(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092402
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】モノオルソポリ塩化ビフェニル類含有脂肪族炭化水素溶媒溶液の処理器具
(51)【国際特許分類】
B01J 20/282 20060101AFI20230626BHJP
B01J 20/281 20060101ALI20230626BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
B01J20/282 J
B01J20/281 G
G01N30/88 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207623
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099841
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 恒彦
(72)【発明者】
【氏名】松平 祐子
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 健治
(57)【要約】
【課題】脂肪族炭化水素溶媒溶液に含まれるモノオルソPCBsとパラフィン系夾雑物とを分離する。
【解決手段】第3カラム30に充填された処理層300は、モノオルソPCBsを吸着可能な活性炭とその分散媒である活性シリカゲル等との均一な混合物を用いて形成されたものであり、活性炭の濃度が互いに異なる第1分散媒層310と第2分散媒層320とを積層状態で配置したものである。モノオルソPCBsとパラフィン系物質とを含む脂肪族炭化水素溶媒溶液を第2カラム20から処理層300に供給して通過させると、脂肪族炭化水素溶媒溶液中のモノオルソPCBsは処理層300中の活性炭に吸着され、処理層300に残留する。一方、脂肪族炭化水素溶媒溶液中のパラフィン系物質は、処理層300を通過し、第3カラム30から排出される。この結果、脂肪族炭化水素溶媒溶液中のモノオルソPCBsとパラフィン系夾雑物とが分離される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族炭化水素溶媒溶液に含まれるモノオルソポリ塩化ビフェニル類とパラフィン系夾雑物とを分離するための処理器具であって、
両端が開口する管体と、
活性炭と、前記活性炭の分散媒とを含む、前記管体内に充填された処理層と、
を含み、
前記処理層は、前記管体の開口方向に順に配置された前記活性炭の濃度が異なる複数の分散媒層を含む、
モノオルソポリ塩化ビフェニル類含有脂肪族炭化水素溶媒溶液の処理器具。
【請求項2】
前記活性炭は比表面積が700~1,600m2/gでありかつ平均ミクロ孔径が0.5~1.0nmの粒状の活性炭である、請求項1に記載のモノオルソポリ塩化ビフェニル類含有脂肪族炭化水素溶媒溶液の処理器具。
【請求項3】
前記処理層は、前記活性炭の濃度が0.13~0.2質量%の第1分散媒層と、前記活性炭の濃度が2.0~3.0質量%の第2分散媒層とを含む、請求項2に記載のモノオルソポリ塩化ビフェニル類含有脂肪族炭化水素溶媒溶液の処理器具。
【請求項4】
前記分散媒がシリカゲルおよびケイ酸マグネシウムのうちの少なくとも一つである、請求項1から3のいずれかに記載のモノオルソポリ塩化ビフェニル類含有脂肪族炭化水素溶媒溶液の処理器具。
【請求項5】
脂肪族炭化水素溶媒溶液に含まれるモノオルソポリ塩化ビフェニル類とパラフィン系夾雑物とを分離するための処理方法であって、
請求項1から4のいずれかに記載の処理器具の処理層に前記脂肪族炭化水素溶媒溶液を通過させる工程を含む、
モノオルソポリ塩化ビフェニル類含有脂肪族炭化水素溶媒溶液の処理方法。
【請求項6】
請求項3に記載の処理器具を用い、前記処理層の第1分散媒層と第2分散媒層との順に前記脂肪族炭化水素溶媒溶液を通過させる、請求項5に記載のモノオルソポリ塩化ビフェニル類含有脂肪族炭化水素溶媒溶液の処理方法。
【請求項7】
ダイオキシン類溶液に含まれるダイオキシン類を分画するための方法であって、
硝酸銀シリカゲル層と硫酸シリカゲル層とを含む精製層に前記ダイオキシン類溶液を添加する工程と、
前記ダイオキシン類溶液を添加した前記精製層へ脂肪族炭化水素溶媒を供給して通過させる工程と、
前記精製層を通過した前記脂肪族炭化水素溶媒を活性炭含有吸着層へ供給して通過させる工程と、
前記活性炭含有吸着層を通過した前記脂肪族炭化水素溶媒を請求項1から4のいずれかに記載の処理器具の処理層へ供給して通過させる工程と、
を含み、
前記活性炭含有吸着層として、前記処理層に含まれる活性炭よりも平均ミクロ孔径が大きな活性炭を含むものを用いる、
ダイオキシン類の分画方法。
【請求項8】
前記活性炭含有吸着層は、比表面積が700~1,600m2/gでありかつ平均ミクロ孔径が1.0~2.0nmの粒状の活性炭と、前記活性炭の分散媒とを含み、前記活性炭の濃度が0.75~1.0質量%に設定されている、請求項7に記載のダイオキシン類の分画方法。
【請求項9】
請求項3に記載の処理器具を用い、前記処理層の第1分散媒層と第2分散媒層との順に前記活性炭含有吸着層を通過した前記脂肪族炭化水素溶媒溶液を通過させる、請求項8に記載のダイオキシン類の分画方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノオルソポリ塩化ビフェニル類含有脂肪族炭化水素溶媒溶液の処理器具、特に、脂肪族炭化水素溶媒溶液に含まれるモノオルソポリ塩化ビフェニル類とパラフィン系夾雑物とを分離するための処理器具に関する。
【背景技術】
【0002】
毒性の強い物質であるダイオキシン類による環境汚染の懸念から、廃棄物焼却施設からの排気ガス、大気、工場排水、海洋水、河川水、湖沼水、廃棄物焼却施設において発生する飛灰(フライアッシュ)、土壌および浚渫土などについてダイオキシン類による汚染状況の分析および評価が求められている。
【0003】
ダイオキシン類は、一般に、ポリ塩化ジベンゾパラジオキシン(PCDDs)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFs)およびダイオキシン様ポリ塩化ビフェニル(DL-PCBs)を総称する用語である。DL-PCBsは、ポリ塩化ビフェニル類(PCBs)の209種類の同族体のうち、PCDDsおよびPCDFsと同様の毒性を示すPCBsを示す用語であり、ノンオルソポリ塩化ビフェニル類(ノンオルソPCBs)およびモノオルソポリ塩化ビフェニル類(モノオルソPCBs)を含む。
【0004】
