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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092151
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】環境モニタリング装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/04 20060101AFI20230626BHJP
   G01N 27/00 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
G01N17/04
G01N27/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207176
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】514159162
【氏名又は名称】株式会社シュリンクス
(74)【代理人】
【識別番号】100081709
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴若 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智康
(72)【発明者】
【氏名】西條 康彦
【テーマコード(参考)】
2G050
2G060
【Fターム(参考)】
2G050AA01
2G050BA02
2G050BA03
2G050BA05
2G050EB02
2G050EC01
2G060AA10
2G060AD04
2G060AE28
2G060AF13
2G060AG03
2G060AG15
2G060EA08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アノードとカソードとの間に流れる電流の出力を得るセンサの出力を蓄電することで、電源として利用可能であり、かつ簡単な構成でセンサの寿命を延ばし、計測が安定化する。
【解決手段】環境モニタリング装置1は、アノードとカソードとの間に流れる電流の出力を得るACMセンサ10と、ACMセンサ10で発生する電流を計測する電流計20と、電流を蓄電するバッテリー30と、を備え、バッテリー30は、蓄電により電源として利用可能である。電流計20に並列に接続する分流器21を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードとカソードとの間に流れる電流の出力を得るセンサと、
前記センサで発生する電流を計測する電流計と、
前記電流を蓄電するバッテリーと、を備え、
前記バッテリーは、蓄電により電源として利用可能であることを特徴とする環境モニタリング装置。
【請求項2】
前記電流計に並列に接続する分流器を備えることを特徴とする請求項1に記載の環境モニタリング装置。
【請求項3】
前記センサを複数個備え、
前記複数個のセンサに対応して電流計及びバッテリーを備え、
前記それぞれのバッテリーは、蓄電により電源として利用可能であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の環境モニタリング装置。
【請求項4】
前記センサを複数個備え、
前記複数個のセンサに対応して電流計を備え、
前記複数個のセンサは、電気的に直列接続された構成であり、
前記バッテリーは、電気的に直列接続された前記複数個のセンサの腐食電流を蓄電することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の環境モニタリング装置。
【請求項5】
前記センサを複数個備え、
前記複数個のセンサに対応して電流計を備え、
前記複数個のセンサは、発生する電流が所定以上のセンサを電気的に直列接続された構成であり、
前記バッテリーは、電気的に直列接続された前記複数個のセンサの電流を蓄電することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の環境モニタリング装置。
【請求項6】
前記センサを複数個備え、
前記複数個のセンサに対応して電流計を備え、
前記複数個のセンサは、電気的に並列接続された構成であり、
前記バッテリーは、電気的に並列接続された前記複数個のセンサの電流を蓄電することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の環境モニタリング装置。
【請求項7】
バッテリーを外部電源として利用可能にする切替手段を備え、
