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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092289
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】濃度表示装置及び濃度表示方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/59 20060101AFI20230626BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
G01N21/59 Z
G01N21/27 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207438
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑弥
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀和
(72)【発明者】
【氏名】五所尾 康博
(72)【発明者】
【氏名】立石 幸一
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB04
2G059DD12
2G059EE01
2G059EE11
2G059EE12
2G059GG02
2G059HH01
2G059JJ01
2G059MM01
2G059MM04
2G059MM05
2G059MM12
2G059PP02
2G059PP04
(57)【要約】
【課題】現状の濃度と目標濃度との差を容易に判断可能にする。
【解決手段】本願に係る濃度表示装置(100)は、測定対象となる薬液の薬液濃度を測定する測定部(172)と、測定した薬液濃度の測定値を表示する第1の表示モード、または、測定された薬液濃度と予め定められた目標濃度との差の値を表示する第2の表示モードを選択し、選択した第1の表示モード、または、第2の表示モードによって、濃度情報を表示部に表示させる表示モード選択部(173)とを有する。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象となる薬液の薬液濃度を測定する測定部と、
1つの薬液に関して1つの濃度情報のみ表示可能な表示部と、
前記測定部により測定された薬液濃度の測定値を表示する第1の表示モード、または、測定された薬液濃度と予め定められた目標濃度との差の値を表示する第2の表示モードを選択し、選択した前記第1の表示モード、または、前記第2の表示モードによって、濃度情報を前記表示部に表示させる表示モード選択部と
を有することを特徴とする濃度表示装置。
【請求項2】
前記表示モード選択部は、測定された薬液濃度と予め定められた目標濃度との差が所定の閾値を超えたか否かを更に判定し、前記第1の表示モードによって、前記表示部に前記濃度情報を表示させている間に、前記差が前記所定の閾値を超えた場合には、前記第2の表示モードを選択し、前記第2の表示モードによって、前記表示部に濃度情報を表示させることを特徴とする請求項1に記載の濃度表示装置。
【請求項3】
前記表示モード選択部は、前記第2の表示モードによって、前記表示部に濃度情報を表示させている間に、前記差が前記所定の閾値以下となった場合には、前記第1の表示モードによって、前記表示部に濃度情報を表示させることを特徴とする請求項2に記載の濃度表示装置。
【請求項4】
前記表示部は、前記第1の表示モードで濃度情報を表示する場合には、前記測定部により測定された薬液濃度の測定値を表示し、前記第2の表示モードで濃度情報を表示する場合には、測定された薬液濃度と予め定められた目標濃度との差の値を表示することを特徴とする請求項3に記載の濃度表示装置。
【請求項5】
前記表示部は、前記第2の表示モードで濃度情報を表示する場合には、測定された薬液濃度と予め定められた目標濃度との差の絶対値を表示することを特徴とする請求項4に記載の濃度表示装置。
【請求項6】
1つの薬液に関して1つの濃度情報のみ表示可能な表示部を有する濃度表示装置の濃度表示方法であって、
測定対象となる薬液の薬液濃度を測定し、
測定した薬液濃度の測定値を表示する第1の表示モード、または、測定された薬液濃度と予め定められた目標濃度との差の値を表示する第2の表示モードを選択し、
選択した前記第1の表示モード、または、前記第2の表示モードによって、濃度情報を前記表示部に表示させる
ことを特徴とする濃度表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液などの測定対象の濃度の情報を表示する濃度表示装置及び濃度表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光を用いて半導体のエッチング液や洗浄液といった薬液(水溶液)の濃度を測定する技術が知られている。このような技術の一例として、発光ダイオードが出射した光を薬液に照射し、薬液を介して受光した光強度から薬液の濃度を測定する従来技術が知られている。かかる従来技術では、純水(水100%)を基準とし薬液の吸光度から、濃度回帰式を作成し、薬液の濃度を算出し表示している。純水を基準とすることで、各薬液成分の濃度は、0%を基準とした真の濃度の値となる。
【0003】
たとえば、半導体洗浄のように、所定の目的に対して、薬液を使用する場合には、かかる薬液を使用する際の濃度が顧客から指定される。以下の説明において、顧客に指定される薬液使用時の濃度を「目標濃度」と表記する。作業員は、目標濃度と、測定された濃度とを比較して、薬液成分の濃度が適切であるかを適宜確認し、薬液を使用する。
【0004】
