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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092067
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/04 20060101AFI20230626BHJP
   B60C 15/06 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
B60C15/04 C
B60C15/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207054
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】坂田 浩一
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BA01
3D131BB01
3D131BB03
3D131BC25
3D131HA14
3D131HA15
3D131HA38
(57)【要約】
【課題】リム外れ抗力の向上とリム組み作業の容易化を両立させることができる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】ビードコア11及び当該ビードコア11からタイヤ径方向外側に延びるビードフィラー12を有する一対のビード10と、一対のビード10のそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール20と、一対のサイドウォール20の間に配置されたトレッド30と、一対のビード10の間に架け渡されたカーカスプライ40と、を備え、ビードコア11は、そのタイヤ幅方向断面形状において、タイヤ径方向内側の底面111と、タイヤ幅方向外側の外側面113と、タイヤ幅方向内側の内側面114と、を有し、底面111と外側面113とにより形成される第1の角部11Aの角度αが91°以上140°以下であり、底面111と内側面114とにより形成される第2の角部11Bの角度βが40°以上89°以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビードコア及び当該ビードコアからタイヤ径方向外側に延びるビードフィラーを有する一対のビードと、
前記一対のビードのそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォールと、
前記一対のサイドウォールの間に配置されたトレッドと、
前記一対のビードの間に架け渡されたカーカスプライと、を備えた空気入りタイヤであって、
前記ビードコアは、そのタイヤ幅方向断面形状において、タイヤ径方向内側の底面と、タイヤ幅方向外側の外側面と、タイヤ幅方向内側の内側面と、を有し、
前記底面と前記外側面とにより形成される第1の角部の角度αが91°以上140°以下であり、前記底面と前記内側面とにより形成される第2の角部の角度βが40°以上89°以下である、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1の角部の角度αは、120°以上140°以下であり、
前記第2の角部の角度βは、40°以上60°以下である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ビードコアのタイヤ幅方向断面形状は、略平行四辺形状である、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記ビードコアのタイヤ幅方向断面形状は、タイヤ径方向外側に向かうにつれてタイヤ幅方向寸法がしだいに小さくなる形状である、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記ビードコアのタイヤ幅方向内側に、前記ビードフィラーの一部が、前記ビードコアと前記カーカスプライとの間に充填された状態で配置されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に空気入りタイヤは、タイヤ幅方向の両端内周部に配置される一対のビードの間にカーカスプライを架け渡した骨格構造を、トレッドゴムやサイドウォールゴム等で被覆した構造を有する。従来、カーカスプライをビードコア周りに折り返した折り返し部とカーカスプライとの間に補強層を配置することにより、横剛性の向上を図った空気入りタイヤが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-238912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
