(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092371
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】認知機能診断装置,及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 50/30 20180101AFI20230626BHJP
【FI】
G16H50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207565
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】320011638
【氏名又は名称】株式会社医光ヘルステクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】酒谷 薫
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】認知機能に関するコメントを自動的に作成する認知機能診断装置を提供する。
【解決手段】認知機能診断装置1は、被験者の年齢を示す年齢情報を取得する年齢情報取得手段と,被験者の性別を示す性別情報を取得する性別取得手段と,被験者の一般血液検査の結果を示す血液検査情報を取得する血液検査情報取得手段と,年齢情報取得手段が取得する被験者の前記年齢情報と,性別取得手段が取得する被験者の性別情報と,血液検査情報取得手段が取得する被験者の血液検査情報とを用いて,認知機能に関するコメントを作成するコメント作成手段と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の年齢を示す年齢情報を取得する年齢情報取得手段と,
前記被験者の性別を示す性別情報を取得する性別取得手段と,
前記被験者の一般血液検査の結果を示す血液検査情報を取得する血液検査情報取得手段と,
前記年齢情報取得手段が取得する前記被験者の前記年齢情報と,前記性別取得手段が取得する前記被験者の前記性別情報と,前記液検査情報取得手段が取得する前記被験者の前記血液検査情報とを用いて,認知機能に関するコメントを作成するコメント作成手段と
を有する,認知機能診断装置。
【請求項2】
請求項1又は2に記載の認知機能診断装置であって,
前記コメント作成手段は,機械学習手段を有し,
前記機械学習手段は,前記被験者の前記年齢情報と,前記被験者の前記性別情報と,前記被験者の前記血液検査情報とを用いて,認知機能に関するコメントを作成する,認知機能診断装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の認知機能診断装置であって,
前記コメント作成手段は,性別及び年齢のいずれか又は両方によって分類される表現辞書を有し,前記認知機能に関するコメントは,前記表現辞書に記憶される表現を用いて作成される,認知機能診断装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の認知機能診断装置であって,
前記被験者の舌画像を取得する舌画像取得手段,又は前記被験者の舌に関する診断結果を取得する舌診断結果取得手段をさらに有し,
前記コメント作成手段は,前記被験者の前記舌画像又は前記舌に関する診断結果をさらに用いて,前記認知機能に関するコメントを作成する,
認知機能診断装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の認知機能診断装置であって,
前記被験者のBMIの値を取得するBMI取得手段をさらに有し,
前記コメント作成手段は,前記BMI取得手段が取得する前記被験者の前記BMIの値をさらに用いて,前記認知機能に関するコメントを作成する,
認知機能診断装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の認知機能診断装置であって,
前記コメント作成手段は,
前記一般血液検査に含まれる複数の検査項目のいずれが認知機能リスクを高める要因であるかに関する認知機能リスク要因を解析する認知機能リスク解析手段を有し,
前記コメント作成手段は,
前記認知機能リスク解析手段が解析する認知機能リスク要因を用いて,前記認知機能リスク要因と関連して記憶されるコメント文を読み出し,前記コメントを作成する,
認知機能診断装置。
【請求項7】
請求項6に記載の認知機能診断装置であって,
前記コメント作成手段は,
前記一般血液検査の結果に含まれる数値であって,前記認知機能リスク要因に関する数値である認知機能リスク要因値を用いて,前記認知機能リスク要因の目標値を求める特定検査項目目標値取得手段をさらに有する,
