(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092054
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】ステップ付きの車両
(51)【国際特許分類】
B60R 3/02 20060101AFI20230626BHJP
【FI】
B60R3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207033
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂元 菜穂子
(72)【発明者】
【氏名】門田 豪郎
【テーマコード(参考)】
3D022
【Fターム(参考)】
3D022AA02
3D022AC01
3D022AD02
3D022AE07
3D022AE09
3D022AE11
3D022AE15
3D022AE26
(57)【要約】
【課題】ドアの開閉動作に連動させてステップ板の長さ寸法を変えられるようにすることにある。
【解決手段】ステップ板21は、使用位置において幅方向の端部(右端部AE、BE)がドア開口部から車両外側に突出するように構成されており、幅寸法に直交する方向の寸法をステップ板の長さ寸法21Lとした場合、ドア(フロントドア6)の開き角度が大きくなることでステップ板の長さ寸法21Lを大きくする長さ可変装置25を備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平回動させることで車両ボディのドア開口部を開閉するドアと、前記ドア開口部の位置に設けられたステップ板とを備えるステップ付の車両において、
前記ステップ板は、使用位置において幅方向の端部が前記ドア開口部から車両外側に突出するように構成されており、
前記幅方向に直交する方向の寸法を前記ステップ板の長さ寸法とした場合、前記ドアの開き角度が大きくなることで前記ステップ板の長さ寸法を大きくする長さ可変装置を備えているステップ付の車両。
【請求項2】
前記ステップ板は、前記ドアの開閉動作に連動して水平回動することにより格納位置と使用位置間を変位する構成とされていると共に、前記長さ可変装置は、前記ステップ板の回動動作と同時又は回動動作後に作動するように構成されている請求項1に記載のステップ付の車両。
【請求項3】
前記長さ可変装置は、前記ドアが全開する前の予め定められた所定角度まで水平回動することで、前記ステップ板の長さ寸法を最大にできるように構成されている請求項1又は2に記載のステップ付の車両。
【請求項4】
前記ステップ板は、第一ステップ部位と、車両の高さ方向から前記第一ステップ部位に重なる第二ステップ部位とを有し、
前記長さ可変装置によって、前記第一ステップ部位と前記第二ステップ部位とをステップ板の長さ方向に異なる速さで移動させることで、前記ステップ板の長さ寸法を大きくするように構成されている請求項1~3のいずれか一項に記載のステップ付の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平回動させることでドア開口部を開閉するドアと、ドア開口部の位置に設けられたステップ板とを備えるステップ付きの車両に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のステップ付き車両が特許文献1に記載されている。特許文献1の車両では、その車幅方向の側部にドア開口部が設けられている。このドア開口部の前縁には、ドアヒンジを介してドアが水平に回動可能な状態で連結されている。また車両のフロア下には収納ケースが固定されている。そして、収納ケースに収納されたサイドステップが、ドア開口部の位置から車幅方向外側に引き出されて使用位置に変位するようになっている。この引き出されたサイドステップは、上方から見た平面視で概ね矩形をなしており、その幅方向の縁部がドア開口部から突出している。
【0003】
そして上記の車両では、ドアの開き動作に連動してサイドステップを引き出せるように構成されている。即ち、ドアの車両下側には、ドアヒンジの回転軸と回転中心を同一にする円弧形状のリンクが設けられている。そして円弧形状のリンクには、その外周面の適宜の位置に三角状の突起が形成されている。またサイドステップにも、そのリンクを臨む前縁の適宜の位置に突起が形成されている。そしてドアが全閉された状態において、格納位置のステップの突起とリンクの突起とが係合するように構成されている。上記した構成では、ドアを開いていくことで、このドアの車両下側に設けられたリンクの突起が、ドアヒンジの回転軸を中心に車幅方向外側に円弧運動する。そしてリンクの突起がサイドステップの突起に係合しているため、サイドステップがリンクに追従して車幅方向外側に引き出されるようになる。そしてドアを更に開いていくと、リンクの突起が次第に車両前側に移動することで、このリンクの突起とサイドステップの突起との係合が外れる。これにより、サイドステップの引き出し状態を維持しつつ、ドアを全開させられるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したステップ付きの車両では、ステップ板の幅方向と直交する方向を長さ方向とした場合、このステップ板の長さ方向の寸法を使用位置で大きく取りたいとの要請がある。例えばステップ板を長くすることで、ドアを全開させなくともステップ板に足が届き易くなる。しかし上記したサイドステップは、上方から見た平面視で概ね矩形をなしており、使用位置と格納位置間で長さ寸法が変わることはない。もっとも初めから長さ寸法の大きいサイドステップを使用することも考えられるが、そうするとサイドステップの格納スペースの確保に手間取るおそれがある。