横剛性の向上は、大きな横力を受けた際にリム外れを抑制する効果がある反面、タイヤをリムに装着するリム組みの際には抵抗となるため、作業性を妨げる可能性がある。
【0005】
そこで本発明は、リム外れ抗力の向上とリム組み作業の容易化を両立させることができる空気入りタイヤを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の空気入りタイヤは、ビードコア及び当該ビードコアからタイヤ径方向外側に延びるビードフィラーを有する一対のビードと、前記一対のビードのそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォールと、前記一対のサイドウォールの間に配置されたトレッドと、前記一対のビードの間に架け渡されたカーカスプライと、を備えた空気入りタイヤであって、前記ビードコアは、そのタイヤ幅方向断面形状において、タイヤ径方向内側の底面と、タイヤ幅方向外側の外側面と、タイヤ幅方向内側の内側面と、を有し、前記底面と前記外側面とにより形成される第1の角部の角度αが91°以上140°以下であり、前記底面と前記内側面とにより形成される第2の角部の角度βが40°以上89°以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、リム外れ抗力の向上とリム組み作業の容易化を両立させることができる空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ幅方向の半断面を示す図である。
図2図1のII部拡大図である。
図3】実施形態に係るタイヤが備えるビードコアを模式的に示す断面図である。
図4A】実施形態に係るタイヤのビード及びリムを模式的に示す図であって、ビードがリムに装着される過程の第1段階を示している。
図4B】実施形態に係るタイヤのビード及びリムを模式的に示す図であって、ビードがリムに装着される過程の第2段階を示している。
図4C】実施形態に係るタイヤのビード及びリムを模式的に示す図であって、図4Cの状態からビードがリムに装着された状態を示している。
図5】実施形態に係るタイヤのビード及びリムを模式的に示す図であって、図4Cの状態からタイヤに横力が発生した状態を示す図である。
図6】実施形態に係るタイヤが備えるビードコアの他の形態の例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書での「略」は厳密にその状態を特定するものではなく、それらの機能や効果を達成可能な範囲で近似する状態を含むという意味である。
【0010】
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤであるタイヤ1のタイヤ幅方向の半断面を示している。図2は、図1のIIで示す部分の拡大図であって、後述するビード10の部分を主に示す断面図である。図1及び図2には、タイヤ1が装着されるリム70の一部が示されている。図1の断面図は、タイヤ1をリム70に装着して規定内圧を充填した無負荷状態のタイヤ幅方向断面図(タイヤ子午線断面図)である。規定内圧とは、例えばタイヤ1が乗用車用である場合には180kPaである。
【0011】
実施形態に係るタイヤ1は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤである。なお、実施形態に係るタイヤ1は、乗用車の他に、ライトトラック、トラック、バス等の各種車両用として採用することができる。
【0012】
タイヤ1の基本的な構造は、タイヤ幅方向の断面において左右対称となっている。図1は、タイヤ1の右半分の半断面を示しており、不図示の左半分も同じ構造である。図1中、符号S1は、タイヤ赤道面である。タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸(タイヤ子午線)に直交する面で、かつ、タイヤ幅方向中心に位置する面である。
【0013】
ここで、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であり、図1における紙面左右方向である。図1においては、タイヤ幅方向Xとして図示している。タイヤ幅方向内側とは、タイヤ赤道面S1に近づく方向であり、図1においては紙面左側である。タイヤ幅方向外側とは、タイヤ赤道面S1から離れる方向であり、図1においては紙面右側である。
【0014】
また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、図1における紙面上下方向である。図1においては、タイヤ径方向Yとして図示している。タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸から離れる方向であり、図1においては紙面上側である。タイヤ径方向内側とは、タイヤ回転軸に近づく方向であり、図1においては紙面下側である。なお、図2についても同様である。
