(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092181
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】歩行訓練器
(51)【国際特許分類】
A63B 22/16 20060101AFI20230626BHJP
A61H 1/02 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
A63B22/16
A61H1/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207237
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100177644
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 和樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 英一
【テーマコード(参考)】
4C046
【Fターム(参考)】
4C046AA22
4C046AA45
4C046AA47
4C046BB07
4C046CC01
4C046DD07
4C046DD33
4C046EE25
4C046EE32
(57)【要約】
【課題】重心移動を伴う歩行を安定して行うことができる歩行訓練器を提供する。
【解決手段】
使用者90が歩行訓練を行うための歩行訓練器1は、路面GLと接触する接地面11A、および使用者90が載って歩行する歩行面12Aを含む回動体10と、回動体10の左右両側に立設され、使用者90に把持される一対の支承体15と、を備え、接地面11Aと歩行面12Aとは、歩行面12Aの上に起立した使用者90の肩関節を中心点Pとした円弧状に形成され、回動体10は、支承体15を把持した使用者90の歩行に伴って路面GLに接触しながら中心点Pまわりに回動する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が歩行訓練を行うための歩行訓練器であって、
路面と接触する接地面、および前記使用者が載って歩行する歩行面を含む回動体と、
前記回動体の左右両側に立設され、前記使用者に把持される一対の支承体と、を備え、
前記接地面と前記歩行面とは、前記歩行面の上に起立した前記使用者の肩関節を中心点とした円弧状に形成され、
前記回動体は、前記支承体を把持した前記使用者の歩行に伴って前記路面に接触しながら前記中心点まわりに回動することを特徴とする歩行訓練器。
【請求項2】
各々の前記支承体は、
前記回動体の左右両側に立設される少なくとも1つの支柱部と、
前記支柱部の上端部に連設され、前記使用者に把持される把持部と、を有し、
各々の前記把持部は、前記接地面と同心となる円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の歩行訓練器。
【請求項3】
前記歩行面を歩行する前記使用者の膝に当接するように左右一対の前記支柱部の間に架設される当接部を更に備えていることを特徴とする請求項2に記載の歩行訓練器。
【請求項4】
前記歩行面には、前記使用者の足裏を刺激する凹凸が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の歩行訓練器。
【請求項5】
前記回動体の揺動回数を計測して表示するカウンタを更に備えていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の歩行訓練器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者が歩行訓練を行うための歩行訓練器である。
【背景技術】
【0002】
