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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000922
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】二重容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 23/00 20060101AFI20221222BHJP
   B65D 1/02 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
B65D23/00 H
B65D1/02 100
B65D1/02 111
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102005
(22)【出願日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】佐野 尊
(72)【発明者】
【氏名】室屋 洋輔
【テーマコード(参考)】
3E033
3E062
【Fターム(参考)】
3E033AA02
3E033BA15
3E033BA16
3E033BB08
3E033DA03
3E033DB01
3E033DE05
3E033FA03
3E062AA09
3E062AB01
3E062AC08
3E062DA02
3E062DA05
3E062DA09
(57)【要約】
【課題】外殻から分離した内袋の取り扱い性を向上させることができる、二重容器を提供する。
【解決手段】本発明によれば、容器本体を備える、二重容器であって、前記容器本体は、内袋と、前記内袋を覆うように配置された外殻を備え、前記内袋は、前記外殻から分離可能に構成され、前記内袋には、レーザー光の照射によって情報伝達表示が印字されている、二重容器が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体を備える、二重容器であって、
前記容器本体は、内袋と、前記内袋を覆うように配置された外殻を備え、
前記内袋は、前記外殻から分離可能に構成され、
前記内袋には、レーザー光の照射によって情報伝達表示が印字されている、二重容器。
【請求項2】
請求項1に記載の二重容器であって、
前記内袋には、レーザーマーキング剤が配合されており、
前記レーザーマーキング剤は、前記内袋を構成する樹脂よりもレーザー光を吸収しやすいか、及び/又は前記内袋を構成する樹脂よりもレーザー光の吸収による変色が起こりやすい物質である、二重容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重容器が開示されている。
【背景技術】
【0002】
従来、外殻と内袋とを有する容器本体を備える二重容器が知られている。例えば、特許文献1には、外殻プリフォームと内袋プリフォームとを重ねた状態で二軸延伸ブロー成形を行い、内容物の減少に伴って内袋が収縮するよう構成された二重容器(いわゆる、積層剥離容器)を成形することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-10741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような二重容器の外殻と内袋とが別素材で成形されている場合や、使用後の内袋内に内容物が付着している場合等において、当該二重容器をリサイクルする際には、外殻と内袋とを分離することが望まれる。
【0005】
外殻と内袋は、ユーザーが内袋を外殻から引き抜くことによって分離することができるが、分離した後の内袋をユーザーがどのように取り扱えばいいのかを判断するのは容易ではない。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、外殻から分離した内袋の取り扱い性を向上させることができる、二重容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、容器本体を備える、二重容器であって、前記容器本体は、内袋と、前記内袋を覆うように配置された外殻を備え、前記内袋は、前記外殻から分離可能に構成され、前記内袋には、レーザー光の照射によって情報伝達表示が印字されている、二重容器が提供される。
【0008】
本発明の構成では、外殻から分離可能に構成された内袋には、レーザー光の照射によって情報伝達表示が印字されている。「情報伝達表示」とは、情報を伝達するための表示であり、例えば、図柄や文字によって構成される。このため、例えば、内袋の材料やリサイクル方法を示す情報伝達表示を内袋に付すことによって、分離した後の内袋をユーザーがどのように取り扱えばいいのかを判断するのが容易になる。このため、外殻から分離した内袋の取り扱い性が向上する。
【0009】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記記載の二重容器であって、前記内袋には、レーザーマーキング剤が配合されており、前記レーザーマーキング剤は、前記内袋を構成する樹脂よりもレーザー光を吸収しやすいか、及び/又は前記内袋を構成する樹脂よりもレーザー光の吸収による変色が起こりやすい物質である、二重容器である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態の二重容器1の正面図であり、口部装着部材8が容器本体2から分離されている状態を示す。図中の一点鎖線は、表面形状を構成する面の曲率が変化する境界線を表す。他の図についても同様である。
図2図2Aは、図1中のA-A断面図であり、図2Bは、図2A中のB-B断面の端面図であり、図2Cは、図2B中の領域Cの拡大図であり、図2Dは、図2A中のD-D断面の端面図である。
図3図3Aは、図1の口部5近傍の拡大斜視図であり、図3Bは、図3A中の領域Bの拡大図である。
図4図4Aは、口部装着部材8の一部を切り欠いた斜視図であり、図4Bは、口部装着部材8を斜め下側から見た斜視図である。
図5図5Aは、口部装着部材8が容器本体2に装着された状態の正面図であり、図5Bは、図5A中のB-B断面図である。
図6図6Aは、図1中のB-B断面図であり、図6Bは、容器本体2の底部近傍での内袋4の正面図であり、図6Cは、図6B中のC-C断面図である。
図7図7Aは、容器本体2の底部近傍を斜め下側から見た斜視図であり、図7Bは、図7Aから外殻3を除いた状態の内袋4の斜視図である。
