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特開2023-92343超音波振動子、超音波振動子の製造方法、及び超音波プローブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092343
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】超音波振動子、超音波振動子の製造方法、及び超音波プローブ
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20230626BHJP
   H04R 31/00 20060101ALI20230626BHJP
   A61B 8/00 20060101ALI20230626BHJP
   A61B 8/12 20060101ALN20230626BHJP
【FI】
H04R17/00 330H
H04R17/00 330J
H04R31/00 330
A61B8/00
A61B8/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207502
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】304050923
【氏名又は名称】オリンパスメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 暁
【テーマコード(参考)】
4C601
5D019
【Fターム(参考)】
4C601EE10
4C601EE21
4C601FE01
4C601GB01
4C601GB19
4C601GB24
5D019AA16
5D019BB03
5D019BB17
5D019BB25
5D019FF04
5D019GG02
5D019GG06
5D019HH01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】圧電素子の側面の電極が破損することを防止した超音波振動子を提供する。
【解決手段】超音波プローブ10において、超音波振動子100は、超音波を発生する圧電素子1011と、圧電素子1011の表面のうち、圧電素子1011の厚さ方向の反対側に位置する第1面及び第2面並びに第1面及び第2面とそれぞれ隣り合う第3面、の各面上に連続して設けられている第1電極1012と、第2面上に設けられており、第1電極1012と電気的に絶縁されている第2電極1013と、を有する圧電素子層101と、第1電極1012の第3面上に設けられている面に配置されている補強部材107と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を発生する圧電素子と、
前記圧電素子の表面のうち、前記圧電素子の厚さ方向の反対側に位置する第1面及び第2面、並びに前記第1面及び前記第2面とそれぞれ隣り合う第3面、の各面上に連続して設けられている第1電極と、
前記第2面上に設けられており、前記第1電極と電気的に絶縁されている第2電極と、
を有する圧電素子層と、
前記第1電極の前記第3面上に設けられている面に配置されている補強部材と、
を備える超音波振動子。
【請求項2】
前記圧電素子層の前記第1面側に積層されている第1音響部材をさらに有し、
前記補強部材は、前記第1音響部材のうち、前記圧電素子層の前記第1面側と接触している面に配置されている請求項1に記載の超音波振動子。
【請求項3】
前記圧電素子層の前記第2面側に積層されている第2音響部材をさらに有し、
前記補強部材は、前記第1電極の前記第3面上に設けられている面と前記第1音響部材と前記第2音響部材とに囲まれた領域に配置されている請求項2に記載の超音波振動子。
【請求項4】
前記第1音響部材、及び前記第2音響部材は、前記圧電素子の厚さ方向に直交する方向に沿った幅が、前記圧電素子より大きい請求項3に記載の超音波振動子。
【請求項5】
前記補強部材は、前記第1電極の表面のうち、前記圧電素子の前記第3面上に設けられている面を覆う請求項1に記載の超音波振動子。
【請求項6】
前記第1音響部材は、接着剤により前記圧電素子に積層されており、
前記補強部材は、前記接着剤からなる請求項2に記載の超音波振動子。
【請求項7】
前記補強部材は、エポキシ樹脂からなる請求項2に記載の超音波振動子。
【請求項8】
前記補強部材は、導電性を有する請求項1に記載の超音波振動子。
【請求項9】
前記補強部材は、外部に露出している面の厚さ方向の長さが、前記第1電極に接する面の厚さ方向の長さよりも大きい請求項3に記載の超音波振動子。
【請求項10】