作業員が作業を行う現場では、薬液成分の濃度を算出するフィールド装置等の表示画面に、各濃度が表示される。図18は、濃度の表示例を示す図である。図18に示す例では、フィールド装置30には、各薬液成分の表示画面30a,30b,30cが含まれる。たとえば、表示画面30aには、薬液成分「NH4OH」の濃度が「0.12wt%」である旨が示される。表示画面30bには、薬液成分「H2O2」の濃度が「0.05wt%」である旨が示される。表示画面30cには、薬液成分「H2O」の濃度が「100.44wt%」である旨が示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-128940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術のような濃度の表示を行うと、作業員は、目視で濃度を確認できるものの、目標濃度と、現状の濃度とがどの程度ずれているのかを考える手間が発生するため、ミスが起こりやすく、余計な時間を要する場合がある。
【0007】
本願はこのような課題を解決するためのものであり、現状の濃度と目標濃度との差を容易に判断可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願に係る濃度表示装置は、測定対象となる薬液の薬液濃度を測定する測定部と、1つの薬液に関して1つの濃度情報のみ表示可能な表示部と、測定部により測定された薬液濃度の測定値を表示する第1の表示モード、または、測定された薬液濃度と予め定められた目標濃度との差の値を表示する第2の表示モードを選択し、選択した第1の表示モード、または、第2の表示モードによって、濃度情報を表示部に表示させる表示モード選択部とを有する。
【0009】
上記濃度表示装置において、表示モード選択部は、測定された薬液濃度と予め定められた目標濃度との差が所定の閾値を超えたか否かを更に判定し、第1の表示モードによって、表示部に濃度情報を表示している間に、差が所定の閾値を超えた場合には、第2の表示モードを選択し、第2の表示モードによって、表示部に濃度情報を表示させてもよい。
【0010】
上記濃度表示装置において、表示モード選択部は、第2の表示モードによって、表示部に濃度情報を表示している間に、差が所定の閾値以下となった場合には、第1の表示モードによって、表示部に濃度情報を表示させてもよい。
【0011】
上記濃度表示装置において、第1の表示モードで濃度情報を表示する場合には、測定部により測定された薬液濃度の測定値を表示し、第2の表示モードで濃度情報を表示する場合には、測定された薬液濃度と予め定められた目標濃度との差の値を表示してもよい。
【0012】
上記濃度表示装置において、表示部は、第2の表示モードで濃度情報を表示する場合には、測定された薬液濃度と予め定められた目標濃度との差の絶対値を表示してもよい。
【発明の効果】
【0013】
上述した濃度表示装置によれば、1つの薬液に関して1つの濃度情報のみ表示可能な表示部を有する。濃度表示装置は、測定対象となる薬液の薬液濃度を測定し、測定された薬液濃度の測定値を表示する第1の表示モード、または、測定された薬液濃度と予め定められた目標濃度との差の値を表示する第2の表示モードを選択し、選択した第1の表示モード、または、第2の表示モードによって、濃度情報を表示部に表示させる。この結果、濃度表示装置は、現状の濃度と目標濃度との差を容易に判断可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、各表示モードの一例を説明するための図である。
図2図2は、実施形態における測定手法を説明する図である。
図3図3は、アンモニア水溶液および過酸化水素水の吸収スペクトルを示すグラフである。
図4図4は、サンプルの吸収スペクトルを示すグラフである。
図5図5は、波長λの光における過酸化水素水の濃度と吸光度との関係を示すグラフである。
図6図6は、波長λの光における過酸化水素水の濃度と吸光度との関係を示すグラフである。
図7図7は、波長λの光におけるアンモニアの濃度と吸光度との関係を示すグラフである。
図8図8は、波長λの光におけるアンモニアの濃度と吸光度との関係を示すグラフである。
図9図9は、吸光度から計算されたアンモニアの濃度と、混合体積比から計算したアンモニアの濃度との関係を示すグラフである。
図10図10は、吸光度から計算された過酸化水素の濃度と、混合体積比から計算した過酸化水素の濃度との関係を示すグラフである。
図11図11は、塩酸と過酸化水素水の吸収スペクトルを示すグラフである。
図12図12は、吸光度から計算された塩酸の濃度と、混合体積比から計算した塩酸の濃度との関係を示すグラフである。
図13図13は、吸光度から計算された過酸化水素の濃度と、混合体積比から計算した過酸化水素の濃度との関係を示すグラフである。
図14図14は、実施形態における測定システムの概要を示す図である。
図15図15は、実施形態に係る分光装置の一例を示す図である。
図16図16は、実施形態に係る濃度表示装置が有する機能構成の一例を示す図である。
図17図17は、本実施形態に係る濃度表示装置による濃度表示処理のフローチャートである。
図18図18は、濃度の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0016】
[原理]
たとえば、半導体を洗浄する作業現場において、濃度表示装置(フィールド装置等)は、光を用いて洗浄に使用する薬液の濃度をリアルタイムに測定し、測定結果を表示する。図18で説明したように、濃度表示装置に設定された薬液成分の表示画面は、表示領域が限られているため、1つの薬液成分について、1つの濃度情報のみ表示可能となる。
【0017】
従来技術と同様にして濃度表示装置が、測定した薬液の濃度の測定値をそのまま表示すると、作業員は、目視で濃度を確認できるものの、目標濃度(事前に指定される目標の濃度)と、測定した濃度とがどの程度ずれているのかを考える手間が発生してしまう。
【0018】
