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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092199
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】給湯装置及び給湯システム
(51)【国際特許分類】
   H04Q 9/00 20060101AFI20230626BHJP
   F24H 15/40 20220101ALI20230626BHJP
【FI】
H04Q9/00 341B
F24H1/10 301E
F24H1/18 301A
H04Q9/00 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207272
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱田 雄也
(72)【発明者】
【氏名】梅原 淳
【テーマコード(参考)】
3L122
5K048
【Fターム(参考)】
3L122AA02
3L122AA23
3L122FA02
5K048BA14
5K048CB01
5K048GB01
5K048HA01
5K048HA02
(57)【要約】
【課題】第1及び第2の制御基板を有する給湯装置及び給湯システムにおいて、専用の通信接続構成を追加することなくメンテナンスのためのデータ通信を円滑に実行する。
【解決手段】制御基板100には、マイコン110と、通信回路120及び通信ポート130とが搭載される。マイコン110は、通信ポート130がサブ制御基板300とは切り離されて故障診断用のインターフェイス機器400と接続される場合にメンテナンスモードが設定入力されると、サブ制御基板300と通信するための第1のプロトコルが適用される状態から、インターフェイス機器400と通信するための第2のプロトコルが適用される状態へ切り替わる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の機器及び複数のセンサを有する給湯装置であって、
前記複数のセンサによる検出値を用いて前記給湯装置がユーザ指示に従って動作する様に前記複数の機器を制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、
第1のマイクロコンピュータが搭載された第1の制御基板と、
第2のマイクロコンピュータが搭載された第2の制御基板とを含み、
前記第1の制御基板には、
前記給湯装置の運転状態を示す状態データを蓄積するためのメモリと、
前記第2の制御基板と通信接続するための通信ポート及び通信回路とが更に搭載され、
前記第1のマイクロコンピュータは、前記通信ポートが前記第2の制御基板とは切り離されてメンテナンス用機器と接続される場合に前記メモリに蓄積された前記状態データを前記第1のマイクロコンピュータが前記メンテナンス用機器へ出力するための所定モードが設定入力されると、前記第2のマイクロコンピュータと通信するための第1のプロトコルが適用される状態から、前記通信ポートに接続されたメンテナンス用機器と通信するための第2のプロトコルが適用される状態へ切り替わる、給湯装置。
【請求項2】
前記第1の制御基板は、前記第2の制御基板との間での定期的な通信の成立可否に応じて、前記第2の制御基板との間の通信エラーを検知する様に構成され、
前記通信エラーは、前記所定モード中には無効化される、請求項1記載の給湯装置。
【請求項3】
前記所定モードにおいて、前記通信ポートは前記メンテナンス用機器と接続されるとともに、前記第2の制御基板は前記メンテナンス用機器との間で通信可能に接続され、
前記第1のマイクロコンピュータは、前記所定モードにおいて前記第2のプロトコルが適用される期間と、前記第1のプロトコルが適用される期間とが交互に設けられる様に前記通信回路を制御する、請求項1記載の給湯装置。
【請求項4】
前記第2のプロトコルが適用される期間長は、前記第1のプロトコルが適用される期間長よりも長い、請求項3記載の給湯装置。
【請求項5】
前記第2のプロトコルにおける通信速度は、前記第1のプロトコルにおける通信速度よりも高い、請求項1~4のいずれか1項に記載の給湯装置。
【請求項6】
前記第2のプロトコルにおける通信間隔は、前記第1のプロトコルにおける通信間隔よりも短い、請求項5記載の給湯装置。
【請求項7】
第1の給湯器及び第2の給湯器を備えた給湯システムであって、
前記第1の給湯器及び前記第2の給湯器に設けられた複数のセンサによる検出値を用いて前記給湯システムがユーザ指示に従って動作する様に前記第1の給湯器及び前記第2の給湯器を制御するためのコントローラを備え、
前記コントローラは、
第1のマイクロコンピュータが搭載された、前記第1の給湯器に内蔵される第1の制御基板と、
第2のマイクロコンピュータが搭載された、前記第2の給湯器に内蔵される第2の制御基板とを含み、
前記第1の制御基板には、
