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特開2023-92346バンド調整機構、中留、バンド及び時計
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092346
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】バンド調整機構、中留、バンド及び時計
(51)【国際特許分類】
   A44C 5/24 20060101AFI20230626BHJP
   A44C 5/20 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
A44C5/24
A44C5/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207506
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】502366745
【氏名又は名称】セイコーウオッチ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000135759
【氏名又は名称】株式会社バンビ
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】石田 正浩
(72)【発明者】
【氏名】大谷 剛
(57)【要約】
【課題】簡素な構成かつ直観的な操作が可能であり、従来技術と比較して長さ調整に係る部品の耐久性を向上することができるバンド調整機構を提供する。
【解決手段】バンド調整機構1は、上箱11と、スライダー4と、係合パイプ2と、アンカー3と、凸部32,33と、第一固定部43と、を有する。スライダー4は、上箱11に対してスライドする。係合パイプ2は、上箱11に固定される。アンカー3は、上箱11に開閉可能に連結され、スライダー4のスライドを許容する開状態とスライドを規制する閉状態とに開閉する。凸部32,33は、アンカー3からスライダー4に向かって突出し、アンカー3の閉状態においてスライダー4のスライドを規制する。第一固定部43は、スライダー4からアンカー3に向かって突出し、凸部32,33に係合することによりスライダー4のスライドを規制する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一バンドと接続される上箱と、
第二バンドと接続され、前記上箱に対して一方向にスライドするスライダーと、
前記上箱に設けられ、前記スライダーのスライド方向と交差する方向に延びる係合パイプと、
軸部を介して前記上箱に開閉可能に連結され、前記スライダーのスライドを許容する開状態と前記スライダーのスライドを規制する閉状態とに開閉し、前記閉状態において前記係合パイプに係合する係合部を有するアンカーと、
前記アンカーから前記スライダーに向かって突出し、前記アンカーの表面に少なくとも2以上の凹部を形成し、前記アンカーの前記閉状態において前記スライダーのスライドを規制する少なくとも1以上の凸部と、
前記スライダーから前記アンカーに向かって突出し、前記凸部に係合することにより前記スライダーのスライドを規制する第一固定部と、
を備えるバンド調整機構。
【請求項2】
前記係合パイプは、前記スライダーのスライド方向と交差する方向に沿う軸回りに回転する請求項1に記載のバンド調整機構。
【請求項3】
前記アンカーは、前記閉状態から前記開状態へ回動するに伴って前記スライダーを前記スライド方向の前記第一バンドから離間する方向へ移動させる押圧部を有し、
前記スライダーは、前記アンカーの前記押圧部に当接する当接部を有する請求項1又は請求項2に記載のバンド調整機構。
【請求項4】
前記第一固定部に対して、前記スライド方向の前記第一バンドから離間する方向に設けられ、前記第一固定部よりも弱い力で前記スライダーのスライドを規制する第二固定部をさらに備える請求項3に記載のバンド調整機構。
【請求項5】
前記第二固定部は、前記上箱の側面に設けられた複数の孔と、前記スライダーに設けられ、前記側面に向けて付勢されるとともに前記孔に係合する側方突起と、を含む請求項4に記載のバンド調整機構。
【請求項6】
時計用の中留に請求項1から請求項4のいずれかに記載のバンド調整機構を設けた中留。
【請求項7】
前記アンカーは、前記中留が開放された状態において、前記中留の開閉とは独立して開閉可能となっている請求項6に記載の中留。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の中留を備えたバンド。
【請求項9】
時計本体と、
前記時計本体に接続された、請求項8に記載のバンドと、
を備える時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンド調整機構、中留、バンド及び時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、腕時計の中留等に設けられ、バンドの長さを調整するための機構が種々提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、中留カバーと、中留カバーに対してスライドすることで第一バンドと第二バンド間の長さを変化させるスライド部材と、スライド部材に形成された溝に係合してスライドを規制する規制部と、操作されることにより規制部による規制を解除する操作部と、操作部を覆うロック機構と、を備えるバンド調整機構が開示されている。特許文献1に記載の技術によれば、スライド部材をスライドさせるための操作部は、中留がロックされた状態において中留カバーに覆われる。このため、中留のロックを解除する際に誤ってバンドの長さが変わってしまう等の誤動作の発生を抑制することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-99573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の技術にあっては、規制部は、バネによって常にスライド部材側に付勢されることにより、スライド部材に係合している。しかしながら、このようにスライドを規制する部分にバネを用いる場合、例えばバネのへたりや劣化によって長さ調整に係る操作性が低下するおそれがある。特に時計の中留等の小さな部品に適用した場合は、バネの大きさが必然的に小さくなるためバネに劣化や摩耗が生じやすく、耐久性の面で課題が残されていた。