【0015】
図1に示すように、タイヤ1は、タイヤ幅方向両側に設けられた一対のビード10と、一対のビード10のそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール20と、一対のサイドウォール20の間に配置されたトレッド30と、一対のビード10の間に架け渡されて配置されたカーカスプライ40と、カーカスプライ40のタイヤ内腔側に配置されたインナーライナー50と、を備えている。
【0016】
ビード10は、ビードコア11と、ビードコア11からタイヤ径方向外側に延びるビードフィラー12と、チェーハー13と、リムストリップゴム14と、リムプロテクタ15と、を有している。
【0017】
図2に示すように、ビード10は、そのタイヤ径方向内端を構成するビードベース10Aが、リム70のシート71に配置されて、リム70に装着される。リム70については、後述する。
【0018】
図2に示すように、ビードベース10Aは、タイヤ幅方向内側の端部に形成されたビードトウ10bと、タイヤ幅方向外側の端部に形成されたビードヒール10cと、ビードトウ10bとビードヒール10cとの間のベース面10dと、を有する。ビードトウ10bは、タイヤ幅方向及びタイヤ径方向の内端であって、タイヤ幅方向断面形状が鋭角形状の頂部である。ビードヒール10cは、断面凸R形状に形成された湾曲形状に形成されている。ベース面10dは、リム70のシート71と対向する面である。ビードトウ10bはビードヒール10cよりもタイヤ径方向において内側に位置しており、このため、ベース面10dはビードヒール10c側からビードトウ10b側に向かうにつれてタイヤ径方向内側にせり出すように傾斜している。
【0019】
ビードコア11は、ゴムが被覆された金属製のビードワイヤがタイヤ周方向に複数回巻かれた環状の部材である。ビードコア11は、空気が充填されたタイヤ1を、リム70に固定する役目を果たす部材である。ビードフィラー12は、タイヤ径方向内側から外側に延びるにつれて先細り形状となっている。ビードフィラー12は、ビード10の周辺部分の剛性を高め、高い操縦性及び安定性を確保するために設けられる。ビードフィラー12は、例えば、周囲のゴム部材よりも硬度の高いゴムにより構成される。ビードコア11については、リム70と合わせて後で詳述する。
【0020】
図1及び図2に示すように、チェーハー13は、ビードコア11及びビードフィラー12を囲んで設けられるカーカスプライ40の外側をさらに囲んでいる。リムストリップゴム14は、チェーハー13及びカーカスプライ40のタイヤ幅方向外側に配置されている。リムストリップゴム14の外表面には、タイヤ周方向に沿った頂部14aが形成されている。チェーハー13及びリムストリップゴム14は、タイヤ1が装着されるリム70と接触する。頂部14aを含むリムストリップゴム14の外表面は、外傷からリム70を保護するリムプロテクタ15を構成する。リムプロテクタ15は、タイヤ周方向に環状に連続している。
【0021】
図1に示すように、サイドウォール20は、カーカスプライ40のタイヤ幅方向外側に配置されたサイドウォールゴム21を含んでいる。サイドウォールゴム21は、タイヤ1の外壁面を構成する。サイドウォールゴム21のタイヤ径方向内側の端部21cは、リムストリップゴム14のタイヤ径方向外側の端部を覆っている。サイドウォールゴム21は、タイヤ1がクッション作用をする際に最もたわむ部分であり、通常、耐疲労性を有する柔軟なゴムが採用される。
【0022】
トレッド30は、無端状のベルト31及びキャッププライ35と、トレッドゴム36と、を備えている。
【0023】
ベルト31は、カーカスプライ40のタイヤ径方向外側に配置されている。キャッププライ35は、ベルト31のタイヤ径方向外側に配置されている。ベルト31は、トレッド30を補強する部材である。実施形態のベルト31は、内側ベルト32と、外側ベルト33と、を備えた2層構造である。内側ベルト32及び外側ベルト33は、いずれも複数のスチールコード等のコードがゴムで覆われた構造を有している。
【0024】
実施形態の2層構造のベルト31は、内側ベルト32が外側ベルト33よりも幅広である。したがって、外側ベルト33のタイヤ幅方向外端33Aよりも、内側ベルト32のタイヤ幅方向外端32Aがタイヤ幅方向外側に位置している。ベルト31を設けることにより、タイヤ1の剛性が確保され、路面に対するトレッド30の接地性が向上する。なお、ベルト31は2層構造に限らず、1層、あるいは3層以上の構造を有していてもよい。
【0025】
