(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092129
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体
(51)【国際特許分類】
B01D 69/10 20060101AFI20230626BHJP
B01D 71/48 20060101ALI20230626BHJP
C02F 3/12 20230101ALI20230626BHJP
D21H 13/24 20060101ALI20230626BHJP
D21H 15/02 20060101ALI20230626BHJP
D21H 15/10 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
B01D69/10
B01D71/48
C02F3/12 S
D21H13/24
D21H15/02
D21H15/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207140
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】下里 瑞菜
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光男
【テーマコード(参考)】
4D006
4D028
4L055
【Fターム(参考)】
4D006GA02
4D006KA31
4D006KB22
4D006MA03
4D006MA09
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4D006MB18
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4D028BC17
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4L055AF33
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4L055EA20
4L055FA09
4L055FA11
4L055FA13
4L055GA31
4L055GA50
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、膜塗布面の繊維分散均一性に優れ、半透膜用支持体上に半透膜を形成するための半透膜溶液が塗布された際に半透膜と支持体、樹脂からなるフレーム材と半透膜用支持体の接着が良好であり、濾過運転時に破断や分層が発生しないレベルの耐久性を持ち、製膜後の通水が良好である膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体を提供することである。
【解決手段】主体繊維として、繊維径が10μm以上かつ20μm未満の延伸ポリエステル繊維と繊維径20μm以上かつ30μm未満の延伸ポリエステル繊維とを、各1種類以上含有し、バインダー繊維として、ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコールとテトラメチレングリコールであり、融点が160~185℃である結晶性の共重合ポリエステルを鞘部とする芯鞘型ポリエステル複合繊維と、未延伸バインダー繊維とを含有する湿式不織布であり、該湿式不織布のフラジール通気度が8.0~20.0cm3/cm2・sであり、内部結合強度が290mJ以上であり、該湿式不織布の抄紙網面が膜塗布面である膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主体繊維として、繊維径が10μm以上かつ20μm未満の延伸ポリエステル繊維と繊維径20μm以上かつ30μm未満の延伸ポリエステル繊維とを、各1種類以上含有し、バインダー繊維として、ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコールとテトラメチレングリコールであり、融点が160~185℃である結晶性の共重合ポリエステルを鞘部とする芯鞘型ポリエステル複合繊維と、未延伸バインダー繊維とを含有する湿式不織布であり、該湿式不織布のフラジール通気度が8.0~20.0cm3/cm2・sであり、内部結合強度が290mJ以上であり、該湿式不織布の抄紙網面が膜塗布面である膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体。
【請求項2】
繊維径10μm未満の延伸ポリエステル繊維を1種類以上含有する請求項1に記載の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体に関する。
【背景技術】
【0002】
海水の淡水化、浄水器、食品の濃縮、廃水処理、血液濾過に代表される医療用、半導体洗浄用の超純水製造等の分野で、半透膜が広く用いられている。半透膜の分離機能層としては、セルロース系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂等の多孔質性樹脂で構成されている。しかし、これら多孔質性樹脂単体では機械的強度に劣るため、不織布や織布などの繊維基材からなる半透膜用支持体の片面に半透膜が設けられた複合体の形態である濾過膜が使用されている。半透膜用支持体において、半透膜が設けられる面を「膜塗布面」、このように半透膜用支持体上に分離機能層を塗布形成する処理は「製膜」と称される。
【0003】
これら半透膜や濾過膜の使用形態の一つに、膜分離活性汚泥処理法(Membrane Bioreactor、MBR)が挙げられる。膜分離活性汚泥処理法は、有機性汚水の処理に際し、処理水質が安定していることや、維持管理が容易なことから、広く普及している。膜分離活性汚泥処理法では、汚水中の夾雑物を除去した後、生物処理槽(曝気槽)で活性汚泥により汚水中の有機物質を分解除去し、生物処理槽に浸漬設置した浸漬型膜分離装置で混合液を固液分離し、透過した濾過液を処理水として放流する。こうした膜分離装置中の膜分離部は、使用中に砂のような無機物や汚泥、その他の固形物が激しく衝突したり、活性汚泥への酸素の供給や目詰まり防止のために行うエアレーション操作による気泡が膜面に激しく衝突したりするので、そのような衝撃にも十分に耐える強度を備える必要がある(非特許文献1参照)。
【0004】
