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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092106
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】可撓継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 27/047 20060101AFI20230626BHJP
   F16L 27/02 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
F16L27/047
F16L27/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207107
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000201593
【氏名又は名称】前澤給装工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】西東 敏夫
【テーマコード(参考)】
3H104
【Fターム(参考)】
3H104JA03
3H104JB02
3H104JC09
3H104JD01
3H104KA01
3H104KC02
3H104KC04
3H104KC06
3H104LA03
3H104LA12
3H104LG03
(57)【要約】
【課題】配管の自重や埋設時の土圧によって可撓するのを抑制することができると共に、地震等の地盤変動時に、継手に過度な曲げ荷重がかかった際に、配管や継手の被害を防止することができる可撓継手を提供することを課題とする。
【解決手段】可撓継手Jは、継手本体を構成する胴1と、配管Pが挿入される管挿入部4aを有するユニオンパイプ4と、ユニオンパイプ4の胴1側の端部外周に外嵌されて、胴1のユニオンパイプ4側の開口部1b内に回動可能に配置されるボールスリーブ3と、を備えて成る可撓機構FMを有する。ユニオンパイプ4の外周部には、可撓機構FMの可撓を規制する可撓規制部材80を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
継手本体を構成する胴と、
配管が挿入される管挿入部を有するユニオンパイプと、
前記ユニオンパイプの胴側の端部外周に外嵌されて、前記胴のユニオンパイプ側の開口部内に回動可能に配置されるボールスリーブと、を備えて成る可撓機構を有する可撓継手であって、
前記ユニオンパイプの外周部には、前記可撓機構の可撓を規制する可撓規制部材を有している、
可撓継手。
【請求項2】
前記可撓規制部材は、樹脂または金属によって形成されている、
請求項1に記載の可撓継手。
【請求項3】
前記可撓規制部材は、変形または破損することによって、前記可撓機構の可撓の規制を解除する、
請求項1または請求項2に記載の可撓継手。
【請求項4】
前記ユニオンパイプは、前記ボールスリーブの外径よりも大形の大形部を有している、
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の可撓継手。
【請求項5】
前記ユニオンパイプは、継手施工時に、前記ボールスリーブよりも先に回転するように構成されている、
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の可撓継手。
【請求項6】
前記可撓規制部材は、前記ユニオンパイプの外周部に遊嵌された筒状の可撓抑制カバーから成り、前記ユニオンパイプの外周部に形成された工具係合部と、前記胴の前記ユニオンパイプ側の開口端部と、の間に介在されている、
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の可撓継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水道管の接続部分において、所定の角度範囲だけ回動可能にした可撓継手(「スイングジョイント」等ともいう。)が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
図5は、従来の可撓継手J100を示す図で、胴100に対してユニオンソケット400が回動したときの状態を示す断面図である。
【0004】