図8図8Aは、容器本体2の底部近傍を斜め上側から見た斜視図であり、図8Bは、図8Aから外殻3を除いた状態の内袋4の斜視図である。
図9】内プリフォーム14及び外プリフォーム13が分離されている状態を示す斜視図である。
図10図10Aは、内プリフォーム14の正面図であり、図10B図10Cは、それぞれ、図10A中のB-B断面図及びC-C断面図であり、図10Dは、図10A中のD-D断面の拡大図であり、図10Eは、内プリフォーム14を斜め上から見た斜視図である。
図11図11Aは、内プリフォーム14に外プリフォーム13を被せている途中の状態を示す斜視図であり、図11Bは、図11A中の領域Bの拡大図であり、図11Cは、図11Aにおいて、凸部14fの中央と内プリフォーム14の中央を通る断面での端面図であり、図11Dは、図11C中の領域Dの拡大図である。
図12】内プリフォーム14に外プリフォーム13を被せることによって構成されたプリフォーム15の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0012】
1.第1実施形態
1-1.二重容器1の構成
図1に示すように、本発明の第1実施形態の二重容器1は、容器本体2と、口部装着部材8を備える。
【0013】
図1に示すように、容器本体2は、口部5と、胴部6と、底部7を備える。口部5は、開口端5cを有する筒状(好ましくは円筒状)部位である。口部5は、キャップやポンプなどの口部装着部材8を装着可能な係合部5aを備える。係合部5aは、口部装着部材8がネジ式の場合は雄ねじ部5a1であり、口部装着部材8が打栓式の場合は周方向に突出する環状突起である。口部装着部材8は、逆止弁(不図示)を有していてもよい。この場合、口部装着部材8を通じて内容物の吐出は可能であるが、外気が容器本体2内に流入しないようになっている。口部5には、フランジ5bが設けられている。フランジ5bは、口部5に口部装着部材8を装着する際に口部5を支持するために利用可能である。
【0014】
胴部6は、口部5よりも開口端5cから離れた側に口部5に隣接して配置される。胴部6は、口部5よりも外径(本明細書において、「外径」は、断面が円形でない場合は、外接円径を意味する。)が大きい。胴部6は筒状であり、底部7は、胴部6の下端に設けられ、胴部6の下端を閉塞する。胴部6は、口部5から離れるにつれて外径が大きくなる肩部6bと、肩部6bよりも底部7側に設けられ外径が略一定の胴部本体6cを備える。
【0015】
係合部5aを除いた口部5の直径は、例えば20~40mmであり、25~35mmが好ましく、具体的には例えば、20、25、30、35、40mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。口部5の長さは、例えば15~35mmであり、具体的には例えば、15、20、25、30、35mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0016】
図2に示すように、容器本体2は、内袋4と、内袋4を覆うように配置された外殻3を備える。内袋4は、後述する突出部4c以外の部位が外殻3内に収容されている。以下の説明では、内袋4のうち、容器本体2の口部5、胴部6、及び底部7に相当する部位をそれぞれ、内袋4の口部5、胴部6、及び底部7のように称する。外殻3についても同様である。
【0017】
容器本体2の高さ方向の中央での外殻3の肉厚は、例えば、0.3~0.8mmであり、0.4~0.5mmが好ましい。この肉厚は、具体的には例えば、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。容器本体2の高さ方向の中央での内袋4の肉厚は、例えば、0.10~0.25mmであり、0.15~0.20mmが好ましい。この肉厚は、具体的には例えば、0.10、0.15、0.20、0.25mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0018】
口部装着部材8に逆止弁が設けられている場合には、内袋4の内容物の吐出に伴って内袋4が収縮する。口部装着部材8に逆止弁が設けられていない場合は、内袋4の内容物を吐出した後にも内袋4が収縮しないので、外殻3の口部5を通じて、内袋4を引き出すことが容易でない。本発明は、内袋4を捻って縮径することによって、内袋4を外殻の口部5を通じて引き出すことを容易にするものであるので、口部装着部材8に逆止弁が設けられていない場合には、本発明を適用する意義が特に顕著である。但し、口部装着部材8に逆止弁が設けられている場合でも、内袋4が収縮する際に適切に縮径しない場合があるので、口部装着部材8に逆止弁が設けられている場合でも、本発明を適用する意義は顕著である。
【0019】
胴部6又は底部7には、外気導入孔16が設けられている。外気導入孔16は、外殻3を貫通する貫通孔であり、外気導入孔16を通じて、外殻3と内袋4の間の中間空間に外気を導入することができる。二重容器1が外殻3の圧縮によって内容物を吐出する構成の、いわゆるスクイズ式容器である場合、外気導入孔16を通じてエアーの出入りを制御する逆止弁を設けることが好ましい。逆止弁は、外殻3の圧縮時に外気導入孔16を閉状態し、圧縮力を除いたときに外気導入孔16を開状態にするように構成されていることが好ましい。この場合、外殻3に圧縮力を加えたときに圧縮力が内袋4に加わりやすくなるとともに、内容物の吐出後には、中間空間に速やかに外気を導入して、外殻3の形状が速やかに復元する。
【0020】
外気導入孔16に逆止弁が設けられている場合、外気導入孔16は、胴部6に設けられた凹部6d内に配置することが好ましい。この場合、胴部6をシュリンクフィルムで覆った場合に逆止弁がシュリンクフィルムと干渉することを回避することができる。また、凹部6dから口部5に向かって延びる溝6eを設けることが好ましい。溝6eは、シュリンクフィルムで覆われない位置にまで延びている。これによって、凹部6dがシュリンクフィルムで密閉されることを回避することができる。
【0021】