濾過膜はモジュール化されて使用される。シート状の濾過膜における代表的なモジュールは、平膜型モジュールとスパイラル型モジュールである。管状の濾過膜における代表的なモジュールは、中空糸型モジュールや管型/チューブラー型モジュールである。平膜型モジュールでは、ポリプロピレンやアクリロニトリル(Acrylonitrile)・ブタジエン(Butadiene)・スチレン(Styrene)共重合合成樹脂(ABS樹脂)等の樹脂からなるフレーム材に、濾過膜を接着・固定して用いられる。フレーム材への接着・固定には加熱融着処理、超音波融着処理等が行われるのが一般的である。中空糸型モジュールや管型/チューブラー型モジュールでは、管状基体やマンドレルを使用して、半透膜用支持体の側縁部を相互に一部重ね合わせて、テープ状半透膜用支持体を螺旋状に巻き、重ね合わせた部分を加熱融着処理、超音波融着処理等によって融着して、管状半透膜用支持体を製造し、この管状半透膜用支持体の外部又は内部に半透膜が設けられた濾過膜を、複数本束ねてモジュール化している。
【0005】
膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体に要求される性能としては、膜塗布面の繊維分散が均一で平滑性に優れ、製膜後の半透膜の凹凸が少なく、膜性能が安定していること、半透膜と支持体、フレーム材と支持体の接着が良好で半透膜溶液が非塗布面側に裏抜けしないこと、濾過運転時に破断や分層が発生しないレベルの耐久性を持つこと、製膜後の通水が良好であること等が挙げられる。
【0006】
特許文献1で提案されている半透膜用支持体は、延伸ポリエステル繊維からなる主体繊維と、融点が160~185℃である結晶性の共重合ポリエステルを鞘部とする芯鞘型ポリエステル複合繊維からなるバインダー繊維を含有することで、十分な強度を保ちつつ、不織布の通気度を特定範囲にすることが可能となり、抄紙時における幅の収縮及び皺の発生が抑制され、半透膜用支持体上に半透膜溶液が塗布された際に半透膜用支持体と半透膜との接着強度が高く、半透膜用支持体の非塗布面に半透膜溶液の裏抜けが少ないという効果を達成している。また、未延伸ポリエステル繊維を併用することによって、強度を向上させるという効果を達成しているが、半透膜用支持体の耐久性については十分でない場合があり、製膜後の通水性については何ら検討されていなかった。
【0007】
特許文献2で提案されている半透膜用支持体は、半透膜用支持体の膜塗布面と非塗布面の繊維配向強度が1.00以上、1.30以下の均一な繊維分散とすることで、濾過膜とフレーム材の接着が良好で、フレーム材から剥離する際に半透膜用支持体が破れないという効果を達成しており、特許文献3で提案されている半透膜用支持体は、延伸ポリエステル繊維と未延伸ポリエステル繊維を少なくとも含有する繊維で、繊維長0.2mm以下の合成繊維を含有することで、半透膜溶液が非塗布面に裏抜けしにくいという効果を達成しているが、半透膜用支持体と半透膜との接着強度や、半透膜用支持体の耐久性、製膜後の通水性については何ら検討されていなかった。
【0008】
特許文献4では、JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.18-2:2000「紙及び板紙-内部結合強さ試験方法-第2部:インターナルボンドテスタ法」に準拠し、シートの横方向、つまり不織布製造時の幅方向(Cross Direction)の内部結合強度が0.4~0.8N・mの範囲内である場合、半透膜の半透膜用支持体への密着性が優れ、かつ半透膜の厚さ均一性が良好で、なおかつ半透膜溶液の裏抜けのない半透膜用支持体が得られることが記載されているが、半透膜と支持体、フレーム材と半透膜用支持体の接着強度や、製膜後の通水性については何ら検討されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第6634180号公報
【特許文献2】特開2020-163321号公報
【特許文献3】特開2021-107053号公報
【特許文献4】特開2013-154304号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】下水道膜処理技術会議編、「下水道への膜処理技術導入のためのガイドライン」、第2版、[online]、平成23年3月、[平成28年1月6日検索]、インターネット<URL:http://www.mlit.go.jp/common/000146906.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、膜塗布面の繊維分散均一性に優れ、半透膜用支持体上に半透膜を形成するための半透膜溶液が塗布された際に半透膜と半透膜用支持体、樹脂からなるフレーム材と半透膜用支持体の接着が良好であり、濾過運転時に破断や分層が発生しないレベルの耐久性を持ち、製膜後の通水が良好である膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、下記発明を見出した。
【0013】
(1)主体繊維として、繊維径が10μm以上かつ20μm未満の延伸ポリエステル繊維と繊維径20μm以上かつ30μm未満の延伸ポリエステル繊維とを、各1種類以上含有し、バインダー繊維として、ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコールとテトラメチレングリコールであり、融点が160~185℃である結晶性の共重合ポリエステルを鞘部とする芯鞘型ポリエステル複合繊維と、未延伸バインダー繊維とを含有する湿式不織布であり、該湿式不織布のフラジール通気度が8.0~20.0cm3/cm2・sであり、内部結合強度が290mJ以上であり、該湿式不織布の抄紙網面が膜塗布面である膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体。
(2)繊維径10μm未満の延伸ポリエステル繊維を1種類以上含有する上記(1)に記載の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体。
【発明の効果】
【0014】
本発明の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体は、膜塗布面の繊維分散均一性に優れ、半透膜用支持体上に半透膜を形成するための半透膜溶液が塗布された際に半透膜と半透膜用支持体、樹脂からなるフレーム材と半透膜用支持体の接着が良好であり、濾過運転時に破断や分層が発生しないレベルの耐久性を持ち、製膜後の通水が良好であるという効果を達成できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明において、濾過膜とは、膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の片面である膜塗布面に、分離機能層の原料となる半透膜溶液が塗布され、水処理用の半透膜が形成され、半透膜用支持体の片面に半透膜が設けられた複合体の形態を有する。分離機能層の原料としては、例えば、塩化ビニル樹脂(PVC)系、ポリスルホン(PS)系、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)系、ポリエチレン(PE)系、酢酸セルロース(CA)系、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ポリビニルアルコール(PVA)系、ポリイミド(PI)系等の種々の高分子材料が用いられる。特に、膜分離活性汚泥処理用半透膜では、PVC系、PVDF系が利用されるようになってきている。半透膜用支持体上に、原料となる高分子材料を溶かした溶液である半透膜溶液を塗布し、ゲル化させて微多孔膜を形成させる。
