材30を切断することにより調整してもよいし、また例えば架橋部材30を長手方向に伸縮自在に構成することにより調整してもよい。換言すれば、このように架橋部材30の長さを適宜調整することにより、架橋部材30の端部位置を任意に調整できる。
【0038】
この例では、このように、架橋部材30を大梁Bに対して当接させることで、天井下地構造1が水平方向に固定、すなわち、例えば地震等による天井下地構造1の水平方向の揺動が抑制され、当該天井下地構造1の耐震性が向上する。なお、大梁Bには、その表面を被覆するように防耐火被覆材Fが設けられる場合があるが、本発明にかかる技術においては、かかる防耐火被覆材Fを含めて「大梁」と呼称する場合があるものとする。
【0039】
なお、以下の説明においては、このように架橋部材30を建築躯体としての大梁Bに当接させることで、天井下地構造1を建築構造物に対して固定する場合を例に説明を行うが、架橋部材30が当接されるのは大梁Bでなくてもよい。具体的には、天井下地構造1を建築構造物に対して固定できれば、架橋部材30は建築躯体としての横梁や支柱等に当接されていてもよい。なお、前述の防耐火被覆材Fが、本発明の技術にかかる「建築躯体」に含まれる場合があるものとする。
【0040】
なお、例えば大梁Bに当接して設けられる複数の架橋部材30の間で長さに誤差がある場合や、大梁Bに建築上の誤差が生じている場合、又は防耐火被覆材Fの厚みに誤差がある場合、地震等による天井下地構造1の揺動に際して、大梁B(防耐火被覆材F)と適切に当接する架橋部材30と、適切に当接されない架橋部材30と、が発生する場合がある。このように一部の架橋部材30のみが大梁Bに当接する場合、地震等での揺動に際しての大梁Bに作用する荷重に偏りが生じ、天井下地構造1に損傷が生じるおそれがある。
【0041】
そこでこの例における架橋部材30の端部には、地震等での揺動に際して発生する荷重を吸収するための弾性部材31が設けられることが好ましい。弾性部材31としては、例えばバネやゴム等を採用できる。これにより、架橋部材30と大梁Bとの接触にかかる変位を弾性部材31で吸収でき、すなわち架橋部材30にかかる荷重を軽減して天井下地構造1の損傷を抑制できる。
【0042】
また、架橋部材30(弾性部材31)の端部に鋭利な部分が形成されている場合、これにより防耐火被覆材Fを剥離してしまうおそれがある。かかる防耐火被覆材Fの剥離を抑制するため、防耐火被覆材Fに当接される架橋部材30(弾性部材31)の端部には、大梁Bに面して支持材32が配置されることが好ましい。支持材32は、例えば図示のように大梁Bに面した平面を備えることが好ましい。このように支持材32を配置することで、防耐火被覆材Fの剥離を抑制できるとともに、上述した地震等での揺動に際して架橋部材30にかかる荷重分散させて軽減できる。
【0043】
なお、防耐火被覆材Fの剥離を抑制するという観点からは、架橋部材30(弾性部材31)の端部の鋭利な部分を無くすように非鋭利化処理を施してもよい。非鋭利化処理としては、例えば架橋部材30(弾性部材31)の端部に対する面取り加工(丸み加工)、弾性部材(例えばゴム等)の取り付け、又は面部材の取り付け等が挙げられる。このように架橋部材30(弾性部材31)の端部に鋭利な部分を無くすことにより、防耐火被覆材Fに損傷を与えることを抑制できる。
【0044】
なお、
図9及び
図10に示した実施の形態においては大梁Bの表面に設けられた防耐火被覆材Fに架橋部材30(支持材32)を当接させることにより天井下地構造1を固定したが、
図11に示すように、大梁Bに対して直接的に架橋部材30(支持材32)を当接させてもよい。
【0045】
また、
図9~
図11に示した例においては、架橋部材30(支持材32)を大梁Bに対して常時当接させたが、架橋部材30は、例えば地震等による天井下地構造1の揺動時にのみ大梁B(建築躯体)に対して当接されてもよい。かかる場合、通常時において架橋部材30の端部は大梁Bから所定の間隔をあけて配置される。
【0046】
仕上天井ユニット40は、耐震接続部材20の下方に吊下されるパネル用枠体41と、当該パネル用枠体41の下面に取り付けられる天井パネル42と、を有している。
【0047】
パネル用枠体41は、耐震プレート23の下辺23bの折り曲げ部分に接続されることで天井スラブCから吊下される部材であり、平面視において複数の天井パネル42を並べて取り付けられるように構成される。
【0048】
天井パネル42は、居室Rの仕上げ天井面を形成する板状の部材であり、例えば石膏ボード等により形成される。そして、このように天井パネル42が施工されることにより、当該天井パネル42と天井スラブCとの間に天井裏空間Sが形成される。
【0049】
なお、上述したように大梁Bに対して架橋部材30の長さ(端部の位置)が調整された場合、このように長さが調整された架橋部材30と対応する位置における仕上天井ユニット40(パネル用枠体41及び天井パネル42)についても、その長さが適宜調整可能である。すなわち、パネル用枠体41及び天井パネル42は、例えば切断により長さ(幅)が調整されてもよいし、伸縮可能に構成されていてもよい。また仕上天井ユニット40は、例えばこのように架橋部材30の長さに合わせて設置するため、端部幅の異なる仕上天井ユニット40が、予め各種用意されていてもよい。
【0050】
また、この例における天井下地構造1においては、側面視において、天井スラブC、吊下部材10及び架橋部材30に囲まれてなる第1の空間S1と、耐震接続部材20、架橋部材30及びパネル用枠体41に囲まれてなる第2の空間S2とが形成される。すなわち、本実施形態にかかる天井裏空間Sにおいては、第1の空間S1と第2の空間S2とが、上方(天井スラブC側)からこの順に形成されている。
【0051】
第1の空間S1には、
図1~
図3に示したように、天井裏設備P等が配設される。換言すれば第1の空間S1は、天井裏設備P等の配設用空間として作用する。天井裏設備Pは、例えば第1の空間S1を画成する吊下部材10や架橋部材30に対して、固定部材50を用いて固定されている。固定部材50としては、例えばU字金具やサドルバンド、又は蝶番式バンド等の任意の固定部材を採用できる。