図2に示すように、口部5と、胴部6のうち口部5に隣接した位置の少なくとも一方の内面には、凹条9aと凸条9bが口部5の周方向に交互に現れる凹凸形状9が設けられていることが好ましい。凹凸形状9は、内袋4の内面に設けられている。凹条9aの数は、例えば、4~30であり、10~20であることが好ましい。凹条9aと凸条9bは、口部5の周方向に非平行に延びることが好ましい。凹条9aと凸条9bが延びる方向は、口部5の軸方向に対して、0~60度が好ましく、0~30度が好ましい。この角度は、具体的には例えば、0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60度であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。凹凸形状9は、口部5のみ設けられていても、胴部6のうち口部5に隣接した位置に設けられていてもよいが、口部5と胴部6にまたがって設けられることが好ましい。凹凸形状9は、内袋4の口部5の他の部位に比べて、凹条9aの肉厚を小さくして形成してもよく、凸条9bの肉厚を大きくして形成してもよく、凹条9aの肉厚を小さくするとともに凸条9bの肉厚を大きくして形成してもよい。
【0022】
凸条9bでの肉厚が凹条9aでの肉厚よりも大きいので、口部5が加えた捻りが胴部6に伝わる際に、凸条9bの方が凹条9aよりも力が伝達されやすいので、凸条9bの方が凹条9aよりも速く回転し、その結果、凹条9a及びその延長線上で内袋4に折れ目が形成されることによって、内袋4がひだ状に折り畳まれやすい。このため、凹凸形状9を設けることによって、胴部6がひだ状に折り畳まれ、その結果、胴部6が速やかに縮径される。なお、内袋4の外面には凹凸形状を設けないことが好ましい。内袋4の外面には凹凸形状を設けると、内袋4と外殻3が内袋4の回転方向について係合して、内袋4が外殻3に対して相対回転しにくくなるからである。
【0023】
口部5の凸条9bでの内袋4の肉厚(内袋4の外接円の半径-凸条9bの頂点を通る内接円の半径)をTとし、凹条9aの深さ(凹条9aの底を通る内接円の半径-凸条9bの頂点を通る内接円の半径)をDとすると、D/Tの最大値は、例えば、0.2~0.8であり、0.3~0.5が好ましい。この値は、具体的には例えば、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。口部5の、凹凸形状9以外の部位での内袋4の肉厚は、例えば1~2mmであり、具体的には例えば、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。凹条9aの深さが最大となる部位での凹条9aの深さは、例えば0.3~1.0mmであり、具体的には例えば、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0024】
口部5の開口端5cから凹凸形状9の上端までの距離は、例えば、0~30mmであり、具体的には例えば、具体的には例えば、0、5、10、15、20、25、30mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。凹凸形状9の上端から下端までの距離は、例えば、10~40mmであり、具体的には例えば、10、15、20、25、30、35、40mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0025】
図6図8に示すように、内袋4の底部7には、突起4eが設けられている。外殻3の底部7には、環状凸部3bが設けられており、環状凸部3bの内側の領域に貫通孔3cが設けられている。突起4eが貫通孔3cに挿入されることで、内袋4が外殻3に対して位置決めされている。環状凸部3b及びその内側の領域は、二軸延伸ブロー成形の際にほとんど延伸されないので、外殻3及び内袋4の両方において、肉厚が大きくなっている。
【0026】
環状凸部3bの外径をD1とし、外殻3の口部5の内径をD2とすると、D1/D2は、0.9以下が好ましい。環状凸部3b及びその内側の領域は、内袋4の肉厚が大きくなるので、D1/D2が小さいほど、内袋4の底部7が縮径されやすくなる。D1/D2は、例えば、0.1~0.9であり、具体的には例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0027】
容器本体2の底部7(つまり、内袋4及び外殻3のそれぞれの底部7)には、底部凹領域7aと、底部凹領域7aを取り囲む周縁領域7bが設けられている。底部凹領域7aは、底部7が容器本体2の内部に向かって凹まされた領域である。周縁領域7bが容器本体2の接地面となる。図6Aに示すように、底部凹領域7aの周面7a1では、周縁領域7bに近づくにつれて、内袋4及び外殻3のそれぞれの肉厚が徐々に薄くなっている。周面7a1は、周縁領域7bに向かって底部7の中央から離れるように傾斜した傾斜面になっている。言い換えると、周面7a1は、底部凹領域7aの底面7a2に向かってしぼむ円錐の一部を構成している。底部凹領域7aの底面7a2は、略平坦になっている。このため、底部凹領域7aは、略円錐台形状になっている。
【0028】
底部凹領域7aの底面7a2は、二軸延伸ブロー成形の際に延伸されにくく、肉厚が大きくなりやすいので、底面7a2の直径(言い換えると、底面7a2と周面7a1の境界線によって囲まれる領域の直径)D3が小さい方が内袋4の底部7が縮径されやすくなる。D3/D2は、0.9以下が好ましい。D3/D2は、例えば、0.1~0.9であり、具体的には例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0029】
図6図8に示すように、内袋4の底部7に、薄肉部10aと、薄肉部10aよりも肉厚が大きい厚肉部10bが内袋4の周方向に交互に現れる交互肉厚形状10が設けられている。底部7に交互肉厚形状10を設けることによって、内袋4を捻ったときに薄肉部10aが折れ曲がることによって、底部7が蛇腹状に変形して底部7が縮径されやすくなる。
【0030】
図6Cに示すように、周面7a1は、底部7近傍での内袋4の側面4dに比べて肉厚が大きいので、底部7を縮径しやすくするには、周面7a1に交互肉厚形状10を設けることが特に重要である。また、周縁領域7bは、底部7近傍での内袋4の側面4dに比べて変形しにくいので、周縁領域7bに交互肉厚形状10を設けることが特に重要である。従って、交互肉厚形状10は、底部凹領域7aの周面7a1と、周縁領域7bの少なくとも一方に設けることが好ましく、周面7a1と周縁領域7bにまたがるように設けることがさらに好ましい。また、周縁領域7bと内袋4の側面4dにまたがるように設けられることも好ましい。交互肉厚形状10をこのように設けることによって、底部7がより一層縮径されやすくなる。
【0031】
図7Bに示すように、薄肉部10a及び厚肉部10bは、底部7の中央から放射状に延びるように設けることが好ましい。また、薄肉部10aの数は、例えば、4~30であり、10~20であることが好ましい。