【0016】
本発明の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体は、バインダー繊維として、ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコールとテトラメチレングリコールであり、融点が160~185℃で結晶性の共重合ポリエステルを鞘部とする芯鞘型ポリエステル複合繊維と未延伸ポリエステル繊維とを含有する。また、主体繊維として、繊維径10μm以上かつ20μm未満、20μm以上かつ30μm未満の延伸ポリエステル繊維を各1種類以上、または、繊維径10μm未満、10μm以上かつ20μm未満、20μm以上かつ30μm未満の延伸ポリエステル繊維を各1種類以上含む。以下、「ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコールとテトラメチレングリコールであり、融点が160~185℃で結晶性の共重合ポリエステルを鞘部とする芯鞘型ポリエステル複合繊維」を「結晶性芯鞘型ポリエステル複合繊維」と称する場合がある。
【0017】
結晶性芯鞘型ポリエステル複合繊維の鞘部は、結晶性の共重合ポリエステルであり、半透膜溶液に用いるメチルエチルケトンやジメチルホルムアミド等の溶剤に浸漬しても、溶出し難く、半透膜用支持体の強度低下を招かない。また、結晶性芯鞘型ポリエステル複合繊維を含むことにより、半透膜用支持体の製造及びその後の熱カレンダー処理を終えた後でも、結晶性芯鞘型ポリエステル複合繊維の芯部が溶融せずに、繊維形状を維持し、空隙を確保することができることから、製膜後に半透膜溶液が半透膜用支持体内部に浸透する。そして、半透膜用支持体と半透膜との接着強度に優れた半透膜用支持体を得ることが可能となる。
【0018】
ただし、本発明において、結晶性芯鞘型ポリエステル複合繊維は、融点が160~185℃で結晶性の共重合ポリエステルを鞘部としていることから、湿式抄造法で半透膜用支持体を製造する際の乾燥工程において、乾燥温度を160℃以上にまで高める必要がある。しかしながら、通常の抄紙機では160℃以上に乾燥温度を高めることが困難であり、バインダー繊維として結晶性芯鞘型ポリエステル複合繊維のみを使用した場合、抄紙後における半透膜用支持体の強度が不足し、熱カレンダー処理に移行できない場合があった。本発明では、バインダー繊維として未延伸ポリエステル繊維を併用することにより、結晶性芯鞘型ポリエステル複合繊維の抄紙工程における強度を補っている。
【0019】
半透膜用支持体に半透膜溶液を塗布した際の、半透膜用支持体への半透膜溶液の浸透量及び、それに相関する半透膜と半透膜用支持体の接着強度を好ましい値にするためには、半透膜用支持体のフラジール通気度を好ましい範囲に合わせることが重要となる。本発明において、湿式不織布のフラジール通気度は、8.0~20.0cm3/cm2・sであり、より好ましくは10.0~20.0cm3/cm2・sであり、更に好ましくは15.0~20.0cm3/cm2・sである。フラジール通気度を調整する方法としては、坪量、延伸ポリエステル繊維の繊度、バインダー繊維の種類、バインダー繊維の配合率、熱カレンダー処理方法を変えること等が挙げられる。
【0020】
本発明において、湿式不織布は、バインダー繊維として、結晶性芯鞘型ポリエステル複合繊維を含有する。本発明において、「結晶性」とは、繊維の温度を溶解状態の温度まで高めた後に、温度を下げていった場合、溶融状態では分子運動しながら絡み合っているが、温度を下げていくことで分子運動がゆっくり収まりながら、結晶化温度にて部分的に整列し、結晶化する特性を有することをいう。
【0021】
結晶性の有無を確認する方法としては、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製、装置名:DSC8500)を用いて、昇温速度10℃/分で、0℃から芯鞘型ポリエステル複合繊維の鞘部の融点を超えるまで昇温した後に、連続して冷却速度10℃/分で、0℃まで冷却し、結晶化による発熱ピークの有無を確認し、発熱ピークが観察された場合、結晶性であると判断する。また、発熱ピークのピーク温度を結晶化温度とする。
【0022】
鞘部の融点の測定は、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製、装置名:DSC8500)を用いて、昇温速度10℃/分で、0℃から300℃まで昇温させた際の結晶融解による吸熱ピークを観察し、そのピーク温度を融点とする。
【0023】
鞘部のガラス転移点の測定は、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製、装置名:DSC8500)を用いて、昇温速度10℃/分で、0℃から芯鞘型ポリエステル複合繊維の鞘部の融点を超えるまで昇温して10分間保った後に、連続して急冷で0℃まで冷却した後に、連続して昇温速度20℃/分で、0℃から芯鞘型ポリエステル複合繊維の鞘部の融点を超えるまで昇温してDSC曲線を描き、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線とガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度(中間点ガラス転移温度)をISO 11357-2:2013又はJIS K7121:1987に記載の方法で測定した。
【0024】
結晶性芯鞘型ポリエステル複合繊維の鞘部における共重合ポリエステルは、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸を含有し、ジオール成分としてエチレングリコール成分とテトラメチレングリコール成分とを含有し、鞘部の融点は160~180℃である。
【0025】
本発明において、結晶性芯鞘型ポリエステル複合繊維の芯部は、主たる繰り返し単位がアルキレンテレフタレートであるポリエステルであり、耐熱性の高いポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
【0026】
本発明において、結晶性芯鞘型ポリエステル複合繊維の断面形状は特に限定しないが、円形が好ましい。また、芯部と鞘部の比率は、体積比で芯/鞘=30/70~70/30の範囲が好ましく、40/60~60/40がより好ましい。
【0027】