このため、本実施形態に係る濃度表示装置は、目標濃度と、測定した濃度との差に応じて、第1の表示モードまたは第2の表示モードの何れか一方を選択し、選択した表示モードによって、濃度情報を表示部に表示させる。
【0019】
図1は、各表示モードの一例を説明するための図である。濃度表示装置の表示部150には、薬液Aの1つの濃度情報を表示するための表示領域150aと、薬液Bの1つの濃度情報を表示するための表示領域150bとが含まれる。
【0020】
濃度表示装置は、目標濃度と、測定した濃度との差が閾値以下の場合には、第1の表示モードによって、1つの濃度情報を表示する。第1の表示モードでは、1つの濃度情報として、各薬液成分に関する濃度の測定値が表示される。図1に示す例では、表示領域150aに、薬液Aの濃度の測定値が表示される。表示領域150bに、薬液Bの濃度の測定値が表示される。
【0021】
一方、濃度表示装置は、目標濃度と、測定した濃度との差が閾値を超える場合には、第2の表示モードによって、1つの濃度情報を表示する。第2の表示モードでは、1つの濃度情報として、各薬液成分に関する濃度の測定値と、各目標濃度との差が表示される。図1に示す例では、表示領域150aに、薬液Aの濃度の測定値と目標濃度(薬液Aの目標濃度)との差が表示される。表示領域150bに、薬液Bの濃度の測定値と目標濃度(薬液Bの目標濃度)との差が表示される。
【0022】
上記のように、目標濃度と、測定した濃度との差が閾値以下の場合には第1の表示モードで濃度情報を表示させ、差が閾値を超えた場合に、第2の表示モードに強制的に切り替えて、目標濃度と、測定した濃度との差を表示させることで、現状の濃度と目標濃度との差異を容易に判断可能にすることができる。
【0023】
なお、濃度表示装置は、薬液成分毎に、表示モードを切り替えてよい。たとえば、薬液Aについて、目標濃度と、測定した濃度との差が閾値を超え、薬液Bについて、目標濃度と、測定した濃度との差が閾値を超えていない場合には、薬液Aの濃度情報を、第2の表示モードで表示し、薬液Bの濃度情報を、第1の表示モードで表示する。
【0024】
一方、薬液Aについて、目標濃度と、測定した濃度との差が閾値を超えず、薬液Bについて、目標濃度と、測定した濃度との差が閾値を超えた場合には、薬液Aの濃度情報を、第1の表示モードで表示し、薬液Bの濃度情報を、第2の表示モードで表示する。
【0025】
[測定手法について]
次に、濃度を測定する測定方法の一例について説明する。図2は、実施形態における測定手法を説明する図である。図2に示す例では、水溶液等といった液体のサンプルに溶解する溶質の濃度を測定する測定システム1の構成を概念的に示した。
【0026】
たとえば、測定システム1は、光源装置2、フローセル3、ファブリペロー分光用チューナブルフィルタ4、受光素子5、および濃度表示装置6を有する。
【0027】
光源装置2は、光を投光可能な光源装置であり、たとえば、ハロゲンランプやLED等の光源により実現される。たとえば、光源装置2は、濃度表示装置6による制御に従って、所定の強度の光を出射する。このようにして光源装置2により出射された光は、光路OPに沿って、フローセル3、およびファブリペロー分光用チューナブルフィルタ4を介し、受光素子5へと伝達される。
【0028】
ここで、光源装置2は、1つ若しくは同時に濃度を測定する溶質のそれぞれと対応する特定波長を含む波長帯の光を出射可能な光源であればよい。たとえば、光源装置2は、半値幅が±100ナノメートル程度のLEDにより実現可能であり、溶質がアンモニアおよび過酸化水素である場合、少なくとも、1525ナノメートルから1600ナノメートルの波長帯の光を十分な強度で出力可能な光源であればよい。
【0029】
フローセル3は、光源装置2が出射する光に対して透明な素材(たとえば、石英等)からなり、内部に水溶液等のサンプルを流すことができる。なお、フローセル3は、試験管やセル等により実現されてもよい。また、フローセル3は、全体が透明な素材である必要はなく、光源装置2から出射された光が入射される入射部分と、入射された光をサンプルを介して出射する出射部分とが透明であればよい。
【0030】
ファブリペロー分光用チューナブルフィルタ4は、透過可能な光の波長を変更することができるファブリペロー干渉計(Fabry Perot Interferometer)であり、平行に配置された2つの半透鏡を有する。たとえば、ファブリペロー分光用チューナブルフィルタ4は、光源装置2側に設置された半透鏡である上部ミラーUMと、受光素子5側に配置された半透鏡である下部ミラーDMとを有する。そして、ファブリペロー分光用チューナブルフィルタ4は、上部ミラーUMと下部ミラーDMとの間隔を制御することで、フローセル3を介して受光した光から、上部ミラーUMと下部ミラーDMとの間隔に応じた波長の光を透過する。たとえば、ファブリペロー分光用チューナブルフィルタ4は、濃度表示装置6からの制御に従い、サンプルを介して受光した光から溶質と対応する特定波長の光を透過する。
【0031】
受光素子5は、ファブリペロー分光用チューナブルフィルタ4により透過された光を受光すると、受光した光の強度を測定する素子であり、たとえば、フォトダイオード等の光電素子等により実現される。たとえば、受光素子5は、透過された光を受光すると、受光した光の強さを示す電気信号を生成し、生成した電気信号を濃度表示装置6へと伝達する。
【0032】
濃度表示装置6は、受光素子5が受光した光の強度に基づいて、サンプルに含まれる溶質の濃度を測定する。たとえば、濃度表示装置6は、光源装置2を制御し、特定波長を含む波長帯の光を出射させ、ファブリペロー分光用チューナブルフィルタ4を制御して、特定波長の光を透過させる。濃度表示装置6は、受光素子5が受光した特定波長の光の強度を測定する。
【0033】
ここで、濃度表示装置6は、フローセル3内にサンプルがない状態で受光素子5が受光した光の強度をIとして測定し、フローセル3内にサンプルがある状態で受光素子5が受光した光の強度をIとして測定する。そして、濃度表示装置6は、以下の式(1)を用いて、特定波長におけるサンプルの吸光度Aを算出し、算出した吸光度Aに基づいて、サンプルに含まれる溶質の濃度を測定する。
