(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000921
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】回転テーブル及びこれを備えた工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 1/52 20060101AFI20221222BHJP
B23Q 1/26 20060101ALI20221222BHJP
F16C 35/06 20060101ALI20221222BHJP
F16C 19/22 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
B23Q1/52
B23Q1/26 Z
F16C35/06 Z
F16C19/22
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102004
(22)【出願日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 聡
【テーマコード(参考)】
3C048
3J117
3J701
【Fターム(参考)】
3C048BC02
3C048DD12
3C048EE01
3J117DA01
3J701AA12
3J701AA43
3J701AA52
3J701AA53
3J701AA62
3J701GA31
(57)【要約】
【課題】切削加工時に機械剛性を確保し、旋削加工時に高速で回転させることができる回転テーブル及びこれを備えた工作機械を提供する。
【解決手段】回転テーブル10において、第1の軸線Ob方向に沿って延在する円筒形状の保持部46を有するハウジング16と、外周に沿って形成されたフランジ部52を備え、パレット36と共に保持部46に対して第1の軸線Ob回りに回転するパレット台44と、ハウジング16に配置され、パレット台44を回転可能に支持する転がり軸受42と、パレット台44を駆動するモータ40と、フランジ部52の第1の軸線Ob方向の後方側に配置され、第1の軸線Ob方向の前端に摺動面56Aを有すると共に第1の軸線Ob方向に沿って前後動可能に構成され、前進されると摺動面56Aがフランジ部52と当接し、後退されるとフランジ部52と離間する、サポート部材56と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブル又はパレットを回転させることによって、前記テーブル又は前記パレットに載置された被加工物を回転させる回転テーブルであって、
第1の軸線方向に沿って延在する円筒形状の保持部を有するハウジングと、
外周に沿って形成されたフランジ部を備え、前記第1の軸線方向の前方側に配置された前記テーブル又は前記パレットと共に前記保持部に対して前記第1の軸線回りに回転する回転部材と、
前記ハウジングに配置され、前記回転部材を回転可能に支持する転がり軸受と、
前記回転部材の回転を駆動するモータと、
前記ハウジングにおいて前記フランジ部の前記第1の軸線方向の後方側に配置され、前記第1の軸線方向の前端に摺動面を有すると共に前記第1の軸線方向に沿って前後動可能に構成されたサポート部材であって、前進されると前記摺動面が前記フランジ部と当接し、後退されると前記フランジ部と離間する、サポート部材と、
を備える回転テーブル。
【請求項2】
前記フランジ部は、前記回転部材から着脱可能とされ、前記回転部材との間にスペーサ部材を配置することによって前記第1の軸線方向の前後方向へオフセット可能に構成された、請求項1に記載の回転テーブル。
【請求項3】
前記フランジ部の前記第1の軸線方向の前方側において前記回転部材の外周に沿って形成され、前記回転部材に固定された薄板状のディスク部材と、
前記ハウジングにおいて前記ディスク部材の前記第1の軸線方向の前方側に配置され、前記第1の軸線方向の後端に当接面を有すると共に前記第1の軸線方向に沿って前後動可能に構成された押止部材であって、後退されると前記当接面が前記ディスク部材と当接し、前進されると前記ディスク部材と離間する、押止部材と、
を備える、請求項1に記載の回転テーブル。
【請求項4】
