(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092187
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】ホースの巻取り装置および方法
(51)【国際特許分類】
B65H 75/24 20060101AFI20230626BHJP
B65H 75/14 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
B65H75/24
B65H75/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207254
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】中澤 智貴
【テーマコード(参考)】
3F058
【Fターム(参考)】
3F058AA03
3F058AB02
3F058AC15
3F058BB19
3F058CA11
3F058DA05
3F058DC09
3F058HB02
3F058HB07
3F058JA18
(57)【要約】
【課題】ホースの巻取り径を簡便に変化させることができるホースの巻取り装置および方法を提供する。
【解決手段】ターレット式のホース巻取り装置1のアーム2の長手方向両端部に取付けられたドラム体4A、4Bを、旋回駆動モータ3を用いて旋回軸2aを中心にしてアーム2を上下方向に旋回させることで各ドラム体4A、4Bを巻取り位置P1と取外し位置P2との間で移動させ、巻取り位置P1ではホースHの巻取り工程を行い、取外し位置P2ではホースHの結束工程およびホースHの取外し工程を行い、各ドラム体4A、4Bの外周側に着脱自在に取付けられる筒状の大径アタッチメント10を装着することにより、各ドラム体4A、4Bの外径を異ならせてホースHの巻取り径を変化させる。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回軸を中心にして旋回可能に軸支されたアームと、前記旋回軸を中心にして前記アームを旋回させる旋回駆動モータと、前記アームの長手方向両端部で回転軸を中心にして回転可能に軸支されるドラム体とを有し、前記アームを旋回させることでそれぞれの前記ドラム体を巻取り位置と取外し位置との間で移動させ、前記巻取り位置では空の状態の前記ドラム体に対して所定長さのホースを巻取る巻取り工程が行われ、前記取外し位置では前記ドラムに巻き取られた前記ホースが結束線で結束される結束工程と、巻き取られた状態で前記結束線により結束された前記ホースが前記ドラム体から取外される取外し工程が行われるターレット式のホースの巻取り装置において、
それぞれの前記ドラム体の外周側に着脱自在に取付けられる筒状の大径アタッチメントを備えたことを特徴とするホースの巻取り装置。
【請求項2】
前記大径アタッチメントが装着される前記ドラム体の内周側に配置されるホース検知センサと、このドラム体を半径方向に連通する切欠き又は貫通穴からなる通過部とを有し、前記ホース検知センサからの検知光が前記通過部を通過することで、このドラム体の外周面に前記ホースが前記通過部を交差して延在しているか否か検知される構成であり、前記大径アタッチメントを半径方向に連通する切欠き又は貫通穴からなるアタッチメント通過部を有し、前記大径アタッチメントがこのドラム体の外周側に装着されると、前記通過部と前記アタッチメント通過部とが半径方向に連通する位置に位置決めされる構成にした請求項1に記載のホースの巻取り装置。
【請求項3】
前記大径アタッチメントの内周面と、この大径アタッチメントが装着される前記ドラム体の外周面との間に介在するスペーサ部を有し、このスペーサ部のドラム半径方向の長さを異ならせることにより、前記大径アタッチメントの外径を異ならせる請求項1または2に記載のホースの巻取り装置。
【請求項4】
旋回軸を中心にして旋回可能に軸支されたアームの長手方向両端部にドラム体を回転軸により回転可能に軸支して、前記アームを旋回させてそれぞれの前記ドラム体を巻取り位置と取外し位置との間で移動させて、前記巻取り位置では空の状態の前記ドラム体に対して所定長さのホースを巻取る巻取り工程を行い、前記取外し位置では前記ドラムに巻き取られた前記ホースが結束線で結束される結束工程と、巻き取られた状態で前記結束線により結束された前記ホースを前記ドラム体から取外す取外し工程を行うターレット式のホースの巻取り装置を用いたホースの巻取り方法において、