【0034】
【数1】
【0035】
なお、濃度表示装置6は、フローセル3内に溶質が溶解していない所定の溶媒のみがある状態で受光素子5が受光した光の強度と、フローセル3内に溶質が所定の溶媒に溶解した溶液がある状態で受光素子5が受光した光の強度との比率の対数を算出し、算出した対数の符号を逆転させた値を、溶質の溶媒に対する吸光度として算出してもよい。
【0036】
[測定手法の一例について]
以下、サンプルの吸光度に基づいて、サンプルに含まれる溶質の濃度を測定する処理の一例について説明する。なお、以下の説明では、アンモニア(NH)および過酸化水素(H)の水溶液をサンプルとする例について説明するが、実施形態は、これに限定されるものではない。濃度表示装置6は、任意の溶質を含むサンプルの吸光度から、溶質の濃度の算出を行ってよい。また、以下の説明では、溶質となる水のみの透過光の強度に対し、サンプルの透過光の強度との割合の対数を取り、符号を反転させた値をサンプルの吸光度とした。
【0037】
たとえば、図3は、アンモニア水溶液および過酸化水素水の吸収スペクトルを示すグラフである。なお、図3に示す例では、横軸方向に波長を、縦軸方向に溶媒である水に対する吸光度を採り、アンモニア水溶液および過酸化水素水の吸光度を、波長ごとに示した。図3に示すように、アンモニアは、1530ナノメートル付近に吸光度のピークを有し、過酸化水素水は、1500ナノメートルから1850ナノメートルにかけて緩やかなピークが続いている。
【0038】
図3に示す吸収スペクトルから、アンモニアおよび過酸化水素が溶解した水溶液であるサンプルの吸収スペクトルを模式的に描くと、図4に示すグラフを得ることができる。図4は、サンプルの吸収スペクトルを示すグラフである。図4に示すように、サンプルは、アンモニア水溶液の吸光度のピーク付近と、過酸化水素水の吸光度のピーク付近との2か所にピークを有している。
【0039】
ここで、濃度表示装置6は、2つの特定波長を選択し、選択した特定波長におけるサンプルの吸光度から、アンモニアおよび過酸化水素の濃度をそれぞれ測定する。より具体的には、濃度表示装置6は、サンプルに含まれる溶質ごとに、溶質の吸光度のピークが現れる波長を特定波長として選択する。そして、濃度表示装置6は、選択した特定波長におけるサンプルの吸光度を測定し、測定した吸光度から、サンプルに含まれる各溶質の濃度を算出する。
【0040】
たとえば、アンモニア水溶液の吸収ピーク付近の波長を特定波長λ、過酸化水素水の吸収ピーク付近の波長を特定波長λとし、アンモニアの濃度を[NH]、過酸化水素の濃度を[H]とする。ここで、ランベルト・ベールの法則によれば、光路長が一定であるならば、サンプルの吸光度はサンプルに含まれる溶質の濃度に比例するので、特定波長λにおけるサンプルの吸光度をA、特定波長λにおけるサンプルの吸光度をAとすると、以下の式(2)および(3)を得ることとなる。なお、式(2)の係数aは、特定波長λにおけるアンモニアの吸光係数であり、式(2)の係数bは、特定波長λにおける過酸化水素の吸光係数となる。また、式(3)の係数cは、特定波長λにおけるアンモニアの吸光係数であり、式(3)の係数dは、特定波長λにおける過酸化水素の吸光係数となる。
【0041】
【数2】
【0042】
【数3】
【0043】
ここで、式(2)、式(3)を1つの行列式に変形すると、以下の式(4)を得ることができる。ここで、式(4)に示すPは、式(5)に示すように、吸光係数の行列である。なお、以下の説明では、Pを係数行列と記載する場合がある。
【0044】
【数4】
【0045】
【数5】
【0046】
よって、濃度表示装置6は、特定波長λにおけるサンプルの吸光度Aと特定波長λにおけるサンプルの吸光度Aとから、アンモニアの濃度[NH]および過酸化水素の濃度[H]を以下の式(6)で求めることができる。
【0047】
【数6】
【0048】
[吸光係数の一例について]
続いて、吸光係数の一例について説明する。なお、以下の説明では、特定波長λと特定波長λとの吸光度から吸光係数を算出する処理の一例について説明する。
【0049】
たとえば、式(2)および式(3)においてアンモニアの濃度[NH]を0とすれば、過酸化水素水における過酸化水素の濃度と、過酸化水素水の吸光度Aおよび吸光度Aから、吸光係数bおよびdを求めることができる。そこで、波長λの光、および、波長λの光について、過酸化水素水の濃度を変化させながら過酸化水素水の吸光度Aおよび吸光度Aを測定した所、図5および図6を得ることができる。
【0050】
図5は、波長λの光における過酸化水素水の濃度と吸光度との関係を示すグラフである。また、図6は、波長λの光における過酸化水素水の濃度と吸光度との関係を示すグラフである。なお、図5および図6に示す例では、縦軸を吸光度とし、横軸を過酸化水素の濃度とした場合に、各波長の光に対する過酸化水素水の吸光度を濃度ごとにプロットした。
【0051】
図5および図6に示すように、各波長の光に対して、過酸化水素水の濃度と吸光度とは、比例関係を有することが解る。また、図5に示すように、波長λ1の光に対して、過酸化水素水の濃度を吸光度に変換する係数、すなわち、吸光係数bの値は、たとえば、「0.0015」となる。また、図6に示すように、波長λの光に対して、過酸化水素水の濃度を吸光度に変換する係数、すなわち、吸光係数dの値は、たとえば、「0.0046」となる。
【0052】
続いて、アンモニアと過酸化水素が溶解した水溶液の吸光度を実測し、実測した吸光度からそれぞれの波長における過酸化水素による吸光度を差し引いた値をアンモニアによる吸光度として算出した。このような処理の結果、アンモニアの濃度と吸光度との関係として図7および図8を得ることができた。
【0053】