前記ハウジングにおいて、前記回転部材の周方向に沿って形成され、内周側が、前記サポート部材の前記第1の軸線方向の前方側まで径方向に沿って延在されたストッパ部材を備える、請求項1に記載の回転テーブル。
【請求項5】
前記回転テーブルを制御するための制御装置であって、
前記サポート部材を後退するように作動させることによって、前記フランジ部と離間させ、前記回転部材を所定の回転速度で回転させる回転モードと、
前記サポート部材を前進するように作動させることによって、前記サポート部材によって前記フランジ部を支持し、前記回転部材を所定の回転角度に位置決めする割り出しモードと、
を切替可能に構成された制御装置を備える、請求項1に記載の回転テーブル。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の回転テーブルを備えた工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転テーブル及びこれを備えた工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、工作機械のベッド上にテーブルベースを介して搭載され、テーブルベースに軸受手段を介して縦軸回りに回転可能に支持された回転台を有する回転テーブルが開示されている。回転台は、テーブルベースとの間に形成した下摺動面と、下摺動面と上下方向に対向する上方側に形成され、その上方側に配置された押え板によって上方から押さえられる上摺動面と、を有する。回転台は、テーブルベースと押え板とによって、下摺動面と上摺動面とが摺接され、挟持されることによって、上下方向の浮き上がりを抑制され、かつ、回転テーブルの機械的剛性を向上させることができる。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された回転テーブルによれば、回転台は、下摺動面及び上摺動面と摺接しているため、回転台の下摺動面及び上摺動面とテーブルベース及び押え板との間の抵抗が大きくなり、回転テーブルを回転させる駆動モータの機械的負荷が増加する可能性がある。抵抗が大きくなると、例えば、高速切削加工のために回転台を高速で回転させたときに、摺動面及び駆動モータの発熱量が増大し、熱変形が生じるため、加工精度への影響が生じたり、摺動面が焼きつく故障が発生したりする可能性がある。このため、1つの被加工物に対して、切削加工と高速旋削加工との両方を行う場合には、それぞれの加工を別個の工作機械で行う必要性が生じ得るため、作業工数等の増加につながる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、切削加工時に機械剛性を確保し、旋削加工時に高速で回転させることができる回転テーブル及びこれを備えた工作機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、テーブル又はパレットを回転させることによって、テーブル又はパレットに載置された被加工物を回転させる回転テーブルであって、第1の軸線方向に沿って延在する円筒形状の保持部を有するハウジングと、外周に沿って形成されたフランジ部を備え、第1の軸線方向の前方側に配置されたテーブル又はパレットと共に保持部に対して第1の軸線回りに回転する回転部材と、ハウジングに配置され、回転部材を回転可能に支持する転がり軸受と、回転部材の回転を駆動するモータと、ハウジングにおいてフランジ部の第1の軸線方向の後方側に配置され、第1の軸線方向の前端に摺動面を有すると共に第1の軸線方向に沿って前後動可能に構成されたサポート部材であって、前進されると摺動面がフランジ部と当接し、後退されるとフランジ部と離間する、サポート部材と、を備える回転テーブルが提供される。
【発明の効果】
【0007】
転がり軸受によって支持されると共に、モータによって駆動された回転部材がハウジングの保持部に対して第1の軸線回りに回転することによって、回転部材の第1の軸線方向前方側に配置されたテーブル又はパレットが回転する。ハウジングは、サポート部材を備えており、サポート部材は、第1の軸線方向に沿って前後動可能に構成されている。サポート部材は、前進されるとサポート部材の摺動面がフランジ部と当接する。このため、サポート部材によって回転部材を支持することができ、回転部材の機械剛性を向上させることができる。また、サポート部材は、後退されるとフランジ部と離間する。このため、回転部材は、回転する際にサポート部材との間に摩擦を生じさせないため、同じ駆動力で回転部材及びテーブル又はパレットをより高速に回転させることができる。これによって、機械剛性を確保し、かつ、高速で回転させることができる回転テーブルを提供することができる。
