(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092288
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】濃度測定装置、濃度測定システム及び濃度測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/27 20060101AFI20230626BHJP
【FI】
G01N21/27 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207437
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑弥
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀和
(72)【発明者】
【氏名】五所尾 康博
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB04
2G059DD12
2G059EE01
2G059EE11
2G059GG02
2G059HH01
2G059JJ01
2G059MM01
2G059MM12
2G059NN01
(57)【要約】
【課題】薬液に気泡が発生した場合でも、薬液の濃度を測定する。
【解決手段】本願に係る濃度測定システム(10)は、濃度の測定対象の薬液に向けて光を出射する光源(11)と、薬液を介して光源(11)から出射された光を分光する分光装置(17)と、分光装置(17)により分光された異なる複数の特定波長の光強度に基づいて、特定波長毎の薬液の吸光度を一次吸光度として算出し、複数の特定波長の一次吸光度の関係性に対応した薬液の濃度を求める濃度算出式に基づいて、薬液の濃度を算出する濃度測定装置(100)とを有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃度の測定対象の薬液に向けて光を出射する光源部と、
前記薬液を介して前記光源部から出射された光を分光する分光部と、
前記分光部により分光された異なる複数の特定波長の光強度に基づいて、特定波長毎の前記薬液の吸光度を一次吸光度として算出し、複数の特定波長の一次吸光度の関係性に対応した前記薬液の濃度を求める濃度算出式に基づいて、前記薬液の濃度を算出する演算部と
を備えたことを特徴とする濃度測定装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記薬液が1種類の薬液である場合には、少なくとも2種類の特定波長の一次吸光度の差分を前記関係性として特定し、前記差分と、前記薬液の濃度に対する傾きの値とを基にして、前記薬液の濃度を算出することを特徴とする請求項1に記載の濃度測定装置。
【請求項3】
前記演算部は、前記薬液が第1薬液および第2薬液から成る薬液である場合には、少なくとも3種類の特定波長の一次吸光度の各差分を前記関係性として特定し、前記差分と、前記第1薬液の濃度に対する傾きの値と、前記第2薬液の濃度に対する傾きの値とを基にして、前記薬液の濃度を算出することを特徴とする請求項1に記載の濃度測定装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記薬液を通過した特定波長の光強度と、前記薬液を通過していない特定波長の光強度とを基にして、前記一次吸光度を算出することを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の濃度測定装置。
【請求項5】
濃度の測定対象の薬液に向けて光を出射する光源と、
前記薬液を介して前記光源から出射された光を分光する分光装置と、
前記分光装置により分光された異なる複数の特定波長の光強度に基づいて、特定波長毎の前記薬液の吸光度を一次吸光度として算出し、複数の特定波長の一次吸光度の関係性に対応した前記薬液の濃度を求める濃度算出式に基づいて、前記薬液の濃度を算出する演算部と
を備えたことを特徴とする濃度測定システム。
【請求項6】
光源から濃度の測定対象の薬液に向けて光を出射し、
前記薬液を介して前記光源から出射された光を分光し、
分光された異なる複数の特定波長の光強度に基づいて、特定波長毎の前記薬液の吸光度を一次吸光度として算出し、
複数の特定波長の一次吸光度の関係性に対応した前記薬液の濃度を求める濃度算出式に基づいて、前記薬液の濃度を算出する
