(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092201
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】給湯装置
(51)【国際特許分類】
F24H 15/10 20220101AFI20230626BHJP
F24H 15/40 20220101ALI20230626BHJP
【FI】
F24H1/10 303Z
F24H1/10 301E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207277
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 潤也
【テーマコード(参考)】
3L034
【Fターム(参考)】
3L034BA22
3L034EA07
(57)【要約】
【課題】給湯装置の故障診断のためのデータ蓄積機能を高める。
【解決手段】マイコン150は、給湯装置の運転状態を示す複数項目の状態データを、メモリ160の通常レコード領域AR1に定期的に記憶する書込処理161を実行する。書込処理161では、最新の第1期間長における状態データの各項目の値が更新されて保存される。マイコン150は、異常発生に応じて、通常レコード領域AR1に記憶されている状態データの少なくとも一部の項目を故障診断用データとしてエラーレコード領域AR2に保存する保存処理162を実行する。保存処理162は、故障診断用データが、異常発生時点の直前の第2期間長における状態データの値を含む様に実行される。第2期間長は、異常及び状態データの項目の少なくとも一方に依存して、第1期間長以下の範囲で異なる様に設定される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の機器及び複数のセンサを有する給湯装置であって、
前記複数のセンサによる検出値を用いて前記給湯装置がユーザ指示に従って動作する様に前記複数の機器を制御する制御部と、
第1記憶領域及び第2記憶領域を有するメモリとを備え、
前記制御部は、
前記検出値を含む、前記給湯装置の運転状態を示す複数項目の状態データを前記第1記憶領域に定期的に記憶する書込処理と、
前記給湯装置の予め定められた異常の発生に応じて、異常発生時点において前記第1記憶領域に記憶されている、前記複数項目の少なくとも一部の項目の状態データを故障診断用データとして前記第2記憶領域に保存する保存処理とを実行し、
前記書込処理は、前記第1記憶領域において、現時点までの最新の第1期間長における前記複数項目の状態データの値が更新されて保持される様に実行され、
前記保存処理は、前記故障診断用データが、前記異常発生時点の直前の第2期間長における前記少なくとも一部の項目の状態データの値を含む様に実行され、
前記第2期間長は、前記状態データの前記項目、及び、前記異常の少なくとも一方に依存して、前記第1期間長以下の範囲で異なる様に設定される、給湯装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記故障診断用データが前記異常発生時点の直後の第3期間長における前記状態データの値を含む様に、前記異常発生時点から前記第3期間長が経過するまでの間における前記少なくとも一部の項目の状態データの値を前記第2記憶領域に保持するための処理を更に実行し、
前記第3期間長は、前記状態データの前記項目、及び、前記異常の少なくとも一方に依存して異なる様に設定される、請求項1記載の給湯装置。
【請求項3】
前記第2記憶領域に保持される前記故障診断用データに含まれる前記状態データの各前記項目に対して、前記第2期間長と前記第3期間長との和は一定である、請求項2記載の給湯装置。
【請求項4】
前記少なくとも一部の項目は、前記異常に依存して異なる様に設定される、請求項1~3のいずれか1項に記載の給湯装置。
【請求項5】
前記第2期間長を、前記状態データの前記項目、及び、前記異常の少なくとも一方で区分されたメッシュ毎に変更するための操作入力部を更に備える、請求項1記載の給湯装置。
【請求項6】
前記制御部は、操作入力に応じて、前記第2期間長及び前記第3期間長を、前記状態データの前記項目、及び、前記異常の少なくとも一方で区分されたメッシュ毎に変更可能に構成される、請求項2又は3に記載の給湯装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1記憶領域に保持される前記状態データの値の数が、前記状態データの前記項目によって異なる様に、前記書込処理を実行する、請求項1~6のいずれか1項に記載の給湯装置。
【請求項8】
前記状態データの一部の第1状態データは、前記書込処理毎に標準となる第1の数の値が前記第1記憶領域に書き込まれ、
