(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092220
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】炭化装置及び炭化方法
(51)【国際特許分類】
C10B 53/02 20060101AFI20230626BHJP
C10L 5/44 20060101ALN20230626BHJP
【FI】
C10B53/02
C10L5/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207317
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】506056882
【氏名又は名称】エスケイ工業有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】古川 承元
(72)【発明者】
【氏名】西村 健
【テーマコード(参考)】
4H012
4H015
【Fターム(参考)】
4H012JA07
4H012JA12
4H015AA13
4H015AB01
4H015BA01
4H015BA08
4H015BB03
4H015CB01
(57)【要約】
【課題】本発明は、藁を効率的に炭化するための炭化装置を提供する。
【解決手段】
本発明の一観点に係る炭化装置は、被燃焼物質を搬送する被燃焼物質搬送部と、被燃焼物質を燃焼させるための着火部材と、被燃焼物質搬送部及び前記着火部材の周囲に配置される外壁部材と、被燃焼物質搬送部の出口に接続され、回転しながら被燃焼物質を搬送する回転筒と、回転筒内に炎を供給するバーナーと、を有するものである。
また、本発明の他の一観点に係る炭化方法は、被燃焼物質を搬送しながら燃焼させるステップ、燃焼した被燃焼物質を回転筒に投入して更に燃焼させるステップ、を有するものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被燃焼物質を搬送する被燃焼物質搬送部と、
前記被燃焼物質を燃焼させるための着火部材と、
前記被燃焼物質搬送部及び前記着火部材の周囲に配置される外壁部材と、
前記被燃焼物質搬送部の出口に接続され、回転しながら前記被燃焼物質を搬送する回転筒と、
前記回転筒内に炎を供給するバーナーと、を有する炭化装置。
【請求項2】
前記被燃焼物質は藁である請求項1記載の炭化装置。
【請求項3】
前記外壁部材及び前記回転筒の少なくともいずれかの周囲に取り付けられた熱電変換部材と、を備えた請求項1記載の炭化装置。
【請求項4】
前記熱電変換部材は、高温熱電変換部材と、低温熱電変換部材を有する請求項3記載の炭化装置。
【請求項5】
前記外壁部材及び前記回転筒の少なくともいずれかの周囲に取り付けられた前記熱電変換部材と前記被燃焼物質搬送部の間に、熱伝達を行う伝熱部材を有する請求項3記載の炭化装置。
【請求項6】
前記熱電変換部材は、周囲に冷却部材を備える請求項3記載の炭化装置。
【請求項7】
前記冷却部材はヒートシンク及び水冷ユニットの少なくともいずれかである請求項6記載の炭化装置。
【請求項8】
前記伝熱部材は、銅、アルミニウム及びカーボン不織布の少なくともいずれかを含み、前記伝熱部材の少なくとも一部の領域の両面に放熱グリスが塗布されている請求項5記載の炭化装置。
【請求項9】
投入された藁を裁断する藁裁断部を前記被燃焼物質搬送部の前段に有する請求項1記載の炭化装置。
【請求項10】
被燃焼物質を搬送しながら燃焼させるステップ、
前記燃焼した被燃焼物質を回転筒に投入して更に燃焼させるステップ、を有する炭化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化装置及び炭化方法に関し、より具体的には藁を好適に炭化する炭化装置及び炭化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
稲作等において大量に生ずる藁は、燃焼時に窒素・硫黄酸化物を含まないため環境にやさしく、また燃焼させても大気中の二酸化炭素総量に影響を与えない、いわゆるカーボンニュートラルであるという特性を備えている。