図7は、波長λの光におけるアンモニアの濃度と吸光度との関係を示すグラフである。また、図8は、波長λの光におけるアンモニアの濃度と吸光度との関係を示すグラフである。なお、図7および図8に示す例では、縦軸を吸光度とし、横軸をアンモニアの濃度とした場合に、各波長の光に対するアンモニアの吸光度を濃度ごとにプロットした。
【0054】
図7図8に示すように、各波長の光に対し、濃度が2%~5%の範囲においては、アンモニアの濃度と吸光度とがほぼ比例関係を有することが解る。また、図7に示すように、波長λの光に対して、アンモニアの濃度を吸光度に変換する係数、すなわち、吸光係数aの値は、たとえば、「0.0097」となる。また、図8に示すように、波長λの光に対して、アンモニアの濃度を吸光度に変換する係数、すなわち、吸光係数cの値は、たとえば、「0.0043」となる。
【0055】
このような実測値から、波長λの光、および、波長λの光に対し、過酸化水素およびアンモニアが溶解した水溶液における係数行列Pは、以下の式(7)で示すことができ、係数行列の逆行列P-1は、以下の式(8)で示すことができる。
【0056】
【数7】
【0057】
【数8】
【0058】
このような逆行列P-1と式(6)とを用いて、アンモニアと過酸化水素が溶解した水溶液の吸光度からアンモニアと過酸化水素との濃度を測定する実験を行った。このような実験により、アンモニアの濃度と過酸化水素との濃度について、図9および図10に示す結果を得た。
【0059】
図9は、吸光度から計算されたアンモニアの濃度と、混合体積比から計算したアンモニアの濃度との関係を示すグラフである。また、図10は、吸光度から計算された過酸化水素の濃度と、混合体積比から計算した過酸化水素の濃度との関係を示すグラフである。なお、図9および図10に示す例では、縦軸を吸光度から計算した濃度とし、アンモニアと過酸化水素とが溶解した水溶液におけるアンモニア若しくは過酸化水素の混合体積比から計算した濃度として、混合体積比から計算した濃度とサンプルの吸光度から計算した濃度との関係をプロットした。図9図10に示すように、アンモニアについては、濃度が2~5%の範囲で吸光度から好適な濃度を算出することができ、過酸化水素については、各濃度について、吸光度から好適な濃度を算出することができた。
【0060】
[他の溶質について]
なお、上述した例では、アンモニアと過酸化水素が溶解した水溶液をサンプルとしたが、実施形態は、これに限定されるものではない。たとえば、濃度表示装置6は、塩酸(HCl)と過酸化水素とが溶解したサンプルについて、上述した処理と同様の処理を実行することにより、サンプルの吸光度から塩酸および過酸化水素の濃度を算出してもよい。ここで、図11は、塩酸と過酸化水素水の吸収スペクトルを示すグラフである。
【0061】
なお、図11に示す例では、横軸方向に波長を、縦軸方向に溶媒である水に対する吸光度を採り、塩酸および過酸化水素水の吸光度を、波長ごとに示した。図11に示すように、塩酸は、1825ナノメートル付近で吸光度のピークを有する。そこで、濃度表示装置6は、特定波長λを1825ナノメートルとして係数行列を算出し、算出した係数行列の逆行列を用いて、サンプルの吸光度から塩酸および過酸化水素水の濃度を測定してもよい。
【0062】
なお、濃度表示装置6は、必ずしも溶質が有する吸光度のピークに合わせて特定波長を選択する必要はない。たとえば、濃度表示装置6は、溶質が有する吸光度のピークがファブリペロー分光用チューナブルフィルタ4の分光可能な波長の範囲を超えている場合、ファブリペロー分光用チューナブルフィルタ4が分光可能な波長の上限若しくは下限を特定波長としてもよい。
【0063】
たとえば、特定波長λをファブリペロー分光用チューナブルフィルタ4の上限とし、特定波長λを過酸化水素に対応する波長とし、サンプルとして、塩酸と過酸化水素とが溶解した水溶液の濃度を測定するための係数行列Pを算出する。より具体的には、上述したアンモニアと過酸化水素とが溶解した水溶液の濃度を測定する場合と同様に、塩酸と過酸化水素の吸光係数から係数行列Pを算出し、吸光行列Pの逆行列P-1と式(6)と用いて、塩酸と過酸化水素が溶解した水溶液の吸光度から塩酸と過酸化水素との濃度を測定する。
【0064】
このような例においては、塩酸の濃度と過酸化水素との濃度について、図12および図13に示す関係を得ることができる。図12は、吸光度から計算された塩酸の濃度と、混合体積比から計算した塩酸の濃度との関係を示すグラフである。また、図13は、吸光度から計算された過酸化水素の濃度と、混合体積比から計算した過酸化水素の濃度との関係を示すグラフである。なお、図12および図13に示す例では、図9図10と同様に、縦軸を吸光度から計算した濃度とし、横軸を混合体積比から計算した濃度として、混合体積比から計算したサンプルの濃度とサンプルの吸光度から計算した濃度との関係をプロットした。図12図13に示すように、塩酸および過酸化水素ともに、各濃度について、吸光度から好適な濃度を算出することができる。
【0065】
[実施形態]
以下、上述した測定手法を用いてサンプルの濃度を測定する実施形態の一例について、図14を用いて説明する。図14は、実施形態における測定システムの概要を示す図である。図14に示す例では、測定システム10は、LED11、ファイバ12、16、投光部13、フローセル14、受光部15、分光装置17、および濃度表示装置100を有する。
【0066】
LED11は、光源装置2としての光源であり、溶質と対応する特定波長を含む光を出射する。たとえば、LED11は、半値幅が100ナノメートル程度の光を出力可能な発光素子である。
【0067】
ファイバ12は、LEDから出射された光を投光部13へと伝達するファイバであり、たとえば、単相の光ファイバ等により実現される。投光部13は、ファイバ12を介して、LED11が出射した光を受光すると、受光した光をフローセル14へと出射する。
【0068】