ことを特徴とする濃度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液などの測定対象の濃度を測定する濃度測定装置、濃度測定システム及び濃度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光を用いて半導体のエッチング液や洗浄液といった薬液(水溶液)の濃度を測定する技術が知られている。このような技術の一例として、発光ダイオードが出射した光を薬液に照射し、薬液を介して受光した光強度から薬液の濃度を測定する技術が知られている。また、濃度測定対象の光吸収が大きな波長を一つずつ選び、濃度に対する吸光度の傾きから回帰式を作成して濃度測定を行う従来技術もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アンモニア過酸化水素水の様な薬液は、化学反応で気泡を発生し、光路に気泡が入り込む場合がある。このように、光路に気泡が入り込むと、光強度が気泡の影響で変化し、濃度とは関係なく光強度が変化する。同濃度にも関わらず、光強度が変化するため、濃度に関する回帰式を正しく作れず、従来技術では、薬液の濃度を測定することができない。
【0005】
本願はこのような課題を解決するためのものであり、薬液に気泡が発生した場合でも、薬液の濃度を測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に係る濃度測定装置は、濃度の測定対象の薬液に向けて光を出射する光源部と、薬液を介して光源部から出射された光を分光する分光部と、分光部により分光された異なる複数の特定波長の光強度に基づいて、特定波長毎の薬液の吸光度を一次吸光度として算出し、複数の特定波長の一次吸光度の関係性に対応した薬液の濃度を求める濃度算出式に基づいて、薬液の濃度を算出する演算部とを有する。
【0007】
上記濃度測定装置において、演算部は、薬液が1種類の薬液である場合には、少なくとも2種類の特定波長の一次吸光度の差分を関係性として特定し、差分と、薬液の濃度に対する傾きの値とを基にして、薬液の濃度を算出してもよい。
【0008】
上記濃度測定装置において、演算部は、薬液が第1薬液および第2薬液から成る薬液である場合には、少なくとも3種類の特定波長の一次吸光度の各差分を関係性として特定し、差分と、第1薬液の濃度に対する傾きの値と、第2薬液の濃度に対する傾きの値とを基にして、薬液の濃度を算出してもよい。
【0009】
上記濃度測定装置において、薬液を通過した特定波長の光強度と、薬液を通過していない特定波長の光強度とを基にして、一次吸光度を算出してもよい。
【発明の効果】
【0010】
上述した濃度測定装置によれば、濃度の測定対象の薬液に向けて光を出射し、薬液を介して光源部から出射された光を分光し、分光された異なる複数の特定波長の光強度に基づいて、特定波長毎の薬液の吸光度を一次吸光度として算出し、複数の特定波長の一次吸光度の関係性に対応した薬液の濃度を求める濃度算出式に基づいて、薬液の濃度を算出する。この結果、濃度測定装置は、薬液に気泡が発生した場合でも、薬液の濃度を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、気泡の影響を説明するための図である。
【
図2】
図2は、波長Aの気泡の影響を示す図である。
【
図3】
図3は、波長Bの気泡の影響を示す図である。
【
図4】
図4は、2つの波長の吸光度差を示す図である。
【
図5】
図5は、本実施形態における測定手法を説明する図である。
【
図6】
図6は、実施形態における濃度測定システムの概要を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る濃度測定装置が有する機能構成の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本実施形態に係る濃度測定装置による濃度測定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0013】
[原理]
従来、半導体の洗浄液やエッチング液として、塩酸、硝酸、リン酸、水酸化アンモニウム、過酸化水素等の薬液(水溶液)が用いられており、薬液の吸光度に基づいて、薬液の濃度を測定する技術が知られている。
【0014】