認知機能診断装置。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の認知機能診断装置であって,
既往歴,自覚症状,他覚症状,教育歴,社会活動,身長,体重,腹囲,BMI,視力,聴力,血圧,脈拍,尿所見,眼底検査の所見,視野検査の所見,電気生理学的検査の所見,画像診断所見,音声,東洋医学に基づく診察情報,生化学検査データ,血液型,血液凝固因子,血液粘度,遺伝子検査の結果,炎症性バイオマーカーに関する検査結果,及びアルツハイマー病関連バイオマーカーに関する検査結果からなる群より選ばれる少なくとも一つ以上の追加検査項目を取得する追加検査項目取得手段をさらに有し,
前記コメント作成手段は,前記追加検査項目取得手段が取得した前記追加検査項目をさらに用いて,認知機能に関するコメントを作成する認知機能診断装置。
【請求項9】
コンピュータを,
被験者の年齢を示す年齢情報を取得する年齢情報取得手段と,
前記被験者の性別を示す性別情報を取得する性別取得手段と,
前記被験者の一般血液検査の結果を示す血液検査情報を取得する血液検査情報取得手段と,
前記年齢情報取得手段が取得する前記被験者の前記年齢情報と,前記性別取得手段が取得する前記被験者の前記性別情報と,前記液検査情報取得手段が取得する前記被験者の前記血液検査情報とを用いて,認知機能に関するコメントを作成するコメント作成手段と
を有する,認知機能診断装置として機能させるためのプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のプログラムを格納したコンピュータが読み取ることができる情報記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,認知機能に関するコメントを自動的に作成できる認知機能診断装置,及びコンピュータをそのような装置として機能させるためのプログラムなどに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2018-55333号公報には,認知症判定得点算出装置及びそのプログラムが記載されている。上記の認知症判定得点算出装置は,認知症判定得点を得ることができる。しかしながら,その認知症判定得点に基づく判断は,医師により異なるという問題があった。また,上記の認知症判定得点算出装置は,被験者の性別を考慮していないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は,認知機能に関するコメントを自動的に作成できる認知機能診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は,基本的には,血液検査情報のみならず,年齢や性別を考慮するので,年齢や性別を考慮した適切な認知機能に関するコメントを自動的に作成できるという知見に基づく。
【0006】
最初の発明は,認知機能診断装置1に関する。
認知機能診断装置1は,年齢情報取得手段3と,性別取得手段5と,血液検査情報取得手段7と,コメント作成手段9とを有する。
年齢情報取得手段3は,被験者の年齢を示す年齢情報を取得するための要素である。
性別取得手段5は,被験者の性別を示す性別情報を取得するための要素である。
血液検査情報取得手段7は, 被験者の一般血液検査の結果を示す血液検査情報を取得するための要素である。
コメント作成手段9は,年齢情報取得手段3が取得する被験者の年齢情報と,性別取得手段5が取得する被験者の性別情報と,液検査情報取得手段が取得する被験者の血液検査情報とを用いて,認知機能に関するコメントを作成するための要素である。
【0007】
認知機能診断装置1の好ましい例は,コメント作成手段9が,機械学習手段11を有するものである。機械学習手段11は,被験者の年齢情報と,被験者の性別情報と,被験者の血液検査情報とを用いて,認知機能に関するコメントを作成するための要素である。
【0008】
認知機能診断装置1の好ましい例は,コメント作成手段9が,性別及び年齢のいずれか又は両方によって分類される表現辞書13を有する。そして,コメント作成手段9が,認知機能に関するコメントを,表現辞書13に記憶される表現を用いて作成する。
【0009】
認知機能診断装置1の好ましい例は,被験者の舌画像を取得する舌画像取得手段15,又は被験者の舌に関する診断結果を取得する舌診断結果取得手段17をさらに有する。
この例では,コメント作成手段9が,被験者の舌画像又は舌に関する診断結果をさらに用いて,認知機能に関するコメントを作成する。
