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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092291
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】送受電ユニット
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/40 20160101AFI20230626BHJP
   B65G 1/137 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
H02J50/40
B65G1/137 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207442
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】511240391
【氏名又は名称】株式会社ビジョンストリーム
(71)【出願人】
【識別番号】518185565
【氏名又は名称】株式会社クリエイティブネクストデザイン
(71)【出願人】
【識別番号】520506431
【氏名又は名称】合同会社濱野工匠
(74)【代理人】
【識別番号】100134706
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文昭
(72)【発明者】
【氏名】進藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】濱野 隆雄
【テーマコード(参考)】
3F522
【Fターム(参考)】
3F522AA02
3F522AA03
3F522AA04
3F522BB06
3F522HH07
3F522LL70
(57)【要約】
【課題】送電側から受電側への電力を供給する効率が高く、設置位置の自由度が向上した送受電システムを提供する。
【解決手段】電子棚札システムは送電部11と受電部18と保持部17とを備える。送電部11は、電源部に接続され、長尺である。受電部18は、送電部11から受電し、送電部よりも短尺である。保持部17は送電部11と受電部18との一方を他方に保持する。送電部11は3つの送電側導電シートと送電側支持体とを有し、受電部18は3つの受電側導電シートと受電側支持体とを有する。3つの送電側導電シートは、送電部11の長手方向に延びたシート状とされ、幅が長手方向において一定であり、互いの間隔が各々の幅よりも小さく、長手方向における一端が電源部に接続される。3つの受電側導電シートは、送電側導電シートよりも短尺なシート状に形成され、3つの送電側導電シートに対面するように配されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源部に接続され、長尺に形成された送電部と、
前記送電部から受電し、前記送電部よりも短尺に形成された受電部と、
前記送電部と前記受電部との一方を他方に保持する保持部と
を備え、
前記送電部は、
長手方向に延びたシート状とされ、幅が長手方向において一定であり、互いの間隔が各々の幅よりも小さく、長手方向における一端が前記電源部に接続される3つの送電側導電シートと、
前記3つの送電側導電シートを支持する送電側支持体と
を有し、
前記受電部は、
前記送電側導電シートよりも短尺なシート状に形成され、前記3つの送電側導電シートに対面するように配された3つの受電側導電シートと、
前記3つの受電側導電部を支持する受電側支持体と
を有することを特徴とする送受電システム。
【請求項2】
前記電源部は、前記3つの送電側導電シートに対して、三相交流または疑似三相交流を供給し、
前記電源部が三相交流を供給する場合の前記送受電システムは前記3つの受電側導電シートからの三相交流を整流する整流部をさらに備え、前記電源部が疑似三相交流を供給する場合の前記送受電システムは前記3つの受電側導電シートからの疑似三相交流を整流する整流部をさらに備える請求項1に記載の送受電システム。
【請求項3】
前記受電側導電シートの幅は前記送電側導電シートの幅と同じである請求項1または2に記載の送受電システム。
【請求項4】
前記送電側支持体及び前記受電側支持体は、シート状に形成されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の送受電システム。
【請求項5】