一般に、図5に示すように、可撓継手J100は、ジョイント本体の胴100にボールスリーブ300を介在して所定の角度範囲θ100(10~15度)だけ可動可能にユニオンソケット400を接続している。可撓継手J100は、このように可動可能にすることで、水道管P100に負荷がかかった際に、胴100に対してユニオンソケット400が回動することで、その負荷を吸収して水道管P100が破損するのを防止している。
【0005】
従来の可撓継手J100(特許文献1参照)は、可撓機構部FM100内に雨水や砂等の異物が入り込むことで、可撓性の阻害や部品が腐食するのを防止するために、可撓機構部FM100にゴム製のカバー800を装着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭57-17588号公報
【特許文献2】特開2020-139578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図6Aは、従来の可撓継手J100を示す図で、水道管P100の自重や振動等により左右方向や上下方向に回動した状態で埋設された可撓継手J100を示す平面図である。図6Bは、従来の可撓継手J100を示す図で、水道管P100の自重や振動等により左右方向や上下方向に回動した状態で埋設された可撓継手J100を示す正面図である。図7Aは、従来の可撓継手J100を示す図で、水道管P100の自重や振動等により左右方向や上下方向に回動した可撓継手J100に、大地震等で回動している方向にさらに荷重F200がかかったときの状態を示す平面図である。図7Bは、従来の可撓継手J100を示す図で、水道管P100の自重や振動等により左右方向や上下方向に回動した可撓継手J100に、大地震等で回動している方向にさらに荷重F200がかかったときの状態を示す正面図である。
【0008】
しかし、特許文献1の可撓継手や、図6A及び図6Bに示す可撓継手J100は、カバー800がゴム製で強度が低いため、水道管P100の自重や、埋設時の土圧による荷重F100により設置時に傾いてしまうおそれがある。
【0009】
その可撓継手J100に、大地震等によって可動している側に、さらに荷重F200がかかった場合は、図7A及び図7Bに示すように、可撓角に余裕がないため、分水栓WFや可撓継手J100が変形あるいは破損するおそれがある。
【0010】
また、特許文献2に記載の可撓継手は、継手パイプ(2)の可撓角度(搖動角度)が±8度と小さいため、地震等の地盤変動時に配管や、可撓継手に荷重がかかったときに、十分な可撓性を発揮することができないおそれがある。
【0011】
本発明は、配管の自重や埋設時の土圧によって可撓するのを抑制することができると共に、地震等の地盤変動時に、継手に過度な曲げ荷重がかかった際に、配管や継手の被害を防止することができる可撓継手を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明は、継手本体を構成する胴と、配管が挿入される管挿入部を有するユニオンパイプと、前記ユニオンパイプの胴側の端部外周に外嵌されて、前記胴のユニオンパイプ側の開口部内に回動可能に配置されるボールスリーブと、を備えて成る可撓機構を有する可撓継手であって、前記ユニオンパイプの外周部には、前記可撓機構の可撓を規制する可撓規制部材を有している。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、配管の自重や埋設時の土圧によって可撓するのを抑制することができると共に、地震等の地盤変動時に、継手に過度な曲げ荷重がかかった際に、配管や継手の被害を防止することができる可撓継手を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る可撓継手の一例を示す一部断面とした正面図である。
図2】胴に対してユニオンパイプが回動して可撓抑制カバーを変形または破損させたときの可撓継手の状態を示す断面図である。
図3A】埋設した可撓継手の状態を示す平面図である。
図3B】埋設した可撓継手の状態を示す正面図である。
図4A】埋設した可撓継手に大地震等で大きな曲げ荷重がかかったときの状態を示す平面図である。
図4B】埋設した可撓継手に大地震等で大きな曲げ荷重がかかったときの状態を示す正面図である。
図5】従来の可撓継手を示す図で、胴に対してユニオンパイプが回動したときの状態を示す断面図である。
図6A】従来の可撓継手を示す図で、水道管の自重や振動等により左右方向や上下方向に回動した状態で埋設された可撓継手を示す平面図である。
図6B】従来の可撓継手を示す図で、水道管の自重や振動等により左右方向や上下方向に回動した状態で埋設された可撓継手示す正面図である。