前記状態データの一部の第2状態データは、前記書込処理毎に前記第1の数よりも多い第2の数の値が前記第1記憶領域に書き込まれ、
前記状態データの一部の第3状態データは、前記書込処理毎に前記第1の数よりも少ない第3の数の値が前記第1記憶領域に書き込まれ、
前記第2の数及び前記第1の数の差と前記第2状態データの項目の数との積は、前記第1の数と前記第3の数の差と前記第3状態データの項目の数との積と同一である、請求項7記載の給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯装置に関し、より特定的には、運転時の状態データ蓄積機能を有する給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯装置等の熱機器について、異常発生時に当該異常発生までの運転状態を把握して、異常の原因究明に用いるニーズが存在する。例えば、特開2001-165402号公報(特許文献1)に記載された熱機器の運転監視方法では、運転状態の検出データと、その検出時刻とが、運転状態データとして所定時間間隔に記憶される。更に、熱機器の異常発生時には、当該異常発生時の検出データ及び検出時刻を異常時データとして記憶し、異常発生時刻を含む所定期間の運転状態データと、当該異常時データとを出力する監視運転方法が記載されている。
【0003】
特許文献1の運転監視方法では、上記所定期間分の最新の運転状態データを記憶手段に記憶させる、即ち、取得後に所定期間が経過した運転状態データについては消去することで、効率的に運転状態データを記憶し、かつ、異常発生時には外部出力することで、異常の原因究明に役立てることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
給湯装置の異常の原因究明には、異常発生直前における運転状態データの挙動が有用であるが、この際には、発生した異常に依存して、長期間の挙動の把握が必要なものとそうでないものとが存在する。
【0006】
この点について、特許文献1の運転監視方法では、異常発生時において、異常発生前の運転状態についても取得することが可能であるが、異常発生前での蓄積された運転状態データの期間長は、一律に固定されている。この結果、原因究明に必要な運転状態データを十分に蓄積できないこと、或いは、上記期間長を確保することで異常時データの記憶に要する容量が増大することが懸念される。
【0007】
本発明はこの様な問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、給湯装置の故障診断のためのデータ蓄積機能を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある局面では、複数の機器及び複数のセンサを有する給湯装置が提供される。給湯装置は、制御部と、第1記憶領域及び第2記憶領域を有するメモリとを備える。制御部は、複数のセンサによる検出値を用いて給湯装置がユーザ指示に従って動作する様に複数の機器を制御する。制御部は、給湯装置の運転状態を示す複数項目の状態データの値を第1記憶領域に定期的に記憶する書込処理と、給湯装置の予め定められた異常の発生に応じて、異常発生時点において第1記憶領域に記憶されている、複数項目の少なくとも一部の項目の状態データを故障診断用データとして第2記憶領域に保存する保存処理とを実行する。複数項目の状態データには、複数のセンサによる検出値が含まれる。書込処理は、第1記憶領域において、現時点までの最新の第1期間長における複数項目の状態データの値が更新されて保持される様に実行される。保存処理は、故障診断用データが、異常発生時点の直前の第2期間長における少なくとも一部の項目の状態データの値を含む様に実行される。第2期間長は、状態データの項目、及び、異常の少なくとも一方に依存して、第1期間長以下の範囲で異なる様に設定される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、給湯装置の故障診断のためのデータ蓄積機能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態に係る給湯装置に対する故障診断のシステム構成図である。
【
図2】
図1に示された給湯器の構成例を説明する概略図である。
【
図3】給湯装置の故障診断用データの蓄積に係る構成を説明するブロック図である。
【
図4】給湯装置における故障診断用データの蓄積処理を説明する概念図である。
【
図5】
図4に示された通常レコード領域への書込処理、及び、エラーレコード領域への保存処理を説明するための概念図である。
【