【0010】
認知機能診断装置1の好ましい例は,被験者のBMIの値を取得するBMI取得手段19をさらに有する。この例では,コメント作成手段9が,BMI取得手段19が取得する被験者のBMIの値をさらに用いて,認知機能に関するコメントを作成する。
【0011】
認知機能診断装置1の好ましい例は,コメント作成手段9が,認知機能リスク解析手段21を有する。そして,認知機能リスク解析手段21は,一般血液検査に含まれる複数の検査項目のいずれが認知機能リスクを高める要因であるかに関する認知機能リスク要因を解析するための要素である。この場合,コメント作成手段9は,認知機能リスク解析手段21が解析する認知機能リスク要因を用いて,認知機能リスク要因と関連して記憶されるコメント文を読み出し,コメントを作成する。
【0012】
コメント作成手段9は,特定検査項目目標値取得手段23をさらに有してもよい。特定検査項目目標値取得手段23は,一般血液検査の結果に含まれる数値であって,認知機能リスク要因に関する数値である認知機能リスク要因値を用いて,認知機能リスク要因の目標値を求めるための要素である。
【0013】
認知機能診断装置1の好ましい例は,追加検査項目取得手段25をさらに有する。
追加検査項目取得手段25は,既往歴,自覚症状,他覚症状,教育歴,社会活動,身長,体重,腹囲,BMI,視力,聴力,血圧,脈拍,尿所見,眼底検査の所見,視野検査の所見,電気生理学的検査の所見,画像診断所見,音声,東洋医学に基づく診察情報,生化学検査データ,血液型,血液凝固因子,血液粘度,遺伝子検査の結果,炎症性バイオマーカーに関する検査結果,及びアルツハイマー病関連バイオマーカーに関する検査結果からなる群より選ばれる少なくとも一つ以上の追加検査項目を取得するための要素である。この場合,コメント作成手段9は,追加検査項目取得手段25が取得した追加検査項目をさらに用いて,認知機能に関するコメントを作成する。
【0014】
この明細書は,コンピュータ(又はプロセッサ)を,上記したいずれかの認知機能診断装置1として機能させるためのプログラムやそのようなプログラムを記憶したコンピュータが読み取ることができる情報記録媒体をも提供する。
このプログラムを実装したコンピュータは,
被験者の年齢を示す年齢情報を取得し,
被験者の性別を示す性別情報を取得し,
被験者の一般血液検査の結果を示す血液検査情報を取得し,
被験者の年齢情報と,被験者の性別情報と,被験者の血液検査情報とを用いて,認知機能に関するコメントを作成する。このプログラムは,コンピュータに上記した工程を実行させるためのプログラムともいえる。
【発明の効果】
【0015】
この発明は,血液検査情報のみならず,年齢や性別を考慮し,適切な認知機能に関するコメントを自動的に作成できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は,認知機能診断装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は,実施例のシステムに入力された血液検査情報の例を示す図である。
【
図3】
図3は,実施例のシステムの出力の例(診断結果レポート)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0018】
認知機能診断装置
認知機能診断装置1は,対象者の認知機能を診断するための装置である。この装置は,コンピュータにより,自動的に各種処理がなされるシステムであることが望ましい。
図1は,認知機能診断装置の構成例を示すブロック図である。
図1に示されるように,認知機能診断装置1は,年齢情報取得手段3と,性別取得手段5と,血液検査情報取得手段7と,コメント作成手段9とを有する。認知機能診断装置1は,舌画像取得手段15,舌診断結果取得手段17,BMI取得手段19,追加検査項目取得手段25のいずれか又は2つ以上の要素をさらに有してもよい。コメント作成手段9は,機械学習手段11,表現辞書13,認知機能リスク解析手段21,及び特定検査項目目標値取得手段23のいずれか又は2つ以上の要素をさらに有してもよい。
【0019】
コンピュータは,入力部,出力部,制御部,演算部及び記憶部を有しており,各要素は,バスなどによって接続され,情報の授受を行うことができるようにされている。例えば,記憶部には,プログラムが記憶されていてもよいし,各種情報が記憶されていてもよい。入力部から所定の情報が入力された場合,制御部は,記憶部に記憶されるプログラムを読み出す。そして,制御部は,適宜記憶部に記憶された情報を読み出し,演算部へ伝える。また,制御部は,適宜入力された情報を演算部へ伝える。演算部は,受け取った各種情報を用いて演算処理を行い,記憶部に記憶する。制御部は,記憶部に記憶された演算結果を読み出して,出力部から出力する。このようにして,各種処理が実行される。この各種処理を実行するものが,各手段である。各手段は,各部のように読み替えてもよい。また,このコンピュータは,各種診断装置と接続されていてもよい。そして,診断装置から各種の情報をこのコンピュータに入力できるようにされていてもよい。