【0052】
なお、第1の空間S1に配設される天井裏設備Pとしては、例えば空調用ダクト、空調用配管、循環ファン、排水配管や給水配管等の水配管、スプリンクラー配管、通気配管、ガス配管、電装配線、信号配線、電話配線、テレビアンテナ配線、ルータ、アンテナ、LANケーブル、又は各種センサ等、天井裏空間Sに配設され得る種々の設備等が任意に選択され得る。
【0053】
このように天井下地構造1においては、従来のように天井裏設備P等を天井スラブCに対して吊下固定することに代え、天井下地構造1を構成する吊下部材10や架橋部材30に対して固定部材50を用いて固定する。このように、実施の形態にかかる天井下地構造1は天井パネル42が設置される下地材としての機能と、天井裏設備Pを固定する支持材としての機能を兼用する。これにより、本実施の形態においては天井下地構造1を構成する吊下部材10のみを天井スラブCから垂下させればよいため、天井スラブCに埋設されるインサート及び垂下される吊下部材の設置数を従来と比較して大幅に削減できる。
【0054】
このとき、天井スラブCに対するインサート11の埋設位置は、それぞれの天井裏設備Pの配管経路に対応させて決定する必要がなく、天井下地構造1を構成する吊下部材10を垂下するための所定間隔で決定されればよい。すなわち、天井裏設備P等の配管経路に依らず、所定間隔ごとに機械的にインサート11の埋設位置を決定できるため、天井下地構造1の施工にかかる時間を適切に削減できる。
【0055】
また、このように天井下地構造1から垂下される吊下部材10の数が削減されるため、当該吊下部材10と天井裏設備Pの配設経路との干渉が抑制され、天井裏空間Sにおける天井裏設備Pの配管経路設計、及び施工が極めて容易になる。
【0056】
また更に、例えば天井裏設備Pの配管経路に設計変更が生じた場合であっても、天井裏設備Pは架橋部材30等に固定することのみによって配設されるため、従来のように天井スラブCに対して新たなインサート11を埋設する必要がなく、吊下部材10を新たに用意する必要もない。これにより、設計変更にかかる天井裏設備Pの施工にかかるコストや労力を大幅に削減できる。
【0057】
また前記した例によれば、天井裏設備Pは天井スラブC及び大梁Bに対して固定された天井下地構造1に対して直接的に固定される。これにより、天井裏設備Pは天井下地構造1と一体に構成されるため、天井スラブCに対して独立して天井裏設備Pが吊下される場合と比較して、容易に当該天井裏設備Pの耐震性能を担保することができる。
【0058】
さらに前記した例によれば、吊下部材10(インサート11)の設置間隔は、上述のように天井下地構造1に配設される天井裏設備Pに規定される支持間隔よりも小さく設定される。このため、配管経路中に存在する吊下部材10や架橋部材30毎に天井裏設備Pを固定することで、適切に施工基準を満たした支持間隔で天井裏設備Pの配設を行うことができる。
【0059】
なお、天井裏設備Pは、その種類によって所定の勾配をつけて配設する必要がある。かかる場合、例えば
図12に示すように、架橋部材30と天井裏設備Pとの間にスペーサ51を介在させることにより、当該天井裏設備Pに勾配をつけることが可能である。スペーサ51の材料は特に限定されるものではないが、天井裏設備Pと架橋部材30との間における熱伝導を抑制するため、断熱性を有する材料により構成されることが好ましい。または、例えば天井裏設備Pとスペーサ51との間に、更に断熱部材(図示せず)を介在させてもよい。
【0060】
第2の空間S2は、例えば第1の空間S1に対する天井裏設備Pの配設作業等を実施するための作業用空間として作用する。前記した例においては、上述のように天井裏設備Pは第1の空間S1に配設され、第2の空間S2には配設されないため、適切に天井裏設備Pの施工にかかる作業用空間を確保することが容易である。
【0061】
なお、例えば居室Rに対して空気を供給する空調システムの室内機60や、居室Rの調光を行う照明器具61を天井裏空間Sに設ける必要がある場合、これら室内機60や照明器具61は、
図13に示すように、第2の空間S2に設置されてもよい。かかる場合、当該室内機60及び照明器具61は、接続用配管62を介して第1の空間S1に配設された天井裏設備Pと接続される。
【0062】
また、天井裏空間Sに面する天井パネル42の裏面側には、居室Rと天井裏空間Sとの間における熱伝達を抑制して、居室Rにおける空調効率を向上させるための放射パネル(図示せず)が設置されていてもよい。放射パネルの内部には冷媒流路が形成され、当該冷媒流路の内部に冷媒(例えば冷温水)が通流される。かかる場合、冷媒流路は、接続用配管(放射パネル用の接続用配管の図示は省略)を介して第1の空間S1に配設された天井裏設備Pと接続される。
【0063】
また更に、天井裏空間Sに面する天井パネル42の裏面側には、
図14に示すように、居室Rに送風される空気の流量を個別に設定可能な吹き出しユニット70が設置されていてもよい。吹き出しユニット70は、例えば接続用配管62を介して第1の空間S1に配設された天井裏設備Pとしてのダクトと接続される。
【0064】
吹き出しユニット70は、接続用配管62から供給される空気の風速を測定する風速測定センサ71と、居室Rに供給する空気風量を制御する風量調整機構72と、風量調整機構72の動作を制御するコントローラ73と、を有している。
【0065】
風量調整機構72は、
図15に示すように、パンチング孔が形成された2枚のパンチング板72a、72bを備えている。風量調整機構72は、2枚のパンチング板72a、72bのうち、一方(図示の例ではパンチング板72a)が固定配置され、他方(図示の例ではパンチング板72b)をスライド自在に配置されている。また、パンチング孔はパンチング板72bのスライド方向に対して四角形、より具体的には菱形形状に形成されている。
【0066】
そして吹き出しユニット70においては、