また、規制部をプッシュしてスライド部材との係合状態を解除しながらスライド部材をスライドさせる必要がある。このため、構成が煩雑になり易く、これに伴い操作が難解になるおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、簡素な構成かつ直観的な操作が可能であり、従来技術と比較して長さ調整に係る部品の耐久性を向上することができるバンド調整機構及びこれを備えた中留、この中留を備えたバンド、及びこのバンドを備えた時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一つの形態のバンド調整機構は、第一バンドと接続される上箱と、第二バンドと接続され、前記上箱に対して一方向にスライドするスライダーと、前記上箱に設けられ、前記スライダーのスライド方向と交差する方向に延びる係合パイプと、軸部を介して前記上箱に開閉可能に連結され、前記スライダーのスライドを許容する開状態と前記スライダーのスライドを規制する閉状態とに開閉し、前記閉状態において前記係合パイプに係合する係合部を有するアンカーと、前記アンカーから前記スライダーに向かって突出し、前記アンカーの表面に少なくとも2以上の凹部を形成し、前記アンカーの前記閉状態において前記スライダーのスライドを規制する少なくとも1以上の凸部と、前記スライダーから前記アンカーに向かって突出し、前記凸部に係合することにより前記スライダーのスライドを規制する第一固定部と、を備える。
【0008】
この構成によれば、アンカーを開いた後スライダーをスライドさせることにより、第一バンドと第二バンド間の長さを調整できる。このように、アンカーを開ける操作及びスライダーのスライド操作の2つの簡単な操作によりバンドの長さを調整できる。よって、簡素な構成かつユーザーにとって直観的な操作が可能となる。また、部品点数を減らしコストを削減することができる。さらにスライダーにより長さ調整する構成とすることで、強度を維持しつつ全体を薄型化することができる。
凸部は、アンカーの表面に2以上の凹部を形成し、スライダーの第一固定部は、いずれかの凹部に入り込んで凸部と係合する。複数の凹部から第一固定部の入り込む箇所を選択することにより、バンドの長さをユーザーの所望の長さに調整することができる。よって、ユーザーの操作性を向上できる。
また、アンカーの係合部を上箱の係合パイプに係合させることでアンカーを閉じ、スライダーを操作不能とすることができる。これにより、例えばユーザーの身体からバンドを脱着する際などに、誤ってスライダーが操作される等の誤動作の発生を抑制できる。アンカーは閉状態においてスライダーを覆うので、調整を行わないときにはスライダーを外部の衝撃等から保護できる。よって、バンド調整機構の耐久性を向上できる。さらに、アンカーは軸部によって上箱に回動可能に構成されるとともに係合部が係合することで閉塞される構成とされている。つまりアンカーを開閉するためのバネ等を用いていない。よって、スライドを規制するアンカーの開閉にバネ等を用いる従来技術と比較して、バネの劣化に伴う誤動作の発生や耐久性の低下を抑制できる。またバネを用いる場合と比較して簡素な構成とすることができる。
したがって、簡素な構成かつ直観的な操作が可能であり、従来技術と比較して長さ調整に係る部品の耐久性を向上することができるバンド調整機構を提供できる。
【0009】
また、前記バンド調整機構は、前記係合パイプは、前記スライダーのスライド方向と交差する方向に沿う軸回りに回転する。
【0010】
この構成によれば、係合パイプは回転可能に構成されるので、アンカーの係合部が係合パイプに係合する際及び係合を解除する際に、より少ない力で操作できる。また、係合部と係合パイプが係合する際などにクリック感を付与できる。よって、調整に係る操作性を向上できる。また、係合パイプが回転可能に構成されるので、係合部と係合パイプとが擦れることによる摩耗を抑制できる。よって、係合パイプ及びアンカーの耐久性を向上できる。さらに、軸及び軸回りに回転する係合パイプでアンカーを係止させる構成としたので、バネ等を用いてアンカーを係止させる従来技術と比較して、比較的大きな部品で構成することができる。これにより、バンド調整機構のメンテナンス性を向上できる。
【0011】
また、前記バンド調整機構は、前記アンカーは、前記閉状態から前記開状態へ回動するに伴って前記スライダーを前記スライド方向の前記第一バンドから離間する方向へ移動させる押圧部を有し、前記スライダーは、前記アンカーの前記押圧部に当接する当接部を有する。
【0012】
この構成によれば、アンカーを閉状態から開状態に回動させた際、アンカーの押圧部がスライダーの当接部に当接してスライダーを所定の方向にスライドさせる。これにより、アンカーの開閉動作とスライダーのスライド動作とを同時に行うことができる。つまりワンタッチで調整が行える。よって、バンドの長さ調整に係るユーザーの手間を省き、よりバンド調整機構の操作性を向上することができる。
【0013】
また、前記バンド調整機構は、前記第一固定部に対して、前記スライド方向の前記第一バンドから離間する方向に設けられ、前記第一固定部よりも弱い力で前記スライダーのスライドを規制する第二固定部をさらに備える。
【0014】
この構成によれば、第二固定部は第一固定部よりも弱い力でスライダーのスライド動作を規制する。第一固定部よりも弱い力とは、例えばスライダーがスライド可能であるが、無負荷でスライドさせる場合と比較してスライド操作時に所定のタイミングで重さを付与する程度の力である。これにより、例えばスライド位置に応じてクリック感を付与し、段階的に長さを調整できる。よって、より一層ユーザーの操作性を向上できる。
【0015】
また、前記バンド調整機構は、前記第二固定部は、前記上箱の側面に設けられた複数の孔と、前記スライダーに設けられ、前記側面に向けて付勢されるとともに前記孔に係合する側方突起と、を含む。
【0016】
この構成によれば、上箱の側面に設けられた複数の孔に、スライダーの側方突起が係合する。側方突起は側面に向けて付勢されるので、側方突起が複数の孔の間に位置する時は側面と反対側に押圧されてスライド動作を容易にする。一方、側方突起が孔と重なるように位置した時は、側方突起が孔と係合して弱い力でスライド動作が規制される。これにより、スライダーのスライド時にクリック感を付与し、段階的に長さを調整できる。
【0017】
本発明の一つの形態の中留は、時計用の中留に上述のバンド調整機構を設けた。
【0018】