フローセル14は、サンプルが流れるフローセルである。たとえば、図14に示す例では、フローセル14の内容には、洗浄液供給装置CPから洗浄装置CMへと供給される半導体の洗浄液がサンプルとして流れている。
【0069】
受光部15は、投光部13から投光された光を、フローセル14内のサンプルを介して受光する。そして、受光部15は、受光した光をファイバ16へと出力する。ファイバ16は、ファイバ12と同様に、受光部15から出力された光を分光装置17へと伝達するファイバであり、たとえば、単相の光ファイバ等により実現される。なお、図14に示す構成は、あくまで一例である。たとえば、測定システム10は、ファイバ12、16、投光部13、および受光部15を有さずともよい。
【0070】
分光装置17は、サンプルを介してLED11から出射された光を受光すると、受光した光を分光するファブリペロー型の分光装置である。たとえば、分光装置17は、ファイバ16から受光した光を、所定の特定波長の光に分光する。
【0071】
たとえば、図15は、実施形態に係る分光装置の一例を示す図である。図15に示すように、分光装置17は、ファイバ16から光を受光する側から順に、バンドパスフィルタ17a、上部ミラー17b、エアギャップ17c、下部ミラー17d、基板17e、スペーサ17f、受光素子17g、および配線基板17hを有する。なお、上部ミラー17b、エアギャップ17c、下部ミラー17d、および基板17eは、図2に示すファブリペロー分光用チューナブルフィルタ4に対応し、受光素子17gは、図2に示す受光素子5に対応する。
【0072】
バンドパスフィルタ17aは、ファイバ16から入射された光のうち、予め設定された波長帯以外の光の強度を減衰させるフィルタである。上部ミラー17bは、バンドパスフィルタ17a側に配置された半透鏡であり、メンブレン(薄膜)構造を有している。また、下部ミラー17dは、上部ミラー17bと対向する半透鏡であり、受光素子17g側に配置されている。エアギャップ17cは、上部ミラー17bおよび下部ミラー17dの間の空間である。また、基板17eは、ファブリペロー分光計の基板であり、透過性を有する。
【0073】
スペーサ17fは、基板17eと受光素子17gとの間隔を保持するスペーサである。また、受光素子17gは、配線基板17h上に設置されたフォトダイオードであり、基板17eを介して受光する光の強度を測定する。配線基板17hは、受光素子17gにより測定された光の強度を示す電気信号を、濃度表示装置100へと伝達する。
【0074】
ここで、濃度表示装置100は、上部ミラー17bおよび下部ミラー17d間に電圧を印加することで、上部ミラー17bおよび下部ミラー17d間に静電引力を発生させ、メンブレン構造の上部ミラー17bを下部ミラー17d側に近づけることで、エアギャップ17cの距離を調整する。そして、上部ミラー17bおよび下部ミラー17dは、エアギャップ17cの距離に応じた波長の光を透過し、基板17eを介して、透過した波長の光を受光素子17gに入射させることができる。
【0075】
なお、図15に示す分光装置17の構成は、あくまで一例である。測定システム10は、図15に示す分光装置17以外にも、ファブリペロー干渉計の原理を用いて入射された光を特定波長に分光するのであれば、任意の分光計を採用してよい。
【0076】
図14に戻り、説明を続ける。濃度表示装置100は、分光装置17により分光された光の強度に基づいて、サンプルの濃度を測定する。たとえば、濃度表示装置100は、フローセル14内を流れる水溶液に溶解している溶質の濃度を測定し、測定した濃度と、目標濃度との差に応じて、第1の表示モードと、第2の表示モードと選択し、選択した表示モードによって、濃度情報を表示部に表示させる。
【0077】
以下、図16を用いて、濃度表示装置100が有する機能構成の一例について説明する。図16は、実施形態に係る濃度表示装置が有する機能構成の一例を示す図である。図16に示すように、濃度表示装置100は、光源制御部110、分光制御部120、受光制御部130、入力部140、表示部150、記憶部160、および制御部170を有する。
【0078】
光源制御部110は、制御部170からの制御に従ってLED11の点灯を制御する制御装置であり、たとえば、LED11の点灯回路等により実現される。たとえば、光源制御部110は、LED11を制御し、所定の波長帯の光を所定の強度で出射させる。なお、光源制御部110は、LED11から出射される光の波長帯や強度が一定になるように、各種の制御手段を有していてもよい。
【0079】
分光制御部120は、制御部170からの制御に従って分光装置17を制御する制御装置であり、たとえば、分光装置17の制御回路により実現される。たとえば、分光制御部120は、分光装置17が有する上部ミラー17bと下部ミラー17dとの間に印加する電圧を制御することで、受光素子17gが受光する光の波長を適宜制御する。
【0080】
受光制御部130は、制御部170からの制御に従って分光された光の強度を測定するための制御装置であり、たとえば、分光装置17が有する受光素子177の制御回路により実現される。たとえば、受光制御部130は、分光装置17が測定した光の強度を示す電気信号を受付けると、受付けた電気信号を光の強度を示す数値に変換し、変換後の数値を制御部170に通知する。
【0081】
入力部140は、作業員からの操作を受付ける入力装置であり、たとえば、キーボードやマウス等により実現される。たとえば、作業員は、入力部140を操作して、各薬液成分の目標濃度を入力する。
【0082】
表示部150は、濃度表示装置100による測定結果を出力するための出力装置であり、たとえば、液晶モニタやプリンタ等により実現される。表示部150は、図1で説明したように、1つの薬液成分について、1つの濃度情報のみ表示可能となる。たとえば、表示部150は、薬液Aの1つの濃度情報を、表示領域150aに表示させる。表示部150は、薬液Bの1つの濃度情報を、表示領域150bに表示させる。表示部150は、第1の表示モードまた第2の表示モードによって、薬液の濃度情報を表示する。