【0032】
薄肉部10aは、内袋4の内面と外面の一方又は両方に凹条11を設けることによって形成することができる。内袋4の内面の凹条11と外面の凹条11は、互いに対向する。隣接する2つの凹条11の間の部位が厚肉部10bとなる。
【0033】
内袋4の高さ方向に垂直な断面(図6Cのような断面)での、薄肉部10aでの内袋4の肉厚をT1とし、厚肉部10bでの内袋4の肉厚をT2とすると、T1/T2の最小値は、0.8以下であることが好ましい。T1/T2の最小値とは、断面の位置を内袋4の高さ方向に沿って移動させて各高さ位置でT1/T2を算出したときの最小値である。T1/T2が小さいほど、厚肉部10bに比べて薄肉部10aの厚さが小さくなり、底部7が蛇腹状に変形しやすくなる。この値は、0.1以上が好ましい。この値が小さすぎると、薄肉部10aでの厚さが小さくなりすぎてピンホールが発生しやすくなる。この値は、例えば0.1~0.8であり、具体的には例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0034】
口部装着部材8は、口部5に装着可能に構成され、かつ口部装着部材8の回転(ここでは、外殻3に対する相対回転)に伴って内袋4が回転するように構成されていることが好ましい。このような構成によれば、口部装着部材8を回転させることによって内袋4を捻ることが可能である。容器本体2の胴部6は、口部5よりも外径が大きいので、単に、内袋4を引っ張るだけでは、外殻3の口部5を通じて内袋4を引き出すことは容易ではないが、内袋4を捻って内袋4の胴部6を縮径させることによって、内袋4の胴部6が外殻3の口部5を通過しやすくなり、外殻3から内袋4を容易に引き出すことができる。
【0035】
以下、口部装着部材8と内袋4の係合構造をより具体的に説明する。
【0036】
図2及び図3に示すように、内袋4は、外殻3の開口端3aから突出する突出部4cを備える。突出部4cは、突出筒4c1と、係合突起4c2と、係合フランジ4c3と、当接フランジ4c4を備える。
【0037】
係合突起4c2は、突出筒4c1の周面から径方向外側に向かって突出する。係合フランジ4c3は、係合突起4c2よりも開口端3aから離れた位置に配置され且つ突出筒4c1よりも拡径された環状部位である。当接フランジ4c4は、開口端3aに当接する位置に配置され且つ突出筒4c1よりも拡径された環状部位である。当接フランジ4c4が開口端3aに当接することによって、内袋4が外殻3内に脱落することが回避される。一方、当接フランジ4c4を設けずに、係合突起4c2を開口端3aに当接させることによって内袋4が外殻3内に脱落することを回避するようにしてもよい。
【0038】
図3図5に示すように、口部装着部材8は、外筒8aと、中間筒8bと、内筒8cと、係合部8dと、爪部8eと、天板8fと、ノズル8gを備える。
【0039】
外筒8aの内面に、係合部8dが設けられている。係合部8dは、口部5の係合部5aに係合する係合部であり、係合部8dを係合部5aに係合させることによって、口部装着部材8が口部5に装着される。
【0040】
中間筒8bは、外筒8aよりも直径が小さく、外筒8aの上側に配置されている。内筒8cは、中間筒8bよりも直径が小さく、外筒8a及び中間筒8bの内部に配置される、いわゆるインナーリングである。中間筒8bの上面は、天板8fで覆われている。天板8fには、ノズル8gが設けられている。
【0041】
中間筒8bの内面には、爪部8eが設けられている。爪部8eは、周方向に離間して配置された複数(本実施形態では8個)設けられている。爪部8eの数は、例えば1~20であり、4~12個が好ましい。爪部8eは、上面8e1と、下側傾斜面8e2を備える。天板8fには、爪部8eに対向する位置に貫通孔8hが設けられている。
【0042】
このような形状の口部装着部材8は、上下方向に開閉する分割金型を用いて製造することができる。上側の金型に設けられた突起を用いて貫通孔8h及び上面8e1を形成することができるので、下側の金型を無理抜きすることなく爪部8eを形成することができる。このため、爪部8eの突出量を無理抜きが可能な突出量にする必要がなく、内袋4との係合に適した突出量(例:1mm以上)にすることができる。
【0043】
本実施形態では、係合部5aは雄ねじ部5a1であり、係合部8dは、雄ねじ部5a1に螺合可能な雌ねじ部8d1であるので、口部装着部材8を口部5に対して、締め方向(通常は上側から見て時計回り方向)に相対回転(以下、口部5に対する相対回転を、単に「回転」とも称する。)させることによって、口部装着部材8を口部5に装着することができる。口部装着部材8を締め方向に回転させると、図4Bに示す内筒8cの外周面が内袋4の内周面に密着しながら雌ねじ部8d1が雄ねじ部5a1に螺合される。この際に、内筒8cの外周面と内袋4の内周面の間の摩擦によって、口部装着部材8と共に内袋4の口部5が回転すると、内袋4が捻れてしまう。口部装着部材8を装着する前の時点で、内袋4内には内容物が充填されており、内袋4が捻れてしまうと、内袋4内の内容物が溢れ出てしまうという問題が生じる。このような問題が発生を防ぐには、口部5において内袋4が外殻3に対して相対回転しないように内袋4と外殻3を強嵌合させればいいが、単に、強嵌合させると、内袋4を外殻3から引き出すことが困難になってしまうという新たな問題が発生する。
【0044】
そこで、本実施形態では、口部5において外殻3に対する内袋4の一方向の相対回転の第1抵抗が、他方向の相対回転の第2抵抗よりも大きいという構成を採用している。例えば、雄ねじ部5a1が右ねじである場合、一方向及び他方向は、それぞれ、容器本体2の上側から見て時計回り方向及び反時計周り方向である。言い換えると、一方向は、口部装着部材8の締め方向であり、他方向は、口部装着部材8の緩め方向である。このような構成によれば、口部装着部材8を装着する際には、内袋4が外殻3に対して相対回転しにくいので、口部装着部材8を装着する際に内袋4が捻れるという問題の発生が抑制される。また、他方向への相対回転の第2抵抗が比較的小さいので、使用後に内袋4を外殻3から分離する際には、内袋4の口部5を外殻3に対して他方向に相対回転させることによって、内袋4を容易に捻って縮径させることができるので、内袋4を外殻3から引き出すことが容易である。
【0045】