大気や土壌等の環境試料についてダイオキシン類による汚染を評価する際には、試料からダイオキシン類を抽出し、分析用試料を確保する。ここで、試料が土壌等の固形物の場合、例えば、ソックスレー抽出法により固形物からダイオキシン類を抽出し、これを分析用試料とする。また、試料が大気や工場排水等の流体の場合、先ず、ダイオキシン類の採取に適したフイルタを用いて流体中のダイオキシン類を捕捉して採取する。そして、フイルタに採取されたダイオキシン類を溶媒により抽出し、これを分析用試料とする。このようにして得られた分析用試料をガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS)等の分析装置に適用すると、ダイオキシン類による環境試料の汚染状況を定量的に分析・評価することができる。
【0005】
ところが、ダイオキシン類の分析用試料をGC/MS、特に、高分解能GC/MSにより分析したとき、モノオルソPCBsがPCDDsおよびPCDFsの定量分析結果に影響し、また、PCDDsおよびPCDFsがモノオルソPCBsの定量分析結果に影響する可能性があることから、分析結果の信頼性に疑いの生じることがある。そこで、ダイオキシン類の分析においては、分析用試料をPCDDsおよびPCDFsを含む画分とモノオルソPCBsを含む画分とに分画し、各画分を個別に分析することが試みられている。
【0006】
例えば、特許文献1は、両端が開放された管体内に、活性炭含有シリカゲル層、グラファイト含有シリカゲル層およびアルミナ層をこの順に含む吸着層を充填したダイオキシン類の分画器具が記載されている。この分画器具を用いてダイオキシン類の分析用試料に含まれるダイオキシン類を分画するときは、活性炭含有シリカゲル層に分析用試料を注入し、続いて活性炭含有シリカゲル層へダイオキシン類を溶解可能な脂肪族炭化水素溶媒を供給する。供給された脂肪族炭化水素溶媒は分析用試料中のダイオキシン類を溶解し、吸着層を通過する。この際、ダイオキシン類のうち、ノンオルソPCBs、PCDDsおよびPCDFsを含むダイオキシン群が活性炭含有シリカゲル層またはグラファイト含有シリカゲル層に吸着され、モノオルソPCBsがアルミナ層に吸着されることから、分析用試料に含まれるダイオキシン類は、ノンオルソPCBs、PCDDsおよびPCDFsを含むダイオキシン群とモノオルソPCBsとに分画される。そして、活性炭含有シリカゲル層およびグラファイト含有シリカゲル層に吸着されたノンオルソPCBs、PCDDsおよびPCDFsを含むダイオキシン群の抽出液とアルミナ層に吸着されたモノオルソPCBsの抽出液とを個別に分析すると、分析用試料に含まれるダイオキシン類を高精度に分析可能である。
【0007】
ダイオキシン類の分析用試料は、その調製過程において様々な夾雑物が混入する。特に、環境試料はパラフィン系の夾雑物を含むことが多く、それが分析用試料に混入することが多い。パラフィン系夾雑物が混入した分析用試料を上述の分画器具を用いて分画すると、パラフィン系夾雑物は、脂肪族炭化水素溶媒とともに活性炭含有シリカゲル層およびグラファイト含有シリカゲル層を通過し、アルミナ層において捕捉される。したがって、アルミナ層からのモノオルソPCBsの抽出液は、パラフィン系夾雑物の混入を避け難い。モノオルソPCBsの抽出液に混入したパラフィン系夾雑物は、モノオルソPCBsの分析精度を損なう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、脂肪族炭化水素溶媒溶液に含まれるモノオルソPCBsとパラフィン系夾雑物とを分離しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、脂肪族炭化水素溶媒溶液に含まれるモノオルソPCBsとパラフィン系夾雑物とを分離するための処理器具に関するものである。この処理器具は、両端が開口する管体、および、活性炭と、当該活性炭の分散媒とを含む、管体内に充填された処理層を含む。処理層は、管体の開口方向に順に配置された活性炭の濃度が異なる複数の分散媒層を含む。
【0011】
この処理器具の処理層へ脂肪族炭化水素溶媒溶液を供給して通過させると、脂肪族炭化水素溶媒溶液中のモノオルソPCBsは処理層の活性炭に吸着され、処理層に残留する。一方、脂肪族炭化水素溶媒溶液中のパラフィン系夾雑物は、処理層を通過し、処理器具から排出される。これにより、脂肪族炭化水素溶媒溶液中のモノオルソPCBsとパラフィン系夾雑物とが分離される。
【0012】
本発明の処理器具において、処理層の活性炭は、通常、比表面積が700~1,600m2/gでありかつ平均ミクロ孔径が0.5~1.0nmの粒状の活性炭である。この場合、処理層の一形態は、活性炭の濃度が0.13~0.2質量%の第1分散媒層と、活性炭の濃度が2.0~3.0質量%の第2分散媒層とを含む。
【0013】
本発明の処理器具において、処理層の分散媒は、例えば、シリカゲルおよびケイ酸マグネシウムのうちの少なくとも一つである。
【0014】
他の観点に係る本発明は、脂肪族炭化水素溶媒溶液に含まれるモノオルソポリ塩化ビフェニル類とパラフィン系夾雑物とを分離するための処理方法に関する。この処理方法は、本発明に係る処理器具の処理層に脂肪族炭化水素溶媒溶液を通過させる工程を含む。
【0015】
本発明に係る処理方法の一形態は、本発明に係る処理器具として処理層における活性炭の濃度が0.13~0.2質量%の第1分散媒層と、活性炭の濃度が2.0~3.0質量%の第2分散媒層とを含む上述の形態のものを用い、処理層の第1分散媒層と第2分散媒層との順に前記脂肪族炭化水素溶媒溶液を通過させる。
【0016】
さらに他の観点に係る本発明は、ダイオキシン類溶液に含まれるダイオキシン類を分画するための方法に関する。この分画方法は、硝酸銀シリカゲル層と硫酸シリカゲル層とを含む精製層にダイオキシン類溶液を添加する工程と、ダイオキシン類溶液を添加した精製層へ脂肪族炭化水素溶媒を供給して通過させる工程と、精製層を通過した脂肪族炭化水素溶媒を活性炭含有吸着層へ供給して通過させる工程と、活性炭含有吸着層を通過した脂肪族炭化水素溶媒を本発明に係る処理器具の処理層へ供給して通過させる工程とを含む。この分画方法では、活性炭含有吸着層として、処理器具の処理層に含まれる活性炭よりも平均ミクロ孔径が大きな活性炭を含むものを用いる。
【0017】
この分画方法において、精製層に添加されたダイオキシン類溶液は、脂肪族炭化水素溶媒が供給されることで精製層を通過する際に夾雑物の一部が分解または捕捉され、脂肪族炭化水素溶媒にダイオキシン類が溶解した状態で活性炭含有吸着層および処理層の順に通過する。この際、脂肪族炭化水素溶媒に含まれるダイオキシン類のうちのノンオルソPCBs、PCDDsおよびPCDFsを含むダイオキシン群が活性炭含有吸着層により捕捉され、モノオルソPCBsが処理層において捕捉される。また、ダイオキシン類溶液に含まれるパラフィン系夾雑物は、脂肪族炭化水素溶媒に溶解した状態で活性炭含有吸着層および処理層を通過し、ダイオキシン類から分離される。
【0018】
本発明に係る分画方法の一形態において用いられる活性炭含有吸着層は、比表面積が700~1,600m2/gでありかつ平均ミクロ孔径が1.0~2.0nmの粒状の活性炭と、当該活性炭の分散媒とを含み、活性炭の濃度が0.75~1.0質量%に設定されている。
【0019】