図6】エラーレコード領域に記憶される状態データの期間長の第1の設定例を説明する概念図である。
【
図7】エラーレコード領域に記憶される状態データの期間長の第2の設定例を説明する概念図である。
【
図8】エラーレコード領域に対する状態データの各項目の記憶態様を指定するためのテーブルデータの設定例を説明する概念図である。
【
図9】マイコンから通常レコード領域への書込処理を説明する概念図である。
【
図10】本実施の形態の変形例に係る書込処理のデータ内容を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
【0012】
図1は、本実施の形態に係る給湯装置に対する故障診断のシステム構成図である。
【0013】
図1に示される様に、本実施の形態に係る給湯装置5は、給湯器10と、リモートコントローラ(以下、「リモコン」と表記する)200とを有する。給湯器10には、コントローラ100が内蔵されており、コントローラ100とリモコン200との間は、通信線17によって接続される。
【0014】
後述する様に、給湯装置5は、給湯器10に設けられた各種センサ(後述)の検出値に代表される、給湯装置5の運転状態を示す状態データの蓄積機能を有する様に構成される。
【0015】
リモコン200は、台所及び浴室等に配置された、給湯装置5を操作するための入力装置である。リモコン200は、ユーザが視認可能な態様で情報を出力するための表示部201と、給湯装置5の運転オンオフを操作する運転スイッチ202と、ユーザ等による入力設定操作を受け付けるための操作部203とを含む。表示部201は、代表的には、液晶パネルによって構成されている。操作部203は、代表的には、プッシュボタンやタッチボタンによって構成されており、給湯設定温度に代表される、給湯装置5の設定操作を受け付け可能に構成される。
【0016】
給湯装置5は、インターネット等との通信接続によって、遠隔監視又は遠隔操作可能に構成されてもよい。例えば、リモコン200には、無線LAN(Local Area Network)ルータ220と通信するための通信アダプタ(図示せず)が内蔵されている。
【0017】
無線LANルータ220は、リモコン200を含む一定範囲内に存在する機器を、外部通信網240を介して管理サーバ250に通信接続するための通信中継器である。尚、外部通信網240は、代表的には、インターネットであるので、以下では、外部通信網240を、単に、インターネット240とも称する。
【0018】
管理サーバ250は、インターネット240に接続されて、給湯装置5に対する遠隔管理機能を有する。リモコン200は、無線通信により、無線LANルータ220に通信接続されることで、インターネット240を介して管理サーバ250と通信することができる。これにより、給湯装置5は管理サーバ250と通信接続される。
【0019】
管理サーバ250に対しては、スマートフォンまたはタブレット端末などの携帯端末装置230から通信接続することも可能である。携帯端末装置230が無線LANルータ220と接続可能な範囲内に存在する場合には、無線LANルータ220を経由して、携帯端末装置230は、管理サーバ250と通信可能である。又、携帯端末装置230が宅外などにある場合であっても、携帯端末装置230は、基地局270を介してインターネット240に接続することによって、管理サーバ250と通信することができる。
【0020】
ユーザは、リモコン200の操作の他、携帯端末装置230を用いて、無線LANルータ220と接続可能な範囲の内部または外部の両方において、管理サーバ250とアクセスすることによって、給湯装置5に対する遠隔制御(遠隔操作および遠隔監視)を行なうことも可能である。
【0021】
リモコン200および携帯端末装置230には、給湯装置5のアプリケーションプログラムをインストールすることができる。例えば、当該アプリケーションプログラムは、管理サーバ250からダウンロードされた後、インストールされる。
【0022】
更に、給湯器10に対して、インターフェイス機器300を介して、パーソナルコンピュータ等の解析用機器400を接続することによって、給湯装置5に蓄積された状態データは、解析用機器400にアップロードされる。解析用機器400では、所定のアプリケーションプログラムの実行等によって、アップロードされた状態データを用いて故障診断を実行することができる。
【0023】
まず、給湯器10の構成例及び給湯装置5の状態データの項目例について、
図2を用いて説明する。
【0024】
図2には、燃焼加熱式の給湯器10の構成例が示される。
【0025】
図2を参照して、給湯器10は、構成機器を格納する筐体11と、入水配管21と、出湯配管22と、バイパス配管23と、一次熱交換器31と、二次熱交換器32と、バーナ35と、送風ファン37と、コントローラ100とを備える。