前記補強部材は、外部に露出している面と前記第1電極に接する面との間に形成されている段差部を有する請求項9に記載の超音波振動子。
【請求項11】
前記第1音響部材は、前記圧電素子より音響インピーダンスが小さい音響整合層である請求項2に記載の超音波振動子。
【請求項12】
前記第2音響部材は、前記圧電素子より音響インピーダンスが大きいデマッチング層である請求項3に記載の超音波振動子。
【請求項13】
超音波を発生する圧電素子と、
前記圧電素子の表面のうち、前記圧電素子の厚さ方向の反対側に位置する第1面及び第2面、並びに前記第1面及び前記第2面とそれぞれ隣り合う第3面、の各面上に連続して設けられている第1電極と、
を有する圧電素子層を備える超音波振動子の製造方法であって、
前記第1電極の前記第3面上に設けられている面に補強部材を形成する超音波振動子の製造方法。
【請求項14】
前記圧電素子層は、前記第2面上に設けられており、前記第1電極と電気的に絶縁されている第2電極を有し、
前記圧電素子層の前記第1面側に、第1音響部材を積層し、
前記第1音響部材のうち、前記圧電素子層の前記第1面側と接触している面に、前記補強部材を形成する請求項13に記載の超音波振動子の製造方法。
【請求項15】
前記圧電素子層の前記第2面側に、第2音響部材を積層し、
前記第1電極の前記第3面上に設けられている面と前記第1音響部材と前記第2音響部材とに囲まれた領域に前記補強部材を形成する請求項14に記載の超音波振動子の製造方法。
【請求項16】
前記圧電素子層の前記第1面側に接着剤により前記第1音響部材を積層し、
前記圧電素子層の前記第2面側に前記接着剤により前記第2音響部材を積層し、
前記第1電極の前記第3面上に設けられている面と前記第1音響部材と前記第2音響部材とに囲まれた領域に前記接着剤を充填することにより前記補強部材を形成する請求項15に記載の超音波振動子の製造方法。
【請求項17】
前記第1電極の前記第3面上に設けられている面と前記第1音響部材と前記第2音響部材とに囲まれた領域に前記補強部材を挿入する請求項15に記載の超音波振動子の製造方法。
【請求項18】
互いの長手方向の両端が短手方向に沿って揃って並んでいる複数の超音波振動子を備える超音波プローブであって、
前記超音波振動子は、
超音波を発生する圧電素子と、
前記圧電素子の表面のうち、前記圧電素子の厚さ方向の反対側に位置する第1面及び第2面、並びに前記第1面及び前記第2面とそれぞれ隣り合う第3面、の各面上に連続して設けられている第1電極と、
前記第2面上に設けられており、前記第1電極と電気的に絶縁されている第2電極と、
を有する圧電素子層と、
前記第1電極の前記第3面上に設けられている面に配置されている補強部材と、
を備える超音波プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波振動子、超音波振動子の製造方法、及び超音波プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電素子の表面に電極が形成された圧電素子層を備える超音波振動子が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-359897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧電素子層には、音響整合層やデマッチング層等が積層されるが、側面は外部に露出している。そのため、圧電素子の側面に形成された電極は、外部からの衝撃により破損しやすいという課題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、圧電素子の側面の電極が破損することを防止した超音波振動子、超音波振動子の製造方法、及び超音波プローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る超音波振動子は、超音波を発生する圧電素子と、前記圧電素子の表面のうち、前記圧電素子の厚さ方向の反対側に位置する第1面及び第2面、並びに前記第1面及び前記第2面とそれぞれ隣り合う第3面、の各面上に連続して設けられている第1電極と、前記第2面上に設けられており、前記第1電極と電気的に絶縁されている第2電極と、を有する圧電素子層と、前記第1電極の前記第3面上に設けられている面に配置されている補強部材と、を備える。
【0007】
また、本発明の一態様に係る超音波振動子は、前記圧電素子層の前記第1面側に積層されている第1音響部材をさらに有し、前記補強部材は、前記第1音響部材のうち、前記圧電素子層の前記第1面側と接触している面に配置されている。
【0008】