前記送電部は、長手方向を水平方向にして、起立した姿勢で設けられ、
前記保持部は、前記受電部の上端面に設けられ、前記受電部の前記送電部に対面した表面から前記送電側支持体の上部の厚みよりも大きく突出し、突出した先端が下向きに屈曲した屈曲形状を有する請求項4に記載の送受電システム。
【請求項6】
前記送電側支持体は外周面近傍に前記3つの送電側導電シートが配された柱状とされ、
前記受電側支持体は、前記送電側支持体の周面に対向する断面凹型の内壁面をもち、前記3つの受電側導電シートが前記内壁面近傍に配されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の送受電システム。
【請求項7】
表示部をさらに備え、
前記受電側導電シートは、一端が表示部に接続される請求項1ないし6のいずれか1項に記載の送受電システム。
【請求項8】
前記表示部は電子棚札である請求項7に記載の送受電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送受電ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤレス電力伝送は、送電側から離れている受電側へ電力を供給する技術として知られている。電力伝送の方式としては、例えば電界結合方式や磁界結合方式などがある。ワイヤレス電力伝送は、スマートフォンの充電や電子ペーパを用いた広告、電子棚札への電力供給などに用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、磁界結合方式を採用した表示システムが開示されている。この表示システムは、送電コイルと表示装置に設けた受電コイルとの間に閉磁路を形成することで磁束漏れを小さくして給電効率を良くしている。また、特許文献2には、電界結合方式または磁界結合方式を採用した電子棚札システムが開示されている。具体的には、2つの伝送線路同士の位置関係で最適な電磁波強度となるよう調整することで、基本波と第2高調波との振幅の位置関係の調整をしている。これにより、電力利用効率の最適化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-208793号公報
【特許文献2】特開2013-162626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の表示システムでは、送電コイルから受電コイルが離れるほど給電効率が下がるように、送電コイルに対する受電コイルの位置によって給電効率が異なる。このため、表示装置の設置位置に自由度がない。また、特許文献2の電子棚札システムでは、2本の伝送線路で、基本波と第2高調波とにより給電するものであり、これだけではまだ電力供給の給電効率が低いことが懸念される。
【0006】
そこで、本発明は、送電側から受電側への電力を供給する効率が高く、設置位置の自由度が向上した送受電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の送受電システムは、送電部と受電部と保持部とを備える。送電部は、電源部に接続され、長尺に形成されている。受電部は、送電部から受電し、送電部よりも短尺に形成されている。保持部は、送電部と受電部との一方を他方に保持する。送電部は、3つの送電側導電シートと、送電側支持体とを有し、受電部は、3つの受電側導電シートと受電側支持体とを有する。3つの送電側導電シートは、送電部の長手方向に延びたシート状とされ、幅が長手方向において一定であり、互いの間隔が各々の幅よりも小さく、長手方向における一端が電源部に接続される。送電側支持体は、3つの送電側導電シートを支持する。3つの受電側導電シートは、送電側導電シートよりも短尺なシート状に形成され、3つの送電側導電シートに対面するように配される。受電側支持体は、3つの受電側導電部を支持する。
【0008】
電源部は、3つの送電側導電シートに対して、三相交流または疑似三相交流を供給することが好ましい。電源部が三相交流を供給する場合の送受電システムは、3つの受電側導電シートからの三相交流を整流する整流部をさらに備えることが好ましい。電源部が疑似三相交流を供給する場合の送受電システムは、3つの受電側導電シートからの疑似三相交流を整流する整流部をさらに備えることが好ましい。
【0009】
受電側導電シートの幅は送電側導電シートの幅と同じであることが好ましい。
【0010】
送電側支持体及び受電側支持体は、シート状に形成されていることが好ましい。
【0011】