【0008】
本発明に係る回転テーブル及びこれを備えた工作機械によって、切削加工時に機械剛性を確保し、旋削加工時に高速で回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る回転テーブルを備えた工作機械の概略側面図を示す。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る回転テーブルの切削加工時における断面図を示す。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る回転テーブルの旋削加工時における断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係る回転テーブルを説明する。同様な又は対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。理解を容易にするために、図の縮尺を変更して説明する場合がある。
【0011】
図1には、本実施形態に係る回転テーブル10を備えた工作機械12が示されている。図中には、工作機械12を水平面上に配置したときの機械上下方向及び機械前後方向を矢印で示す。図中のYは、機械上方側を示しており、Zは、機械前方側を示す。また、ここでは、水平面において、機械前後方向と直交する方向を機械横方向(
図1の紙面に対して垂直方向)と称する。
【0012】
工作機械12は、工場の床面に設置された基台としてのベッド14と、ベッド14の機械前方側(
図1中の左側)の上面に機械前後方向に移動可能に設けられた回転テーブル10のハウジング16と、ベッド14の機械後方側(
図1中の右側)の上面に立設、かつ、固定されたコラム18と、を備える。また、工作機械12は、コラム18の前面側には、機械上下方向(Y軸方向)に移動可能に設けられたY軸スライダ20と、Y軸スライダ20の機械前方側に、機械横方向(水平左右方向)に移動可能に設けられたX軸スライダ22と、X軸スライダ22に取り付けられ主軸26を回転可能に支持する主軸頭24と、を備える。
【0013】
ハウジング16は、ベッド14の上面において機械前後方向(Z軸方向)沿って延設された一対のZ軸案内レール28に沿って往復動可能に設けられており、ハウジング16の上面には被加工物としてのワーク(図示省略)を固定するためのパレット36が取り付けられる。本実施形態では、ハウジング16には、ハウジング16の回転を駆動するためのモータ40が組み込まれており、パレット36は、鉛直方向に延在する第1の軸線Ob回り(B方向)の回転が可能に構成されている。
【0014】
ベッド14には、ハウジング16をZ軸案内レール28に沿って往復駆動するZ軸送り装置として、Z軸方向に延設されたボールねじ(図示省略)と、ボールねじの一端に連結されたZ軸サーボモータ38と、が設けられている。また、ハウジング16には、ボールねじに係合するナット(図示省略)が取り付けられている。
【0015】
Y軸スライダ20は、コラム18の前面おいて機械上下方向(鉛直方向)に延設された一対のY軸案内レール30に沿って往復動可能に構成されている。コラム18には、Y軸スライダ20をY軸案内レール30に沿って往復駆動するY軸送り装置として、Y軸方向に延設されたボールねじ(図示省略)と、一対のボールねじの一方の端部、本実施形態では、上端に連結されたY軸サーボモータ32と、が設けられている。また、Y軸スライダ20には、ボールねじに係合するナット(図示省略)が取り付けられている。
【0016】
X軸スライダ22は、Y軸スライダ20の前面において機械横方向(X軸方向)に延設された一対のX軸案内レール33に沿って往復動可能に設けられている。Y軸スライダ20には、X軸スライダ22をX軸案内レール33に沿って往復駆動するX軸送り装置として、X軸方向に延設されたボールねじ(図示省略)と、ボールねじの一方の端部に連結されたX軸サーボモータ34とが設けられている。また、X軸スライダ22には、ボールねじに係合するナット(図示省略)が取り付けられている。