また、本発明の一態様に係る超音波振動子は、前記圧電素子層の前記第2面側に積層されている第2音響部材をさらに有し、前記補強部材は、前記第1電極の前記第3面上に設けられている面と前記第1音響部材と前記第2音響部材とに囲まれた領域に配置されている。
【0009】
また、本発明の一態様に係る超音波振動子は、前記第1音響部材、及び前記第2音響部材は、前記圧電素子の厚さ方向に直交する方向に沿った幅が、前記圧電素子より大きい。
【0010】
また、本発明の一態様に係る超音波振動子は、前記補強部材は、前記第1電極の表面のうち、前記圧電素子の前記第3面上に設けられている面を覆う。
【0011】
また、本発明の一態様に係る超音波振動子は、前記第1音響部材は、接着剤により前記圧電素子に積層されており、前記補強部材は、前記接着剤からなる。
【0012】
また、本発明の一態様に係る超音波振動子は、前記補強部材は、エポキシ樹脂からなる。
【0013】
また、本発明の一態様に係る超音波振動子は、前記補強部材は、導電性を有する。
【0014】
また、本発明の一態様に係る超音波振動子は、前記補強部材は、外部に露出している面の厚さ方向の長さが、前記第1電極に接する面の厚さ方向の長さよりも大きい。
【0015】
また、本発明の一態様に係る超音波振動子は、前記補強部材は、外部に露出している面と前記第1電極に接する面との間に形成されている段差部を有する。
【0016】
また、本発明の一態様に係る超音波振動子は、前記第1音響部材は、前記圧電素子より音響インピーダンスが小さい音響整合層である。
【0017】
また、本発明の一態様に係る超音波振動子は、前記第2音響部材は、前記圧電素子より音響インピーダンスが大きいデマッチング層である。
【0018】
また、本発明の一態様に係る超音波振動子の製造方法は、超音波を発生する圧電素子と、前記圧電素子の表面のうち、前記圧電素子の厚さ方向の反対側に位置する第1面及び第2面、並びに前記第1面及び前記第2面とそれぞれ隣り合う第3面、の各面上に連続して設けられている第1電極と、を有する圧電素子層を備える超音波振動子の製造方法であって、前記第1電極の前記第3面上に設けられている面に補強部材を形成する。
【0019】
また、本発明の一態様に係る超音波振動子の製造方法は、前記圧電素子層は、前記第2面上に設けられており、前記第1電極と電気的に絶縁されている第2電極を有し、前記圧電素子層の前記第1面側に、第1音響部材を積層し、前記第1音響部材のうち、前記圧電素子層の前記第1面側と接触している面に、前記補強部材を形成する。
【0020】
また、本発明の一態様に係る超音波振動子の製造方法は、前記圧電素子層の前記第2面側に、第2音響部材を積層し、前記第1電極の前記第3面上に設けられている面と前記第1音響部材と前記第2音響部材とに囲まれた領域に前記補強部材を形成する。
【0021】
また、本発明の一態様に係る超音波振動子の製造方法は、前記圧電素子層の前記第1面側に接着剤により前記第1音響部材を積層し、前記圧電素子層の前記第2面側に前記接着剤により前記第2音響部材を積層し、前記第1電極の前記第3面上に設けられている面と前記第1音響部材と前記第2音響部材とに囲まれた領域に前記接着剤を充填することにより前記補強部材を形成する。
【0022】
また、本発明の一態様に係る超音波振動子の製造方法は、前記第1電極の前記第3面上に設けられている面と前記第1音響部材と前記第2音響部材とに囲まれた領域に前記補強部材を挿入する。
【0023】
また、本発明の一態様に係る超音波プローブは、互いの長手方向の両端が短手方向に沿って揃って並んでいる複数の超音波振動子を備える超音波プローブであって、前記超音波振動子は、超音波を発生する圧電素子と、前記圧電素子の表面のうち、前記圧電素子の厚さ方向の反対側に位置する第1面及び第2面、並びに前記第1面及び前記第2面とそれぞれ隣り合う第3面、の各面上に連続して設けられている第1電極と、前記第2面上に設けられており、前記第1電極と電気的に絶縁されている第2電極と、を有する圧電素子層と、前記第1電極の前記第3面上に設けられている面に配置されている補強部材と、を備える。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、圧電素子の側面の電極が破損することを防止した超音波振動子、超音波振動子の製造方法、及び超音波プローブを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、実施の形態1に係る超音波振動子を備える内視鏡システムを示す模式図である。
図2図2は、図1に示す超音波プローブの側面図である。
図3図3は、図1に示す超音波プローブの上面図である。
図4図4は、図2に示すA-A’線に対応する断面図である。
図5図5は、実施の形態1に係る超音波振動子の製造方法を示すフローチャートである。