本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、ドアの開閉動作に連動させてステップ板の長さ寸法を変えられるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段として、第1発明のステップ付きの車両は、水平回動させることで車両ボディのドア開口部を開閉するドアと、ドア開口部の位置に設けられたステップ板とを備えている。そしてステップ板は、使用位置において幅方向の端部がドア開口部から車両外側に突出するように構成されている。この種の構成においては、ドアの開閉動作に連動させてステップ板の長さ寸法を変えられることが望ましい。そこで本発明のステップ付き車両は、幅方向に直交する方向の寸法をステップ板の長さ寸法とした場合、ドアの開き角度が大きくなることでステップ板の長さ寸法を大きくする長さ可変装置を備えている。本発明では、長さ可変装置によって、ドアの開き角度が大きくなることでステップ板の長さ寸法を大きくすることができ、ドアの開き角度が小さくなることでステップ板の長さ寸法を小さくすることができる。
【0007】
第2発明のステップ付きの車両は、第1発明のステップ付きの車両において、ステップ板は、ドアの開閉動作に連動して水平回動することにより格納位置と使用位置間を変位する構成とされていると共に、長さ可変装置は、ステップ板の回動動作と同時又は回動動作後に作動するように構成されている。本発明では、ステップ板を水平回動させてドア開口部から車両外側に突出させられるようになる。そして、長さ可変装置によって、上記したステップ板の回動動作の際又はその後にステップ板の長さ寸法を大きくすることで、使用位置におけるステップ板の長さ寸法を確保できるようになる。
【0008】
第3発明のステップ付きの車両は、第1発明又は第2発明のステップ付きの車両において、長さ可変装置は、ドアが全開する前の予め定められた所定角度まで水平回動することで、ステップ板の長さ寸法を最大にできるように構成されている。本発明では、ドアが全開する前に、ステップ板の長さ寸法を最大にすることができるようになる。
【0009】
第4発明のステップ付きの車両は、第1発明~第3発明のいずれかのステップ付きの車両において、ステップ板は、第一ステップ部位と、車両の高さ方向から第一ステップ部位に重なる第二ステップ部位とを有し、長さ可変装置によって、第一ステップ部位と第二ステップ部位とをステップ板の長さ方向に異なる速さで移動させることで、ステップ板の長さ寸法を大きくするように構成されている。本発明では、長さ可変装置によって、第一ステップ部位と第二ステップ部位とを長さ方向に異なる速さで移動させることにより、ステップ板の長さ寸法を変えられるようになる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る第1発明によれば、ドアの開閉動作に連動させてステップ板の長さ寸法を変えられるようになる。また第2発明によれば、ドアの開閉動作に連動させて、ステップ板を回動させると共に、ステップ板の長さ寸法を変えられるようになる。また第3発明によれば、ドアが全開する前に、ステップ板の長さ寸法を大きくすることができる。そして第4発明によれば、ステップ板の長くなる際の速度を調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】ドアが全閉した状態のドア開口部を示す車両の概略縦断面図である。
【
図3】使用位置のステップ装置の概略透視斜視図である。
【
図4】格納位置のステップ装置を車両後側から見た概略正面図である。
【
図5】連動部と伝達部を示すステップ装置の概略透視上面図である。
【
図8】カム部材を示すステップ装置の概略透視上面図である。
【
図9】格納位置のステップ装置を車両前側から見た概略正面図である。
【
図10】回転軸を示す第一ステップ部位の概略上面図である。
【
図11】長さ可変装置の下側ラックを示すステップ装置の概略透視上面図である。
【
図12】長さ可変装置の上側ラックを示すステップ装置の概略透視上面図である。
【
図13】ドアが全閉した状態のステップ装置を示す車両の概略上面図である。
【
図14】回動時のステップ装置を示す車両の概略上面図である。
【
図15】回動時の連動部と伝達部を示すステップ装置の概略透視上面図である。
【
図16】回動時のカム部材を示すステップ装置の概略透視上面図である。
【
図17】長さ延長時のステップ装置を示す車両の概略上面図である。
【
図18】長さ延長時のカム部材を示すステップ装置の概略透視上面図である。
【
図19】下側ラックを示す第一ステップ部位の概略透視上面図である。
【
図20】上側ラックを示す第二ステップ部位の概略透視上面図である。
【
図21】ドアが全開する際のステップ装置を示す車両の概略上面図である。
【
図22】ドアが全開する際のステップ装置の概略透視上面図である。
【
図23】変形例1のステップ装置の概略透視上面図である。
【
図24】変形例1の回動時のステップ装置の概略透視上面図である。
【
図26】変形例2のカム部材と収容枠の概略平面図である。
【
図27】変形例3のカム部材と収容枠の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を、
図1~
図27を参照して説明する。各図には、車両の前後方向と左右方向(車幅方向)と上下方向(車両の高さ方向)を示す矢線を適宜図示する。また各図に示す車両では、便宜上、車両の右側の各部材にのみ対応する符号を付す。そして
図5、
図8、
図11、
図12、
図15、
図16、
図18~
図20、
図22~
図24では、便宜上、ステップ板を透視してその車両下側の部材を図示する。
【0013】
[車両の前部構造]
ステップ装置20(ステップ板21)について説明する前に、先ず、車両2の前部構造について説明する。