前記給湯システムの運転状態を示す状態データを蓄積するためのメモリと、
前記第2の制御基板と通信接続するための通信ポート及び通信回路とが更に搭載され、
前記第1のマイクロコンピュータは、前記通信ポートが前記第2の制御基板とは切り離されてメンテナンス用機器と接続される場合に前記メモリに蓄積された前記状態データを前記第1のマイクロコンピュータが前記メンテナンス用機器へ出力するための所定モードが設定入力されると、前記第2のマイクロコンピュータと通信するための第1のプロトコルが適用される状態から、前記メンテナンス用機器と通信するための第2のプロトコルが適用される状態へ切り替わる、給湯システム。
【請求項8】
前記第1の給湯器は、燃焼加熱式給湯器であり、
前記第2の給湯器は、ヒートポンプ加熱式給湯器である、請求項7記載の給湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯装置及び給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
給湯装置の運転中に内部に蓄積されたデータを、メンテナンス用途で給湯装置の外部に読み出すことが行われている。その際には、メンテナンス用機器を通信端子に接続して、給湯装置内部のコントローラ(マイコン)とメンテナンス用機器との間でデータ通信が行われる。
【0003】
例えば、特許第3867771号公報(特許文献1)には、給湯装置に内蔵された制御ユニットの通信端子に対して、他の給湯装置との連結運転のための連結ユニット、又は、工場出荷時や取付先での検査のための検査装置を選択的に接続する構成が記載されている。
【0004】
特許文献1には、制御ユニット内のマイコンが、通信端子に対して検査装置が接続されたことを検知すると通常の運転モードから検査モードに自動的に移行すること、並びに、通信端子に対して連結ユニットが接続されると自動的に通常運転モードから連結運転モードに切り替わることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3867771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1には、運転モードから検査モードへの移行時にどの様な制御が行われるかについては言及がなく、両モードでのデータ通信を円滑に行うための手法については何ら記載されていない。
【0007】
本発明はこの様な問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、専用の通信接続構成を追加することなくメンテナンスのためのデータ通信を円滑に実行することが可能な給湯装置及び給湯システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある局面では、複数の機器及び複数のセンサを有する給湯装置が提供される。給湯装置は、複数のセンサによる検出値を用いて給湯装置がユーザ指示に従って動作する様に複数の機器を制御するコントローラを備える。コントローラは、第1のマイクロコンピュータが搭載された第1の制御基板と、第2のマイクロコンピュータが搭載された第2の制御基板とを含む。第1の制御基板には、給湯装置の運転状態を示す状態データを蓄積するためのメモリと、第2の制御基板と通信接続するための通信ポート及び通信回路とが更に搭載される。第1のマイクロコンピュータは、通信ポートが第2の制御基板とは切り離されてメンテナンス用機器と接続される場合にメモリに蓄積された状態データを第1のマイクロコンピュータがメンテナンス用機器へ出力するための所定モードが設定入力されると、第2のマイクロコンピュータと通信するための第1のプロトコルが適用される状態から、通信ポートに接続されたメンテナンス用機器と通信するための第2のプロトコルが適用される状態へ切り替わる。
【0009】
本発明の他のある局面では、第1の給湯器及び第2の給湯器を備えた給湯システムが提供される。給湯システムは、第1の給湯器及び第2の給湯器に設けられた複数のセンサによる検出値を用いて給湯システムがユーザ指示に従って動作する様に第1の給湯器及び第2の給湯器を制御するためのコントローラを備える。コントローラは、第1の制御基板及び第2の制御基板を有する。第1の制御基板は、第1のマイクロコンピュータが搭載されて、第1の給湯器に内蔵される。第2の制御基板は、第2のマイクロコンピュータが搭載されて、第2の給湯器に内蔵される。第1の制御基板には、給湯システムの運転状態を示す状態データを蓄積するためのメモリと、第2の制御基板と通信接続するための通信ポート及び通信回路とが更に搭載される。第1のマイクロコンピュータは、通信ポートが第2の制御基板とは切り離されてメンテナンス用機器と接続される場合にメモリに蓄積された状態データを第1のマイクロコンピュータがメンテナンス用機器へ出力するための所定モードが設定入力されると、第2のマイクロコンピュータと通信するための第1のプロトコルが適用される状態から、前記メンテナンス用機器と通信するための第2のプロトコルが適用される状態へ切り替わる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1及び第2の制御基板を有する給湯装置及び給湯システムにおいて、専用の通信接続構成を追加することなくメンテナンスのためのデータ通信を円滑に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る給湯装置に対する故障診断のシステム構成図である。