【0020】
年齢情報取得手段
年齢情報取得手段3は,被験者の年齢を示す年齢情報を取得するための要素である。被験者の年齢は,例えば被験者のIDと関連して記憶部に記憶され,操作時に適宜記憶部から読み出され,各種演算に用いられてもよい。また,医療用装置などの外部装置から,被験者の年齢を含む被験者情報が,装置に入力されてもよい。被験者の年齢は,被験者の生年月日に関する情報が装置に入力され,装置の演算部が被験者の年齢情報を取得するものであってもよい。
【0021】
性別取得手段
性別取得手段5は,被験者の性別を示す性別情報を取得するための要素である。性別は,男性及び女性のほか,不明やXジェンダー等であってもよい。被験者の性別情報は,例えば被験者のIDと関連して記憶部に記憶され,操作時に適宜読み出されて,各種演算に用いられてもよい。医療用装置などの外部装置から,被験者の性別を含む被験者情報が,装置に入力されてもよい。
【0022】
血液検査情報取得手段
血液検査情報取得手段7は, 被験者の一般血液検査の結果を示す血液検査情報を取得するための要素である。一般血液検査の結果は,特開2018-55333号公報(特許第6702836号公報)に記載された通りである。一般血液検査の結果には,被験者のID,氏名,年齢,及び各種情報が含まれていてもよい。また,一般血液検査の結果には,一般血液検査の検査項目及び検査項目毎の検査値が含まれる。一般血液検査の結果の例は,白血球数(WBC),MCV,MCH,血小板数(PLT),総たんぱく(TP),アルブミン(Alb),尿酸(UA),尿素窒素(BUN),クレアチニン(Crea),ソディウム(So),及びクロール(Cl)が検査項目として含む。
一般血液検査の結果は,検査項目と,検査項目ごとの基準値と,検査値と,基準値及び検査値の単位とが,互いに対応づけられている。
【0023】
コメント作成手段
コメント作成手段9は,年齢情報取得手段3が取得する被験者の年齢情報と,性別取得手段5が取得する被験者の性別情報と,液検査情報取得手段が取得する被験者の血液検査情報とを用いて,認知機能に関するコメントを作成するための要素である。コメントは,評価点や評価のみならず,認知機能に関する文章を含むものである。コメントは,栄養学的なコメント及び理学的なコメントのいずれか又は両方であってもよい。コメント作成手段は,例えば特開2018-55333号公報(特許第6702836号公報)に記載されたように認知症判定得点を求めてた後に作成されてもよい。この場合,コメント作成手段9は,認知症判定得点と関連して記憶部に記憶されるコメントを読み出して,認知機能に関するコメントを作成してもよい。こようにするために装置1は,認知症判定得点算出部をさらに有すればよい。コメントは,システムに医師や管理栄養士の端末から了承した旨の入力がなされた後に,被験者に向けて最終的に出力されるようにしてもよい。
【0024】
機械学習手段
認知機能診断装置1の好ましい例は,コメント作成手段9が,機械学習手段11を有するものである。機械学習手段11は,被験者の年齢情報と,被験者の性別情報と,被験者の血液検査情報とを用いて,認知機能に関するコメントを作成するための要素である。機械学習手段11は,たとえば,あらかじめ認知機能診断が行われた複数の対象者について,対象者の年齢,性別及び血液検査情報を認知機能診断とともに記憶する。そして,機械学習手段11は,記憶した複数の対象者の年齢,性別,血液検査情報及び認知機能診断結果の関係を学習する。すると,機械学習手段11に験者の年齢情報と,被験者の性別情報と,被験者の血液検査情報とが入力されると,すでに学習したモデルをパターンマッチング等することにより,被験者の認知機能を診断することができる。そして,コメント作成手段9は,機械学習手段11により得られた被験者の認知機能の診断結果に基づいて,被験者の認知機能に関するコメントを作成する。
【0025】
表現辞書