この構成によれば、時計の中留に適用した場合に、特に顕著な作用効果を奏することができる。すなわち、長さ調整機構は簡素な構成かつ少ない部品で形成されるので、時計の中留のように小さい(薄い)部品に適用した場合であっても外観やデザイン性を損なうことなく長さの調整機能を付与することができる。また、中留の開閉等、長さ調整機能以外の機能を有している場合であっても、ユーザーは直観的な操作をすることが可能となっている。さらに、中留に振動や衝撃等が加わった場合であっても、従来技術と比較して操作性や耐久性を向上できる。
したがって、簡素な構成かつ直観的な操作が可能であり、従来技術と比較して長さ調整に係る部品の耐久性を向上することができるバンド調整機構を備えた中留を提供できる。
【0019】
また、前記中留は、前記アンカーは、前記中留が開放された状態において、前記中留の開閉とは独立して開閉可能となっている。
【0020】
この構成によれば、アンカーの開閉と中留の開閉とが独立している。これにより、例えば中留のレールをスライダーのロック機構として兼用する従来技術と比較して、中留の開閉に伴って意図せず調整機構が操作されてしまうことを防ぐことができる。よって、調整機構の誤動作を抑制できる。
【0021】
本発明の一つの形態のバンドは、上述の時計用の中留を備える。
【0022】
この構成によれば、簡素な構成かつ直観的な操作が可能であり、従来技術と比較して長さ調整に係る部品の耐久性を向上することができるバンド調整機構を備えた中留を有するバンドを提供できる。
【0023】
本発明の一つの形態の時計は、時計本体と、前記時計本体に接続された、上述のバンドと、を備える。
【0024】
この構成によれば、簡素な構成かつ直観的な操作が可能であり、従来技術と比較して長さ調整に係る部品の耐久性を向上することができるバンド調整機構を備えた中留を有するバンドを設けた時計を提供できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、簡素な構成かつ直観的な操作が可能であり、従来技術と比較して長さ調整に係る部品の耐久性を向上することができるバンド調整機構及びこれを備えた中留、この中留を備えたバンド、及びこのバンドを備えた時計を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1実施形態に係る時計の一例を示す上面図。
図2】第1実施形態に係る中留の側面図。
図3】第1実施形態に係る中留の上箱部分を拡大した側面図。
図4】第1実施形態に係る中留を閉じた状態を示すバンド調整機構の側方断面図。
図5】第1実施形態に係る中留及びアンカーを開けた状態を示すバンド調整機構の側方断面図。
図6】第1実施形態に係るスライダーのスライド中の状態を示すバンド調整機構の側方断面図。
図7】第1実施形態に係るアンカーを再び閉じた状態を示すバンド調整機構の側方断面図。
図8】第2実施形態に係る中留の側面図。
図9】第2実施形態に係る中留を閉じた状態を示すバンド調整機構の側方断面図。
図10】第2実施形態に係る中留及びアンカーを開けた状態を示すバンド調整機構の側方断面図。
図11】第2実施形態に係るアンカーをさらに倒し、スライダーをスライドさせた状態を示すバンド調整機構の側方断面図。
図12】第2実施形態に係るアンカーを再び閉じた状態を示すバンド調整機構の側方断面図。
図13】第2実施形態に係るアンカーの裏面を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。以下の説明において、ユーザーの腕に腕時計を装着した際に腕を向く側を裏側といい、その反対を表側という場合がある。
【0028】
(第1実施形態)
(時計およびバンド)
図1は、第1実施形態に係る時計の一例を示す上面図である。図1に示す時計は腕時計100aであり、時計本体10aと、腕時計用のバンドである第一バンド14及び第二バンド15と、を備える。
時計本体10aは、例えば時計ケース内に文字板や指針、指針の動きを制御するムーブメント等を備えることにより構成される。なお、時計ケースは、例えば金属製の枠体である胴、ガラス、プラスチック等の透明部材で形成された風防ガラス、および金属製の裏蓋、によって構成される。
第一バンド14および第二バンド15はそれぞれ、例えば複数の金属製の駒を連結することにより構成されるバンドである。第一バンド14および第二バンド15はそれぞれ、時計本体10aと、ばね棒等により接続される。なお、図1には、第一バンド14および第二バンド15の一部のみを例示している。
【0029】
(中留)
図2は、第1実施形態に係る中留10の側面図である。
中留10は、例えば図1に示す腕時計100a用の中留10である。中留10は、第一バンド14及び第二バンド15のうち時計本体10aとは反対側の端部に設けられ、第一バンド14及び第二バンド15を接続している。中留10は、レール12と、上箱11と、中留開閉機構13と、バンド調整機構1と、を有する。
【0030】
レール12は、一端部が第一バンド14に連結される内レール19と、内レール19の他端部においてヒンジ19aを介して内レール19と連結される外レール18と、を備える。内レール19及び外レール18は、互いに同程度の長さを有する帯状の部材である。内レール19及び外レール18は、腕時計100aの装着時に互いに重なり合うとともに、ユーザーの手首に沿うように、側方から見て円弧状にそれぞれ湾曲する。内レール19と外レール18とが重なる状態とは、円弧状の内レール19のうち外周側の面である主面と、円弧状の外レール18のうち内周側の面である裏面と、が互いに重なる状態である。
【0031】
内レール19の一端部には、第一バンド14が回動可能に接続される。内レール19の他端部には、外レール18を接続するためのヒンジ19aが設けられる。内レール19は、一方の主面に立つように設けられたロックピン21を有する。ロックピン21は、円柱状の茎部21aと、茎部21aの先端に設けられた半球部21bと、を有する。半球部21bは、茎部21aより大きな径を有する半球状に形成されている。半球部21bは、ロックピン21の先端に向かうほど径が小さくなるように配置されている。ロックピン21は、詳しくは後述する中留開閉機構13の一部を構成している。
【0032】
外レール18は、内レール19の他端部に設けられたヒンジ19aを介して内レール19の他端部に回動可能に接続される。さらに外レール18は、内レール19が接続される一端部とは反対側の他端部において、ヒンジ18aを介して上箱11に接続される。外レール18には、内レール19と外レール18とが重なった状態で、ロックピン21が貫通する不図示の貫通孔が形成されている。