図2図1に示された給湯器の構成例を説明する概略図である。
図3】制御基板の通信接続構成の比較例を説明するブロック図である。
図4】実施の形態1に係る給湯装置における制御基板の通信接続構成を説明するブロック図である。
図5】実施の形態1に係る給湯装置の通信モードの切替制御を説明するフローチャートである。
図6】通信モード間でのプロトコルの違いを説明する概念的な波形図である。
図7】実施の形態1の変形例に係る給湯システムに対する故障診断のシステム構成図である。
図8】実施の形態1に係る給湯装置における制御基板の通信接続構成を説明するブロック図である。
図9】実施の形態2に係る給湯装置又は給湯システムにおける制御基板の通信接続構成を説明するブロック図である。
図10】実施の形態2に係る給湯装置又は給湯システムの通信モードの切替制御を説明するフローチャートである。
図11】メンテナンスモードにおける時分割制御を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
【0013】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1に係る給湯装置に対する故障診断のシステム構成図である。
【0014】
図1に示される様に、実施の形態1に係る給湯装置5は、給湯器10と、リモートコントローラ(以下、「リモコン」と表記する)200とを有する。給湯器10は、複数の制御基板100及び300を有する。以下では、制御基板100及び300を区別するために、制御基板300については、サブ制御基板300とも称する。
【0015】
制御基板100とリモコン200との間は、通信線17によって接続される。更に、制御基板100は、サブ制御基板300に対しても通信線18によって接続される。
【0016】
後述する様に、給湯装置5は、給湯器10に設けられた各種センサ(後述)の検出値に代表される、給湯装置5の運転状態を示す状態データの蓄積機能を有する様に構成される。
【0017】
リモコン200は、台所及び浴室等に配置された、給湯装置5を操作するための入力装置である。リモコン200は、ユーザが視認可能な態様で情報を出力するための表示部201と、給湯装置5の運転オンオフを操作する運転スイッチ202と、ユーザ等による入力設定操作を受け付けるための操作部203とを含む。表示部201は、代表的には、液晶パネルによって構成されている。操作部203は、代表的には、プッシュボタンやタッチボタンによって構成されており、給湯設定温度に代表される、給湯装置5の設定操作を受け付け可能に構成される。
【0018】
給湯器10に対して、インターフェイス機器400を介して、パーソナルコンピュータ等の解析用機器500を接続することによって、給湯装置5に蓄積された状態データは、解析用機器500にアップロードされる。解析用機器500では、所定のアプリケーションプログラムの実行等によって、アップロードされた状態データを用いて故障診断を実行することができる。
【0019】
まず、給湯器10の構成例及び給湯装置5の状態データの項目例について、図2を用いて説明する。
【0020】
図2には、燃焼加熱式の給湯器10の構成例が示される。
【0021】
図2を参照して、給湯器10は、入水配管21と、出湯配管22と、バイパス配管23と、一次熱交換器31と、二次熱交換器32と、バーナ35と、送風ファン37と、制御基板100とを備える。
【0022】
送風ファン37は、バーナ35に対して燃焼用空気を供給する。送風ファン37からの送風量は、ファン回転数に応じて決まる。バーナ35は、図示しない燃料供給系から流量調整弁を経由した燃料ガスの供給を受けて、燃焼作動するように構成される。一次熱交換器31は、バーナ35の燃焼ガスの顕熱(燃焼熱)により、通流する湯水を熱交換によって加熱する。二次熱交換器32は、バーナ35からの燃焼排ガスの潜熱によって、通流する湯水を熱交換によって加熱する。
【0023】
入水配管21は、入水口20と、二次熱交換器32の一端(入力側)との間に接続される。二次熱交換器32の他端(出力側)は、一次熱交換器31の一端(入力側)と接続され、出湯配管22は、一次熱交換器31の他端(出力側)と、給湯栓(図示せず)と接続された出湯口25との間に接続される。給湯栓が開栓されると、入水口20に対する入水圧に応じて、入水口20から、入水配管21、二次熱交換器32、一次熱交換器31、及び、出湯配管22を経て、出湯口25へ至る流路が形成される。
【0024】