それぞれの前記ドラム体のうちの少なくとも一方のドラム体の外周側に着脱自在に取付けられる筒状の大径アタッチメントを装着することにより、少なくとも一方の前記ドラム体の外径を変化させることを特徴とするホースの巻取り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホースの巻取り装置および方法に関し、さらに詳しくは、ホースの巻取り径を簡便に変化させることができるホースの巻取り装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴムホースなどのホースの製造ラインでは、一時保管や輸送のために、ホースは所定長さでドラム体に巻き取られる(例えば、特許文献1参照)。ホースの巻取り装置には種々のタイプがあり、ホースの巻取り工程を効率化するために、ターレット式の巻取り装置が使用されている。
【0003】
ターレット式の巻取り装置では、アームの両端にドラム体が回転軸を中心にして回転可能に軸支されている。アーム一方端部のドラム体に対するホースの巻取り工程が完了すると旋回軸を中心にしてアームを旋回させて、このドラム体を巻取り位置からドラム体の取外し位置に移動させるとともに、取外し位置に待機していた空の状態のドラム体を巻取り位置に移動させる。巻取り位置では空の状態のドラム体に対して巻取り工程が行われる。取外し位置では、ドラム体に巻き取られたホースが結束線によって結束する結束工程と、その後に、巻き取られた状態で結束線によって結束されたホースをドラム体から取り外す取外し工程が行われる。ドラム体から取り外されたホースは、保管庫等に移送される。
【0004】
このようにターレット式の巻取り装置では、一方のドラム体を用いて巻取り工程を行っている間に、他方のドラム体では結束工程および取外し工程を行う。それぞれのドラム体で別の工程を並行して行うことで、ドラム体に対するホースの巻取り開始から巻き取ったホースを結束線で結束した状態で後工程に移送するまでの一連の工程を効率的に行えるメリットがある。
【0005】
ところで、ホースはドラム体の外周面に巻き取られるので、ホースの巻取り径は、使用するドラム体の外径によって決定されることになる。ホース仕様に応じて適切な巻取り径があるが、従来の巻取り装置では所望の巻取り径にするためには、所望の外径のドラム体を用意する必要がある。そして、所望の巻取り径に対応するドラム体をアームに取り付ける煩雑なドラム体の交換作業が発生する。ドラム体の交換作業を省略するために、ドラム体を拡縮可能な構成にしてドラム外径を可変にすると、装置構造が複雑化し、これに伴い多大なコストが必要になる。それ故、ホースの巻取り径を簡便に変化させるには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ホースの巻取り径を簡便に変化させることができるホースの巻取り装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明のホースの巻取り装置は、旋回軸を中心にして旋回可能に軸支されたアームと、前記旋回軸を中心にして前記アームを旋回させる旋回駆動モータと、前記アームの長手方向両端部で回転軸を中心にして回転可能に軸支されるドラム体とを有し、前記アームを旋回させることでそれぞれの前記ドラム体を巻取り位置と取外し位置との間で移動させ、前記巻取り位置では空の状態の前記ドラム体に対して所定長さのホースを巻取る巻取り工程が行われ、前記取外し位置では前記ドラムに巻き取られた前記ホースが結束線で結束される結束工程と、巻き取られた状態で前記結束線により結束された前記ホースが前記ドラム体から取外される取外し工程が行われるターレット式のホースの巻取り装置において、それぞれの前記ドラム体の外周側に着脱自在に取付けられる筒状の大径アタッチメントを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明のホースの巻取り方法は、旋回軸を中心にして旋回可能に軸支されたアームの長手方向両端部にドラム体を回転軸により回転可能に軸支して、前記アームを旋回させてそれぞれの前記ドラム体を巻取り位置と取外し位置との間で移動させて、前記巻取り位置では空の状態の前記ドラム体に対して所定長さのホースを巻取る巻取り工程を行い、前記取外し位置では前記ドラムに巻き取られた前記ホースが結束線で結束される