本発明において、未延伸ポリエステル繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びそれを主体とした共重合体などのポリエステルを紡糸速度800~1200m/分で紡糸した未延伸繊維が挙げられる。これらの未延伸ポリエステル繊維が熱カレンダー処理によって熱圧融着されることにより、強度の高い半透膜用支持体を得ることができる。
【0028】
本発明において、バインダー繊維の配合率は、半透膜用支持体の全繊維に対して20~60質量%であることが好ましく、30~55質量%であることがより好ましく、35~50質量%であることがさらに好ましい。バインダー繊維の配合率が20質量%未満では、繊維間の接着強度が不十分となりやすく、半透膜用支持体の表面が毛羽立ちやすくなり、半透膜の塗布性が損なわれる場合がある。一方、バインダー繊維の配合率が60質量%を超えると、バインダー繊維の溶融によって半透膜用支持体の表面が皮膜化しやすく、半透膜用支持体と半透膜との接着強度が低下する場合がある。また、管状半透膜用支持体において、半透膜用支持体の膜塗布面と非塗布面とを融着させた部分が皮膜化し、半透膜が融着部分に食い込みにくくなることによって、半透膜用支持体と半透膜との接着強度が低下する場合がある。これ以降、特に明言されない限り、割合を%(百分率)で示す場合は質量%を指すものとする。
【0029】
本発明において、結晶性芯鞘型ポリエステル複合繊維の配合率は、半透膜用支持体の全繊維に対して5~20%であることが好ましく、7~18%であることがより好ましく、10~15%であることがさらに好ましい。結晶性芯鞘型ポリエステル複合繊維の配合率が5%未満では、半透膜用支持体と半透膜との接着強度が低下するがおそれがある。一方、20%超の場合、原紙を熱カレンダー処理する際に、結晶性芯鞘型ポリエステル複合繊維の配合率が高いために、溶融した結晶性芯鞘型ポリエステル複合繊維の鞘部が加熱した金属ロールに貼り付き、徐々に加熱した金属ロールを汚すおそれがある。
【0030】
本発明において、未延伸ポリエステル繊維の配合率は、半透膜用支持体の全繊維に対して15~40%であることが好ましく、23~47%であることがより好ましく、25~35%であることがさらに好ましい。40%を超えると、半透膜用支持体の表面が皮膜化しやすく、管状半透膜用支持体において、半透膜用支持体の膜塗布面と非塗布面とを融着させた部分が皮膜化しやすく、半透膜が融着部分に食い込みにくくなることによって、半透膜用支持体と半透膜との接着強度が低下する場合がある。15%未満の場合、半透膜用支持体の湿式抄造工程での強度低下を招く場合がある。
【0031】
本発明において、バインダー繊維の繊維長は、特に限定しないが、好ましくは1~15mmであり、より好ましくは3~12mmであり、更に好ましくは3~10mmである。繊維長が1mm未満の場合には、半透膜用支持体の強度が低下する場合があり、15mmを超える場合には、繊維分散性が低下しやすく、半透膜用支持体の地合が不均一となりやすく、分離機能層の製膜性を損なう場合がある。
【0032】
本発明において、湿式不織布は、主体繊維として延伸ポリエステル繊維を含有する。主体繊維として、繊維径が10μm以上かつ20μm未満の延伸ポリエステル繊維と、繊維径20μm以上かつ30μm未満の延伸ポリエステル繊維とを各1種類以上含有することで、膜塗布面の繊維間の空隙が均一で平滑性が高くなり、半透膜溶液の浸透が均一かつ半透膜表面の凹凸が抑制されるため、半透膜用支持体と半透膜との接着強度、半透膜用支持体とフレーム材との接着強度、濾過膜の通水性が良好となる。
【0033】
繊維径が10μm以上かつ20μm未満の延伸ポリエステル繊維の配合率は、半透膜用支持体の全繊維に対して20~45%であることが好ましく、23~37%であることがより好ましく、25~35%であることがさらに好ましい。繊維径が10μm以上かつ20μm未満の延伸ポリエステル繊維の配合率が20%未満では、フラジール通気度が目標とする範囲内に入らない場合がある。一方、45%超の場合、膜塗布面の空隙が大きくなり、繊維分散均一性が低下し、半透膜溶液を半透膜用支持体に塗布した際のアンカー効果が弱くなり、半透膜用支持体と半透膜との接着強度が下がる懸念がある。
【0034】
繊維径20μm以上かつ30μm未満の延伸ポリエステル繊維の配合率は、半透膜用支持体の全繊維に対して20~35%であることが好ましく、22~33%であることがより好ましく、25~30%であることがさらに好ましい。繊維径20μm以上かつ30μm未満の延伸ポリエステル繊維の配合率が20%未満では、繊維分散均一性が低下し、半透膜溶液を半透膜用支持体に塗布した際のアンカー効果が弱くなり、半透膜用支持体と半透膜との接着強度が下がる懸念がある。一方、35%超の場合、フラジール通気度が低下し、半透膜用支持体への半透膜溶液の浸透が抑制され、半透膜用支持体と半透膜との接着強度が下がる懸念がある。
【0035】
主体繊維として、繊維径が10μm以上かつ20μm未満の延伸ポリエステル繊維と、繊維径20μm以上かつ30μm未満の延伸ポリエステル繊維に加え、さらに、繊維径が10μm未満の延伸ポリエステル繊維を1種類以上含有することで、膜塗布面の繊維間の空隙状態と平滑性がさらに良好となり、通水性が向上し、半透膜溶液を半透膜用支持体に塗布した際のアンカー効果が働きやすくなり、半透膜用支持体と半透膜との接着強度が向上する。繊維径が10μm未満の延伸ポリエステル繊維の繊維径の最小値は3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。繊維径が3μm未満の場合には、配合の効果を十分に発揮できない場合がある。繊維径が10μm未満の延伸ポリエステル繊維の配合率は、半透膜用支持体の全繊維に対して2.0~7.0%であることが好ましく、2.5~6.0%であることがより好ましく、3.0~5.0%であることがさらに好ましい。繊維径が10μm未満の延伸ポリエステル繊維の配合率が2.0%未満では、繊維配合率が非常に低いため、効果が十分に得られない場合がある。一方、7.0%超の場合、フラジール通気度が低下し、目標とする範囲内に入らない場合がある。
【0036】
バインダー繊維の軟化点又は溶融温度(融点)以上まで温度を上げる工程を、膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の製造方法に組み入れることで、バインダー繊維が膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体の機械的強度を向上させる。この温度を上げる工程において、延伸ポリエステル繊維は軟化又は溶融せず、主体繊維として、半透膜用支持体の骨格を形成する。該延伸ポリエステル繊維としては、主たる繰り返し単位がアルキレンテレフタレートであるポリエステルが挙げられるが、耐熱性の高いポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。また、繊維の断面形状は円形が好ましい。ただし、T型、Y型、三角等の異形断面を有する繊維も、裏抜け防止や、膜塗布面の平滑性のために、他の特性を阻害しない範囲内で含有できる。
