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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092263
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】耐震補強工法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20230626BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
E04G23/02 F
E04H9/02 321Z
E04G23/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207401
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】小林 拓未
(72)【発明者】
【氏名】大堀 太志
(72)【発明者】
【氏名】中平 和人
(72)【発明者】
【氏名】小島 一高
【テーマコード(参考)】
2E139
2E176
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AC33
2E139AD04
2E176AA02
2E176AA07
2E176BB27
(57)【要約】
【課題】鉄骨造の架構内に既に既存壁が備えられている場合に、その既存壁を用いて耐震補強を行うこと。
【解決手段】鉄骨柱1と鉄骨梁2とを有する鉄骨造の架構3と、その鉄骨造の架構3内に配置された鉄筋コンクリート造の既存壁4とが備えられ、既存壁4は、鉄骨造の架構3と結合されていない既存雑壁8であり、その既存雑壁8と鉄骨造の架構3とを結合する結合手段10が備えられている。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨柱と鉄骨梁とを有する鉄骨造の架構と、
その鉄骨造の架構内に配置された鉄筋コンクリート造の既存壁とが備えられ、
前記既存壁は、前記鉄骨造の架構と結合されていない既存雑壁であり、
その既存雑壁と前記鉄骨造の架構とを結合する結合手段が備えられている耐震補強工法。
【請求項2】
前記結合手段は、前記鉄骨造の架構に連結された一対の第1プレート体にて前記既存雑壁を挟み込む状態でボルトにて締結することにより、前記鉄骨造の架構と前記既存雑壁とを結合している請求項1に記載の耐震補強工法。
【請求項3】
前記第1プレート体と前記既存雑壁との間に充填材が充填され、前記第1プレート体が、充填材を介して前記既存雑壁に固定されている請求項2に記載の耐震補強工法。
【請求項4】
前記既存雑壁と基礎とに亘って挟み込む状態で配設された一対の第2プレート体を有し、前記既存雑壁と基礎とを結合する雑壁基礎結合手段が備えられている請求項1~3の何れか1項に記載の耐震補強工法。
【請求項5】
前記第2プレート体と前記既存雑壁との間に充填材が充填され、前記第2プレート体が、充填材を介して前記既存雑壁に固定されている請求項4に記載の耐震補強工法。
【請求項6】
前記第2プレート体と前記既存雑壁との間には、前記既存雑壁と充填材の厚みとを合わせた幅が前記基礎と同じ幅又は略同じ幅となるように、充填材が充填され、
前記第2プレート体は、上下方向で前記基礎と前記既存雑壁とに亘る直線状に形成されている請求項5に記載の耐震補強工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨柱と鉄骨梁とを有する鉄骨造の架構において、耐震補強を行う耐震補強工法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄骨柱と鉄骨梁とを有する鉄骨造の架構において、耐震補強を行うために、ブレース等の耐震部材を設けることが考えられているが、建物における使用上の制限や設置スペースの制限等により、鉄骨造の架構にブレース等の耐震部材を備えることが困難な場合がある。
【0003】
そこで、従来、鉄骨造の架構にコンクリート造の耐震壁を設けることで、耐震補強を行うものがある(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
特許文献1に記載のものでは、鉄骨造の架構内に、左右方向の両端部が左右の鉄骨柱の夫々に結合され、且つ、上下方向の両端部が上下の鉄骨梁に接続されたコンクリート造の耐震壁が設けられている。このように、鉄骨造の架構内に、コンクリート造の耐震壁を新しく構築することで、耐震補強を行っている。
【0005】
特許文献2に記載のものでは、鉄骨梁に結合用スタッドボルトが設けられ、鉄骨造の架構内に高靭性FRC材料を流し込んで、架構内にコンクリート造の耐震壁を成形している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-44498号公報