図7A】従来の可撓継手を示す図で、水道管の自重や振動等により左右方向や上下方向に回動した可撓継手に、大地震等で回動している方向にさらに荷重がかかったときの状態を示す平面図である。
図7B】従来の可撓継手を示す図で、水道管の自重や振動等により左右方向や上下方向に回動した可撓継手に、大地震等で回動している方向にさらに荷重がかかったときの状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係る可撓継手Jを、図1図4Bを参照して説明する。
なお、方向を説明する際は、図1に示す胴1側を前(一方側)、袋ナット11側を後(他方側)として説明する。また、同じ構成のものは、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0016】
<可撓継手>
図1及び図2に示すように、可撓継手Jは、例えば、水道用の配管Pを回動可能に繋ぐための配管継手である。可撓継手Jは、胴1に対してユニオンパイプ4を回動自在に連結する可撓機構FMと、可撓抑制カバー8と、インコア9と、リング10と、袋ナット11と、ガスケット12と、を備えて構成されている。可撓継手Jは、地震や地盤の不等沈下等が発生した際、配管同士を可撓可能に接続する可撓機構FMに発生する変位に対して、ボールスリーブ3の回動によって追随し、継手や配管Pの破損、漏水を防ぐことにより流下機能を維持する機能を有する。
【0017】
なお、本発明の実施形態に係る可撓継手Jは、水道水等の液体用を供給する配管Pの継手として利用されるものに限定されることはなく、気体のシールを必要とする場合を含め、流体の管路体の接続用として利用することができる。以下、本発明の可撓継手Jの一例として、水道用の配管Pを接続する場合を例に挙げて説明する。
【0018】
<配管>
図1に示すように、配管Pは、可撓継手Jによって接続されるパイプである。配管Pは、例えば、耐震性及び長期静水圧強度が優れている水道給水用高密度ポリエチレン管(日本ポリエチレンパイプシステム協会規格:JP K 001,2、使用材料:PE100)等の樹脂製の給水管が使用されている。配管Pの接続側の開口端(前端部)内には、インコア9が圧入されている。インコア9及び配管Pの可撓継手J側の端部は、ユニオンパイプ4の管挿入部4a内に挿入されている。
【0019】
なお、配管Pは、水道給水用高密度ポリエチレン管、水道用ポリエチレン管、水道用ポリエチレン二層管等の樹脂製配管に限定されない。配管Pは、例えば、アルミニウム管状の内側と外側を樹脂等で被覆したアルミニウム三層管等のその他のパイプであってもよい。
【0020】
<インコア>
図1及び図2に示すように、インコア9は、配管Pの軸方向一方側内に押し込まれて挿着される部材である。インコア9は、配管Pの軸方向一方側内に押し込まれることで、配管Pの前端部をテーパ状に拡径した状態に保持されると共に、配管Pを内側から補強して、配管Pが縮径変形するのを防止している。インコア9は、例えば、円筒形状の金属製部材によって形成されている。インコア9は、テーパ状外周面9aと、環状凹凸部9bと、鍔部9cと、を有している。
【0021】
テーパ状外周面9aは、インコア9を配管Pの軸方向一方側(前端部)内に圧入した場合に、配管Pの軸方向一方側を拡径するためのテーパ部位である。テーパ状外周面9aは、インコア9の後端から前端側に亘って拡径して形成されている。
【0022】
環状凹凸部9bは、配管Pの内周面に食い込むようにしてインコア9を配管Pに固定するための複数の環状突起である。環状凹凸部9bは、テーパ状外周面9aに形成された断面視して略三角形状の突起から成る。
【0023】
鍔部9cは、インコア9の軸方向一方側端部に形成された環状のフランジ部である。鍔部9cは、配管Pの前端面に当接した状態に配置されている。
【0024】
<可撓機構>
図1及び図2に示すように、可撓機構FMは、胴1と、キャップ2と、ボールスリーブ3と、ユニオンパイプ4と、Oリング5,6と、ストッパリング7と、を備えて構成されている。
【0025】
<胴>
図1及び図2に示すように、胴1は、軸方向に延設された筒状の継手本体である。胴1は、例えば、銅合金等の金属製の鋳造品から成る。胴1には、通水孔1a、開口部1b、雌ねじ部1d、内側曲面1e、Oリング設置溝1f、キャップ設置部1g、ガスケット設置部1hが形成されている。胴1には、軸心線上に前側から後側に向かって水道水が流れる通水孔1aが形成されている。通水孔1aの内周面には、雌ねじ部1dが形成されている。
【0026】