結束工程と、巻き取られた状態で前記結束線により結束された前記ホースを前記ドラム体から取外す取外し工程を行うターレット式のホースの巻取り装置を用いたホースの巻取り方法において、それぞれの前記ドラム体のうちの少なくとも一方のドラム体の外周側に着脱自在に取付けられる筒状の大径アタッチメントを装着することにより、少なくとも一方の前記ドラム体の外径を変化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、前記大径アタッチメントが外周側に装着された前記ドラム体は前記大径アタッチメントと一体化して、その外径は、前記大径アタッチメントの外径になるのでホースの巻取り径を大きくすることができる。このように前記ドラム体に対して前記大径アタッチメントを着脱することで、前記ドラム体に巻き取るホースの巻取り径を簡便に変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のホースの巻取り装置の実施形態を側面視で例示する説明図である。
【
図2】
図1のA-A矢視で巻取り装置を例示する説明図である。
【
図3】
図1の巻取り位置にあるドラム体の拡大図である。
【
図4】ホースが巻き取られていないドラム体を平面視で例示する説明図である。
【
図5】
図4のB-B断面視でドラム体を例示する説明図である。
【
図6】
図5のドラム体にホースの始端部を巻付けた状態を例示する説明図である。
【
図7】
図1の取外し位置での結束工程が終了した状態の巻取り装置を例示する説明図である。
【
図8】
図7の取外し位置にあるドラム体を平面視で例示する説明図である。
【
図9】取外し位置での取外し工程および巻取り位置での巻取り工程が終了した後にアームを上下方向に旋回させてそれぞれのドラム体を巻取り位置と取外し位置との間で移動させている状態を例示する説明図である。
【
図10】
図9の一方のドラム体が取外し位置に移動し、他方のドラム体が巻取り位置に移動した状態を例示する説明図である。
【
図11】
図4のドラム体の外周側に大径アタッチメントを装着する工程を例示する説明図である。
【
図12】
図11の大径アタッチメントを装着したドラム体を例示する説明図である。
【
図13】
図12のC-C断面視でドラム体を例示する説明図である。
【
図14】
図13の大径アタッチメントにホースの始端部を巻付けた状態を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のホースの巻取り装置および方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0013】
図1~
図3に例示するホースの巻取り装置1の実施形態はターレット式であり、旋回軸2aに軸支されたアーム2と、アーム2を旋回させる旋回駆動モータ3と、アーム2の長手方向両端部で回転軸5a、5bに回転可能に軸支されたドラム体4A、4Bと、制御部9とを有している。さらに巻取り装置1は、筒状の大径アタッチメント10を有している。大径アタッチメント10はドラム体4A、4Bの外周側に着脱可能に取り付けられる。大径アタッチメント10の詳細は後述する。ホースHの製造ラインでは、巻取り装置1の上流側にはホース供給部13が配置されていて、下流側には結束機14が配置されている。
【0014】
図1のホース供給部13側に配置されているドラム体4Aの位置が、後述する巻取り位置P1になる。結束機14側に配置されているドラム体4Bの位置が、後述する取外し位置P2になる。
【0015】
この巻取り装置1では、アーム2を上下方向に旋回させることにより、それぞれのドラム体4A、4Bを巻取り位置P1と取外し位置P2との間で移動させる。巻取り位置P1では空の状態のドラム体4Aに対して所定長さのホースを巻取る巻取り工程が行われる。取外し位置P2ではドラム4Bに巻き取られたホースHが結束線15で結束される結束工程と、巻き取られた状態で結束線15により結束されたホースHがドラム体4Bから取外される取外し工程が行われる。
【0016】
巻取り装置1によって巻き取られるホースHは、ゴムホース、樹脂ホースなど種々のタイプである。例えば、金属製や樹脂製の補強コードがスパイラル状に巻き付けられて構成した補強層やこれら補強コードが編組されて構成した補強層が埋設されているホースHなどが巻取り装置1によって巻き取られる。ホースHの外径は例えば10mm~40mm程度である。