【0017】
X軸スライダ22は、Z軸方向前方側へ突出した一対のA軸アームを有しており、A軸アームの間に主軸頭24がX軸と平行な傾動軸線Oa回り(A方向)に回転送り可能に支持されている。A軸アームの一方の側には、主軸頭24を傾動軸線Oa回り(A方向)に回転送りするためのA軸サーボモータ39が組み込まれている。主軸頭24は、中心軸線Os回りに回転可能に主軸26を支持し、内蔵したサーボモータ(図示省略)によって主軸26を回転駆動可能に構成されている。
【0018】
こうして、工作機械12は、X軸、Y軸及びZ軸に沿った直線運動と、Oa軸及びOb軸回りの回転運動と、をNC装置100によって制御し、主軸26の先端部に装着した工具Tと、パレット36に固定され、パレット36と共にハウジング16に装着されるワークと、を相対移動させることによって、ワークを加工するように構成されている。
【0019】
図2には、切削加工時における、本実施形態に係る回転テーブル10を機械上下方向に沿って切断した断面図が示されている。回転テーブル10は、外周形状が円筒形状に形成され、内部空間を有するハウジング16と、転がり軸受42を介してハウジング16に回転可能に取付けられた回転部材としてのパレット台44と、を備える。具体的には、ハウジング16の中心部側には、第1の軸線Ob方向に延在する円筒形状の保持部46が形成されている。保持部46の機械上方側の外周部には、転がり軸受42の内輪部42Aが配置されており、パレット台44の内周部の保持部46と対向する部分には、転がり軸受42の外輪部42Bが配置されている。このため、パレット台44は、軸受けころ42Cを介して、保持部46の第1の軸線Ob回りに回転可能に構成されている。
【0020】
ハウジング16内部へ突出するパレット台44の基端部44Aには、パレット台44を回転駆動するためのモータ40のロータ40Aが取付けられており、ハウジング16内においてロータ40Aに回転テーブル10の径方向外側には、ロータ40Aと対面するようにモータ40のステータ40Bが配置されている。ロータ40A及びステータ40Bによって、ハウジング16内部に配設されたパレット台44を回転駆動するためのビルトインモータが形成されている。パレット台44には、第1の軸線Obに関する回転位置を読み取るためのロータリーエンコーダ等の回転位置センサ(図示省略)が取付けられてもよい。なお、以下の説明では、ビルトインモータが形成されているとして説明するが、これに限らず、例えば、周知のモータと歯車列を用いてパレット台が回転駆動されてもよい。
【0021】
パレット台44の上面44Bには、パレット36をパレット台44に関して位置決めするための位置決めするためのテーパコーン48が、パレット台44の周方向に沿って等間隔の角度で複数個取付けられている。パレット台44の上面44Bと機械上下方向に沿って対面するパレット36の下面36Aには、テーパコーン48に嵌合又は係合するテーパブッシュ50がパレット36の周方向に沿ってテーパコーン48と同じ間隔の角度で複数個取付けられている。また、パレット36の下面36Aには、テーパコーン48の中心部に取り付けられ、機械下方側へ延在するプルスタッド(図示省略)が配置されている。パレット36は、パレット台44に設けられた図示しないクランプ装置によって、プルスタッドがパレット台44側へ引き込まれることによって、パレット36がパレット台44に固定される。なお、本実施例では、回転テーブル10は、パレット36とパレット台44とが分離してパレット交換できるものとして説明するが、これに限らず、パレットとパレット台とが分離できない一体構造のテーブルとして構成されてもよい。
【0022】
パレット台44は、その機械下方側に、パレット台44の周方向に沿って形成されたフランジ部52を有しており、フランジ部52は、パレット台44から着脱可能に構成されている。具体的には、フランジ部52は、その機械上方側に、パレット台44の径方向内側へ向けて突出した上側突出部52Aを備える。パレット台44には、上側突出部52Aの機械下方側において径方向外側へ向けて突出した下側突出部44Cが形成されており、フランジ部52は、上側突出部52Aがパレット台44の下側突出部44Cに載置された状態で、パレット台44に配置されている。