図1に示す車両2では、その車両ボディ3の右側面に、前部座席に対応するドア開口部4が形成されている。またドア開口部4の車両前側には車室の前側支柱であるフロントピラー5が立設されている。そして、フロントピラー5には、上下のドアヒンジ(図示省略)を介してフロントドア6が連結されており、このフロントドア6がドアヒンジを中心に車幅方向に水平回動することでドア開口部4が開閉されるようになる。またドア開口部4の下部には、縦壁状のフロントサイドパネル7が車両前後方向に延びるように設けられている。このフロントサイドパネル7の車両後側には、車両2の前輪を収納するホイールハウス8が設けられている。そして、フロントサイドパネル7の下部には、固定ステップ9が車幅方向外側(
図1の右側)に突出するように設けられている。
【0014】
ここでフロントサイドパネル7は、
図2に示すように車両上下方向に延びる縦壁状に形成されて、カウルパネル10を覆うように配置されている。このフロントサイドパネル7と固定ステップ9の車幅方向外側には、閉め状態のフロントドア6が配置されている。そして、固定ステップ9の車両上側には、ステップ板21の備えられたステップ装置20(詳細後述)が配設されている。
【0015】
[ステップ装置]
図1~
図3に示すステップ装置20は、その基本構成として、ステップ板21(第一ステップ部位21A,第二ステップ部位21B)と、このステップ板21を支持する本体部22とを備えている。そして
図2に示すように固定ステップ9上に本体部22が固定されることで、この本体部22に支持されたステップ板21が、固定ステップ9の車両上側に配置されるようになる。また
図3に示すように、本体部22の車両前部に設けられた回転軸23が、固定ステップ9に位置決めされて配置されている。そして、ステップ装置20では、固定ステップ9(車両ボディ3)に位置決めされた回転軸23を中心として、ステップ板21が車幅方向(左右方向)に水平回動するように構成されている。
【0016】
またステップ装置20には、
図3に示すように、フロントドア6の開閉動作に連動してステップ板21を水平回動させる展開装置24(30,40,50)と、ステップ板21の長さ寸法を変える長さ可変装置25とが設けられている。そして
図1及び
図3を参照して、ステップ板21を、展開装置24にて、固定ステップ9上の格納位置と、固定ステップ9よりも車幅方向外側(各図の右側)の使用位置間で回動させる。この使用位置のステップ板21では、その幅方向X1の端部となる右端部AE,BEが車幅方向(車両外側)に突出するようになる。この種の構成では、幅方向X1と直交する方向X2の寸法をステップ板21の長さ寸法21Lとした場合、このステップ板の長さ寸法21Lを使用位置で大きく取りたいとの要請がある。そこで本実施例のステップ装置20では、後述する長さ可変装置25にて、フロントドア6の開閉動作に連動させてステップ板の長さ寸法21Lを変えられるようにした。以下、ステップ装置20の各構成を、展開装置24(連動部30,伝達部40,カム部材50)、ステップ板21、長さ可変装置25の順に詳述する。
【0017】
[連動部(展開装置)]
先ず、
図3に示す展開装置24の連動部30は、フロントドア6の開閉動作に連動する部位であり、ドア側リンク31と、ドア側リンク31とフロントドア6とを連結する連結軸32とを有している。ここでドア側リンク31は、
図3~
図5を参照して、最も車両下側に配置されて車両前後方向に延びる帯板状のリンクであり、そのドア側リンク31の前端部がフロントドア6側に連結されている。即ち、フロントドア6には、その回動中心の近傍位置に車両上下方向に延びる連結軸32が取付けられており、この連結軸32の下端部に、ドア側リンク31の前端部が水平回動可能な状態で連結されている。そして、ドア側リンク31の後端部は、後述する伝達部40の伝達ラック41に連結されている。
【0018】
[伝達部(展開装置)]
次に
図3に示す展開装置24の伝達部40は、連動部30の動きを機構的に伝達してカム部材50を水平回動させる部位であり、ステップ装置20の本体部22に格納されている。そして伝達部40は、
図3~
図5を参照して、伝達ラック41と、複数の歯車(第一歯車42A、第二歯車42B、第三歯車42C)とから構成されている。伝達ラック41は、車両前後方向に延びる帯板状の部材であり、
図4に示す本体部22の左側に設けられた左右のガイド部44,45間に摺動可能に配置されている。また
図4及び
図5を参照して、伝達ラック41の下面から突出する連結縦ピン410には、上記したドア側リンク31の後端部が水平回動可能に連結されている。
【0019】
そして
図5に示す伝達ラック41は、フロントドア6の開閉動作に合わせた連動部30の動きにより、前後スライドできるようになっている。即ち、フロントドア6が開き方向に左回動(
図5の矢線A1で示す反時計回りに回動)する際、伝達ラック41はドア側リンク31に引っ張られて車両前側にスライド移動する。また逆にフロントドア6が閉じ方向に右回動(時計回りに回動)する際、伝達ラック41はドア側リンク31に押されて車両後側にスライド移動する。そして直線運動する伝達ラック41を使用する構成では、回転運動する歯車を使用する場合(後述する変形例1を参照)に比して、伝達部40の車幅方向の寸法を小さくできるようになる。
【0020】
また
図5に示す伝達ラック41には、その右面前部に歯の形成されたラック側歯部411が設けられていると共に、その右面後部に歯の形成されていない直線部412が設けられている。この伝達ラック41のラック側歯部411には、格納位置のステップ板21を基準として、後述する第一歯車42Aが噛み合うように配設されている。そして伝達ラック41のラック側歯部411は、後述するように、ステップ板21が使用位置に到達してその長さ寸法が最大になる間だけ、第一歯車42Aと噛み合える範囲に形成されている(