前記切替手段は、前記バッテリーの蓄電と、前記電源としての利用とに切替可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の環境モニタリング装置。
【請求項8】
前記電源は、腐食環境を監視する他のセンサの電源を構成することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の環境モニタリング装置。
【請求項9】
前記電源は、別に配置されたセンサの逆流電源を構成することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の環境モニタリング装置。
【請求項10】
電流を蓄電する前記バッテリーを備えるバッテリー充電回路と、
電流を計測する前記電流計を備える計測回路と、
前記バッテリーの蓄電を電源として利用する電源回路と、を備え、
切替スイッチにより前記バッテリー充電回路と前記電源回路とに切り替えることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の環境モニタリング装置。
【請求項11】
電流を蓄電する前記バッテリーを備えるバッテリー充電回路と、
電流を計測する前記電流計を備える計測回路と、
前記バッテリーの蓄電を電源として利用する電源回路と、を備え、
前記バッテリー充電回路、前記計測回路及び前記電源回路は、制御手段により開閉制御される構成であることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の環境モニタリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、構造物の腐食環境をモニタリングする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長期間にわたって腐食環境に曝される構造物、例えば橋梁、標識、街灯、水門、送電鉄塔、船舶・自動車および樋門などは、大気に存在する水分、酸素、腐食性ガスおよび塩類などの要因により腐食が進行するため、定期的に腐食状況を点検し、所定の耐久性を維持させる必要がある。そこで、構造物の腐食状況を把握するために、構造物の腐食環境性を測定する腐食測定装置が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、絶縁部を介して二つの異種金属を配置し、大気中に存在する水分で両金属間が連結されたことに起因して流れる電流値を測定する、いわゆるガルバニック対を利用したACMセンサ(Atmospheric Corrosion Monitor)が提案されている。このACMセンサは、例えば、炭素鋼板を切り出してアノードとし、このアノード上に絶縁部を介してカソードを塗布することにより形成されている。このACMセンサは、ガルバニックカップルの間に水分が付着し、これによりアノードとカソードとの間に流れる電流を測定することで、構造物の腐食環境性を高精度に測定することができる。
【0004】
また、例えば、非特許文献1には、「大気腐食はどこまでわかってきたかACMセンサを利用して」として、ACMセンサの原理及びACMセンサの実用化あるいは同センサによる種々の大気環境の腐食性評価法についての開示がある。
【0005】
このACMセンサは、自己腐食型のセンサであるので、アノードを構成する基板である炭素鋼などの腐食が生じることで、さび層の腐食抑制効果や、絶縁層の剥離が生じ、センサ性能を維持できないため、センサの寿命を延ばすことが必要とされる。
【0006】
このACMセンサの寿命を延ばすものとして、例えば腐食進行を検知し、その時だけセンサ電流を計測するもの(特許文献2)、また、可変抵抗を入れて、センサ電流を減衰させるもの(特許文献2)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-33470号公報
【特許文献2】特開2011-137759号公報
【特許文献3】特開2011-137760号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】独立法人 物質・材料研究機構 http://www.nims.go.jp/corrosion/ACM/cr.htm 「大気腐食はどこまでわかってきたかACMセンサを利用して」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、アノードとカソードとの間に流れる電流の出力を得るセンサでは、常時閉回路(ガルバニック)とするため、センサの寿命が短くなっている。このセンサの寿命を延ばすものとして、例えば腐食進行を検知し、その時だけセンサ電流を計測するものでは、回路構成が複雑になる。また、可変抵抗を入れて、センサ電流を減衰させるものでは、延命化するために単純に抵抗をかませてしまうと、センサの腐食挙動そのものが変わってしまう恐れがある。