【0026】
送風ファン37は、バーナ35に対して燃焼用空気を供給する。送風ファン37からの送風量は、ファン回転数に応じて決まる。バーナ35は、図示しない燃料供給系から流量調整弁を経由した燃料ガスの供給を受けて、燃焼作動するように構成される。一次熱交換器31は、バーナ35の燃焼ガスの顕熱(燃焼熱)により、通流する湯水を熱交換によって加熱する。二次熱交換器32は、バーナ35からの燃焼排ガスの潜熱によって、通流する湯水を熱交換によって加熱する。
【0027】
入水配管21は、入水口20と、二次熱交換器32の一端(入力側)との間に接続される。二次熱交換器32の他端(出力側)は、一次熱交換器31の一端(入力側)と接続され、出湯配管22は、一次熱交換器31の他端(出力側)と、給湯栓(図示せず)と接続された出湯口25との間に接続される。給湯栓が開栓されると、入水口20に対する入水圧に応じて、入水口20から、入水配管21、二次熱交換器32、一次熱交換器31、及び、出湯配管22を経て、出湯口25へ至る流路が形成される。
【0028】
これにより、入水配管21の低温水が、二次熱交換器32での加熱後、一次熱交換器31で更に加熱されることで、出湯配管22には、高温水が出力される。更に、入水配管21及び出湯配管22の間には、バイパス配管23が接続される。バイパス配管23には、バイパス配管23の流量(流量比)を制御するための流量調整弁34が介挿接続される。一次熱交換器31から出力された高温水と、バイパス配管23を経由する低温水との混合によって、給湯設定温度に従った適温の湯が、出湯口25から給湯栓(図示せず)等の給湯先へ供給される。
【0029】
送風ファン37の駆動モータ(図示せず)には、電流センサ51x及び回転速度センサ51yが設けられて、送風ファン37の駆動電流である「ファン電流」と、送風ファン37の単位時間当たりの回転数である「ファン回転数」が検出される。
【0030】
入水配管21には、温度センサ52及び流量センサ53が設けられて、「入水温度」及び「通水流量」がそれぞれ検出される。出湯配管22には、温度センサ54及び55が設けられて、「缶体温度」及び「出湯温度」がそれぞれ検出される。尚、温度センサ54は、バイパス配管23との接続点よりも上流側に配置され、温度センサ55は、当該接続点よりも下流側に配置される。更に、筐体11の内部には、雰囲気温度を検出するための温度センサ56が配置される。温度センサ56の検出温度は、凍結防止制御の起動要否の判定等に用いられる。又、バーナ35からの燃焼ガスの排気路には、CO濃度を検出するためのCOセンサ58が配置される。
【0031】
コントローラ100は、リモコン200に入力されたユーザ指示に従って給湯装置5が動作する様に、上述した各センサを含むセンサ群の検出値を用いて、給湯器10の各構成機器の動作を制御する。コントローラ100は、代表的には、所定プログラムが予め記憶されたマイクロコンピュータを含んで構成される。
【0032】
一例として、コントローラ100は、出湯温度を給湯設定温度に維持するための給湯温度制御を、通水流量及び入水温度からバーナ35でのガス燃焼量を算出し、当該ガス燃焼量に見合う燃焼用空気を供給するように送風ファン37の目標回転数を設定することによって実現する。或いは、コントローラ100は、COセンサ58の検出値に応じて、燃焼停止後に送風ファン37を作動させるポストパージを制御することができる。
【0033】
コントローラ100に入力される各種センサの検出値、例えば、上述の入水温度、出湯温度、缶体温度、通水流量、ファン回転数、ファン電流、CO濃度等の一部は、給湯装置5の運転状態を示す状態データとして、給湯装置5の内部に蓄積される。当該状態データは、センサ検出値を用いた演算によって求められた制御値(出力号数等)、パラメータ値等を含んでもよい。
【0034】
図3は、給湯装置の故障診断用データの蓄積に係る構成を説明するブロック図である。
【0035】
図3を参照して、コントローラ100は、コネクタ101を介した通信回路105と、コネクタ102を介したリモコン通信回路110と、マイクロコンピュータ(マイコン)150と、第1外部メモリ160と、第2外部メモリ170とを含む。第1外部メモリ160、及び第2外部メモリ170は、マイコン150の外部に配置される。
【0036】
第1外部メモリ160は、例えば、シリアルフラッシュメモリ(SFM)で構成されて、本実施の形態では、状態データのデフォルトの記憶先に位置付けられる。即ち、第1外部メモリ160は「メモリ」の一実施例に対応し、マイコン150は「制御部」の一実施例に対応する。
【0037】