従来技術では、濃度測定対象の光吸収が大きな波長を一つずつ選び、濃度に対する吸光度の傾きから回帰式を作成して濃度測定を行っているが、光路に気泡が入り込むと、光路に気泡がある場合とない場合とで、同濃度にも関わらず、光強度が変化するため、濃度に関する回帰式を正しく作れず、薬液の濃度を測定することができない。
【0015】
本発明では、複数の波長の吸光度を使用することで、光路に多少の気泡が存在しても、正しく濃度の回帰式を作成することができる。薬液の測定を行うなかで、ある気泡状態において、薬液を透過する光強度は、
図1に示すような関係となった。
【0016】
図1は、気泡の影響を説明するための図である。
図1の横軸は光の波長に対応する軸であり、縦軸は光強度に対応する軸である。
図1の線1aは、光路に気泡がない場合の波長と光強度との関係を示す。線1bは、光路に気泡がある場合の波長と光強度との関係を示す。線1aと、線1bとを比較すると、ある気泡状態において、薬液を透過する光強度は、波長によらず同じ割合だけ減少していることが分かる。
【0017】
すなわち、1つの波長で吸光度を見ると気泡状態により吸光度が変化しているが、複数の波長の吸光度の差分(関係性)に関しては、一定になっているといえる。
【0018】
図2は、波長Aの気泡の影響を示す図である。
図2の横軸は薬液の濃度(wt%)に対応する軸であり、縦軸は吸光度に対応する軸である。
図2の線2aは、光路に気泡がない場合の波長Aに関する、吸光度と、濃度との関係を示す。線2bは、光路に気泡がある場合の波長Aに関する、吸光度と、濃度との関係を示す。
【0019】
図3は、波長Bの気泡の影響を示す図である。
図3の横軸、縦軸に関する説明は、
図2の横軸、縦軸に関する説明と同様である。
図3の線3aは、光路に気泡がない場合の波長Bに関する、吸光度と、濃度との関係を示す。線3bは、光路に気泡がある場合の波長Bに関する、吸光度と、濃度との関係を示す。
【0020】
図4は、2つの波長の吸光度差を示す図である。
図4の横軸は薬液の濃度に対応する軸であり、縦軸は、2つの波長(波長Aと波長B)の吸光度差に対応する軸である。線4aは、
図2で説明した線2aと、
図3で説明した線3aとの差分(吸光度差)を示す。線4bは、
図2で説明した線2bと、
図3で説明した線3bとの差分(吸光度差)を示す。線4aと、線4bとは一致しており、複数の波長の吸光度の差分(関係性)に関しては、一定となっていることが分かる。
【0021】
なお、
図4では、2つの波長(波長Aと波長B)の吸光度差について説明したが、2つの波長に限られない。たとえば、N個の波長についても、各波長の吸光度差は一定となる。
【0022】
上記のように、本発明に係る濃度測定装置は、薬液の気泡状態によらず、複数の波長の吸光度の差分(関係性)が一定であることに着目し、吸光度の差分を使用することで、濃度に対する回帰式を正しく作成して濃度予測を行う。
【0023】
[測定手法について]
続いて、
図5を用いて、本実施形態における測定手法について説明する。
図5は、本実施形態における測定手法を説明する図である。
図5に示す例では、水溶液、薬液等といった液体のサンプルに溶解する溶質の濃度を測定する濃度測定システム1の構成を概念的に示した。
【0024】
たとえば、濃度測定システム1は、光源装置2、フローセル3、ファブリペロー分光用チューナブルフィルタ4、受光素子5、および濃度測定装置6を有する。
【0025】
光源装置2は、光を投光可能な光源装置であり、たとえば、ハロゲンランプやLED等の光源により実現される。たとえば、光源装置2は、濃度測定装置6による制御に従って、所定の強度の光を出射する。このようにして光源装置2により出射された光は、光路OPに沿って、フローセル3、およびファブリペロー分光用チューナブルフィルタ4を介し、受光素子5へと伝達される。
【0026】
ここで、光源装置2は、1つ若しくは同時に濃度を測定する溶質のそれぞれと対応する特定波長を含む波長帯の光を出射可能な光源であればよい。たとえば、光源装置2は、半値幅が±100ナノメートル程度のLEDにより実現可能であり、溶質がアンモニアおよび過酸化水素である場合、少なくとも、1525ナノメートルから1600ナノメートルの波長帯の光を十分な強度で出力可能な光源であればよい。
【0027】
フローセル3は、光源装置2が出射する光に対して透明な素材(たとえば、石英等)からなり、内部に薬液(水溶液)等のサンプルを流すことができる。なお、フローセル3は、試験管やセル等により実現されてもよい。また、フローセル3は、全体が透明な素材である必要はなく、光源装置2から出射された光が入射される入射部分と、入射された光をサンプルを介して出射する出射部分とが透明であればよい。