【特許文献2】特許第3648094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2に記載のものでは、何れも、鉄骨造の架構内に、コンクリート造の耐震壁を新しく構築する場合に適用することができる。しかしながら、特許文献1、2には、例えば、架構内に既に雑壁等の既存壁が備えられている場合に、既存壁に対してどのように対処するか等が記載されておらず、このような場合には適用できない。
【0008】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、鉄骨造の架構内に既に雑壁等の既存壁が備えられている場合に、その既存壁を用いて耐震補強を行うことができる耐震補強工法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1特徴構成は、鉄骨柱と鉄骨梁とを有する鉄骨造の架構と、
その鉄骨造の架構内に配置された鉄筋コンクリート造の既存壁とが備えられ、
前記既存壁は、前記鉄骨造の架構と結合されていない既存雑壁であり、
その既存雑壁と前記鉄骨造の架構とを結合する結合手段が備えられている点にある。
【0010】
本構成によれば、鉄骨造の架構内に、鉄筋コンクリート造の既存雑壁が配置されているが、結合手段によりその既存雑壁と鉄骨造の架構とを結合することで、既存雑壁を耐震要素として用いながら、耐震補強を行うことができる。これにより、鉄骨造の架構内に既に既存雑壁が備えられている場合でも、既存雑壁と鉄骨造の架構とを結合するという簡易な構成により、既存雑壁を有効に活用しながら、耐震補強を行うことができる。
【0011】
本発明の第2特徴構成は、前記結合手段は、前記鉄骨造の架構に連結された一対の第1プレート体にて前記既存雑壁を挟み込む状態でボルトにて締結することにより、前記鉄骨造の架構と前記既存雑壁とを結合している点にある。
【0012】
本構成によれば、結合手段は、鉄骨造の架構に連結された一対の第1プレート体にて既存雑壁を挟み込む状態でボルトにて締結するので、鉄骨造の架構と既存雑壁との結合を簡易に且つ適切に行うことができ、既存雑壁を耐震壁として効果的に機能させることができる。
【0013】
本発明の第3特徴構成は、前記第1プレート体と前記既存雑壁との間に充填材が充填され、前記第1プレート体が、充填材を介して前記既存雑壁に固定されている点にある。
【0014】
本構成によれば、鉄骨構造の架構における鉄骨柱や鉄骨梁と既存雑壁との間で位置ずれが生じている場合でも、第1プレート体と既存雑壁との間に充填材を充填することで、その位置ずれ部分に充填材を充填して、位置ずれを吸収することができる。これにより、鉄骨造の架構に連結された一対の第1プレート体にて既存雑壁を適切に挟み込むことができ、一対の第1プレート体による結合を適切に行うことができる。
【0015】
本発明の第4特徴構成は、前記既存雑壁と基礎とに亘って挟み込む状態で配設された一対の第2プレート体を有し、前記既存雑壁と基礎とを結合する雑壁基礎結合手段が備えられている点にある。
【0016】
本構成によれば、雑壁基礎結合手段は、一対の第2プレート体にて既存雑壁と基礎とに亘って挟み込むので、基礎と既存雑壁との結合を簡易に且つ適切に行うことができ、既存雑壁を耐震壁として効果的に機能させることができる。
【0017】
本発明の第5特徴構成は、前記第2プレート体と前記既存雑壁との間に充填材が充填され、前記第2プレート体が、充填材を介して前記既存雑壁に固定されている点にある。
【0018】
本構成によれば、基礎と既存雑壁との間で位置ずれが生じている場合でも、第2プレート体と既存雑壁との間に充填材を充填することで、その位置ずれ部分に充填材を充填して、位置ずれを吸収することができる。これにより、一対の第2プレート体にて既存雑壁と基礎とに亘って適切に挟み込むことができ、一対の第2プレート体による結合を適切に行うことができる。
【0019】
本発明の第6特徴構成は、前記第2プレート体と前記既存雑壁との間には、前記既存雑壁と充填材の厚みとを合わせた幅が前記基礎と同じ幅又は略同じ幅となるように、充填材が充填され、
前記第2プレート体は、上下方向で前記基礎と前記既存雑壁とに亘る直線状に形成されている点にある。
【0020】
本構成によれば、既存雑壁と充填材の厚みとを合わせた幅が基礎と同じ幅又は略同じ幅となるように、充填材が充填されているので、第2プレート体を、上下方向で基礎と既存雑壁とに亘る直線状に形成しても、一対の第2プレート体にて既存雑壁と基礎とに亘って適切に挟み込むことができる。これにより、第2プレート体の製造が簡易になるとともに、例えば、第2プレート体に屈曲部位を備えることなく、第2プレート体に曲げ応力が作用されるのを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】鉄骨造の架構面の正面図
図2】耐震補強した状態での鉄骨造の架構面の正面図
図3】耐震補強した状態での図2と直交する鉄骨造の架構面の正面図
図4図3におけるIV-IV線での横断面図
図5】鉄骨梁と既存雑壁との結合構成を示す図
図6】基礎と既存雑壁との結合構成を示す図
図7図3におけるVII-VII線での横断面図