【0010】
さらに、センサ電流を測定するものでは、電源を必要とするが、電源が離れた箇所での測定には、長いケーブルや大容量バッテリーが必要であった。
【0011】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、アノードとカソードとの間に流れる電流の出力を得るセンサの出力を蓄電することで、電源として利用可能であり、かつ簡単な構成でセンサの寿命を延ばし、計測が安定化する環境モニタリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成した。
【0013】
請求項1に記載の発明は、
アノードとカソードとの間に流れる電流の出力を得るセンサと、
前記センサで発生する電流を計測する電流計と、
前記電流を蓄電するバッテリーと、を備え、
前記バッテリーは、蓄電により電源として利用可能であることを特徴とする環境モニタリング装置である。
【0014】
請求項2に記載の発明は、
前記電流計に並列に接続する分流器を備えることを特徴とする請求項1に記載の環境モニタリング装置である。
【0015】
請求項3に記載の発明は、
前記センサを複数個備え、
前記複数個のセンサに対応して電流計及びバッテリーを備え、
前記それぞれのバッテリーは、蓄電により電源として利用可能であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の環境モニタリング装置である。
【0016】
請求項4に記載の発明は、
前記センサを複数個備え、
前記複数個のセンサに対応して電流計を備え、
前記複数個のセンサは、電気的に直列接続された構成であり、
前記バッテリーは、電気的に直列接続された前記複数個のセンサの腐食電流を蓄電することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の環境モニタリング装置である。
【0017】
請求項5に記載の発明は、
前記センサを複数個備え、
前記複数個のセンサに対応して電流計を備え、
前記複数個のセンサは、発生する電流が所定以上のセンサを電気的に直列接続された構成であり、
前記バッテリーは、電気的に直列接続された前記複数個のセンサの電流を蓄電することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の環境モニタリング装置である。
【0018】
請求項6に記載の発明は、
前記センサを複数個備え、
前記複数個のセンサに対応して電流計を備え、
前記複数個のセンサは、電気的に並列接続された構成であり、
前記バッテリーは、電気的に並列接続された前記複数個のセンサの電流を蓄電することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の環境モニタリング装置である。
【0019】
請求項7に記載の発明は、
バッテリーを外部電源として利用可能にする切替手段を備え、
前記切替手段は、前記バッテリーの蓄電と、前記電源としての利用とに切替可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の環境モニタリング装置である。
【0020】
請求項8に記載の発明は、
前記電源は、腐食環境を監視する他のセンサの電源を構成することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の環境モニタリング装置である。
【0021】
請求項9に記載の発明は、
前記電源は、別に配置されたセンサの逆流電源を構成することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の環境モニタリング装置である。
【0022】
請求項10に記載の発明は、
電流を蓄電する前記バッテリーを備えるバッテリー充電回路と、
電流を計測する前記電流計を備える計測回路と、
前記バッテリーの蓄電を電源として利用する電源回路と、を備え、
切替スイッチにより前記バッテリー充電回路と前記電源回路とに切り替えることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の環境モニタリング装置である。
【0023】
請求項11に記載の発明は、
電流を蓄電する前記バッテリーを備えるバッテリー充電回路と、
電流を計測する前記電流計を備える計測回路と、
前記バッテリーの蓄電を電源として利用する電源回路と、を備え、
前記バッテリー充電回路、前記計測回路及び前記電源回路は、制御手段により開閉制御される構成であることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の環境モニタリング装置である。