第2外部メモリ170は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)によって構成され、主に、マイコン150での給湯制御等に用いられる設定データ、フラグ等を格納する役割を有する。
【0038】
マイコン150は、CPU152及び内部メモリ155を内蔵する。内部メモリ155は、ROM及びRAM(Random Access Memory)を有する。ROMには、給湯制御及ぶ状態データの蓄積機能等のプログラムが格納されており、RAMにロードされた当該プログラムをCPU152が実行することによって、給湯制御及び状態データの蓄積機能が実現される。
【0039】
コントローラ100のマイコン150には、センサ50の検出値が入力される。センサ50は、
図2に例示された、電流センサ51x、回転速度センサ51y、流量センサ53、温度センサ52,54~56、及び、COセンサ58等の各種センサを包括的に表すものである。マイコン150は、センサ50から入力された検出値をサンプリングすることによって、或いは、センサ検出値を用いた演算によって、給湯装置5の運転状態を示す状態データを取得する。
【0040】
通信回路105は、コネクタ101に接続されたインターフェイス機器300との間でデータ及び情報を送受信することができる。これにより、インターフェイス機器300を介して、PC(解析用機器)400と、コントローラ100との間では、双方向にデータ及び情報の送受信が可能になる。この結果、PC(解析用機器)400からの要求に応答して、コントローラ100からPC400へ、給湯装置5内に蓄積された給湯器10の状態データをアップロードすることができる。
【0041】
リモコン通信回路110は、コネクタ102と通信線で接続されるリモコン200との間で、データを送受信する。これにより、リモコン200と、コントローラ100との間で双方向にデータ及び情報を送受信することができる。これにより、リモコン200は、給湯器10を操作するためのユーザインターフェイスとして機能するための各種処理を実行するころができる。
【0042】
例えば、リモコン200の運転スイッチ202(
図1)のユーザ操作が検知されると、当該ユーザ操作を示す情報が、コントローラ100のマイコン150に伝送されて、給湯器10の運転オン状態及び運転オフ状態(停止状態)が切換えられる。又、リモコン200の操作部203(
図1)に対する、給湯温度設定値を変更するユーザ操作が検知されると、当該ユーザ操作による変更後の給湯温度設定値が、コントローラ100のマイコン150に伝送されて、第2外部メモリ170又は内部メモリ155に記憶される。これにより、以降では、変更後の給湯温度設定値を用いて、給湯器10の給湯制御が実行される。
【0043】
次に、故障診断のための状態データの蓄積機能について説明する。
【0044】
図4を参照して、コントローラ100のマイコン150には、
図3で説明した様にセンサ50の検出値が入力され、マイコン150は、給湯装置5の運転状態を示す状態データを取得する。
【0045】
第1外部メモリ160は、定常的な状態データの記憶に用いられるメモリ領域である通常レコード領域AR1と、異常発生時に当該異常に関連した状態データを保持するためのメモリ領域であるエラーレコード領域AR2とを有する。即ち、通常レコード領域AR1は「第1記憶領域」の一実施例に対応し、エラーレコード領域AR2は「第2記憶領域」の一実施例に対応する。
【0046】
マイコン150は、通常レコード領域AR1に対する状態データの書込処理161を定期的に実行する。更に、マイコン150は、エラーコードの発生等により異常が検知されると、エラーレコード領域AR2に異常発生時、及び、その前後期間を含む状態データを記憶するための保存処理162を実行する。
【0047】
図5には、
図4に示された通常レコード領域AR1への書込処理、及び、エラーレコード領域AR2への保存処理を説明するための概念図が示される。上述の様に、状態データは、予め定められた複数項目の各々について、周期的に取得されて、その最新値が順次記憶される。記憶される状態データの値には、データ値そのものと、当該データ値の検出時刻とが含まれるものとする。
図5には、1個の項目の状態データDTに対する処理が示される。
【0048】
図5を参照して、書込処理161では、状態データDTの新たにサンプリングされた最新値が、通常レコード領域AR1のうちの当該状態データDTに割り当てられた通常レコード領域AR1aに書き込まれる。通常レコード領域AR1では、状態データDTの新たな値が書き込まれる毎に、古い値が順次消去される上書きの態様で、一定の期間長T0分、状態データDTの値が記憶される。従って、時刻t0でマイコン150が異常発生を検知した際には、時刻t0の直前の期間長T0分の状態データDTの値が、通常レコード領域AR1aに保持された状態である。即ち、期間長T0は「第1期間長」の一実施例に対応する。