【0003】
更に、藁は炭化させることで藁炭とすることが可能であり、土質改良剤、肥料、家畜の糞尿の消臭剤、バイオマス燃料等の各種の用途に用いることが可能であると期待されている。
【0004】
そして、上記稲藁を炭化させようとする技術として、例えば下記非特許文献1が公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“藁の炭化による多孔質炭素材の製造“、渡孝則ら、セラミックス協会 年会・秋季シンポジウム講演予稿集、381ページ、2006年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記非特許文献1に記載された技術は二重るつぼ及び電気炉を用いた技術であって、量産化への適用には課題が残る。
【0007】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、藁を効率的に炭化するための炭化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の一観点に係る炭化装置は、被燃焼物質を搬送する被燃焼物質搬送部と、被燃焼物質を燃焼させるための着火部材と、被燃焼物質搬送部及び前記着火部材の周囲に配置される外壁部材と、被燃焼物質搬送部の出口に接続され、回転しながら前記被燃焼物質を搬送する回転筒と、回転筒内に炎を供給するバーナーと、を有するものである。
【0009】
本観点において、限定されるわけではないが、被燃焼物質は藁であることが好ましい。
【0010】
また、本観点において、限定されるわけではないが、外壁部材及び回転筒の少なくともいずれかの周囲に取り付けられた熱電変換部材と、を備えたことが好ましい。
【0011】
また、本観点において、限定されるわけではないが、熱電変換部材は、高温熱電変換部材と、低温熱電変換部材を有することが好ましい。
【0012】
また、本観点において、限定されるわけではないが、外壁部材及び回転筒の少なくともいずれかの周囲に取り付けられた熱電変換部材と被燃焼物質搬送部の間に、熱伝達を行う伝熱部材を有することが好ましい。
【0013】
また、本観点において、限定されるわけではないが、熱電変換部材は、周囲に冷却部材を備えることが好ましい。
【0014】
また、本観点において、限定されるわけではないが、冷却部材はヒートシンク及び水冷ユニットの少なくともいずれかであることが好ましい。
【0015】
また、本観点において、限定されるわけではないが、伝熱部材は、銅、アルミニウム及びカーボン不織布の少なくともいずれかを含み、伝熱部材の少なくとも一部の領域(好ましくは300℃以下の領域)の両面に放熱グリスが塗布(具体的には熱伝導性の低い空気層を放熱グリスで充填)されていることが好ましい。
【0016】
また、本観点において、限定されるわけではないが、投入された藁を裁断する藁裁断部を被燃焼物質搬送部の前段に有することが好ましい。
【0017】
本発明の他の一観点に係る炭化方法は、被燃焼物質を搬送しながら燃焼させるステップ、燃焼した被燃焼物質を回転筒に投入して更に燃焼させるステップ、を有するものである。
【発明の効果】
【0018】
以上、本発明によって、藁を効率的に炭化するための炭化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態1に係る炭化装置の側面の概略図である。
【
図2】実施形態1に係る炭化装置の側面の概略断面図である。
【
図3】実施形態1に係る炭化装置の外壁部材の概略断面図である。
【
図4】実施形態1に係る炭化装置の細長孔形状部材の概略図である。
【
図5】実施形態1に係る炭化装置の筒部の概略断面図である。
【
図6】実施形態1に係る炭化装置の筒部の概略断面図である。
【
図7】実施形態2に係る炭化装置の側面の概略図である。
【
図8】実施形態2に係る炭化装置の外壁部材の概略断面図である。
【
図9】実施形態3に係る炭化装置の概略断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例に記載された例示にのみ限定されるわけではない。