図8図2におけるVIII-VIII線での横断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る耐震補強工法の実施形態について図面に基づいて説明する。
この耐震補強工法は、図1に示すように、鉄骨柱1と鉄骨梁2とを有する鉄骨造の架構3と、その鉄骨造の架構3内に配置された鉄筋コンクリート造の既存壁4とが備えられた建物において、耐震補強を行うための工法である。
【0023】
この建物の基礎5は、図1に示すように、フーチング6とフーチング6同士を繋ぐ基礎梁7とが備えられている。鉄骨柱1は、所定の間隔を隔てて複数備えられ、基礎5のフーチング6上に立設されている。鉄骨柱1は、例えば、断面が円形状の鋼管にて構成されている。鉄骨梁2は、所定の間隔を隔てた鉄骨柱1を繋ぐ状態で架設され、上フランジ2aと下フランジ2bと上下のフランジ2a、2bを繋ぐウェブ2cとを有するH形鋼にて構成されている。
【0024】
既存壁4は、上下方向で基礎梁7と鉄骨梁2との間、及び、左右方向で間隔を隔てて備えられた鉄骨柱1の間に存在する状態で矩形状又は略矩形状に形成されており、鉄骨造の架構3における鉄骨柱1や鉄骨梁2と十分に結合されていない既存雑壁8として備えられている。既存雑壁8は、鉄骨造の架構3における鉄骨柱1や鉄骨梁2だけでなく、基礎5における基礎梁7とも十分に結合されていない。これにより、既存雑壁8は、通常時に、鉄骨造の架構3や基礎5に対して位置決めされた程度で、地震時等に、耐震壁として機能しない状態で備えられている。
【0025】
そこで、耐震補強工法では、図2及び図3に示すように、既存雑壁8と鉄骨造の架構3とを結合する結合手段10が備えられ、その結合手段10にて既存雑壁8と鉄骨造の架構3とを結合することで、既存雑壁8を耐震要素として用いながら、耐震補強を行っている。図2は、図1において、耐震補強を行った状態を示す架構面の正面図を示している。図3は、図2の左側の鉄骨柱1の配設位置において、図2と直交する架構面の正面図を示している。
【0026】
結合手段10として、図2及び図3に示すように、鉄骨柱1と既存雑壁8とを結合する第1結合手段11と、鉄骨梁2と既存雑壁8とを結合する第2結合手段21とが備えられている。この耐震補強工法では、結合手段10に加えて、既存雑壁8と基礎5とを結合する雑壁基礎結合手段31が備えられている。また、この耐震補強工法では、鉄骨柱1と既存雑壁8とを結合するために、第1結合手段11に加えて、図7に示すように、鉄骨柱1に対して直交する2つの既存雑壁8を結合する第3結合手段41と、図8に示すように、鉄骨柱1と既存雑壁8と追加の鉄骨材51とを結合する第4結合手段52とが備えられている。
以下、各結合手段について説明する。
【0027】
(第1結合手段)
第1結合手段11は、図2及び図3に示すように、鉄骨柱1と既存雑壁8とに亘る板状の雑壁柱用プレート体12(第1プレート体に相当する)にて鉄骨柱1と既存雑壁8とを結合している。雑壁柱用プレート体12は、鉄骨柱1と鉄骨梁2との仕口部を除いて、上下方向において鉄骨柱1及び既存雑壁8の全長又は略全長に亘る長さを有している。
【0028】
雑壁柱用プレート体12は、図4に示すように、既存雑壁8の厚み方向に間隔を隔てて一対備えられ、鉄骨柱1に連結された一対の雑壁柱用プレート体12にて既存雑壁8を挟み込む状態で連結することにより、鉄骨柱1と既存雑壁8とを結合している。
【0029】
雑壁柱用プレート体12は、図4に示すように、円形状の鉄骨柱1の外周部1aに当接する湾曲面状の柱側当接部12aと、既存雑壁8の外面部8aに当接する平面状の雑壁側当接部12bとを有する平面視でL字状に形成されている。雑壁柱用プレート体12には、柱側当接部12a及び雑壁側当接部12bから雑壁柱用プレート体12に直交する方向に延びるリブ部12cが備えられている。リブ部12cは、例えば、雑壁柱用プレート体12とは別体のプレート体にて構成することができる。リブ部12cは、柱側当接部12a及び雑壁側当接部12bから直交する方向に延びる姿勢となるように、溶接等により雑壁柱用プレート体12に連結され、雑壁柱用プレート体12として一体的に備えられている。
【0030】
雑壁柱用プレート体12にて鉄骨柱1と既存雑壁8とを結合する場合には、図4に示すように、一対の雑壁柱用プレート体12の夫々における柱側当接部12aを各別に鉄骨柱1の外周部1aに当接させ、一対の雑壁柱用プレート体12の夫々における雑壁側当接部12bを既存雑壁8の外面部8aに当接させることで、一対の雑壁柱用プレート体12を既存雑壁8を挟み込む状態に位置決めしている。このように、一対の雑壁柱用プレート体12を位置決めした状態において、鉄骨柱1と一対の雑壁柱用プレート体12とを連結し、既存雑壁8と一対の雑壁柱用プレート体12とを連結する。
【0031】
鉄骨柱1と一対の雑壁柱用プレート体12との連結については、ワンサイドボルト13を用いて行われている。雑壁柱用プレート体12の挿通孔及び鉄骨柱1の挿通孔にワンサイドボルト13を挿通させて、雑壁柱用プレート体12の外側からナット14を締結することで、鉄骨柱1に対して一対の雑壁柱用プレート体12を別々に固定している。