【0083】
表示部150は、第1の表示モードで薬液の濃度情報を表示する場合には、1つの濃度情報として、各薬液成分に関する濃度の測定値が表示する。
【0084】
表示部150は、第2の表示モードで薬液の濃度情報を表示する場合には、1つの濃度情報として、各薬液成分に関する濃度の測定値と、各目標濃度との差を表示する。表示部150は、差を絶対値で表示してもよい。
【0085】
記憶部160は、各種の情報を記憶する記憶装置であり、たとえば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。たとえば、記憶部160には、各種の測定ログや、測定対象となる溶質(たとえば、アンモニア、塩酸若しくは過酸化水素等)と特定波長ごとの組ごとに予め設定された吸光係数や係数行列等が登録される。また、記憶部160には、各薬液成分の目標濃度が登録される。
【0086】
制御部170は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサによって、濃度表示装置100内部の記憶装置に記憶されている各種プログラムがRAM等を作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部170は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。
【0087】
図16に示す例では、制御部170は、取得部171、測定部172、および表示モード選択部173を有する。取得部171は、LED11および分光装置17を制御し、分光装置17がサンプルを介して分光した特定波長の光の強度を取得する。
【0088】
たとえば、取得部171は、溶質等といった濃度を測定する対象(測定対象)の選択を入力部140から受付けると、サンプルを介した光から選択された測定対象と対応する特定波長の光強度を取得する。たとえば、取得部171は、アンモニアと過酸化水素とが選択された場合、アンモニアと対応する特定波長と、過酸化水素と対応する特定波長とを選択する。そして、取得部171は、光源制御部110を制御し、LED11を点灯させることで、特定波長を含む波長帯の光を出射させる。
【0089】
また、取得部171は、分光制御部120を制御し、サンプルを介して分光装置17が受光した光から特定波長の光を分光させる。そして、取得部171は、受光制御部130を介して、分光装置17が測定した特定波長の光の強度を取得する。たとえば、取得部171は、アンモニアと対応する特定波長の光強度を測定させた後、過酸化水素と対応する特定波長の光強度を測定させる。そして、取得部171は、測定された各特定波長の光の強度を取得する。
【0090】
測定部172は、測定された複数の特定波長の光の強度に基づいて、測定対象(各薬液成分)の濃度を測定する。たとえば、測定部172は、測定された複数の特定波長の光の強度に基づいて、複数の測定対象の濃度を測定する。より具体的な例を挙げると、測定部172は、アンモニアと対応する特定波長の光の強度と、過酸化水素と対応する特定波長の光の強度とを取得すると、上述した式(8)に示す逆行列P-1と、式(6)とを用いて、アンモニアおよび過酸化水素の濃度をそれぞれ算出する。すなわち、測定部172は、各測定対象の濃度を特定波長における吸光度に変換する吸光係数に基づく行列と、測定された特定波長の光の強度に基づいた吸光度とに基づいて、各測定対象の濃度を算出する。
【0091】
測定部172は、各薬液成分の濃度を、表示モード選択部173に出力する。
【0092】
表示モード選択部173は、目標濃度と、測定部172に測定された濃度との差に応じて、第1の表示モードまたは第2の表示モードの何れか一方を選択し、選択した表示モードによって、濃度情報を表示部150に表示させる。
【0093】
表示モード選択部173は、目標濃度と、測定した濃度との差が閾値以下の場合には、第1の表示モードによって、1つの濃度情報を表示させる。第1の表示モードでは、1つの濃度情報として、各薬液成分に関する濃度の測定値が表示される。図1で説明した例では、表示領域150aに、薬液Aの濃度の測定値が表示される。表示領域150bに、薬液Bの濃度の測定値が表示される。
【0094】
一方、表示モード選択部173は、目標濃度と、測定した濃度との差が閾値を超える場合には、第2の表示モードによって、1つの濃度情報を表示する。第2の表示モードでは、1つの濃度情報として、各薬液成分に関する濃度の測定値と、各目標濃度との差が表示される。図1で説明した例では、表示領域150aに、薬液Aの濃度の測定値と目標濃度(薬液Aの目標濃度)との差が表示される。表示領域150bに、薬液Bの濃度の測定値と目標濃度(薬液Bの目標濃度)との差が表示される。
【0095】
なお、表示モード選択部173は、薬液成分毎に、表示モードを切り替えてよい。たとえば、表示モード選択部173は、薬液Aについて、目標濃度と、測定した濃度との差が閾値を超え、薬液Bについて、目標濃度と、測定した濃度との差が閾値を超えていない場合には、薬液Aの濃度情報を、第2の表示モードで表示させ、薬液Bの濃度情報を、第1の表示モードで表示させる。
【0096】
表示モード選択部173は、薬液Aについて、目標濃度と、測定した濃度との差が閾値を超えず、薬液Bについて、目標濃度と、測定した濃度との差が閾値を超えた場合には、薬液Aの濃度情報を、第1の表示モードで表示させ、薬液Bの濃度情報を、第2の表示モードで表示させる。
【0097】
[実施形態における濃度測定処理の一例]
図17は、本実施形態に係る濃度表示装置による濃度表示処理のフローチャートである。図17を参照して、本実施形態に係る濃度表示装置100による濃度表示処理の流れについて説明する。
【0098】
濃度表示装置100の光源制御部110は、光源であるLED11から光を出射させる(ステップS101)。分光装置17は、測定対象を介して、光源であるLED11が出射した光を受光する(ステップS102)。次に、分光装置17は、分光した特定波長の光強度を測定する(ステップS103)。