図15に示すようにパンチング板72bをパンチング板72aに対して相対的に移動させることにより、天井裏設備Pとしてのダクトから供給される空気を適切な流量で居室Rへと導入できる。また、このように天井裏設備Pとしてのダクトから供給される空気を、第2の空間S2に設置される吹き出しユニット70毎に独立して制御できるため、
図14に示したように、居室Rにおいて間仕切Wの位置が変更になった場合であっても、天井裏設備Pとしてのダクトに通流する空気の流量や流速を変えることなく、吹き出しユニット70の制御により適切に居室Rに対する風量を変更できる。
【0067】
従来、このような居室Rにおける間仕切Wの位置の変更に対応する場合、天井裏設備Pとしてのダクトの配置の増減や変更、ダクト内の風量調整弁の開度の変更等の設計変更が必要となり、居室Rにおける間仕切Wの位置変更への対応には多大な労力やコストを要していた。しかしながら、上述したように第2の空間S2に風量が可変な吹き出しユニット70を配置することにより、ダクトと吹出口の位置関係等の変更が不要であり、すなわち居室Rにおける間仕切Wの位置変更への対応が極めて容易であるとともに、コストを大幅に削減できる。また、それぞれの吹き出しユニット70に風量調整機構72が設けられているため、居室Rに対する空気の供給量の調整も極めて容易に行うことができる。
【0068】
また、本実施の形態においては、パンチング孔がパンチング板72bのスライド方向に対して菱形形状で形成されているため、パンチング板72bのスライド量に対して指数関数的に居室Rに対する空気の供給量を制御できる。換言すれば、居室Rに対する空気の供給量を瞬時に制御できる。
【0069】
なお、風量調整機構72の動作は、例えば風速測定センサ71による測定結果に基づいてコントローラ73により自動制御されてもよいし、例えば居室R側から手動により制御されてもよい。
【0070】
また、
図15においてはパンチング板72a、72bに形成されたパンチング孔が四角形である場合を例に図示を行ったが、パンチング孔の形状はこれに限定されず、例えば円形状であってもよい。このようにパンチング孔を円形状で形成することにより、居室Rに対する空気の供給量を瞬時に制御できる。
また、
図15においてはスライド方向に対して菱形形状を有する四角形によりパンチング孔を形成したが、スライド方向に対して矩形状の四角形によりパンチング孔を形成してもよい。かかる場合、パンチング板72bのスライド量に比例して居室Rに対する空気の供給量を制御できる。
【0071】
このように本実施の形態においては、室内機60、照明器具61、放射パネル又は吹き出しユニット70のような設備器具の本体と、設備器具に対して動力等を供給する天井裏設備Pとをそれぞれ第1の空間S1と第2の空間S2に設けることで、設備器具が天井裏設備Pと干渉することがない。すなわち、天井裏空間Sに対して極めて容易に設備器具の本体を設置することが可能である。
【0072】
また例えば、居室Rにおいて配置替えが行われ、設備器具の設置位置を変更する必要が生じた場合であっても、当該設備器具と、変更先に位置する天井パネル42との位置を交換することのみによって、容易に設備器具の設置位置を変更することが可能である。このとき、当該設備器具は接続用配管62を介して天井裏設備Pと接続されるため、例えば
図16に示すように、天井裏設備Pの配管経路を変更することなく接続用配管62の配廻しを変更することのみによって、極めて容易に設備器具の位置を変更できる。
【0073】
天井下地構造1は、以上のように構成されている。
【0074】
なお、以上の例においては天井裏空間Sに第1の空間S1及び第2の空間S2を形成するように天井下地構造1を構成し、第1の空間S1に対して天井裏設備Pを配設した。しかしながら、天井下地構造1の構成はこれに限定されるものではなく、例えば
図17に示すように、天井裏設備Pを配設するための第1の空間S1が複数段(図示の例においては2段)に形成されてもよい。このように第1の空間S1を複数段に分けて構成することで、天井裏設備Pを設置可能なスペースを更に適切に確保できるとともに、天井下地構造1の耐震性を更に向上できる。
【0075】
次に前記した天井下地構造1の施工方法について、図面を参照しながら説明する。
【0076】
天井下地構造1の施工に際しては、先ず、
図18(a)に示すように天井スラブCに対して所定間隔でインサート11を埋設する。インサート11を埋設タイミングは特に限定されるものではなく、例えば天井スラブCの打設前に予め設置されてもよいし、天井スラブCの打設後に打ち込まれてもよい。
【0077】
次に、
図18(b)に示すように、天井スラブCに埋設されたインサート11に対して吊下部材10(実施の形態においては全ネジ)を垂下させる。
【0078】
次に、
図18(c)に示すように、それぞれの吊下部材10の下部に耐震接続部材20を固定する。具体的には、耐震接続部材20の上板状部材22aに形成された貫通孔24に吊下部材10を螺合させることにより、耐震接続部材20を吊下部材10に固定する。このとき、それぞれの吊下部材10に固定される耐震接続部材20は、少なくとも架橋部材30の接続口をなす筒状部材21が対向して配置されるように、それぞれの高さ位置及び向きが調整される。またこのとき、上述したように架橋部材30により接続される2つの耐震接続部材20の間で、耐震プレート23が直交して配置されるように、向きが決定される。
【0079】
次に、
図19(a)に示すように、吊下部材10の下部に固定された耐震接続部材20を相互に接続するように架橋部材30を架設する。架橋部材30は、例えば筒状部材21に挿通されることにより耐震接続部材20に接続される。このように架橋部材30が架設されると、天井スラブC、吊下部材10及び架橋部材30に囲まれてなる第1の空間のS1が形成される。
【0080】
次に、
図19(b)に示すように、第1の空間S1に対して天井裏設備Pを配設する。天井裏設備Pは、独立して天井スラブCに吊下されることなく、例えば吊下部材10や架橋部材30に対して固定部材50により固定される。このとき、例えば天井裏設備Pに勾配を設ける必要がある場合には、