キャッププライ35は、ベルト31とともにトレッド30を補強する部材である。キャッププライ35は、例えば、ポリアミド繊維等の絶縁性を有する複数の有機繊維コードがゴムで覆われた構造を有している。キャッププライ35のタイヤ幅方向外端35Aは、内側ベルト32のタイヤ幅方向外端32Aよりもタイヤ幅方向外側に位置している。実施形態のキャッププライ35は1層であるが、2層以上の構造であってもよい。キャッププライ35を設けることにより、耐久性の向上、走行時のロードノイズの低減を図ることができる。
【0026】
トレッドゴム36は、キャッププライ35のタイヤ径方向外側に配置されている。トレッドゴム36は、走行時に路面と接地する踏面37を構成する部材である。トレッドゴム36の踏面37には、例えば複数の溝で構成される不図示のトレッドパターンが設けられている。トレッドゴム36のタイヤ幅方向外側端部36bは、キャッププライ35のタイヤ幅方向外端35Aを越えてタイヤ径方向内側に屈曲し、カーカスプライ40に接触している。トレッドゴム36のタイヤ幅方向外側端部36bは、サイドウォールゴム21のタイヤ径方向外側端部21bで覆われている。
【0027】
カーカスプライ40は、タイヤ1の骨格となるプライを構成している。カーカスプライ40は、一対のビード10の間を、一対のサイドウォール20及びトレッド30のタイヤ内腔側を通過する態様で、タイヤ1内に埋設されている。
【0028】
カーカスプライ40は、タイヤ1の骨格となる複数の図示せぬカーカスコードを含んでいる。複数のカーカスコードは、例えばタイヤ幅方向に沿った面内に沿って延びており、タイヤ周方向に並んで配列されている。このカーカスコードは、ポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維コード等により構成されている。複数のカーカスコードがゴムにより被覆されて、カーカスプライ40が構成されている。
【0029】
カーカスプライ40は、プライ本体部41と、プライ折り返し部42と、屈曲部43と、を有する。プライ本体部41は、一方のビードコア11のタイヤ幅方向内側から、トレッド30を経て、他方のビードコア11のタイヤ幅方向内側まで延在する部分である。プライ折り返し部42は、プライ本体部41のタイヤ径方向内端からビードコア11周りに折り返されることにより、ビードフィラー12のタイヤ幅方向外側においてタイヤ径方向外側に延びている部分である。屈曲部43は、プライ本体部41からビードコア11周りにU字状に屈曲し、プライ折り返し部42につながる部分である。プライ本体部41とプライ折り返し部42とは、屈曲部43を介して連続している。
【0030】
プライ本体部41は、タイヤ径方向内側においてビードコア11及びビードフィラー12のタイヤ幅方向内側に配置されている。プライ折り返し部42は、ビードコア11及びビードフィラー12のタイヤ幅方向外側に配置されている。屈曲部43は、カーカスプライ40においてタイヤ径方向の最も内側の部分を含んでいる。
【0031】
実施形態のカーカスプライ40は、第1カーカスプライ401及び第2カーカスプライ402が重ねられた2層構造を有している。プライ本体部41においては、第1カーカスプライ401が第2カーカスプライ402のタイヤ内腔側に配置される。プライ本体部41の第2カーカスプライ402は、ビードフィラー12のタイヤ幅方向内側の面に密着している。
【0032】
プライ折り返し部42においては、第1カーカスプライ401が第2カーカスプライ402のタイヤ幅方向外側に配置されている。プライ折り返し部42の第2カーカスプライ402は、タイヤ径方向内側からビードフィラー12の途中まで延びており、ビードフィラー12のタイヤ幅方向外側の面に密着している。プライ折り返し部42の第1カーカスプライ401は、タイヤ径方向内側から、第2カーカスプライ402のタイヤ幅方向外側の面及びビードフィラー12のタイヤ幅方向外側の面に密着している。そして、ビードフィラー12よりもタイヤ径方向外側の部分は、サイドウォール20に配置されるプライ本体部41の第2カーカスプライ402に重ね合わされている。
【0033】
図1に示すように、プライ折り返し部42の第1カーカスプライ401のタイヤ径方向外端401Aは、サイドウォール20においてタイヤ最大幅位置20Wよりもタイヤ径方向外側に配置されている。プライ折り返し部42の第2カーカスプライ402のタイヤ径方向外端402Aは、タイヤ最大幅位置20Wよりもタイヤ径方向内側、かつ、チェーハー13のタイヤ幅方向外側のタイヤ径方向外端13Aよりもタイヤ径方向外側に配置されている。屈曲部43の第1カーカスプライ401及び第2カーカスプライ402は、チェーハー13のタイヤ径方向内側に配置されている。
【0034】
実施形態のカーカスプライ40は2層構造であるが、カーカスプライ40は、1層であってもよいし、3層以上であってもよい。カーカスプライ40が2層、あるいはそれ以上の層構造のプライにより構成されると、タイヤ1がリム70の装着部付近で局所的に変形することが十分に抑制されるので好ましい。