送電部は、長手方向を水平方向にして、起立した姿勢で設けられ、保持部は、受電部の上端面に設けられ、受電部の送電部に対面した表面から送電側支持体の上部の厚みよりも大きく突出し、突出した先端が下向きに屈曲した屈曲形状を有することが好ましい。
【0012】
送電側支持体は外周面近傍に3つの送電側導電シートが配された柱状とされ、受電側支持体は、送電側支持体の周面に対向する断面凹型の内壁面をもち、3つの受電側導電シートが内壁面近傍に配されていることが好ましい。
【0013】
表示部をさらに備え、受電側導電シートは、一端が表示部に接続されることが好ましい。
【0014】
表示部は電子棚札であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、送電側から受電側への電力を供給する効率が高く、設置位置の自由度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態である電子棚札システムの概略図である。
図2】送電部及び受電部の概略図である。
図3】送電部と受電部との説明図である。
図4】送電部の説明図である。
図5】受電部の説明図である。
図6】受電部を送電部に取り付けた状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示す電子棚札システム10は、送受電システムの一例であり、送電部11と、棚札装置12と、電源部14とを備える。棚札装置12は、例えば店舗や倉庫に設けられた棚13の棚板13aに置かれた商品や在庫品などの物品名(商品名、在庫品名)や価格等の物品情報を表示するものである。なお、棚板13aは、起立した姿勢で設けられた支柱13bによって水平に配されている。送電部11は、長尺のシート状に形成されており、ハウジング15及び電源部14とともに送電ユニットを構成している。ハウジング15は、中空であり、後述するように送電部11を収容可能になっている。送電部11は、ハウジング15からその一部または全部を引き出した状態で使用する。この送電部11は、その一端がハウジング15の内部に固定されており、ハウジング15を棚13の支柱13bに固定し、送電部11の他端を別の支柱13bに固定することで、例えば棚板13aの前面に配される。送電部11は、配線L1により電源部14に接続されている。この例では、配線L1は、中空な支柱13bの内部を通され、その一端部がハウジング15内で送電部11に接続されており、他端が電源部14に接続される。
【0018】
棚札装置12は、上記物品情報を表示する表示部16と受電部18等から構成されており、本例の表示部16は電子棚札として電子ペーパを用いている。受電部18は、表示部16の背面側(図1紙面の奥行き側)に設けられている。棚札装置12は、受電部18に設けた保持部17によって送電部11に取り付けられ、電源部14から供給される電力を送電部11から受電部18が受電して表示部16に給電する。このように、棚札装置12は、電力を供給する対象装置の一例である。なお、受電部18は送電部11に対して着脱自在である。送電部11は電源部14から供給された電力を受電部18へ送電し、表示部16は送電部11から受電部18を介して受電する。本例の送電部11及び受電部18は電界結合方式により送受電を行っており、これらの詳細は別の図を用いて後述する。
【0019】
図2に示すように、ハウジング15には、収容されている長尺の送電部11を引き出したり巻き取って収容するための出入口21が形成されている。ハウジング15の内部には、巻芯25が周方向において回動自在に設けられており、送電部11の長手方向における一端24は巻芯25に固定され、他端26にはストッパ22が設けられている。
【0020】
ハウジング15は、円筒形状であり、真円形状である各端面が塞がれている。ハウジング15の形状は、送電部11を収容する状態に応じて決定すればよい。例えば、巻いた状態の送電部11を収容する場合には、送電ユニットをコンパクト化する観点では、ハウジング15の形状は例えば円筒形状が好ましく、また、折りたたんだ状態で送電部11を収容する場合には直方体形状にするとよい。折りたたんで収容する場合の送電部11は、長手方向に直交する幅方向に延びた溝(図示無し)を、長手方向に等間隔に、かつ、長手方向において一方の面と他方の面とにおいて交互に形成するとよい。これにより、溝に沿って山折りとされ易く、折り畳み構造にすることができる。ただし、このような収容の態様よりも、送電部11の設置箇所及び設置方法を優先してハウジング15の形状を決定してもよい。本例では、後述の通り、送電部11を巻いた状態でハウジング15に収容している。