図12に示したように架橋部材30と天井裏設備Pとの間にスペーサ51が設けられる。
【0081】
次に、
図19(c)に示すように、耐震接続部材20の耐震プレート23の下辺23bにパネル用枠体41を接続する。このようにパネル用枠体41が接続されると、耐震接続部材20、架橋部材30及びパネル用枠体41に囲まれてなる第2の空間のS2が形成される。
【0082】
次に、例えば室内機60や照明器具61等の設備器具を配置する必要がある場合には、
図20(a)に示すように、第2の空間のS2に対して当該設備器具が更に配置される。かかる場合、
図20(b)に示すように設備器具と天井裏設備Pとが接続用配管62により接続される。
【0083】
その後、
図20(c)に示すように、パネル用枠体41に対して天井パネル42が取り付けられることにより、一連の天井下地構造1の施工が完了する。
【0084】
前記した天井下地構造1は、以上のようにして施工される。
【0085】
なお、以上説明したの施工においては、
図19(b)に示したように第1の空間S1に天井裏設備Pを配設した後、
図19(c)に示したようにパネル用枠体41を接続した。しかしながら、天井下地構造1の施工手順はこれに限定されるものではなく、パネル用枠体41を耐震接続部材20の耐震プレート23の下辺23bに接続した後、天井パネル42の取付前に天井裏設備Pを配設するようにしてもよい。
【0086】
また、以上に説明した及びその施工方法においては、天井スラブCに埋設されたインサート11に対して、順次、天井下地構造1を構成する各種部材を接続した。しかしながら、例えば、予め外部で組み立てられた天井下地構造1をインサート11に接続してもよい。
【0087】
次に前記した天井下地構造1において採用された吹き出しユニット70に関し他の例として、
図21に示した本発明の実施の形態にかかる吹き出しユニット100について説明する。
【0088】
吹き出しユニット100は、前記した吹き出しユニット70と同様、居室Rに送風される空気の流量を個別に設定可能な機能を有している。すなわち、吹き出しユニット100は、天井パネル42間の開口に配置される吹き出し部110と、吹き出し部110の上側に配置されるケーシング101とを有している。ケーシング101の上面には、制御部を構成するコントローラ102と主ダクト(図示せず)から分岐した分岐ダクトである接続用配管62と接続される接続流路部103、接続流路部103とケーシング101とを接続する接続部104が設けられている。
【0089】
吹き出し部110は、
図22に示したように、パネル111にスリット状の吹き出し口112が複数形成されている。そしてパネル111の上面側には、吹き出し口112と同形同大、同間隔、同配列の開口を有するスライドパネル113が設けられている。スライドパネル113の両側には、ガイド部材114が設けられており、スライドパネル113の両端部がガイド部114内に収容され、スライドパネル113はガイド部材114に沿って、図中の往復矢印のようにスライド可能である。
【0090】
そしてスライドパネル113はアクチュエーター115によって駆動される。かかる構成により、スライドパネル113のスライドによって、吹き出し口112の開口率は変化する。なお
図22は、吹き出し口112とスライドパネル113の開口とが重なっている状態であり、この場合は、開口率は100%である。
【0091】
ケーシング101内には、
図23に示した風量調整部120が設けられている。この風量調整部120は、ケーシング101内を水平に仕切る第1の通気板121と、第1の通気板121の上に配置された第2の通気板122とを有している。第1の通気板121と第2の通気板122には、各々同形同大、同配列のひし形の開口部121aと開口部122aが各々形成されている。
【0092】
第1の通気板121の対向する長辺端部には、ガイド123、124が形成されており、第2の通気板122の対向する長辺端部は、各々ガイド123、124内に収容されている。第1の通気板121はケーシング101の内壁に固定されている。かかる構成により、第2の通気板122は第1の通気板121に対して
図23中の往復矢印のように平行移動が可能である。
【0093】
第2の通気板122の第1の通気板121に対する平行移動は、第2の通気板122に設けられたアクチュエーター125の回動によって実現される。すなわち、このアクチュエーター125は、回動部125aを有しており、
図21に示した駆動軸126の回動によって、第2の通気板122を第1の通気板121に対して平行移動させる構成を有している。駆動軸126は、ケーシング101の上面に設けられた駆動機構127によって駆動される。
【0094】
上記した構成により、駆動機構127によるアクチュエーター125の回動に基づいて、第2の通気板122は第1の通気板121に対して平行移動する。例えば
図24に示した状態は、アクチュエーター125の回動部125aが、
図23に示した状態から45度回動した状態を示し、
図23に示した状態よりも、開口部121aと開口部122aとの重なりが減少し、その分開口率が減少している。
【0095】
図23に示したように、接続流路部103には風速測定部材としての風速センサ130が設けられている。風速センサ130は、例えばプロペラ式の風速測定部131を、接続流路部103内に有している。そして風速センサ130からの測定風速は、コントローラ102へと出力され、接続流路部103内の流路断面積とによって、接続流路部103内を流れる給気の風量が算出される。
【0096】
算出された風量は、風量信号として、例えばコントローラ102へと出力される。コントローラ102は受信した風量信号に基づいて、駆動機構127を制御し、企図した所定の風量となるようにアクチュエーター125を作動させ、第2の通気板122を第1の通気板121に対して平行移動させて、風量調整部120での開口率を変化させる。これによって、第1の通気板121を通過する給気の風量を制御する。