【0021】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係る炭化装置(以下「本装置」という。)1の側面図であり、
図2はその断面図である。これらの図で示すように、本装置1は、被燃焼物質を搬送する被燃焼物質搬送部2と、被燃焼物質に着火し被燃焼物質を燃焼させるための着火部材3と、被燃焼物質搬送部2の周囲に配置される外壁部材4と、被燃焼物質搬送部2の出口に接続され、被燃焼物質の供給を受けて回転しながら被燃焼物質を搬送する回転筒5と、を有するものである。また、本装置1における被燃焼物質搬送部2及び外壁部材4における断面の例について
図3に示す。本図は、
図2の断面図に対して垂直な面(被燃焼物質搬送部の回転軸の延伸方向に対して垂直な面)における断面図である。
【0022】
本装置1の被燃焼物質搬送部2は、被燃焼物質を受け入れ、少なくとも一方向に搬送させるためのものである。被燃焼物質搬送部2は、限定されるわけではないが、例えば回転軸21とこの回転軸21の周囲に配置される螺旋状の羽根部材22と、この回転軸21及び羽根部材22を覆うカバー23と、を備えて構成されているいわゆるスクリューコンベア―であることが好ましい。この構成を採用することで、被燃焼物質搬送部2は、使用者が、螺旋状の羽根部材22の間隙に被燃焼物質を投入し、回転軸21及び羽根部材22を回転させることで被燃焼物質を効率的に攪拌しながら所望の方向に安定的に搬送させることを可能とする。もちろん、この被燃焼物質搬送部2のカバー23には、一方の端近傍に被燃焼物質を投入させるための投入口231を設けておくことが好ましく、他方には燃焼して炭化した被燃焼物質(炭)を排出させ、回転筒5に投入するための排出口232が設けられていることが好ましい。
【0023】
本装置1において、被燃焼物質とは、炭化できる植物であれば特に限定されるわけではないが、藁、特に稲藁であることが好ましい。通常稲作において、藁はそのまま又は燃やして灰にした後漉き込むものであるが、本装置1を用いると、藁を炭とした後漉き込むことが可能であり、土壌改良剤として活用することができる。また、藁を炭化したあとに土壌に漉き込むことで炭素を土の中に貯留することが可能となり、この処理を一般化させることにより、大気中の二酸化炭素削減に寄与する手段となりうる。
【0024】
また、本装置1において被燃焼物質を稲藁とする場合、この稲藁は細かく裁断されていることが好ましい。この裁断の長さとしては、炭化できるものである限りにおいて限定されるわけではないが、3cm以上15cm以下となっていることが好ましく、より好ましくは10cm以下である。このように細かく裁断することで被燃焼物質搬送部2により絡まることなく安定的に後段に搬送することが可能となるとともに、藁炭とした際の取扱が容易となる。
【0025】
そのため、本装置1においては、投入された藁等の被燃焼物質を裁断する藁裁断部を被燃焼物質搬送部2の前段に有する構成としておいてもよい。この藁裁断部の構造としては、限定されるわけではないが、いわゆる回転軸と、この回転軸に設置され垂直な面上を回転する回転刃を備えていることが好ましく、これにより投入された被燃焼物質を適切な長さに切断することができる。
【0026】
また、本装置1では、被燃焼物質を燃焼させるための着火部材3を備えている。着火部材3を用いることで被燃焼物質を燃焼させることが可能となる。着火部材3を備えることで被燃焼物質の燃焼を開始させることができる。
【0027】
また具体的に、着火部材3は、被燃焼物質搬送部2の前段部分において配置されていることが好ましい。また、被燃焼物質搬送部2の前段部分には、被燃焼物質を投入した後に着火させることが好ましいため、被燃焼物質させる投入口231よりも後側に設けておくことが好ましい。なお着火部材3による着火のため、被燃焼物質搬送部のカバー23には被燃焼物質に着火させるための着火口を備えていることが好ましい。使用者はこの着火口において被燃焼物質に対して着火し、燃焼を開始させることができる。もちろん、外壁部材4において被燃焼物質を十分に燃焼させることができる限りこの着火部材の構造に限定されるわけではないが、例えばバーナーであることは好ましい一例である。