図7、
図17及び
図18を参照)。
【0021】
また
図3~
図5に示す第一歯車42A、第二歯車42B及び第三歯車42Cは、本体部22に水平回動(回転運動)可能に軸支されて、上記した回転軸23の車両後側に配置されている。先ず、第一歯車42Aは、上記した伝達ラック41に噛み合うように、最も車両前側且つ車幅方向内側(各図の左側)に配設されている。この第一歯車42Aは、
図3及び
図4に示すように車両上下方向の寸法が相対的に大きくなっており、その第一歯車42Aの車両下側の部分で伝達ラック41のラック側歯部411に噛み合っている。そして第一歯車42Aは、
図6を参照して、その伝達ラック41と噛み合う車両下側の部分に、歯が欠損している欠歯部420が形成されている。即ち、第一歯車42Aは、その一つの歯が、車両下側の部分で欠損した欠歯歯車である。そしてステップ板21が使用位置に到達して長さ寸法が最大になったのちに、
図7に示す第一歯車42Aの欠歯部420が伝達ラック41の直線部412に対面状に配置される(
図17及び
図18を参照)。これにより、欠歯部420の前後に位置する歯421,422が直線部412に対して相対的に摺動するようになる。
【0022】
また
図3~
図5に示す第二歯車42Bは、上記した第一歯車42Aの車両上側の部分に噛み合うように、この第一歯車42Aの車両後側且つ車幅方向外側(各図の右側)に配設されている。そして第三歯車42Cは、第二歯車42Bに噛み合うように、この第二歯車42Bの最も車両後側且つ車幅方向外側に配設されている。これにより、
図5に示す第一歯車42Aが回動することで第二歯車42Bが逆向きに回動し、さらに第三歯車42Cが第一歯車42Aと同方向に回動するようになる。そして第三歯車42Cは、
図4及び
図5に示すように、本体部22の上面側に設けられた支持軸43に固定されている。この支持軸43は、その軸心回りに回転可能に本体部22に配設されており、第三歯車42Cと共に回動できるように構成されている。そして
図4に示す支持軸43の先端部が、後述するカム部材50を軸支できるように本体部22の上面から突出している。
【0023】
[カム部材(展開装置)]
そして
図3に示す展開装置24のカム部材50は、ステップ板21を押圧して水平回動させる部材である。このカム部材50は、
図8に示す平面視で球面三角形状(いわゆるルーローの三角形状)に形成されている。そしてカム部材50は、本体部22の上面から突出する支持軸43に固定されて、ステップ板21に設けられた収容枠210に嵌められている。即ち、
図3及び
図4に示すステップ板21の第一ステップ部位21A(詳細後述)の車両後側には、中空立方体状(平面視で四角形状)の収容枠210が設けられている。そして収容枠210内に、支持軸43に固定されたカム部材50が嵌められている。なお収容枠210の車両下側の面には、支持軸43が挿通される挿通孔(図示省略)が形成されている。この挿通孔は、後述するステップ板21の回動時における支持軸43の相対移動軌跡に沿うように、略L字形の溝状に形成されている。またカム部材50は、
図8に示す格納状態のステップ板21を基準として、頂点51を車幅方向内側(
図8の左側)に向く基準位置で配置されている。そしてカム部材50は、その車両後側且つ車幅方向外側(
図8の右側)に位置する後側角部52が支持軸43に固定されている。
【0024】
そして上記した構成によると、カム部材50が支持軸43(第三歯車42C)と共に回動することで、このカム部材50の嵌められた収容枠210を所定方向に移動させられるようになる。即ち、
図8に示す基準位置のカム部材50が支持軸43を中心に60°右回動する間、後述するように、カム部材50の嵌められた収容枠210は車幅方向外側(
図8の右側)に押されて移動するようになる(
図16中の白抜き矢印を参照)。またカム部材50が支持軸43を中心に更に右回動(60°~120°右回動)する間、このカム部材50の嵌められた収容枠210は車両後側に押されて移動するようになる(
図18中の白抜き矢印を参照)。また逆に
図18に示す右回動限界位置のカム部材50を、支持軸43を中心に左回動させることで、収容枠210を逆向きに移動させられるようになる。即ち、カム部材50の嵌められた収容枠210を、車両前側に移動させたのち車幅方向内側(
図18の左側)に移動させられるようになる。
【0025】
[ステップ板]
次に、
図3に示すステップ板21は、本体部22上の第一ステップ部位21Aと、この第一ステップ部位21Aの車両上側に重ねられている第二ステップ部位21Bとを有している。この第一ステップ部位21Aと第二ステップ部位21Bとは、格納位置のステップ板21を基準として、共に車両前後方向に長い角形に形成されている。そしてステップ板21が使用位置に回動することで、各ステップ部位21A,21Bの幅方向X1の端部となる右端部AE,BEが車幅方向外側(
図3の右側)に突出するようになる。また、幅方向X1と直交する方向X2の寸法がステップ板の長さ寸法21Lとなる。
【0026】
そして
図3に示す第一ステップ部位21Aは、本体部22の回転軸23を中心に水平回動できるように配設されている。即ち、
図9及び
図10を参照して、本体部22の車両前側には、回転軸23が車両上下方向に延びるように設けられており、この回転軸23の先端部が本体部22の上面に突出している。また格納位置の第一ステップ部位21Aの車両前側には、回転軸23を挿通するための長孔211が車両前後方向に延びるように形成されている。そして、格納位置の第一ステップ部位21Aを基準として、上記した回転軸23の先端部が長孔211の後端部に挿通されている。これにより、第一ステップ部位21Aが、回転軸23を中心として車幅方向に水平回動できるようになっている。なお回転軸23の先端には、第一ステップ部位21Aの抜け外れを防止するリング材230が取付けられている。また長孔211の車幅方向の左右の内縁には、縦壁状のステップガイド212,213が車両前後方向に延びるように形成されている。そして、後述するステップ板21の長さを変更する際、第一ステップ部位21Aが、その長孔211内で回転軸23を相対移動させながら、本体部22に対してステップ板の長さ方向(