【0033】
上箱11は、外レール18の他端部に設けられたヒンジ18aを介して外レール18の他端部に回動可能に接続される。換言すれば、第一バンド14は、レール12を介して上箱11の第一端部26(図3参照)に接続される。上箱11は、側方から見て、内レール19及び外レール18と同等の曲率の円弧状に形成されている。上箱11は、裏側(腕時計100aの装着時に腕を向く側)に向かって開口する箱状に形成されている。具体的に、上箱11は、湾曲した矩形板状の表面部23と、表面部23の長手方向に沿う両端に設けられ、互いに平行に対向する一対の側壁である第一側壁24及び第二側壁25(図3参照)と、を有する。上箱11は、互いに重なる状態の内レール19及び外レール18を覆う。
なお、本実施形態において、上箱11は、詳しくは後述するバンド調整機構1の構成要素の一部である。
【0034】
中留開閉機構13は、内レール19、外レール18及び上箱11が重なった状態である中留10を閉じた状態と、内レール19、外レール18及び上箱11の重なりが解除された状態である中留10を開いた状態と、の間で中留10を開閉する。中留開閉機構13は、上箱11に設けられたボタンユニット51と、内レール19に設けられた上述のロックピン21と、を有する。
【0035】
図3は、第1実施形態に係る中留10の上箱11部分を拡大した側面図である。
図3に示すように、ボタンユニット51は、上箱11の長手方向において、内レール19が接続される端部(第一端部26)の近傍に設けられる。ボタンユニット51は、一対のボタン部材52と、一対のバネ(不図示)と、保持部材54と、を有する。ボタンユニット51は、一対のボタン部材52の各一部を除いて上箱11の内側に設けられる。
【0036】
一対のボタン部材52は、上箱11の第一側壁24及び第二側壁25のそれぞれから幅方向の外側に突出形成されている。一対のボタン部材52の一部は、上箱11の内側に収容されている。
不図示の一対のバネは、ボタン部材52のうち上箱11の内側に収容された部分と接している。一対のバネは、ボタン部材52が上箱11の外側に向かって突出するようにボタン部材52を付勢している。
【0037】
保持部材54は、上箱11の内部に設けられる。保持部材54は、中留10を閉じた状態でロックピン21が挿入される挿入孔55を有する。挿入孔55は、互いに近接又は離間するように開閉する一対の把持部(不図示)の間に形成される。つまり一対の把持部間の距離が変わることにより挿入孔55の内径が変化する。一対の把持部は、互いに近接するように不図示のバネにより常に付勢されている。
【0038】
また、一対の把持部は、ボタン部材52と連結されている。例えばユーザーが指でボタン部材52を内側に押すと、一対の把持部が互いに離間する方向に動く。一方、ユーザーがボタン部材52から手を離すと、バネ力により一対の把持部が互いに近接する方向に動く。よって、ボタン部材52を操作することにより、挿入孔55の内径を変化させることができる。
これにより、ユーザーがレール12と上箱11を重ねると、保持部材54の挿入孔55にロックピン21の半球部21bが係止されて中留10が閉じられる。一方、ロックピン21が係止された状態で、ユーザーがボタン部材52を押してロックピン21を挿入孔55から離脱させることにより、中留10が開かれる。
【0039】
(バンド調整機構)
バンド調整機構1は、例えば手がむくんでバンドの巻き付けがきついと感じた場合やバンドが緩いと感じた場合などに、バンドの長さを調整するための機構である。バンド調整機構1は、上箱11の長手方向において、内レール19が接続される第一端部26とは反対側の第二端部27側に設けられている。バンド調整機構1は、上述した中留10の構成要素でもある上箱11と、係合パイプ2と、スライダー4と、スライダー4を裏側(腕時計の装着時に腕を向く側)から覆うアンカー3と、を有する。
【0040】
図4は、第1実施形態に係る中留10を閉じた状態を示すバンド調整機構1の側方断面図である。
図3及び図4に示すように、係合パイプ2は、上箱11の内側であって長手方向の中央部に設けられている。係合パイプ2は、円環状に形成されている。係合パイプ2は、上箱11の長手方向と直交する幅方向に沿って延びている。係合パイプ2は、上箱11の幅方向に沿って延びる軸C2回りに回転可能となっている。軸C2の両端部は、上箱11の第一側壁24及び第二側壁25にそれぞれ固定されている。
【0041】
スライダー4は、上箱11の内側に収容され、上箱11に対して一方向にスライドする。具体的に、スライダー4のスライド方向は、上箱11の長手方向と一致する。以下の説明において、スライダー4のスライド方向のうち上箱11の第一端部26へ向かう向きを第一方向D1といい、その反対を第二方向D2という場合がある。また、スライド方向及び表裏方向とそれぞれ交差する方向を幅方向という場合がある。
スライダー4は、スライダー本体41と、第一固定部43と、立壁45と、を有する。
【0042】
スライダー本体41は、上箱11の表面部23に沿う板状に形成されている。スライダー本体41は、側方から見て、上箱11の表面部23と同等の曲率を有する円弧状に形成されている。よって、スライダー本体41は、上箱11の内側で上箱11の長手方向に沿ってスライドすることができる。スライダー本体41よりも裏側には、アンカー3を取り付けるための軸C3が設けられている。スライダー本体41は、厚み方向(裏表方向)において、上箱11の表面部23と軸C3(及びアンカー3)とに挟まれることにより、上箱11からの離脱が抑制されている。
なお、スライダー本体41と上箱11の表面部23との摩擦が大きい場合には、スライダー本体41または上箱11の表面部23に凹凸を設けてもよい。
【0043】
第一固定部43は、スライダー本体41から裏側(アンカー3側)へ向かって突出する突起である。第一固定部43は、スライダー本体41と一体形成されている。第一固定部43は、スライダー本体41と別部品により構成されてもよい。第一固定部43は、スライダー本体41の幅方向全体に亘って延びるように形成されている。第一固定部43は、スライダー本体41のうち、スライド方向の第一方向D1側の端部から所定の距離だけ離れた位置に設けられている。スライダー本体41のうち第一固定部43よりも第一方向D1側に位置する部分は、延長部42とされている。図3に示すように、延長部42は、スライダー本体41が最も第一方向D1側に位置する場合に、係合パイプ2と上箱11の表面部23との間に挿入される。
【0044】