【発明の効果】
【0024】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0025】
請求項1乃至請求項11に記載の発明では、アノードとカソードとの間に流れる電流の出力を得るセンサと、センサで発生する電流を計測する電流計と、電流を蓄電するバッテリーと、を備え、バッテリーは、蓄電により電源として利用可能であり、かつ簡単な構成でセンサの寿命を延ばし、計測が安定化する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1の実施形態の環境モニタリング装置を示す図である。
図2】第2の実施形態の環境モニタリング装置を示す図である。
図3】第3の実施形態の環境モニタリング装置を示す図である。
図4】第4の実施形態の環境モニタリング装置を示す図である。
図5】第5の実施形態の環境モニタリング装置を示す図である。
図6】第6の実施形態の環境モニタリング装置を示す図である。
図7】第7の実施形態の環境モニタリング装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明の環境モニタリング装置の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。
【0028】
(第1の実施形態)
この実施の形態の環境モニタリング装置は、図1(a),(b)のように構成される。この環境モニタリング装置1は、 構造物の腐食環境をモニタリングする装置であり、長期間にわたって自然環境に曝される構造物、例えば橋梁、標識、街灯、水門、送電鉄塔、船舶・自動車および樋門などに設置される。
【0029】
この環境モニタリング装置1は、アノードとカソードとの間に流れる電流の出力を得るACMセンサ10と、ACMセンサ10で発生する腐食電流を計測する電流計20と、腐食電流を蓄電するバッテリー30と、を備え、電流計20及びバッテリー30は、ロガー40に配置される。アノードとカソードとの間に流れる電流の出力を得るセンサとしては、いわゆるガルバニック対を利用したACMセンサ(Atmospheric Corrosion Monitor)、異種金属を離した状態で電流を計測できるセンサ(特開2018―80984参照)等があるが、この実施の形態では、ACMセンサ10を用いており、このACMセンサ10が発生する電流・電圧の出力を、バッテリー30に充電する構成である。バッテリー30は、電源ケーブルを設置できないようなケース(鉄筋コンクリート)では、ACMセンサ10と一緒に埋設することができる。アノードとカソードとの間に流れる電流の出力を得るセンサとしては、腐食電流の出力するACMセンサを用いているが、腐食ではないアノード反応として、水素吸蔵合金の水素放出を行う水素吸蔵合金を利用したセンサを用いることも可能である。
【0030】
ACMセンサ10は、アノード11と、このアノード11上に絶縁部12を介してカソード13が形成される構成である。アノード11は、例えば、鉄板、亜鉛めっき鋼板、銅板、亜鉛板、アルミ板、マグネシウム板、錫板、ニッケル板、クロム板などが用いられ、メッキ、合金であってもよい。カソード13は、銀、カーボン、銅、金、白金などが用いられ、樹脂ペーストによる成形、もしくは、スパッタ、蒸着により積層したものである。例えば、絶縁部12の表面にカソード13を、導電性ペーストをスクリーン印刷して熱硬化させて成形し、絶縁部12は、アノード11とカソード13とを絶縁する。
【0031】
このACMセンサ10は、ガルバニックカップルの間に水分14が付着し、これによりアノード11とカソード13との間に電流が流れ、この電流を電流計20により測定する。このように環境モニタリング装置1は、構造物の腐食環境性を高精度に測定することができ、測定した出力に基づき環境モニタリングを得る。
【0032】
この実施の形態では、バッテリー30が電流計20に並列に接続され、ACMセンサ10の出力(電流・電圧)を蓄電し、バッテリー30は、抵抗接続するだけでは熱ロスになるだけなので電流を充電して有効活用する。即ち、蓄電により電源として利用可能である。
【0033】
ACMセンサ10は、通常は無抵抗状態であるが、バッテリー30に充電することで、電力取り出し時には抵抗により腐食電流が減少するため、センサの延命化する。また、バッテリー30が抵抗接続することになり、ACMセンサ10の腐食電流を軽減でき、カソード反応を最低限、不連続にさせないことで、簡単な構成で、センサの延命化が可能である。
【0034】