図10の矢線X2方向)にスライド移動できるようになっている。そして上記した構成では、第一ステップ部位21Aの回転中心となる回転軸23に、第一ステップ部位21Aの取付け機能と、スライド移動時の第一ステップ部位21Aのガイド機能とを持たせている。さらに回転軸23は、後述するように、組付け時の第二ステップ部位21Bの抜け落ち機能を有している。
【0027】
また
図3に示す第二ステップ部位21Bは、上記した第一ステップ部位21Aと共に水平回動できるように第一ステップ部位21Aに連結されている。即ち、
図9を参照して、格納位置の第一ステップ部位21Aの上面には、その車幅方向の両縁部に、外側が解放された断面横U字形の下スライダ部214(215)が車両前後方向に延びるように形成されている。また第二ステップ部位21Bの下面には、その車幅方向の両縁部に、内側に直角に曲げられた上スライダ部224(225)が車両前後方向に延びるように形成されている。そして上スライダ部224(225)が下スライダ部214(215)に摺動可能に嵌められることにより、第二ステップ部位21Bが、第一ステップ部位21Aと共に水平回動可能となるように連結されている。また第二ステップ部位21Bは、上スライダ部224(225)と下スライダ部214(215)とが摺動することで、第一ステップ部位21Aに対してステップ板の長さ方向にスライド移動できるようになっている。
【0028】
[長さ可変装置]
そして
図3に示す長さ可変装置25は、フロントドア6の開き角度が大きくなることでステップ板の長さ寸法21Lを大きくする装置である。この長さ可変装置25は、後述するように、フロントドア6が全開する前の段階で、ステップ板の長さ寸法21Lを最大にできるように構成されている(
図17及び
図18を参照)。そして長さ可変装置25は、下側ラック61及び上側ラック62と下側歯車63及び上側歯車64とを備え、第一ステップ部位21Aに対して第二ステップ部位21Bをステップ板の長さ方向X2にスライド移動させられるようになっている。
【0029】
先ず、下側ラック61は、
図4、
図9及び
図11を参照して、第一ステップ部位21Aの上面に配置されている。この下側ラック61は、格納状態のステップ板21を基準として、車両前後方向に延びる帯板状の部材である。そして下側ラック61は、その前端部に形成された丸孔状の貫通孔Hに回転軸23の先端部が回動可能に挿通されている。また
図9及び
図11を参照して、下側ラック61の車両前部は、その幅寸法が大きくされており、上記した第一ステップ部位21Aの左右の下スライダ部214,215間に嵌められている。これにより、左右の下スライダ部214,215の内壁部分(X)が下側ラック61のガイドとして機能し、この下側ラック61を、第一ステップ部位21Aと共に回転軸23を中心に水平回動させられるようになる。また
図4及び
図11を参照して、下側ラック61の車両後部は、その車幅方向内側(各図の左側)が切欠かれることで、車両前部に比して細幅化されている。そして下側ラック61の車両後部の左面には、後述する下側歯車63と噛み合う歯の列610が車両前後方向に延びるように形成されている。
【0030】
また上側ラック62は、
図4、
図9及び
図12に示すように第二ステップ部位21Bの上面裏側に固定されており、第二ステップ部位21Bと共に移動(水平回動、長さ方向にスライド移動)できるようになっている。この上側ラック62は、格納状態のステップ板21を基準として、車両前後方向に延びる帯板状の部材であり、第二ステップ部位21Bの車幅方向内側(各図の左側)に固定されている。そして
図12に示す上側ラック62の右面には、後述する上側歯車64と噛み合う歯の列620が車両前後方向に延びるように形成されている。
【0031】
そして下側歯車63と上側歯車64とは、
図4、
図11及び
図12を参照して、第一ステップ部位21Aの上面に突設された軸部65に水平回転可能に固定されている。この軸部65は、第一ステップ部位21Aの上面に対して軸線周りに回転可能とされて配設されている。このため下側歯車63が回転することで、それと同軸の上側歯車64を回転させられるようになる。そして下側歯車63は、軸部65の車両下側に配設されて、上記した下側ラック61と噛み合うように配設されている。また上側歯車64は、軸部65の車両上側に配設されて、上記した上側ラック62と噛み合うように配設されている。そして上側歯車64は、下側歯車63よりも大きな径(ピッチ円直径)を有しており、下側歯車63よりも早い速度(径が二倍の場合には二倍の速度)で回転するように構成されている。
【0032】
ここで
図22を参照して、第二ステップ部位21Bの組付け工程を、上記した回転軸23の抜け落ち防止機能と共に説明する。この組付け工程では、回転軸23の配設前に、先ず、第二ステップ部位21Bを第一ステップ部位21A上に配置する。そして第二ステップ部位21Bに固定された上側ラック62を、第一ステップ部位21Aの上側歯車64に噛み合わせておく。つづいてステップ装置20に回転軸23を配設することで、この回転軸23が下側ラック61の前端部に挿通される。そして回転軸23の挿通された下側ラック61によって、下側歯車63と上側歯車64とが回転しないように保持される。さらに上側歯車64に噛み合う上側ラック62の位置が保持されることで、この上側ラック62の固定された第二ステップ部位21Bが車両後側(