本発明に係る分画方法の一形態では、本発明に係る処理器具として処理層における活性炭の濃度が0.13~0.2質量%の第1分散媒層と、活性炭の濃度が2.0~3.0質量%の第2分散媒層とを含む上述の形態のものを用い、処理層の第1分散媒層と第2分散媒層との順に活性炭含有吸着層を通過した脂肪族炭化水素溶媒溶液を通過させる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の処理器具および処理方法は、脂肪族炭化水素溶媒溶液に含まれるモノオルソPCBsとパラフィン系夾雑物とを分離することができる。
【0021】
本発明に係るダイオキシン類の分画方法は、ダイオキシン類溶液に含まれるダイオキシン類をノンオルソPCBs、PCDDsおよびPCDFsを含むダイオキシン群と、パラフィン系夾雑物の混入を抑えたモノオルソPCBsとに分画することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係るモノオルソPCBs含有脂肪族炭化水素溶媒溶液の処理器具を用いたダイオキシン類の分画器の一形態の概要縦断面図。
【
図2】実験例4~7のそれぞれについて、モノオルソPCBsの回収率を示すグラフ。
【
図3】実験例4~7のそれぞれについて、モノオルソPCBsの抽出液について測定したスキャンクロマトグラム。
【
図4】実験例8~12のそれぞれにおけるダイオキシン類の回収率を示すグラフ。
【
図5】実験例13におけるノンオルソPCBsの回収率を示すグラフ。
【
図6】実験例14におけるノンオルソPCBsの回収率を示すグラフ。
【
図7】実験例14で得られた第1分析用試料および第2分析用試料のクロマトグラム。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係るモノオルソPCBs含有脂肪族炭化水素溶媒溶液の処理器具の一形態を用いたダイオキシン類の分画方法を説明する。この分画方法は、環境試料についてダイオキシン類による汚染状況を分析、評価するために、環境試料から調製したダイオキシン類溶液に含まれるダイオキシン類をノンオルソPCBs、PCDDsおよびPCDFsを含むダイオキシン群とモノオルソPCBsとに分画するためのものである。
【0024】
環境試料は、ダイオキシン類による汚染状況等の評価を必要とするもの、例えば、底質や土壌等の水圏底部若しくは陸上表面の物質層、河川水、湖沼水および地下水などの環境水、工業排水や生活排水等の排水、電気絶縁油、焼却施設において産出される焼却灰、または、環境大気や焼却施設から排出される排ガス等である。環境試料が固体状や液状の場合、ダイオキシン類溶液は、種々の固液抽出法や液液抽出法から適宜抽出法を選択することで対象の環境試料から調製することができる。また、環境試料が気体状の場合、気体中の含有物をフイルタ等により捕集し、このフイルタ等に対して固液抽出法を適用することで目的のダイオキシン類溶液を調製することができる。
【0025】
ダイオキシン類溶液を調製するための抽出用の溶媒は、ダイオキシン類を溶解可能なものであれば特に限定されるものではなく、通常は有機溶媒である。有機溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素溶媒、特に、n-ヘキサン、イソオクタン、ノナン若しくはデカンなどの炭素数が5~10の無極性の脂肪族炭化水素溶媒、トルエン若しくはキシレンなどの芳香族炭化水素溶媒またはアセトン、ジエチルエーテル若しくはジクロロメタンなどの極性有機溶媒が用いられる。なお、芳香族炭化水素溶媒を用いることで得られた抽出液は、溶媒を上述の脂肪族炭化水素溶媒に置換してダイオキシン類溶液として用いるのが好ましい。
【0026】
ダイオキシン類溶液は、通常、ダイオキシン類による汚染状況等の評価を必要とする環境試料に由来する種々の夾雑物、例えば、ハロゲン化ジフェニルエーテル類(PCDEs)等の多環芳香族炭化水素類やパラフィン系物質をダイオキシン類とともに含む。PCDEsは、PCDFsの分析結果に影響する夾雑物であり、パラフィン系物質(特に、炭素数が20以上の炭化水素。)はモノオルソPCBsの分析結果に影響する夾雑物である。
【0027】
図1を参照し、本発明に係るモノオルソPCBs含有脂肪族炭化水素溶媒溶液の処理器具の一形態を用いたダイオキシン類の分画器を説明する。図において、分画器1は、主に、第1カラム10と、第1カラム10に対して一連の流路系が形成されるように連結された第2カラム20と、第2カラム20に対して一連の流路系が形成されるように連結された第3カラム30(本発明に係るモノオルソPCBs含有脂肪族炭化水素溶媒溶液の処理器具の一形態)とを備えており、起立状態に設置されている。
【0028】
第1カラム10は、両端が開口した円筒状の部材であり、少なくとも耐溶媒性、耐薬品性および耐熱性を有する材料、例えば、これらの特性を備えたガラス、樹脂または金属により形成されたものである。第1カラム10は、図の下端部分の外周面に第2カラム20に対して連結するための螺子部(図示省略)を有しており、内部に精製層100が充填されている。精製層100は、ダイオキシン類溶液に含まれる夾雑物の一部を処理するためのもの、例えば、夾雑物を分解したり夾雑物またはその分解生成物を捕捉したりするためのものであり、第1カラム10内において下方に向けて順に硝酸銀シリカゲル層110と硫酸シリカゲル層120とをこの順に積層状態で配置した多層シリカゲル層である。
【0029】
硝酸銀シリカゲル層110は、硝酸銀シリカゲルにより形成される層である。ここで用いられる硝酸銀シリカゲルは、粒径が40~210μm程度の粒状のシリカゲル(通常は加熱により活性度を高めた活性シリカゲル)の表面に硝酸銀の水溶液を均一に添加した後、減圧加熱により水分を除去することで調製されたものである。シリカゲルに対する硝酸銀の担持量は、通常、シリカゲルの質量基準で5~20%に設定するのが好ましい。この担持量が5%未満の場合、硝酸銀シリカゲル層110において夾雑物の処理効果が低下する可能性がある。逆に、20%を超える場合、硝酸銀シリカゲル層110において銀イオン量が多くなることからダイオキシン類が捕捉されやすくなり、ダイオキシン類溶液に含まれるダイオキシン類の一部を逸失する可能性がある。
【0030】
硝酸銀シリカゲル層110の含水率は、一般にはシリカゲルの質量基準で2~10%に設定するのが好ましく、3.5~5%に設定するのがより好ましい。含水率が2%以下の場合、硝酸銀シリカゲル層110において銀イオンの活性が高まることからダイオキシン類が捕捉されやすくなり、ダイオキシン類溶液に含まれるダイオキシン類の一部を逸失する可能性がある。逆に、含水率が10%を超える場合、硝酸銀シリカゲル層110において夾雑物の処理効果が低下する可能性がある。
【0031】
硝酸銀シリカゲル層110における硝酸銀シリカゲルの充填密度は、特に限定されるものではないが、通常、0.3~0.8g/cm3に設定するのが好ましく、0.4~0.7g/cm3に設定するのがより好ましい。この密度が0.3g/cm3未満の場合、夾雑物の処理効率が低下する可能性がある。逆に、この密度が0.8g/cm3を超える場合、後記する脂肪族炭化水素溶媒が精製層100を通過しにくくなる。