【0023】
上側突出部52Aと下側突出部44Cとの間には、パレット台44の下側突出部44Cの上面に沿ってスペーサ部材54を配置することができる。異なる厚さのスペーサ部材54の中から適切な厚さのスペーサ部材54を選択、または研削盤でスペーサ部材54の厚さを調整して、スペーサ部材54を下側突出部44Cの上面に取付けることによって、フランジ部52を機械上下方向に位置を調整(上昇又は下降)してパレット台44に配置することができる。スペーサ部材54は、機械上下方向の厚さ(高さ)が、上側突出部52A及び下側突出部44Cの厚さ(高さ)に比べて薄い板状に形成されている。
【0024】
ハウジング16には、フランジ部52の下方側に配置され、パレット台44の外周に沿って形成されると共に上面に摺動面56Aを有するサポート部材56が配置されている。サポート部材56は、第1の軸線Ob方向(機械上下方向)に沿って上下動可能に構成されている。このため、サポート部材56は、機械上下側へ向けて上昇(前進)されると径方向内側においてその摺動面56Aをフランジ部52の下面に当接させることができる。また、サポート部材56は、機械下方側へ向けて下降(後退)されるとフランジ部52と離間するように構成されている。
【0025】
ハウジング16には、パレット台44の径方向外側において、フランジ部52の外周に沿ってストッパ部材58が配置されている。ストッパ部材58の内周側は、サポート部材56の第1の軸線Ob方向の前方側まで、パレット台44の径方向に沿って延在されている。サポート部材56と機械上下方向に沿って対向するストッパ部材58の内部には、サポート部材56の側へ向けて開口し、第1の軸線Ob方向に沿って機械上方側へ向けて空間が延在する第1の付勢手段収容部60が形成されている。第1の付勢手段収容部60の内部には、サポート部材56を機械下方側へ向けて付勢するための第1の付勢手段62が配置されている。これによって、サポート部材56を機械下方側へ下降させ、サポート部材56をフランジ部52と離間させることができる。本実施形態では、第1の付勢手段62として、ばねを用いて構成されている。なお、以下の説明では、第1の付勢手段62は、ばねを用いて構成されているとして説明するが、これに限らず、油圧又は空圧のアクチュエータ等他の作動手段が用いられてもよい。
【0026】
ハウジング16には、サポート部材56を加圧して機械上方側へ上昇させ、フランジ部52へ押し付けるための第1の加圧手段84が設けられている。第1の加圧手段84は、ソレノイドバルブ88と、油圧ポンプ90と、を含んで構成されており、これらは、パイプを介してサポート部材56の機械下方側と接続されている。このため、ソレノイドバルブ88を開くことによって、油圧ポンプ90からの油圧をサポート部材56に負荷する(加圧する)ことができ、サポート部材56を機械上方側へ上昇させることができる。なお、以下の説明では、第1の加圧手段84は、油圧ポンプ90からの油圧によって加圧する手段として説明するが、これに限らず、エアコンプレッサを用いて空気圧によって加圧する等他の手段が用いられてもよい。
【0027】
フランジ部52及びストッパ部材58の機械上方側(第1の軸線Ob方向の前方側)において、パレット台44の外周に沿って形成され、パレット台44に固定された薄板状のディスク部材64が配置されている。ディスク部材64は、その機械上下方向の厚さ(高さ)が、フランジ部52の上側突出部52Aの厚さ(高さ)に比べて薄く形成されている。
【0028】
ハウジング16には、ディスク部材64の機械上方側(第1の軸線Ob方向の前方側)に配置され、下面に当接面66Aを有すると共に第1の軸線Ob方向に沿って上下動可能に構成された押止部材66が配置されている。このため、押止部材66は、第1の軸線Ob方向に沿って下降(後退)されると当接面66Aがディスク部材64の上面と当接し、ディスク部材64の下面がストッパ部材58に当接する。これによって、ディスク部材64は、押止部材66とストッパ部材58とによって挟持され、クランプされる。また、押止部材66は、上昇(前進)されるとディスク部材64と離間するように構成されている。
【0029】