図22ではステップ板の長さ方向後側)に移動しないようになる。こうして、組付け工程時の第二ステップ部位21Bは、回転軸23によってその位置が保持されることで、第一ステップ部位21Aから車両後側に抜け外れないようになる。
【0033】
[ステップ装置の作動]
図2及び
図13を参照して、フロントドア6が全閉されている場合、ステップ装置20のステップ板21は固定ステップ9上の格納位置に配置されている。また格納位置のステップ板21では、第一ステップ部位21Aと第二ステップ部位21Bとが車両前側に位置することで、そのステップ板の長さ寸法が最小(21L(Min))となっている。そして
図14に示すように、フロントドア6の開き動作に連動させてステップ板21を使用位置まで回動させる。この種の構成では、フロントドア6の開閉動作に連動させて、ステップ板の長さ寸法21Lを変えられることが望ましい。
【0034】
そこでステップ装置20では、
図3を参照して、幅方向X1に直交する方向X2の寸法をステップ板21の長さ寸法とした場合、フロントドア6の開き角度が大きくなることでステップ板の長さ寸法21Lを大きくする長さ可変装置25を備えている。上記した構成では、長さ可変装置25にて、フロントドア6の開き角度が大きくなることでステップ板の長さ寸法21Lを大きくでき、フロントドア6の開き角度が小さくなることでステップ板の長さ寸法21Lを小さくできる。そこで以下に、フロントドア6の開閉状況に応じて、長さ可変装置25の働きを、展開装置24(連動部30,伝達部40,カム部材50)の働きと共に説明する。
【0035】
[ドアの開き動作初期から中期]
図13及び
図14を参照して、フロントドア6を全閉状態から開き方向に左回動(
図14の矢線A1で示す反時計回りに回動)させる。このとき
図15に示す伝達部40の伝達ラック41が、連動部30のドア側リンク31に引っ張られて車両前側にスライド移動し、この伝達ラック41に噛み合う第一歯車42Aが右回動する。また第一歯車42Aの右回動によって、第二歯車42Bが左回動すると共に第三歯車42Cが右回動する。これにより、
図16に示すように、第三歯車42Cの支持軸43に軸支されたカム部材50が右回動するようになる。そして基準位置のカム部材50が支持軸43を中心に60°右回動する間、このカム部材50の嵌められた収容枠210が車幅方向外側(
図16の白抜き矢印で示す右側)に押されて移動する。これにより、収容枠210の固定された第一ステップ部位21Aが、回転軸23を中心に車幅方向外側に右回動するようになる。また上記したように、第二ステップ部位21Bと長さ可変装置25も、第一ステップ部位21Aと共に右回動している(
図16及び
図18を参照)。
【0036】
そして
図14~
図16を参照して、フロントドア6を所定角度θまで左回動して、カム部材50が支持軸43を中心に基準位置から60°右回動することにより、ステップ板21が使用位置に到達する。こうしてステップ板21を、連動部30と伝達部40とカム部材50(展開装置)の働きで水平回動させることで、使用位置に変位させられるようになる。そして上記構成によれば、ステップ板21を、所望の位置(例えばフロントドアの回転中心から離した位置等)に配設した場合においても、展開装置の働きでフロントドア6の開き動作に連動させて使用位置に変位させることができる。またフロントドア6を全開させなくともステップ板21が使用位置に到達する(回動量を最大にできる)ため、このステップ板21の概ね全体を踏み面として使用することができるようになる。さらに上記した構成によれば、使用位置のステップ板21は、フロントドア6よりも車幅方向外側にはみ出さないようになる。
【0037】
[長さ可変装置の働き]
つづいて
図17に示すように、フロントドア6を所定角度θから更に角度θAだけ左回動させる。このとき
図18に示すステップ装置20では、ステップ板21を使用位置に維持した状態で(回動動作後において)、長さ可変装置25が作動してステップ板の長さ寸法21Lが大きくなる。即ち、フロントドア6の開き動作が、連動部30と伝達部40によってカム部材50に伝達され、このカム部材50が、
図18に示すように60°回動した状態から更に右回動する。そしてカム部材50が支持軸43を中心に更に右回動(60°~120°右回動)する間、このカム部材50の嵌められた収容枠210、即ち、第一ステップ部位21Aがステップ板の長さ方向X2に押されるようになる(
図18中、白抜き矢印を参照)。こうして第一ステップ部位21Aは、長孔211内で回転軸23を車両前側に相対移動させながら、本体部22に対してステップ板21の長さ方向X2に移動することができる。そしてカム部材50が支持軸43を中心に更に右回動する間、第一ステップ部位21Aは車幅方向外側に押されることがないため、ステップ板21は使用位置で維持されるようになる。
【0038】
また
図18を参照して、第一ステップ部位21Aが長孔211内で回転軸23を車両前側に相対移動させながら移動する間、この回転軸23に嵌められている下側ラック61は移動できないようになっている。即ち、下側ラック61の位置が固定された状態で、第一ステップ部位21Aだけが移動するようになる。これにより、
図19に示す第一ステップ部位21Aに軸支された下側歯車63が、下側ラック61と噛み合いながら左回動するようになる。また下側歯車63が左回動することで、
図20に示すように、それと同軸の上側歯車64が上側ラック62と噛み合いながら左回動する。これにより、
図19及び
図20を参照して、上側ラック62の固定された第二ステップ部位21Bが、第一ステップ部位21Aに対してステップ板の長さ方向X2にスライド移動するようになる。そして上側歯車64は、上記したように、下側歯車63よりも早い速度(径が二倍の場合には二倍の速度)で回転するように構成されている。このため、第二ステップ部位21Bは、第一ステップ部位21Aよりも早い速度(例えば二倍の速度)でスライド移動するようになる。即ち、長さ可変装置25によって、第一ステップ部位21Aと第二ステップ部位21Bとをステップ板の長さ方向X2に異なる速さで移動させられるようになる。