【0097】
また前記した風量信号に基づき、コントローラ102は、吹き出し部110のアクチュエーター115を制御して、スライドパネル113をスライドさせ、吹き出し口112の開口率を変化させて、吹き出し口112からの給気の風速を所定の値、例えば3m/sとなるように風速を制御する。
【0098】
以上説明したように、実施の形態にかかる吹き出しユニット100によれば、接続流路部103に設けられた風速センサ130によって、吹き出しユニット100に供給される給気の風速を測定し、それに基づいて実際の風量を検出するので、例えば予め定めた吹き出しユニット100からの給気の風量となるように、制御することが可能である。
【0099】
またそのような風量の制御は、アクチュエーター125を作動させ、第2の通気板122を第1の通気板121に対して平行移動させて、風量調整部120での開口率を変化させるようにしているが、本実施の形態では、第1の通気板121と第2の通気板122には、各々同形同大、同配列のひし形の開口部121aと開口部122aが各々形成されているから、第2の通気板122の平行移動によって、開口率はリニアに変化させることができ、風量の制御も容易である。
【0100】
そして前記したように、風量調整部120による風量に制御に基づいて、吹き出し口112からの給気の風速を所定の値に設定することが可能であるから、夏期の冷房、冬期の冷房運転の際にも、タスク空間、居住空間に対して、適切な風速の給気を供給することが可能である。
【0101】
しかも吹き出しユニット100を天井部に複数設けた場合、各吹き出しユニット100毎に、風量、風速の制御が可能であるから、必要に応じて室内のゾーンに対して、適切な給気の制御が可能である。
【0102】
かかる場合、例えばある吹き出しユニット100からの給気の影響を受ける者の求めに応じて、個々に所望の給気の吹き出し風速を、個別に制御することも可能である。この場合、当該者が例えば、PCやスマホ等を用いて直接コントローラ102に対して制御信号を送信するようにしてもよい。
【0103】
またそのように各吹き出しユニット100毎に風量、風速の制御が行えることから、例えば居室Rを間仕切で仕切って複数の異別の空調空間を形成している場合、当該間仕切を移動させて、空調空間の広狭、数等に変更が生じた場合にも、従来のVAV方式と異なり、容易に対応することが可能である。この点については、既に
図14に基づいて概略を説明したところであるが、以下により詳しく説明する。
【0104】
すなわち、従来のVAV方式によって天井部に複数の吹き出しユニットを配置し、室の空調を行う場合、
図25に示したように、システム天井Kの天井裏空間Sにおけるダクトの配置が錯綜していた。すなわち、天井パネル42の部分に、例えば複数の吹き出しユニットM1~M6を設置した場合、主ダクト160から分岐したダクト161、162にVAVユニットVD1、VD2を設け、さらに各ダクト161、162に、枝ダクト163、164、165、166を接続したり、枝ダクト167に対してさらに枝ダクト168、169を接続し、これら枝ダクト163、164、165、166、168、169を、各吹き出しユニットM1~M6に接続するようにしていた。
【0105】
そして例えば、
図25に示した、間仕切Wによって仕切られた居室空間R1に対しては、VAVユニットVD1で風量制御された給気が供給される吹き出しユニットM1、M2が対応し、居室空間R2に対しては、VAVユニットVD2で風量制御された給気が供給される吹き出しユニットM3~M6が対応していた場合から、
図26に示したように、間仕切Wを図中の左側に移動させると、そのままでは居室空間R1に対しては、2つのVAVユニットVD1、VD2によって風量制御された給気が供給され、居室空間R2に対しては、VAVユニットVD2によって風量制御された給気が供給されることになり、居室空間R1、R2とも適切な給気の風量制御が行えない。
【0106】
そのため、VAV方式によって風量制御している従来では、
図26に示したように、間仕切Wを移動させた場合、移動後の居室空間R1、R2に給気を供給する吹き出しユニットM1~M6に応じて、VAVユニットVD1、VD2によって風量制御される給気を供給するためのダクト自体を施工し直す必要があった。すなわち
図26に示したように、間仕切り移動後の居室空間R1に対しては、VAVユニットVD1からの給気が吹き出しユニットM1~M4に対して供給されるように枝ダクト170を増設し、この枝ダクト170に枝ダクト165、170を接続し、また間仕切り移動後の居室空間R2に対しては、VAVユニットVD2からの給気が吹き出しユニットM5、M6に対して供給されるようにダクト162を撤去するなどして、ダクトの増設、撤去、変更が必要となっていた。
【0107】
しかしながら、実施の形態にかかる吹き出しユニット100を採用したシステム天井Kによれば、
図27に示したように、そもそも天井部に複数の吹き出しユニット100a~100fを設置しても、主ダクト160から分岐した枝ダクトを直接吹き出しユニット100の接続流路部103に接続すればよいので、天井裏空間S内のダクトの施工、配置は、極めて簡素化されている。また設置するダクトの数も大幅に低減されている。
【0108】
そして間仕切Wを移動させた場合でも
図28に示したように、主ダクト106と接続される枝ダクトの変更、増設、撤去は一切不要であり、もちろん吹き出しユニット100a~100fの配置もそのままである。これは、吹き出しユニット100a~100fにおいては、個別に風量制御、並びに風速の制御が可能であるため、間仕切Wの移動によって居室空間R1、R2の広狭、位置に変更があっても、個々の吹き出しユニット100で風量調整が可能であるからである。
【0109】
実施の形態にかかる吹き出しユニット100を採用したシステム天井によれば、さらに次のような運用も可能である。すなわち、従来のVAVユニットを用いて複数の吹き出しユニットを天井部に設けたシステム天井では、試運転時には、例えばVAVユニットによる100%風量時、50%風量時の各々の場合に、個々の吹き出しユニットの吹き出し口にて風量測定を行い、データを収集すると共にVAVユニットの調整を行う必要があった。