【0021】
ハウジング15の内部には、巻軸27に固定された巻芯25が配されている。支柱13b(図1参照)に固定した姿勢におけるハウジング15の下側を底とした場合に、ハウジング15の内部の底面の中心に巻軸27の一端が位置し、巻軸27の他端が上面からハウジング15の外部へ突き抜けて配される。巻芯25は断面が真円形の円筒形状であり、断面の中心を回転中心として回転される。巻軸27は、回転中心で巻芯25の上部から底部まで連通された空洞に配されて固定される。巻芯25が巻軸27に固定されているから、巻軸27を周方向に回転させることで巻芯25も周方向へ回転される。また、巻軸27の他端にはハンドル28が設けられている。巻芯25に送電部11の一端24が固定されているため、ハンドル28を回すことで巻芯25に送電部11が巻き取られる。これにより、送電部11がハウジング15の内部に収容される。送電部11を巻き取る方法はこれに限られず、ぜんまいばねを用いてもよい。また、折りたたむ方法で収容してもよい。
【0022】
出入口21には、ゴムで形成されたへら状の板23が設けられ、へら状の板23は、出入口21と送電部11との接触を防いで送電部11の摩耗を抑制する。また、収容される送電部11に付いた異物を除去する。これによりハウジング15の内部に砂や塵、汚れといった異物が侵入することを防ぐ。へら状の板23は、ゴム製に限られず、ブラシ状に起毛した起毛材でも良く、異物を除去する機能を損なわなければ適宜決定することができる。
【0023】
送電部11の他端に設けられたストッパ22は送電部11をハウジング15の内部から引き出す際に、例えば作業者が指先等で挟持する引出部材として機能する。ハウジング15から離れる方向に向けてストッパ22を引くことにより、収容されている送電部11が引き出される。また、ストッパ22に対してハウジング15から離れる方向に付与した力を解除することにより、送電部11が巻き戻される。これにより、送電部11の引き出しを容易かつ迅速に開始することができる。
【0024】
ストッパ22は、出入口21より大きいものであればよい。また、ストッパ22は送電部11の短手方向の長さ(幅)より長く延びたものを使用しているが、送電部11の他端26をハウジング15の外部にとどめておく機能が損なわなければ適宜決定することができる。送電部11の他端26にフランジ(図示無し)を形成して、フランジに対応する形状でストッパ22に溝(図示無し)を形成することで、ストッパ22が送電部11の他端26に嵌合される。ストッパ22は送電部11の他端がハウジング15の内部へ入ることを防ぐ。
【0025】
ストッパ22は、引き出した送電部11が起立した姿勢で棚13(図1参照)に設置される場合に、送電部11を引き出した姿勢で保持するための姿勢保持部材として機能する。この場合は、使用する棚13の形状に合わせてストッパ22の形状を決定すればよい。
【0026】
送電部11よりも短尺に形成された受電部18は、上端面に保持部17を備え、保持部17は受電部18を送電部11に保持する。なお、図2においては、表示部16の図示は略してある。
【0027】
図3における「長手方向」、「幅方向」、「厚み方向」は、送電部11の長手方向、幅方向、厚み方向を示している。送電部11は、長手方向を水平方向にして、起立した姿勢で棚板13aに設けられる。保持部17によって保持されているときの受電部18は送電部11に接した姿勢とされる。保持部17は、受電部18の上端面に設けられ、受電部18の送電部11に対面した表面側に、受電側支持体50(図5参照)の上部の厚みよりも大きく突出している。突出した先端は受電部18の下面に向かって屈曲した屈曲形状であり、この保持部17を送電部11の上部に掛けることで、送電部11の幅方向において受電部18が位置決めされる。保持部17により、送電部11と受電部18とが一定の位置で接する。このように、保持部17は、送電部11と受電部18とを互いに接するように位置決めして保持するものであれば、形状及び大きさ等はこの例に限定されない。この例の保持部17は、受電部18の図3における上部に設けているが、上部に加えて、または代わりに、受電部18の例えば下部に保持部(図示無し)を設けてもよい。この例では、送電部11をハウジング15内に収容することを考慮して保持部17を受電部18に設けている。しかし、保持部17はハウジング15の有無や、ハウジングの形状等に応じて、受電部18に加えて、または代わりに、送電部11に設けてもよい。
【0028】