これにより、入水配管21の低温水が、二次熱交換器32での加熱後、一次熱交換器31で更に加熱されることで、出湯配管22には、高温水が出力される。更に、入水配管21及び出湯配管22の間には、バイパス配管23が接続される。バイパス配管23には、バイパス配管23の流量(流量比)を制御するための流量調整弁34が介挿接続される。一次熱交換器31から出力された高温水と、バイパス配管23を経由する低温水との混合によって、給湯設定温度に従った適温の湯が、出湯口25から給湯栓(図示せず)等の給湯先へ供給される。
【0025】
二次熱交換器32の配置によって潜熱回収を行うと、燃焼排ガスが潜熱回収のための熱交換により冷やされて凝縮することによって、二次熱交換器32の表面にドレンが生じる。従って、給湯器10は、ドレン処理のための、集水パン41、中和処理槽42、ドレンタンク43、ドレン排出路44、ドレン排出弁45、及び、サブ制御基板300を更に備える。
【0026】
集水パン41は、二次熱交換器32からドレンを集水するように構成される。中和処理槽42は、集水パン41によって集水されたドレンに対し中和処理を施す。ドレンタンク43は、中和処理後のドレンを貯留する。ドレンタンク43には、貯留されたドレンの液位を検出するための水位センサ57が設けられる。
【0027】
ドレン排出路44は、ドレンタンク43からドレンを排水するように形成される。ドレン排出弁45は、代表的には電磁開閉弁で構成されて、ドレン排出路44に設けられる。
【0028】
サブ制御基板300は、ドレンタンク43の水位センサ57の検出値に基づいて、ドレン排出弁45を制御する。これにより、ドレンタンク43に貯留されたドレンを排水可能である。サブ制御基板300についても、所定プログラムが予め記憶されたマイクロコンピュータを含んで構成される。
【0029】
送風ファン37の駆動モータ(図示せず)には、電流センサ51x及び回転速度センサ51yが設けられて、送風ファン37の駆動電流である「ファン電流」と、送風ファン37の単位時間当たりの回転数である「ファン回転数」が検出される。
【0030】
入水配管21には、温度センサ52及び流量センサ53が設けられて、「入水温度」及び「通水流量」がそれぞれ検出される。出湯配管22には、温度センサ54及び55が設けられて、「缶体温度」及び「出湯温度」がそれぞれ検出される。尚、温度センサ54は、バイパス配管23との接続点よりも上流側に配置され、温度センサ55は、当該接続点よりも下流側に配置される。又、バーナ35からの燃焼ガスの排気路には、CO濃度を検出するためのCOセンサ58が配置される。
【0031】
制御基板100及びサブ制御基板300の間は通信線18によって接続されており、両者の間では、双方向にデータを送受信することができる。例えば、制御基板100からサブ制御基板300には、給湯器10の運転状態を示すデータ、及び、エラー情報等が送信される。反対に、サブ制御基板300から制御基板100には、水位センサ57の検出値データ、及び、ドレン排出弁45の開度(開閉)を示すデータ等が送信される。
【0032】
制御基板100及びサブ制御基板300は、給湯器10の運転時において、データの送受信を伴って協調的に連動して、給湯器10の動作を制御する。即ち、制御基板100及びサブ制御基板300は、相互通信を伴う協調動作によって、リモコン200に入力されたユーザ指示に従って給湯装置5が動作する様に、上述した各センサを含むセンサ群の検出値を用いて給湯器10の各構成機器の動作を制御する「コントローラ」として機能する。制御基板100及び300は、後述する様に、所定プログラムが予め記憶されたマイクロコンピュータを含んで構成される。
【0033】
一例として、上記コントローラは、出湯温度を給湯設定温度に維持するための給湯温度制御を、通水流量及び入水温度からバーナ35でのガス燃焼量を算出し、当該ガス燃焼量に見合う燃焼用空気を供給するように送風ファン37の目標回転数を設定することによって実現する。或いは、コントローラは、COセンサ58の検出値に応じて、燃焼停止後に送風ファン37を作動させるポストパージを制御することができる。又、上述の様に、コントローラは、燃焼運転によるドレンの発生に応じてドレンタンク43の水位が上昇すると、ドレン排出弁45によって中和されたドレンを排出することができる。
【0034】
このため、給湯装置5の運転時には、制御基板100及びサブ制御基板300の間での通信が正常であるか否かの監視が常時実行される。例えば、定期的に、制御基板100からサブ制御基板300に対して、返信を求めるデータ送信が実行され、返信データが正常に得られない場合には、制御基板100及びサブ制御基板300の間での基板間通信エラーを検知する監視制御が実行される。
【0035】
制御基板100に入力される各種センサの検出値、例えば、上述の入水温度、出湯温度、缶体温度、通水流量、ファン回転数、ファン電流、CO濃度等の一部は、給湯装置5の運転状態を示す状態データとして、制御基板100に蓄積される。当該状態データには、サブ制御基板300から送信されることで収集されたデータが含まれてもよい。又、状態データは、センサ検出値を用いた演算によって求められた制御値(出力号数等)、パラメータ値等を含んでもよい。