この環境モニタリング装置1は、電流計20に接続する分流器21を備える(図1(b))。この分流器21は、電流計20の測定範囲を拡大するために、電流計20に接続する抵抗である。バッテリー30が電流計20に接続されることで、例えば、所定値まで測定できる電流計20があるとして、これをそのまま使うと所定値を超える電流となり測定できないが、この電流計20に分流器21として抵抗を接続すると、回路に流れる電流は電流計20と分流器21に分流するので、回路に流れる電流が所定値を超えても電流を測定できる。
【0035】
(第2の実施形態)
この実施の形態の環境モニタリング装置は、図2のように構成される。この環境モニタリング装置1は、 ACMセンサ10を複数個備え、複数個のACMセンサ10に対応して電流計20及びバッテリー30を備える。複数個のACMセンサ10で発生する腐食電流を、それぞれの電流計20で単独に計測する。それぞれの電流計20には、バッテリー30が並列に接続され、ACMセンサ10の出力(電流・電圧)を蓄電し、電流計20に対応してバッテリー30を備えることで、それぞれのバッテリー30は、蓄電により電源として利用可能である。
【0036】
(第3の実施形態)
この実施の形態の環境モニタリング装置は、図3(a),(b)のように構成される。この環境モニタリング装置1は、第2の実施形態と同様に、ACMセンサ10を複数個備え、 複数個のACMセンサ10に対応して電流計20を備えるが、複数個のACMセンサ10は、電気的に直列接続された構成である(図3(a))。
【0037】
バッテリー30は、電気的に直列接続された複数個のACMセンサ10の腐食電流を蓄電することができる。このように、複数個のACMセンサ10を、単純に直列化することで、ACMセンサ10が1つでは充電に足りないことがあっても、全てのACMセンサ10に同程度の腐食電流であればよく、電気的に直列接続された複数個のACMセンサ10の腐食電流を蓄電する。
【0038】
また、環境モニタリング装置1は、ACMセンサ10を複数個備え、複数個のACMセンサ10に対応して電流計20を備え、複数個のACMセンサ20は、発生する腐食電流が所定以上のACMセンサを電気的に直列接続された構成とする(図3(b))。
【0039】
ACMセンサを電気的に直列接続された回路では、どこでも同じ電流が流れるために、複数個のACMセンサ20は、発生する腐食電流が所定以上のACMセンサ10を電気的に直列接続し、発生する腐食電流が小さいACMセンサ10は直列接続しないようにし、バッテリー30は、電気的に直列接続された複数個のACMセンサ10の腐食電流を蓄電する。
【0040】
(第4の実施形態)
この実施の形態の環境モニタリング装置は、図4(a),(b)のように構成される。図4(a)において、環境モニタリング装置1は、第2の実施形態と同様に、ACMセンサ10を複数個備え、複数個のACMセンサ10に対応して電流計20を備え、電流計20に並列に接続する分流器21を備える。
【0041】
複数個のACMセンサ10は、電気的に並列接続された構成であり、バッテリー30は、マイナス側がそれぞれの分流器21の一方を介して、同様にプラス側がそれぞれの分流器21の他方を介して、それぞれのACMセンサ10に接続されている。このように、バッテリー30は、電気的に並列接続された複数個のACMセンサ10の腐食電流を蓄電する構成であり、ACMセンサ10を並列化することで電流を増加させることも可能である。
【0042】
図4(b)において、環境モニタリング装置1は、図4(a)の実施形態と同様に構成され、バッテリー30を外部電源として利用可能にする切替手段50を備える。この切替手段50は、制御手段51により制御され、例えば所定時間、所定日数によってバッテリー30の蓄電と、電源としての利用と、に切替可能である。
【0043】
電源としては、腐食環境を監視する他のセンサの電源を構成することができ、他のセンサは、例えば電気抵抗式腐食センサとしてRCMセンサ60を用いることができる。電気抵抗式腐食センサは、金属の電気抵抗を利用したものであり、金属の電気抵抗は金属の種類と長さと断面積により決まり、そのため電気抵抗値を計測すれば断面積を求めることができ、腐食による減肉量が推定できる。
図4(b)の実施形態においては、ACMセンサ10の電流と、RCMセンサ60に流す電流を同期(増減)させると、電流計20による計測が安定化する。
【0044】
(第5の実施形態)
この実施の形態の環境モニタリング装置は、図5(a),(b)のように構成される。
【0045】
この環境モニタリング装置1は、図4(a)の実施形態と同様に構成され、電源は、別に配置されたACMセンサ10の逆流電源を構成する。逆流電源は、ACMセンサ10のアノード11とカソード13の間に設けた逆電流スイッチ61で構成され、別のACMセンサ10にあえて逆電流をかけて延命化させるときの電流源とする。