図6図6は、積層体をダイシングする様子を示す図である。
図7図7は、変形例1に係る超音波振動子の断面図である。
図8図8は、積層体をダイシングする様子を示す図である。
図9図9は、変形例2に係る超音波振動子の断面図である。
図10図10は、積層体をダイシングする様子を示す図である。
図11図11は、変形例3に係る超音波振動子の断面図である。
図12図12は、変形例4に係る超音波振動子の断面図である。
図13図13は、変形例5に係る超音波振動子の断面図である。
図14図14は、変形例6に係る超音波振動子の断面図である。
図15図15は、変形例7に係る超音波振動子の断面図である。
図16図16は、実施の形態2に係る超音波振動子の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、図面を参照して本発明に係る超音波振動子、超音波振動子の製造方法、及び超音波プローブの実施の形態を説明する。なお、これらの実施の形態により本発明が限定されるものではない。以下の実施の形態においては、超音波内視鏡に用いられる超音波振動子を例示して説明するが、本発明は、体外式の内視鏡に用いられる超音波振動子を含む超音波振動子一般に適用することができる。
【0027】
また、図面の記載において、同一又は対応する要素には適宜同一の符号を付している。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0028】
(実施の形態1)
〔内視鏡システムの概略構成〕
図1は、実施の形態1に係る超音波振動子を備える内視鏡システムを示す模式図である。内視鏡システム1は、超音波内視鏡を用いて人等の被検体内の超音波診断及び処置を行うシステムである。この内視鏡システム1は、図1に示すように、超音波内視鏡2と、超音波観測装置3と、内視鏡観察装置4と、表示装置5と、を備える。
【0029】
超音波内視鏡2は、一部を被検体内に挿入可能とし、被検体内の体壁に向けて超音波パルス(音響パルス)を送信するとともに被検体にて反射された超音波エコーを受信してエコー信号を出力する機能、及び被検体内を撮像して画像信号を出力する機能を有する。なお、超音波内視鏡2の詳細な構成については、後述する。
【0030】
超音波観測装置3は、超音波ケーブル31を介して超音波内視鏡2に電気的に接続し、超音波ケーブル31を介して超音波内視鏡2にパルス信号を出力するとともに超音波内視鏡2からエコー信号を入力する。そして、超音波観測装置3では、当該エコー信号に所定の処理を施して超音波画像を生成する。
【0031】
内視鏡観察装置4には、超音波内視鏡2の後述する内視鏡用コネクタ9が着脱自在に接続される。この内視鏡観察装置4は、ビデオプロセッサ41と、光源装置42と、を備える。
【0032】
ビデオプロセッサ41は、内視鏡用コネクタ9を介して超音波内視鏡2からの画像信号を入力する。そして、ビデオプロセッサ41は、当該画像信号に所定の処理を施して内視鏡画像を生成する。
【0033】
光源装置42は、内視鏡用コネクタ9を介して被検体内を照明する照明光を超音波内視鏡2に供給する。
【0034】
表示装置5は、液晶、有機EL(Electro Luminescence)、CRT(Cathode Ray Tube)、又は、プロジェクタを用いて構成され、超音波観測装置3にて生成された超音波画像や、内視鏡観察装置4にて生成された内視鏡画像等を表示する。
【0035】
〔超音波内視鏡の構成〕
次に、超音波内視鏡2の構成について説明する。超音波内視鏡2は、挿入部6と、操作部7と、ユニバーサルコード8と、内視鏡用コネクタ9と、を備える。
【0036】
挿入部6は、被検体内に挿入される部分である。この挿入部6は、先端側に設けられている超音波プローブ10と、超音波プローブ10の基端側に連結された硬性部材61と、硬性部材61の基端側に連結され湾曲可能とする湾曲部62と、湾曲部62の基端側に連結され可撓性を有する可撓管63と、を備える。
【0037】
操作部7は、挿入部6の基端側に連結され、医師等から各種操作を受け付ける部分である。この操作部7は、湾曲部62を湾曲操作するための湾曲ノブ71と、各種操作を行うための複数の操作部材72とを備える。また、操作部7には、処置具を挿通するための処置具挿入口73が設けられている。
【0038】
ユニバーサルコード8は、操作部7から延在し、ライトガイド、振動子ケーブル、信号ケーブル、及び管路の一部を構成するチューブが配設されたコードである。
【0039】
内視鏡用コネクタ9は、ユニバーサルコード8の端部に設けられている。そして、内視鏡用コネクタ9は、超音波ケーブル31が接続されるとともに、内視鏡観察装置4に挿し込まれることでビデオプロセッサ41及び光源装置42に接続する。