雌ねじ部1dは、可撓継手Jの胴1を、配水管P2を連結したサドル付分水栓WF(図3A及び図3B参照)等に接続するための螺合部位である。雌ねじ部1dの後側の内周面には、ガスケット12を設置するためのガスケット設置部1hが軸心方向に突出形成されている。ガスケット設置部1hの後側の内周面には、ボールスリーブ3を設置するための開口部1bが形成されている。
【0027】
開口部1bの内周面には、前側寄りから後方の開口端部1cにかけて順に、回動規制部1i、内側曲面1e、Oリング設置溝1f、キャップ設置部1gが形成されている。
図2に示すように、回動規制部1iは、この回動規制部1iにボールスリーブ3の回動規制部3bが当接することで、ボールスリーブ3の回動を抑止する部位である。回動規制部1iは、円筒状の内面から成り、開口部1b内において、内側曲面1eの前側に形成されている。
【0028】
内側曲面1eは、球面形状に形成されたボールスリーブ3の外周面を回動自在に支持する軸支部である。内側曲面1eの内周面は、ボールスリーブ3の外周面に合わせて、球面状に凹設されている。
【0029】
Oリング設置溝1fは、Oリング5が装着される環状溝から成る。
キャップ設置部1gは、キャップ2の外周部に形成された雄ねじ部2aが螺合する雌ねじから成る。
図2に示すように、胴1の外周部には、前側から順に、小径部1j、テーパ部1k、大径部1mが形成されている。
【0030】
<キャップ>
図1及び図2に示すように、キャップ2は、胴1の内側曲面1eに係合させたボールスリーブ3が、内側曲面1eから離脱するのを抑止するための脱落防止部材である。キャップ2は、金属製の環状部材(筒状部材)から成る。キャップ2は、外周面に雄ねじ部2aを有し、内周面にボールスリーブ3の外周面に回動自在に係合する凹状の湾曲面2cを有し、後端部にボールスリーブ3、ユニオンパイプ4、配管P等の回動を抑止する回動規制部2bと、工具係合溝2dと、を有する。
【0031】
図2に示すように、回動規制部2bは、ユニオンパイプ4の前後方向の略中央部に形成されたストッパ部4cに当接することで、ボールスリーブ3、ユニオンパイプ4、配管P等が、軸心O1を中心として角度θ1以上回動するのを抑止する部位である。このため、キャップ2は、ボールスリーブ3の脱落防止機能と、ボールスリーブ3、ユニオンパイプ4、配管P等の回動範囲を規制する回動規制機能と、を有する。
工具係合溝2dは、キャップ2を回動させて胴1に螺合させるための工具の係合突起が係合する複数の切欠溝である。
【0032】
<ボールスリーブ>
図1及び図2に示すように、ボールスリーブ3は、胴1に対してユニオンパイプ4を回動自在に配置させるための部材である。ボールスリーブ3は、例えば、銅合金等の金属製の鋳造品から成る。ボールスリーブ3は、ユニオンパイプ4の胴1側(前側)の端部外周に外嵌されて、胴1のユニオンパイプ4側(後側)の開口部1b内に回動可能に配置された筒状の球面体から成る。
【0033】
ボールスリーブ3の外周面には、略球面形状の球面部3aと、球面部3aの前端部に形成された回動規制部3bと、が形成されている。回動規制部3bは、ボールスリーブ3の前端部に円筒形状に形成されている。
【0034】
ボールスリーブ3の内周面には、前側寄りの位置に形成されたOリング設置溝3cと、後側寄りの位置に形成されたストッパリング設置溝3dと、が形成されている。
Oリング設置溝3cは、Oリング6が係合される環状の溝から成る。
ストッパリング設置溝3dは、ストッパリング7が係合する環状溝から成る。
【0035】
<ユニオンパイプ>
図1及び図2に示すように、ユニオンパイプ4は、胴1に対して配管Pを回動可能に連結するための回動部材である。ユニオンパイプ4は、軸方向に延設された筒状の部材から成る。ユニオンパイプ4は、例えば、銅合金等の金属製の鋳造品から成る。ユニオンパイプ4は、前端部にボールスリーブ3が外嵌されるボールスリーブ設置部4dを有すると共に、後端部に配管Pが挿入される管挿入部4aを有している。ユニオンパイプ4は、継手施工時に、ボールスリーブ3よりも先に回転するように構成されている。
なお、ユニオンパイプ4に接続される部材は、配管Pに限定されず、配管P以外の継手やその他の部品等であっても良い。また、ユニオンパイプ4の接続部は、配管Pやその他の継手等の部材を接続可能な構造であればよく、平行おねじ、テーパ雌ねじ等の接続構造としても良い。
【0036】
ユニオンパイプ4の外周部には、可撓機構FMの可撓を規制する可撓規制部材80が外嵌されている。ユニオンパイプ4の外周面には、前側から順に、ボールスリーブ設置部4d、ストッパ部4c、ストッパリング設置部4e、可撓抑制カバー係止部4f、工具係合部4b、雄ねじ部4gが形成されている。
