(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092407
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】空間浄化システム
(51)【国際特許分類】
A61L 9/22 20060101AFI20230626BHJP
A61L 9/20 20060101ALI20230626BHJP
A61L 9/015 20060101ALI20230626BHJP
A61L 2/10 20060101ALI20230626BHJP
A61L 2/20 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
A61L9/22
A61L9/20
A61L9/015
A61L2/10
A61L2/20 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021215552
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】522016110
【氏名又は名称】WINDシミュレーション株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中田 秀輝
【テーマコード(参考)】
4C058
4C180
【Fターム(参考)】
4C058AA23
4C058BB06
4C058BB07
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4C180KK03
4C180LL06
4C180LL14
4C180LL20
(57)【要約】
【課題】空間に浮遊するウイルス、細菌、真菌等を含んだ飛沫や、ウイルス、細菌、真菌等が付着した物体の表面を不活化、殺菌し、かつ安全に加湿した脱臭できる空間浄化システムを提供する。
【解決手段】空気を吸入する吸入口と、内壁に反射面と吸光面を有した通気筒と、吸入口と通気筒を連結する連結部と、通気筒内に配置され、ウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する紫外線とを発光する発光体とオゾンを生成する紫外線を発光する発光体と、通気筒内または連結部に水を噴霧する加湿器と、通気筒内を通過した空気を排出口と、通気筒から空気は出入りするが紫外線を外部に漏らさない通気遮光版とを備えた構成で、空間の湿度を調整する共に、空間のウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌し、脱臭する
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を吸入する吸入口と、内壁に反射面と吸光面を有した通気筒と、前記吸入口と前記通気筒を連結する連結部と、前記通気筒内に配置され、ウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する紫外線とオゾンを生成する紫外線を発光するする第1の発光体と、ウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する紫外線発光するする第2の発光体と、前記通気筒内を通過した空気を排出する排出口と、前記通気筒から空気は出入りするが紫外線を外部に漏らさない構造を有する通気遮光版とを備えたことを特徴とする、空間のウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌し、脱臭する空間浄化システム。
【請求項2】
前記第1の発光体は、波長が250~280nmの光を含む紫外線、及び波長が150~240nmの光を含む紫外線を発光する発光体であることを、前記第2の発光体は、波長が250~280nmの光を含む紫外線を発光する発光体であることを特徴とする前記請求項1に記載の空間浄化システム。
【請求項3】
前記第1の発光体及び、前記第2の発光体が低圧水銀ランプであることを特徴とする前記請求項2,3に記載の空間浄化システム。
【請求項4】
前記吸光面は、波長が250~280nmの光を含む紫外線を反射しない特性を有し、前記第1の発光体の近傍付近の前記通気筒の内壁に配置されたことを特徴とする前記請求項1、2、3に記載の空間浄化システム。
【請求項5】
前記通気筒内に設けられ、前記通気筒内を通気する空気の流路を前記第1の発光体の近くに限定する流路制限筒を備えたことを特徴とする前記請求項1、2、3、4に記載の空間浄化システム。
【請求項6】
前記第1の発光体を、前記第2の発光体よりも、前記通気筒内の空気の流れの上流側に配置することを特徴とする前記請求項1、2、3、4、5に記載の空間浄化システム。
【請求項7】
前記排出口から排出する空気のオゾン濃度を計測するオゾンセンサを備え、前記オゾンセンサが過剰なオゾンを検出すると、前記第1の発光体の発光量を低減する、または前記第2の発光体の発光量を増加することで、排出する空気のオゾン濃度を下げることを特徴とする前記請求項1、2、3、4、5、6に記載の空間浄化システム。