【0032】
既存雑壁8と一対の雑壁柱用プレート体12との連結については、雑壁柱用プレート体12の挿通孔及び既存雑壁8の挿通孔に貫通ボルト15を貫通させてナット16にて締結することで、一対の雑壁柱用プレート体12にて既存雑壁8を挟み込む状態で、既存雑壁8に一対の雑壁柱用プレート体12を固定している。ちなみに、既存雑壁8の挿通孔の内壁部と貫通ボルト15の外周部との隙間には、グラウト等の充填材が充填されている。
【0033】
鉄骨柱1と一対の雑壁柱用プレート体12との連結作業、及び、既存雑壁8と一対の雑壁柱用プレート体12との連結作業については、両方の作業を併行して行うことができるが、どちらか一方の連結作業を先行して行い、その後、他方の連結作業を後行して行うように、2つの連結作業を順番に行うこともできる。2つの連結作業をどのようにして行うかは、施工状況等の各種の条件に応じて適宜変更することができる。
【0034】
(第2結合手段)
第2結合手段21は、図2及び図3に示すように、鉄骨梁2と既存雑壁8とに亘る板状の雑壁梁用プレート体22(第1プレート体に相当する)を用いて鉄骨梁2と既存雑壁8とを結合している。雑壁梁用プレート体22は、鉄骨柱1と鉄骨梁2との仕口部を除いて、鉄骨梁2の長手方向で鉄骨梁2の全長又は略全長に亘る長さを有しており、鉄骨梁2の長手方向の中央部位にて2つに分割されている。
【0035】
雑壁梁用プレート体22は、図5に示すように、既存雑壁8の厚み方向に間隔を隔てて一対備えられ、鉄骨梁2に連結された一対の雑壁梁用プレート体22にて既存雑壁8を挟み込む状態で連結することにより、鉄骨梁2と既存雑壁8とを結合している。一対の雑壁梁用プレート体22は、既存雑壁8の外面部8aに直接当接するのではなく、既存雑壁8の外面部8aと間隔を隔てて配設され、雑壁梁用プレート体22と既存雑壁8との間に無収縮モルタル等の充填材23が充填されている。これにより、一対の雑壁梁用プレート体22が、貫通ボルト29及びナット30の締結により、充填材23を含めて既存雑壁8を挟み込む状態で備えられている。無収縮モルタル等の充填材23により、充填材23と貫通ボルト29との一体化を図ることができ、貫通ボルト29に曲げ応力がかからないようにしている。
【0036】
雑壁梁用プレート体22は、図5に示すように、鉄骨梁2のウェブ2cに当接するウェブ当接部24aと下フランジ2bに当接する下フランジ当接部24bとを有するL字状の梁側プレート体24と、既存雑壁8の外面部8aに対向する状態で上下方向(既存雑壁8の面方向と平行)に延びる直線状の雑壁側プレート体25とが備えられている。梁側プレート体24と雑壁側プレート体25とが溶接等により連結され、雑壁梁用プレート体22として一体的に備えられている。梁側プレート体24には、梁側プレート体24から直交する方向に延びる傾斜状のリブ部26が備えられ、このリブ部26も、溶接等により梁側プレート体24に連結され、雑壁梁用プレート体22として一体的に備えられている。
【0037】
雑壁梁用プレート体22にて鉄骨梁2と既存雑壁8とを結合する場合には、図5に示すように、一対の梁側プレート体24の夫々におけるウェブ当接部24aを鉄骨梁2のウェブ2cに当接させ且つ下フランジ当接部24bを下フランジ2bに当接させて、一対の梁側プレート体24にて鉄骨梁2を挟み込み、一対の雑壁側プレート体25の夫々を、既存雑壁8の外面部8aと対向する状態で間隔を隔てて配設させることで、一対の雑壁梁用プレート体22を位置決めする。このように、一対の雑壁梁用プレート体22を位置決めした状態において、鉄骨梁2と一対の雑壁梁用プレート体22とを連結し、既存雑壁8と一対の雑壁梁用プレート体22とを連結する。
【0038】
鉄骨梁2と一対の雑壁梁用プレート体22との連結については、梁側プレート体24の挿通孔及び鉄骨梁2の挿通孔にハイテンションボルト27を挿通させてナット28にて締結することで、一対の雑壁梁用プレート体22にて鉄骨梁2を挟み込む状態で、鉄骨梁2に一対の雑壁梁用プレート体22を固定している。
【0039】
既存雑壁8と一対の雑壁梁用プレート体22との連結については、例えば、雑壁側プレート体25の挿通孔及び既存雑壁8の挿通孔に貫通ボルト29を挿通させてナット30にて仮止めした状態において、雑壁側プレート体25と既存雑壁8との間に無収縮モルタル等の充填材23を充填させたのち、貫通ボルト29をナット30にて締結して本固定することで、一対の雑壁側プレート体25にて充填材23も含めて既存雑壁8を挟み込む状態で、既存雑壁8に一対の雑壁梁用プレート体22を固定している。ちなみに、貫通ボルト29の挿通作業、充填材23の充填作業、貫通ボルト29のナット30による締結作業をどのような順序にて行うかは、施工状況等に応じて、適宜変更することができる。
【0040】