足を広げて乗れる大きさの天板と、天板の揺動を左右方向のみにする支持部と、を備えたバランストレーニング器具が知られている(特許文献1)。天板は、平らな板であり、支持部の上に固定されている。支持部の底面中央には天板を水平に保つための平面部が形成され、支持部の底面両端には接地面が形成されている。天板上に載った使用者の重心は、支持部の揺動(回動)の中心点よりも上方に位置している。天板上に載った使用者は、天板を水平に維持したり最大限に傾けたりを繰り返すことでトレーニングを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した器具では、使用者の重心が支持部の回動の中心点よりも上方に位置するため、天板(支持部)が傾き始めると、天板を更に傾ける方向に力(傾倒力)が働き、天板を水平に戻そうとする復元力が働かない。そのため、天板(支持部)は、傾き始めると一気に最大限に傾いた姿勢になりやすく、上記した器具は、急激かつ不安定に揺動し易い構造であった。十分な筋力をもつ使用者であれば、上記した傾倒力に逆らって天板を揺動させることができ、有効なトレーニングを行うことができる。しかしながら、筋力が低下している使用者では、上記した傾倒力に逆らって天板を揺動させることや、急激かつ不安定な揺動に対処することが困難であり、有効なトレーニングを行うことができなかった。
【0005】
本発明は、上記事情を考慮し、重心移動を伴う歩行を安定して行うことができる歩行訓練器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、使用者が歩行訓練を行うための歩行訓練器であって、路面と接触する接地面、および前記使用者が載って歩行する歩行面を含む回動体と、前記回動体の左右両側に立設され、前記使用者に把持される一対の支承体と、を備え、前記接地面と前記歩行面とは、前記歩行面の上に起立した前記使用者の肩関節を中心点とした円弧状に形成され、前記回動体は、前記支承体を把持した前記使用者の歩行に伴って前記路面に接触しながら前記中心点まわりに回動する。
【0007】
この場合、各々の前記支承体は、前記回動体の左右両側に立設される少なくとも1つの支柱部と、前記支柱部の上端部に連設され、前記使用者に把持される把持部と、を有し、各々の前記把持部は、前記接地面と同心となる円弧状に形成されてもよい。
【0008】
この場合、前記歩行面を歩行する前記使用者の膝に当接するように左右一対の前記支柱部の間に架設される当接部を更に備えてもよい。
【0009】
この場合、前記歩行面には、前記使用者の足裏を刺激する凹凸が設けられてもよい。
【0010】
この場合、前記回動体の揺動回数を計測して表示するカウンタを更に備えてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、使用者が重心移動を伴う歩行を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る歩行訓練器および使用者を示す側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る歩行訓練器および使用者を示す正面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る歩行訓練器の使用方法(往路歩行開始前)を説明する側面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る歩行訓練器の使用方法(回動開始姿勢)を説明する側面図(一部断面図)である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る歩行訓練器の使用方法(歩行開始直後)を説明する側面図(一部断面図)である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る歩行訓練器の使用方法(回動中間姿勢)を説明する側面図(一部断面図)である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る歩行訓練器の使用方法(歩行中)を説明する側面図(一部断面図)である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る歩行訓練器の使用方法(回動終了姿勢)を説明する側面図(一部断面図)である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る歩行訓練器の使用方法(復路歩行開始前)を説明する側面図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る歩行訓練器の他の使用方法(歩行訓練方法)を説明する正面図(一部断面図)である。
【
図11】本発明の一実施形態の第1変形例に係る歩行訓練器および使用者を示す正面図である。
【
図12】本発明の一実施形態の第2変形例に係る歩行訓練器を示す側面図(一部断面図)である。