【0037】
延伸ポリエステル繊維の繊維長は、特に限定しないが、好ましくは1~15mmであり、より好ましく5~15mmであり、更に好ましくは7~15mmである。繊維長が1mm未満の場合には、半透膜用支持体の強度が低下する場合があり、15mmを超える場合には、繊維分散性が低下しやすく、半透膜用支持体の地合が不均一となりやすく、半透膜の製膜性を損なう場合がある。
【0038】
本発明の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体においては、必要に応じて、前記した延伸ポリエステル繊維及びバインダー繊維以外の繊維を加えても良い。具体的には、合成繊維としては、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリアクリル系、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ベンゾエート、ポリクラール(polychlal)、フェノール系などの繊維が挙げられる。天然繊維としては、皮膜の少ない麻パルプ、コットンリンター、リント;再生繊維としては、リヨセル繊維、レーヨン、キュプラ;半合成繊維としては、アセテート、トリアセテート、プロミックス;無機繊維としては、アルミナ繊維、アルミナ・シリカ繊維、ロックウール、ガラス繊維、マイクロガラス繊維、ジルコニア繊維、チタン酸カリウム繊維、アルミナウィスカ、ホウ酸アルミウィスカなどの繊維が挙げられる。上記の繊維の他に、植物繊維として、針葉樹パルプ、広葉樹パルプなどの木材パルプ、藁パルプ、竹パルプ、ケナフパルプなどの木本類や草本類を使用することもできる。また、上記の繊維は、通液性、通気性を阻害しない範囲であれば、フィブリル化されていても何ら差し支えない。さらに、古紙、損紙などから得られるパルプ繊維等も使用することができる。また、断面形状がT型、Y型、三角等の異形断面を有する繊維も含有できる。
【0039】
本発明の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体において、湿式不織布のフラジール通気度は、8.0~20.0cm3/cm2・sであり、10.0~20.0cm3/cm2・sがより好ましく、12.0~20.0cm3/cm2・sが更に好ましい。8.0cm3/cm2・s未満の場合には、半透膜溶液の支持体への浸透が抑制され、半透膜と支持体の接着強度が十分でない場合がある。また、20.0cm3/cm2・sを超えた場合には、半透膜溶液の浸透が過多となり、非塗布面側に溶液が裏抜けする場合がある。
【0040】
本発明の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体において、湿式不織布の内部結合強度は、290mJ以上であり、390mJ以上がより好ましい。内部結合強度が290mJ未満の場合には、加圧運転時に支持体内部が分層する場合がある。内部結合強度の上限値は、1800mJ未満が好ましく、1500mJ未満がより好ましい。内部結合強度が1800mJ以上の場合には、未延伸ポリエステル繊維の溶融が著しく進み、半透膜用支持体内部の空隙が減少し、良好なフラジール通気度、半透膜用支持体と半透膜との接着強度を維持できない場合がある。
【0041】
本発明の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体は、湿式抄造法により形成された湿式不織布である。
【0042】
湿式抄造法では、まず、繊維を均一に水中に分散させ、その後、スクリーン(異物、塊等除去)等の工程を通り、最終の繊維濃度が0.01~0.50%であるスラリーが抄紙機で抄き上げられ、湿紙が得られる。繊維の分散性を均一にするために、工程中で分散剤、消泡剤、親水剤、帯電防止剤、高分子粘剤、離型剤、抗菌剤、殺菌剤等の薬品を添加する場合もある。
【0043】
抄紙機としては、例えば、長網、円網、傾斜ワイヤー等の抄紙網が同種又は異種の2種以上オンラインで設置されているコンビネーション抄紙機等を使用することができる。また、2層以上の構造を有する多層湿式不織布は、各々の抄紙網で抄き上げた湿紙を積層する抄き合わせ法、一方の層を形成した後に、該層上に繊維を分散したスラリーを流延して積層する方法等で製造することができる。繊維を分散したスラリーを流延する際に、先に形成した層は湿紙状態であっても良いし、乾燥状態であってもいずれでも良い。また、2枚以上の乾燥状態の層を熱融着させて多層湿式不織布とすることもできる。
【0044】
本発明の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体において、湿式不織布は単層であっても良いし、多層であっても良い。多層湿式不織布は、単層湿式不織布と比較して、各層の坪量が下がるため、スラリーの繊維濃度を下げることができる。その結果、不織布の地合が良くなり、膜塗布面の平滑性や均一性が向上する。また、各層の地合が不均一であった場合でも、積層することで補填できる。さらに、抄紙速度を上げることができ、操業性が向上する。
【0045】
湿式抄造法では、抄紙網上にスラリーが供給され、余分な水を搾水して湿紙を得る工程では、金属糸やプラスチック糸を編み込んだ抄紙網の上で湿紙が形成されながら、抄紙網下に徐々に搾水される。抄紙網上での湿紙の形成は、抄紙網表面に繊維が堆積して進行し、搾水の完了と共に湿紙形成が完了する。湿紙形成開始時は、抄紙網上に供給されたスラリーの分散状態のまま繊維が堆積するために、湿紙の抄紙網に接する面(「抄紙網に接する面」を「抄紙網面」と称する場合がある)の繊維のほぐれ状態は均一になる。一方、抄紙網上に形成中の湿紙上には未だスラリーが存在しており、サクションによる搾水の位置、サクションの強度、抄紙網速度、スラリーの流速等によって、湿紙形成完了時における湿紙の抄紙網面と反対の面(「抄紙網面と反対の面」を「抄紙フェルト面」と称する場合がある)の繊維のほぐれ状態を調整することができる。しかし、抄紙網面と比較すると、抄紙フェルト面では、繊維のほぐれ状態における均一性は低下する。また、湿紙形成の中盤から後半には、主体繊維とバインダー繊維の太さや長さが異なっている場合に、サクションによって同種繊維が寄り集まり、均一性がより低下する場合がある。バインダー繊維が寄り集まることによって、部分的にバインダー繊維が不足する箇所を招くことがある。そのため、湿式不織布の抄紙網面の表面強度が抄紙フェルト面の表面強度よりも高くなることから、抄紙網面が膜塗布面である場合、より欠点が少ない半透膜が得られる。
【0046】