【0110】
これに対し、
図29に示した実施の形態にかかる吹き出しユニット100を採用したシステム天井Kによれば、風速センサ130によって測定された信号を直接例えば作業員Yが携行するタブレット型ノートパソコンNで受信して、当該タブレット型ノートパソコンN上で個々の吹き出しユニット100からの風量を算出してデータとして記録することが可能である。かかる場合、作業員Yは、測定しようとする吹き出しユニット100の直下など、測定対象となる吹き出しユニット100からの風量信号を受信できる位置に順次移動すればよく、従来のこの種の作業と比較すれば、極めて簡易迅速にこれら作業を実施することが可能である。
【0111】
さらには算出した風量信号に基づいてタブレット型ノートパソコンNからコントローラ102あるいは、直接風量調整部120に対して、各吹き出しユニット100から吹き出される給気の風量の初期設定を行うことが可能である。もちろんそれと共に吹き出し部110のアクチュエーター115を制御して、吹き出し風速も調整することも可能である。
【0112】
ところで、従来はオフィス等の比較的広い空調対象空間に空調空気を供給する空調機器は、空調機械室に設置された熱源機器、外調機と、屋外に設置された室外機とを適宜冷媒配管、冷温水配管とで接続して、室内に設置されているタスク空調機やパッケージエアコンに対して、必要な冷媒や、冷温水を供給することが一般的である。
【0113】
しかしながら、そうすると、熱源機器、外調機を設置する空調機械室やシャフトスペースが別途必要となり、その分オフィスの有効スペースを圧迫する。
【0114】
以下に説明する外気処理一体型の熱源ユニットとして構成された空調ユニットは、かかる点に鑑みてなされたものであり。ヒートポンプと一体型の1つのユニットとして構成することで、外気負荷を処理しつつ、オフィスの負荷処理用途の冷温水を生成するようにして、これまでの空調機械室、並びにシャフトスペースを削減して、オフィスの有効スペースを従来より広くして、レンタブル比を向上させるものである。
【0115】
図30に示した空調ユニット200は、ケーシング201を有している。ケーシング201内は、仕切り板202によって仕切られ、給気側流路空間203と排気側流路空間204とがケーシング201内に形成されている。
【0116】
給気側流路空間203には、上流側となる端部に外気導入口205が設けられている。そして外気導入口205から下流側に向けて、順に冷温水コイル220、再熱コイル230、加湿器240が直列に設けられている。加湿器240の下流側には、ファン206が設けられ、これら冷温水コイル220、再熱コイル230、加湿器240を経た空調空気を給気供給口207へ送風し、給気供給口207から給気SAが供給される。冷温水コイル220は、冷温水コイル220を構成する配管を通る冷温水と空気との間で熱交換を行う熱交換器である。再熱コイル230は、再熱コイル230を通る冷媒と空気との間で熱交換を行う熱交換器である。そして冷温水コイル220、再熱コイル230は、前記したように給気側流路空間203に配置されており、給気側流路空間203を通る外気OAの温湿度調節を行う。
【0117】
すなわち、冷温水コイル220、再熱コイル230が、給気側流路空間203に配置されているので、冷温水コイル220を構成する配管を通る冷水を用いて、給気側流路空間203を通る外気OAの温湿度調節を行った後、再熱コイル230を通る冷媒を用いて、給気側流路空間203を通る外気の温度調節を再度行うことができる。例えば、冷房を行う場合、冷温水コイル220を通過する外気OAは、冷温水コイル220を構成する配管を通る冷水によって冷却される。
【0118】
冷温水コイル220を構成する配管を通る冷水は蒸発器270から流入しているので、冷温水コイル220を構成する配管を通る冷水によって冷温水コイル220を通過する外気OAを冷却した場合、冷温水コイル220を通過する外気OAの温度はかなり低い温度になり、居室Rへ給気する外気の温度として好ましくない。したがって再熱コイル230を通る冷媒(ホットガス)よって再熱コイル230を通過する外気の温度を上げることで、居室Rへ給気する外気の温度として適切な温度に調節することができる。
【0119】
冷媒が、冷媒配管を介して再熱コイル230に流入することで、冷媒は、蒸発器270、圧縮機272、凝縮器250、膨張弁276及び再熱コイル230を循環する。再熱コイル230を通る冷媒は、給気側流路空間203を通る外気との間で熱交換が行われる。
【0120】
排気側流路空間204の上流側の端部には、還気RAを取り入れる還気導入口208が設けられ、取り入れられた還気RAは、下流側の凝縮器250を経て、ファン209によって排気口210から排気される。
【0121】
仕切り板202には、連絡口211が設けられており、給気側流路空間203と排気側流路空間204とは連絡口211によって連通している。
【0122】
そして外気導入口205、給気供給口207、還気導入口208、排気口210、連絡口211には、各々対応するダンパD1、D2、D3、D4、D5が設けられており、全閉、全開、並びに中間の所定の開度調整が自在である。
【0123】
排気側流路空間204には、還気導入口208の上流側から順に、水-水熱交換機260と、蒸発器270が設けられている。
【0124】
水-水熱交換機260の一次側から出た冷温水は、ポンプ261によって蒸発器270へと供給され、蒸発器270において冷媒と熱交換された後の冷温水は、三方弁262を介して、冷温水コイル220へと供給可能である。すなわち、冷水循環配管を介して蒸発器270に流入した冷水は、蒸発器270で熱交換が行われた後、冷水循環配管を通って冷温水コイル220に流入する。より詳しく言えば、蒸発器270に流入した冷水は、蒸発器270、圧縮機272、凝縮器250及び膨張弁276を循環する冷媒との間で熱交換が行われる。冷温水コイル220を構成する配管を通る冷温水は、給気側流路空間203を通る外気OAとの間で熱交換が行われた後、水―水熱交換器260に流入する。水―水熱交換器260において配管264の冷水と熱交換を行う冷水は、蒸発器270から冷水循環配管を経て冷温水コイル220を通った冷水であり、水-水熱交換器260を通った後はポンプ261で昇圧されて再び蒸発器270へ送られる。