雑壁梁用プレート体22では、梁側プレート体24の下フランジ当接部24bの外側端部から、下方側に延びるように雑壁側プレート体25が配設されている。よって、図5に示すように、鉄骨梁2の左右方向において鉄骨梁2に対して既存雑壁8が位置ずれした状態(鉄骨梁2の中央部位と既存雑壁8の中央部位とが合致しない状態)で配設されている場合でも、左右方向の右側と左側とで充填材23の厚みを変更することで、その位置ずれ分を吸収することができ、鉄骨梁2の中央部位に対して、既存雑壁8と充填材23とを合わせた構造部の中央部位を合致させることができる。
【0041】
図5に示すものでは、鉄骨梁2に対して既存雑壁8が右側に位置ずれしているので、右側よりも左側の充填材23の厚みを厚くしている。これにより、鉄骨梁2の左右方向において鉄骨梁2に対して既存雑壁8が位置ずれした状態で配設されている場合でも、鉄骨梁2に対して、既存雑壁8と充填材23とを合わせた構造部を位置合わせした状態で適切に結合することができる。
【0042】
鉄骨梁2と一対の雑壁梁用プレート体22との連結作業、及び、既存雑壁8と一対の雑壁梁用プレート体22との連結作業については、両方の作業を併行して行うことができるが、どちらか一方の連結作業を先行して行い、その後、他方の連結作業を後行して行うように、2つの連結作業を順番に行うこともできる。2つの連結作業をどのようにして行うかは、施工状況等の各種の条件に応じて適宜変更することができる。
【0043】
(雑壁基礎結合手段)
既存雑壁8を耐震要素として用いるために、図2及び図3に示すように、結合手段10にて鉄骨造の架構3と既存雑壁8とを結合するだけでなく、既存雑壁8と基礎5とを結合する雑壁基礎結合手段31が備えられている。
【0044】
雑壁基礎結合手段31は、既存雑壁8と基礎5の基礎梁7とに亘る板状の雑壁基礎用プレート体32(第2プレート体に相当する)を用いて鉄骨梁2と既存雑壁8とを結合している。雑壁基礎用プレート体32は、鉄骨柱1と基礎5との接合部を除いて、基礎梁7の長手方向で基礎梁7の全長又は略全長に亘る長さを有しており、基礎梁7の長手方向で複数に分割されている。
【0045】
雑壁基礎用プレート体32は、図6に示すように、上下方向で基礎5の基礎梁7と既存雑壁8とに亘る直線状に形成され、既存雑壁8の厚み方向に間隔を隔てて一対備えられている。基礎5の基礎梁7に連結された一対の雑壁基礎用プレート体32にて既存雑壁8を挟み込む状態で連結することにより、基礎5の基礎梁7と既存雑壁8とを結合している。
【0046】
雑壁基礎用プレート体32にて基礎梁7と既存雑壁8とを結合する場合には、図6に示すように、一対の雑壁基礎用プレート体32の下方側部位を基礎梁7の外面部7aに当接させて、一対の雑壁基礎用プレート体32にて基礎梁7を挟み込み、一対の雑壁基礎用プレート体32の夫々を、既存雑壁8の外面部8aと対向する状態で間隔を隔てて配設させることで、一対の雑壁基礎用プレート体32を位置決めする。このように、一対の雑壁基礎用プレート体32を位置決めした状態において、基礎梁7と一対の雑壁基礎用プレート体32とを連結し、既存雑壁8と一対の雑壁基礎用プレート体32とを連結する。
【0047】
基礎梁7と一対の雑壁基礎用プレート体32との連結については、雑壁基礎用プレート体32の挿通孔及び基礎梁7の挿通孔に接着系アンカー33を挿通させて、プレート体34を介してナット35にて締結することで、一対の雑壁基礎用プレート体32にて基礎梁7を挟み込む状態で、基礎梁7に一対の雑壁基礎用プレート体32を固定している。ちなみに、接着系アンカー33の配設位置は、基礎梁7における鉄筋71の配設位置(例えば、探査等により実測することができる)から外れた位置に設定されている。
【0048】
既存雑壁8と一対の雑壁基礎用プレート体32との連結については、例えば、雑壁基礎用プレート体32の挿通孔及び既存雑壁8の挿通孔に貫通ボルト37を挿通させてナット38にて仮止めした状態において、雑壁基礎用プレート体32と既存雑壁8との間に無収縮モルタル等の充填材36を充填させたのち、貫通ボルト37をナット38にて締結して本固定することで、一対の雑壁基礎用プレート体32にて充填材36も含めて既存雑壁8を挟み込む状態で、既存雑壁8に一対の雑壁基礎用プレート体32を固定している。
【0049】
これにより、一対の雑壁基礎用プレート体32が、貫通ボルト37及びナット38の締結により、充填材36を含めて既存雑壁8を挟み込む状態で備えられている。無収縮モルタル等の充填材36により、充填材36と貫通ボルト37との一体化を図ることができ、貫通ボルト37に曲げ応力がかからないようにしている。ちなみに、貫通ボルト37の挿通作業、充填材36の充填作業、貫通ボルト37のナット38による締結作業をどのような順序にて行うかは、施工状況等に応じて、適宜変更することができる。
【0050】
ここで、貫通ボルト37の配設位置については、既存雑壁8における壁端部補強筋81よりも上方側(既存雑壁8の内部側)となるように設定されている。壁端部補強筋81の配設位置については、探査により実測することで把握することができる。
【0051】