具体的には、内袋4と外殻3は、口部5で凹凸係合しており、この凹凸係合は、第1抵抗が第2抵抗よりも大きくなるように構成されている。さらに具体的には、凹凸係合は、図2C及び図3Bに示すように、内袋4の外周面に設けた凸部4fと、外殻3の内周面に設けた凹部3fの係合である。図2Cに示すように、凸部4fの右側(緩め方向側)には、第2抵抗を低減するためのテーパー面4f1が設けられている。一方、凸部4fの左側(締め方向側)には、テーパー面が設けられていない。このため、口部5においては内袋4を外殻3に対して、締め方向に相対回転させるための抵抗(第1抵抗)が緩め方向に相対回転させるための抵抗(第2抵抗)よりも大きくなる。本実施形態では、凸部4fと凹部3fの組は、2つが180度間隔で設けられているが、凸部4fと凹部3fの組の数は、1つであっても3つ以上であってもよい。
【0046】
なお、テーパー面4f1を設ける代わりに又はテーパー面4f1を設けると共に、凹部3fにテーパー面を設けることによって、第2抵抗を低減させるようにしてもよい。さらに、凹凸係合は、内袋4の外周面に設けた凹部と、外殻3の内周面に設けた凸部の係合としてもよい。また、凹部3fは、外殻3を貫通する貫通孔によって構成しているが、凹部3fは、凸部4fに係合可能なものであればよく、外殻3を貫通していなくもよい。
【0047】
口部装着部材8を締め方向にさらに回転させると、雌ねじ部8d1が雄ねじ部5a1に螺合されながら、爪部8eが突出部4cに徐々に近づき、ある時点で下側傾斜面8e2が係合フランジ4c3に当接する。その状態で、口部装着部材8をさらに締め方向に回転させると、爪部8eが係合フランジ4c3を乗り越えて、図5に示す状態となる。この状態では、爪部8eは、係合フランジ4c3と、当接フランジ4c4の間に配置される。係合フランジ4c3は、爪部8eと天板8fの間の隙間に収容される。図5Bに示すように、突出筒4c1は、爪部8eと内筒8cの間に配置される。この時点で、雄ねじ部5a1と雌ねじ部8d1が締まりきっていない場合には、係合突起4c2に設けられた周方向傾斜面4c5によってガイドされて爪部8eが係合突起4c2を乗り越えることによって、口部装着部材8はさらに締め方向に回転可能である。雄ねじ部5a1と雌ねじ部8d1が締まりきった後には、口部装着部材8は締め方向に回転不能であり、且つ口部5の軸方向に移動不能となる。
【0048】
この状態では、係合突起4c2は、口部装着部材8の回転方向について、口部装着部材8の爪部8eに係合しており、係合フランジ4c3は、口部5の軸方向について、口部装着部材8の爪部8eに係合している。つまり、爪部8eが、係合突起4c2及び係合フランジ4c3に係合している。
【0049】
このため、内袋4内の内容物を使い切った後に、口部装着部材8を緩め方向(通常は上側から見て反時計回り方向)に回転させると、口部装着部材8の回転に伴って内袋4が回転する。これによって、内袋4が捻られて縮径される。
【0050】
口部装着部材8を緩め方向にさらに回転させて雌ねじ部8d1と雄ねじ部5a1の螺合が解除されると、口部装着部材8が開口端3aから離れる方向(つまり、口部5の軸方向)に移動可能になる。係合フランジ4c3は、口部5の軸方向について、口部装着部材8に係合しているので、口部装着部材8を口部5の軸方向に移動させると、内袋4も口部装着部材8と一緒に移動し、内袋4が外殻3から引き抜かれる。
【0051】
以上の通り、本実施形態の構成によれば、口部装着部材8を緩め方向に回転させるだけで、内袋4が捻られて縮径された後に、外殻3から引き抜かれるので、簡単な操作でスムーズに、内袋4と外殻3を分離することが可能になる。
【0052】
ところで、分離した後の内袋4の取り扱い方法としては、水平リサイクル、カスケードリサイクル、サーマルリサイクルなどが考えられるが、内袋4に何も表示がなければ、ユーザーが分離した内袋4をどのように取り扱えばいいのかを判断するのは容易ではない。外殻3と内袋4を分離しない容器では、成形用の金型に所定のリサイクルマークの形状を設けておくことによって、リサイクルマークの刻印を容器に形成することは容易である。一方、本実施形態のように、外殻3と内袋4を分離する場合には、内袋4には、外殻3とは異なるリサイクルマークを付する必要があるが、成形用の金型を用いて、内袋4のみにリサイクルマークの刻印を行うことは不可能である。また、後述する内プリフォーム14にリサイクルマークを設けておくことも考えられるが、内プリフォーム14を二軸延伸ブロー成形する際に、内プリフォーム14のどの部位がどの程度延伸されるのかを正確に制御することが困難であることに加えて、内プリフォーム14の延伸時にリサイクルマークも延伸されて不明瞭になってしまうという問題があるので、明瞭なリサイクルマークを内袋4のみに付することは容易ではない。
【0053】
本実施形態では、図1に示すように、内袋4には、レーザー光の照射によって情報伝達表示22が印字されている。レーザー光の照射による印字は、レーザー光の照射によって対象物を変質(酸化、剥離、発色、変色等)させることによって行われる。レーザー光の照射は、レーザーマーカーを用いて行うことができる。レーザーマーカーとは、レーザー光を少なくとも二次元方向に走査して照射可能な装置であり、予め設定した経路に沿ってレーザー光のスポットを移動させることによって、予め設定した形状を印字可能な機器である。内袋4への印字に用いるレーザーマーカーは、ファイバーレーザーマーカーであることが好ましい。
【0054】
内袋4への印字は、外殻3を介して行うので、レーザー光は、外殻3に吸収されにくい波長を有するものが好ましい。レーザー光の波長は、500~1150nmが好ましく、950~1150nmが好ましく、1000~1100nmが好ましく、1064nmがさらに好ましい。この波長は、具体的には例えば、500、950、1000、1010、1020、1030、1040、1050、1060、1064、1070、1080、1090、1100、1150nmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。このレーザー光は、PETに吸収されにくいので、外殻3がPETで構成されている場合に、外殻3を透過して内袋4に印字をすることが可能になる。
【0055】