【0049】
時刻t0での異常発生の検知に応じて、マイコン150は、通常レコード領域AR1aに記憶された状態データDTの値の少なくとも一部の期間長Tx(Tx≦T0)の値を、故障診断用データとして、エラーレコード領域AR2aにコピー又は転送して記憶する。即ち、期間長Txは「第2期間長」の一実施例に対応する。
【0050】
エラーレコード領域AR2(
図4)では、発生した異常毎に区分して、通常レコード領域AR1に記憶された複数項目の状態データのうちの、少なくとも一部の項目の状態データが蓄積される。即ち、
図5に示されたエラーレコード領域AR2aは、時刻t0に発生した異常に対応する故障診断用データの記憶領域のうちの、状態データDT用の記憶領域に相当する。
【0051】
更に、マイコン150は、異常が発生した時刻t0の直後の予め定められた期間長Tyに亘って、状態データDTの値をエラーレコード領域AR2aに記憶する。この処理において、状態データの値は、マイコン150からエラーレコード領域AR2aに直接書き込まれてもよく、マイコン150から通常レコード領域AR1aに書き込まれた後に、エラーレコード領域AR2aにコピーされてもよい。期間長Tyは「第3期間長」の一実施例に対応する。
【0052】
この結果、エラーレコード領域AR2aには、状態データDTについて、異常発生時(時刻t0)での値に加えて、異常発生直前の期間長Tx分の値と、異常発生直後の期間長Ty分の値とが記憶される。
【0053】
エラーレコード領域AR2に記憶されたデータは、通常レコード領域AR1に記憶されたデータとは異なり上書き処理されずに保持される。エラーレコード領域AR2の記憶データの読出及び消去は、例えば、インターフェイス機器300を経由してマイコン150と通信接続された解析用機器400(パーソナルコンピュータ)への入力操作に応じて実行される。或いは、給湯装置5に対してネットワーク接続された携帯端末装置230又は管理サーバ250からの指示に応じて、エラーレコード領域AR2aの記憶データが読出及び消去されてもよい。
【0054】
図6及び
図7には、
図5の期間長Tx及びTyの設定例が示される。
【0055】
本実施の形態に係る給湯装置では、状態データの期間長Tx及びTy(少なくともTx)が状態データの項目間で統一されておらず、異常の原因解析に比較的長期間のデータ値が必要な項目の状態データについては、長期間分をエラーレコード領域AR2に保持可能としている。
【0056】
図6及び
図7に示される様に、期間長Tx,Tyの設定について、状態データの項目毎に異なるパターンが適用される。
図6及び
図7には、項目が異なる状態データDTa~DTに対する、期間長Tx,Tyの設定が例示される。
【0057】
図6の例では、Tx=T1、かつ、Ty=T5とする通常のパターンNが、状態データDTa,DTb,DTdに適用されるのに対して、状態データDTcには、Tx=T2(T2>T1)、Ty=T6(T6<T5)とするパターンS1が適用される。又、状態データDTeには、Tx=T3(T3>T2)、Ty=T6(T6<T5)とするパターンS2が適用される。
【0058】
これらのパターン設定に従って、
図5に示されたエラーレコード領域AR2aに記憶される各項目の状態データの値についての期間長Tx,Tyが決められる。この際に、上述した様に、期間長Txは、Tx≦T0の範囲内で項目毎に異なる値に設定することができる。
【0059】
図7の例では、
図6の例での、状態データDTcでのパターンNに対する、期間長Txの増加分(ΔTx1)に従って、期間長Tyの減少分が同等に設定される。即ち、
図6において、(T2-T1)=(T5-T6)に設定されることになる。同様に、状態データDTeについても、パターンNに対する、期間長Txの増加分(ΔTx2)と、期間長Tyの減少分とが同等に設定される。
【0060】
図7の例に従って、期間長Tx及びTyを設定すると、異なるパターン(例えば、パターンN,パターンS1,パターンS2)の間で状態データの各項目の期間長Tx及びTyの和が等しくなる。この結果、エラーレコード領域AR2に保持される状態データのトータル容量の増大を回避した上で、故障診断に資する目的で、特定の項目の状態データについて異常直前の期間長Txを長く確保することができる。
【0061】
各項目の状態データについて、エラーレコード領域AR2に対する記憶態様は、予めテーブル等によって設定することができる。
【0062】
図8には、エラーレコード領域に対する状態データの各項目の記憶態様を指定するためのテーブルデータの設定例を説明する概念図が示される。
【0063】