【請求項8】
前記第1の発光体、又は及び前記第2の発光体の下流側に空気の渦が発生する様に配置することを特徴とする前記請求項1、2、3、4、5、6、7に記載の空間浄化システム。
【請求項9】
前記第1の発光体、又は及び前記第2の発光体が低圧水銀ランプである場合、前記低圧水銀ランプの長軸が、前記通気筒内の空気の流れと垂直になる様に配置することを特徴とする前記請求項8に記載の空間浄化システム。
【請求項10】
前記通気筒内または前記連結部に水を噴霧する加湿器を備え、前記通気筒内と空間を加湿すること特徴とする前記請求項1、2、3、4、5、6、7、8,9に記載の空間浄化システム。
【請求項11】
前記吸入口より吸入する空気の湿度を計測する湿度センサを備え、空間の湿度を60%以下に維持できる範囲で前記通気筒内の湿度を高く維持できように前記加湿器を制御すること特徴とする前記請求項1、2、3、4、5、6、7、8,9,10に記載の空間浄化システム。
【請求項12】
前記吸入口より吸入する空気中の臭い成分を計測する臭いセンサを備え、前記加湿器または及び前記第1の発光体4の発光強度を制御すること特徴とする前記請求項1、2、3、4、5、6、7、8,9,10、11に記載の空間浄化システム。
【請求項13】
前記通気筒の内壁の前記吸光面6は、前記通気筒の空気の流れの下流側の端にまでに到達していないこと特徴とする前記請求項1、2、3、4、5、6、7、8,9,10、11、12に記載の空間浄化システム。
【請求項14】
前記通気筒内において空気が旋回しながら流れる様に作用する旋回流生成手段を備えたことを特徴とする前記請求項1、2、3、4、5、6、7、8,9,10、11、12、13に記載の空間浄化システム。
【請求項15】
空間に人が存在しない際に、前記第1の発光体の発光強度を増加、または及び前記第2の発光体の発光強度を抑制して高濃度オゾンを排出し、所定時間後に、前記第2の発光体の発光強度を増加、または及び前記第1の発光体の発光強度を抑制して、空間に残留するオゾンを分解することを特徴とする前記請求項1、2、3、4、5、6、7、8,9,10、11、13、14に記載の空間浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空間に飛び散った飛沫や、空間に浮遊する、ウイルス、細菌、真菌などを含んだ空気を吸引し、これらを不活化や殺菌することで空間を浄化する空間浄化システムに関するものである。また、オゾンを空間に排出して、空間中の物体の表面に存在するウイルス、細菌、真菌などを不活化や殺菌する空間浄化システムにも関する。さらに、本開示によれば、空間を安全に加湿すると共に、脱臭することで安全で快適な空間を提供することができる。
【背景技術】
【0002】
空間を介して感染するウイルス、細菌や真菌による感染症は、空間中に浮遊する、ウイルス、細菌や真菌を人が吸い込むことにより感染が広がる。ウイルス、細菌や真菌は、感染した人の体液が飛沫として放出することで、空間を浮遊する。
このようなウイルス、細菌や真菌を含んだ飛沫を除去するために、HEPAフィルターなどを搭載した空気清浄機が利用されている(特許文献1)。また、次亜塩素酸を含んだ除菌フィルターに空気を通過させウイルス、細菌や真菌を不活化や殺菌する技術もある(特許文献2)。さらに、吸い込んだ空気に紫外線を照射して、ウイルス、細菌や真菌を不活化や殺菌する空気清浄機もある(特許文献3)。
【0003】
空間の湿度が低いと、飛沫が重力により落下する前に飛沫の水分が乾燥して微小化し浮遊し続ける。さらに、人の粘膜の感染防護する機能が低下し、感染し易くなる。従って、このような感染リスクを低減するために、加湿器が利用される。
【0004】
また、ウイルス、細菌や真菌を含んだ飛沫が物体上に落下したり、感染した人が、ウイルス、細菌や真菌を含んだ体液が付いた手で、物体に触れることで、物体の表面にウイルス、細菌や真菌が付着することもある。そして、この物体を、他の人が手で触れて、この手で口、目や鼻を触ることで感染が拡大する。このような接触による感染リスクを低減するために、人が頻繁にふれる物体の表面に光触媒を塗布して、表面に付着するウイルス、細菌や真菌を不活化、殺菌することが試みられている。
【0005】
ウイルス、細菌や真菌が付着している物体に対しては、これらの物体を容器に入れて、この容器内を高温、高圧の水蒸気で満たして、ウイルス、細菌や真菌を不活化、殺菌する高温高圧蒸気殺菌装置が広く用いられている。また、プラスチック等の高温に弱い物体に対しては、容器内の物体に活性酸素を暴露させてウイルス、細菌や真菌を不活化、殺菌する活性酸素殺菌装置も開発された(特許文献4)。
【0006】
空間に存在する臭い成分等からなる揮発性化学物質を脱臭、分解することで、空間の快適性、安全性を向上させるために、オゾンを空間に放出する技術も開発された(特許文献5)。
【0007】