送電部11は、図4に示すように、送電側支持体40と3つの送電側導電シート42とを有する。送電側導電シート42は金属(本例では銅)製であり、送電部11の長手方向に延びたシート状に形成されている。送電側支持体40は、各送電側導電シート42を支持し、一端24側の送電側導電シート42の端面を除く全面を覆っている。送電側支持体40は有機ポリマー(プラスチック)などの絶縁材料で形成されており、ハウジング15内への巻き取り収納や、棚板などに設置する際の設置態様の自由度をより高める程度に柔軟性が確保される程度の厚みとすることが好ましい。本例の送電側支持体40の厚みは0.1mmである。送電側導電シート42のそれぞれは、幅及び厚みが長手方向においてそれぞれ一定である。
【0029】
送電側導電シート42の幅方向、厚み方向、長手方向と、送電側支持体40の幅方向、厚み方向、長手方向とは、互いに同じ方向として対応している。3つの送電側導電シート42の幅は互いに等しく、各幅は長手方向において一定であり、、幅方向に並んで配されている。3つの送電側導電シート42は、間隔が送電側導電シート42の幅よりも小さく、長手方向では平行に配されている。
【0030】
送電側導電シート42は、幅が大きいほど送電する効率、すなわち単位時間あたりの送電量が向上する。そのため、送電側導電シート42は線状や棒状のものよりも本例のようなシート状(平板状を含む)のものが好ましい。また、収容する観点からも薄く扁平したシート状等であることが好ましい。また、送電部11を曲げたり、折り畳んだりする観点から、送電側支持体40は弾性変形するものが好ましく、例えばシリコーンなどが挙げられる。
【0031】
3つの送電側導電シート42の各々は、送電部11の一端24側の端部が、電源部14に電気的に接続されている。電源部14は、三相交流を生成する生成回路46、この生成回路46と各送信側導電シート42とのインピーダンス整合をとって送電効率を高めるための第1整合(マッチング)回路45等で構成されている。
【0032】
受電部18は、図5に示すように、受電側支持体50と3つの受電側導電シート52とを有する。受電側導電シート52は金属(本例では銅)製であり、送電部11に対面して取り付けた際に送電部11の長手方向に延びたシート状に形成されている。受電側支持体50は、各受電側導電シート52を支持し、一端54側の受電側導電シート52の端面を除く全面を覆っている。受電側支持体50は有機ポリマー(プラスチック)などの絶縁材料で形成されている。
【0033】
受電側導電シート52は、送電側導電シート42に比べて短尺である。幅が大きいほど受電する効率、すなわち単位時間あたりの受電量が向上する。そのため、受電側導電シート52は線状や棒状のものよりもシート状(平板状を含む)等のものが好ましい。また、受電部18を例えば湾曲した形状の表示部(図示無し)に取り付ける場合には、受電側支持体50は弾性変形する素材で形成してもよく、例えば、シリコーンなどが挙げられる。
【0034】
本例の棚札装置12(図1参照)は、受電部18及び表示部16に加えて、第2整合(マッチング)回路55と、三相全波整流部(以下、単に「整流部」と称する)56と、電源制御部57と、バッテリ58とを有する。受電部18は、第2整合回路55、整流部56、電源制御部57、バッテリ58とともに、受電ユニットを構成している。一端54において受電側支持体50から露出した受電側導電シート52の端部は、第2整合回路55を介して整流部56に接続される。第2整合回路55は、受電側導電シート52と整流部56側の回路とのインピーダンスの整合をとり、受電効率を高める。整流部56は、各受電側導電シート52から入力される三相交流を全波整流して三相交流を直流電流に変換する。バッテリ58は、蓄電するためのものであり、電源制御部57の制御の下で、整流部56からの電力の蓄電と表示部16への電力供給とを行う。なお、上記では三相交流を用いた例について説明しているが、この代わりに、例えば疑似三相交流を用いてもよい。疑似三相交流を用いる場合には、電源部14(図4参照)は、生成回路46として、二相交流から疑似三相交流を生成するものとし、受電ユニットの整流部56は疑似三相交流を整流して直流を得るように構成すればよい。二相交流からの疑似三相交流の生成は、複数のコイル、またはコンデンサを用いて周知の方法で行うことができる。
【0035】