【0125】
また水-水熱交換機260の二次側には、空調ユニット200外の冷水の需要先、例えば後述のタスク空調機280やファンコイルユニット281との間で配管264を通じて冷温水が出入りする。
【0126】
加湿器240には、給水配管241からバルブ242を経由して加湿用の水が補給される。また給水配管241から補給される水は、バルブ243、逆止弁244を介してポンプ261側へと供給可能である。
【0127】
空調ユニット200のヒートポンプ熱源機は、蒸発器270、圧縮機272、凝縮器250及び膨張弁276を有する。そしてかかる構成を有するヒートポンプ熱源機は、排気側流路空間204に配置されている。冷凍サイクルの冷媒配管には、バルブ273、逆止弁274が設けられている。バルブ273は電動の流量調整弁であり、図示しない制御装置からの制御信号に従って弁の開度調整を行う。バルブ273は、再熱コイル230を通過した外気の温度が例えば19℃となるように弁の開度を調整する。また蒸発器270に通ずる冷媒配管における膨張弁276と凝縮器250の間には、循環する冷媒から異物を除去するためのドライヤ275が設けられている。
【0128】
冷温水コイル220、再熱コイル230、加湿器240の下面側には、受水パン221が設けられている。したがって例えば冷温水コイル220を通過する外気OAの温度が冷温水コイル220を構成する配管を通る冷水の温度よりも高い場合には、外気OAは冷温水コイル220を通過する際に除湿される。除湿時の凝縮水は、受水パン221で回収される。受水パン221で回収した水は、排気側流路空間204へと排出され、例えば散水用配管222を通じて、凝縮器250の上部に散水される。凝縮器250の下方には、ドレンパン251が設けられており、散水されてドレンパン251に溜まった水は、ドレン管252を通じて、空調ユニット200の外部へと排出される。
【0129】
蒸発器270から冷水循環配管、冷温水コイル220、水-水熱交換器260、ポンプ261を経て再び蒸発器270へ至る循環経路には、冷温水コイル220のバイパス経路に設置される前記した三方弁262、水-水熱交換器260のバイパス経路に設置される三方弁263が設けられている。三方弁262、263は何れも電動の流量調整弁であり、図示しない制御装置からの制御信号に従って弁の開度調整が行われる。
【0130】
三方弁262は、冷房を行う場合には冷温水コイル220を通過した外気の温度が例えば12℃となるように、他方暖房を行う場合には、再熱コイル230の下流側にある加湿器240を通過した外気の温度が例えば23℃となるように、冷温水コイル220に流入する冷水の流量とバイパス経路に流入する冷水の流量を調整する。冷房を行う夏期において、外気温度が高く負荷が大きい場合、冷温水コイル220に流す冷媒水である冷水の流量を多くする。これに対し夏期に外気温度が低い場合(すなわち負荷が少ない場合)、冷温水コイル220に流す冷媒水である冷水の流量を少なくする。
【0131】
一方、暖房を行う冬期においては、外気温度が低く負荷が大きい場合には、冷温水コイル220に流す温水の流量を多くし、冬期に外気温度が高い場合、すなわち負荷が少ない場合には、冷温水コイル220に流す温水の流量を少なくする。
【0132】
冷房を行う場合には、三方弁263は、水-水熱交換器260の二次側(冷水循環配管264の出口側)に流出する冷水の温度が例えば16℃となるように調整される。他方、暖房を行う場合には、水-水熱交換器260から二次側に流出する冷水(冷温水)の温度が例えば40℃となるように、水-水熱交換器260の一次側に流入する冷水の流量とバイパス経路に流入する冷水の流量が調整される。
【0133】
以上の構成を有する空調ユニット200によれば、外気導入口205から給気側流路空間203に導入した外気OAに対し、蒸発器270、圧縮機272、凝縮器250及び膨張弁276を循環する冷媒を用いて、給気側流路空間203を通る外気OAの温湿度調節が行われる。さらにその後は処理した空気に対して加湿器240によって水分を付与して、所定の湿度となるように調整し、その後ファン206によって給気供給口207から給気SAとして所定の空調対象空間に供給することができる。
【0134】
そして空調対象空間からの還気RAは、還気導入口208から排気側流路空間204に導入される。また空調ユニット200外の冷温水の需要先から戻ってきた冷温水と水-水熱交換機260によって熱交換された後、さらに冷媒-水熱交換機270と熱交換された後、凝縮器250を経て、ファン209によって排気口210から系外へと排気される。
【0135】
以上の構成にかかる空調ユニット200によれば、まず外気OAの負荷を冷温水コイル220で処理し、さらに再熱コイル230で顕熱調整を行って、給気SAとして対象空調空間に供給することができる。そして還気RAに対しては、需要先、例えばオフィス内の冷温水を熱源して空調を行うタスク空調機等からの戻り冷温水と熱交換し、その後ヒートポンプの冷媒と熱交換して排気される。したがって、外気負荷を処理して給気SAとして空調対象空間に供給しつつ、さらに他の空調負荷の処理のために供給する冷温水を併せて生成することが可能である。また全体して1つのユニットとして構成、完結しているので、これまでの空調機械室、並びにシャフトスペースが不要であり、その分オフィスの有効スペースを従来よりも広く確保することが可能である。
【0136】
次に冷房運転時、暖房運転時について個別に説明すると、冷房を行う場合、凝縮器250に送られた冷媒が凝縮するとき、排気側流路空間204を通る還気RAと凝縮器250に送られた冷媒との間で熱交換が行われる。排気側流路空間204を通る還気RAによって冷媒が冷却されるため、排気側流路空間204を通る還気RAの温度が低いことが好ましい。