但し、このレーザー光は、ポリオレフィン(例:ポリプロピレン、ポリエチレン)にも吸収されにくいので、内袋4には、レーザーマーキング剤を配合することが好ましい。レーザーマーキング剤は、内袋4を構成する樹脂よりもレーザー光を吸収しやすいか、及び/又は内袋4を構成する樹脂よりもレーザー光の吸収による変色が起こりやすい物質である。内袋4にレーザーマーキング剤を配合することによって、内袋4への印字が容易になる。レーザーマーキング剤としては、具体的には、アンチモンドープ酸化スズ、アンチモンまたはその化合物、会合型塩基性染料前駆体(2,2-ビス{4-[6'-(シクロヘキシル-N-メチルアミノ)-3'-メチルスピロ[フタリド-3,9'-キサンテン]-2'-イルアミノ]フェニル}プロパン)、フタリド系染料前駆体、フルオラン系染料前駆体、スピロピラン系染料前駆体、ラクタム系染料前駆体などが好ましい。レーザーマーキング剤は、例えば、マスターバッチ(所定の含有濃度にてレーザーマーキング剤を含んだ樹脂材料)として、ペレット、粒子、ペーストなど、成形加工に適した形態であることが好ましい。
【0056】
情報伝達表示22は、内袋4の取り扱い方法に関する情報を伝達するための表示であり、図柄のみで構成されていてもよく、文字のみで構成されていてもよく、両者の組み合わせで構成されていてもよい。一例では、情報伝達表示22は、リサイクルマーク22aと、メッセージ22bで構成される。図1の例では、リサイクルマーク22aは、内袋4が一般プラスチックで構成されていることを示し、メッセージ22bは、推奨されるリサイクル方法がサーマルリサイクルであることを示す。情報伝達表示22は、内袋4に印字されているので、内袋4が外殻3から分離された後も内袋4に付されたままである。このため、ユーザーが内袋4をどのように取り扱えばいいのかの判断が容易になる。
【0057】
情報伝達表示22を印字する部位において、内袋4と外殻3の間には隙間(空気層)が設けられていることが好ましい。この間に隙間がある場合、情報伝達表示22を印字する際に煙が発生し、煙に含まれる微粒子が外殻3の内面又は内袋4の外面に付着する。この微粒子が滑剤として機能し、内袋4を外殻3から引き抜く際の抵抗力が低減される。
【0058】
情報伝達表示22は、内袋4のみに印字されていることが好ましいが、レーザー光の照射条件によっては、外殻3にも印字されてしまう場合がある。この場合、外殻3に印字された情報伝達表示22は、内袋4に印字された情報伝達表示22よりも薄い(視認性が低い)ことが好ましい。また、外殻3には、情報伝達表示22の印字に起因する凹凸形状が形成されていないことが好ましく、外殻3の表面が平滑であることが好ましい。
【0059】
外殻3には、情報伝達表示23が設けられている。情報伝達表示23は、外殻3の取り扱い方法に関する情報を伝達するための表示であり、図柄のみで構成されていてもよく、文字のみで構成されていてもよく、両者の組み合わせで構成されていてもよい。例では、情報伝達表示23は、リサイクルマーク23aと、メッセージ23bで構成される。図1の例では、リサイクルマーク23aは、外殻3がPETで構成されていることを示し、メッセージ23bは、推奨されるリサイクル方法が水平リサイクルであることを示す。情報伝達表示23を付する方法は、特に限定されないが、シールを貼り付けたり、インクで印刷したりする方法は、外殻3のリサイクル性に悪影響を与えるので、情報伝達表示23は、レーザー光の照射による印字によって付することが好ましい。
【0060】
外殻3がPETである場合、レーザー光の波長は、8.0~12μmが好ましく、9.0~11μmが好ましい。この波長は、具体的には例えば、8.0、8.5、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、10.0、10.1、10.2、10.3、10.4、10.5、10.6、10.7、10.8、10.9、11.0、11.5、12.0μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。このような波長のレーザー光は、外殻3に吸収されやすいので、外殻3に情報伝達表示23を印字するのに適している。外殻3の印字に用いるレーザーマーカーは、上記波長のレーザー光を出射可能なCO2レーザーマーカーが好ましい。
【0061】
情報伝達表示23は、外殻3のみに印字されていることが好ましいが、レーザー光の照射条件によっては、内袋4にも印字されてしまう場合がある。この場合、内袋4に印字された情報伝達表示23は、外殻3に印字された情報伝達表示23よりも薄い(視認性が低い)ことが好ましい。情報伝達表示23は、情報伝達表示22とは重ならないように設けることが好ましい。
【0062】
また、外殻3には、情報伝達表示22を見えなくする被覆領域を設けてもよい。被覆領域を設ける方法は、特に限定されないが、シールを貼り付けたり、インクで印刷したりする方法は、外殻3のリサイクル性に悪影響を与えるので、被覆領域は、レーザー光の照射による印字によって付することが好ましい。この場合、内袋4を引き抜くことによって初めて情報伝達表示22を視認することができるので、内袋4を引き抜く前の状態で容器本体2に情報伝達表示22と情報伝達表示23の両方が視認されることによるユーザーの混乱を防ぐことができる。また、情報伝達表示22がくじや占いのような趣向性を有するような表示である場合には、被覆領域を設けることによって、内袋4を引き抜く動機付けを与えることができる。
【0063】
1-2.二重容器1の製造方法
図9図12に示すように、容器本体2は、内袋4となる内プリフォーム14に、外殻3となる外プリフォーム13を被せて構成されたプリフォーム15を加熱して二軸延伸ブロー成形することによって形成することができる。
【0064】
図9に示すように、内プリフォーム14は、有底筒状であり、口部14aと、胴部14bと、底部14cを備える。口部14aの開口端には、突出部14dが設けられている。突出部14dは、成形時に変形せずにそのままの形状で突出部4cとなる。従って、突出部4cについて述べた事項は、突出部14dにも当てはまる。底部14cは、胴部14bの下端を閉じるように設けられる。底部14cには、位置決めピン14c1が設けられている。
【0065】
図10に示すように、内プリフォーム14の内面には、凹凸形状19が設けられている。凹凸形状19は、そのままの形状又は成形時に延伸されて、容器本体2の凹凸形状9となる。凹凸形状9に関する説明は、その趣旨に反しない限り、凹凸形状19にも当てはまる。
【0066】
図9図10に示すように、内プリフォーム14の底部14cの近傍には、薄肉部20aと、薄肉部20aよりも肉厚が大きい厚肉部20bが周方向に交互に現れる交互肉厚形状20が設けられている。交互肉厚形状20が二軸延伸ブロー成形の際に延伸されて交互肉厚形状10となる。薄肉部20aの数は、例えば、4~30であり、10~20であることが好ましい。薄肉部20aは、内プリフォーム14の長手方向に沿った方向に設けることが好ましい。