【0032】
硫酸シリカゲル層120は、硫酸シリカゲルにより形成される層である。ここで用いられる硫酸シリカゲルは、粒径が40~210μm程度の粒状のシリカゲル(通常は加熱により活性度を高めた活性シリカゲル)の表面に濃硫酸を均一に添加することで調製されたものである。シリカゲルに対する濃硫酸の添加量は、通常、シリカゲルの質量の10~60%に設定するのが好ましい。
【0033】
硫酸シリカゲル層120における硫酸シリカゲルの充填密度は、特に限定されるものではないが、通常、0.3~1.1g/cm3に設定するのが好ましく、0.5~1.0g/cm3に設定するのがより好ましい。この密度が0.3g/cm3未満の場合、夾雑物の処理効率が低下する可能性がある。逆に、この密度が1.1g/cm3を超える場合、後記する脂肪族炭化水素溶媒が精製層100を通過しにくくなる。
【0034】
精製層100において、硝酸銀シリカゲル層110と硫酸シリカゲル層120との比率は、硝酸銀シリカゲル層110に対する硫酸シリカゲル層120の質量比を1.0~50倍に設定するのが好ましく、3.0~30倍に設定するのがより好ましい。硫酸シリカゲル層120の質量比が50倍を超えるときは、硝酸銀シリカゲル層110の割合が相対的に小さくなるため、精製層100においてダイオキシン類溶液に含まれる夾雑物の処理能、特に夾雑物の吸着能が不十分になる可能性がある。逆に、硫酸シリカゲル層120の質量比が1.0倍未満のときは、精製層100において、ダイオキシン類溶液に含まれる夾雑物の処理能、特に夾雑物の分解能が不十分になる可能性がある。
【0035】
精製層100は、硝酸銀シリカゲル層110と硫酸シリカゲル層120との間に活性シリカゲル層が配置されていてもよい。この活性シリカゲル層は、硝酸銀シリカゲル層110と硫酸シリカゲル層120とが直接的に接触することで相互に化学反応するのを避けるためのものである。また、精製層100は、硫酸シリカゲル層120の下側に活性シリカゲル層が配置されていてもよい。この活性シリカゲル層は、ダイオキシン類溶液中の夾雑物が硝酸銀シリカゲル層110および硫酸シリカゲル層120において処理されることで生じた分解物や硫酸シリカゲル層120から溶出する硫酸を吸着し、これらが第2カラム20へ移動するのを抑えるためのものである。
【0036】
第2カラム20は、基本的に両端が開口した円筒状の部材であり、第1カラム10と同様の材料を用いて形成されている。第2カラム20の図の上端側には第1カラム10の図の下端部分を挿入可能な第1装着部21が形成されている。第1装着部21の内周面には螺子部(図示省略)が形成されている。また、第2カラム20は、第1装着部21の下方において先端が開口した第1分岐路22を有しており、図の下端部分の外周面に第3カラム30に対して連結するための螺子部(図示省略)を有している。
【0037】
第2カラム20の内部は、分岐路22の下方において活性炭含有吸着層200が充填されている。活性炭含有吸着層200は、ダイオキシン類のうち、ノンオルソPCBs、PCDDsおよびPCDFsを含むダイオキシン群を吸着可能な活性炭とその分散媒との均一な混合物を用いて形成されたものである。ここで用いられる分散媒は、ダイオキシン類に対する吸着能を実質的に示さないもの、例えば、粒状のシリカゲル(通常は加熱により活性度を高めた粒状の活性シリカゲル。)または粒状のケイ酸マグネシウム(通常は加熱により活性度を高めた粒状の活性ケイ酸マグネシウムであり、例えば、特開2020-115111号公報に記載されたものである。)である。シリカゲルまたはケイ酸マグネシウムの粒径は、通常、63~212μm程度が好ましい。シリカゲルとケイ酸マグネシウムとは混合して用いることもできる。
【0038】
活性炭含有吸着層200において用いられる活性炭は、吸着材として一般的な比表面積や細孔径等の特性を有するものでよいが、後記する第3カラム30の処理層300において用いられる活性炭よりも平均ミクロ孔径が大きいものである。このような活性炭を用いることで、活性炭含有吸着層200において、ダイオキシン類のうちのノンオルソPCBs、PCDDsおよびPCDFsを含むダイオキシン群を選択的に吸着して捕捉することができる。活性炭として好ましいものは、例えば、比表面積が700~1,600m2/g、特に、1,500~1,600m2/gでありかつ平均ミクロ孔径が1.0~2.0nm、特に1.4~1.6nmの粒状の活性炭である。この活性炭の比表面積は、窒素を用いたBET法による測定値である。また、平均ミクロ孔径は、活性炭が有する種々の大きさの細孔のうち、孔径が2nm以下の範囲にあるミクロ孔を対象とした平均孔径を意味し、77Kにおける窒素吸着および脱着等温線を測定してt-plot法という解析方法によって求めた測定値である。
【0039】
活性炭含有吸着層200において上述の好ましい比表面積および平均ミクロ孔径を有する活性炭を用いた場合、活性炭含有吸着層200においてノンオルソPCBs、PCDDsおよびPCDFsを含むダイオキシン群の吸着効果が高まり、当該ダイオキシン群とモノオルソPCBsとの分画精度を高めることができる。
【0040】
活性炭含有吸着層200における活性炭の濃度は、特に限定されるものではないが、比表面積および平均ミクロ孔径が上述の好ましい範囲にある粒状の活性炭を用いる場合、0.75~1.0質量%に設定するのが好ましい。
【0041】
活性炭含有吸着層200において、活性炭とその分散媒との均一な混合物の充填密度は、特に限定されるものではないが、通常、0.2~0.5g/cm3に設定するのが好ましく、0.3~0.4g/cm3に設定するのがより好ましい。この密度が0.2g/cm3未満の場合、ノンオルソPCBs、PCDDsおよびPCDFsを含むダイオキシン群の捕捉効率が低下する可能性がある。逆に、この密度が0.5g/cm3を超える場合、後記する脂肪族炭化水素溶媒が活性炭含有吸着層200を通過しにくくなる。
【0042】
第1カラム10は、その下端外周に設けられた螺子部を第2カラム20の第1装着部21の内周面に設けられた螺子部に対して装着することで、第2カラム20に対して液密にかつ脱着可能に連結されている。
【0043】
第3カラム30は、基本的に両端が開口した円筒状の部材であり、第1カラム10と同様の材料を用いて形成されている。第3カラム30の図の上端側には第2カラム20の図の下端部分を挿入可能な第2装着部31が形成されている。第2装着部31の内周面には螺子部(図示省略)が形成されている。また、第3カラム30は、第2装着部31の下方において先端が開口した第2分岐路32を有している。
【0044】
第3カラム30の内部は、第1分岐路32の下方において処理層300が充填されている。処理層300は、モノオルソPCBsを吸着可能な活性炭とその分散媒との均一な混合物を用いて形成されたものであり、活性炭の濃度が互いに異なる第1分散媒層310と第2分散媒層320とが第3カラム30の開口方向、すなわち、図の上下方向に積層状態で配置されたものである。ここで用いられる分散媒は、第2カラム20の活性炭含有吸着層200において用いられるものと同様のものである。