第一固定部43は、アンカー3に設けられた突起と係合することにより、スライダー4のスライドを規制する。つまり、第一固定部43がアンカー3の突起と係合すると、スライダー4はスライド不能となる。第一固定部43とアンカー3の突起との係合が解除されると、スライダー4はスライド可能となる。
【0045】
立壁45は、スライダー本体41から裏側(アンカー3側)へ向かって立設されている。立壁45は、スライダー本体41と一体形成されている。立壁45は、スライダー本体41の幅方向全体に亘って延びるように形成されている。立壁45は、スライダー本体41のうち、スライド方向の第二方向D2側の端部に設けられている。立壁45は、スライダー4の厚み方向において第一固定部43よりも高く形成されている。
【0046】
立壁45の第二方向D2側の面には、継手固定部47を介して第二バンド15が接続されている。なお、図においては第二バンド15を単一の金属製の駒15で簡略的に表示しているが、実際の第二バンド15は、図1にその一部を示すように、複数の金属製の駒15により形成されている。複数の駒のうち継手固定部47と接続される駒15には、例えば継手固定部47と接続するための嵌合部16が設けられている。駒15に嵌合部16が直接設けられることにより、バンド調整機構1による調整長さが長い場合であっても、腕装着時の快適性の低下が抑制される。
【0047】
ここで、図1に示すように、上箱11の第一側壁24及び第二側壁25には、複数の孔28が形成されている。孔28は、第一側壁24及び第二側壁25を上箱11の幅方向に沿って貫通している。これらの孔28は、スライダー4をスライドした際にスライダー4の位置を目視で確認するための孔である。孔28からは、スライダー4をスライドさせた際に、例えばスライダー4の第一固定部43や立壁45が通過することが視認できる。これによりユーザーは、上箱11内に収容されたスライダー4の位置を視認し、スライダー4の位置を容易に決めることが可能となる。
【0048】
アンカー3は、軸部34を介して上箱11に開閉可能に連結されている。アンカー3は、スライダー4のスライドを許容する開状態と、スライダー4のスライドを規制する閉状態と、に開閉すする(図4及び図5参照)。アンカー3は、中留開閉機構13により中留10が開放された状態において、操作可能となっている。アンカー3は、中留10が開放された状態において、中留10の開閉とは独立して開閉可能となっている。
アンカー3は、蓋部31と、凸部32,33と、係合部35と、を有する。
【0049】
蓋部31は、係合パイプ2及びスライダー4よりも裏側に設けられている。蓋部31は、閉状態において係合パイプ2及びスライダー4を裏側から覆う板状に形成されている。蓋部31は、側方から見て、上箱11と同等の曲率を有する円弧状に形成されている。蓋部31のうち第二方向D2側に位置する軸部34は、上箱11の幅方向に沿って延びる軸C3回りに回動可能に取り付けられている。軸C3の両端部は、上箱11の第一側壁24及び第二側壁25にそれぞれ固定されている。アンカー3の軸C3は、係合パイプ2の軸C2よりもスライド方向の第二方向D2側に設けられている。
【0050】
凸部32,33は、アンカー3の閉状態において、アンカー3からスライダー4に向かって突出している。本実施形態において、凸部32,33は、第一凸部32と、第二凸部33と、の合計2個設けられている。第一凸部32及び第二凸部33は、蓋部31と一体形成されている。第一凸部32及び第二凸部33は、アンカー3の幅方向の全体に亘って延びるように形成されている。各凸部32,33は、アンカー3の閉状態において、スライダー4のスライドを規制する。
【0051】
各凸部32,33は、アンカー3の閉状態において、スライダー4のスライド方向における中央部に設けられている。第一凸部32及び第二凸部33は、互いにスライド方向に離間して設けられている。第二凸部33は、第一凸部32よりも軸C3に近い側に設けられている。各凸部32,33は、アンカー3の表面に少なくとも2以上の凹部を形成する。本実施形態では、蓋部31に第一凸部32及び第二凸部33が形成されることにより、第一凹部36、第二凹部37及び第三凹部38の3個の凹部が形成されている。
【0052】
第一凹部36は、第一凸部32よりも軸C3から遠い側に設けられている。アンカー3の閉状態において、第一凸部32のうち第一方向D1側を向く面は、第一凹部36の一部を形成している。第一凹部36よりさらに第一方向D1側には、第一凹部36よりもさらに深く凹んだ段部71が設けられている。段部71には、アンカー3の閉状態において、係合パイプ2が入り込む。側方から見て、第一凹部36は、スライダー4の第一固定部43よりも大きく形成されている。スライダー4の第一固定部43が第一凹部36に入り込むことによって、第一固定部43は、係合パイプ2及び第一凸部32によりスライド方向の両側から係止される。これによりスライダー4のスライドが規制される。
【0053】
第二凹部37は、第一凸部32と第二凸部33との間に設けられている。アンカー3の閉状態において、第一凸部32のうち第二方向D2側を向く面及び第二凸部33のうち第一方向D1側を向く面は、第二凹部37の一部を形成している。側方から見て、第二凹部37は、スライダー4の第一固定部43よりも大きく形成されている。スライダー4の第一固定部43が第二凹部37に入り込むことによって、第一固定部43は、第一凸部32及び第二凸部33によりスライド方向の両側から係止される。これによりスライダー4のスライドが規制される。
【0054】
第三凹部38は、第二凸部33と軸C3回りに形成されたアンカー3の軸部34との間に設けられている。アンカー3の閉状態において、第二凸部33のうち第二方向D2側を向く面及び軸部34のうち第一方向D1側を向く面は、第三凹部38の一部を形成している。側方から見て、第三凹部38は、スライダー4の第一固定部43よりも大きく形成されている。スライダー4の第一固定部43が第三凹部38に入り込むことによって、第一固定部43は、第二凸部33及び軸部34によりスライド方向の両側から係止される。これによりスライダー4のスライドが規制される。また、軸部34は、第一固定部43を係止することにより、スライダー4が上箱11から第二方向D2に離脱するのを抑制している。
【0055】