【0028】
ファブリペロー分光用チューナブルフィルタ4は、透過可能な光の波長を変更することができるファブリペロー干渉計(Fabry Perot Interferometer)であり、平行に配置された2つの半透鏡を有する。たとえば、ファブリペロー分光用チューナブルフィルタ4は、光源装置2側に設置された半透鏡である上部ミラーUMと、受光素子5側に配置された半透鏡である下部ミラーDMとを有する。そして、ファブリペロー分光用チューナブルフィルタ4は、上部ミラーUMと下部ミラーDMとの間隔を制御することで、フローセル3を介して受光した光から、上部ミラーUMと下部ミラーDMとの間隔に応じた波長の光を透過する。たとえば、ファブリペロー分光用チューナブルフィルタ4は、濃度測定装置6からの制御に従い、サンプルを介して受光した光から溶質と対応する特定波長の光を透過する。なお、特定波長の光を透過させることが可能であれば、他のフィルタを用いてもよい。
【0029】
受光素子5は、ファブリペロー分光用チューナブルフィルタ4により透過された光を受光すると、受光した光強度を測定する素子であり、たとえば、フォトダイオード等の光電素子等により実現される。たとえば、受光素子5は、透過された光を受光すると、受光した光の強さを示す電気信号を生成し、生成した電気信号を濃度測定装置6へと伝達する。
【0030】
濃度測定装置6は、受光素子5が受光した光強度に基づいて、サンプルに含まれる溶質の濃度を測定する。たとえば、濃度測定装置6は、光源装置2を制御し、特定波長を含む波長帯の光を出射させ、ファブリペロー分光用チューナブルフィルタ4を制御して、特定波長の光を透過させる。濃度測定装置6は、受光素子5が受光した特定波長の光強度を測定する。
【0031】
ここで、濃度測定装置6は、フローセル3内にサンプルがない状態で受光素子5が受光した光強度をI0として測定し、フローセル3内にサンプルがある状態で受光素子5が受光した光強度をI1として測定する。そして、濃度測定装置6は、以下の式(1)を用いて、複数の特定波長におけるサンプルの吸光度Xを算出する。
【0032】
【0033】
たとえば、
図2で説明した波長Aの吸光度(気泡無し)X
Aは、式(2)によって示される。波長Aの吸光度(気泡あり)X’
Aは、式(3)によって示される。式(3)において、xは、失われた後に受光された光の割合を示す。式(3)の「-log10(x/100)」は、気泡の影響による項である。
【0034】
【0035】
たとえば、
図3で説明した波長Bの吸光度(気泡無し)は、式(4)によって示される。波長Bの吸光度(気泡あり)X’
Bは、式(5)によって示される。式(5)において、xは、失われた後に受光された光の割合を示す。式(5)の「-log10(x/100)」は、気泡の影響による項である。
【0036】
【0037】
式(6)に示すように、気泡有り無しに関わらず、波長Aと波長Bとの吸光度差は一定となる。これは、差分によって、気泡の影響「-log10(x/100)」が消えるためである。
【0038】
【0039】
濃度測定装置6は、複数の特定波長の吸光度差と、濃度に対する回帰式とを基にして、濃度予測を行う。
【0040】
[濃度に対する回帰式について]
ここで、濃度に対する回帰式の一例について説明する。まず、測定対象の薬液に、1種類の薬液のみ含まれる場合には、少なくとも2つの特定波長(たとえば、波長A、波長B)を用いて、薬液の濃度を算出する。一例として、薬液にNH3が含まれている場合について説明する。この場合には、濃度測定装置6は、式(7)に基づいて、NH3の濃度CNH3を算出する。
【0041】
【0042】
式(7)において、XAは、式(1)に基づいて算出される波長Aの吸光度である。XBは、式(1)に基づいて算出される波長Bの吸光度である。kは、NH3の濃度に対する吸光度差の傾きであり、実測から求められる。
【0043】
続いて、測定対象の薬液に、2種類の薬液が含まれる場合には、少なくとも3つの特定波長(たとえば、波長A、波長B、波長C)を用いて、各薬液の濃度を算出する。一例として、薬液にNH3およびH202が含まれている場合について説明する。この場合には、濃度測定装置6は、式(8)に基づいて、NH3の濃度CNH3と、H202の濃度CH202を算出する。
【0044】
【0045】