【0017】
アーム2は旋回軸2aに接続されていて、旋回軸2aを中心にして上下方向に旋回する。旋回軸2aを回転駆動する旋回駆動モータ3には種々のモータを用いることができ、例えばサーボモータが用いられる。この実施形態ではベースに立設された支持ポストに旋回駆動モータ3が取付けられている。
【0018】
それぞれのドラム体4A、4Bは、それぞれの回転軸5a、5bを中心にして、それぞれの回転駆動モータ6a、6bにより回転駆動される。それぞれの回転駆動モータ6a、6bにはサーボモータが用いられる。
【0019】
それぞれのドラム体4A、4Bは、回転軸5a、5bとともに回転する基部4cに接続された複数のセグメント4sと複数のフランジ部4fとを有している。それぞれのドラム体4A、4Bは同様の構造なので、以下、ドラム体4Aについて説明する。
【0020】
図4、
図5に例示するように、ドラム体4Aを構成するセグメント4sは4個であり、それぞれのセグメント4sは円筒体を周方向に等分割した形状になっている。周方向に隣り合うセグメント4sどうしの間には、ドラム軸方向に延在するすき間が形成されている。セグメント4sの数は例えば3個~4個である。それぞれのセグメント4sの外周面は、ホースHが巻き取られるドラム外周面になる。ドラム外周面の外径は例えば30cm~60cmである。
【0021】
ドラム体4Aのドラム軸方向両端部にフランジ部4fが配置されている。詳述すると、それぞれのセグメント4s毎にドラム軸方向両端部にフランジ部4fが配置されている。この実施形態では4個それぞれのセグメント4sのドラム軸方向両端部に略四角形の板状のフランジ部4fが配置されている。
【0022】
ドラム体4Aは回転軸5aに片持ち支持されていて、ドラム体4Aのドラム軸方向一方側(回転駆動モータ6aが配置されている側)に回転軸5aが接続されている。したがって、ドラム体4Aのドラム軸方向他方側は自由端である。そして、ドラム体4Aのドラム軸方向一方側に配置されているそれぞれのフランジ部4fは、ドラム半径方向外側に向かって延在している。そして、これらフランジ部4fは、2枚のプレートで構成されていて、一方のプレートに対して他方のプレートがドラム半径方向にスライド可能になっている。これにより、これらフランジ部4fのドラム半径方向の長さが可変になっていて、これらフランジ部4fはドラム体4A(セグメント4s)の外周面よりも常に外周側に突出するように設定されている。
【0023】
ドラム体4Aのドラム軸方向他方側(自由端側)に配置されているそれぞれのフランジ部4fは、ドラム半径方向外側に向かって延在する状態と、ドラム軸方向に向かって延在する状態とに切り換え可能になっている。ドラム半径方向外側に向かって延在する状態のフランジ部4fは、ドラム体4A(セグメント4s)の外周面よりも外周側に突出し、ドラム軸方向に向かって延在する状態のフランジ部4fは、ドラム体4A(セグメント4s)の外周面よりも外周側に突出しない。例えば、それぞれのセグメント4sに囲まれた内周側の空間に配置された流体シリンダの進退と、この流体シリンダに接続されたリンク機構とによって、それぞれのフランジ部4fは、ドラム体4A(セグメント4s)の外周面よりも外周側に突出する状態と突出しない状態とに切り換わる。
【0024】
また、ドラム体4Aには、ドラム体4A(セグメント4s)の外周面に対して近接および離反移動するホース始端保持部7が備わっている。流体シリンダなどによって作動するホース始端保持部7は、ドラム体4A(セグメント4s)の外周面に対して近接移動すると、ドラム体4A(セグメント4s)の外周面との間にホースHの始端部Htを挟んで保持する。
【0025】
この実施形態では巻取り装置1は、さらに、ドラム体4Aの内周側に配置されるホース検知センサ8と、ドラム体4A(セグメント4s)をドラム半径方向に連通する通過部4tとを有している。ホース検知センサ8としては、検知光を発し、対象物で反射した検知光を受光する公知の種々の非接触センサを用いることができる。通過部4tは、切欠き又は貫通穴である。この実施形態ではドラム軸方向に延在する細長の切欠きが通過部4tになっている。
【0026】
ホース検知センサ8からはドラム半径方向外側に向かって検知光が発せられる。ドラム体4Aの外周面にホースHが通過部4tを交差して延在している場合は、通過部4tを通過した検知光はこのホースHで反射して再度、通過部4tを通過してホース検知センサ8に受光される。このようにしてホース検知センサ8によってホースHがドラム体4Aに巻付けられているか否かを検知できる構成になっている。