【0040】
〔超音波プローブの構成〕
次に、超音波プローブ10の構成について説明する。図2は、図1に示す超音波プローブの側面図である。図3は、図1に示す超音波プローブの上面図である。
【0041】
超音波プローブ10は、図2及び図3に示すように、互いの長手方向(図3の上下方向)の両端が短手方向(図3の左右方向)に沿って揃って並んでいる複数の超音波振動子100を備える。なお、超音波プローブ10は、コンベックス型、リニア型、又はラジアル型のいずれの構成であってもよい。
【0042】
〔超音波振動子の構成〕
次に、超音波振動子100の構成について説明する。図4は、図2に示すA-A’線に対応する断面図である。超音波振動子100は、図4に示すように、圧電素子層101と、第1音響部材としての第1音響整合層102と、第2音響整合層103と、第2音響部材としてのデマッチング層104と、接続パッド105と、FPC層106と、補強部材107と、絶縁部108と、を有する。
【0043】
圧電素子層101は、圧電素子1011と、第1電極1012と、第2電極1013と、を有する。
【0044】
圧電素子1011は、超音波を発生する。圧電素子1011は、PMN-PT単結晶、PMN-PZT単結晶、PZN-PT単結晶、PIN-PZN-PT単結晶又はリラクサー系材料等の圧電材料を用いて形成される。なお、PMN-PT単結晶は、マグネシウム・ニオブ酸鉛及びチタン酸鉛の固溶体の略称である。PMN-PZT単結晶は、マグネシウム・ニオブ酸鉛及びチタン酸ジルコン酸鉛の固溶体の略称である。PZN-PT単結晶は、亜鉛・ニオブ酸鉛及びチタン酸鉛の固溶体の略称である。PIN-PZN-PT単結晶は、インジウム・ニオブ酸鉛、亜鉛・ニオブ酸鉛及びチタン酸鉛の固溶体の略称である。リラクサー系材料は、圧電定数や誘電率を増加させる目的でリラクサー材料である鉛系複合ペロブスカイトをチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)に添加した三成分系圧電材料の総称である。鉛系複合ペロブスカイトは、Pb(B1、B2)Oで表され、B1はマグネシウム、亜鉛、インジウム又はスカンジウムのいずれかであり、B2はニオブ、タンタル又はタングステンのいずれかである。これらの圧電材料は、優れた圧電効果を有している。このため、小型化しても電気的なインピーダンスの値を低くすることができ、電極との間のインピーダンスマッチングの観点から好ましい。
【0045】
第1電極1012及び第2電極1013は、圧電素子1011の表面上にメッキ加工等によって設けられている。
【0046】
第1電極1012は、圧電素子1011の表面のうち、圧電素子1011の厚さ方向(図4の上下方向)の反対側に位置する第1面(上面)及び第2面(下面)、並びに第1面及び第2面とそれぞれ隣り合う第3面(側面)、の各面上に連続して設けられている。すなわち、第1電極1012は、圧電素子1011の上面から側面を経由して下面まで連続して形成された折り返し電極である。このように、第1電極1012を折り返し電極とすることにより、第1電極1012の下面側に電気配線を接続することができ、超音波振動子100の小型化や配線作業の簡易化等を実現することができる。
【0047】
第2電極1013は、第2面上に設けられており、絶縁部108により第1電極1012と電気的に絶縁されている。第1電極1012と第2電極1013とが互いに絶縁されていることにより、グランドとシグナルとをそれぞれ分けて印加することが可能となる。
【0048】
第1音響整合層102は、圧電素子層101の第1面側に接着剤により積層されている。第2音響整合層103は、第1音響整合層102の圧電素子層101と反対側に接着剤により積層されている。また、第1音響整合層102は、圧電素子1011の厚さ方向に直交する方向(図4の左右方向)に沿った幅が、圧電素子1011より大きい。第1音響整合層102及び第2音響整合層103は、圧電素子1011より音響インピーダンスが小さい互いに異なる材料からなり、圧電素子1011が発生した超音波を透過する。第1音響整合層102及び第2音響整合層103は、圧電素子1011と観測対象との間で音(超音波)を効率よく透過させるために、圧電素子1011と観測対象との音響インピーダンスをマッチングさせる。なお、本実施の形態1では、二つの音響整合層(第1音響整合層102及び第2音響整合層103)を有するものとして説明するが、圧電素子1011と観測対象との特性により一層としてもよいし、三層以上としてもよい。また、超音波振動子100は、音響整合層を有しない構成であってもよい。この場合、第1音響部材として第1音響整合層102に代えて、超音波を透過する材料からなり、超音波を収束、発散させる音響レンズを用いるような構成であってもよい。