【0067】
薄肉部20aは、内プリフォーム14の内面と外面の一方又は両方に凹条21を設けることによって形成することができる。内プリフォーム14の内面に凹条21を設けると、成形後に内袋4の内面に凹条11が形成される。内プリフォーム14の外面に凹条21を設けると、成形後に内袋4の外面に凹条11が形成され、かつ、外面の凹条11に対向する位置の内袋4の内面にも凹条11が形成される。ブローの際のエアーの圧力によって凹条11に対向する位置の樹脂が外部に向かって押圧されるからである。
【0068】
内プリフォーム14の高さ方向に垂直な断面(図10Dのような断面)での、薄肉部20aでの内袋4の肉厚をt1とし、厚肉部20bでの内プリフォーム14の肉厚をt2とすると、T1/T2の最小値は、0.8以下であることが好ましい。t1/t2の最小値とは、断面の位置を内プリフォーム14の高さ方向に沿って移動させて各高さ位置でt1/t2を算出したときの最小値である。t1/t2の値は、T1/T2に相関しており、t1/t2を小さくすることによってT1/T2を小さくすることができる。t1/t2の値は、0.1以上が好ましい。この値は、例えば0.1~0.8であり、具体的には例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0069】
図9に示すように、外プリフォーム13は、有底筒状であり、口部13aと、胴部13bと、底部13cを備える。底部13cは、胴部13bの下端を閉じるように設けられる。底部13cには、環状凸部13d及び位置決め孔(不図示)が設けられている。
【0070】
図11に示すように、プリフォーム15を形成する際に、突出部14dを口部13aの開口端に当接させると共に、位置決めピン14c1を位置決め孔に挿入する。これによって、内プリフォーム14と外プリフォーム13が互いに位置決めされる。この状態では、口部14aと口部13aが対向し、胴部14bと胴部13bが対向する。
【0071】
口部13a,14aがプリフォーム15の口部15aとなり、胴部13b,14bがプリフォーム15の胴部15bとなり、底部13c,14cがプリフォーム15の底部15cとなる。胴部15b及び底部15cが、二軸延伸ブロー成形において主に延伸される。但し、二軸延伸ブロー成形は、環状凸部13dを支持した状態で行われるので、環状凸部13d及びその内側領域は、二軸延伸ブロー成形の際にほとんど延伸されない。環状凸部13dは、成形後に環状凸部3bとなる。
【0072】
ところで、プリフォーム15を加熱して二軸延伸ブロー成形する際には、通常、プリフォーム15の内面側(つまり、内プリフォーム14の内面側)が支持される。プリフォーム15の搬送方法としては、底部15cを下側に向ける正立搬送と、底部15cを上側に向ける倒立搬送があり、正立搬送が一般的であり、好ましい。一方、プリフォーム15を正立搬送すると、外プリフォーム13が内プリフォーム14から外れて脱落してしまうという問題が発生する虞がある。口部15aにおいて外プリフォーム13と内プリフォーム14を強く嵌合させると、外プリフォーム13の脱落を抑制することが可能であるが、その場合、成形によって得られる容器本体2において、内袋4が外殻3から外れにくくなるという問題が新たに発生する。
【0073】
そこで、使用後には内袋4を外殻3から容易に引き出すことを可能にしつつ、外プリフォーム13の脱落を抑制すべく、本実施形態では、内プリフォーム14と外プリフォーム13を口部15aにおいて凹凸係合させている。
【0074】
本実施形態では、凹凸係合は、図11に示すように、内プリフォーム14の口部14aの外周面に設けた凸部14fと、外プリフォーム13の口部13aの内周面に設けた凹部13fの係合である。凸部14f及び凹部13fがそれぞれ凸部4f及び凹部3fとなる。凸部14fには、4f1となるテーパー面14f1が設けられている。従って、凸部14f及び凹部13fの説明は、その趣旨に反しない限り、凸部4f及び凹部3fについても成り立ち、凸部4f及び凹部3fの説明は、その趣旨に反しない限り、凸部14f及び凹部13fについても成り立つ。
【0075】
図11に示すように、内プリフォーム14を外プリフォーム13内に挿入する際に、凸部14fが外プリフォーム13の開口縁を押し広げながら外プリフォーム13内に挿入され、凹部13fに係合させる。このような係合の際の抵抗を低減すべく、凸部14fの下側(外プリフォーム13に対向する側)には、テーパー面14f2が設けられている。一方、凸部14fの上側には、テーパー面が設けられていない。このため、凸部14fが凹部13fに係合した後は、係合が解除されにくくなっている。
【0076】
なお、テーパー面14f2を設ける代わりに又はテーパー面14f1を設けると共に、外プリフォーム13の開口縁にテーパー面を設けることによって、凸部14fを凹部13fに係合させる際の抵抗を低減させるようにしてもよい。さらに、凹凸係合は、内プリフォーム14の外周面に設けた凹部と、外プリフォーム13の内周面に設けた凸部の係合としてもよい。また、凹部13fは、外プリフォーム13を貫通する貫通孔によって構成しているが、凹部13fは、凸部14fに係合可能なものであればよく、外プリフォーム13を貫通していなくてもよい。
【0077】
内プリフォーム14及び外プリフォーム13は、ポリエステル(例:PET)やポリオレフィン(例:ポリプロピレン、ポリエチレン)等の熱可塑性樹脂のダイレクトブロー成形や射出成形等によって形成可能である。内プリフォームは、外プリフォームよりも成形収縮率が大きい材料で構成することが好ましい。この場合、成形収縮によって外殻3と内袋4の間に隙間が形成されて外殻3と内袋4の間の中間空間への外気導入が容易になる。
【0078】
一例では、内プリフォーム14がポリオレフィン(例:ポリプロピレン)で構成され、外プリフォーム13はPETで構成される。ポリオレフィンは、PETよりも成形収縮率が大きいので、このような樹脂構成にすることで、外殻3と内袋4の間に隙間が形成されやすくなる。また、内プリフォーム14と外プリフォーム13の材料を異ならせることによってブロー成形の際に互いに溶着することが抑制される。
【0079】
内プリフォーム14を構成する材料には、レーザーマーキング剤を配合することが好ましい。この場合に、内プリフォーム14が成形されて形成される内袋4にもレーザーマーキング剤が配合される。
【0080】