【0027】
ホース検知センサ8による検知信号は制御部9に入力される。制御部9はこの検知信号に基づいてホース始端保持部7を作動させる。
【0028】
この実施形態では、それぞれの回転駆動モータ6a、6b、フランジ部4f、ホース始端保持部7の動作のために電気を供給するケーブル類が、
図1に例示するように、ケーブルベア(登録商標)のような配線保護移動ガイド9aによって保持されている。アーム2の旋回とともに、配線保護移動ガイド9aに保持されているケーブル類が配線保護移動ガイド9aとともに所定長さのストロークを移動する。配線保護移動ガイド9aは
図1では上下方向にストローク移動する。
【0029】
制御部9は、旋回駆動モータ3、回転駆動モータ6a、6b、ホース始端保持部7の動き、上述したフランジ部4fをドラム体4Aの外周面よりも外周側に突出する状態と突出しない状態とに切り換える動きを制御する。制御部9としては公知のコンピュータが用いられる。
【0030】
ホース供給部13は、搬送機構13aとカッタ13bとを有している。搬送機構13aとしては公知のベルトコンベヤやこれに類する機器が用いられる。製造されたホースHは搬送機構13aに載置されて移動して巻取り装置1に供給される。供給されるホースHは、カッタ13bによって所定長さに切断される。
【0031】
結束機14は、巻取り装置1によってドラム体4A、4Bに巻き取られたホースHを巻取り状態で結束線15によって結束する。結束機14としては公知の種々のタイプを用いることができる。結束機14の結束ガイド14a、14bによって導出された結束線15が、周方向に隣り合うセグメント4sどうしの間に形成されているドラム軸方向に延在するすき間の位置でホースHを結束する。
【0032】
以下、この巻取り装置1を用いてホースHを巻き取る手順の一例を説明する。
【0033】
図1、2に例示するように、巻取り位置P1では空の状態のドラム体4Aに対して所定長さのホースHを巻取る巻取り工程が行われ、取外し位置P2ではドラム4Bに巻き取られたホースHが結束線15で結束される結束工程と、巻き取られた状態で結束線15により結束されたホースHがドラム体4Bから取外される取外し工程が行われる。巻取り工程と、結束工程および取外し工程とは、並行して行われる。
【0034】
巻取り工程では、ホース供給部13から供給されたホースHの始端部Htが、ドラム体4Aの外周面との間にホース始端保持部7との間に挿入される。このホースHの始端部Htが、ドラム体4A(セグメント4s)の外周面に通過部4tを交差して延在している場合は、ホース検知センサ8により検知されて、この検知信号が制御部9に入力される。
【0035】
制御部9は、この検知信号が入力されてホースHがドラム体4Aに巻付けられていると判断すると、ホース始端保持部7を
図5の状態から
図6に例示するようにドラム体4Aの外周面に対して近接移動させる。これにより、始端部Htは、ホース始端保持部7とドラム体4Aの外周面との間に挟まれて保持される。巻取り工程では、ドラム体4Aのドラム軸方向両端部のフランジ部4fは、ドラム外周面から外周側に突出した状態になっている。
【0036】
次いで、回転駆動モータ6aを作動させて、
図3に例示するように回転軸5aを中心にしてドラム体4Aを回転させることにより、ホースHをドラム体4Aに巻き取る。適宜のタイミングでカッタ13bによって所定長さに切断されたホースHは、ドラム体4Aのドラム軸方向に離間して配置されているフランジ部4fの間で渦巻き状にドラム体4Aの外周面上に巻き取られる。
【0037】
結束工程では、ドラム体4Bの周方向に隣り合うセグメント4sどうしの間に形成されているドラム軸方向に延在するすき間で、結束ガイド14a、14bから導出された結束線15を、ドラム体4Bに巻き取られているホースHを横断させて繰り返し巻き回す。これにより、ドラム体4Bに渦巻き状に巻き取られているホースHが、結束線15によって結束される。回転軸5bを中心にしてドラム体4Bを順次90°回転させて、周方向に隣り合うセグメント4sどうしのすき間のすべての箇所(この実施形態では4箇所)で同様に結束線15によってホースHを結束する。
【0038】
結束工程では、ドラム体4Bのドラム軸方向両端部のフランジ部4fは、ドラム外周面から外周側に突出した状態になっている。尚、ホース始端保持部7は適宜のタイミングでドラム体4Bの外周面から離反移動させて、ホース始端保持部7による始端部Htに対する保持を解除する。