図3には、旋削加工時における、本実施形態に係る回転テーブル10の断面図が示されている。
図3の断面図は、
図2に示される断面図の切断位置からパレット台44の周方向に沿って所定の角度オフセットした位置で切断された断面図が示されている。押止部材66と機械上下方向に沿って対向するストッパ部材58の内部には、押止部材66の側へ向けて開口し、第1の軸線Ob方向に沿って機械下方側へ向けて空間が延在する第2の付勢手段収容部70が形成されている。第2の付勢手段収容部70の内部には、押止部材66の上下動を付勢するための第2の付勢手段72が配置されている。これによって、押止部材66を機械上方側へ上昇させ、押止部材66をディスク部材64と離間させることができる。本実施形態では、第2の付勢手段72は、ばねを用いて構成されている。なお、以下の説明では、第2の付勢手段72は、ばねを用いて構成されているとして説明するが、これに限らず、油圧又は空圧のアクチュエータ等他の作動手段が用いられてもよい。
【0030】
ハウジング16には、押止部材66を加圧して機械下方側へ下降させ、ディスク部材64へ押し付けるための第2の加圧手段82が設けられている。第2の加圧手段82は、ソレノイドバルブ86と、油圧ポンプ90と、を含んで構成されており、これらは、パイプを介して押止部材66の機械上方側に接続されている。このため、ソレノイドバルブ6を開くことによって、油圧ポンプ90からの油圧を押止部材66に負荷する(加圧する)ことができ、押止部材66を機械下方側へ下降させることができる。なお、以下の説明では、第2の加圧手段82は、油圧ポンプ90によって加圧する手段として説明するが、これに限らず、エアコンプレッサを用いて空気圧によって加圧する等他の手段が用いられてもよい。
【0031】
押止部材66の機械上方側には、ハウジング16の上側拘束部74が、ストッパ部材58と一体的に形成されている。これによって、押止部材66が、機械上方側へ過度に上昇することを抑制することができる。また、サポート部材56の機械下方側には、ハウジング16の下側拘束部76が、ストッパ部材58と一体的に形成されている。これによって、サポート部材56が、機械下方側へ過度に下降することを抑制することができる。
【0032】
回転テーブル10には、サポート部材56及び押止部材66の機械上下方向(第1の軸線Ob方向)に沿った上下動を制御するための制御装置110が設けられている。具体的には、制御装置110は、第1の加圧手段84を作動させることによって、サポート部材56を加圧して機械上方側へ上昇させ、フランジ部52へ押し付ける。サポート部材56は、第1の付勢手段62の付勢力よりも強い力(圧力)で加圧されるため、第1の付勢手段62は、第1の付勢手段収容部60の内部へ向けて押圧される(押しつぶされる)。第1の加圧手段84の作動が停止されると(加圧されなくなると)、第1の付勢手段62の付勢力(バネ力)によって機械下方側へ向けて押圧されたサポート部材56は下降され、フランジ部52から離間される。制御装置110は、また、第2の加圧手段82を作動させることによって、押止部材66を加圧して機械下方側へ下降させ、ディスク部材64へ押し付ける。押止部材66は、第2の付勢手段72の付勢力よりも強い力(圧力)で加圧されるため、第2の付勢手段72は、第2の付勢手段収容部70の内部へ向けて押圧される(押しつぶされる)。第2の加圧手段82の作動が停止されると(加圧されなくなると)、第2の付勢手段72の付勢力(バネ力)によって機械上方側へ向けて押圧された押止部材66は上昇され、ディスク部材64から離間される。なお、ここでは、制御装置110は、NC装置100とは別個に設けられているとして説明するが、これに限らず、制御装置が、NC装置に組み込まれて一体的に構成されてもよい。
【0033】
本実施形態に係る回転テーブル10の作用及び効果について説明する。
【0034】
回転テーブル10は、制御装置110によって作動されることによって、加工目的に応じて回転モード又は割り出しモードに切替可能に構成されている。ここで、回転モードは、高速回転モードと低速回転モードの2つのモードを有する。
【0035】