【
図13】本発明の一実施形態の第3変形例に係る歩行訓練器を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、図面に示すFr、Rr、L、R、U、Dは、前、後、左、右、上、下を示している。本明細書では方向や位置を示す用語を用いるが、それらの用語は説明の便宜のために用いるものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、本明細書で用いる方向や位置は、原則として、使用者から見た方向や位置としている。
【0014】
[歩行訓練器]
図1および
図2を参照して、歩行訓練器1について説明する。
図1は歩行訓練器1および使用者90を示す側面図である。
図2は歩行訓練器1および使用者90を示す正面図である。
【0015】
歩行訓練器1は、使用者90が歩行訓練を行うための器具である。歩行訓練器1は、例えば、高齢者等の脚力が衰えた者や下肢等に障害をもつ者(使用者90)により使用される。なお、歩行訓練器1は、原則として、屋内で使用される。
【0016】
歩行訓練器1は、回動体10と、一対の支承体15と、を備えている。回動体10は、路面GL上に配置され、使用者90が載って1歩以上歩くことができる程度の大きさに形成されている。一対の支承体15は、回動体10の左右両側に立設され、互いに平行に配置されている。一対の支承体15の間隔は、例えば、使用者90の肩幅よりも若干広く設定されている。なお、一対の支承体15は、左右対称となる構造であるため、以下の説明では、主に1つの支承体15について説明する。
【0017】
<回動体>
回動体10は、一対の接地部11と、床部12と、を有している。
【0018】
(接地部)
一対の接地部11は、例えば、スチールやアルミニウム合金等の金属製のパイプ状の部材で形成されている。一対の接地部11は、左右方向に間隔をあけ、互いに平行に配置されている。各々の接地部11は、側面から見て、下方に膨出するように湾曲している(
図1参照)。各々の接地部11の下面は、路面GLと接触する接地面11Aとされている。歩行訓練器1に外力を加えていない状態で、接地面11A(接地部11)は、前後方向の略中央(円弧の頂点)で路面GLに接触する。なお、接地面11Aには、合成ゴム等から成る滑り止めが取り付けられてもよい(図示せず)。
【0019】
(床部)
床部12は、例えば、スチールやアルミニウム合金等の金属製の板状の部材で形成されている。床部12は、一対の接地部11の間に架設され、一対の接地部11に溶接等の手段によって接合されている。床部12は、接地部11と同様に、側面から見て、下方に膨出するように湾曲している(
図1参照)。床部12の上面は、使用者90が載って歩行する歩行面12Aとされている。なお、歩行面12Aには、合成ゴム等から成る滑り止めが取り付けられてもよい(図示せず)。
【0020】
図1に示すように、接地面11A(接地部11)と歩行面12A(床部12)とは、歩行面12Aの上に起立した使用者90の肩関節を中心点Pとした円弧状に形成されている。使用者90の肩関節から接地面11Aまでの距離(半径R3)および使用者90の肩関節から歩行面12Aまでの距離(半径R2)は、それぞれ、前後方向の何れの位置であっても一定(同一)とされている。接地面11Aは、歩行面12Aと同心で、且つ歩行面12Aよりも大径となる円弧状に形成されている(R3>R2)。
【0021】
図1および
図2に示すように、支承体15は、一対の支柱部16と、把持部17と、を有している。各支柱部16および把持部17は、例えば、スチールやアルミニウム合金等の金属製のパイプ状の部材で形成されている。接地部11、一対の支柱部16および把持部17は、例えば、溶接等の手段によって接合され、側面から見て、略扇形の枠状に形成されている。
【0022】
(支柱部)
一対の支柱部16は、回動体10の左右両側に立設されている。一対の支柱部16は、接地部11の前後両端から中心点Pに向かって延設され、略「ハ」字状に設けられている(
図1参照)。
【0023】
(把持部)
図1に示すように、把持部17は、一対の支柱部16の上端部の間に架設(連設)されている。把持部17は、歩行面12A上に起立した使用者90が把持することができる高さに配置されている。把持部17は、接地部11と同様に、側面から見て、下方に膨出するように湾曲している。詳細には、把持部17は、歩行面12A上に起立した使用者90の肩関節を中心点Pとした円弧状に形成されている。つまり、把持部17は、接地面11Aと同心となる円弧状に形成されている。使用者90の肩関節から把持部17(の中心線(