式(8)において、XAは、式(1)に基づいて算出される波長Aの吸光度である。XBは、式(1)に基づいて算出される波長Bの吸光度である。XCは、式(1)に基づいて算出される波長Cの吸光度である。
【0046】
式(8)において、kは、NH3の濃度に対する吸光度差(波長Aと波長Bとの吸光度差)の傾きである。lは、NH3の濃度に対する吸光度差(波長Cと波長Bとの吸光度差)の傾きである。mは、H2O2の濃度に対する吸光度差(波長Aと波長Bとの吸光度差)の傾きである。nは、H2O2の濃度に対する吸光度差(波長Cと波長Bとの吸光度差)の傾きである。kと同様にして、l、m、nも実測から求められる。
【0047】
なお、式(7)、式(8)に示す例では、2波長の差分をそれぞれ算出しているが、気泡の影響による項目「-log10(x/100)」を削除できれば、複数の波長の和および差を組み合わせて、各波長の関係性を特定してもよい。たとえば、「XA+XB-XC-XD」、「XA-XB+XC-XD」等によって、各波長の関係性を特定できる。
【0048】
[実施形態]
以下、上述した測定手法を用いて薬液の濃度を測定する実施形態の一例について、
図6を用いて説明する。
図6は、実施形態における濃度測定システムの概要を示す図である。
図6に示す例では、濃度測定システム10は、LED11、ファイバ12及び16、投光部13、フローセル14、受光部15、分光装置17、並びに、濃度測定装置100を有する。
【0049】
LED11は、光源であり、溶質と対応する特定波長を含む光を出射する。LED11は、薬液が光吸収する波長を有する光源であれば特に制限はない。たとえば、LED11は、半値幅が100ナノメートル程度の光を出力可能な発光素子である。たとえば、LED11は、ハロゲンランプでもよい。
【0050】
ファイバ12は、LED11から出射された光を投光部13へと伝達するファイバであり、たとえば、単相の光ファイバ等により実現される。投光部13は、ファイバ12を介して、LED11が出射した光を受光すると、受光した光をフローセル14へと出射する。
【0051】
フローセル14は、サンプルが流れるフローセルである。フローセル14は、薬液を流せて光を透過できる流路であれば特に制限はない。たとえば、フローセル14は、半透明なテフロンチューブ(登録商標)でもよい。
図6に示す例では、フローセル14の内容には、洗浄液供給装置CPから洗浄装置CMへと供給される半導体の洗浄液がサンプルとして流れている。
【0052】
受光部15は、投光部13から投光された光を、フローセル14内のサンプルを介して受光する。そして、受光部15は、受光した光をファイバ16へと出力する。ファイバ16は、ファイバ12と同様に、受光部15から出力された光を分光装置17へと伝達するファイバであり、たとえば、単相の光ファイバ等により実現される。なお、
図6に示す構成は、あくまで一例である。たとえば、濃度測定システム10は、ファイバ12、16、投光部13、および受光部15を有さずともよい。
【0053】
分光装置17は、サンプルを介してLED11から出射された光を受光すると、受光した光を分光する分光装置である。たとえば、分光装置17は、ファイバ16から受光した光を、所定の特定波長に分光する。
【0054】
濃度測定装置100は、分光装置17により測定された光強度に基づいて算出される複数の特定波長の吸光度差と、濃度に対する回帰式とを基にして、濃度予測を行う。たとえば、濃度測定装置100は、フローセル14内を流れる薬液に溶解している溶質の濃度を測定する。
【0055】
[濃度測定装置の機能構成の一例]
以下、
図7を用いて、濃度測定装置100が有する機能構成の一例について説明する。
図7は、実施形態に係る濃度測定装置が有する機能構成の一例を示す図である。
図7に示すように、濃度測定装置100は、光源制御部110、分光制御部120、受光制御部130、入力部140、出力部150、記憶部160及び制御部170を有する。
【0056】
光源制御部110は、制御部170からの制御に従ってLED11の点灯を制御する制御装置であり、たとえば、LED11の点灯回路等により実現される。たとえば、光源制御部110は、LED11を制御し、全測定波長の光を所定の強度で出射させる。なお、光源制御部110は、LED11から出射される光の波長帯や強度が一定になるように、各種の制御手段を有していてもよい。
【0057】