【0039】
結束工程が終了した後の取外しで工程では、
図7、
図8に例示するようにドラム体4Bのドラム軸方向自由端側のフランジ部4fを、ドラム半径方向外側に向かって延在する状態からドラム軸方向に向かって延在する状態に切り換える。これにより、このフランジ部4fは、ドラム外周面から外周側に突出しない状態になる。
【0040】
次いで、ドラム体4Bに渦巻き状に巻き取られた状態で結束線15により結束されたホースHを、公知の移送装置を用いてドラム体4Bのドラム軸方向自由端側に移動させてドラム体4Bから取外す。そして、ドラム体4Bから取外したホースHをこの移送装置により保管庫等に移送する。
【0041】
巻取り工程と取外し工程とが終了すると、
図9に例示するように旋回軸2aを中心にしてアーム2を反時計回りに180°旋回させる。これにより、
図10に例示するようにホースHが巻き取られたドラム体4Aを巻取り位置P1から取外し位置P2へ移動させるとともに、空の状態のドラム体4Bを取外し位置P2から巻取り位置P1へ移動させる。
【0042】
アーム2を旋回させる際には、ドラム体4Aは、巻き取られたホースHが巻き崩れないように(巻き解けが生じないように)、
図9に例示するように、ドラム体4Aを巻取り位置P1から取外し位置P2まで移動させている間に、制御部9は旋回駆動モータ3と回転駆動モータ6aとを連動させて制御する。制御部9は、巻取り位置P1から取外し位置P2まで移動させているドラム体4Aを、回転軸5aを中心にした相対的な回転を無くすように回転駆動モータ6aを制御する。
【0043】
具体的には
図9、
図10に例示するように、巻取り位置P1においてドラム体4Aの外周面右斜め下に位置していたホースHの終端部Heが、ドラム体4Aが巻取り位置P1から取外し位置P2に移動する間、常に、ドラム体4Aの外周面右斜め下に位置するように、回転駆動モータ6aを制御して回転軸5aを中心にしてドラム体4Aを回転させる。
【0044】
このように、終端部Heは巻き解け(巻き崩れ)が生じ難いドラム体4Aの外周面右斜め下の位置に維持されつつ、ドラム体4Aは巻取り位置P1から取外し位置P2に旋回移動する。尚、ドラム体4Aが巻取り位置P1から取外し位置P2に旋回移動する過程で終端部Heが維持される位置は、ドラム体4Aの外周面右斜め下の位置に限らず、ホースHの巻き解け(巻き崩れ)が生じ難い位置であればよい。例えば、終端部Heはドラム体4Aの外周面左斜め下の位置や外周面下端の位置などに維持されてもよい。
【0045】
巻取り位置P1から取外し位置P2に移動したドラム体4Aに対しては、上述のドラム体4Bに対して行った結束工程および取外し工程を行う。取外し位置P2から巻取り位置P1に移動したドラム体4Bに対しては、上述のドラム体4Aに対して行った巻取り工程を行う。巻取り工程と取外し工程とが終了した後は、旋回軸2aを中心にしてアーム2を時計回りに旋回させて、ドラム体4Bを巻取り位置P1から取外し位置P2に移動させるとともに、ドラム体4Aを取外し位置P2から巻取り位置P1に移動させる。
【0046】
空の状態のドラム体4Bを取外し位置P2から巻取り位置P1まで移動させている間に、制御部9により旋回駆動モータ3と回転駆動モータ6bとを連動させて制御して、ドラム体4Bに備わるホース始端保持部7を所定のホース保持位置に位置決めすることもできる。空の状態のドラム体4Bが巻取り位置P1に配置された時に、ホース供給部13から供給されるホースHの始端部Htを、ホース始端保持部7が保持し易い位置が、この所定のホース保持位置として設定される。
【0047】
このようにホース始端保持部7を位置決めすると、空の状態のドラム体4Bが巻取り位置P1に移動すると、ホース供給部13から供給されたホースHの始端部Htを迅速にホース始端保持部7によって保持できる。そのため、巻き取り工程を即座に開始できるので、ドラム体4Bに対してホースHの巻取りを効率的に行うには益々有利になる。
【0048】
この実施形態では、旋回軸2aを中心にしてアーム2を時計回りに180°および反時計回りに180°に交互に旋回させる動作を繰り返すことで、それぞれのドラム体4A、4Bを巻取り位置P1と取外し位置P2との間で移動させる。そのため、それぞれの回転駆動モータ6a、6b、フランジ部4f、ホース始端保持部7の動作のために電気を供給するケーブル類を、スリップリングを介してそれぞれの機器に接続しなくても済む。そこで、この実施形態では、これらケーブル類を配線保護移動ガイド9aによって保持している。