電源制御部57は、整流部56とバッテリ58と表示部16との各々に電気的に接続する。電源制御部57は、バッテリ58の充放電の制御、整流部56からの電力をバッテリ58と表示部16とのいずれにどれだけ送るかの割当制御など、送電制御を行う。また、本例の電源制御部57は、電流及び電圧を一定に保つよう制御する、いわゆるレギュレータとしても機能する。電源制御部57は、表示部16と電気的に接続されているから、表示部16へ電力を供給することで、表示部16は所定の物品情報を出力する。電源制御部57が整流部56とバッテリ58と表示部16とに電気的に接続されていることで、整流部56から供給された電力を、バッテリ58若しくは、表示部16へ出力し、整流部56から電力の供給がない場合は、バッテリ58に蓄えられた電力を表示部16へ出力する。電源制御部57の制御は、能動的な制御、すなわち電源制御部57が自律的に行うものであってもよく、外部からの信号を受けて制御(オン/オフや電流管理等)を行う受動的な制御であってもよい。受動的な制御を行う場合には、例えば、電源制御部57に、通信機能を搭載したマイクロコンピュータを用いて、外部からの信号を受信し制御するとよい。
【0036】
受電側導電シート52の幅方向、厚み方向、長手方向と、受電側支持体50の幅方向、厚み方向、長手方向とは、互いに同じ方向として対応している。3つの受電側導電シート52は、幅方向において並んで、かつ等間隔に配されおり、互いに平行である。3つの受電側導電シート52の幅方向におけるそれぞれの中心間距離は、3つの送電側導電シート42の幅方向におけるそれぞれの中心間距離と、同じである。これにより、送電部11と受電部18とが互いに対面した姿勢で保持された場合に、送電側導電シート42と受電側導電シート52とは、幅方向において対面して位置する。
【0037】
送電部11に受電部18を取り付けた場合には、本例では図6に示すように、互いの表面が接する。ただし、3つの送電側導電シート42と3つの受電側導電シート52とが互いに対面した位置となるならば送電部11と受電部18とは接していなくてもよい。3つの送電側導電シート42は、厚み方向において同じ位置であり、受電部18側の表面から厚み方向において同じ距離で配されている。例えば、3つの送電側導電シート42のそれぞれは、T1における厚みT3が同じであり、幅W11、W12、W13もまた同じである。また、幅W11と幅W12との間隔D1及び幅W12と幅W13との間隔D2は、同じである。間隔D1及び間隔D2は、幅W11、W12、W13よりも小さい。
【0038】
3つの受電側導電シート52の厚みT4は、受電側支持体50の厚みT2において同じ位置であり、送電部11側の表面から厚み方向において同じ距離で配されている。3つの受電側導電シート52のそれぞれは、幅W21、W22、W23が同じであり、幅W21と幅W22との間隔D3と、幅W22と幅W23との間隔D4とは等しい。さらに3つの送電側導電シート42の厚みT3と3つの受電側導電シート52の厚みT4とは同じであり、3つの送電側導電シート42の幅W11、W12、W13と、3つの受電側導電シート52の幅W21、W22、W23とは同じである。3つの送電側導電シート42の間隔D1及びD2と3つの受電側導電シート52の間隔D3及びD4とも同じである。なお、図6においては、送電部11の厚みT1及び受電部18の厚みT2を、送電側導電シート42の幅W11、W12、W13及び受電側導電シート52の幅W21、W22、W23の幅に対して大きく誇張して描いてある。
【0039】
本例の送電側導電シート42の幅W11、W12、W13は、互いに同じであり、受電側導電シート52の幅W21、W22、W23も同様に、互いに同じとしている。幅W11、W12、W13と幅W21、W22、W23とは同じであることが給電効率の観点から好ましい。なお、送電側導電シート42の幅W11と受電側導電シート52の幅W21との中心が幅方向において同じ位置であり、幅W12と幅W22との中心が幅方向において同じ位置であり、幅W13と幅W23との中心が幅方向において同じ位置であれば、送電側導電シート42の幅と受電側導電シート52の幅とが異なっていても構わない。給電効率をより高く確保する観点から、3つの送電側導電シート42の間隔D1と間隔D2とは同じであることが好ましく、3つの受電側導電シート52の間隔D3と間隔D4とは同じであることが好ましい。なお、本例では、幅W11~W13及び幅W21~W23は10mm、間隔D1~D4は4mm、厚みT1、T2は0.4mm、厚みT3、T4は35μmとしているが、これらに限定されない。
【0040】