【0028】
また、本装置1では、着火部材3に付随して送風手段31を備えていることが好ましい。送風手段31を設けることで、被燃焼物質に対して燃焼に必要な酸素を供給することができるようになる。送風手段31としては、限定されるわけではないが、いわゆるブロワー35であることが好ましい。送風手段31により発生させる空気の流れ(風)は、被燃焼物質搬送部2内に発生させることが好ましく、その方向は被燃焼物質の搬送方向と同一であることが好ましい。またこの場合において、送風手段31は、高温の熱風を供給することができる高温送風手段(例えば高温ブロワー)であることが好ましい。高温熱風手段とすることで、藁が湿っている場合でもその水分を除去し、乾燥状態としやすくなるといった利点がある。この温度としては限定されるわけではないが、100℃以上300℃以下であることが好ましい。
【0029】
より具体的に送風手段による効果確保について説明すると、外壁部材4内の被燃焼物質搬送部2の下方には、空気を導入するための空気導入路34及びこれに接続されるブロワー35等の送風手段31が設けられていることが好ましい。さらに、この被燃焼物質搬送部2と空気導入路34の間は、多孔質の金属板により分けられている。これにより被燃焼物質搬送部2は被燃焼物質を搬送するとともに、下記に設けられた空気導入路34によって空気の供給を受けることが可能となる。すなわち、これらを設けることで、十分に燃焼させるための酸素を被燃焼物質に対して供給できるようになるとともに、燃焼対象物質を空気の流れにより撹拌することができるようになる。ただし、炭化させるためにはある程度酸素が不足している状態における燃焼が重要であるため、この送風量と被燃焼物質搬送部2の搬送速度のバランスは重要である。
【0030】
また、本装置1では、外壁部材4を備えている。外壁部材4とは、被燃焼物質搬送部2を覆い、被燃焼物質の燃焼を安定化するために重要な部材である。外壁部材内において被燃焼物質を燃焼させる一方、上記しているように、炭化するためある程度酸素が不足した状態にする必要があるため、外壁部材4により被燃焼物質搬送部2を覆うことが重要である。
【0031】
なお、外壁部材4は、上記の通り被燃焼物質搬送部2を覆うものであり、この限りにおいて構成は限定されるわけではないが、側壁部材41と屋根部材42とを有することが好ましい。ただし、側壁部材41には、排気するための排気孔411が設けられていることが好ましい。本装置1では排気孔411を設けたとしても、炭を完全に燃焼して灰にするに至らず、一部炭化の状態とすることが可能である。
【0032】
また、外壁部材4においては、側壁部分41及び屋根部材42によって区切られた空間内に、細長孔形成部材43を備えていることが好ましい。
図4にこの細長孔形成部材43の概略について記載しておく。細長孔形成部材43は、上記の区切られた空間内においてその排気・煙排出のための面積を細くするための部材であり、これにより酸素不足状態を作り出しやすくなり、効率的な炭化を可能とする。また、煙をこの細長孔形成部材43下部に閉じ込めやすくなるため、煙量を抑制することも可能となるといった効果がある。すなわち、これらは藁を酸素不足状態で乾留させる段階で、タール分の燃焼を促進させ、においや黒煙を低減するための消煙部となる。
【0033】
側壁部材41は、外壁部材4の主要な骨格をなす重要な部材である。具体的には、空気の流れを制御して燃焼効率を高めるとともに煙が無制御に排出されないよう覆うための部材である。
【0034】
具体的に、外壁部材4における側壁部材41は、被燃焼物質搬送部2の途中経路部分を覆うように構成されている。すなわち、被燃焼物質は、この外壁部材4の内部において燃焼させられ、一部炭化したのち、被燃焼物質搬送部2により外壁部材4外に排出される。
【0035】