図1の一点鎖線参照))までの距離(半径R1(<R2<R3))は、前後方向の何れの位置であっても一定(同一)とされている。なお、把持部17の一部または全部には、使用者90が握り易いようにラバーグリップが巻き付けられてもよい(図示せず)。
【0024】
なお、「中心点P」は、厳密に使用者90の肩関節の位置に限定されるものではなく、概ね肩関節の辺りに位置していればよく、肩関節から10~30mm程度ずれていてもよい。また、言うまでもないが、起立時および歩行時における使用者90の重心Gは、概ね骨盤辺りに位置しており、中心点P(肩関節)よりも下方に位置している。また、接地部11、床部12および把持部17の円弧の長さ、各支柱部16の長さ(高さ)、把持部17の高さ(半径R1)、把持部17の太さ等、各種寸法は、使用者90の体格(身長、腕91・脚92の長さ等)、筋力(歩幅)、嗜好等に応じて個別に設定されることが好ましい。また、接地部11、床部12、支柱部16および把持部17は、金属製に限らず、合成樹脂製または木製であってもよい。また、各部材の接合手段は、溶接に限らず、ネジ止め等、適宜変更してもよい。
【0025】
[歩行訓練器の使用方法]
図3ないし
図8を参照して、歩行訓練器1の使用方法(歩行訓練方法)について説明する。
図3ないし
図8は歩行訓練器1の使用方法を説明する側面図である。なお、
図4ないし
図8では、回動体10の断面を示している。
【0026】
まず、使用者90が後方から前方に向かって歩行(往路歩行)する場合について説明する。
図3に示すように、訓練開始前の使用者90は、例えば、歩行訓練器1よりも後方で、路面GL上に起立する。
【0027】
図4に示すように、使用者90は、左右一対の支承体15の間に向けて前方へ進み、両手で左右一対の把持部17を掴み、床部12の歩行面12A上に載る。この際、使用者90は、歩行面12Aの後部に起立し、腕91を僅かに曲げ、体幹(胴)よりも前方で各把持部17の中央辺りを把持している。歩行訓練器1は、接地面11Aの前部を路面GLから離間させ、接地面11Aの後部を路面GLに接触させた回動開始姿勢S1になる。なお、各接地部11(接地面11A)は、使用者90の重心G(骨盤辺り)から下した垂線と交差する位置で路面GLと接触している。換言すれば、路面GLと接地面11Aの接触点と、使用者90の重心Gとは、同一垂線上に位置している。
【0028】
次に、
図5に示すように、使用者90は、両手で一対の把持部17を把持したまま、一方の脚92を前方へ振り出して歩行面12Aを踏み込む。つまり、使用者90は、両脚92を前後に広げて歩行を開始する。使用者90が前方へ出した脚92で歩行面12Aを踏み込むことで、回動体10は前方へ転がり始める。このように、回動体10は、支承体15(把持部17)を把持した使用者90の歩行に伴って路面GLに接触しながら中心点Pまわりに回動する。把持部17は接地部11と同心となる円弧状であるため、接地部11(回動体10)が回動したとしても、把持部17の高さは一定である。このため、使用者90は、高さの変わらない把持部17を把持し続けることができる。なお、厳密には、使用者90が歩行することで、肩関節(中心点P)の位置は若干上下に振動するが(
図4~
図8に示す中心点Pと一対の一点鎖線の交点とを参照)、その振幅は把持部17を把持し続けることが困難になるほど大きくはないため、本明細書では、中心点P(使用者90の肩関節)の高さは概ね一定であると考え、半径R1~R3(
図1参照)も概ね一定であると考えることとする。
【0029】
使用者90が歩行面12Aを踏み込み続けると、
図6に示すように、回動体10は、更に前方へ転がり、歩行訓練器1は、接地面11Aの前後両側を路面GLから離間させ、接地面11Aの中間部を路面GLに接触させた回動中間姿勢S2になる。使用者90は、腕91を僅かに曲げ、体幹(胴)の横で把持部17を握っている。
【0030】
使用者90が更に歩行面12Aを踏み込み続けると、
図7に示すように、回動体10は、更に前方に転がり、歩行訓練器1は、前方へ傾いた姿勢になる。使用者90は、腕91を僅かに曲げ、体幹(胴)の後方で把持部17を握っている。この状態で、歩行訓練器1は概ね回動を停止する。