【0045】
処理層300において用いられる活性炭は、吸着材として一般的な比表面積や細孔径等の特性を有するものでよいが、第2カラム20の活性炭含有吸着層200において用いられる活性炭よりも平均ミクロ孔径が小さいものである。例えば、比表面積が700~1,600m2/g、特に、1,500~1,600m2/gでありかつ平均ミクロ孔径が0.5~1.0nm、特に0.7~0.8nmの粒状の活性炭を用いるのが好ましい。この活性炭の比表面積および平均ミクロ孔径の意義等は、活性炭含有吸着層200において用いられる活性炭と同じである。
【0046】
処理層300は、上層側の第1処理層310における活性炭濃度に比べて下層側の第2分散媒層320における活性炭濃度が高く設定されている。第1処理層310および第2分散媒層320における活性炭の濃度は、特に限定されるものではないが、比表面積および平均ミクロ孔径が上述の好ましい範囲にある粒状の活性炭を用いる場合、第1分散媒層310側の活性炭濃度を0.13~0.2質量%、特に、0.13~0.15質量%に設定し、第2分散媒層320側の活性炭濃度を1.0~3.0質量%、特に、2.0~3.0質量%に設定するのが好ましい。
【0047】
処理層300に占める各層の割合は、特に限定されるものではないが、通常は均等になるよう設定するのが好ましい。
【0048】
処理層300の各層において、活性炭とその分散媒との均一な混合物の充填密度は、特に限定されるものではないが、通常、0.2~0.5g/cm3に設定するのが好ましく、0.3~0.4g/cm3に設定するのがより好ましい。この密度が0.2g/cm3未満の場合、モノオルソPCBsの捕捉効率が低下する可能性がある。逆に、この密度が0.5g/cm3を超える場合、後記する脂肪族炭化水素溶媒が処理層300を通過しにくくなる。
【0049】
第2カラム20は、その下端外周に設けられた螺子部を第3カラム30の第2装着部31の内周面に設けられた螺子部に対して装着することで、第3カラム30に対して液密にかつ脱着可能に連結されている。
【0050】
分画器1の大きさは、処理するダイオキシン類溶液の量に応じて適宜設定することができる。例えばダイオキシン類溶液の量が1~20mL程度の場合、第1カラム10については精製層100を充填可能な部分の内径が13~16mmで長さが180~190mm程度に、第2カラム20については内径が5~7mmで活性炭含有吸着層200を充填可能な部分の長さが31~33mm程度に、第3カラム30については内径が5~7mmで処理層300を充填可能な部分の長さが29~31mm程度にそれぞれ設定されているのが好ましい。
【0051】
次に、モノオルソPCBsとパラフィン系物質との分離に触れつつ上述の分画器1を用いてダイオキシン類溶液からダイオキシン類を分画する方法を説明する。この分画方法では、分画器1を
図1に示すように起立状態に設置し、上端の開口から第1カラム10内の精製層100上にダイオキシン類溶液を添加する。この際、精製層100の一部、すなわち、硝酸銀シリカゲル層110の全体および硫酸シリカゲル層120の上部を加熱するのが好ましい。
【0052】
添加したダイオキシン類溶液は、硝酸銀シリカゲル層110の上部に浸透し、精製層100の一部とともに加熱される。精製層100の加熱温度は、35℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上に設定する。この加熱により、ダイオキシン類溶液に含まれるダイオキシン類以外の夾雑物の一部が精製層100と反応し、分解される。加熱温度が35℃未満の場合は、夾雑物と精製層100との反応が進行しにくくなり、後記するダイオキシン類の抽出液中に夾雑物の一部が残留しやすくなる可能性がある。加熱温度の上限は、特に限定されるものではないが、通常は安全性の観点から沸騰温度以下が好ましい。
【0053】
次に、加熱開始から所定時間、例えば10~60分経過後に上端の開口から第1カラム10内の精製層100に脂肪族炭化水素溶媒を供給して通過させる。この際、精製層100の加熱は維持してもよいし、停止してもよい。ここで供給する脂肪族炭化水素溶媒は、ダイオキシン類を溶解可能なものであり、好ましくは炭素数が5~8個の脂肪族飽和炭化水素溶媒である。例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、イソオクタンまたはシクロヘキサンを用いるのが好ましい。これらの溶媒は、適宜混合して用いることもできる。
【0054】
精製層100に供給された脂肪族炭化水素溶媒は、精製層100に浸透したダイオキシン類溶液に含まれるダイオキシン類、夾雑物の分解生成物および分解されずに残留している夾雑物を溶解し、精製層100を通過する。この際、分解生成物および夾雑物の一部は、硝酸銀シリカゲル層110および硫酸シリカゲル層120に吸着するが、夾雑物であるパラフィン系物質およびPCDEsは脂肪族炭化水素溶媒とともに精製層100を通過する。精製層100を通過する脂肪族炭化水素溶媒は、非加熱部分、すなわち、硫酸シリカゲル層120の下部を通過するときに自然に冷却される。
【0055】
精製層100を通過した脂肪族炭化水素溶媒は、第1カラム10から第2カラム20へ流れて活性炭含有吸着層200を通過し、第3カラム30内へ流れる。この際、精製層100からの脂肪族炭化水素溶媒に含まれるダイオキシン類のうち、ノンオルソPCBs、PCDDsおよびPCDFsを含むダイオキシン群が活性炭含有吸着層200に吸着して捕捉され、脂肪族炭化水素溶媒から分離される。一方、精製層100からの脂肪族炭化水素溶媒に含まれる残余のダイオキシン類であるモノオルソPCBs並びに夾雑物であるパラフィン系物質およびPCDEsは、脂肪族炭化水素溶媒とともに活性炭含有吸着層200を通過する。この結果、PCDFsはPCDEsと分離されるとともに、脂肪族炭化水素溶媒は、パラフィン系物質およびPCDEsを夾雑物として含むモノオルソPCBsの脂肪族炭化水素溶媒溶液として第2カラム20から第3カラム30へ流れる。
【0056】
活性炭含有吸着層200を通過して第3カラム30内へ流れた脂肪族炭化水素溶媒は、第3カラム30の処理層300を通過し、第3カラム30の下端の開口から流出し、廃棄される。この際、脂肪族炭化水素溶媒に含まれるモノオルソPCBsおよびPCDEsは処理層300の第1分散媒層310および第2分散媒層320のそれぞれの活性炭に吸着して捕捉され、脂肪族炭化水素溶媒から分離される。一方、脂肪族炭化水素溶媒に含まれるパラフィン系物質は脂肪族炭化水素溶媒とともに処理層300を通過し、廃棄される。この結果、処理層300に捕捉されたモノオルソPCBsは、パラフィン系物質と分離される。
【0057】
以上の過程により、ダイオキシン類溶液に含まれるダイオキシン類は、第2カラム20の活性炭含有吸着層200に捕捉されたノンオルソPCBs、PCDDsおよびPCDFsを含むダイオキシン群の画分と、第3カラムの処理層300に捕捉されたモノオルソPCBsの画分とに分画され、各画分は次の操作により抽出することができる。