係合部35は、アンカー3の閉状態において、係合パイプ2に係合する。本実施形態において、係合部35は、蓋部31からスライダー4側に突出する延在部61と、延在部61の先端に設けられる爪部62と、を有する。爪部62が係合パイプ2を乗り越えて係合パイプ2と係合することで、アンカー3が閉状態に維持される。アンカー3の閉状態において、蓋部31のうち係合部35より第一方向D1側には、引っ掛け部63が設けられている。引っ掛け部63にユーザーの指等を引っ掛けて蓋部31を引き上げることにより、ユーザーはアンカー3を開く。
【0056】
次に、上述したバンド調整機構1によりバンドの長さを調整する方法について詳細に説明する。
図5は、第1実施形態に係る中留10及びアンカー3を開けた状態を示すバンド調整機構1の側方断面図である。図6は、第1実施形態に係るスライダー4のスライド中の状態を示すバンド調整機構1の側方断面図である。図7は、第1実施形態に係るアンカー3を再び閉じた状態を示すバンド調整機構1の側方断面図である。
【0057】
図4に示すように、長さの調整を行う前であって、かつ腕時計100aをユーザーの腕に装着している状態において、アンカー3及び中留10は閉じられている。図4に示す例では、このとき、スライダー4は、初期位置P0に位置している。初期位置P0において、スライダー4の第一固定部43は、第一凹部36に入り込んだ状態で、係合パイプ2及び第一凸部32に係合している。これによりスライダー4のスライドが規制されている。
【0058】
長さ調整を行う際には、まず、図5に示すように、中留開閉機構13のボタンユニット51を操作して、中留10を開く。中留10を開くとアンカー3が操作可能に露出する。ユーザーはさらに、アンカー3の引っ掛け部63に指を掛けてアンカー3を閉状態から開状態に遷移させ、アンカー3を開く。
【0059】
次に、図6に示すように、ユーザーは、第二バンド15をスライド方向の第二方向D2に沿ってスライドさせる。つまり第二バンド15を上箱11から引き出す。このときユーザーは、例えば上箱11の側壁に形成された複数の孔28(図2参照)等からスライダー4を視認しながら、スライダー4の位置を決定する。
【0060】
図7に示すように、スライダー4をスライドさせた後、ユーザーは、再びアンカー3を軸C3回りに回動させてアンカー3を開状態から閉状態へ遷移させる。より詳細には、ユーザーは、アンカー3の係合部35が係合パイプ2に係合するまでアンカー3を上箱11に向かって押し込むことで、アンカー3を閉じる。またこのとき、スライダー4が第一位置P1に位置するように操作される。第一位置P1において、スライダー4の第一固定部43は、第二凹部37に入り込んだ状態で、第一凸部32及び第二凸部33に係合している。
【0061】
以上の操作により、スライダー4を初期位置P0から第一位置P1へ移動させ、バンドの長さを長くするための調整が完了する。腕時計100aを装着する場合には、この後さらに中留10を閉じてもよい。
【0062】
なお、上述の例では、スライダー4の第一固定部43が入り込む位置を第一凹部36から第二凹部37へ移動させてバンドの長さを長くする手順について説明したが、例えば第一凹部36から第三凹部38へ移動させてもよい。同様に、第二凹部37から第三凹部38へ移動させてもよい。さらに、バンドを短くしたい場合には、上述の手順におけるアンカー3を開いた後に、スライダー4を第一方向D1にスライドさせればよい。
【0063】
(作用、効果)
次に、上述のバンド調整機構1及び中留10の作用、効果について説明する。
本実施形態のバンド調整機構1によれば、アンカー3を開いた後スライダー4をスライドさせることにより、第一バンド14と第二バンド15間の長さを調整できる。このように、アンカー3を開ける操作及びスライダー4のスライド操作の2つの簡単な操作によりバンドの長さを調整できる。よって、簡素な構成かつユーザーにとって直観的な操作が可能となる。また、部品点数を減らしコストを削減することができる。さらにスライダー4により長さ調整する構成とすることで、強度を維持しつつ全体を薄型化することができる。
凸部32,33は、アンカー3の表面に2以上の凹部36,37,38を形成し、スライダー4の第一固定部43は、いずれかの凹部36,37,38に入り込んで凸部32,33と係合する。複数の凹部36,37,38から第一固定部43の入り込む箇所を選択することにより、バンドの長さをユーザーの所望の長さに調整することができる。よって、ユーザーの操作性を向上できる。
また、アンカー3の係合部35を上箱11の係合パイプ2に係合させることでアンカー3を閉じ、スライダー4を操作不能とすることができる。これにより、例えばユーザーの身体からバンドを脱着する際などに、誤ってスライダー4が操作される等の誤動作の発生を抑制できる。アンカー3は閉状態においてスライダー4を覆うので、調整を行わないときにはスライダー4を外部の衝撃等から保護できる。よって、バンド調整機構1の耐久性を向上できる。さらに、アンカー3は軸部34によって上箱11に回動可能に構成されるとともに係合部35が係合することで閉塞される構成とされている。つまりアンカー3の開閉にはバネ等を用いていない。よって、スライドを規制するアンカー3の開閉にバネ等を用いる従来技術と比較して、バネの劣化に伴う誤動作の発生や耐久性の低下を抑制できる。またバネを用いる場合と比較して簡素な構成とすることができる。
したがって、簡素な構成かつ直観的な操作が可能であり、従来技術と比較して長さ調整に係る部品の耐久性を向上することができるバンド調整機構1を提供できる。
【0064】
係合パイプ2は回転可能に構成されるので、アンカー3の係合部35が係合パイプ2に係合する際及び係合を解除する際に、より少ない力で操作できる。また、係合部35と係合パイプ2が係合する際などにクリック感を付与できる。よって、調整に係る操作性を向上できる。また、係合パイプ2が回転可能に構成されるので、係合部35と係合パイプ2とが擦れることによる摩耗を抑制できる。よって、係合パイプ2及びアンカー3の耐久性を向上できる。さらに、軸C2及び軸回りに回転する係合パイプ2でアンカー3を係止させる構成としたので、バネ等を用いてアンカー3を係止させる従来技術と比較して、比較的大きな部品で構成することができる。これにより、バンド調整機構1のメンテナンス性を向上できる。
【0065】
本実施形態の中留10によれば、時計の中留10に適用した場合に、特に顕著な作用効果を奏することができる。すなわち、長さ調整機構は簡素な構成かつ少ない部品で形成されるので、時計の中留10のように小さい(薄い)部品に適用した場合であっても外観やデザイン性を損なうことなく長さの調整機能を付与することができる。また、中留10の開閉等、長さ調整機能以外の機能を有している場合であっても、ユーザーは直観的な操作をすることが可能となっている。さらに、中留10に振動や衝撃等が加わった場合であっても、従来技術と比較して操作性や耐久性を向上できる。