図6に示すように、既存雑壁8と基礎梁7との厚みが異なる場合でも、雑壁基礎用プレート体32と既存雑壁8との間に無収縮モルタル等の充填材36を充填させることで、既存雑壁8と充填材36とを合わせた幅を、基礎梁7の幅と同一又は略同一とすることができる。これにより、雑壁基礎用プレート体32を上下方向に延びる直線状のプレート体としても、基礎梁7の外面部7aに当接させながら、既存雑壁8と充填材36とを合わせた構造部の外面部にも当接させて、基礎梁7及び既存雑壁8と充填材36とを合わせた構造部に亘って当接させる状態で、雑壁基礎用プレート体32を設置することができる。
【0052】
図6に示すように、基礎梁7の左右方向において基礎梁7に対して既存雑壁8が位置ずれした状態(基礎梁7の中央部位と既存雑壁8の中央部位とが合致しない状態)で配設されている場合でも、左右方向の右側と左側とで充填材36の厚みを変更することで、その位置ずれ分を吸収することができ、基礎梁7の中央部位に対して、既存雑壁8と充填材36とを合わせた構造部の中央部位を合致させることができる。
【0053】
図6に示すものでは、基礎梁7に対して既存雑壁8が右側に位置ずれしているので、右側よりも左側の充填材36の厚みを厚くしている。これにより、基礎梁7の左右方向において基礎梁7に対して既存雑壁8が位置ずれした状態で配設されている場合でも、基礎梁7に対して、既存雑壁8と充填材36とを合わせた構造部を位置合わせした状態で適切に結合することができる。
【0054】
基礎梁7と一対の雑壁基礎用プレート体32との連結作業、及び、既存雑壁8と一対の雑壁基礎用プレート体32との連結作業については、両方の作業を併行して行うことができるが、どちらか一方の連結作業を先行して行い、その後、他方の連結作業を後行して行うように、2つの連結作業を順番に行うこともできる。2つの連結作業をどのようにして行うかは、施工状況等の各種の条件に応じて適宜変更することができる。
【0055】
(第3結合手段)
この実施形態では、図2及び図3に示すように、図2にて示す鉄骨造の架構3と図3にて示す鉄骨造の架構3とが直交する状態で配設されている。これにより、図3においてVII-VII線での横断面を示す図7に示すように、鉄骨柱1に対して直交する2つの既存雑壁8が配設されている箇所があり、この箇所では、鉄骨柱1に対して直交する2つの既存雑壁8を結合する第3結合手段41が備えられている。
【0056】
第3結合手段41は、図4にて示す第1結合手段11の変形例であり、図7に示すように、第1結合手段11における雑壁柱用プレート体12が2つ備えられ、それに加えて、直交する2つの既存雑壁8と鉄骨柱1とを結合する第2雑壁柱用プレート体42が備えられている。
【0057】
第2雑壁柱用プレート体42は、既存雑壁8の外面部8aに当接する平面状の第1雑壁側当接部42aと、円形状の鉄骨柱1の外周部1aに当接する湾曲面状の柱側当接部42bと、既存雑壁8の外面部8aに当接する平面状の第2雑壁側当接部42cとを有している。第2雑壁柱用プレート体42は、柱側当接部42bを中心として第1雑壁側当接部42aと第2雑壁側当接部42cとが反対側に延びる状態で、第1雑壁側当接部42aと第2雑壁側当接部42cとが直交する姿勢にて備えられている。第2雑壁柱用プレート体42には、それに直交する方向に延びるリブ部42dが備えられている。
【0058】
雑壁柱用プレート体12及び第2雑壁柱用プレート体42にて鉄骨柱1と直交する2つの既存雑壁8を結合する場合には、図7に示すように、2つの雑壁柱用プレート体12のうち、一方の雑壁柱用プレート体12について、柱側当接部12aを鉄骨柱1の外周部1aに当接させ、雑壁側当接部12bを一方の既存雑壁8(図7において鉄骨柱1に対して左側に配設された既存雑壁8)の外面部8aに当接させることで、一方の雑壁柱用プレート体12を位置決めする。他方の雑壁柱用プレート体12についても、柱側当接部12aを鉄骨柱1の外周部1aに当接させ、雑壁側当接部12bを他方の既存雑壁8(図7において鉄骨柱1に対して上方側に配設された既存雑壁8)の外面部8aに当接させることで、他方の雑壁柱用プレート体12を位置決めする。第2雑壁柱用プレート体42について、第1雑壁側当接部42aを一方の既存雑壁8(図7において鉄骨柱1に対して左側に配設された既存雑壁8)の外面部8aに当接させ、柱側当接部42bを鉄骨柱1の外周部1aに当接させ、第2雑壁側当接部42cを他方の既存雑壁8(図7において鉄骨柱1に対して上方側に配設された既存雑壁8)の外面部8aに当接させることで、第2雑壁柱用プレート体42を位置決めする。
【0059】
2つの雑壁柱用プレート体12及び第2雑壁柱用プレート体42を位置決めすることで、一方の雑壁柱用プレート体12と第2雑壁柱用プレート体42とにより一方の既存雑壁8(図7において鉄骨柱1に対して左側に配設された既存雑壁8)を挟み込み、他方の雑壁柱用プレート体12と第2雑壁柱用プレート体42とにより一方の既存雑壁8(図7において鉄骨柱1に対して上方側に配設された既存雑壁8)を挟み込むことができる。
【0060】
このように、2つの雑壁柱用プレート体12及び第2雑壁柱用プレート体42を位置決めした状態において、鉄骨柱1に対して2つの雑壁柱用プレート体12及び第2雑壁柱用プレート体42を連結し、直交する2つの既存雑壁8に対して雑壁柱用プレート体12及び第2雑壁柱用プレート体42を連結する。