【0031】
図8に示すように、使用者90は、前方へ出した脚92を支点に、後方の脚92を前方へ振り出し、歩行面12Aの前部に起立する。つまり、使用者90は、両脚92を揃えて歩行を停止する。歩行訓練器1は、接地面11Aの後部を路面GLから離間させ、接地面11Aの前部を路面GLに接触させた回動終了姿勢S3になる。
【0032】
図9に示すように、使用者90は、両手を一対の把持部17から離し、歩行面12Aから路面GLに降りる。以上によって、往路歩行が終了する。次に、使用者90は、路面GLで180度回転して後方を向き、前方から後方に向かって歩行(復路歩行)を開始する。なお、復路歩行は、歩行の向きが異なるだけで、上記した往路歩行と同様であるため、その詳細な説明は省略する。復路歩行では、往路歩行の回動開始姿勢S1と回動終了姿勢S3とが入れ替わる。すなわち、回動開始姿勢S1は、接地面11Aの後部を路面GLから離間させ、接地面11Aの前部を路面GLに接触させた姿勢となり(
図8参照)、回動終了姿勢S3は、接地面11Aの前部を路面GLから離間させ、接地面11Aの後部を路面GLに接触させた姿勢となる(
図4参照)。
【0033】
以降、上記した往路歩行と復路歩行とを交互に繰り返すことで、使用者90は継続的に歩行することができる。
【0034】
以上説明した本実施形態に係る歩行訓練器1では、接地面11Aと歩行面12Aとが、歩行面12Aの上に起立した使用者90の肩関節を中心点Pとした円弧状に形成されていた(
図1参照)。この構成によれば、使用者90の骨盤辺りに位置する重心Gは、中心点P(肩関節辺り)よりも下方に位置しているため、使用者90が歩行を開始し、回動体10が傾き始めると、その傾きを戻そうとする復元力が働く。そのため、回動体10を傾ける力(傾倒力)が弱められ、使用者90の歩行(重心移動)に伴って、ゆっくりと回動体10を回動させることができる。これにより、歩行訓練器1の揺動(回動)を緩やかで安定させることができ、使用者90は、重心移動を伴う歩行を安定して行うことができる。
【0035】
また、本実施形態に係る歩行訓練器1では、把持部17が、接地面11Aと同心となる円弧状に形成されていた(
図1参照)。この構成によれば、接地面11Aがどのような角度で路面GLに接していても、中心点P(肩関節)から把持部17までの距離(半径R1)を一定にすることができ、且つ中心点P(肩関節)から接地面11Aおよび歩行面12Aまでの距離(半径R2,R3)も一定にすることができる。これにより、把持部17を把持した使用者90は、前傾姿勢になったり、不必要に上下方向に振動したりすることなく、路面GL上を転がる回動体10に合わせて、重心移動を意識しながら円滑に効率良く歩行することができる。つまり、使用者90に重心移動を伴う歩行を促すことができる。
【0036】
なお、上記した歩行訓練方法では、使用者90が、歩行面12Aに載ったり降りたりを繰り返していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、使用者90は、前方(または後方)を向き、両脚92を前後方向に広げて歩行面12Aに載った状態のまま、両脚92を交互に踏み込むことで、回動体10を揺動(往復回動)させてもよい(他の歩行訓練方法(図示せず))。これにより、使用者90は、脚92を踏み変えることなく、回動体10を揺動させることができ、歩行に必要なバランス感覚を養うことができる。
【0037】
また、上記した他の歩行訓練方法では、使用者90が前方(または後方)を向いて、両脚92を前後方向に広げて歩行訓練器1(回動体10)を揺動させていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図10に示すように、使用者90は、横を向き、前方となる把持部17を両手で把持し、両脚92を肩幅程度に広げて歩行面12A上に立ち、重心Gを左右方向にずらすことで、歩行訓練器1(回動体10)を左右方向に揺動させてもよい。この場合であっても、重心Gの移動や身体の傾きに抗する感覚が繰り返し使用者90に与えられるため、左右方向のバランス感覚を養うことができる。
【0038】
[変形例]
次に、本実施形態に係る歩行訓練器1の各種変形例について説明する。なお、各変形例の説明では、上記した本実施形態に係る歩行訓練器1と同様の構成には同一の符号を付し、同様の説明は省略する。
【0039】
<第1変形例>
次に、