【0035】
上述したビード10のチェーハー13は、屈曲部43を含むカーカスプライ40のタイヤ径方向内側の端部を取り囲むように設けられている。また、リムストリップゴム14は、カーカスプライ40のプライ折り返し部42及びチェーハー13の、タイヤ幅方向外側に配置されている。リムストリップゴム14のタイヤ径方向外側の端部は、サイドウォールゴム21のタイヤ径方向内側の端部21cで覆われている。
【0036】
インナーライナー50は、一対のビード10の間のタイヤ内面を覆っている。インナーライナー50は、トレッド30及びトレッド30からサイドウォール20にわたる領域では、プライ本体部41の内面を覆っている。また、インナーライナー50は、サイドウォール20からビード10にわたる領域では、プライ本体部41及びチェーハー13の内面を覆っている。したがってインナーライナー50は、タイヤ1の内壁面を構成する。インナーライナー50は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、タイヤ内腔内の空気が外部に漏れるのを防ぐ。
【0037】
ここで、ビードフィラー12に採用するゴムとしては、少なくともサイドウォールゴム21及びインナーライナー50よりも硬度が高いゴムが用いられる。ゴムの硬度は、JIS K6253に準拠して、23℃雰囲気において、タイプAデュロメータで測定される値(デュロメータ硬さ)である。
【0038】
例えば、サイドウォールゴム21の硬度を基準としたとき、ビードフィラー12の硬度は、サイドウォールゴム21の硬度の1.2倍以上2.3倍以下程度が好ましい。リムストリップゴム14の硬度は、サイドウォールゴム21の硬度の1倍以上1.6倍以下程度がより好ましい。このような硬度とすることで、タイヤとしての柔軟性とビード10付近の剛性のバランスを確保することができる。
【0039】
以上が実施形態に係るタイヤ1の基本構成である。次いで、リム70及びビードコア11について詳述する。
【0040】
図2に示すように、リム70は、当該リム70の軸方向(タイヤ幅方向に相当)外側のリムフランジ72と、軸方向内側のハンプ73と、リムフランジ72とハンプ73との間のシート71と、を備える。リムフランジ72及びハンプ73のそれぞれは、タイヤ径方向外側に突出する周方向に沿った円環状の凸条である。ハンプ73よりもタイヤ幅方向内側は、リム70の主体をなす円筒状のウェル(不図示)に連続している。
【0041】
シート71は、リムフランジ72とハンプ73とに挟まれる周溝形状の底部を形成する。このシート71に、ビード10のビードベース10Aが嵌合されてリム70にタイヤ1が装着される。シート71からリムフランジ72に移行する部分には、ビードヒール10cが接触する湾曲部74が形成されている。
【0042】
図2に示すように、ビードコア11は、タイヤ幅方向断面形状が、タイヤ幅方向外側に傾く平行四辺形の形状を有する。ビードコア11は、上述したようにゴムが被覆された金属製のビードワイヤがタイヤ周方向に複数回巻かれた環状の部材であるが、ビードワイヤは、その断面形状が真円または真円に近い円形状のものが好ましい。
【0043】
ビードコア11は、タイヤ幅方向断面形状において、タイヤ径方向内側の内周面を形成する底面111と、タイヤ径方向外側の外周面を形成する表面112と、タイヤ幅方向外側の側面を形成する外側面113と、タイヤ幅方向内側の側面を形成する内側面114と、を有する。底面111と表面112とは互いに略平行であり、外側面113と内側面114とは互いに略平行である。タイヤ1をリム70に装着した状態で、底面111は、タイヤ幅方向と略平行である。
【0044】
図3は、ビードコア11のタイヤ幅方向断面を模式的に示している。図3に示すように、実施形態のビードコア11においては、底面111と外側面113とにより形成される第1の角部11Aの角度αが91°以上140°以下である。また、底面111と内側面114とにより形成される第2の角部11Bの角度βが40°以上89°以下である。ここで、第1の角部11Aの角度αは、120°以上140°以下であることが好ましく、第2の角部11Bの角度βは、40°以上60°以下であることが好ましい。
【0045】
図2に示すように、ビードコア11のタイヤ幅方向内側には、ビードフィラー12の一部であってタイヤ径方向内側の端部12cが配置されている。この端部12cは、ビードコア11の内側面114とカーカスプライ40との間に充填された状態で配置されている。
【0046】
このように、タイヤ径方向内側、かつ、タイヤ幅方向外側の第1の角部11Aが上記角度αであり、タイヤ径方向内側、かつ、タイヤ幅方向内側の第2の角部11Bが上記角度βであるビードコア11を備える実施形態のタイヤ1は、以下のように作用する。