【0061】
鉄骨柱1に対する2つの雑壁柱用プレート体12及び第2雑壁柱用プレート体42の連結については、何れも、図4に示す鉄骨柱1と雑壁柱用プレート体12との連結と同様に、ワンサイドボルト13を用いて行われている。雑壁柱用プレート体12を連結する場合には、雑壁柱用プレート体12の挿通孔及び鉄骨柱1の挿通孔にワンサイドボルト13を挿通させて、雑壁柱用プレート体12の外側からナット14を締結することで、鉄骨柱1に対して雑壁柱用プレート体12を固定している。第2雑壁柱用プレート体42を連結する場合も、第2雑壁柱用プレート体42の挿通孔及び鉄骨柱1の挿通孔にワンサイドボルト13を挿通させて、雑壁柱用プレート体12の外側からナット14を締結することで、鉄骨柱1に対して第2雑壁柱用プレート体42を固定している。
【0062】
直交する2つの既存雑壁8に対する雑壁柱用プレート体12及び第2雑壁柱用プレート体42の連結については、直交する2つの既存雑壁8のどちらも同様に連結しているので、一方の既存雑壁8(図7において鉄骨柱1に対して左側に配設された既存雑壁8)に対する連結のみ説明を加え、他方の既存雑壁8(図7において鉄骨柱1に対して上方側に配設された既存雑壁8)に対する連結については省略する。
【0063】
図7に示すように、雑壁柱用プレート体12の雑壁側当接部12bと第2雑壁柱用プレート体42の第1雑壁側当接部42aとにより既存雑壁8を挟み込んでいるので、雑壁柱用プレート体12の挿通孔、第2雑壁柱用プレート体42の挿通孔及び既存雑壁8の挿通孔に貫通ボルト43を貫通させてナット44にて締結することで、雑壁柱用プレート体12と第2雑壁柱用プレート体42とにより既存雑壁8を挟み込む状態で、既存雑壁8に雑壁柱用プレート体12と第2雑壁柱用プレート体42とを固定している。ちなみに、既存雑壁8の挿通孔の内壁部と貫通ボルト43の外周部との隙間には、グラウト等の充填材が充填されている。
【0064】
(第4結合手段)
図2の右側端部に示すように、既存雑壁8が存在しない部位では、上下方向で鉄骨柱1の上端部や中間部位に結合する鉄骨材51を追加して耐震補強を行うことも考えられる。そこで、鉄骨柱1と既存雑壁8とを結合する第1結合手段11を利用して、鉄骨柱1と追加の鉄骨材51とを結合する第4結合手段52が備えられている。
【0065】
第4結合手段52は、図2におけるVIII-VIII線での横断面を示す図8に示すように、第1結合手段11における雑壁柱用プレート体12を利用して、鉄骨柱1と追加の鉄骨材51とを結合している。つまり、一対の雑壁柱用プレート体12のうち、一方の雑壁柱用プレート体12を第3雑壁柱用プレート体53に変更している。
【0066】
第3雑壁柱用プレート体53は、図8に示すように、図4に示す雑壁柱用プレート体12に比べて、柱側当接部53aを鉄骨柱1の周方向に延長させた点が異なるだけであり、その他の構成については同様の構成を有している。第3雑壁柱用プレート体53は、円形状の鉄骨柱1の外周部1aに当接する湾曲面状の柱側当接部53aと、既存雑壁8の外面部8aに当接する平面状の雑壁側当接部53bと、第3雑壁柱用プレート体53に直交する方向に延びるリブ部53cとが備えられている。柱側当接部53aは、鉄骨柱1の外周部1aの全長の半分以下の長さを有しており、この実施形態では、例えば、鉄骨柱1の外周部1aの全長の約半分の長さとしている。
【0067】
第3雑壁柱用プレート体53は、図8に示すように、追加の鉄骨材51を結合するために、結合プレート部53dが備えられている。結合プレート部53dは、例えば、第3雑壁柱用プレート体53とは別体のプレート体にて構成され、そのプレート体を溶接等により第3雑壁柱用プレート体53に連結して、第3雑壁柱用プレート体53に一体的に備えられている。
【0068】
図8に示すものでは、結合プレート部53dが2つ備えられている。2つの結合プレート部53dのうち、1つの結合プレート部53dは、既存雑壁8と反対側に延びる姿勢で備えられ、もう1つの結合プレート部53dは、既存雑壁8に対して直交する方向に延びる姿勢で備えられている。
【0069】
追加の鉄骨材51は、図2及び図8に示すように、上フランジ51aと下フランジ51bと上下のフランジ51a、51bを繋ぐウェブ51cとを有するH形鋼にて構成されている。追加の鉄骨材51において結合プレート部53dに対する結合部位51dは、図8に示すように、上下のフランジ51a、51bが切り欠かれている。追加の鉄骨材51の結合部位51dは、ウェブ51cが結合プレート部53dに当接されてボルト54及びナット55の締結により、第3雑壁柱用プレート体53に対して追加の鉄骨材51が結合されている。
【0070】