【0049】
それぞれのドラム体4A、4Bを巻取り位置P1と取外し位置P2との間で移動させために、旋回軸2aを中心にしてアーム2を360°回転させる仕様にすることもできる。即ち、旋回軸2aを中心にしてアーム2を、時計回りまたは反時計回りのいずれか一方向のみに回転可能にした仕様にしてもよい。この仕様にした場合は、それぞれの回転駆動モータ6a、6b、フランジ部4f、ホース始端保持部7の動作のために電気を供給するケーブル類は、スリップリングを介してそれぞれの機器に接続される。
【0050】
ホースHの巻取り径をより大きくする場合は、
図11に例示するように、ドラム体4Aの外周側に、着脱可能な大径アタッチメント10を装着する。
図12、
図13に例示するようにドラム体10Aは、装着された大径アタッチメント10と一体化される。
【0051】
ドラム体4Bにも同様に大径アタッチメント10を装着できる。大径アタッチメント10は、それぞれのドラム体4A、4Bのうちの少なくとも一方のドラム体4A、4Bの外周側に着脱自在に装着される。大径アタッチメント10をドラム体4Aの外周側に対して着脱する場合もドラム体4Bの外周側に対して着脱する場合も、手順は同様なので、以下、ドラム体4Aの外周側に対して大径アタッチメント10を着脱する場合について説明する。
【0052】
大径アタッチメント10について詳述すると、
図11~
図13に例示するように、大径アタッチメント10は複数のセグメント11を有している。1つの大径アタッチメント10を構成するセグメント11の数はドラム体4Aのセグメント4sと同数であり、例えば3個または4個になる。それぞれのセグメント11は円筒体を周方向に等分割した形状になっている。周方向に隣り合うセグメント11どうしの間には、ドラム軸方向に延在するすき間が形成されている。
【0053】
大径アタッチメント10がドラム体4Aの外周側に装着されると、それぞれのセグメント4sの外周側には対応するセグメント11が配置された状態になる。そして、周方向に隣り合うセグメン4sどうしの間のすき間と、これらセグメント4sに対応して周方向に隣り合うセグメント11どうしの間のすき間とは、ドラム周方向に一致した位置に配置された状態になる。アタッチメント10がドラム体4Aの外周側に装着されてドラム体4Aと一体化することで、それぞれのセグメント11の外周面は、ホースHが巻き取られるドラム外周面になる。
【0054】
それぞれのセグメント11の内周面にはスペーサ部12が突設されている。スペーサ部12は、それぞれのセグメント11の内周面と対応するセグメント4sの外周面との間に介在している。このスペーサ部12のドラム半径方向の長さを異ならせることで、大径アタッチメント10の外径を異ならせることができる。
【0055】
大径アタッチメント10(セグメント11)にはドラム半径方向に連通するアタッチメント通過部11tが形成されている。アタッチメント通過部11tは、切欠き又は貫通穴である。この実施形態ではドラム軸方向に延在する細長の切欠きがアタッチメント通過部11tになっている。
【0056】
それぞれのセグメント11は、内周側に位置する対応するセグメント4sと例えばボルト等の結合部材によって一体化される。この実施形態では、セグメント11およびスペーサ部12を連通してセグメント4sに螺合するボルトによって、セグメント11とセグメント4sとが結合されて一体化されている。
【0057】
大径アタッチメント10がドラム体4Aの外周側に装着されると、通過部4tとアタッチメント通過部11tとが半径方向に連通する位置に位置決めされる。即ち、通過部4tが形成されているセグメント4sに対してアタッチメント通過部11tが形成されているセグメント11が、通過部4tとアタッチメント通過部11tとのドラム周方向位置を一致させて取り付けられる。通過部4tが形成されているセグメント4sの内周側にはホース検知センサ8が配置されている。
【0058】
ドラム体4Aの外周側に大径アタッチメント10が装着された場合も、