図8を参照して、異常毎に設定されるエラーレコード毎に、状態データの各項目について、エラーレコード領域AR2に対する記憶態様を指定するフォーマットデータDfmが格納されたテーブル180が予め作成される。
【0064】
各フォーマットデータDfmは、該当するエラーコードにおける、当該項目のエラーレコード領域AR2への保存要否を示す情報と、保存要の場合の期間長Tx,Tyを指定する情報とを示す様に設定される。期間長Tx,Tyについては、複数のパターン間の選択によって設定することも可能である。尚、これらのパターンの設定は、
図6及び
図7の設定例に限定されるものではない。例えば、複数のパターン間で、期間長Tyを統一して、期間長Txのみが、エラーコード毎、及び/又は、状態データの項目毎に異なる様に、パターンS1~Snを設定することも可能である。
【0065】
コントローラ100は、ユーザ又は作業者による操作入力に応じて、
図8に示されたテーブル180の各メッシュに格納されるフォーマットデータDfmを変更可能とする様に構成されることが好ましい。例えば、リモコン200、インターフェイス機器300を介してマイコン150と通信接続された解析用機器400、又は、給湯装置5と通信接続された携帯端末装置230或いは管理サーバ500を用いて、上記操作入力をコントローラ100に与えることが可能である。或いは、コントローラ100上に設けられた、図示しない入力部からフォーマットデータDfmを変更するための操作入力が可能な様にしてもよい。
【0066】
これにより、本実施の形態に係る給湯装置では、異常発生時に故障診断用データとしてエラーレコード領域AR2に保持される状態データの期間長、特に、異常発生前での期間長を状態データ毎に可変に設定することにより、異常の原因究明に活用される故障診断用の状態データの蓄積機能を高めることができる。
【0067】
又、異常(エラーコード)毎に異なる期間長の設定を可能とすることで、状態データの蓄積機能を高めることができるとともに、状態データの項目毎に保存要否を設定可能とすることで、エラーレコード領域AR2の容量を有効に活用することができる。
【0068】
(変形例)
以上では、マイコン150から通常レコード領域AR1に対して定期的に書き込まれる状態データの値の数が項目間で同一である例を想定して説明した。当該状態データの値の数は、状態データのサンプリング周期にも相当するが、サンプリング周期を状態データの項目毎に異なる設定とすることも可能である。例えば、
図2の温度センサ56によって検出される雰囲気温度の変化は比較的緩やかであるので、サンプリング周期を長くしても、故障診断に支障が生じにくい。
【0069】
図9は、マイコン150から通常レコード領域AR1への書込処理を説明する概念図である。
図9には、サンプリング周期が状態データの各項目で一定であるときの例が示される。
【0070】
図9を参照して、マイコン150は、サンプリング周期Tcが経過する毎に、各項目の状態データをサンプリングする。
図9では、時刻t1、t2、及びt3の各々において、各項目の状態データをサンプリングすることで、データ群165が取得される。
【0071】
この場合には、
図9に例示された、項目が異なる状態データDTa、DTx、DTy、及び、DTzについても、時刻t1~t3の各々で取得されるデータ群165に、状態データDTa、DTx、DTy、及び、DTzが1個ずつ含まれることが理解される。
【0072】
マイコン150から通常レコード領域AR1への書込処理161(
図4)では、サンプリング周期Tcよりも長い所定周期毎に、データ群165の複数個分のデータ値が書き込まれる。
【0073】
これに対して、
図10には、本実施の形態の変形例に係る書込処理の内容を説明する概念図が示される。
【0074】
図10の例では、状態データDTxについては、Tcの(1/2)の周期により、高周波数でサンプリングされる。一方で、状態データDTy,DTzについては、Tcの2倍の周期により、低周波数でサンプリングされる。状態データDTaは、
図9と同様の標準のサンプリング周期Tcで取得される。
【0075】
これに対応して、時刻t1~t3の各々では、状態データDTxの値は2個ずつ取得され、状態データDTaは1個ずつ取得される。一方で、状態データDTy,DTzについては、サンプリング周期Tcの経過に応じて、交互に取得することができる。
【0076】
図10の例では、時刻t1,t3で取得されるデータ群165には、状態データDTxの2個の値と、状態データDTa,DTyの1個ずつの値とが含まれる一方で、状態データDTzの値は含まれない。
【0077】
これに対して、時刻t2で取得されるデータ群165には、状態データDTxの2個の値と、状態データDTa,DTzについて1個ずつの値とが含まれる一方で、状態データDTyの値は含まれない。