【0046】
(第6の実施形態)
この実施の形態の環境モニタリング装置は、図6(a),(b),(c)のように構成される。図6(a)において、腐食電流を蓄電するバッテリー30を備えるバッテリー充電回路Aと、腐食電流を計測する電流計20を備える計測回路Bと、バッテリー30の蓄電を電源として利用する電源回路Cと、を備える。
【0047】
バッテリー30は、コンデンサーで構成され、切替スイッチ70によりバッテリー充電回路Aと電源回路Cとに切り替える。切替スイッチ70を充電側に接続することで、コンデンサーに充電し、放電側に接続することで放電し、コンデンサーで充放電するが、図6(a)においては、充電は腐食電流を計測していない期間を前提として放電するタイミングは、コンデンサー30が所定電圧に到達し、かつ、受け手の電源側が満充電ではない状態に実行する。
【0048】
図6(b)において、図6(a)の実施形態と同様に、腐食電流を蓄電するバッテリー30を備えるバッテリー充電回路Aと、腐食電流を計測する電流計20を備える計測回路Bと、バッテリー30の蓄電を電源として利用する電源回路Cと、を備える。
【0049】
バッテリー30は、コンデンサーで構成され、切替スイッチ70によりバッテリー充電回路Aと電源回路Cとに切り替える。切替スイッチ70を充電側に接続することで、コンデンサーに充電し、放電側に接続することで放電し、コンデンサーで充放電するが、切替スイッチ70によるスイッチを繰り返すとコンデンサーにより大きな電圧を蓄えられる。図6(b)においては、昇圧するための切替スイッチ70の繰り返し動作を示しており、腐食電流を計測していない期間を前提としてコンデンサーが所定の電圧に到達するまで実行する。
【0050】
図6(c)において、環境モニタリング装置1は、図4(a)の実施形態と同様に構成され、図6(a)の実施形態と同様に、腐食電流を蓄電するバッテリー30を備えるバッテリー充電回路Aと、腐食電流を計測する電流計20を備える計測回路Bと、バッテリー30の蓄電を電源として利用する電源回路Cと、を備える。
【0051】
バッテリー30は、コンデンサーで構成され、切替スイッチ70によりバッテリー充電回路Aと電源回路Cとに切り替える。切替スイッチ70を充電側に接続することで、コンデンサーに充電し、放電側に接続することで放電し、コンデンサーで充放電するが、図6(c)においては、充電は腐食電流を計測していない期間を前提として放電するタイミングは、図6(a)と同じように実施される。
【0052】
(第7の実施形態)
この実施の形態の環境モニタリング装置は、図7のように構成される。この環境モニタリング装置1は、腐食電流を蓄電するバッテリー30を備えるバッテリー充電回路Aと、腐食電流を計測する電流計20を備える計測回路Bと、バッテリー30の蓄電を電源として利用する電源回路Cと、を備える。
【0053】
バッテリー充電回路Aには、開閉スイッチSW1が、計測回路Bには、開閉スイッチSW2が、電源回路Cには、開閉スイッチSW3がそれぞれ設けられ、開閉スイッチSW1、開閉スイッチSW2及び開閉スイッチSW3が、制御手段51により開閉制御される構成である。
【0054】
例えば、開閉スイッチSW1がONすると、バッテリー充電回路Aによりバッテリー30に充電し、開閉スイッチSW2がONすると、計測回路Bにより電流計20が計測し、開閉スイッチSW3がONすると、電源回路Cによりバッテリー30に蓄電した電力を電流計20に供給する。この制御手段51による開閉スイッチSW1、開閉スイッチSW2及び開閉スイッチSW3の開閉は、出力計測するタイミング(測定間隔)が一定となる場合、タイマーによる制御で周期的な動作を与えるものとする。また、バッテリー30の充電状態を把握し、残量が少ないと判断した場合は充電し、残量が十分な場合は、電源利用するといった切り替えを行う。
【産業上の利用可能性】
【0055】
この発明は、構造物の腐食環境をモニタリングする装置に適用でき、アノードとカソードとの間に流れる電流の出力を得るセンサの出力を蓄電することで、電源として利用可能であり、かつ簡単な構成でセンサの寿命を延ばし、計測が安定化する。
【符号の説明】
【0056】
1 環境モニタリング装置
10 ACMセンサ
11 アノード
12 絶縁部
13 カソード
14 水分
20 電流計
21 分流器
30 バッテリー
40 ロガー
50 切替手段
51 制御手段
60 電気抵抗式腐食センサ(RCMセンサ)
70 切替スイッチ
A バッテリー充電回路
B 計測回路
C 電源回路
SW1~SW3 開閉スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7