したがって、簡素な構成かつ直観的な操作が可能であり、従来技術と比較して長さ調整に係る部品の耐久性を向上することができるバンド調整機構1を備えた中留10を提供できる。さらに、このような中留10を備えたバンド、および時計を提供することができる。
【0066】
アンカー3の開閉と中留10の開閉とが独立している。これにより、例えば中留10のレール12をスライダー4のロック機構として兼用する従来技術と比較して、中留10の開閉に伴って意図せず調整機構が操作されてしまうことを防ぐことができる。よって、調整機構の誤動作を抑制できる。
【0067】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について説明する。図8は、第2実施形態に係る中留210の側面図である。図9は、第2実施形態に係る中留210を閉じた状態を示すバンド調整機構201の側方断面図である。図10は、第2実施形態に係る中留210及びアンカー203を開けた状態を示すバンド調整機構201の側方断面図である。図11は、第2実施形態に係るアンカー203をさらに倒し、スライダー4をスライドさせた状態を示すバンド調整機構201の側方断面図である。図12は、第2実施形態に係るアンカー203を再び閉じた状態を示すバンド調整機構201の側方断面図である。図13は、第2実施形態に係るアンカー203の裏面を示す斜視図である。
第2実施形態では、アンカー203を開く動作とスライダー4をスライドさせる動作が同時に行われる点で上述した第1実施形態と相違している。
【0068】
図8及び図9に示すように、第2実施形態のバンド調整機構201において、アンカー203は、蓋部31と、単一の凸部233と、係合部235と、押圧部238と、を有する。凸部233は、アンカー203の閉状態において、スライダー4のスライド方向における中央部に設けられている。蓋部31に1個の凸部233が形成されることにより、アンカー203の表面には、第一凹部236及び第二凹部237の2個の凹部が設けられている。
【0069】
第一凹部236は、凸部233よりも軸部34から遠い側に設けられている。第一凹部236には、アンカー203の閉状態において、係合パイプ2が入り込む。スライダー4の第一固定部43が第一凹部236に入り込むことによって、第一固定部43は、係合パイプ2及び凸部233によりスライド方向の両側から係止される。これによりスライダー4のスライドが規制される。
第二凹部237は、凸部233と軸部34との間に設けられている。スライダー4の第一固定部43が第二凹部237に入り込むことによって、第一固定部43は、凸部233及び軸部34によりスライド方向の両側から係止される。これによりスライダー4のスライドが規制される。
【0070】
係合部235は、アンカー203の閉状態において、係合パイプ2に係合する。図13に示すように、本実施形態において、係合部235は、蓋部31からスライダー4側に突出する茎部235aと、茎部235aの先端に設けられる傘部235bと、を有する。傘部235bは、先端に向かうにつれて外径が小さくなる円錐台状に形成されている。傘部235bが係合パイプ2を乗り越えて係合パイプ2と係合することで、アンカー203が閉状態に維持される。係合部235は、例えばカシメにより蓋部31に取り付けられている。
【0071】
図9に示すように、押圧部238は、蓋部31の長手方向における軸部34側の端部に設けられている。押圧部238は、アンカー203の閉状態において、蓋部31の裏面に設けられている。押圧部238は、アンカー203が閉状態から開状態へ回動するに伴って、スライダー4をスライド方向の第二方向D2へ向けて押圧し、スライダー4を第二方向D2へスライドさせる(図10及び図11も参照)。
【0072】
第2実施形態のスライダー4は、アンカー203の押圧部238に当接する当接部248を有する。第2実施形態のスライダー4の構成は、第1実施形態のスライダー4の構成と同等となっている。但し、第2実施形態では、立壁45が当接部248としての機能を有している。
図11に示すように、当接部248(立壁45)には、開状態のアンカー203の押圧部238が当接し、アンカー203からの力が当接部248を介してスライダー4に入力される。アンカー203から押圧されることにより、スライダー4は第二方向D2にスライドする。
【0073】
図8及び図9に示すように、本実施形態のバンド調整機構201は、さらに第二固定部272を備える。第二固定部272は、スライダー4の第一固定部43よりも、スライド方向の第二方向D2側に設けられている。第二固定部272は、第一固定部43よりも弱い力でスライダー4のスライドを規制する。第一固定部43よりも弱い力とは、例えばスライダー4がスライド可能であるが、第1実施形態のように無負荷でスライドさせる場合と比較してスライド操作時に所定のタイミングで重さを付与する程度の力である。具体的に、第二固定部272は、上箱11の側面に設けられた複数の孔274(図8参照)と、スライダー4に設けられた側方突起275(図9参照)と、を有する。
【0074】
図8に示すように、複数の孔274は、上箱11の第一側壁24及び第二側壁25に設けられている。本実施形態において、孔274は、各側壁にそれぞれ2個ずつ設けられている。複数の孔274は、第一側壁24及び第二側壁25をそれぞれ上箱11の幅方向に沿って貫通する。複数の孔274は、スライド方向において、係合パイプ2の軸C2及びアンカー203の軸C3よりも第二方向D2側に設けられている。
【0075】
図9に示すように、側方突起275は、スライダー4の側面に設けられている。側方突起275は、スライダー4の側面から上箱11の各側壁に向けて付勢されるとともに複数の孔274に係合可能となっている。具体的に、スライダー4の第一固定部43が第一凹部236に入り込んでいる状態(図9に示す初期状態P10)において、側方突起275は、2個の孔274のうちスライド方向の第一方向D1側の孔274aに係合する。スライダー4の第一固定部43が第二凹部237に入り込んでいる状態(図12に示す係合状態P12)において、側方突起275は、2個の孔274のうちスライド方向の第二方向D2側の孔274bに係合する。
【0076】
次に、第2実施形態のバンド調整機構201によりバンドの長さを調整する方法について、図9から図12に基づいて詳細に説明する。
【0077】