【0039】
そしてステップ装置20では、
図17に示すように、フロントドア6が全開する前の開き角度(θ+θA)で、ステップ板21の長さ寸法を最大(21L(Max))にすることができる。さらに上記した構成では、ステップ板21を使用位置で保持、即ち、ステップ板21を車幅方向外側(
図17の右側)に突出させた状態で、ステップ板の長さ寸法21Lを大きくしている。このため、第一ステップ部位21Aに対して第二ステップ部位21Bを、その車両後側のホイールハウス8に極力干渉させることなく、ステップ板の長さ方向X2にスライド移動させられるようになる。
【0040】
[ドアの開き動作終期]
つづいてフロントドア6を、
図21に示すように全開となるように限界角度θB(θB>θ+θA)まで左回動させる場合を説明する。このときステップ装置20では、
図7及び
図18を参照して、使用位置のステップ板21の長さ寸法が最大になったのちに、第一歯車42Aの欠歯部420が伝達ラック41の直線部412に対面状に配置されるようになる。このため
図7及び
図22を参照して、フロントドア6を全開させるまでの間、欠歯部420の前後に位置する歯421,422が直線部412に対して相対的に摺動するようになる。これにより、フロントドア6を全開させる間、
図22に示すように伝達部40の各歯車42A~42Cとカム部材50の回動が停止すると共に、長さ可変装置25も停止する。このため、
図21に示す長さ寸法が最大となったステップ板21を使用位置で維持しつつ、フロントドア6を全開まで左回動させられるようになる。
【0041】
[ドアの閉め動作]
また
図21に示す全開したフロントドア6を閉める場合には、このフロントドア6を右回動(時計回りに回動)させていく。これにより、
図15に示すように、伝達部40の第一歯車42Aと伝達ラック41とが再び噛み合うようになる。そして、フロントドア6の閉め動作が連動部30と伝達部40とによってカム部材50に伝達され、このカム部材50が左回動する。これにより、ステップ板21が、その長さ寸法を小さくしたのちに、格納位置に到達するようになる(
図13を参照)。
【0042】
以上説明した通り本実施例では、長さ可変装置25によって、フロントドア6の開き角度が大きくなることでステップ板21の長さ寸法を大きくすることができ、フロントドア6の開き角度が小さくなることでステップ板21の長さ寸法を小さくすることができる。このため本実施例によれば、フロントドア6の開閉動作に連動させてステップ板21の長さ寸法を変えられるようになる。
【0043】
さらに本実施例では、ステップ板21を水平回動させてドア開口部4から車両外側に突出させられるようになる。そして長さ可変装置25によって、上記したステップ板21の回動動作の後にステップ板21の長さ寸法を大きくすることで、使用位置におけるステップ板21の長さ寸法を確保できるようになる。また本実施例では、フロントドア6が全開する前に、ステップ板21の長さ寸法を最大にすることができるようになる。そして本実施例では、長さ可変装置25によって、第一ステップ部位21Aと第二ステップ部位21Bとを長さ方向に異なる速さで移動させることにより、ステップ板の長さ寸法21Lを変えられるようになる。
【0044】
[変形例1]
ここで伝達部の構成は、上記した構成のほか、各種の構成を取り得る。例えば
図23に示す変形例1のステップ装置20Xは、ステップ板21と、連動部30と、伝達部40Xと、カム部材50とを備えるが、伝達部40Xの構成が実施例と異なっている。即ち、本変形例の伝達部40Xは、連動部30のドア側リンク31に直接連結される第一歯車42Xと、カム部材50と同軸の第二歯車42Yとから構成されている。そして第一歯車42Xと第二歯車42Yとは共に欠歯歯車であり、ステップ板21が使用位置に到達してその長さ寸法が最大になる間だけ互いに噛合するようになっている(
図23及び
図24では、便宜上、各歯車を円形に図示し、歯の図示を省略する)。
【0045】
この伝達部40Xでは、
図23に示すドア側リンク31の後端部が、第一歯車42Xの回転中心C1から偏心した偏心位置に連結されている。即ち、格納位置のステップ板21を基準として、第一歯車42Xの回転中心C1の車両後側(偏心位置)に、連結縦ピン410Xが車両下側に突出するように設けられている。そしてドア側リンク31の後端部が、連結縦ピン410Xに水平回動可能に連結されている。また第二歯車42Yは、第一歯車42Xと所定の歯車比で製作されており、第一歯車42Xが回動することで第一歯車42Xと反対方向に所定の角度だけ回動する。そして上記した実施例と同様に、第二歯車42Yが本体部(図示省略)に設けられた支持軸43に軸支されていると共に、この支持軸43の先端部にカム部材50が軸支されている。
【0046】
そして本変形例では、
図24に示すようにフロントドア6が開き方向に左回動(
図24の矢線A1で示す反時計回りに回動)する際、第一歯車42Xはドア側リンク31に引っ張られて左回動する。また第一歯車42Xと噛み合う第二歯車42Yが支持軸43と共に右回動することで、この支持軸43に軸支されたカム部材50が右回動するようになる。これにより、第一ステップ部位21Aを、回転軸23を中心に車幅方向外側に右回動(
図24の矢線A2で示す反時計回りに回動)させられるようになる。またカム部材50を更に右回動させることで、長さ可変装置(図示省略)を作動させて、第二ステップ部位21Bをスライド移動させられるようになる。また逆にフロントドア6が閉じ方向に右回動(時計回りに回動)する際、第一歯車42Xはドア側リンク31に押されて右回動する。これにより、第二歯車42Yとカム部材50とは、支持軸43を中心に左回動するようになる。このため本変形例では、二つの歯車42X,42Yで構成されたシンプルな伝達部40Xによって、ステップ板21の位置変位と長さ寸法の変更を行えるようになる。