【0078】
従って、1回の書込処理161で通常レコード領域AR1に書き込まれる複数個のデータ群165に含まれる、状態データDTaの値の個数N1、状態データDTxの値の個数N2、及び、状態データDTy,DTzの値の個数N3とは、項目毎に異なっている。更に、N1~N3の比は、N1:N2:N3=2:4:1となり、N3<N1<N2となることが理解される。
【0079】
この例において、状態データDTaは「第1状態データ」の一実施例に対応し、状態データDTxは「第2状態データ」の一実施例に対応し、状態データDTy,DTzは「第3状態データ」の一実施例に対応する。更に、上記N1、N2、及びN3は、「標準となる第1の数」、「第1の数よりも多い第2の数」、及び、「第1の数よりも少ない第3の数」にそれぞれ対応する。
【0080】
この結果、通常レコード領域AR1に保持されている、状態データDTaの値の総数、状態データDTxの値の総数、及び、状態データDTz,DTyの各々の値の総数の間にも、N1:N2:N3の関係が成立する様に、書込処理が実行されることが理解される。
【0081】
この様にすると、マイコン150から通常レコード領域AR1に書き込まれるデータ値について、状態データの項目間で配分を変更することで、蓄積される状態データの項目間でサンプリング周期を可変に設定することができる。特に、故障診断で重要となる状態データを多く取得することで、データ蓄積機能を高めることができる。
【0082】
更に、
図10の例では、1回の書込処理161でN2個(N2>N1)が書き込まれる第2状態データの項目数Na=1である一方で、N3個(N3<N1)が書き込まれる第3状態データの項目数Nb=2に設定されているので、(N2-N1)・Na=(N1-N3)・Nbが成立している。
【0083】
この様にすると、通常レコード領域AR1に保持されるデータ値の総数を増やすことなく、状態データの項目間でサンプリング周期を可変に設定することができる。これにより、記憶容量を圧迫することなくデータ蓄積機能を高めることができる。この様な、データ値の数が増やされる項目(状態データDTx)と、データ値の数が減らされる項目(状態データDTy,DTz)との組合せは複数個設けることも可能である。この際にも、各組合せにおいて上記関係式を成立させることで、全項目のデータ値を標準のサンプリング周期Tcで取得したときと比較して、通常レコード領域AR1に保持されるデータ値の総数を同一とすることができる。
【0084】
尚、変形例における、状態データの各項目について、1回の書込処理161で通常レコード領域AR1に書き込まれる値の数(N1~N3)は、
図8のテーブルと同様の態様で設定することが可能である。当該テーブルの各メッシュでの設定値についても、上述の様に、ユーザ又は作業者による操作入力に応じて変更できる様にコントローラ100を構成することが好ましい。当該操作入力についても、インターフェイス機器300を介してマイコン150と通信接続された解析用機器400、リモコン200、給湯装置5と通信接続された携帯端末装置230或いは管理サーバ500、又は、コントローラ100に設けられた図示しない入力部を用いて実行することができる。
【0085】
尚、本実施の形態では、状態データの蓄積先(通常レコード領域AR1及びエラーレコード領域AR2)について、マイコン150内の第1外部メモリ160に固定する例を説明したが、第1外部メモリ160以外のメモリを用いて、通常レコード領域AR1及びエラーレコード領域AR2を構成することも可能である。
【0086】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0087】
5 給湯装置、10 給湯器、11 筐体、17 通信線、20 入水口、21 入水配管、22 出湯配管、23 バイパス配管、25 出湯口、31 一次熱交換器、32 二次熱交換器、34 流量調整弁、35 バーナ、37 送風ファン、51x 電流センサ、51y 回転速度センサ、52,54,55,56 温度センサ、58 COセンサ、53 流量センサ、100 コントローラ、101,102 コネクタ、105 通信回路、110 リモコン通信回路、150 マイコン、155 内部メモリ、160 第1外部メモリ、161 書込処理、162 保存処理、165 データ群、170 第2外部メモリ、200 リモコン、201 表示部、202 運転スイッチ、203 操作部、220 無線LANルータ、230 携帯端末装置、240 外部通信網(インターネット)、250 管理サーバ、270 基地局、300 インターフェイス機器、400 解析用機器、AR1,AR1a 通常レコード領域、AR2,AR2a エラーレコード領域、DT,DTa~DTe,DTx~DTz 状態データ。