また、外壁部材4内において被燃焼物質搬送部2のカバー23の少なくとも一部、例えば上面部分は外されている。カバー23を外すことにより、外壁部材4内において開放系とし、被燃焼物質の燃焼を促進させることができる。一方、被燃焼物質搬送部2の回転軸21及び羽根部材22の下方には、上記の通り多数の小孔が形成された多孔板24が配置されていることが好ましい。このようにすることで、籾殻に対し、籾殻を下の空気導入路34にこぼす恐れが少なくなる一方、下方から供給される空気を上に通すことが可能となる。この多孔板24の下には、上記の通り送風手段31により供給される風が吹き抜ける経路が形成される。また、この場合において小孔の大きさは、被燃焼物質がこぼれてしまわないよう、被燃焼物質の大きさよりも十分に小さい一方、空気を十分に通すことができる程度の大きさ、数を設けておくことが好ましい。また、外壁部材4は、被燃焼物質搬送部2全体を覆う構成としておくこととしてもよいが、ここで言及したように、被燃焼物質搬送部2のカバー23の一部を外してその空間を覆うように構成しておくことが好ましい。すなわち被燃焼物質搬送部2を覆うという意味は、上記被燃焼物質搬送部2に接続される空間を覆うという意味を含む。
【0036】
本装置1の外壁部材4及び被燃焼物質搬送部2には、地表から支持するための支持脚44を備えている。これにより、地表から燃焼部を離すことができ、凹凸のある地面であっても支持脚44を用いて安定的な設置が可能であり、地熱による熱伝達を防ぎ安定した燃焼を実現できる。
【0037】
また、本装置1では、回転しながら被燃焼物質を搬送する回転筒5を備える。本装置1では、前段の被燃焼物質搬送部2により被燃焼物質が搬送されつつ燃焼されることとなるが、そのすべてが炭化されているわけではない。そのため、後段の本回転筒5によって確実に炭化させることになる。
【0038】
回転筒5は、内部が空洞の筒型であり、この内部に被燃焼物質を投入し、更に追加的な燃焼を行うことで藁を確実に炭にすることが可能となる。
【0039】
回転筒5は、地面に略平行な方向(被燃焼物質搬送部2における回転軸21と略平行)であることが好ましいが、その回転軸が接地面に対して傾いていてもよい。傾ける場合は回転筒5の被燃焼物質投入側(入口側)が低く、被燃焼物質投入側(出口側)が高くなっていることが好ましい。
【0040】
回転筒5の内部の構造は、安定的に被燃焼物質を炭にするとともに、被燃焼物質を回転に応じて内部で移動させ、排出させることができる限りにおいて限定されるものではないが、その内面に板材54が規則的に配置されている構造であることが好ましい。
図5に、回転筒5の延伸軸に対して垂直な面で切断した場合の断面図を、
図6に、延伸軸に対して平行な線に沿った内面の展開図について示しておく。
【0041】
また、本装置1の回転筒5の中心は空洞となっており、回転筒5の内壁面53から中心に向かって板材54が突き出るよう設置されている。この構成とすることで内壁面53と板材54の接合部分が被燃焼物質を保持する空間となり、この部分に効率的に被燃焼物質を集めることで、再び被燃焼物質の余熱により発火、燃焼させることが可能となる。
【0042】
また、本装置1の回転筒5における板材54は、上記の図で示すように、回転筒内部において、延伸軸に対して角度を傾けて配置されていることも好ましい。角度を傾けて配置することで回転筒5の回転とともに内壁面53と板材54の接合位置をずらすことが可能となり、回転とともに被燃焼物質を筒部排出口512まで運び排出させることが可能となる。
【0043】
また、回転筒5は、断面が円形状であってもよいが、本図で示すように多角形状としておくこととしてもよい。このようにすることで、回転筒5を直線状の板材54を組み合わせることで容易に作製可能となり、更に、その各辺が直線的となるため、下記実施形態で示すように熱電変換素子を設置しやすくなるといった利点がある。
【0044】
回転筒5の構造は、被燃焼物質を受け入れ、この被燃焼物質を確実に炭化させることができる構造である限りにおいて限定されるわけではないが、中空の筒部51と、この筒部51を回転させる回転機構52と、を有していることが好ましい。なおこの回転機構としては限定されるわけではないが、車輪521を備え、この車輪521を回転させる動力部材522とを有する回転機構とし、この車輪521を回転筒5の周囲に押し当てることで車輪の回転運動を回転筒5の回転として伝達させることとしてもよい。また、車輪521ではなく、回転筒5の周囲に凹凸のある溝を付し、この凹凸のある溝に対応する凹凸を付した車輪、いわゆるギアとすることとしてもよい。このようにすることで、中心に投入口や排出口を設ける中空の筒状部材であっても安定的に回転させることができるようになる。