抄紙網で製造された湿紙を、ヤンキードライヤー、エアードライヤー、シリンダードライヤー、サクションドラム式ドライヤー、赤外方式ドライヤー等で乾燥することにより、シート(原紙)を得る。湿紙の乾燥の際に、ヤンキードライヤー等の熱ロールに密着させて熱圧乾燥させることによって、密着させた面の平滑性が向上する。熱圧乾燥とは、タッチロール等で熱ロールに湿紙を押しつけて乾燥させることをいう。熱ロールの表面温度は、100~180℃が好ましく、100~160℃がより好ましく、110~160℃が更に好ましい。圧力は、好ましくは5~100kN/m、より好ましくは10~80kN/mである。
【0047】
本発明において、湿式不織布は、熱カレンダー処理が施されたシート(原紙)であることが好ましい。熱カレンダー処理においては、金属ロール-金属ロール、金属ロール-弾性ロール、金属ロール-コットンロール、金属ロール-シリコンロールなどのロール構成のカレンダーユニットを単独、又は組み合わせて用いることができる。カレンダーユニットの少なくとも一方の金属ロールが加熱される。本発明においては、半透膜用支持体に十分な熱量を付与させることができて、強度の高い半透膜用支持体を得ることができるため、金属ロール-弾性ロールのカレンダーユニットを用いることが好ましい。
【0048】
熱カレンダー処理時の金属ロール温度は、未延伸ポリエステル繊維の融点に対して、-50~-10℃の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、-40~-15℃の範囲内であり、更に好ましくは、-35~-20℃の範囲である。
【0049】
例えば、未延伸ポリエステル繊維の融点が260℃の場合、半透膜用支持体の表面温度が210~250℃であることが好ましく、220~245℃であることがより好ましい。未延伸ポリエステル繊維の融点に対して-50℃より低い温度の場合、半透膜用支持体の強度が十分に得られない場合がある。
【0050】
熱カレンダー処理時のニップのニップ圧力は、好ましくは300~2000N/cmであり、より好ましくは300~1000N/cmである。300N/cm未満の場合、内部結合強度が290mJを下回る場合がある。加工速度は、好ましくは3~150m/minであり、より好ましくは5~80m/minである。150m/min超の場合、繊維分散の均一性を確保できない場合がある。
【実施例0051】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【0052】
延伸PET繊維1:ポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径7.4μm、繊維長5mmの延伸ポリエステル繊維
延伸PET繊維2:ポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径8.0μm、繊維長6mmの延伸ポリエステル繊維
延伸PET繊維3:ポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径12.5μm、繊維長10mmの延伸ポリエステル繊維
延伸PET繊維4:ポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径17.5μm、繊維長10mmの延伸ポリエステル繊維
延伸PET繊維5:ポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径24.7μm、繊維長10mmの延伸ポリエステル繊維
【0053】
芯鞘PET繊維1:芯部がポリエチレンテレフタレート(融点:260℃)、鞘部がジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコールとテトラメチレングリコールであり、融点が180℃である結晶性の共重合ポリエステル(結晶化温度:126℃、ガラス転移点:49℃)であり、繊維径14.3μm、繊維長5mmの芯鞘型ポリエステル複合繊維
【0054】
未延伸PET繊維1:ジカルボン酸成分としてイソフタル酸を共重合させたポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径10.5μm、繊維長5mmの未延伸ポリエステル繊維(融点:260℃)
未延伸PET繊維2:ジカルボン酸成分としてイソフタル酸を共重合させたポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径11.6μm、繊維長5mmの未延伸ポリエステル繊維(融点:260℃)
【0055】
実施例1~8、比較例1~19の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体を、以下の条件で製造した。
【0056】
(原紙の製造)
2m3の分散タンクに水を投入後、表1に示す原料配合比率(%)で配合し、分散濃度0.5%で5分間分散してスラリーを調成し、傾斜/円網コンビネーション抄紙機を用い、形成した両湿紙を乾燥させる前に積層させた後に、表面温度120~150℃のヤンキードライヤーにて熱圧乾燥し、湿式不織布シートを得た。
【0057】
【0058】
(熱カレンダー処理)
得られた原紙に対して、金属ロール-弾性ロールのカレンダーユニットにて、表2に記載する条件で熱カレンダー処理を行い、実施例1~8及び比較例1~19の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体を得た。なお、実施例1~8、比較例1~10、比較例14~19について、1回目の処理で膜塗布面(抄紙網面)が金属ロールに当たり、2回目の処理で非塗布面(抄紙フェルト面)が金属ロールに当たるように処理し、比較例11~13について、1回目の処理で膜塗布面(抄紙フェルト面)が金属ロールに当たり、2回目の処理で非塗布面(抄紙網面)が金属ロールに当たるように処理した。
【0059】
【0060】
実施例1~8及び比較例1~19で得られた膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体に対して、以下の測定及び評価を行い、結果を表1及び表3に示した。
【0061】
[坪量]
JIS P8124:2011に準拠して、坪量を測定した。坪量の単位はg/m2である。
【0062】
[厚さと密度]
JIS P8118:2014に準拠して、半透膜用支持体の厚さを測定した。密度は、坪量/厚さで算出した。厚さの単位はμm、密度の単位はg/cm3である。
【0063】
[フラジール通気度]
フラジール通気度は、カトーテック社製の通気性試験機(KES-F8-AP1)で半透膜用支持体の5箇所の通気抵抗を測定し、その通気抵抗値をJIS L1913:2010通気性のフラジール形法に換算した。通気度の単位はcm3/cm2・sである。
【0064】
[内部結合強度]
JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.18-2:2000「紙及び板紙-内部結合強さ試験方法-第2部:インターナルボンドテスタ法」に準拠し、熊谷理機工業社製インターナルボンドテスタを用い、半透膜用支持体の横方向(CD)に測定した。25.4mm角の試験片の両面に粘着テープを貼った試料を、装置の試料設置面に貼り、装置に貼り付けた試料の反対側にL字金具を貼り付け、L字金具をハンマーで衝撃を与え、試料とL字金具が共に剥離した際の強度を各支持体5点測定し、平均値を求めた。内部結合強度の単位はmJである。
【0065】
[半透膜用支持体の繊維分散均一性(繊維配向強度)評価]
(1)半透膜用支持体のSEM画像撮影
半透膜用支持体を幅10mm×長さ10mmに断裁して、試料とした。断裁した半透膜用支持体の膜塗布面の画像を、日本電子社製Scanning Electron microscope JSM-6610LV(製品名)を用いて、倍率50倍で反射電子、加速電圧20kV、スポットサイズ30で撮影した。評価基準で評価した。撮影の際、上下はMD方向(流れ方向)、左右はCD方向とした。1つの半透膜用支持体につき測定点数10箇所の撮影を行った。
【0066】
(2)繊維配向強度計測の前準備
SEM写真は、撮影時にJPEG形式の画像になっており、これを2000ピクセル×1500ピクセルのbmp形式に変換した。
【0067】
(3)繊維配向強度の計測
プログラム「Fiber Orientation Analysis Ver.8.13 single(FiberOri8s03)」を使用した。本プログラムの中で、元画像から1024ピクセル×1024ピクセルの画像を抽出→移動平均による2値化→FFT変換→two axes modeにて配向角・配高度計算を行い、異方性の度合い「Orientation intensity」を測定した。各半透膜用支持体について、測定点数10箇所で測定し、平均値を「繊維配向強度」とし、以下の指標で評価した。
【0068】
A:繊維配向強度が1.00以上1.20未満。
B:繊維配向強度が1.20以上1.25未満。
C:繊維配向強度が1.25以上1.30未満。
D:繊維配向強度が1.30以上。
【0069】
[半透膜用支持体と半透膜との接着強度評価]
(1)半透膜溶液の調製
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)をN-メチル-2-ピロリドンに、常温にて濃度13%になるように溶解後、2~5日撹拌して、半透膜溶液を調製した。
【0070】
(2)半透膜溶液の塗布
定速塗工装置(商品名:Automatic Film Applicator、安田精機社製)上に、台紙をセットし、セットした台紙の上に、塗布幅100mm×塗布長さ180mmとなるようにカットした半透膜用支持体を、膜塗布面を上にしてOPPテープ(3M社製、商品名:BK-24N)で留めた。半透膜溶液10~30gを、一定のクリアランスに調整できるベーカー式アプリケーター(安田精機社製、塗布幅100mm)を使用して、塗布量(乾燥質量)35±5g/m2となるように、塗布速度100mm/secにて塗布し、塗布開始後10秒後に30℃のイオン交換水に浸漬して凝固した。6時間程度水洗した後、乾燥して濾過膜を作製した。
【0071】
(3)半透膜と支持体の接着強度計測試料作製
製膜1日後、幅25mm(塗布方向)×長さ100mm(塗布方向に対してクロス方向)に断裁し、半透膜用支持体の膜塗布面に幅25mm、長さ100mmに切った両面テープ(ニチバン社製、商品名:ナイスタック(登録商標)NW-25)を膜塗布面全面に貼り付け、半透膜用支持体とテープが貼られた半透膜の界面で長さ30mmのみを剥離して残りの長さ70mmは剥がさずに残して試料とした。
【0072】
(4)半透膜と支持体の接着強度計測
シングルコラム型引張圧縮試験機(装置名:STB-1225S、株式会社エー・アンド・ディ製)を用いて、試料の剥離した部分の半透膜用支持体と半透膜が貼り付いている両面テープ(剥離紙含む)をそれぞれチャックに固定して、つかみ長さ各25mm、引張速度50mm/分の条件で、未だ剥がしていない部分が剥離しながら80mm移動する間の極平均荷重を連続で測定し、その平均値を「半透膜用支持体と半透膜との接着強度(膜接着強度)」として評価した。膜接着強度の単位はN/25mmであり、以下の評価基準で評価した。
【0073】
評価基準
A:膜接着強度が1.5N/25mm以上であり、良好なレベル
B:膜接着強度が1.0N/25mm以上1.5N/25mm未満であり、実用可能なレベル
C:膜接着強度が1.0N/25mm未満であり、実用不可レベル。
【0074】
[半透膜用支持体とフレーム材との接着強度評価]
(1)半透膜溶液の調製
「半透膜用支持体と半透膜との接着強度評価」と同様の手法にて半透膜溶液を調製した。
【0075】
(2)半透膜溶液の塗布
「半透膜用支持体と半透膜との接着強度評価」と同様の手法にて濾過膜を作製した。
【0076】
(3)半透膜用支持体(濾過膜)とABS樹脂板の接着強度計測
幅55mm、長さ150mmのABS樹脂板上に、幅50mm、長さ100mmの濾過膜を、半透膜面を上にして重ね合わせ、ヒートシーラー(深セン市科晶智達科技有限公司製、製品名:MSK-140)を使って、温度240℃、接着時間10秒で加圧し、ABS樹脂板と濾過膜の非塗布面とを接着させた。シングルコラム型引張圧縮試験機(装置名:STB-1225S、株式会社エー・アンド・ディ製)を用いて、試料の剥離した部分の半透膜用支持体と半透膜が貼り付いているABS樹脂板をそれぞれチャックに固定して、引張速度1000mm/分で、濾過膜とABS樹脂板が剥離するまで、上チャックを引き上げた時の最大荷重を「半透膜用支持体とフレーム材の接着強度(ヒートシール強度)」とした。ヒートシール接着強度の単位はN/50mmであり、以下の指標で評価した。
【0077】
評価基準
A:ヒートシール接着強度が100N/50mm以上であり、良好なレベル
B:ヒートシール接着強度が80N/50mm以上100N/50mm未満であり、実用可能なレベル
C:ヒートシール接着強度が80N/50mm未満であり、実用不可レベル。
D:評価中に半透膜用支持体が分層、もしくは断裂する。
【0078】
[濾過膜の通水性評価]
(1)半透膜溶液の調製
「半透膜用支持体と半透膜との接着強度評価」と同様の手法にて半透膜溶液を調製した。
【0079】
(2)半透膜溶液の塗布
「半透膜用支持体と半透膜との接着強度評価」と同様の手法にて濾過膜を作製した。
【0080】
(3)濾過膜の純水透過係数計測
作製した濾過膜を約60cm2の楕円形にカットし、日東電工株式会社製の薄層流式平膜テストセル(製品名:メンブレンマスターC10-T)に取り付け、メンブレン・ソルテック社製の平膜テストユニット(製品名:FTU-1)に接続し、圧力0.6MPaと0.8MPaにてイオン交換水(25.0℃)を通水した。一定量の純水が濾過膜を通過する時間を測定し、透過流速(Flux)及び、純水透過係数(Lp)を算出した。透過流速は、純水サンプリング量V(L)/膜有効面積(m2)・時間T(hоur)で算出し、単位はL/(m2・h)とした。純水透過係数(通水量)は、x軸を圧力、y軸を透過流速とした散布図に測定値をプロットした時の、原点を通る傾向直線の傾きとした。単位はLMH/Barである。純水透過係数を以下の指標で評価した。