【0047】
図4A図4Cは、実施形態のタイヤ1のビード10をリム70に装着するリム組み時の過程を模式的に示している。図4A図4Cでは、図2と同様に、紙面右側がタイヤ幅方向外側、紙面左側がタイヤ幅方向内側であり、紙面上側がタイヤ径方向外側、紙面下側がタイヤ径方向内側である。なお、後述する図5も同様である。
【0048】
ビード10は、図4A図4Cにおいて矢印E方向に動かされてリム70に装着される。ビード10はハンプ73の内側(タイヤ幅方向での内側)に配置され、そこからハンプ73を乗り越えてハンプ73とリムフランジ72の間のシート71に嵌合する。
【0049】
ビード10は、図4Aに示すようにビードヒール10cがハンプ73の内側に当接する状態から、図4Bに示すようにビードヒール10cがハンプ73を乗り越えようとする際に、ハンプ73から相対的にタイヤ径方向外側に押圧されて弾性変形する。このとき、ハンプ73に対向するビードコア11の第1の角部11Aが鈍角に広がっていることにより、ビードコア11及びその外側のカーカスプライ40及びチェーハー13がハンプ73から受ける押圧力は、第1の角部11Aが直角以下の場合と比べると弱い。換言すると、ビード10がハンプ73を乗り越えるために必要な圧力は小さくて済む。本明細書では、このビード10がハンプ73を乗り越えるために必要な圧力を、ハンプ圧と称する。ハンプ圧が比較的小さくてよいことから、ビード10はハンプ73からの押圧を受けながらも円滑にハンプ73を乗り越えて、リム70に嵌合する。
【0050】
次に、図5は、図4Cのリム装着状態から、図中左側に向けてタイヤ1に横力Fが発生した場合のビード10の挙動を示している。図5に示すように、タイヤ1に、タイヤ幅方向内側に向かう横力Fが発生すると、その力を受けたビード10は、タイヤ幅方向内側に倒れつつタイヤ幅方向内側に移動する。これにより、ビードベース10Aのビードヒール10c側の部分がリム70のシート71から離間するとともに、ビードトウ10bがハンプ73のタイヤ幅方向外側に係合する。このとき、ビードトウ10bの内側に配置されてハンプ73に対向するビードコア11の第2の角部11Bが鋭角であるため、ビードトウ10bがハンプ73に係合する力は、第2の角部11Bが直角以下の場合と比べると強く、横剛性が高まる。このためビード10は倒れにくくなり、タイヤ幅方向内側にハンプ73を乗り越えてリム外れが起こる事態が抑制される。
【0051】
以上のように、実施形態のタイヤ1は、ビードコア11の作用によって、リム組み時においてはビード10がリム70に嵌合しやすく、横力を受けた際にはリム外れに抗する力が強いという特性を有する。リム組みが容易となる観点からは、第1の角部11Aの角度αは91°以上140°以下であることが好ましく、120°以上140°以下であるとより好ましい。また、リム外れ抗力を強くする観点からは、第2の角部11Bの角度βが40°以上89°以下であることが好ましく、40°以上60°以下であるとより好ましい。
【0052】
以上説明した実施形態に係るタイヤ1によれば、以下の効果を奏する。
【0053】
(1)実施形態に係るタイヤ1は、ビードコア11及びビードコア11からタイヤ径方向外側に延びるビードフィラー12を有する一対のビード10と、一対のビード10のそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール20と、一対のサイドウォール20の間に配置されたトレッド30と、一対のビード10の間に架け渡されたカーカスプライ40と、を備え、ビードコア11は、そのタイヤ幅方向断面形状において、タイヤ径方向内側の底面111と、タイヤ幅方向外側の外側面113と、タイヤ幅方向内側の内側面114と、を有し、底面111と外側面113とにより形成される第1の角部11Aの角度αが91°以上140°以下であり、底面111と内側面114とにより形成される第2の角部11Bの角度βが40°以上89°以下である。
【0054】
これにより、横剛性の向上によるリム外れ抗力の向上と、ハンプ圧の低減によるリム組み作業の容易化を両立させることができる。
【0055】
また、ビードコア11は、多層に巻かれたビードワイヤがゴムで被覆されているが、上記第1の角部11Aの角度αが140°を上回ると、ビードワイヤの積層状態が崩れる層崩れが生じやすい。しかしながら実施形態では、上記第1の角部11Aの角度αが140°以下であるため、層崩れが生じにくくビードコア11の形状が保持される。
【0056】
(2)実施形態に係るタイヤ1においては、上記第1の角部11Aの角度αは、120°以上140°以下であり、上記第2の角部11Bの角度βは、40°以上60°以下であることがより好ましい。
【0057】