また、内プリフォーム14の口部14aがポリオレフィンで構成され、外プリフォーム13の口部13aが非晶質PETで構成されている場合、二軸延伸ブロー成形において、口部13aが加熱されることによって非晶質PETの結晶化が進んで、口部13aの寸法が縮小される。一方、口部14aも加熱されるが、ポリオレフィンは、結晶性樹脂であり、二軸延伸ブロー成形の前の時点で、既に、ある程度結晶化されているので、二軸延伸ブロー成形に加熱されても寸法の変化は、非晶質PETよりも小さい。このため、口部13aの収縮が口部14aの収縮よりも顕著となり、内プリフォーム14の突出部14dと外プリフォーム13の開口端の間に隙間が形成され、一対の分割金型でプリフォーム15を挟むのに支障が出る場合がある。また、成形後に得られる容器本体2については、図3Aに示す内袋4の突出部4cと、外殻3の開口端3aの間に隙間ができ、外観が悪くなる虞がある。しかし、本実施形態では、内プリフォーム14と外プリフォーム13が口部15aにおいて凹凸係合しているので、内袋4と外殻3も口部5において係合され、上記の隙間の発生が抑制される。
【0081】
内プリフォーム14は、ダイレクトブロー成形で形成することが好ましい。ダイレクトブロー成形(溶融状態の筒状パリソンを用いたブロー成形)によれば、積層構造の内プリフォーム14を容易に形成することができる。外プリフォーム13は、射出成形で形成することが好ましい。
【0082】
プリフォーム15を二軸延伸ブロー成形した後は、外殻3に外気導入孔16を形成することによって図1に示す容器本体2を得ることができる。
【0083】
次に、レーザーマーカーを用いて、容器本体2に情報伝達表示22,23を印字する。その後に、内袋4内に内容物を充填した後に、口部装着部材8を口部5に装着することによって、二重容器1を得ることができる。
【0084】
2.その他の実施形態
・上記実施形態では、二軸延伸ブロー成形した後に外気導入孔16を形成しているが、外プリフォーム13に外気導入孔となる貫通孔を予め形成しておいてもよい。
・外気導入孔16は、外殻3の底部に形成してもよい。
・本発明では、内袋4を捻る構成は、特に限定されないので、口部装着部材8の回転に伴って内袋4が回転するように構成されていなくてもよい。この場合、例えば、指で内袋4をつまんで内袋4を回転させてもよい。従って、口部装着部材8としては、内袋4と係合する構造を有さないキャップやポンプを用いてもよい。また、容器本体2は、突出部4cを備えなくてもよく、例えば、突出部4cの代わりに、内袋4の開口端にフランジを設け、このフランジを外殻3の開口端に当接させることによって、内袋4が外殻3内に脱落することを回避することができる。
・凹凸形状9,19、交互肉厚形状10,20、凹凸形状9,19、環状凸部3b,13d等の構成は、省略可能である。
・内袋4と外殻3、内プリフォーム14と外プリフォームは、それぞれ、凹凸係合していなくてもよい。
・容器本体2は、二軸延伸ブロー成形以外の方法で形成してもよく、例えば、溶融状態の積層パリソンを成形するダイレクトブロー成形によって形成することができる。
【実施例0085】
1.容器本体2の製造
上述した方法に従って、図9図12に示すプリフォーム15を二軸延伸ブロー成形することによって、図1に示す容器本体2(内容量300mL)を製造した。内プリフォーム14は、プロピレン-エチレンランダム共重合体(型式:ウィンテック、日本ポリプロ社製)に、レーザーマーキング剤(アンチモンドープ酸化スズ・雲母含有グレード、トーヨーカラー社製)を5質量%配合した組成物を射出成形することによって製造した。外プリフォーム13は、PET(型式:チタン系触媒グレード、帝人社製)を300℃で射出成形して外プリフォームの形状とした後に20℃に急冷することによって製造した。急冷によって溶融状態のPETを非晶質状態にした。
【0086】
このようなプリフォーム15を110℃(プリフォーム15の長手方向の中央での温度)に加熱した後に、二軸延伸ブロー成形をして、容器本体2を得た。
【0087】
2.情報伝達表示22,23の印字
ファイバーレーザーマーカー(レーザー光波長1064nm、型式:LM-3200F、ブラザー工業社製)を用いて、容器本体2に情報伝達表示22を印字した。レーザー光の照射条件は、出力20W(30%)、スキャン速度1500mm/sとした。
【0088】
次に、CO2レーザーマーカーを用いて、容器本体2に情報伝達表示23を印字した。
【0089】
3.評価
情報伝達表示22は、内袋4には明瞭に印字されていたが、外殻3には印字されていなかった。一方、情報伝達表示23は、外殻3には明瞭に印字されていたが、内袋4には印字されていなかった。
【符号の説明】
【0090】
1 :二重容器
2 :容器本体
3 :外殻
3a :開口端
3b :環状凸部
3c :貫通孔
3f :凹部
3f1 :溝
3f2 :端部
3f3 :端部
4 :内袋
4c :突出部
4c1 :突出筒
4c2 :係合突起
4c3 :係合フランジ
4c4 :当接フランジ
4c5 :周方向傾斜面
4d :側面
4e :突起
4f :凸部
4f1 :テーパー面
5 :口部
5a :係合部
5a1 :雄ねじ部
5b :フランジ
5c :開口端
6 :胴部
6b :肩部
6c :胴部本体
6d :凹部
6e :溝
7 :底部
7a :底部凹領域
7a1 :周面
7a2 :底面
7b :周縁領域
8 :口部装着部材
8a :外筒
8b :中間筒
8c :内筒
8d :係合部
8d1 :雌ねじ部
8e :爪部
8e1 :上面
8e2 :下側傾斜面
8f :天板
8g :ノズル
8h :貫通孔
9 :凹凸形状
9a :凹条
9b :凸条
10 :交互肉厚形状
10a :薄肉部
10b :厚肉部
11 :凹条
13 :外プリフォーム
13a :口部
13b :胴部
13c :底部
13d :環状凸部
13f :凹部
14 :内プリフォーム
14a :口部
14b :胴部
14c :底部
14c1 :位置決めピン
14d :突出部
14f :凸部
14f1 :テーパー面
14f2 :テーパー面
15 :プリフォーム
15a :口部
15b :胴部
15c :底部
16 :外気導入孔
19 :凹凸形状
20 :交互肉厚形状
20a :薄肉部
20b :厚肉部
21 :凹条
22 :情報伝達表示
22a :リサイクルマーク
22b :メッセージ
23 :情報伝達表示
23a :リサイクルマーク
23b :メッセージ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12