【0058】
脂肪族炭化水素溶媒が処理層300を通過後、第1カラム10の上端の開口および第2カラム20の第1分岐路22の開口を気密に閉鎖し、第3カラム30の下端側の開口からダイオキシン類の抽出溶媒を供給して処理層300を通過させる。
【0059】
ここで用いる抽出溶媒は、環境試料に含まれるダイオキシン類の分析方法として一般的なガスクロマトグラフィー法に適した溶媒、例えば、トルエンまたはベンゼンを用いるのが好ましい。また、トルエンまたはベンゼンに対して脂肪族炭化水素溶媒または有機塩素系溶媒を添加した混合溶媒を用いることもできる。混合溶媒において用いる脂肪族炭化水素溶媒は、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、イソオクタンまたはシクロヘキサンである。また、有機塩素系溶媒は、例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタンまたはテトラクロロメタンである。なお、ダイオキシン類の分析方法として、必要によりバイオアッセイ法を採用することもでき、その場合は抽出溶媒として、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)やメタノール等の親水性溶媒が用いられる。
【0060】
処理層300へ供給された抽出溶媒は、処理層300に捕捉されたモノオルソPCBsを抽出して第3カラム30の第2分岐路32へ流れ、第2分岐路32から排出される。このように第2分岐路32から排出される抽出溶媒、すなわち、処理層300を通過した抽出溶媒を確保すると、モノオルソPCBsの抽出液、すなわちモノオルソPCBsの分析用試料が得られる。
【0061】
次に、第1カラム10の上端の開口および第3カラム30の第2分岐路32の開口を気密に閉鎖し、第3カラム30の下端側の開口からダイオキシン類の抽出溶媒を供給して処理層300および活性炭含有吸着層200の順に通過させる。ここで用いる抽出溶媒は、先述のものと同様である。
【0062】
処理層300を通じて活性炭含有吸着層200へ供給された抽出溶媒は、活性炭含有吸着層200に捕捉された先述のダイオキシン群を抽出して第2カラム20の第1分岐路22へ流れ、第1分岐路22から排出される。このように第1分岐路22から排出される抽出溶媒、すなわち、活性炭含有吸着層200を通過した抽出溶媒を確保すると、活性炭含有吸着層200に捕捉されたダイオキシン群の抽出液、すなわち、ノンオルソPCBs、PCDDsおよびPCDFsを含むダイオキシン群の分析用試料が得られる。
【0063】
分画器1を用いると、ダイオキシン類溶液からノンオルソPCBs、PCDDsおよびPCDFsを含むダイオキシン群の分析用試料とモノオルソPCBsの分析用試料とを別々に得ることができる。しかも、上記ダイオキシン群の分析用試料はPCDEsの混入が抑えられたものになり、モノオルソPCBsの分析用試料はパラフィン系物質の混入が抑えられたものになる。また、第2カラム20の活性炭含有吸着層200において比表面積および平均ミクロ孔径が好ましい範囲の先述の活性炭を用いた場合、モノオルソPCBsの分析用試料は上記ダイオキシン群の混入が抑えられたものになる。よって、各分析用試料をGC/MS、特に、高分解能GC/MSにより分析することで、ダイオキシン類溶液に含まれる各ダイオキシン類を高精度に分析することができる。
【0064】
上述の実施の形態に係る分画器1は、種々の変更が可能である。例えば、第1カラム10の精製層100は、硝酸銀シリカゲル層110と硫酸シリカゲル層120との順序が入れ替わっていてもよい。この場合、有機ハロゲン化合物溶液に含まれる夾雑物は、主に硫酸シリカゲル層130において分解され、その分解生成物や夾雑物の一部が主に硝酸銀シリカゲル層110において捕捉される。
【0065】
また、上述の実施の形態において、第3カラム30の処理層300は、脂肪族炭化水素溶媒の通過方向の上流側の第1分散媒層310における活性炭濃度に比べて下流側の第2分散媒層320における活性炭濃度が高く設定されているが、活性炭濃度をこの逆、すなわち、上流側の第1分散媒層310における活性炭濃度に比べて下流側の第2分散媒層320における活性炭濃度を低く設定した場合においても、脂肪族炭化水素溶媒溶液に含まれるモノオルソPCBsとパラフィン系物質とを分離することができる。また、処理層300は、活性炭濃度が異なる三層以上の処理層からなるものであってもよい。この場合、各処理層における活性炭濃度は、脂肪族炭化水素溶媒の通過方向の上流側の層から下流側の層に向けて順に活性炭濃度が高くなるように設定してもよいし、上流側の層から下流側の層に向けて順に活性炭濃度が低くなるように設定してもよい。
【0066】
さらに、第2カラム20および第3カラム30は、それぞれ第1分岐路22および第2分岐路32を有しないものであってもよい。このような第2カラム20および第3カラム30を用いた場合、第2カラム20の活性炭含有吸着層200および第3カラム30の処理層300においてそれぞれ捕捉されたダイオキシン群およびモノオルソPCBsは、第1カラム10から第2カラム20を取り外すとともに第2カラム20から第3カラム30を取り外し、互いに分離された第2カラム20および第3カラム30のそれぞれに対して個別に抽出溶媒を供給することで抽出することができる。
【0067】
なお、ダイオキシン類の分画を目的とするとともにモノオルソPCBsとパラフィン系物質とを分離する観点において、上述の実施の形態の第2カラム20は、活性炭含有吸着層200をノンオルソPCBs、PCDDsおよびPCDFsを含むダイオキシン群を選択的に捕捉可能な他の形態の吸着層に変更することができる。例えば、国際公開第2014/192055(先に掲げた特許文献1)に記載された活性炭含有シリカゲル層およびグラファイト含有シリカゲル層を含む吸着層を活性炭含有吸着層200に代えて第2カラム20において用いることができる。
【0068】
上述の実施の形態において参照した
図1は、分画器1の各部の概要を示したものであり、各部の構造、形状および大きさや比率等を正確に反映したものではない。
【0069】
以下に実験例等を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実験例等によって限定されるものではない。
【0070】
[実験例1~3]
図1に示す形態の分画器1であって、各部の仕様を次のように設定したものを作製した。
<第1カラム10>
外径18mm、内径15mm、長さ190mmに設定された第1カラム10内において、硫酸シリカゲル8.2g(充填高さ67mm)の上に硝酸銀シリカゲル2.5g(充填高さ32mm)を積層することで精製層100を形成したもの。ここで用いた硫酸シリカゲルおよび硝酸銀シリカゲルは次のとおりである。
【0071】
硫酸シリカゲル:
活性シリカゲル(富士フイルム和光純薬株式会社製)に対して濃硫酸(富士フイルム和光純薬株式会社の商品名「濃硫酸」190-04675、精密分析用)を均一に添加した後に乾燥することで調製した硫酸シリカゲルを用いた。活性シリカゲルに対する濃硫酸の添加量は、活性シリカゲルに対する硫酸の量が質量基準で44%になるよう設定した。
硝酸銀シリカゲル:
活性シリカゲル(富士フイルム和光純薬株式会社製)に対して蒸留水に硝酸銀(富士フイルム和光純薬株式会社の商品名「硝酸銀」198-00835、試薬特級)を溶解した水溶液を添加して均一に混合した。この混合物をロータリーエバポレーターを用いて減圧下で70℃に加熱、乾燥することで調製した硝酸銀シリカゲルを用いた。ここでは、硝酸銀水溶液として活性シリカゲルの質量に対する硝酸銀量が10%に設定されたものを用い、硝酸銀シリカゲルにおける硝酸銀量を活性シリカゲルの質量基準の10%に設定した。
【0072】
<第2カラム20>
外径8mm、内径6mm、長さ39mmに設定された第2カラム20内において、活性炭混合活性シリカゲル0.295gを高さ31.5mmになるよう充填することで活性炭含有吸着層200を形成したもの。ここで用いた活性炭混合活性シリカゲルは、比表面積が1,580m2/gで平均ミクロ孔径が1.55nmの活性炭(フタムラ化学株式会社製)をその濃度が0.8質量%になるよう粒径63~212μmの活性シリカゲル(富士フイルム和光純薬株式会社製)と均一に混合したものである。
【0073】
<第3カラム30>
外径8mm、内径6mm、長さ38mmに設定された第3カラム30内において、高さ29mmの処理層300を充填したもの。処理層300は、高濃度活性炭含有ケイ酸マグネシウムを高さ25mmになるよう充填することで第2分散媒層320を形成し、この第2分散媒層320上に低濃度活性炭含有ケイ酸マグネシウムを高さ5mmになるよう積層充填することで第1分散媒層310を形成したものである。ここで用いた高濃度活性炭含有ケイ酸マグネシウムおよび低濃度活性炭含有ケイ酸マグネシウムは次のとおりである。
【0074】
高濃度活性炭含有ケイ酸マグネシウム:
比表面積が1,510m2/gで平均ミクロ孔径が0.78nmの活性炭(株式会社クラレ製)をその濃度が1.6質量%(実験例1)、2.0質量%(実験例2)または3.0質量%(実験例3)になるようケイ酸マグネシウム(富士フイルム和光純薬株式会社の商品名「Florisil,75~150μm」)と均一に混合したもの。
【0075】
低濃度活性炭含有ケイ酸マグネシウム:
比表面積が1,510m2/gで平均ミクロ孔径が0.78nmの活性炭(株式会社クラレ製)をその濃度が0.2質量%になるようケイ酸マグネシウム(富士フイルム和光純薬株式会社の商品名「Florisil,75~150μm」)と均一に混合したもの。
【0076】
作製した分画器1を用い、試料液に含まれるダイオキシン類を分画処理した。ここで用いた試料液は、トルエンを用いてソックスレー抽出法により土壌5gに含まれるダイオキシン類を抽出し、抽出したダイオキシン類をn-ヘキサンに転溶して2mLに濃縮したものである。この試料液は、ダイオキシン類とともに土壌に由来の微量のPCDEsおよびパラフィン系物質を夾雑物として含む。
【0077】
分画器1による試料液の分画処理では、第1カラム10の上端の開口から硝酸銀シリカゲル層110に対して試料液の全量と13C12で標識したダイオキシン類標準溶液(Wellington社の商品名「DFP-LCS-B」)とを添加し、硝酸銀シリカゲル層110の全体と硫酸シリカゲル層120の上半分とを60℃に加熱した。そして、第1カラム10の上端の開口からn-ヘキサン85mLを供給し、このn-ヘキサンを精製層100、第2カラム20の活性炭含有吸着層200および第3カラム30の処理層300に通過させて第3カラム30の下端の開口から排出させた。
【0078】
次に、第1カラム10の上端の開口と第2カラム20の第1分岐路22の開口とを気密に閉鎖し、第3カラム30の下端の開口からトルエン1.4mLを供給した。そして、処理層300を通過したトルエンの全量を第2分岐路32を通じて回収し、第1分析用試料を得た。続いて、第1カラム10の上端の開口と第3カラム30の第2分岐路32の開口とを閉鎖し、第3カラム30の下端の開口からトルエン1.5mLを供給した。そして、第3カラム30の処理層300および第2カラム20の活性炭含有吸着層200を通過したトルエンの全量を第1分岐路22を通じて回収し、第2分析用試料を得た。
【0079】
第1分析用試料および第2分析用試料のそれぞれに対して13C12で標識したダイオキシン類標準溶液(Wellington社の商品名「DF-SS-A」)を添加し、各分析用試料をHRGC/HRMS法により個別に定量分析することで各分析用試料におけるダイオキシン類の回収率を算出した。算出した回収率は、使用したダイオキシン類標準溶液中のダイオキシン類に基づくものである。結果を表1に示す。なお、表1において第2分析用試料については、回収率の傾向を把握するため、ダイオキシン群の一部についての回収率を算出した結果を示している。
【0080】
【0081】
表1によると、試料液に含まれるダイオキシン類は、ノンオルソPCBs、PCDDsおよびPCDFsを含む第2分析用試料と、モノオルソPCBsを含む第1分析用試料とに分画されていることがわかる。また、モノオルソPCBsの回収率は、処理層300の第2分散媒層320における活性炭濃度が2.0質量%以上の場合に改善される傾向にあることがわかる。
【0082】
[実験例4~7]
実験例1~3において用いた分画器1について、第3カラム30の処理層300を表2に示すように変更した。表2に示した充填剤AおよびBは次のとおりである。
【0083】
充填剤A(低濃度活性炭含有活性シリカゲル):
比表面積が1,510m2/gで平均ミクロ孔径が0.78nmの活性炭(株式会社クラレ製)をその濃度が0.13質量%になるよう粒径63~210μmの活性シリカゲル(関東化学株式会社製)と均一に混合したもの。
【0084】
充填剤B(高濃度活性炭含有活性シリカゲル):
比表面積が1,510m2/gで平均ミクロ孔径が0.78nmの活性炭(株式会社クラレ製)をその濃度が3.0質量%になるよう粒径63~210μmの活性シリカゲル(関東化学株式会社製)と均一に混合したもの。
【0085】
【0086】
処理層300を変更した分画器1を用い、実験例1~3と同様に飛灰から調製した試料液に含まれるダイオキシン類を分画処理した。処理層300からの抽出液に含まれるモノオルソPCBsの回収率を
図2に示す。また、処理層300からの抽出液について測定したスキャンクロマトグラムを
図3に示す。
【0087】
図2によると、処理層300を充填剤A(低濃度活性炭含有活性シリカゲル)のみで形成した実験例7ではモノオルソPCBsの回収率が全体的に低くなるのに対し、処理層300を充填剤A(低濃度活性炭含有活性シリカゲル)と充填剤B(高濃度活性炭含有活性シリカゲル)との積層状態で形成した実験例5~6と充填剤B(高濃度活性炭含有活性シリカゲル)のみで形成した実験例4ではモノオルソPCBsの回収率が全体的に80%を超え、第2カラム20からのn-ヘキサンに含まれるモノオルソPCBsの全体的な捕捉性が高まることがわかる。一方、