これにより、リム外れ抗力の向上とリム組み作業の容易化の両立効果がより一層促進する。
【0058】
(3)実施形態に係るタイヤ1は、ビードコア11のタイヤ幅方向断面形状が略平行四辺形状であることが好ましい。
【0059】
これにより、ビードコア11の第1の角部11Aの角度α及び第2の角部11Bの角度βのそれぞれを、上記した角度に作りやすく、結果としてそのようなビードコア11を容易に得ることができる。
【0060】
ビードコア11のタイヤ幅方向断面形状については、第1の角部11Aの角度α及び第2の角部11Bの角度βのそれぞれを、上記した角度の範囲内であるならば、上記実施形態の平行四辺形の形状に限定されない。例えば、図6に示すように、台形形状のような断面形状であってもよい。
【0061】
(4)すなわちビードコア11のタイヤ幅方向断面形状は、タイヤ径方向外側に向かうにつれてタイヤ幅方向寸法がしだいに小さくなる形状であってよい。
【0062】
これにより、ビードコア11の多層に巻かれたビードワイヤの層崩れが生じにくく、ビードコア11の形状が保持される。
【0063】
(5)実施形態に係るタイヤ1は、ビードコア11のタイヤ幅方向内側に、ビードフィラー12の一部である端部12cが、ビードコア11とカーカスプライ40との間に充填された状態で配置されていることが好ましい。
【0064】
これにより、タイヤ1に横力が発生した場合、ビードコア11とカーカスプライ40との間に充填されたビードフィラー12の端部12cがビードコア11からの圧力を受ける。このため、横力に抗する力が増大し、リム外れ抗力がより一層向上する。
【0065】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良などを行っても、本発明の範囲に含まれる。
【0066】
例えば、ビードコア11のタイヤ幅方向断面形状は、平行四辺形や台形といった四角形の形状に限られず、第1の角部11A及び第2の角部11Bが形成されていれば、タイヤ径方向外側の部分の形状は、例えば円弧状等の形状であってよく、任意である。
【実施例0067】
以下、実施例について説明する。図1に示した上記実施形態と同様の構成を備えた実施例1及び実施例2のタイヤにつき、ハンプ圧とリム外れ抗力について調べた。また、本発明外のタイヤを比較例として同様にハンプ圧とリム外れ抗力について調べた。なお、タイヤのサイズはいずれも「195/65R15」とした。
【0068】
実施例1のタイヤのビードコアはタイヤ幅方向断面が平行四辺形の形状を有し、図3に示した第1の角部11Aの角度αは120°であり、第2の角部11Bの角度βは60°である。実施例2のタイヤのビードコアも同じくタイヤ幅方向断面が平行四辺形の形状を有し、図3に示した第1の角部11Aの角度αは140°であり、第2の角部11Bの角度βは40°である。これに対し、比較例のタイヤは、図3に示した第1の角部11Aの角度α及び第2の角部11Bの角度βがともに略90°の矩形状のタイヤ幅方向断面形状を有する。
【0069】
ハンプ圧は、リムの内側にセットしたタイヤの内腔に空気を充填して内圧を高め、その内圧によってハンプ73の内側のビード10がハンプ73を越えてリム70に嵌合した際の圧力をハンプ圧とした。なお、左右一対のビード10は、時間的に前後してリム70に嵌合した場合、ハンプ圧が高い方の値を採用した。リム外れ抗力は、米国連邦自動車安全基準(FMVSS)のNo.109に規定されるビードアンシーティング試験を行って求めた。これらの結果を表1に示す。なお、表1では、比較例の各値を指数100とし、実施例1及び実施例2のタイヤを指数評価している。
【0070】
【表1】
【0071】
表1によれば、本発明の構成を備えた実施例1及び実施例2のタイヤは、比較例のタイヤに比べてハンプ圧は低く、リム外れ抗力は高い。すなわち実施例1及び実施例2のタイヤは、比較例1のタイヤに比べて、リム組み時においてビードがハンプを越えやすく、リム組みが容易であることが判る。一方、実施例1及び実施例2のタイヤは、比較例1のタイヤに比べて、横力発生時におけるリム外れの可能性が低いことが確認された。これら実施例1及び実施例2の結果は、ビードコアのタイヤ幅方向断面形状において、図3に示した第1の角部11Aの角度α及び第2の角部11Bの角度βのそれぞれが、本発明で規定される角度の範囲内であるからであり、本発明の優位性が実証された。
【符号の説明】
【0072】
1 タイヤ(空気入りタイヤ)
10 ビード
11 ビードコア
11A 第1の角部
11B 第2の角部
12 ビードフィラー
12c 端部(ビードフィラーの一部)
20 サイドウォール
30 トレッド
40 カーカスプライ
111 底面
113 外側面
114 内側面
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6