【0045】
また、筒部51の前段においては、被燃焼物質搬送部2の排出口232から被燃焼物質を受け取る筒部投入口511を有することが好ましい。なお、被燃焼物質搬送部2の排出口232と筒部51の筒部投入口511は接続されていることが製造効率の観点から好ましい。
【0046】
また、回転筒5内には、改めて被燃焼物質に対して着火する又は安定的に燃焼させるための筒部内着火部材を設けてもよい。ただし、前段の被燃焼物質搬送部2において高温状態となって燃焼している限り省略することが可能であり、むしろ着火部材を設けず余熱による追燃焼の観点から設けないことが好ましいといえる。
【0047】
回転筒5の筒部51の内部構造については特に限定されない。ただし、内部に投入された被燃焼物質を燃焼させつつ搬送し、筒部投入口511とは反対側に排出させることができるよう、内部に筒部内被燃焼物質搬送部を設けておくことが好ましい。すなわち、筒部内被燃焼物質搬送部を設けることで筒部投入口511とは反対側に筒部排出口512を設け、ここから炭化した被燃焼物質を排出させることができる。すなわちこの構成により、未燃焼の被燃焼物質を投入するだけで筒部排出口512から炭化した材料を連続的に製造することが可能となる。
【0048】
筒部内被燃焼物質搬送部の構造は特に限定されず、例えば上記した回転筒5の前段に設けられた回転軸とこの回転軸の周囲に配置された螺旋状の羽根を有するいわゆるスクリューコンベアを用いることもできるし、例えば、筒部51の内側面に螺旋状の羽根を形成することとしてもよい。この螺旋状の羽根を形成することで筒部51が回転すればこの羽根の回転につながり、筒部排出口512まで連続的に被燃焼物質を排出させることができるようになる。なおこの場合、筒部51は、被燃焼物質の投入側よりも排出側の方が高い位置になっていることが好ましい。このようにしておくことで自然に排出側から被燃焼物質が排出されないようにし、十分に燃焼する時間を確保して炭化させてから排出させることができるようになる。
【0049】
以上、本装置1によって、藁を効率的に炭化するための炭化装置を提供することができる。より具体的に説明すると、本装置1では、前段の被燃焼物質搬送部2及び外壁部材4により一時的な燃焼を行い一部炭化させる。しかしながら藁のような被燃焼物質では十分な燃焼が行いきれず全てを炭化することが難しい場合がある。そのため、後段の回転筒5を設けることで炭化しきれなかった部分を再度燃焼させて十分に被燃焼物質を炭化させて排出させることができる。特に回転筒5を設けることで、再度攪拌しながら搬送させることで炭化を安定化することが可能となる。
【0050】
(実施形態2)
本実施形態は、上記実施形態1とほぼ同様であるが、外壁部材4及び回転筒5の少なくともいずれかの周囲に熱電変換部材6を取り付けている点が異なる。以下具体的に説明するが、同様の構成についてはその説明を省略する。
【0051】
本実施形態に係る炭化装置(以下「本装置」という。)1は、上記実施形態1と同様であるが、その外壁部材4及び回転筒5の周囲に熱電変換部材6を設けている。
【0052】
本装置1において熱電変換部材6とは、熱を電気に変換することができる部材であって、具体的には、複数の異なる金属または半導体を接合し、この温度差を生じさせることにより起電力を生じさせるゼーベック効果を利用する部材であることが好ましい。
【0053】
熱電変換部材6のより具体的な構成としては、限定されるわけではないが、例えば、P型、N型の熱電半導体素子を金属電極により交互に多数直列に接続したものであることが好ましい。なお発電した電気は、電力系統に接続して直接外部に供給し、電池に充電することで利用可能である。
図7に本装置1に熱電変換部材6を設けた場合の側面のイメージ図を、
図8にその垂直方向における断面図(外壁部材4の部分における断面図)の例を示しておく。
【0054】