【0047】
[変形例2、変形例3]
またカム部材と収容枠の構成も、上記した構成のほか、各種の構成を取り得る。例えばカム部材は、平面視で各種の定幅図形に形成することができる。この種の定幅図形として、
図25に示すように、円形の定幅図形100のほか、三角形の定幅図形(本実施例のカム部材50)、五角形状の定幅図形101、七角形状の定幅図形102及び九角形状の定幅図形103などの各種多角形を例示できる。そして平面視のカム部材が、円形に近づく、即ち、多角形の場合には辺の数が多くなる程、ステップ板の回動動作(車幅方向外側への移動)と長さ延長動作(車両後側への移動)の堺が曖昧となる。例えば
図26に示す変形例2のカム部材50Xは、平面視で五角形状の定幅図形101に形成されている。この変形例2のカム部材50Xを使用した場合、実施例に比して車幅方向外側への移動と車両後側への移動の堺が曖昧となり、ステップ板の回動動作と長さ延長動作が同時に行われるようになる(
図26では、カム部材と収容枠の動きを矢線50XA、ステップ板の車両後側への移動量を矢線210Aで図示する)。また
図27に示す変形例3では、実施例のカム部材50を、平面視で円形の収容枠210Xに収容している。この変形例3によれば、実施例と同様に、ステップ板を車幅方向外側と車両後側とに順次移動させられるようになる(
図27では、カム部材と収容枠の動きを矢線50A、ステップ板の車両後側への移動量を矢線210XAで図示する)。なお変形例3の収容枠210Xは、実施例の収容枠に比してやや車両前後方向及び車幅方向の寸法が大きくなっている。
【0048】
本実施形態のステップ付き車両は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。本実施形態では、ステップ装置の構成を例示したが、ステップ装置の構成を限定する趣旨ではない。例えばステップ装置は、ドア開口部の適宜の位置に配設することができ、車種に応じてドアの回転中心から離してもよく近づけてもよい。またステップ装置は、
図2に示す固定ステップの車両下側に設けてもよく、固定ステップの代わりにステップ装置を配設することもできる。またステップ板が使用位置に到達する際のドアの所定角度は車両の構成に応じて適宜設定できる。そしてステップ装置は、前部座席に対応するドア開口部のほか、車両の適宜の位置に設けられたドア開口部に配設することができる。またステップ板の形状や寸法も適宜設定することができ、回転軸の配置位置も適宜設定することができる。
【0049】
また本実施形態では、展開装置の構成を例示したが、展開装置の構成を限定する趣旨ではない。例えば展開装置において、ドアの開閉をセンサで検知し、このセンサの検知情報に基づいて電動機構で第一歯車(伝達部)を回動又は伝達ラック(伝達部)を直線運動させられるようにしてもよい。この場合には、センサと電動機構とが連動部となる。なおステップ装置では、長さ可変機構が必須構成であり、展開装置は任意構成であって省略することができる。
【0050】
また本実施形態では、長さ可変装置の構成を例示したが、長さ可変装置の構成を限定する趣旨ではない。例えば長さ可変装置において、ドアの開閉をセンサで検知し、このセンサの検知情報に基づいてカム部材を電動機構で回動させられるようにしてもよい。そして上記構成では、ステップ装置から展開装置(ステップ板の回動動作)を省略することができる。また長さ可変機構は、カム部材の代替えとして、第二ステップ部位をスライド移動させるリンクを備えることができる。例えばこの種のリンクは、第三歯車と同軸に回転又は電動で回転する歯車に固定されており、当該歯車が右回動することで、リンクの先端部が第二ステップ部位を車両後側に押しながら円弧運動する。そして長さ可変装置にて、フロントドアが全開した時点でステップ板の長さ寸法を最大にすることもできる。また長さ可変装置によって、第二ステップ部位を、第一ステップ部位と同じ速さでスライド移動させてもよく、第一ステップ部位よりも遅い速度でスライド移動させてもよい。
【符号の説明】
【0051】
2 車両
3 車両ボディ
4 ドア開口部
5 フロントピラー
6 フロントドア
7 フロントサイドパネル
8 ホイールハウス
9 固定ステップ
10 カウルパネル
20 ステップ装置
21 ステップ板
AE,BE (ステップ板の)右端部
210 収容枠
21A 第一ステップ部位
211 長孔
212,213 ステップガイド
214,215 下スライダ部
21B 第二ステップ部位
224,225 上スライダ部
22 本体部
23 回転軸
230 リング材
24 展開装置
25 長さ可変装置
30 連動部
31 ドア側リンク
32 連結軸
40 伝達部
41 伝達ラック
410 連結縦ピン
411 ラック側歯部
412 直線部
42A 第一歯車
420 欠歯部
421,422 (第一歯車の)歯
42B 第二歯車
42C 第三歯車
43 支持軸
44,45 ガイド部
50 カム部材
51 (カム部材の)頂点
52 (カム部材の)後側角部
61 下側ラック
610 (下側ラックの)歯の列
H 貫通孔
62 上側ラック
620 (上側ラックの)歯の列
63 下側歯車
64 上側歯車
65 軸部
100 円形の定幅図形
101 五角形状の定幅図形
102 七角形状の定幅図形
103 九角形状の定幅図形
20X (変形例1の)ステップ装置
40X (変形例1の)伝達部
42X (変形例1の)第一歯車
42Y (変形例1の)第二歯車
410X (変形例1の)連結縦ピン
50X (変形例2の)カム部材
210X (変形例3の)収容枠