【0049】
デマッチング層104は、圧電素子層101の第2面側に接着剤により積層されている。また、デマッチング層104は、圧電素子1011の厚さ方向に直交する方向(図4の左右方向)に沿った幅が、圧電素子1011より大きい。デマッチング層104は、圧電素子1011よりも音響インピーダンスが大きい材料からなり、圧電素子1011が発生した超音波を反射する。
【0050】
接続パッド105は、圧電素子1011とFPC層106とを電気的に接続する。
【0051】
FPC層106は、圧電素子1011に電気的に接続されている導電層1061と、絶縁性を有する絶縁層1062と、を有するフレキシブル基板である。
【0052】
補強部材107は、第1電極1012の第3面上に設けられている面と第1音響整合層102とデマッチング層104とに囲まれた領域に配置されている。補強部材107は、第1電極1012の表面のうち、圧電素子1011の第3面上に設けられている面を覆う。補強部材107は、例えば塗布する際には流動性を有し、その後硬化する接着剤からなるが、エポキシ樹脂やエラストマーにより形成してもよい。
【0053】
絶縁部108は、第1電極1012と第2電極1013とを絶縁する。
【0054】
また、超音波振動子100は、デマッチング層104に替えて、バッキング層を備えていてもよいし、デマッチング層104を設けず、第2音響部材として接続パッド105およびFPC層106のみを設けてもよい。また、超音波振動子100は、FPC層106の接続パッド105と反対側にバッキング層を備えていてもよい。バッキング層は、圧電素子1011の動作によって生じる不要な超音波が圧電素子1011に戻らないように、不要な超音波を吸収、減衰するバッキング材により形成されている。具体的には、バッキング層は、減衰率の大きい材料、例えば、アルミナやジルコニア等のフィラーを分散させたエポキシ樹脂や、これらのフィラーを分散したゴムを用いて形成される。
【0055】
〔超音波振動子の製造方法〕
次に、超音波振動子100の製造方法を説明する。図5は、実施の形態1に係る超音波振動子の製造方法を示すフローチャートである。まず、超音波振動子100を構成する各層を積層した積層体を形成する(ステップS1)。図6は、積層体をダイシングする様子を示す図である。図6に示すように、圧電素子層101の第1面に接着剤により第1音響整合層102及び第2音響整合層103をこの順に積層し、圧電素子層101の第2面に接着剤によりデマッチング層104、接続パッド105及びFPC層106をこの順に積層することにより、積層体110を形成する。
【0056】
続いて、積層体110を積層方向(図6の上下方向)に沿って加圧する(ステップS2)。このとき、第1電極1012の第3面上に設けられている面と第1音響整合層102とデマッチング層104とに囲まれた領域に、積層体110を形成する際に用いた接着剤が充填される。
【0057】
その後、破線L1に沿って積層体110をダイシングする(ステップS3)。その結果、超音波振動子100が形成される。
【0058】
以上説明した実施の形態1によれば、補強部材107により第1電極1012の第3面上に設けられている面(側面)が覆われていることにより、第1電極1012が外部からの衝撃によって破損することを防止することができる。
【0059】
また、第1電極1012と第2電極1013との間に電力を印加すると、圧電素子1011が厚さ方向(図4の上下方向)に伸縮して振動し、超音波が発生する。この振動により、第1電極1012の第3面上に設けられている面(側面)が破断する場合がある。実施の形態1によれば、補強部材107が第1電極1012の側面を補強しているため、圧電素子1011の振動により第1電極1012の側面が破断することも防止することができる。
【0060】
また、ステップS1~S3により製造した超音波振動子100を、図6の左右方向に沿って短冊状にダイシングすることにより、複数の超音波振動子100を備える超音波プローブ10を製造することができる。このダイシングの際に、第1電極1012の第3面上に設けられている面(側面)が破断する場合がある。実施の形態1によれば、補強部材107が第1電極1012の側面を補強しているため、ダイシングの際に第1電極1012の側面が破断することも防止することができる。また、この製造方法によれば、第1電極1012の側面が破断することが防止されているため、超音波プローブ10を製造する際の歩留まりをよくすることが可能となる。
【0061】
(変形例1)