認知機能診断装置1の好ましい例は,コメント作成手段9が,性別及び年齢のいずれか又は両方によって分類される表現辞書13を有する。そして,コメント作成手段9が,認知機能に関するコメントを,表現辞書13に記憶される表現を用いて作成する。認知機能診断の結果は,デリケートな側面を有する。このため,年齢や性別に応じたコメントを出力することが望ましい。例えば,所定の年齢以上の被験者は,視力が悪いため,コメントの文字の大きさを大きくすることが望ましい。例えば,被験者が男性の場合は,女性特有の疾患についてコメントをする必要がない。さらに,例えば,中性の性別を有する被験者に対しては,適切な表現を考える必要がある。このため,この例では,コメントの表現を調整するための情報を記憶した表現辞書13に記憶される各種情報を読み出して,被験者に対応したコメントを作成する。また,例えば,被験者が男性の場合,コメントの文体を女性文とすることで,コメントへの興味をひくことができ,治療効果を上げることができることがある。
【0026】
舌画像取得手段・舌診断結果取得手段
認知機能診断装置1の好ましい例は,被験者の舌画像を取得する舌画像取得手段15,又は被験者の舌に関する診断結果を取得する舌診断結果取得手段17をさらに有する。例えば,特開2015-226154号公報や,特開2013-017660号公報(特許第5385948号公報)には,舌画像を用いて各種診断を行う装置が記載されている。認知機能診断装置1の好ましい例は,このような装置と接続されているか,このような装置に用いられるプログラムを記憶部が記憶し,被験者の舌画像や被験者の舌に関する診断結果を装置内に入力するものである。特に,研究の結果,舌画像を機械学習の一要素とすることで,確度よく認知機能を診断できるという知見を得ることができた。特に脳機能を診断する際に舌を診断することは行われない。しかしながら,上記の知見のため,この好ましいシステムは,確度よく認知機能を診断できる。この場合,機械学習手段は,複数の対象者の年齢,性別,血液検査情報,舌画像及び認知機能診断結果の関係を記憶し,パターンマッチングを行う。なお,機械学習手段が,複数の対象者の年齢,性別,舌画像及び認知機能診断結果の関係を記憶し,血液検査情報を用いずに,パターンマッチングを行うものは,この明細書に記載されたこれまで説明したとは別の発明である。この例では,コメント作成手段9が,被験者の舌画像又は舌に関する診断結果をさらに用いて,認知機能に関するコメントを作成する。機械学習手段が,上記した各種情報に加えて,被験者の舌画像又は舌に関する診断結果を用いて,被験者の認知機能の診断結果を得ることができるようにされていてもよいし,コメント作成手段9が得られた被験者の認知機能の診断結果に基づいてコメントを作成することができるようにされていてもよい。各種情報は例えば記憶部に記憶されており,被験者の認知機能の診断結果を用いて,記憶部からコメント文を読み出すことができるようにされていてもよい。また,読み出したコメント文の部分を組み合わせて,コメント文全体を出力できるようにされていてもよい。
【0027】
BMI取得手段
認知機能診断装置1の好ましい例は,被験者のBMIの値を取得するBMI取得手段19をさらに有する。BMIの値は,ボディマス指数ともよばれ,肥満度を表す数値である。BMIの値は,被験者の身長と体重が装置内に入力され,演算処理によりBMI値が求められることにより,BMI値が装置内に入力されるものであってもよい。被験者のBMIの値は,例えば被験者のIDと関連して記憶部に記憶され,操作時に適宜読み出されて,各種演算に用いられてもよい。医療用装置などの外部装置から,被験者のBMIの値を含む被験者情報が,装置に入力されてもよい。そして,コメント作成手段9は,BMI取得手段19が取得する被験者のBMIの値をさらに用いて,認知機能に関するコメントを作成する。機械学習手段が,上記した各種情報に加えて,被験者のBMIの値を用いて,被験者の認知機能の診断結果を得ることができるようにされていてもよいし,コメント作成手段9が得られた被験者の認知機能の診断結果に基づいてコメントを作成することができるようにされていてもよい。各種情報は例えば記憶部に記憶されており,被験者の認知機能の診断結果を用いて,記憶部からコメント文を読み出すことができるようにされていてもよい。また,読み出したコメント文の部分を組み合わせて,コメント文全体を出力できるようにされていてもよい。
【0028】
認知機能リスク解析手段