【0036】
次に、図3を用いて、給湯装置5の制御基板の通信接続構成の比較例を説明する。
【0037】
図3を参照して、比較例に係る制御基板100♯は、マイクロコンピュータ(以下、マイコン)110と、通信回路120,121と、リモコン通信回路125と、通信ポート130,131と、リモコン通信ポート135と、外部メモリ140とを有する。
【0038】
マイコン110は、CPU(Central Processing Unit)111及びメモリ112を内蔵する。メモリ112は、図示しないROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を有する。ROMには、給湯制御及ぶ状態データの蓄積機能等のプログラムが格納されており、RAMにロードされた当該プログラムをCPU111が実行することによって、給湯制御及び状態データの蓄積機能が実現される。外部メモリ140は、例えば、シリアルフラッシュメモリ(SFM)で構成されて、本実施の形態では、状態データの記憶先に位置付けられる。
【0039】
リモコン通信回路125は、リモコン通信ポート135と通信線17で接続されるリモコン200との間で、データを送受信する。
【0040】
比較例に係る制御基板100♯では、サブ制御基板300との通信接続構成と、故障診断時におけるインターフェイス機器400との通信接続構成とが、個別に設けられる。具体的には、サブ制御基板300との通信のための通信回路121及び通信ポート131と、インターフェイス機器400との通信のための通信回路120及び通信ポート130との両方が配置される。
【0041】
サブ制御基板300は、CPU311及びメモリ312を有するマイコン310と、通信回路320と、通信ポート330とを有する。通信ポート330及び通信ポート131の間が通信線18によって接続されることにより、通信回路121及び320を介して、サブ制御基板300のマイコン310と、制御基板100のマイコン110との間で、双方向にデータを送受信することができる。
【0042】
一方で、故障診断用のインターフェイス機器400は、CPU411及びメモリ412を有するマイコン410と、通信回路420と、通信ポート430と、USB(Universal Serial Bus)通信回路440と、USBポート450とを有する。
【0043】
故障診断時には、通信ポート430及び通信ポート130が通信線19によって接続されることにより、通信回路120及び420を介して、インターフェイス機器400のマイコン410と、制御基板100のマイコン110との間で、双方向にデータを送受信することができる。USB通信回路440及びUSBポート450は、図1に示された解析用機器500(パーソナルコンピュータ)との通信接続に用いられる。
【0044】
比較例に係る制御基板100♯では、サブ制御基板300との通信接続構成と、故障診断時におけるインターフェイス機器400との通信接続構成とが個別に設けられるため、通信回路120,121の機能を固定できる一方で、通信回路及び通信ポートの配置個数が増大するため、スペース制約が厳しくなる。又、制御基板100のマイコン110には、通信回路120及び121の両方に対応して入出力ポート(図示せず)の割り当てが必要になるため、この点でも制約が厳しくなる。
【0045】
図4には、実施の形態1に係る給湯装置での制御基板100の通信接続構成を説明するブロック図が示される。
【0046】
図4を参照して、実施の形態1に係る制御基板100は、比較例に係る制御基板100♯(図3)と比較して、図3に示された通信回路121及び通信ポート131が非配置とされる点で異なる。
【0047】
制御基板100では、マイコン110からの制御指示に応じて、通信回路120の通信プロトコルを切替えることで、サブ制御基板300と通信接続するための通信回路120及び通信ポート130を、故障診断時におけるインターフェイス機器400との通信接続にも用いる。この様に、通信回路120及び通信ポート130を、サブ制御基板300との通信接続と、インターフェイス機器400との通信接続とで共用することにより、通信回路及び通信ポートの配置個数、並びに、マイコン110の入出力ポートの必要数を削減することができる。
【0048】
即ち、実施の形態1の給湯装置5では、制御基板100の通信ポート130に対して、サブ制御基板300の通信ポート330、及び、インターフェイス機器400の通信ポート430の一方が、通信線によって択一的に接続される。
【0049】
図4において、制御基板100は「第1の制御基板」、マイコン110は「第1のマイクロコンピュータ」の一実施例に対応する。同様に、サブ制御基板300は「第2の制御基板」、マイコン310は「第2のマイクロコンピュータ」の一実施例に対応する。又、インターフェイス機器400は「メンテナンス用機器」の一実施例に対応する。