また熱電変換部材6は、高温熱電変換部材であってもよく、また低温熱電変換部材であってもよい。高温熱電変換部材は、高温領域において効率が高くなる熱電変換部材であり、低温熱電変換部材は、低温領域において効率が高くなる熱電変換部材であり、効率の高い温度領域それぞれにこれら熱電変換部材を配置することで装置全体としての熱電変換効率を向上させる。ここで「高温領域」は、「低温領域」と区別するための用語であり、限定されるわけではないが、高温領域としては例えば300℃以上の温度領域とする場合、低温領域としては例えば300℃未満の温度領域が該当する。実際、Mg2Si等のシリサイド系、Pb-Te系、Si系クラスレート焼結体等を用いたものの場合、300℃以上の高い温度で熱電変換が可能であり、Bi-Te系のものであれば300℃以下の温度領域で熱電変換が可能である。
【0055】
また、本装置1においては、高温熱電変換部材と低温熱電変換部材を併用することも可能である。例えば、外壁部材4に高温熱電変換部材を設置し、その外部にさらに低温熱電変換部材を配置することで、高温熱電変換部材でまず発電し、その後外側において温度が下がった段階で再び低温熱電変換部材による発電を行うことができるようになる。なおこの高温熱電変換部材と低温熱電変換部材を積層させる場合、これらの間の熱伝導性を確保するため、シリコングリースなどの伝熱部材61を介しておくことが好ましい。もちろん、外壁部材4と熱電変換部材6の間、及び、回転筒5と熱電変換部材6の間にも伝熱部材61を介しておくことが好ましいことも言うまでもない。
【0056】
また、本装置1において、限定されるわけではないが、熱電変換部材6の周囲には、熱電変換部材6を冷却するための冷却部材7を備えることが好ましい。冷却部材7を設けることで装置内部と外部の温度差を大きくすることができ熱電変換効率の向上を図ることができるといった利点がある。
【0057】
また、本装置1において、冷却部材7は、限定されるわけではないが、水冷ユニットであることが好ましい。ヒートシンクや水冷ユニットとすることで大きく電力を消費することなく簡便に冷却が可能となる。
【0058】
また、本観点において、限定されるわけではないが、伝熱部材61は、銅、アルミニウム及びカーボン不織布の少なくともいずれかを含む金属であってもよい、銅やアルミニウムは熱伝導率が高く、放熱が容易であるため、上記水冷ユニットに比べてさらに省電力であるといった効果がある。また、ヒートシンク(放熱フィン形状)であることも好ましい。
【0059】
(実施形態3)
本実施形態は、上記実施形態1とほぼ同様であるが、本装置1を移動可能とするための移動部材8を備えている点が異なる。以下具体的に説明するが、同様の構成についてはその説明を省略する。本実施形態に係る本装置1の概略について
図9に示しておく。
【0060】
移動部材8は、上記被燃焼物質搬送部2、回転筒5及びこれらの付属部材を載せる台座部81と、この台座部を支えるとともに移動を可能とする車輪部82を備えておりこれにより所望の位置に移動させることが可能となる。
【0061】
本実施形態において車輪部81は、複数設けておくことが好ましい一方、本装置1全体の重量は非常に重く、車輪のみでは設置面に沈み込んでしまうおそれがある。そのため車輪を取り囲むように接続されるベルト状の履板83を設けることでいわゆるキャタピラとしておくことが好ましい。このようにしておけば設置面に沈み込んでしまうおそれを少なくすることができる。
【0062】
また、本実施形態では、車輪及び台座を設けることで本装置1全体が設置面(車輪及び履板が設置する面)よりも高くなってしまう。そのため、本実施形態では更に、被燃焼物質を投入口231に投入するための投入装置9を設けている。投入装置9を設けることで低い位置から高い位置の投入口231まで被燃焼物質を容易に投入することができるといった利点がある。なお、この投入装置9の構成としては、例えば複数の回転軸を平行に並べ、これらの上に上記回転軸を覆うためのベルトを配置するいわゆるベルトコンベアとすることが好ましい。
【0063】
以上、本発明によって、藁を効率的に炭化するための炭化装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、炭化装置及び炭化方法として産業上の利用可能性がある。