認知機能診断装置1の好ましい例は,コメント作成手段9が,認知機能リスク解析手段21を有する。そして,認知機能リスク解析手段21は,一般血液検査に含まれる複数の検査項目のいずれが認知機能リスクを高める要因であるかに関する認知機能リスク要因を解析するための要素である。例えば,特許第6181134号には,要因解析装置,要因解析方法及びプログラムが記載されている。この要因解析装置は,事象と,事象の要因となる一または複数の因子とが対応付けられたデータから,事象の発生に応じて組み合わせデータの抽出を行う抽出部と, 組み合わせデータに含まれる事象と因子との組合せに基づいて,事象の発生数または複数の因子の組み合わせの発生数を集計する集計部と, 集計部による集計結果に基づいて,事象と因子との組み合わせに対応し,事象と因子との組み合わせの発生数に応じて変化する指標値を算出する算出部と, 事象と因子との組み合わせごとに算出部により算出された指標値を示す画像であって,事象と因子との組み合わせに対応付けられた画像を生成する生成部と,を備える要因解析装置である。
【0029】
認知機能リスク解析手段は,項目をN個とすると,項目を1つずつ欠損させて,N-1回パターンマッチング解析を行い,全項目の判定結果と分布を得て,欠損した項目についての変動を標準化することで項目ごとの寄与度を求める方法を採用してもよい。このようにすれば,認知機能リスク解析手段に入力される項目の寄与度を解析できる。
認知機能診断装置1においても,公知の要因解析装置を採用することで,一般血液検査に含まれる複数の検査項目のいずれが認知機能リスクを高める要因であるかに関する要因解析を行うことができる。この場合,コメント作成手段9は,認知機能リスク解析手段21が解析する認知機能リスク要因を用いて,認知機能リスク要因と関連して記憶されるコメント文を読み出し,コメントを作成する。
【0030】
例えば,寄与度の高い項目がHbA1Cである場合,糖尿病が認知機能リスク要因であることが考えられる。また,寄与度の高い項目がヘモグロビン濃度である場合,貧血が認知機能リスク要因であることが考えられる。このため,コメント作成手段9は,糖尿病を改善すること(認知機能リスク要因を改善すること)に関連して記憶部に記憶されているコメント文又はコメントの要素を読み出して,コメントを出力すればよい。記憶部は,各種の認知機能リスク要因又は認知機能リスク要因と関連した疾患と関連したコメント文又はコメントの要素が記憶されており,コメント作成手段9は,適宜これらの情報を読み出すことで,コメントを出力すればよい。例えば,医師が認知機能に関する診断に基づいて要因を解析すると,血液検査で最も異常値が大きい要素に注目する。一方,血液検査では,正常値を示す検査項目であっても,被験者によっては,その検査項目が認知機能に関する影響を与える場合もある。この好ましい例は,先入観を排除して,自動的に認知症に関するリスク要因を解析するので,通常の血液検査では最も大きな異常値とならない検査項目であってもリスクを解析できる。そして,この例では,その回析した要因に関するコメント文を得て,適切なコメントを作成できる。
【0031】
特定検査項目目標値取得手段
コメント作成手段9は,特定検査項目目標値取得手段23をさらに有してもよい。特定検査項目目標値取得手段23は,一般血液検査の結果に含まれる数値であって,認知機能リスク要因に関する数値である認知機能リスク要因値を用いて,認知機能リスク要因の目標値を求めるための要素である。認知機能リスク要因の目標値とは,被験者の現状(年齢,性別,認知機能リスク要因の現在の数値)などを踏まえて,短期的,中長期的に達成することが望まれる認知機能リスク要因の数値である。この認知機能リスク要因の目標値が示されることで,被験者も具体的な目標に向けて,生活を変えることができる。特定検査項目目標値取得手段23は,例えば,機械学習手段を有しており,過去の同様の例に基づき,どのような数値を目標とした場合に,過去の被験者の状況が改善(又は悪化の程度が緩和)したかについての情報に基づいて,適切な数値を出力できるようにされていてもよい。
【0032】
追加検査項目取得手段
認知機能診断装置1の好ましい例は,追加検査項目取得手段25をさらに有する。追加検査項目取得手段25は,追加検査項目を取得するための要素である。被験者の追加検査項目は,例えば被験者のIDと関連して記憶部に記憶され,操作時に適宜記憶部から読み出され,各種演算に用いられてもよい。また,医療用装置などの外部装置から,被験者の追加検査項目を含む被験者情報が,装置に入力されてもよい。追加検査項目の例は,既往歴,自覚症状,他覚症状,教育歴,社会活動,身長,体重,腹囲,BMI,視力,聴力,血圧,脈拍,尿所見,眼底検査の所見,視野検査の所見,電気生理学的検査の所見,画像診断所見,音声,東洋医学に基づく診察情報,生化学検査データ,血液型,血液凝固因子,血液粘度,遺伝子検査の結果,炎症性バイオマーカーに関する検査結果,及びアルツハイマー病関連バイオマーカーに関する検査結果からなる群より選ばれる少なくとも一つ以上の項目である。この場合,コメント作成手段9は,追加検査項目取得手段25が取得した追加検査項目をさらに用いて,認知機能に関するコメントを作成する。機械学習手段が,上記した各種情報に加えて,被験者の追加検査項目の値を用いて,被験者の認知機能の診断結果を得ることができるようにされていてもよいし,コメント作成手段9が得られた被験者の認知機能の診断結果に基づいてコメントを作成することができるようにされていてもよい。各種情報は例えば記憶部に記憶されており,被験者の認知機能の診断結果を用いて,記憶部からコメント文を読み出すことができるようにされていてもよい。また,読み出したコメント文の部分を組み合わせて,コメント文全体を出力できるようにされていてもよい。