【0050】
通常の給湯装置5の運転時には、制御基板100の通信ポート130に対して、サブ制御基板300の通信ポート330が通信線18を経由して接続される。このとき、通信回路120の通信モードは、デフォルトである通常運転モードに設定されて、制御基板100及びサブ制御基板300の間でのデータ通信のための通信プロトコルが設定される。給湯装置5の運転時には、マイコン110によって収集された状態データが、外部メモリ140に蓄積される。
【0051】
これに対して、給湯装置5の故障診断時には、制御基板100の通信ポート130から、サブ制御基板300の通信ポート330が切り離されるとともに、インターフェイス機器400の通信ポート430が通信線19によって接続されるとともに、外部メモリ140に蓄積された状態データをマイコン110がインターフェイス機器400に出力するためのメンテナンスモードが設定入力される。当該メンテナンスモードの開始及び終了の設定は、リモコン200の操作部203に対する予め定められた特殊操作により、又は、インターフェイス機器400を経由した解析用機器500(パーソナルコンピュータ)の操作によって入力される。或いは、メンテナンスモードの開始及び終了は、制御基板100上に設けられた図示しない入力部から入力されてもよい。
【0052】
図5には、実施の形態1に係る給湯装置の通信モードの切替制御を説明するフローチャートが示される。図5に示された制御処理は、マイコン110によって実行される。
【0053】
図5を参照して、マイコン110は、ステップ(以下、単に「S」と表記する)110により、上述したメンテナンスモードの設定中であるか否かを判定する。S110は、上述したリモコン200又は解析用機器500からの入力によって、メンテナンスモードの開始設定が入力されてから、メンテナンスモードの終了設定が入力されるまでYES判定とされる。
【0054】
マイコン110は、メンテナンスモードが設定されていないときには、S110をNO判定として、通信モードをデフォルトの通常運転モードに設定する。このとき、マイコン110は、S120により、通信回路120での通信プロトコルを、制御基板100及びサブ制御基板300の間でのデータ通信に適したプロトコルPAに設定する。更に、S130により、上述した、制御基板100及びサブ制御基板300の間での基板間通信エラーの検知が有効とされる。即ち、制御基板100及びサブ制御基板300の間の定期的な双方向通信が途絶えると、基板間通信エラーが検知される。
【0055】
これに対して、マイコン110は、メンテナンスモードの設定中には、S110をYES判定として、通信モードを故障診断用のメンテナンスモードに設定する。このとき、マイコン110は、S140により、通信回路120での通信プロトコルを、制御基板100からインターフェイス機器400への状態データの通信に適したプロトコルPMに設定する。更に、S150により、上述した、制御基板100及びサブ制御基板300の間での基板間通信エラーの検知を無効とする。図4に示されるように、インターフェイス機器400を制御基板100に接続する場合には、サブ制御基板300は制御基板100に対して非接続となるため、上述した監視制御のための定期的な双方向通信が実行されない。このため、基板間エラーの検知を無効とすることで、マイコン110が無用なエラー対応処理を実行することを回避するものである。
【0056】
図5において、メンテナンスモードは「所定モード」に対応し、プロトコルPAは「第1のプロトコル」に対応し、プロトコルPMは「第2のプロトコル」に対応する。図5の制御処理により、マイコン110は、通信ポート130がサブ制御基板300とは切り離されてインターフェイス機器400と接続される場合にメンテナンスモードが設定入力されると、サブ制御基板300と通信するためのプロトコルPAが適用される状態から、インターフェイス機器400と通信するためのプロトコルPMが適用される状態へ切り替えられる。
【0057】
図6は、通信モード間でのプロトコルの違いを説明する概念的な波形図である。
【0058】
図6(a)には、メンテナンスモードでのプロトコルPMが示される一方で、図6(b)には、通常運転モードでのプロトコルPAが示される。
【0059】
図6での(a)及び(b)の比較から理解される様に、プロトコルPM(メンテナンスモード)での通信速度Vm(bps)は、プロトコルPA(通常運転モード)での通信速度Va(bps)よりも高い。又、パケット間隔に相当する通信間隔Titv(sec)についても、プロトコルPM(メンテナンスモード)の方が、プロトコルPA(通常運転モード)よりも短い。
【0060】
メンテナンスモードでは、複数の状態データが同様のフォーマットで多数送信されるため、プロトコルPM(メンテナンスモード)の適用により、単位時間での通信量(bit)を多くすることができる。これにより、インターフェイス機器400を介して、制御基板100に蓄積された状態データを解析用機器500に高速にアップロードすることが可能となる。