分光制御部120は、制御部170からの制御に従って分光装置17を制御する制御装置であり、たとえば、分光装置17の制御回路により実現される。分光制御部120は、分光装置17が有する上部ミラーと下部ミラーとの間に印加する電圧を制御することで、受光素子が受光する光の波長を適宜制御する。
【0058】
受光制御部130は、制御部170からの制御にしたがって分光された光強度を測定するための制御装置であり、たとえば、分光装置17が有する受光素子177の制御回路により実現される。たとえば、受光制御部130は、分光装置17が測定した光強度を示す電気信号を受付けると、受付けた電気信号を光強度を示す数値に変換し、変換後の数値を制御部170に通知する。
【0059】
入力部140は、利用者からの操作を受付ける入力装置であり、たとえば、キーボードやマウス等により実現される。また、出力部150は、濃度測定装置100による測定結果を出力するための出力装置であり、たとえば、液晶モニタやプリンタ等により実現される。
【0060】
記憶部160は、各種の情報を記憶する記憶装置であり、たとえば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。たとえば、記憶部160には、各種の測定ログや、各種数式、回帰式で用いるk、l、m、nの値等が登録される。
【0061】
制御部170は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサによって、濃度測定装置100内部の記憶装置に記憶されている各種プログラムがRAM等を作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部170は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。
【0062】
図7に示す例では、制御部170は、取得部171、演算部172及び提供部173を有する。取得部171は、LED11および分光装置17を制御し、分光装置17によりサンプルを介して分光した特定波長の光強度を取得する。
【0063】
たとえば、取得部171は、溶質等の濃度を測定する対象(測定対象)の選択を入力部140から受付けると、サンプルを介した光から選択された測定対象とする特定波長の光強度を取得する。
【0064】
取得部171は、分光制御部120を制御し、サンプルを介して分光装置17が受光した光から特定波長の光を分光させる。そして、取得部171は、受光制御部130を介して、分光装置17が測定した特定波長の光強度を取得する。
【0065】
たとえば、取得部171は、サンプルとして1種類の薬液が選択された場合には、最低2種類の特定波長(波長A、波長B)について、光強度I1を取得する。なお、取得部171は、最低2種類の特定波長(波長A、波長B)について、サンプルがない状態での光強度I0を事前に取得しておくものとする。取得部171は、各光強度の情報を、演算部172に出力する。
【0066】
たとえば、取得部171は、2種類の薬液が選択された場合には、最低3種類の特定波長(波長A、波長B、波長C)について、光強度I1を取得する。なお、取得部171は、最低3種類の特定波長(波長A、波長B、波長C)について、サンプルがない状態での光強度I0を事前に取得しておくものとする。取得部171は、各光強度の情報を、演算部172に出力する。
【0067】
演算部172は、測定された複数の特定波長の光強度を基にして、複数の特定波長の吸光度差を算出し、吸光度差と、濃度に対応する回帰式とを基にして、濃度予測を行う。
【0068】
まず、サンプルとして1種類の薬液(NH3:アンモニア)が選択されている場合の、演算部172の処理について説明する。演算部172は、式(1)を基にして波長Aに対する吸光度XAを算出する。演算部172は、式(1)を基にして波長Bに対する吸光度XBを算出する。
【0069】
演算部172は、吸光度XAと、吸光度XAとの吸光度差(XA-XB)を算出し、式(7)に基づいて、薬液の濃度を算出する。演算部172は、回帰式の係数kを、記憶部160から取得しておくものとする。
【0070】
続いて、サンプルとして2種類の薬液(NH3:アンモニア、H2O2:過酸化水素)が選択されている場合の、演算部172の処理について説明する。演算部172は、式(1)を基にして波長Aに対する吸光度XAを算出する。演算部172は、式(1)を基にして波長Bに対する吸光度XBを算出する。演算部172は、式(1)を基にして波長Cに対する吸光度XCを算出する。