図7は、変形例1に係る超音波振動子の断面図である。図7に示すように、変形例1に係る超音波プローブ10Aの超音波振動子100Aにおいて、第1音響整合層102Aには、傾斜部102Aaが形成されており、デマッチング層104Aには、傾斜部104Aaが形成されている。そして、補強部材107Aは、外部に露出している面の厚さ方向の長さが、第1電極1012に接する面の厚さ方向の長さよりも大きい。
【0062】
次に、変形例1に係る超音波振動子100Aの製造方法を説明する。図8は、積層体をダイシングする様子を示す図である。ダイシングする前の積層体110Aにおいて、第1音響整合層102Aには、凹部110Aaが形成されており、デマッチング層104Aには、凹部110Abが形成されている。その結果、積層体110Aを形成する際に各層の間に塗布した接着剤が凹部110Aaと凹部110Abとの間の空間に溜まりやすい。その後、破線L2に沿って積層体110Aをダイシングする。その結果、超音波振動子100Aが形成される。
【0063】
(変形例2)
図9は、変形例2に係る超音波振動子の断面図である。図9に示すように、変形例2に係る超音波プローブ10Bの超音波振動子100Bにおいて、第1音響整合層102Bには、段差部102Baが形成されており、デマッチング層104Bには、段差部104Baが形成されている。換言すると、補強部材107Bは、外部に露出している面と第1電極1012に接する面との間に形成されている段差部を有する。従って、補強部材107Bは、外部に露出している面の厚さ方向の長さが、第1電極1012に接する面の厚さ方向の長さよりも大きい。
【0064】
次に、変形例2に係る超音波振動子100Bの製造方法を説明する。図10は、積層体をダイシングする様子を示す図である。ダイシングする前の積層体110Bにおいて、第1音響整合層102Bには、溝部110Baが形成されており、デマッチング層104Bには、溝部110Bbが形成されている。その結果、積層体110Bを形成する際に各層の間に塗布した接着剤が溝部110Baと溝部110Bbとの間の空間に溜まりやすい。その後、破線L3に沿って積層体110Bをダイシングする。その結果、超音波振動子100Bが形成される。
【0065】
(変形例3)
図11は、変形例3に係る超音波振動子の断面図である。図11に示すように、変形例3に係る超音波プローブ10Cの超音波振動子100Cにおいて、第1音響整合層102Cには、傾斜部102Caが形成されており、デマッチング層104Cには、傾斜部104Caが形成されている。そして、補強部材107Cは、外部に露出している面の厚さ方向の長さが、第1電極1012に接する面の厚さ方向の長さよりも小さい。その結果、積層体を形成する際に各層の間に塗布した接着剤が傾斜部102Caと傾斜部104Caとの間の空間に溜まりやすい。
【0066】
(変形例4)
図12は、変形例4に係る超音波振動子の断面図である。図12に示すように、変形例4に係る超音波プローブ10Dの超音波振動子100Dにおいて、第1音響整合層102Dには、段差部102Daが形成されており、デマッチング層104Dには、段差部104Daが形成されている。換言すると、補強部材107Dは、外部に露出している面と第1電極1012に接する面との間に形成されている段差部を有する。従って、補強部材107Dは、外部に露出している面の厚さ方向の長さが、第1電極1012に接する面の厚さ方向の長さよりも小さい。その結果、積層体を形成する際に各層の間に塗布した接着剤が段差部102Daと段差部104Daとの間の空間に溜まりやすい。
【0067】
(変形例5)
図13は、変形例5に係る超音波振動子の断面図である。図13に示すように、変形例5に係る超音波プローブ10Eの超音波振動子100Eにおいて、補強部材107Eは、圧電素子層101とデマッチング層104Eとに跨って形成されている。その結果、補強部材107Eにより第1電極1012の第3面上に設けられている面(側面)が覆われていることにより、第1電極1012が外部からの衝撃によって破損することを防止することができる。
【0068】
また、この構成では、圧電素子層101とデマッチング層104Eとが剥がれる方向(図13の上下方向)に交差する方向に沿って補強部材107Eが形成されているため、圧電素子層101とデマッチング層104Eとが剥がれることを防止することができる。
【0069】
(変形例6)
図14は、変形例6に係る超音波振動子の断面図である。図14に示すように、変形例6に係る超音波プローブ10Fの超音波振動子100Fにおいて、補強部材107Fは、圧電素子層101と第1音響整合層102Fと第2音響整合層103Fとデマッチング層104Fとに跨って形成されている。その結果、補強部材107Fにより第1電極1012の第3面上に設けられている面(側面)が覆われていることにより、第1電極1012が外部からの衝撃によって破損することを防止することができる。