図3に示されるように、高速回転モードでは、制御装置110は、第1の作動手段62を作動させてサポート部材56を機械下方側へ向けて下降させると共に、第2の作動手段72を作動させて押止部材66を機械上方側へ向けて上昇させる。このため、サポート部材56は、パレット台44のフランジ部52と離間される。また、押止部材66は、ディスク部材64と離間される。これによって、パレット台44の外周側においてパレット台44に当接するものは何もなく、摩擦等の抗力が作用しないため、モータ40によって指令した回転速度でパレット台44を高速で回転させることができ、高速で旋削加工をすることができる。
【0036】
また、低速回転モードでは、制御装置110は、第2の作動手段72を作動させて押止部材66を機械上方側へ向けて上昇させ、第1の作動手段62を作動させてサポート部材56を機械上方側へ向けて上昇させる。このため、押止部材66は、ディスク部材64と離間される一方で、サポート部材56は、その摺動面56Aを介してパレット台44のフランジ部52と当接する。これによって、フランジ部52及びストッパ部材58は、サポート部材56によって押圧され、パレット台44は、サポート部材56によって支持されるため、パレット台44の機械剛性を向上させることができる。
【0037】
さらに、サポート部材56の摺動面56Aとフランジ部52の下面との間に生じる摩擦力によってパレット台44の回転を抑制することができるため、指令された回転角度で回転部材を位置決めすることができる。また、低速回転モードでは、サポート部材56の摺動面56Aとの間にある程度摩擦力を生じさせた状態で、高速回転モードに比べて比較的低速の回転速度でパレット台44を回転させることができ、旋削加工をすることもできる。
【0038】
図2に示されるように、割り出しモードでは、制御装置110は、第1の作動手段62を作動させてサポート部材56を機械上方側へ向けて上昇させると共に、第2の作動手段72を作動させて押止部材66を機械下方側へ向けて下降させる。このため、サポート部材56は、その摺動面56Aを介してパレット台44のフランジ部52と当接し、押止部材66は、その当接面66Aを介してディスク部材64と当接する。フランジ部52及びストッパ部材58は、サポート部材56によって押圧され、パレット台44は、サポート部材56は支持される。これによって、サポート部材56によって支持されるため、パレット台44の機械剛性を向上させることができる。更に、パレット台44が指令された回転角度に割り出された後に、ディスク部材64は、押止部材66とストッパ部材58とによって挟持され、クランプされる。これによって、パレット台44には、ディスク部材64を介して、押止部材66及びストッパ部材58からの機械上下方向に沿った押圧力とこれらとの間の摩擦力とが作用するため、パレット台44の回転方向に対する回転角度のずれが抑制される。この結果、切削力による負荷が高い加工において、切削加工時に必要とされる機械剛性を確保することができ、指令された回転角度で回転部材を高い精度で位置を保持することができる。
【0039】
以上の説明のとおり、本実施形態に係る回転テーブル10によって、切削加工時に機械剛性を確保し、旋削加工時に高速で回転させることができる。
【0040】
また、ハウジング16には、パレット台44の径方向外側において、フランジ部52の周方向に沿って形成されたストッパ部材58が配置されている。このため、サポート部材56が機械上方側へ向けて過度に上昇し、フランジ部52に対する押圧力が過度に作用することを抑制することができる。押圧力の調整は、スペーサ部材54の厚みを調整することによって、フランジ部52の機械上下方向の位置をずらすことによって行なわれる。フランジ部材52の機械上下方向の位置を上方にずらすと、サポート部材56がフランジ部52を押圧する力が低下し、サポート部材56がストッパ部58を押圧する力が増加する。また、フランジ部材52の機械上下方向の位置を下方にずらすと、サポート部材56がフランジ部52を押圧する力が増加し、サポート部材56がストッパ部58を押圧する力が低下する。
【0041】
さらに、押止部材66の機械上方側には、ハウジング16の上側拘束部74が、ストッパ部材58と一体的に形成されており、押止部材66が、機械上方側へ過度に上昇することを抑制することができる。また、サポート部材56の機械下方側には、ハウジング16の下側拘束部76が、ストッパ部材58と一体的に形成されており、サポート部材56が、機械下方側へ過度に下降することを抑制することができる。さらに、サポート部材56と押止部材66との間に配置されたフランジ部52の機械上下方向の過度な変位を抑制することができるため、パレット台44の水平方向に対する傾斜を抑制することができる。