【0061】
一方で、通常運転モードでは、給湯器10の運転データDT1、特定機器の運転データDT2、及び、エラー情報DT3のフォーマットが異なる複数の情報が、制御基板100及びサブ制御基板300の間で送受信される。又、メンテナンスモードと比較すると、高速に大量のデータを転送するニーズは低い。このため、通常運転モードでは、単位時間での通信量(bit)を少なくすることができる。これにより、単位時間での通信量(bit)は、メンテナンスモードよりも抑えられる。
【0062】
この様に、実施の形態1に係る給湯装置によれば、制御基板100に設けられたサブ制御基板300との通信接続構成(通信回路120及び通信ポート130)を共用して、かつ、高速のデータ転送に適したプロトコルを適用し、故障診断のための外部機器(インターフェイス機器400及び解析用機器500)に対して制御基板100の蓄積データを出力するための通信接続を実現することができる。この結果、専用の通信接続構成を追加することなくメンテナンスのためのデータ通信を円滑に実行することが可能な給湯装置を提供することができる。
【0063】
[実施の形態1の変形例]
実施の形態1では、同一の給湯器10に搭載された制御基板100及びサブ制御基板300の間の通信接続構成を、故障診断のための外部機器との通信接続構成と共用する構成例を説明したが、同様の構成を、複数の給湯器を含む給湯システムに適用することも可能である。
【0064】
図7は、実施の形態1の変形例に係る給湯システム6に対する故障診断のシステム構成図である。
【0065】
図7を参照して、実施の形態1の変形例に係る給湯システム6は、複数の給湯器10及び11と、リモコン200とを有する。例えば、給湯器10は、図2に示された燃焼加熱式の給湯器であり、給湯器11は、貯湯タンク(図示せず)を有するヒートポンプ加熱式の給湯器である。給湯器11は、制御基板350を有する。以下では、制御基板350について、実施の形態1での制御基板300と同様に、サブ制御基板350とも称する。
【0066】
図8は、実施の形態1の変形例に係る給湯システムにおける制御基板の通信接続構成を説明するブロック図である。
【0067】
図8を参照して、給湯器11のサブ制御基板350は、CPU361及びメモリ362を有するマイコン360と、通信回路370と、通信ポート380とを有する。通信ポート380及び通信ポート130の間が通信線によって接続されることにより、通信回路120及び370を介して、サブ制御基板350のマイコン360と、制御基板100のマイコン110との間で、双方向にデータを送受信することができる。
【0068】
給湯システム6の故障診断時には、制御基板100の通信ポート130から、サブ制御基板350の通信ポート380が切り離されるとともに、インターフェイス機器400の通信ポート430が通信線19によって接続される。更に、実施の形態1と同様の手法で、給湯システム6のメンテナンスモードが設定される。給湯器10のマイコン110は、図6と同様の通信モードの切替制御を実行する。
【0069】
従って、実施の形態1の変形例では、給湯器10の制御基板100は、給湯器11内のサブ制御基板350との通信接続構成(通信回路120及び通信ポート130)を共用して、かつ、実施の形態1と同様に、故障診断のための外部機器(インターフェイス機器400及び解析用機器500)に対して制御基板100の蓄積データを出力するための通信接続を実現することができる。この結果、専用の通信接続構成を追加することなくメンテナンスのためのデータ通信を円滑に実行することが可能な給湯システムを提供することができる。
【0070】
図8において、制御基板100は「第1の制御基板」、マイコン110は「第1のマイクロコンピュータ」の一実施例に対応する。同様に、サブ制御基板350は「第2の制御基板」、マイコン360は「第2のマイクロコンピュータ」の一実施例に対応する。又、インターフェイス機器400は「メンテナンス用機器」の一実施例に対応する。
【0071】
実施の形態1の変形例に係る給湯システム6では、メンテナンスモードにおいても、サブ制御基板350が制御基板100と通信接続不能となるため、給湯器10及び11が連動した給湯運転を実行することができなくなる。一方で、サブ制御基板350による給湯器11による単独給湯運転を実行することは可能である。従って、実施の形態1に係る給湯装置5では、メンテナンスモード中には給湯運転が実行できない一方で、実施の形態1の変形例1に係る給湯システム6では、メンテナンスモード中においても給湯運転を実行することが可能である。
【0072】
[実施の形態2]
実施の形態2では、実施の形態1及びその変形例に係る給湯装置及び給湯システムにおいて、メンテナンスモードにおいても、制御基板100と、サブ制御基板300又は350と通信可能とするための構成について説明する。
【0073】
図9は、実施の形態2に係る給湯装置又は給湯システムにおける制御基板の通信接続構成を説明するブロック図である。