【0071】
演算部172は、吸光度XAと、吸光度XAとの吸光度差(XA-XB)を算出し、吸光度XCと、吸光度XAとの吸光度差(XC-XA)を算出し、式(8)に基づいて、2種類の薬液の濃度をそれぞれ算出する。演算部172は、回帰式の係数k、l、m、nを、記憶部160から取得しておくものとする。
【0072】
提供部173は、演算部172により測定された各測定対象の濃度を利用者に提供する。たとえば、提供部173は、出力部150を介して、利用者が選択した測定対象の濃度を示す値を出力する。
【0073】
[実施形態における濃度測定処理の一例]
図8は、本実施形態に係る濃度測定装置による濃度測定処理のフローチャートである。次に、
図8を参照して、本実施形態に係る濃度測定装置100による濃度測定処理の流れについて説明する。
【0074】
濃度測定装置100の光源制御部110は、光源であるLED11から光を出射させる(ステップS101)。分光装置17は、測定対象を介して、光源であるLED11が出射した光を受光する(ステップS102)。次に、分光装置17は、分光した特定波長の光強度を測定する(ステップS103)。
【0075】
濃度測定装置100の演算部172は、測定した光強度に基づいて、特定波長における吸光度を算出する(ステップS104)。演算部172は、全ての特定波長を測定していない場合には(ステップS105,No)、ステップS103に移行する。
【0076】
演算部172は、全ての特定波長を測定した場合には(ステップS105,Yes)、複数の特定波長の吸光度差に対応した回帰式を用いて、測定対象の濃度を算出する(ステップS106)。
【0077】
濃度測定装置100の提供部173は、測定された濃度を測定結果として出力する(ステップS107)。
【0078】
[実施形態における効果]
以上に説明したように、本実施形態に係る濃度測定装置100は、濃度の測定対象の薬液に向けて光を出射し、薬液を介して出射された光を分光し、分光された異なる複数の特定波長の光の強度に基づいて、特定波長毎の薬液の吸光度を一次吸光度として算出し、複数の特定波長の一次吸光度の関係性に対応した薬液の濃度を求める濃度算出式に基づいて、薬液の濃度を測定する。薬液の気泡状態によらず、複数の波長の吸光度の関係性が一定であるため、吸光度の関係性を使用することで、濃度に対する回帰式を正しく作成して濃度予測を行うことができる。すなわち、薬液に気泡が発生した場合でも、薬液の濃度を測定することができる。
【0079】
[実施形態の拡張]
上記の説明では、サンプルに含まれる測定対象の濃度を測定する濃度測定システム10について説明したが、実施形態は、これに限定されるものではない。以下の説明では、濃度測定システム10が実行する測定手法のバリエーションについて説明する。
【0080】
[サンプルについて]
上述した例では、アンモニアと過酸化水素が溶解した水溶液をサンプルとしたが、実施形態は、これに限定されるものではない。たとえば、濃度測定装置100は、塩酸(HCl)と過酸化水素とが溶解したサンプルについて、上述した処理と同様の処理を実行することにより、サンプルの吸光度から塩酸および過酸化水素の濃度を算出してもよい。
【0081】
[装置構成について]
なお、濃度測定システム10の装置構成は、上述した説明に限定されるものではない。たとえば、濃度測定装置100は、濃度測定システム10全体を有し、フローセル14内のサンプルにおける測定対象の濃度を測定する装置であってもよい。
【0082】
以上、実施形態の一例を説明したが、これらは例示であり、本実施形態は上記した説明に限定されるものではない。発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、実施形態の構成や詳細は、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で実施することができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0083】
10 濃度測定システム
100 濃度測定装置
11 LED
12、16 ファイバ
13 投光部
14 フローセル
15 受光部
17 分光装置
110 光源制御部
120 分光制御部
130 受光制御部
140 入力部
150 出力部
160 記憶部
170 制御部
171 取得部
172 演算部
173 提供部