図13に例示するように、ホース検知センサ8からドラム半径方向外側に向かって検知光が発せられる。大径アタッチメント10(セグメント11)の外周面にホースHがアタッチメント通過部11tを交差して延在している場合は、通過部4tおよびアタッチメント通過部11tを通過した検知光はこのホースHで反射して再度、アタッチメント通過部11tおよび通過部4tを通過してホース検知センサ8に受光される。このようにしてホース検知センサ8によってホースHが大径アタッチメント10(セグメント11)に巻付けられているか否かを検知できる構成になっている。
【0059】
巻取り工程では、ホース供給部13から供給されたホースHの始端部Htが、大径アタッチメント10(セグメント11)の外周面とホース始端保持部7との間に挿入される。このホースHの始端部Htが、大径アタッチメント10(セグメント11)の外周面にアタッチメント通過部11tを交差して延在している場合は、ホース検知センサ8により検知されて、この検知信号が制御部9に入力される。
【0060】
制御部9は、この検知信号が入力されてホースHが大径アタッチメント10と一体化されたドラム体4Aに巻付けられていると判断すると、ホース始端保持部7を
図13の状態から
図14に例示するように大径アタッチメント10(セグメント11)の外周面に対して近接移動させる。これにより、始端部Htは、ホース始端保持部7と大径アタッチメント10(セグメント11)の外周面との間に挟まれて保持される。
【0061】
巻取り工程では、ドラム体4Aのドラム軸方向両端部のフランジ部4fは、大径アタッチメント10の外周面から外周側に突出した状態になっている。この実施形態では、ドラム体4Aのドラム軸方向一方側に配置されているそれぞれのフランジ部4fでは、一方のプレートに対して他方のプレートをドラム半径方向外側にスライドさせる。これにより、これらフランジ部4fを大径アタッチメント10(セグメント11)の外周面よりも外周側に突出させることができる。
【0062】
ドラム体4Aの外周側に大径アタッチメント10を装着した場合も、巻取り工程、結束工程、取外し工程は、大径アタッチメント10を装着していない場合と同様に行われる。ホースHの巻取り径を小さくする場合は、装着されている大径アタッチメント10(それぞれのセグメント11)をドラム体4Aから取外せばよい。
【0063】
このように、大径アタッチメント10が外周側に装着されたドラム体4Aは大径アタッチメント10と一体化して、外径が大径アタッチメント10の外径になるのでホースHの巻取り径を大きくすることができる。したがって、ドラム体4Aに対して大径アタッチメント10を着脱することで、ドラム体4Aに巻き取るホースHの巻取り径を簡便に変化させることができる。
【0064】
この実施形態では、ホース検知センサ8がドラム体4A、4Bのセグメント4sの内周側に配置されるとともに、セグメント4sに通過部4tが形成され、セグメント11にはアタッチメント通過部11tが形成されている。これにより、ドラム体4A、4Bに大径アタッチメント10が装着されている場合も装着されていない場合も、ホースHがドラム体4A、4B(ドラム体4A、4Bに装着されている大径アタッチメント10)に巻付けられているか否かを把握することができる。
【0065】
また、この実施形態では、通過部4tおよびアタッチメント通過部11tがドラム軸方向に延在する形状になっている。そのため、ドラム幅方向自由端側に配置されたそれぞれのフランジ4fを、ドラム半径方向外側に向かって延在する状態とドラム軸方向に向かって延在する状態とに切り換えることに伴ってセグメント4s、11がドラム軸方向に若干ずれても、ホース検知センサ8の検知光が、通過部4t、アタッチメント通過部11tを通過し易くなっている。
【0066】
本発明が適用できるのは、アーム2の旋回方向が上下方向である場合に限定されない。例えば、旋回軸2aが上下に延在していてアーム2が水平方向に旋回する巻取り装置1についても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 巻取り装置
2 アーム
2a 旋回軸
3 旋回駆動モータ
4A、4B ドラム体
4c 基部
4s セグメント
4f フランジ部
4t 通過部
5a、5b 回転軸
6a、6b 回転駆動モータ
7 ホース始端保持部
8 ホース検知センサ
9 制御部
9a 配線保護移動ガイド
10 大径アタッチメント
11 セグメント
11t アタッチメント通過部
12 スペーサ部
13 ホース供給部
13a 搬送機構
13b カッタ
14 結束機
14a、14b 結束ガイド
15 結束線
H ホース
Ht 始端部
He 終端部