雑壁柱用プレート体12及び第3雑壁柱用プレート体53により鉄骨柱1と既存雑壁8と追加の鉄骨材51とを結合する場合には、図8に示すように、雑壁柱用プレート体12について、柱側当接部12aを鉄骨柱1の外周部1aに当接させ、雑壁側当接部12bを既存雑壁8の外面部8aに当接させることで、雑壁柱用プレート体12を位置決めする。第3雑壁柱用プレート体53についても、柱側当接部53aを鉄骨柱1の外周部1aに当接させ、雑壁側当接部53bを既存雑壁8の外面部8aに当接させることで、第3雑壁柱用プレート体53を位置決めする。
【0071】
雑壁柱用プレート体12及び第3雑壁柱用プレート体53を位置決めすることで、図8に示すように、雑壁柱用プレート体12と第3雑壁柱用プレート体53とにより既存雑壁8を挟み込むことができる。このように、雑壁柱用プレート体12及び第3雑壁柱用プレート体53を位置決めした状態において、鉄骨柱1に対して雑壁柱用プレート体12及び第3雑壁柱用プレート体53を連結し、既存雑壁8に対して雑壁柱用プレート体12及び第3雑壁柱用プレート体53を連結し、鉄骨柱1及び既存雑壁8に連結された第3雑壁柱用プレート体53に追加の鉄骨材51を連結している。
【0072】
鉄骨柱1に対する雑壁柱用プレート体12及び第3雑壁柱用プレート体53の連結については、何れも、ワンサイドボルト13を用いて行われている。雑壁柱用プレート体12の連結は、図4に示すものと同様であるので、第3雑壁柱用プレート体53の連結についてのみ説明する。
【0073】
第3雑壁柱用プレート体53の柱側当接部53aは、既存雑壁8とは反対側の鉄骨柱1の外周部1aに至る部位にも当接しており、ワンサイドボルト13の設置箇所を3箇所としている。3箇所の夫々の設置箇所において、第3雑壁柱用プレート体53の挿通孔及び鉄骨柱1の挿通孔にワンサイドボルト13を挿通させて、第3雑壁柱用プレート体53の外側からナット14を締結することで、鉄骨柱1に対して第3雑壁柱用プレート体53を固定している。
【0074】
既存雑壁8に対する雑壁柱用プレート体12及び第3雑壁柱用プレート体53の連結については、雑壁柱用プレート体12の雑壁側当接部12bと第3雑壁柱用プレート体53の雑壁側当接部53bとにより既存雑壁8を挟み込んでいるので、雑壁柱用プレート体12の挿通孔、第3雑壁柱用プレート体53の挿通孔及び既存雑壁8の挿通孔に貫通ボルト56を貫通させてナット57にて締結することで、雑壁柱用プレート体12と第3雑壁柱用プレート体53とにより既存雑壁8を挟み込む状態で、既存雑壁8に雑壁柱用プレート体12及び第3雑壁柱用プレート体53を固定している。ちなみに、既存雑壁8の挿通孔の内壁部と貫通ボルト56の外周部との隙間には、グラウト等の充填材が充填されている。
【0075】
鉄骨柱1及び既存雑壁8に連結された第3雑壁柱用プレート体53に対する追加の鉄骨材51の連結については、追加の鉄骨材51の結合部位51dにおけるウェブ51cを結合プレート部53dに当接させ、鉄骨材51の挿通孔及び結合プレート部53dの挿通孔にボルト54を挿通させてナット55にて締結することで、第3雑壁柱用プレート体53に対して鉄骨材51を固定している。
【0076】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、夫々単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0077】
(1)上記実施形態では、第2結合手段21の雑壁梁用プレート体22にて鉄骨梁2と既存雑壁8とを結合するに当たり、一対の雑壁梁用プレート体22と既存雑壁8との間に充填材23を充填させているが、一対の雑壁梁用プレート体22の間隔を既存雑壁8の厚みに合わせる等により、充填材を充填させることなく、一対の雑壁梁用プレート体22を既存雑壁8の外面部8aに直接当接させて、一対の雑壁梁用プレート体22にて既存雑壁8を直接挟み込むこともできる。
【0078】
(2)上記実施形態では、雑壁基礎結合手段31の雑壁基礎用プレート体32にて基礎5と既存雑壁8とを結合するに当たり、一対の雑壁基礎用プレート体32と既存雑壁8との間に充填材36を充填させているが、一対の雑壁基礎用プレート体32の形状を既存雑壁8の厚みや形状に合わせる等により、充填材を充填させることなく、一対の雑壁基礎用プレート体32を既存雑壁8の外面部8aに直接当接させて、一対の雑壁基礎用プレート体32にて既存雑壁8を直接挟み込むこともできる。
【0079】
(3)上記実施形態では、鉄骨造の架構3として、円形状の鋼管にて構成された鉄骨柱1とH形鋼にて構成された鉄骨梁2とを有するものを例示したが、鉄骨柱1や鉄骨梁2としては、各種の形状の鉄骨材を適用することができ、円形状の鋼管やH形鋼に限るものではない。
【符号の説明】
【0080】
1 鉄骨柱
2 鉄骨梁
3 鉄骨造の架構
4 既存壁
5 基礎
8 既存雑壁
10 結合手段
12 雑壁柱用プレート体(第1プレート体)
15 貫通ボルト
22 雑壁梁用プレート体(第1プレート体)
23 充填材(無収縮モルタル)
29 貫通ボルト
31 雑壁基礎結合手段
32 雑壁基礎用プレート体(第2プレート体)
36 充填材(無収縮モルタル)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8