上記構成によると、送電部11は、ストッパ22により他端がハウジング15の外部に保持される。出入口21は、スリット状に形成されており、ハウジング15に収容されている送電部11が容易に引き出される。ハウジング15とストッパ22とを棚13の所定の位置に保持することで、送電部11は所定の長さに引き出した状態で配される。このように、送電部11は、シート(薄膜)状に形成されており、ハウジング15から引き出される長さが自在に設定されるので、湾曲した棚(図示無し)などの設置対象に設置しやすく、送電部11は、使用する状況や環境等に応じた態様で設置され、汎用性に優れる。
【0041】
送電部11の他端にはストッパ22が設けられているため、送電部11は他端から迅速に引き出すことができ、設置の作業性がよい。
【0042】
受電部18は、保持部17を送電部11に引っ掛けることで送電部11に保持される。保持部17は受電部18の上端面に設けられているから送電部11の上縁に引っ掛けるという容易な作業で確実に保持される。また、保持部17は送電部11の上縁に引っ掛けられるだけで保持するものであるから、送電部11の長手方向において移動させることが容易であり、設置位置に自由度があり、作業性も良い。
【0043】
送電側導電シート42及び受電側導電シート52はそれぞれ3つ有り、例えば三相交流あるいは疑似三相交流を用いることにより、二相交流を用いる場合よりも効率的な電力供給となる。また、二相交流では送電側導電シート42の長手方向におけるある所定の位置に着目した場合に、定在波の節が近付くにつれて振幅が低下し、受電できないときが生じるが、三相交流あるいは疑似三相交流を用いることにより、送電側導電シート42の長手方向における受電位置によって受電することができない点が発生することを防ぐことができる。そのため、長尺の送信部11の長手方向において短尺の受電部18の設置位置に高い自由度があり、送受電システムの一例である電子棚札システム10は設置位置の自由度に優れたものとなっている。また、受電側導電シート52は、各送電側導電シート42と対面するように、幅W21~W23が幅W11~W13と同じで、間隔D3、D4が間隔D1、D2と同じとされている。これにより、保持部17により受電部18が送電部11に取り付けられたときに、受電部18は各受電側導電シート52が各送電側導電シート42と対面した状態に位置決めされるので、確実かつ効率よい給電がなされる。
【0044】
間隔D1、D2が幅W11、W12、W13よりも小さく、間隔D3、D4が幅W21、W22、W33よりも小さいから、十分な給電効率が確保される幅W11~W13及び幅W21~23にしながらもコンパクトな(小型の)送電部11及び受電部18となっており、給電効率とコンパクトであることとのバランスに優れ、例えば電子棚札などの小型の用途にも用いることができ、用途に広がりがある。また、間隔D1、D2が幅W11、W12、W13よりも小さいから、送電部11の幅方向において、送電部11と受電部18とに多少の位置ずれが万一生じても高い給電効率が確保される。
【0045】
受電側導電シート52が厚み方向において同じ厚みT4であり、それぞれの幅W21、W22、W23が同じであり、配される間隔D3、D4が同じである。さらに、送電側導電シート42の幅W11の中心と受電側導電シート52の幅W21の中心とが同じ位置であり、幅W12と幅W22、幅W13と幅W31に関しても同様の関係性がある。3つの送電側導電シート42の幅W11、W12、W13と3つの受電側導電シート52の幅W21、W22、W23とが同じであるから、安定して電力が供給され、効率がよい。
【0046】
送電部は、長尺のシート状に限られず、例えば、長尺の円柱状、円筒状などでもよい。円柱状及び円筒状の外周面の断面は、真円形でもよいし楕円形でもよい。この場合には、一方向に延びた円柱状または円筒状の送電側支持体に、送電側支持体の長手方向に延びた3つの送電側導電シートを設ければよい。送電側導電シートは、送電側支持体の外周面近傍に設ける。そして、この場合の受電部は、送電部の外周面に沿った湾曲形状、すなわち送電側支持体の周面に対向する断面凹型の内壁面をもつ湾曲形状をもち、3つの受電側導電シートを当該内壁面の近傍に配するとよい。
【符号の説明】
【0047】
10 電子棚札システム
11 送電部
12 棚札装置
14 電源部
16 表示部
17 保持部
18 受電部
21 アンテナ出入口
40 送電側支持体
42 送電側導電シート
45 第1整合回路
50 受電側支持体
52 受電側導電シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6