【0081】
評価基準
A:純水透過係数が850LHM/Bar以上。
B:純水透過係数が750LHM/Bar以上850LHM/Bar未満。
C:純水透過係数が750LHM/Bar未満。
【0082】
[半透膜用支持体の耐久性評価]
(1)内部結合強度の測定
「内部結合強度」と同様の手法にて半透膜用支持体の内部結合強度を測定し、以下の評価基準で評価した。
【0083】
(2)破裂強さの測定
JIS L1096:2010に準拠して、株式会社東洋精機製作所製ミューレン破裂試験機(E型)を用い、各支持体5箇所の破裂強さを測定し、ゴム膜が半透膜用支持体を突き破る強さから、破断時のゴム膜だけの強さを差し引いた値を、半透膜用支持体の破裂強さとした。破裂強さの単位はkPaであり、以下の評価基準で評価した。
【0084】
評価基準
A:内部結合強度が590mJ以上、かつ、破裂強さが450kPa以上であり、非常に良好なレベル。
B:内部結合強度が290mJ以上、かつ、破裂強さが400kPa以上であるが、Aの基準は満たさない。良好なレベル。
C:内部結合強度が290mJ未満、もしくは、破裂強さが400kPa未満であり、実用不可なレベル。
【0085】
【0086】
実施例1~4の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体は、主体繊維として、繊維径が10μm以上かつ20μm未満の延伸ポリエステル繊維と繊維径20μm以上かつ30μm未満の延伸ポリエステル繊維と繊維径が10μm未満の延伸ポリエステル繊維を、各1種類以上含有し、バインダー繊維として、ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコールとテトラメチレングリコールであり、融点が160~185℃である結晶性の共重合ポリエステルを鞘部とする芯鞘型ポリエステル複合繊維と、未延伸バインダー繊維とを含有する湿式不織布であり、該湿式不織布のフラジール通気度が8.0~20.0cm3/cm2・sであり、内部結合強度が290mJ以上であり、該湿式不織布の抄紙網面が膜塗布面である。また、実施例5~8の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体は、主体繊維として、繊維径が10μm以上かつ20μm未満の延伸ポリエステル繊維と繊維径20μm以上かつ30μm未満の延伸ポリエステル繊維とを、各1種類以上含有し、バインダー繊維として、ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコールとテトラメチレングリコールであり、融点が160~185℃である結晶性の共重合ポリエステルを鞘部とする芯鞘型ポリエステル複合繊維と、未延伸バインダー繊維とを含有する湿式不織布であり、該湿式不織布のフラジール通気度が8.0~20.0cm3/cm2・sであり、内部結合強度が290mJ以上であり、該湿式不織布の抄紙網面が膜塗布面である。実施例1~8の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体は、膜塗布面の繊維間の空隙が均一で平滑性が高く、半透膜溶液の浸透が均一かつ半透膜表面の凹凸が抑制されるため、繊維分散均一性、半透膜用支持体と半透膜との接着強度、半透膜用支持体とフレーム材との接着強度、濾過膜の通水性及び半透膜用支持体の耐久性が優れていた。
【0087】
これに対し、主体繊維として繊維径が10~20μm未満の延伸ポリエステル繊維を含有していない比較例1~3の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体は、濾過膜の通水性が悪かった。主体繊維として繊維径が20μm以上の延伸ポリエステル繊維のみを含有する比較例1の半透膜用支持体は、膜塗布面の繊維間の空隙が大きくなり、均一性が低下するため、半透膜溶液の浸透が均一でなく、浸透した膜のアンカー効果も弱く、半透膜用支持体と半透膜との接着強度も悪かった。
【0088】
主体繊維として繊維径が25μm以上の延伸ポリエステル繊維を含有していない比較例4及び5の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体は、濾過膜の通水性が悪かった。
【0089】
バインダー繊維として結晶性芯鞘型ポリエステル複合繊維を含有していない比較例6~8の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体は、膜塗布面が緻密となり、半透膜溶液の支持体への浸透が抑制され、半透膜用支持体とフレーム材との接着強度及び濾過膜の通水性が悪かった。また、比較例6及び7の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体では、繊維分散均一性も悪かった。
【0090】
バインダー繊維として未延伸ポリエステル繊維を含有していない比較例9及び10の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体は、膜塗布面の繊維間の空隙が大きく、均一性が低下したため、濾過膜の通水性が悪かった。また、溶融部分が減少したことによる強度不足により、半透膜用支持体の耐久性も悪かった。
【0091】
抄紙フェルト面が膜塗布面である比較例11~13の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体は、膜塗布面の繊維間の空隙の均一性と平滑性が低下し、半透膜表面の凹凸が発生しやすくなるため、半透膜用支持体と半透膜との接着強度及び濾過膜の通水性が悪かった。
【0092】
フラジール通気度が20.0cm3/cm2・s超である比較例14及び17の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体は、半透膜用支持体の耐久性が悪かった。また、半透膜溶液の裏抜けも発生しやすい傾向があった。フラジール通気度が8.0cm3/cm2・s未満である比較例15及び16の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体は、膜塗布面と半透膜用支持体内部の空隙が少なくなり、半透膜溶液の半透膜用支持体への浸透が抑制され、半透膜用支持体と半透膜との接着強度及び濾過膜の通水性が悪かった。
【0093】
内部結合強度が290mJ未満である比較例18及び19の膜分離活性汚泥処理用半透膜用支持体は、半透膜用支持体の耐久性が悪かった。また、半透膜用支持体とフレーム材との接着強度評価では、試験中に支持体内部で分層が発生し、フレーム材との接着強度が測定不可能であり、評価Dレベルであった。