図9に示すように、長さの調整を行う前であって、かつ腕時計100aをユーザーの腕に装着している状態において、アンカー203及び中留210は閉じられている。図9に示す例では、このとき、スライダー4は、初期位置P10に位置している。初期位置P0において、スライダー4の第一固定部43は、第一凹部236に入り込んだ状態で、係合パイプ2及び凸部233に係合している。これによりスライダー4のスライドが規制されている。
【0078】
長さ調整を行う際には、まず、図10に示すように、中留開閉機構13のボタンユニット51を操作して、中留210を開く。中留210を開くとアンカー203が操作可能に露出する。ユーザーはさらに、アンカー203に指を掛けてアンカー203を閉状態から開状態に遷移させる。アンカー203を閉状態から約90°回動させると、アンカー203の押圧部238がスライダー4の当接部248に当接する。
【0079】
次に、図11に示すように、ユーザーは、アンカー203を、図10に示す約90°回動させた状態から、さらに第二方向D2側へ向けて回動させる。このとき、スライダー4の当接部248は、押圧部238から第二方向D2側への力を受ける。これにより、アンカー203の開動作に伴い、スライダー4が第二方向D2にスライドする。つまり、ユーザーがアンカー203を開く動作を行うことにより、アンカー203を開く動作とスライダー4を第二方向D2へスライドさせる動作が同時に行われる。
このとき、第二固定部272の側方突起275は、第一方向D1側の孔274a(図8参照)から離脱して第二方向D2側の孔274b(図8参照)に係合する。側方突起275が第二方向D2側の孔274bに係合することにより、スライダー4のスライド方向における位置決めがされる。また、側方突起275が第二方向D2側の孔274bに係合する際のクリック感等により、ユーザーは、スライダー4の位置決めが完了したことを確認できる。
【0080】
図12に示すように、スライダー4がスライドした後、ユーザーは、再びアンカー203を軸C3回りに回動させてアンカー203を開状態から閉状態へ遷移させる。より詳細には、ユーザーは、アンカー203の係合部235が係合パイプ2に係合するまでアンカー203を上箱11に向かって押し込むことで、アンカー203を閉じる。このとき、スライダー4は係合位置P12に位置している。係合位置P12において、スライダー4の第一固定部43は、第二凹部237に入り込んだ状態で、凸部233及び軸部34に係合している。
【0081】
以上の操作により、スライダー4を初期位置P10から係合位置P12へ移動させ、バンドの長さを長くするための調整が完了する。腕時計100aを装着する場合には、この後さらに中留210を閉じてもよい。
【0082】
なお、上述の例では、スライダー4を第二方向D2に移動させてバンドの長さを長くする手順について説明したが、例えばスライダー4を第一方向D1に移動させてバンドの長さを短くしてもよい。スライダー4を第一方向D1に移動させる場合には、図10に示すようにアンカー203を開いた後、手動で第二バンド15を第一方向D1に沿って上箱11側に押し込むことにより、バンドの長さを短くすることが可能である。また、上述の第2実施形態では、アンカー203が1個の凸部233を有する構成としたが、第1実施形態のように複数の凸部を有してもよい。
【0083】
第2実施形態のバンド調整機構201によれば、アンカー203は押圧部238を有し、スライダー4は当接部248を有する。アンカー203を閉状態から開状態に回動させた際、アンカー203の押圧部238がスライダー4の当接部248に当接してスライダー4を所定の方向にスライドさせる。これにより、アンカー203の開閉動作とスライダー4のスライド動作とを同時に行うことができる。つまりワンタッチで調整が行える。よって、バンドの長さ調整に係るユーザーの手間を省き、よりバンド調整機構201の操作性を向上することができる。
【0084】
バンド調整機構201は第二固定部272を有する。第二固定部272は、第一固定部43よりも弱い力でスライダー4のスライド動作を規制する。第一固定部43よりも弱い力とは、例えばスライダー4がスライド可能であるが、無負荷でスライドさせる場合と比較してスライド操作時に所定のタイミングで重さを付与する程度の力である。これにより、例えばスライド位置に応じてクリック感を付与し、段階的に長さを調整できる。よって、より一層ユーザーの操作性を向上できる。
【0085】
第二固定部272は、複数の孔274と、側方突起275と、を含む。上箱11の側面に設けられた複数の孔274に、スライダー4の側方突起275が係合する。側方突起275は側面に向けて付勢されるので、側方突起275が複数の孔274の間に位置する時は側面と反対側に押圧されてスライド動作を容易にする。一方、側方突起275が孔274と重なるように位置した時は、側方突起275が孔274と係合して弱い力でスライド動作が規制される。これにより、スライダー4のスライド時にクリック感を付与し、段階的に長さを調整できる。
【0086】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述の第2実施形態において、アンカー203の押圧部238は、例えばバンドの長さを短くする方向にスライダー4を押圧するように構成されてもよい。
【0087】
第1実施形態において、アンカー3は、1個又は3個以上の凸部を有してもよい。第2実施形態において、アンカー203は、2個以上の凸部を有してもよい。
【0088】
長さ調整機構は、腕時計の中留10,210以外に設けられてもよい。例えば腕時計の時計本体とバンドとの接続部分に設けられてもよい。また、腕時計以外の身体に装着して(巻き付けて)使用する機器に設けられてもよい。
【0089】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1,201 バンド調整機構
2 係合パイプ
3,203 アンカー
4 スライダー
10,210 中留
10a 時計本体
11 上箱
14 第一バンド
15 第二バンド(駒)
32 第一凸部(凸部)
33 第二凸部(凸部)
34 軸部
35,235 係合部
36,236 第一凹部(凹部)
37,237 第二凹部(凹部)
38 第三凹部(凹部)
43 第一固定部
100a 腕時計
233 凸部
238 押圧部
248 当接部
272 第二固定部
274 (複数の)孔
275 側方突起
C2 (係合パイプの)軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13