【0037】
ボールスリーブ設置部4dは、ボールスリーブ3が外嵌される箇所である。ボールスリーブ設置部4dは、ボールスリーブ設置部4dの後端部から前端部に亘って先細になるように段差状に形成されている。ボールスリーブ設置部4dの前側寄りの円筒部分には、Oリング6が当接した状態に外嵌されている。ボールスリーブ設置部4dの後寄りの円筒部分には、ストッパリング7が外嵌されるストッパリング設置部4eが形成されている。
【0038】
ストッパ部4cは、胴1に対して回動可能なボールスリーブ3、ユニオンパイプ4、配管P等の回動範囲を規制する部位である。ストッパ部4cは、胴1に対してユニオンパイプ4が所定可撓角度θ1(例えば、30度)回動したときに、キャップ2の回動規制部2bが当接して回動を抑止する。
【0039】
ストッパリング設置部4eは、断面視してU字状の環状溝から成る。ストッパリング設置部4eには、ストッパリング7の外周部が係合されるボールスリーブ3のストッパリング設置溝3dが対向配置されている。
【0040】
図1に示すように、可撓抑制カバー係止部4fは、円筒形状の可撓抑制カバー8の後側開口内縁部8cと、後側開口内縁部8cの前側に軸心側に向けて突設された内側凸部8bと、に係合する箇所である。
【0041】
工具係合部4bは、雄ねじ部4gに袋ナット11の雌ねじ部11aを螺合させる際に、スパナ等の工具を係合させる箇所である。工具係合部4bは、八角形のナット状に形成されている。工具係合部4bは、ボールスリーブ3の外径d1よりも大形の大形部に形成されている。
雄ねじ部4gは、ユニオンパイプ4の後端部の外周面に形成されている。雄ねじ部4gは、袋ナット11を標準の締付力で締め付ける(強く締め付ける)ことで、内側拡径部4hによってリング10が縮径して配管Pを締め付けるように構成されている。
【0042】
筒状のユニオンパイプ4の後側寄り内周面には、円筒形状の管挿入部4aと、内側拡径部4hと、から成る配管接続部が形成されている。
管挿入部4aは、インコア9を装着してリング10を嵌めた配管Pが挿入される箇所である。つまり、管挿入部4aには、配管Pの軸方向一方側(前側)、及び、リング10の軸方向一方側(前側)が挿入される。管挿入部4aは、略ストレートに形成された円筒部の内壁から成る。管挿入部4aの後側寄りの部位には、内側拡径部4hが連続して形成されている。
【0043】
内側拡径部4hは、配管Pの外周面に嵌めたリング10が挿入配置される箇所である。内側拡径部4hは、管挿入部4aの後端から内側拡径部4hの開口端に向かって拡径するようにテーパ状に形成されている。
【0044】
<Oリング及びガスケット>
図1及び図2に示すように、Oリング5,6及びガスケット12は、胴1、ボールスリーブ3及びユニオンパイプ4の流体(水道水)の漏れを防止するためのゴム製のシール材である。
【0045】
<ストッパリング>
ストッパリング7は、ボールスリーブ3に対してユニオンパイプ4を回動可能に連結させるための抜け止め部材である。ストッパリング7は、断面視して円形のリン青銅等の金属製のリング部材から成る。ストッパリング7の軸心側の半分は、ストッパリング設置部4eに外嵌されている。
【0046】
<可撓抑制カバー>
図1及び図2に示すように、可撓抑制カバー8は、可撓継手Jの可撓機構FMを異物等から保護する保護カバー部材である。可撓抑制カバー8(可撓規制部材80)は、樹脂または金属等の材料によって形成された略円筒状の部材から成る。可撓抑制カバー8は、継手の組立て後に取付けられるように割りや複数部品を係合させる構成であっても良い。可撓抑制カバー8は、配管Pの自重や、埋設時の土圧によって、可撓継手Jが設置時に可撓するのを抑制する可撓規制部材80の機能を備えている。可撓抑制カバー8は、地震等の大きな荷重がかかった際に回動する可撓性を確保しておくことで、地震等の地盤変動時に、可撓継手Jに過度な曲げ荷重がかかった際に、可撓抑制カバー8が変形または破損することで可撓可能にする。このため、可撓抑制カバー8は、地震等の地盤変動時に、配管Pや可撓継手Jが被害を受けるのを防止することができる機能を備えている。
【0047】
<可撓規制部材>
図1及び図2に示すように、可撓規制部材80は、変形または破損することによって、可撓機構FMの可撓の規制を解除する機能を備えた部材である。可撓規制部材80は、ユニオンパイプ4の外周部に遊嵌された筒状の可撓抑制カバー8から成る。可撓規制部材80は、ユニオンパイプ4の外周部に形成された工具係合部4bと、胴1のユニオンパイプ4側の開口端部1cと、の間に介在されている。可撓規制部材80は、フランジ部8aと、内側凸部8bと、後側開口内縁部8cと、を有している。