【0137】
また冷房を行う場合、還気ダクト(図示せず)を介して空調ユニット200内に取り込まれた還気RAの温度は、外気ダクト(図示せず)を介して空調ユニット200内に取り込まれた外気OAの温度よりも低い。ヒートポンプ熱源機は前記したように、排気側流路空間204に設置されているので、かかる場合、熱源の効率が向上している。
【0138】
一方、暖房を行う場合には、四方弁271によって、蒸発器270は凝縮器として機能し、凝縮器250は蒸発器として機能する。すなわち、冷房運転時と暖房運転時とでは、蒸発器と凝縮器はその機能が逆になる。具体的に言うと、冷房運転時には、圧縮機272、凝縮器250(および再熱コイル230)、膨張弁276、蒸発器270の順で冷媒が循環する。このとき、逆止弁274により、再熱コイル230には凝縮器250の下流側からは冷媒が流れないようになっている(圧縮機272の下流側から、凝縮器250と再熱コイル230とに分岐して流れる)。これに対し、暖房運転時には、圧縮機272、蒸発器270(凝縮器)、膨張弁276、凝縮器250(蒸発器)の順で冷媒が循環する。このとき、逆止弁274により、再熱コイル230には冷媒が流れないようになっている。
【0139】
ヒートポンプ熱源機は、冷房を行う場合には、蒸発器270から冷温水コイル220へ流れる冷水循環配管の冷水の温度が例えば9℃となるように膨張弁276の開度調整や圧縮機272の動力調整が行われ、空調システム1で暖房を行う場合には、蒸発器270(凝縮器)から冷温水コイル220へ流れる冷水循環配管の冷水(冷温水)の温度が例えば47℃となるように膨張弁276の開度調整や圧縮機272の動力調整が行われる。ヒートポンプ熱源機がこのように動作することにより、三方弁262、263の開度調整による適正な温度制御が実現される。
【0140】
また前記した空調ユニット200によれば、冷房時や暖房時における熱負荷の変動があっても、三方弁262、263、バルブ273の開度調整により室内の温度や湿度の変動が可及的に抑制されることになる。つまり、外気温度が夏期に高い又は冬期に低いといった負荷が大きい場合や、外気温度が夏期に低い又は又は冬季に高いといった負荷が少ない場合に、各々に対応して、冷媒水の供給を制御することができる。なお
図30に示した例では、水-水熱交換器260が空調ユニット200内に図示されているが、水-水熱交換器260は空調ユニット200の外側に設置されていてもよい。また上記の空調用ユニット200は、適宜の箇所に配置された流量調整弁等により、冷水や冷媒の流量調整を行ってもよい。
【0141】
実機として構成した空調ユニット200の冷房運転の実験を行った結果について説明する。具体的には、流量が1300CMH、温度が30℃の外気OAを導入し、連絡口211にて、冷温水コイル220側に500CMH、排気側流路空間204側に800CMHに分けて処理を行ったところ、19℃、500CMHの給気SAを供給することができた。また26℃、500CMHの還気RAについては、前記した800CMHとの混合により、最終的には53℃、1300CMHの排気EAを放出することが確認できた。
【0142】
なお冷温水の温度の一例についていうと、まず夏期の冷房時においては、外気OAが34.8℃のとき、冷温水コイル220の入口側温度は9℃、出口側温度が42.8℃、給気SAの温度が19℃、還気RAの温度が28℃とすることができ、そのときの配管264の入口側冷水温度が19℃の場合(流量は25L/min)、同出口側温度が16℃であった。
また冬季の暖房時には、外気OAが2.0℃のとき、冷温水コイル220の入口側温度は47℃、出口側温度が14℃、給気SAの温度が23℃、還気RAの温度が26℃とすることができ、そのときの配管264の入口側冷水温度が37℃の場合(流量は25L/min)、同出口側温度が40℃であった。
【0143】
このように前記した空調ユニット200によれば、給気SAを供給しつつ、他の空調負荷に供する冷温水を同時に生成することができ、しかもこれまでの空調機械室等は不要であるから、例えば
図31に示したように、天井裏空間S内に、空調ユニット200を収容することができる。そして給気供給口からの給気SAは、吹き出しユニット290から居室Rに供給し、還気RAは還気口291から取り入れて還気導入口へと導入することが可能である。また吹き出しユニット290については、前記した風量制御が可能な吹き出しユニット100を採用してもよい。なお外気については例えば天井裏空間Sの端部に設けた外気取り入れ口292から導入し、排気については、天井裏空間Sの端部に設けた排気口293から放出すればよい。
【0144】
そして空調ユニット200で生成された冷温水は、居室Rに設置したタスク空調機280や天井部に設けたファンコイルユニット281の熱源として使用することができる。したがって、空調ユニット200で居室Rのアンビエント空調、タスク空調の双方に対応することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明は、特に天井部に設ける吹き出しユニットに有用である。
【符号の説明】
【0146】
1 天井下地構造
10 吊下部材
11 インサート
20 耐震接続部材
21 筒状部材
22 板状部材
23 耐震プレート
24 貫通孔
25 縦材
30 架橋部材
31 弾性部材
32 支持材
40 仕上天井ユニット
41 パネル用枠体
42 天井パネル
50 固定部材
51 スペーサ
60 室内機
61 照明器具
62 接続用配管
70、100 吹き出しユニット
102 コントローラ
110 吹き出し部
112 吹き出し口
120 風量調整部
130 風速センサ
200 空調ユニット
B 大梁
C 天井スラブ
F 防耐火被覆材
K システム天井
S 天井裏空間
S1 第1の空間
S2 第2の空間
P 天井裏設備
R 居室
W 間仕切