【0070】
また、この構成では、圧電素子層101と第1音響整合層102Fと第2音響整合層103Fとデマッチング層104Fとがそれぞれ剥がれる方向(図14の上下方向)に交差する方向に沿って補強部材107Fが形成されているため、圧電素子層101と第1音響整合層102Fと第2音響整合層103Fとデマッチング層104Fとがそれぞれ剥がれることを防止することができる。
【0071】
(変形例7)
図15は、変形例7に係る超音波振動子の断面図である。図15に示すように、変形例7に係る超音波プローブ10Gの超音波振動子100Gにおいて、補強部材107Gは、圧電素子層101と第1音響整合層102Gとデマッチング層104Gとに跨って形成されている。その結果、補強部材107Gにより第1電極1012の第3面上に設けられている面(側面)が覆われていることにより、第1電極1012が外部からの衝撃によって破損することを防止することができる。
【0072】
また、この構成では、圧電素子層101と第1音響整合層102Gとデマッチング層104Gとがそれぞれ剥がれる方向(図15の上下方向)に交差する方向に沿って補強部材107Gが形成されているため、圧電素子層101と第1音響整合層102Gとデマッチング層104Gとがそれぞれ剥がれることを防止することができる。
【0073】
(実施の形態2)
図13は、実施の形態2に係る超音波振動子の製造方法を示すフローチャートである。まず、実施の形態1と同様に、超音波振動子100を構成する各層を積層した積層体を形成し(ステップS1)、積層体110を積層方向に沿って加圧する(ステップS2)。
【0074】
続いて、第1電極1012の第3面上に設けられている面と第1音響整合層102とデマッチング層104とに囲まれた領域に、補強部材107を挿入する(ステップS11)。具体的には、この領域に接着剤や樹脂をすり込んで補強部材107を形成してもよいし、線状又は板状の部材を接着やロー付けして補強部材107を形成してもよい。
【0075】
その後、積層体110をダイシングする(ステップS3)。その結果、超音波振動子100が形成される。
【0076】
以上説明した実施の形態2によれば、補強部材107により第1電極1012の第3面上に設けられている面(側面)が覆われていることにより、第1電極1012が外部からの衝撃によって破損することを防止することができる。
【0077】
また、実施の形態2では、ステップS2の後に補強部材107を挿入したが、ステップS3の後に補強部材107を挿入してもよい。
【0078】
なお、上述した実施の形態では、補強部材107が接着剤や樹脂からなる例を説明したが、これに限られない。例えば、補強部材107は、導電樹脂により形成されていてもよい。この場合、補強部材107が導電性を有するため、第1電極1012の側面が破断した場合であっても補強部材107が電流を流す経路となる。
【0079】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、以上のように表し、かつ記述した特定の詳細及び代表的な実施の形態に限定されるものではない。従って、添付のクレーム及びその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 内視鏡システム
2 超音波内視鏡
3 超音波観測装置
4 内視鏡観察装置
5 表示装置
6 挿入部
7 操作部
8 ユニバーサルコード
9 内視鏡用コネクタ
10、10A、10B、10C、10D、10E、10F、10G 超音波プローブ
31 超音波ケーブル
41 ビデオプロセッサ
42 光源装置
61 硬性部材
62 湾曲部
63 可撓管
71 湾曲ノブ
72 操作部材
73 処置具挿入口
100、100A、100B、100C、100D、100E、100F、100G 超音波振動子
101 圧電素子層
102、102A、102B、102C、102D、102F、102G 第1音響整合層
102Aa、102Ca、104Aa、104Ca 傾斜部
102Ba、102Da、104Ba、104Da 段差部
103、103F 第2音響整合層
104、104A、104B、104C、104D、104E、104F、104G デマッチング層
105 接続パッド
106 FPC層
107、107A、107B、107C、107D、107E、107F、107G 補強部材
108 絶縁部
110、110A、110B 積層体
110Aa、110Ab 凹部
110Ba、110Bb 溝部
1011 圧電素子
1012 第1電極
1013 第2電極
1061 導電層
1062 絶縁層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16