【0048】
フランジ部8aは、ボールスリーブ3の外径d1よりも大径に形成された鍔部である。フランジ部8aは、可撓規制部材80の前端部の外周面に突出形成された環状の突起から成る。フランジ部8aは、キャップ2の後端部に係合した状態に配置されている。
内側凸部8b、及び、後側開口内縁部8cは、可撓抑制カバー係止部4fに係合して、可撓抑制カバー8の後端部を支持する部位である。内側凸部8bは、可撓規制部材80の後端部寄りの内周面に形成された環状の凸部から成る。
後側開口内縁部8cは、円筒状に形成された可撓規制部材80の後端部寄りの内周面から成る。
【0049】
<袋ナット>
図1及び図2に示すように、袋ナット11は、ユニオンパイプ4の軸方向他方側の外周面に形成された雄ねじ部4gに、リング10を覆うようにして螺合させるナットである。袋ナット11は、雌ねじ部11aと、縮開傾斜面11bと、を有している。袋ナット11は、リング10を内包するように配置されたユニオンパイプ4の雄ねじ部4gに、雌ねじ部11aを螺合して、配管Pとユニオンパイプ4とのシール及び抜け止めを行うように、リング10を締め付けるように設けられている。
【0050】
縮開傾斜面11bは、袋ナット11を締め付けた場合に、リング10の後端に形成された縮径テーパ面10eに接する部位である。この縮開傾斜面11bは、締付方向(前方向)へ徐々に拡径するように袋ナット11の内面にテーパ状に形成されている。縮開傾斜面11bは、袋ナット11が締め付けられて軸方向へ変位すると、リング10の縮径テーパ面10eを押圧して配管Pの挿入方向へ締め付けるように構成されている。
【0051】
<リング>
図1または図2に示すように、リング10は、配管Pの軸方向一方側寄りの外周面に嵌められる管継手用抜け止め筒状体である。リング10は、例えば、ポリアセタール(POM)等の樹脂製の円筒部材から成る。リング10は、傾斜部10aと、外径部10bと、食い込み部10cと、切欠溝10dと、縮径テーパ面10eと、を有している。
【0052】
リング10は、袋ナット11をねじ込むと、ユニオンパイプ4の内側に形成された内側拡径部4hに押されて、リング10の胴側の内周面と食い込み部10cが配管Pの外周面に食い込むように構成されている。
【0053】
図2に示すように、傾斜部10aは、リング10の胴側端面の外周縁から軸方向他方側に、外径が傾斜して延びて形成された部位である。
【0054】
このため、リング10は、袋ナット11を標準の締付力で締め付けると、傾斜部10aの外周面に内側拡径部4hが密着した状態になるので、水漏れするのを防止することができる。
【0055】
図2に示すように、外径部10bは、傾斜部10aの軸方向他方側に連設され、外径が軸方向他方側に向かって形成されている。
【0056】
リング10の胴側の内周面には、ユニオンパイプ4の雄ねじ部4gに袋ナット11の雌ねじ部11aを螺合させて、配管Pを締め付けたときに、配管Pの外周面に食い込む食い込み部10cを有している。
【0057】
その食い込み部10cは、袋ナット11を締め付けたときに、インコア9によって拡径した配管Pの外周面に食い込んで、リング10を配管Pの外周面に固定させるための部位である。食い込み部10cは、リング10の内周面の先端(開口端)に形成されている。このため、リング10は、配管Pを後方向に引っ張って引き抜こうとすると、食い込み部10cがさらに配管Pの外周面に食い込み、配管Pが可撓継手Jから抜けるのを防止することができる。
【0058】
図1及び図2に示すように、切欠溝10dは、リング10の後端から先端方向へ向けて切り込むように切欠形成されたスリットである。切欠溝10dは、例えば、リング10の円周等分位置に4つ形成されている。
【0059】
縮径テーパ面10eは、袋ナット11を締め付けたとき、縮径テーパ面10eに対向して配置された袋ナット11の後端部の縮開傾斜面11bに徐々に締付方向へ押圧される押圧面である。
【0060】
[作用]
本実施形態に係る可撓継手Jは、基本的に以上のように構成されるものであり、次に、図1図4Bを参照しながらその作用効果について説明する。
【0061】
図1図3Aあるいは図3Bに示すように、平常時、可撓継手Jの胴1の軸O2と、ボールスリーブ3、可撓抑制カバー8、ユニオンパイプ4、袋ナット11及び配管Pの軸心O1は、互いに直線上に一致した真っすぐな状態で埋設されている。図1に示す可撓継手Jの可撓機構FMは、可撓継手Jの胴1とユニオンパイプ4との間に介在された可撓抑制カバー8によって可撓することが抑制されているので、配管Pの自重や、埋設時の土圧等では可撓せず、前記した真っすぐな状態が維持されている。