図11を参照して、第1変形例に係る歩行訓練器1について説明する。
図11は第1変形例に係る歩行訓練器1および使用者90を示す正面図である。
【0040】
使用者90が前方に踏み出した脚92に体重を乗せた際、膝92Aに力が入らず、膝92Aが折れてしまうことがある(以下、「膝折れ」という。)。歩行時に膝折れが発生すると転倒につながるため、安定した歩行には、膝折れを抑制することが有効である。
【0041】
そこで、第1変形例に係る歩行訓練器1では、当接部20が、歩行面12Aを歩行する使用者90の膝92Aに当接するように左右一対の支柱部16の間に架設されている。当接部20は、例えば、スチールやアルミニウム合金等の金属製のパイプ状の部材で形成されている。当接部20の左右両端部は、使用者90の膝92Aの高さ辺りで、前方の一対の支柱部16に固定されている。なお、当接部20に当接したときの膝92Aへの衝撃を和らげるために、当接部20の一部または全部に、スポンジや合成ゴム等から成るクッション材が取り付けられてもよい(図示せず)。
【0042】
本実施形態の第1変形例に係る歩行訓練器1によれば、当接部20が歩行面12Aを歩行する使用者90の膝92Aに当接することで、膝折れを抑制することができる。これにより、使用者90は正しい歩行姿勢に矯正され、重心移動を伴う安定した歩行を行うことができる。なお、安全性に配慮し、使用者90は、当接部20がない後方から歩行面12Aに乗り降りするとよい。
【0043】
なお、当接部20の両端部が一対の支柱部16に固定されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、当接部20が、前後方向の内側のみに回動するヒンジを介して一方の支柱部16に取り付けられてもよい(図示せず)。すなわち、当接部20の一端部がヒンジを介して一方の支柱部16に連結され、当接部20の他端部は他方の支柱部16に連結されなくてもよい。これにより、使用者90は、歩行面12Aに載る際に、当接部20を跨ぐ必要が無く、当接部20をヒンジまわりに回動させて歩行面12Aに載ることができる。なお、使用者90は歩行面12Aから降りる際には、手動で当接部20を回動させてもよい。また、当接部20は1本に限らず、一対の支柱部16から一対の当接部20が互いに接近するように延設されてもよい(図示せず)。
【0044】
<第2変形例>
次に、
図12を参照して、第2変形例に係る歩行訓練器1について説明する。
図12は第2変形例に係る歩行訓練器1を示す側面図(一部断面図)である。
【0045】
使用者90は、歩行面12Aからの反力を意識しながら歩行訓練を行うことが好ましい。換言すれば、使用者90は、自身の足裏のどこの部分を接地させて歩行しているのかを認識することで、有効な歩行訓練を行うことができる。
【0046】
そこで、第2形例に係る歩行訓練器1では、歩行面12Aに使用者90の足裏を刺激する凹凸が設けられている。具体的には、歩行面12Aには、複数の突起21Aが格子状(または千鳥状)に設けられた凹凸マット21が敷かれている。凹凸マット21は、例えば、可撓性を有する合成樹脂製の敷物であって、歩行面12Aの略全体に敷設されている。なお、凹凸マット21は、歩行面12Aに接着されてもよい。
【0047】
本実施形態の第2変形例に係る歩行訓練器1によれば、歩行面12Aに凹凸が設けられているため、歩行中の使用者90に歩行面12A(凹凸マット21)からの反力を明確に認識させることができる。これにより、使用者90は、足裏のどこの部分を接地させて歩行しているのかを認識することができ、歩行時のバランス感覚を向上させることができる。
【0048】
なお、
図12では、凹凸マット21が歩行面12Aに敷設されていたが、凹凸マット21に代えて、歩行面12A自体が凸凹に加工されていてもよい(図示せず)。つまり、複数の突起21Aが歩行面12Aに立設されてもよい。
【0049】
<第3変形例>
次に、
図13を参照して、第3変形例に係る歩行訓練器1について説明する。
図13は第3変形例に係る歩行訓練器1を示す側面図である。
【0050】
第3形例に係る歩行訓練器1では、回動体10の揺動回数を計測して表示するカウンタ22を備えている。カウンタ22は、例えば、床部12の後端面に固定されている。カウンタ22は、回動回数を表示するカウンタ本体22Aと、カウンタ本体22Aに回動可能に設けられたアクチュエータ22Bと、を有している。アクチュエータ22Bは、回動体10が後方に傾いた際に路面GLに接触して反時計回りに回動し、回動体10が前方に傾いた際に路面GLから離れて時計回りに回動する。カウンタ本体22Aは、アクチュエータ22Bの揺動回数(往復回動回数)、つまり、回動体10の揺動回数を示す数字をカウントアップする。