【0099】
濃度表示装置100の測定部172は、測定した光強度に基づいて、特定波長における吸光度を算出する(ステップS104)。測定部172は、全ての特定波長を測定していない場合には(ステップS105,No)、ステップS103に移行する。
【0100】
測定部172は、全ての特定波長を測定した場合には(ステップS105,Yes)、各特定波長における吸光度を濃度に変換する係数行列の逆行列を用いて、算出した吸光度から測定対象の濃度を測定する(ステップS106)。
【0101】
濃度表示装置100の表示モード選択部173は、目標濃度と、測定した濃度との差が閾値を超えるか否かを判定する(ステップS107)。表示モード選択部173は、閾値を超えない場合には(ステップS108,No)、第1の表示モードを選択し、薬液成分の濃度情報(濃度の測定値)を表示部150に表示させ(ステップS109)、ステップS111に移行する。
【0102】
一方、表示モード選択部173は、閾値を超える場合には(ステップS108,Yes)、第2の表示モードを選択し、薬液成分の濃度情報(目標濃度と測定値との差)を表示部150に表示させ(ステップS110)、ステップS111に移行する。
【0103】
濃度表示装置100は、処理を継続する場合には(ステップS111,Yes)、ステップS103に移行する。濃度表示装置100は、処理を継続しない場合には(ステップS111,No)、処理を終了する。
【0104】
[実施形態における効果]
以上に説明したように、本実施形態に係る濃度表示装置100は、1つの薬液に関して1つの濃度情報のみ表示可能な表示部150を備え、測定された薬液濃度の測定値を表示する第1の表示モード、または、測定された薬液濃度と予め定められた目標濃度との差の値を表示する第2の表示モードを選択し、選択した第1の表示モード、または、第2の表示モードによって、濃度情報を表示部150に表示させる。より具体的には、目標濃度と、測定した濃度との差が閾値以下の場合には、第1の表示モードで現状の濃度を表示し、測定した濃度との差が閾値を超えた場合に、第2の表示モードで現状の濃度と目標濃度との差を表示するため、必要なタイミングで、現状の濃度と目標濃度との差を容易に判断可能にできる。また、本実施形態に係る濃度表示装置100では、表示部150の表示領域を拡大することなく、第1の表示モード、第2の表示モードを選択して、表示させるため、製造コストを削減することもできる。
【0105】
[実施形態の拡張]
上記の説明では、サンプルに含まれる測定対象の濃度を測定する測定システム10について説明したが、実施形態は、これに限定されるものではない。以下の説明では、測定システム10が実行する測定手法のバリエーションについて説明する。
【0106】
[サンプルについて]
上述した例では、アンモニアと過酸化水素が溶解した水溶液をサンプルとしたが、実施形態は、これに限定されるものではない。たとえば、濃度表示装置100は、塩酸(HCl)と過酸化水素とが溶解したサンプルについて、上述した処理と同様の処理を実行することにより、サンプルの吸光度から塩酸および過酸化水素の濃度を算出してもよい。
【0107】
[濃度表示装置について]
なお、測定システム10の装置構成は、上述した説明に限定されるものではない。たとえば、濃度表示装置100は、測定システム10全体を有し、フローセル14内のサンプルにおける測定対象の濃度を測定する装置であってもよい。
【0108】
濃度表示装置100は、測定した濃度との差が閾値を超え、第2の表示モードで、現状の濃度と目標濃度との差を表示する場合に、アラーム音を出力してもよい。これによって、作業員の注意を引くことができる。
【0109】
濃度表示装置100は、測定した濃度との差が閾値を超えた後に、再度、差が閾値以下となった場合において、第2の表示モードを、第1の表示モードに切り替えるとともに、アラーム音を出力してもよい。これによって、作業員は、作業を行いつつ、現状の濃度が目標濃度に近づいたことを容易に知ることができる。
【0110】
濃度表示装置100は、PC(Personal Computer)等の利用者端末に接続されていてもよい。この場合には、表示モード選択部173は、目標濃度と、測定した濃度との差が閾値以下の場合に、薬液の測定値を、利用者端末に送信し、測定した濃度との差が閾値を超えた場合に、目標濃度と、測定値との差を、利用者端末に送信してもよい。
【0111】
濃度表示装置100では、濃度を算出する場合に、純水を基準とする濃度を算出し、目標濃度との差を求めていたがこれに限定されない。すなわち、顧客と共通する濃度の基準(純水以外の基準)によって、濃度を測定し、濃度と目標濃度との差に応じて、第1の表示モード、または、第2の表示モードを選択してもよい。
【0112】
以上、実施形態の一例を説明したが、これらは例示であり、本実施形態は上記した説明に限定されるものではない。発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、実施形態の構成や詳細は、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で実施することができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0113】
10 測定システム
100 濃度表示装置
11 LED
12、16 ファイバ
13 投光部
14 フローセル
15 受光部
17 分光装置
110 光源制御部
120 分光制御部
130 受光制御部
140 入力部
150 表示部
160 記憶部
170 制御部
171 取得部
172 測定部
173 表示モード選択部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18