図3によると、処理層300を充填剤A(低濃度活性炭含有活性シリカゲル)と充填剤B(高濃度活性炭含有活性シリカゲル)との積層状態で形成するとともに充填剤B(高濃度活性炭含有活性シリカゲル)の割合を抑えた実験例6および処理層300を充填剤A(低濃度活性炭含有活性シリカゲル)のみで形成した実験例7ではモノオルソPCBsの抽出液においてパラフィン系物質の混入が抑えられているのに対し、処理層300を充填剤B(高濃度活性炭含有活性シリカゲル)のみで形成した実験例4および処理層300を充填剤A(低濃度活性炭含有活性シリカゲル)と充填剤B(高濃度活性炭含有活性シリカゲル)との積層状態で形成するとともに充填剤B(高濃度活性炭含有活性シリカゲル)の割合を高めた実験例5では、モノオルソPCBsの抽出液にパラフィン系物質が混入している。以上の結果より、処理層300において、モノオルソPCBsの捕捉率を高めるとともにパラフィン系物質が捕捉されるのを抑制するためには、処理層300を低濃度活性炭含有活性シリカゲルと高濃度活性炭含有活性シリカゲルとの積層状態で形成するとともに、高濃度活性炭含有活性シリカゲルの割合を抑えるか、高濃度活性炭含有活性シリカゲルにおける活性炭濃度を抑える必要のあることがわかる。
【0088】
[実験例8~12]
実験例1~3において用いた分画器1について、第2カラム20の活性炭含有吸着層200における活性炭濃度を表3に示すように設定した。
【0089】
【0090】
上述のように変更した分画器1を用い、13C12で標識したダイオキシン類標準溶液(Wellington社の商品名「DFP-LCS-B」)を処理した。ここでは、第1カラム10の上端の開口から硝酸銀シリカゲル層110に対してダイオキシン類標準溶液を添加し、硝酸銀シリカゲル層110の全体と硫酸シリカゲル層120の上半分とを60℃に加熱した。そして、第1カラム10の上端の開口からn-ヘキサン85mLを供給し、このn-ヘキサンを精製層100および第2カラム20の活性炭含有吸着層200および第3カラム30の処理層300に通過させて第3カラム30の下端の開口から排出させた。次に、第1カラム10の上端の開口を気密に閉鎖し、第3カラム30の下端の開口からトルエン1.4mLを供給した。そして、処理層300を通過したトルエンの全量を第2分岐路32を通じて回収した。続いて、第1カラム10の上端の開口と第3カラム30の第2分岐路32の開口とを閉鎖し、第3カラム30の下端の開口からトルエン1.5mLを供給した。そして、第3カラム30の処理層300および第2カラム20の活性炭含有吸着層200を通過したトルエンの全量を第1分岐路22を通じて回収し、分析用試料を得た。
【0091】
得られた分析用試料に対して
13C
12で標識したダイオキシン類標準溶液(Wellington社の商品名「DF-SS-A」)を添加し、分析用試料をHRGC/HRMS法により定量分析することで分析用試料におけるダイオキシン類の回収率を算出した。算出した回収率は、使用したダイオキシン類標準溶液中のダイオキシン類に基づくものである。結果を
図4に示す。
【0092】
図4によると、活性炭含有吸着層200は、活性炭濃度を高めるとノンオルソPCBs、PCDDsおよびPCDFsを含むダイオキシン群とともにモノオルソPCBsを吸着し、上記ダイオキシン群とモノオルソPCBsとが分画されにくくなることから、活性炭濃度を1質量%以下に設定するのが好ましいことがわかる。
【0093】
[実験例13~14]
実験例1~3において用いた分画器1において、第2カラム20の活性炭含有吸着層200における活性炭濃度を表4に示すように設定した。
【0094】
【0095】
上述のように変更した分画器1を用い、底質から調製した試料液を処理した。ここで用いた試料液は、トルエンを用いてソックスレー抽出法により底質2gに含まれるダイオキシン類を抽出し、抽出したダイオキシン類をn-ヘキサンに転溶して2mLに濃縮したものである。
【0096】
分画器1による試料液の分画処理では、第1カラム10の上端の開口から硝酸銀シリカゲル層110に対して試料液の全量と13C12で標識したダイオキシン類標準溶液(Wellington社の商品名「DFP-LCS-B」)とを添加し、硝酸銀シリカゲル層110の全体と硫酸シリカゲル層120の上半分とを60℃に加熱した。そして、第1カラム10の上端の開口からn-ヘキサン85mLを供給し、このn-ヘキサンを精製層100、第2カラム20の活性炭含有吸着層200および第3カラム30の処理層300に通過させて第3カラム30の下端の開口から排出させた。そして、実験例1~3の場合と同様の手順にて処理層300を通過したトルエンによる第1分析用試料を得、また、活性炭含有吸着層200を通過したトルエンによる第2分析用試料を得た。
【0097】
第1分析用試料および第2分析用試料のそれぞれに対して
13C
12で標識したダイオキシン類標準溶液(Wellington社の商品名「DF-SS-A」)を添加し、各分析用試料をHRGC/HRMS法により個別に定量分析することで各分析用試料におけるノンオルソPCBsの回収率を算出した。算出した回収率は、使用したダイオキシン類標準溶液中のダイオキシン類に基づくものである。実験例13の結果を
図5に示し、実験例14の結果を
図6に示す。なお、
図5、6に示した回収率の結果は、第1分析用試料中において回収されたノンオルソPCBsの回収率と、第2分析用試料中において回収されたノンオルソPCBsの回収率とを積み上げたものである。
【0098】
図5と
図6とを対比すると、活性炭濃度が0.5質量%の実験例13においてはモノオルソPCBsの画分である第1分析用試料中にノンオルソPCBsが比較的多く混入しているのに対し、活性炭濃度が0.75質量%の実験例14においては第1分析用試料中へのノンオルソPCBsの混入が抑えられている。これによると、ノンオルソPCBs、PCDDsおよびPCDFsを含むダイオキシン群とモノオルソPCBsとの分画精度を高めるためには、第2カラム20の活性炭含有吸着層200における活性炭濃度を少なくとも0.75質量%に設定するのが好ましいことがわかる。
【0099】
実験例14で得られた第1分析用試料および第2分析用試料のクロマトグラムを
図7に示す。
図7によると、第2分析用試料においてPCDEsの検出ピークが小さいのに対し、第1分析用試料においてPCDEsの検出ピークが大きい。これより、試料液に含まれるPCDEsは、n-ヘキサンとともに第2カラム20の活性炭含有吸着層200を通過する一方で第3カラム30の処理層300において捕捉されることから、ノンオルソPCBs、PCDDsおよびPCDFsを含む第2分析用試料への混入が抑えられていることがわかる。
【符号の説明】
【0100】
30 第3カラム
100 精製層
110 硝酸銀シリカゲル層
120 硫酸シリカゲル層
200 活性炭含有吸着層
300 処理層
310 第1分散媒層
320 第2分散媒層