【0062】
埋設された可撓継手J及び配管Pは、図2に示すように、大地震等で配管Pに大きな曲げ荷重F(図4Aあるいは図4B参照)が配管Pにかかると、その荷重Fにより、胴1に対して、ボールスリーブ3、ユニオンパイプ4、リング10、袋ナット11、インコア9及び配管Pが、軸心O1を中心として回動する。
【0063】
図1に示すように、可撓抑制カバー8は、可撓継手Jの胴1と、可撓可能なユニオンパイプ4との間に介在されて、支持されている。このため、可撓抑制カバー8は、図2図4Aあるいは図4Bに示すように、大きな曲げ荷重Fが配管Pにかかると、配管Pと共に軸心O1を中心として回動したユニオンパイプ4及びボールスリーブ3によって外側に押されて変形し破断する。
【0064】
胴1に対して、ボールスリーブ3、ユニオンパイプ4、リング10、袋ナット11、インコア9及び配管Pは、軸心O1を中心として角度θ1回動すると、ユニオンパイプ4のストッパ部4cが、キャップ2の回動規制部2bに当接することで、停止される。胴1に対して、ボールスリーブ3、ユニオンパイプ4、リング10、袋ナット11、インコア9及び配管Pが可撓する角度θ1は、図5に示す従来の可撓継手J100の可撓角度θ100(10~15度)よりも大きい30度である。
【0065】
このように、本発明の可撓継手Jは、大きな曲げ荷重Fが配管Pにかかった場合、可撓抑制カバー8を変形、破損させて大きく可撓すると共に、可撓する可撓角度θ1が大きいため、耐震性を高めることができる。
【0066】
このように、本発明は、図1及び図2に示すように、継手本体を構成する胴1と、配管Pが挿入される管挿入部4aを有するユニオンパイプ4と、ユニオンパイプ4の胴1側の端部外周に外嵌されて、胴1のユニオンパイプ4側の開口部1b内に回動可能に配置されるボールスリーブ3と、を備えて成る可撓機構FMを有する可撓継手Jであって、ユニオンパイプ4の外周部には、可撓機構FMの可撓を規制する可撓規制部材80を有している。
【0067】
かかる構成によれば、本発明の可撓継手Jは、ユニオンパイプ4の外周部に、可撓機構FMの可撓を規制する可撓規制部材80を有していることで、配管Pの自重や埋設時の土圧によって可撓するのを抑制することができる。さらに、可撓継手Jは、地震等の地盤変動時に、可撓継手Jに過度な曲げ荷重Fがかかった際に、胴1に対して、ボールスリーブ3及びユニオンパイプ4が大きく回動することで、配管Pや可撓継手Jの被害を防止することができる。
【0068】
また、図1及び図2に示すように、可撓規制部材80は、樹脂または金属によって形成されている。
【0069】
かかる構成によれば、可撓機構FMを異物等から保護するカバーの機能を有する可撓規制部材80は、樹脂または金属で形成されていることで、配管Pの自重や、埋設時の土圧による荷重で、可撓継手Jが傾くように可撓するのを抑制することができる。
【0070】
また、図1及び図2に示すように、可撓規制部材80は、変形または破損することによって、可撓機構FMの可撓の規制を解除する。
【0071】
かかる構成によれば、可撓規制部材80は、地震等の地盤変動時に過度な曲げ荷重が掛かった際に、可撓規制部材80が変形または破損することで、可撓機構FMの可撓の規制を解除して、配管Pや可撓継手Jが被害を受けるのを防止することができる。
【0072】
また、図1に示すように、ユニオンパイプ4は、ボールスリーブ3の外径d1よりも大形の大形部(工具係合部4b)を有している、
【0073】
かかる構成によれば、ユニオンパイプ4は、ボールスリーブ3の外径d1よりも大形の工具係合部4bを有している。このため、ユニオンパイプ4は、取り付けることが可能な部品の種類を増やすことが可能となる。この場合、大形の大形部は、ボールスリーブ3の外径d1よりも部分的に大径の部分を有するものであればよく、外径全体が大きいものに限定されるものではない。したがって、大形部は、工具が係合するナット形状のものや、六角形のものに限定されるものではない。
【0074】
また、図1及び図2に示すように、ユニオンパイプ4は、ボールスリーブ3に回転可能に連結されている。
【0075】
かかる構成によれば、ユニオンパイプ4は、ボールスリーブ3に回転可能に連結されていることで、配管施工時にユニオンパイプ4がボールスリーブ3に対して回転するため、ボールスリーブ3は回転しない。このため、ユニオンパイプ4は、ユニオンパイプ4が回転しても、ボールスリーブ3の止水部(Oリング5)に傷が付くのを防止することができるので、可撓継手Jが可撓した後に、止水部から漏水するおそれがない。