【0033】
この明細書は,コンピュータ(又はプロセッサ)を,上記したいずれかの認知機能診断装置1として機能させるためのプログラムやそのようなプログラムを記憶したコンピュータが読み取ることができる情報記録媒体をも提供する。情報記録媒体の例は,CD-ROM,DVD,USBメモリ,ハードディスク,及びフロッピーディスクである。
このプログラムを実装したコンピュータ(又はプロセッサ)は,
被験者の年齢を示す年齢情報を取得し,
被験者の性別を示す性別情報を取得し,
被験者の一般血液検査の結果を示す血液検査情報を取得し,
被験者の年齢情報と,被験者の性別情報と,被験者の血液検査情報とを用いて,認知機能に関するコメントを作成する。このコンピュータは,上記した各手段を用いた各工程を実装するものであってもよい。
【実施例0034】
以下,実施例を用いて,この発明を具体的に説明する。しかしながら,この発明は,以下の実施例に限定されるものではない。
【0035】
1.システム概要
本システムは,健康診断等のデータを用いて,認知症のリスク判定を行い,さらにそのリスクに寄与する健康診断等の項目を特定し,それらを改善するための栄養学的・理学的なコメントを付与して返却するものである。
健康診断等のデータには年齢・性別・BMI・血液検査データ・既往歴・喫煙歴等が含まれる。欠損する項目があってもよい。
【0036】
2.システム構成
本システムは判定部と要因分析部と結果返却部にわかれる。
判定部は健康診断等のデータを用いて,認知症のリスク判定としてMMSEスコアを返却する。具体的には,健康診断等のデータ及びMMSE実測値を教師データとして与えた機械学習によって,当該健康診断等のデータを入力するとMMSEの予測値を返却する判定アルゴリズムである。
要因分析部は上記判定部に基づき,入力データのうちどの項目が判定結果を悪化させているかを分析する。具体的には,判定部に対して,入力データを一つずつ欠損させ,判定結果の悪化率を標準化して降順に並び替えて返却する
結果返却部は要因分析部の結果を受けて,各項目に対する栄養学的,理学的なコメントを付加するものである。
【0037】
3.各部詳細
判定部は,健康診断等のデータ及びMMSE実測値を教師データとして与えた機械学習によって,アルゴリズムを生成する。各健康診断の項目を正規化,標準化する際に重みづけ係数を用いて行う。重みづけ係数を変更しながら,リーブワンアウト方式で検証を繰り返し,最も精度が高くなる最適な重みづけ係数を探索する。その最適な重みづけ係数を用いて正規化,標準化したアルゴリズムを判定部に用いる。
【0038】
要因分析部は,シャープレイの手法を用いて行う。当該被験者の健康診断等データを受けて,判定部が判定を返却したのち,当該データと判定を入力として,健康診断等データを一つずつ欠損させ,判定結果の変化率を記録する。欠損時に判定が最も良化する項目が,最も判定に影響を与え,改善の必要がある項目であるため,変化率を標準化して返却する。
【0039】
結果返却部は,要因分析部の結果を受けて,各項目について,あらかじめ生成しておいた項目ごとの改善アドバイスを判定に紐づける・この際,年齢や性別など,改善の余地のない項目については,判定への貢献度が高くとも除外する。
【0040】
図2は,実施例のシステムに入力された血液検査情報の例を示す図である。
図3は,実施例のシステムの出力の例(診断結果レポート)を示す図である。
図3に示されるように,このシステムに,被験者の情報や血液検査情報が入力されると,認知症将来リスク判定結果,判定コメントに合わせて,管理栄養士コメントが出力されている。この例では,これらのコメントをいったんデータとして出力する。そして,医師及び管理栄養士がチェックし,医師及び管理栄養士の端末からチェックした旨の入力がなされると,システムが診断結果レポートを出力する。この例では,このシステムに基づいて,コメントが出力されるので,医師及び管理栄養士の作業が軽減されることとなるし,医師及び管理栄養士では見抜けない要因分析などを効果的に行うことができることとなる。