【0051】
本実施形態の第3変形例に係る歩行訓練器1によれば、使用者90は回動体10の揺動回数、つまり、歩行訓練による歩数を認識することができ、歩行訓練のモチベーションの維持または向上を図ることができる。なお、カウンタ22の取り付け位置はアクチュエータ22Bが路面GLに接触可能な位置であればよく、床部12の前端面に固定されてもよいし、一対の接地部11のいずれか一方の前端面または後端面に固定されてもよい(図示せず)。
【0052】
なお、上記した第1~第3変形例に係る歩行訓練器1の特徴は、相互に適用されてもよい(図示せず)。
【0053】
<その他の変形例>
なお、本実施形態(第1~第3変形例を含む。以下同じ。)に係る歩行訓練器1では、把持部17が接地面11A等と同心となる円弧状に形成されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、把持部17は、接地面11A等と同心ではない(中心点Pとは異なる中心をもつ)円弧状に形成されてもよいし、湾曲させずに一直線状に形成されてもよい(いずれも図示せず)。また、把持部17が、接地面11A等よりも前後方向に短く形成されていたが、接地面11A等と同じ曲率で前後方向に同じ長さに形成されてもよい(図示せず)。これらの場合であっても、肩関節から把持部17までの距離を概ね一定にすることができるため、使用者90は重心移動を意識しながら円滑に効率良く歩行することができる等、既に説明した歩行訓練器1と同様の効果を得ることができる。
【0054】
また、本実施形態に係る歩行訓練器1では、各支承体15に前後一対の支柱部16が設けられていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、各支承体15において、1つの支柱部16が、把持部17と接地部11との前端部または後端部に架設されてもよい(図示せず)。また、支柱部16が、把持部17と接地部11との前後方向の端部に架設されていたが、これに限らず、1つ(または複数でもよい)の支柱部16が、把持部17と接地部11との前後方向の中間部に架設されてもよい(図示せず)。つまり、回動体10と支承体15とが、横に倒した略H字状に形成されてもよい。
【0055】
また、本実施形態に係る歩行訓練器1では、回動体10が、一対の接地部11の間に床部12を架設して構成されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、回動体10は、一対の接地部11を省略し、湾曲した床部12のみで構成されてもよい(図示せず)。この場合、床部12の下面が、湾曲した接地面11Aとなる。
【0056】
また、本実施形態に係る歩行訓練器1では、接地部11、一対の支柱部16および把持部17が別々の部品で構成され、溶接等の手段で接合されていたが、本発明はこれに限定されない。接地部11、一対の支柱部16(または1つの支柱部16)および把持部17は、1つの部材を曲げ加工する等して一体に形成されてもよい(図示せず)。
【0057】
また、本実施形態に係る歩行訓練器1では、各支承体15が枠状に形成されていたが、本発明はこれに限定されない。各支承体15は、側方から見て、略扇型となる板状に形成されてもよい(図示せず)。この場合、板の上端部が把持部17となる。
【0058】
なお、上記実施形態の説明は、本発明に係る歩行訓練器における一態様を示すものであって、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明は技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよく、特許請求の範囲は技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様を含んでいる。
【符号の説明】
【0059】
1 歩行訓練器
10 回動体
11A 接地面
12A 歩行面
15 支承体
16 支柱部
17 把持部
20 当接部
21 凹凸マット(凹凸)
22 カウンタ
90 使用者
92A 膝
GL 路面
P 中心点