【0076】
また、図1に示すように、可撓規制部材80は、ユニオンパイプ4の外周部に遊嵌された筒状の可撓抑制カバー8から成り、ユニオンパイプ4の外周部に形成された工具係合部4bと、胴1のユニオンパイプ4側の開口端部1cと、の間に介在されている。
【0077】
かかる構成によれば、可撓規制部材80は、胴1のユニオンパイプ4側の開口端部1cと、胴1に対して回動するユニオンパイプ4の工具係合部4bとの間に介在されているので、ユニオンパイプ4が所定以下の荷重を受けて回動するのを抑止することができる。また、可撓規制部材80は、胴1に対して、ユニオンパイプ4側が所定以上の荷重を受けて回動した場合、ユニオンパイプ4が可撓規制部材80を変形、破損させて大きく回動する。このため、胴1に対して、ユニオンパイプ4側が従来よりも大きく回動することによって、本発明は、荷重を吸収して可撓継手Jを荷重から保護する機能を向上させることができる。
【0078】
[変形例]
以上、本実施形態に係る可撓継手Jについて、図1図5を参照して詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 胴
2 キャップ
3 ボールスリーブ
4 ユニオンパイプ
4a 管挿入部
4b 工具係合部(大形部)
8 可撓抑制カバー
80 可撓規制部材
d1 ボールスリーブの外径
FM 可撓機構
J 可撓継手
P 配管
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
【手続補正書】
【提出日】2022-04-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
継手本体を構成する胴と、
配管が挿入される管挿入部を有するユニオンパイプと、
前記ユニオンパイプの胴側の端部外周に外嵌されて、前記胴のユニオンパイプ側の開口部内に回動可能に配置されるボールスリーブと、を備えて成る可撓機構を有する可撓継手であって、
前記ユニオンパイプの外周部には、前記可撓機構の可撓を規制する可撓規制部材を有している、
可撓継手。
【請求項2】
前記可撓規制部材は、樹脂または金属によって形成されている、
請求項1に記載の可撓継手。
【請求項3】
前記可撓規制部材は、変形または破損することによって、前記可撓機構の可撓の規制を解除する、
請求項1または請求項2に記載の可撓継手。
【請求項4】
前記ユニオンパイプは、前記ボールスリーブの外径よりも大形の大形部を有している、
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の可撓継手。
【請求項5】
前記ユニオンパイプは、継手施工時に、前記ボールスリーブよりも先に回転するように構成されている、
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の可撓継手。
【請求項6】
前記可撓規制部材は、前記ユニオンパイプの外周部に遊嵌された筒状の可撓抑制カバーから成り、前記ユニオンパイプの外周部に形成された工具係合部と、前記胴の前記ユニオンパイプ側の開口端部と、の間に介在されている、
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の可撓継手。
【請求項7】
前記開口部の内周面には、前記ボールスリーブに形成された被回動規制部が当接することで、前記ボールスリーブの回動を抑止する回動規制部が形成されている、
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の可撓継手。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
開口部1bの内周面には、前側寄りから後方の開口端部1cにかけて順に、回動規制部1i、内側曲面1e、Oリング設置溝1f、キャップ設置部1gが形成されている。
図2に示すように、回動規制部1iは、この回動規制部1iにボールスリーブ3の回動規制部3bが当接することで、ボールスリーブ3の回動を抑止する部位である。回動規制部1iは、円筒状の内面から成り、開口部1b内において、内側曲面1eの前側に形成されている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
ボールスリーブ3の外周面には、略球面形状の球面部3aと、球面部3aの前端部に形成された回動規制部3bと、が形成されている。回動規制部3bは、ボールスリーブ3の前端部に円筒形状に形成されている。