【0074】
図9を参照して、実施の形態2では、故障診断用のインターフェイス機器400は、図4及び図8に示された、マイコン410、通信回路420、通信ポート430、USB通信回路440、及び、USBポート450に加えて、通信回路421及び通信ポート431を更に有する様に構成される。
【0075】
実施の形態2では、メンテナンスモードにおいて、通信ポート431は、通信線18を介して、サブ制御基板300の通信ポート330(図4)又はサブ制御基板350の通信ポート380(図8)と接続される。これにより、通信回路421と、サブ制御基板300の通信回路320(図4)又はサブ制御基板350の通信回路370(図8)との間でデータの送受信が可能となる。この結果、インターフェイス機器400を介して、制御基板100と、サブ制御基板300又は350との間でのデータ通信が可能となる。
【0076】
図10は、実施の形態2に係る給湯装置又は給湯システムの通信モードの切替制御を説明するフローチャートである。図10に示された制御処理は、図5に示された制御処理と同様に、マイコン110によって実行することができる。
【0077】
図10を参照して、マイコン110は、図5と同様のS110により、メンテナンスモードの設定中であるか否かを判定する。メンテナンスモードが設定されていないときには(S110のNO判定時)、図5と同様のS120により、通信モードは、デフォルトの通常運転モードに設定される。
【0078】
これに対して、マイコン110は、メンテナンスモードの設定中には(S110のYES判定時)、S125により、プロトコルを時分割制御する。実施の形態2では、通常運転モード及びメンテナンスモードのいずれにおいても、S130により、制御基板100及びサブ制御基板300の間での基板間通信エラーの検知が有効とされる。
【0079】
図11には、S125による時分割制御を説明するための概念図が示される。
【0080】
図11を参照して、時分割モードでは、一定周期で、制御基板100からインターフェイス機器400への状態データの通信に適したプロトコルPMが設定される期間701と、制御基板100とサブ制御基板300又は350との通信に適したプロトコルPAが設定される期間702とが交互に設けられる。
【0081】
時分割モードでは、マイコン110は、制御基板100の通信回路120のプロトコルに加えて、インターフェイス機器400の通信回路420,421のプロトコルについても、マイコン410を経由して制御する。
【0082】
図11に例示される様に、一定周期T0が経過する時刻t1,t2,t3から期間701が予め定められた時間長T1設けられた後、期間702が予め定められた時間長T2設けられる。即ち、時間長T1及びT2の比は、予め定められた一定値に制御することができる。又、メンテナンスモードであることから、時間長T1及びT2は、T1>T2となる様に設定することが好ましい。
【0083】
この様に、実施の形態2に係る給湯装置又は給湯システムによれば、制御基板100に設けられたサブ制御基板300との通信接続構成(通信回路120及び通信ポート130)を共用して、故障診断のための外部機器(インターフェイス機器400及び解析用機器500)との通信接続を確保するとともに、メンテナンスモードでは、メンテナンスのためのデータ通信に加えて、制御基板100とサブ制御基板300又は350との間で、通常運転モードと同様の通信を継続することができる。この結果、メンテナンスモードにおいても、制御基板100とサブ制御基板300又は350との連動を伴う、通常運転モードと同様の給湯運転を継続することができる。
【0084】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0085】
5 給湯装置、6 給湯システム、10,11 給湯器、17~19 通信線、20 入水口、21 入水配管、22 出湯配管、23 バイパス配管、25 出湯口、31 一次熱交換器、32 二次熱交換器、34 流量調整弁、35 バーナ、37 送風ファン、41 集水パン、42 中和処理槽、43 ドレンタンク、44 ドレン排出路、45 ドレン排出弁、51x 電流センサ、51y 回転速度センサ、52,54,55 温度センサ、53 流量センサ、57 水位センサ、58 COセンサ、100 制御基板、110,310,360,410 マイコン、112,312,362,412 メモリ、120,121,320,370,420,421 通信回路、125 リモコン通信回路、130,131,330,380,430,431 通信ポート、135 リモコン通信ポート、140 外部メモリ、200 リモコン、201 表示部、202 運転スイッチ、203 操作部、300,350 制御基板(サブ制御基板)、400 インターフェイス機器、440 USB通信回路、450 USBポート、500 解析用機器、Titv 通信間隔。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11