【0042】
回転テーブル10の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。当業者が想到する範囲において、上記の実施形態の様々な変形が本発明の実施形態に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
10 回転テーブル
12 工作機械
16 ハウジング
36 パレット
40 モータ
42 転がり軸受
44 パレット台(回転部材)
46 保持部
52 フランジ部
54 スペーサ部材
56 サポート部材
56A 摺動面
58 ストッパ部材
64 ディスク部材
66 押止部材
66A 当接面
110 制御装置
Ob 第1の軸線
【手続補正書】
【提出日】2022-08-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブル又はパレットを回転させることによって、前記テーブル又は前記パレットに載置された被加工物を回転させる回転テーブルを有する工作機械であって、
第1の軸線方向に沿って延在する円筒形状の保持部を有するハウジングと、
外周に沿って形成されたフランジ部及びディスク部材を備え、前記第1の軸線方向の前方側に配置された前記テーブル又は前記パレットと共に前記保持部に対して前記第1の軸線回りに回転する回転部材と、
前記ハウジングに配置され、前記回転部材を回転可能に支持する転がり軸受と、
前記回転部材の回転を駆動するモータと、
前記ハウジングに配置され、摺動面を有すると共に前記第1の軸線方向に沿って前後動可能に構成され、前後動させることにより前記摺動面が前記フランジ部と当接及び離間する、サポート部材と、
前記ハウジングに配置され、当接面を有すると共に前記第1の軸線方向に沿って前後動可能に構成され、前後動させることにより前記当接面が前記ディスク部材と当接及び離間する押止部材と、
高速回転モードを選択したときに、前記サポート部材の前記摺動面を前記フランジ部と離間させ、低速回転モードを選択したときに、前記サポート部材の前記摺動面を前記フランジ部に当接させ、割り出しモードを選択したときに、前記押止部材の前記当接面を前記ディスク部材に当接させるように制御する制御装置と、
を備える工作機械。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブル又はパレットを回転させることによって、前記テーブル又は前記パレットに載置された被加工物を回転させる回転テーブルを有する工作機械であって、
第1の軸線方向に沿って延在する円筒形状の保持部を有するハウジングと、
外周に沿って形成されたフランジ部及びディスク部材を備え、前記第1の軸線方向の前方側に配置された前記テーブル又は前記パレットと共に前記保持部に対して前記第1の軸線回りに回転する回転部材と、
前記ハウジングに配置され、前記回転部材を回転可能に支持する転がり軸受と、
前記回転部材の回転を駆動するモータと、
前記ハウジングにおいて前記フランジ部の前記第1の軸線方向の後方側に配置され、前記第1の軸線方向の前端に摺動面を有すると共に前記第1の軸線方向に沿って前後動可能に構成されたサポート部材であって、前進されると前記摺動面が前記フランジ部と当接し、後退されると前記フランジ部と離間する、サポート部材と、
前記ハウジングにおいて前記ディスク部材の前記第1の軸線方向の前方側に配置され、前記第1の軸線方向の後端に当接面を有すると共に前記第1の軸線方向に沿って前後動可能に構成された押止部材であって、後退されると前記当接面が前記ディスク部材と当接し、前進されると前記ディスク部材と離間する、押止部材と、
高速回転モードを選択したときに、前記サポート部材の前記摺動面を前記フランジ部と離間させ、低速回転モードを選択したときに、前記サポート部材の前記摺動面を前記フランジ部に当接させ、割り出しモードを選択したときに、前記押止部材の前記当接面を前記ディスク部材に当接させるように制御する制御装置と、
を備える工作機械。