また、吸引した空気に真空紫外線を照射することでオゾンを生成し、さらにこのオゾンを含む空気に殺菌線と呼ばれる波長が254nmの紫外線を照射し、活性酸素を生成する空間浄化システムも開示されている(特許文献6)。この空間浄化システムでは、吸引した空気を加湿することで、活性酸素の生成量を増加させ、不活化、殺菌、脱臭能力を増強する技術も開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015-124914
【特許文献2】特開2016-202191
【特許文献3】特開2014-100206
【特許文献4】特開2006-20669
【特許文献5】特開2001-353824
【特許文献6】特願2021-44143
【非特許文献1】エキシマUVランプによるNOxフリーオゾン発生 オゾンニュース115号(2020/10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
HEPAフィルターなどを搭載した従来の空気清浄機では、HEPAフィルターで一旦捕集したウイルス、細菌や真菌を含む飛沫が粉砕して再飛散することもある。
【00010】
紫外線を用いた空気清浄機では、ウイルス、細菌や真菌を不活化、殺菌できるだけの紫外線の量を照射するために、紫外線の強度および、紫外線を照射する時間を調整している。紫外線を照射する時間を確保するために、空気清浄機内へ吸い込んだ空気の速度を制限している。特に、紫外線耐性が大きいウイルス、細菌や真菌を不活化、殺菌するには、長い照射時間を確保する必要が有り、空気の速度を低下させざるを得ず、風量が低下するので、空間の浄化に時間を要する。
【00011】
加湿器を用いて空間の湿度を維持することは効果的ではあるが、用いる水に細菌、真菌などが存在していると、これらを空間に噴霧することになり健康上好ましくない。
【00012】
物体の表面に光触媒を塗布すると、照明が直接当たる物体表面に付着したウイルス、細菌や真菌を不活化、殺菌することができるが、影の部分では不活化、殺菌することが難しくなる。
【00013】
物体を容器内に入れて活性酸素を暴露させる活性酸素殺菌装置を用いて、机やいす、建物に固定されているドアノブ、手すり、照明のスイッチ等の表面を不活化、殺菌することは現実的ではない。また、キーボド、マウス等は容器内に入れて不活化、殺菌することは可能ではあるが、頻回に実施するには手間が大きい。
【00014】
オゾンを放出して空間の匂い成分等からなる揮発性化学物質を脱臭、分解する技術は、有効で安全なオゾン濃度を維持し続けることが難しい。
【00015】
また、オゾンランプとも呼ばれる波長が185nm及び254nmの紫外線を照射する低圧水銀ランプを用いてオゾンを生成する技術においては、波長が185nmである真空紫外線でオゾンを生成する一方で、波長が254nmの紫外線で分解するので、生成できるオゾン量に制限がある。
【課題を解決するための手段】
【00016】
本開示の一態様に係る空間浄化システムは、空気を吸入する吸入口と、内壁に反射面と吸光面を有した通気筒と、前記吸入口と前記通気筒を連結する連結部と、前記通気筒内に配置され、ウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する紫外線とオゾンを生成する紫外線を発光するする第1の発光体と、ウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する紫外線発光するする第2の発光体と、前記通気筒内を通過した空気を排出する排出口と、前記通気筒から空気は出入りするが紫外線を外部に漏らさない構造を有する通気遮光版とを備え、空間のウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌し、脱臭する空間浄化システムである。
【00017】
また、本開示の別の一態様に係る空間浄化システムは、通気筒内に設けられ、通気筒内を通気する空気の流路を第1の発光体の近くに限定する流路制限筒とを備え、空間のウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌し、脱臭する空間浄化システムである。
【00018】
また、本開示の別の一態様に係る空間浄化システムは、第1の発光体を、第2の発光体よりも、通気筒内の空気の流れの上流側に配置する、空間のウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌し、脱臭する空間浄化システムである。
【00019】
また、本開示の別の一態様に係る空間浄化システムは、排出口から排出する空気のオゾン濃度を計測するオゾンセンサを備え、オゾンセンサが過剰なオゾンを検出すると、第1の発光体の発光量を低減する、または第2の発光体の発光量を増加することで、排出する空気のオゾン濃度を下げる空間のウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌し、脱臭する空間浄化システムである。
【00020】
また、本開示の別の一態様に係る空間浄化システムは、第1の発光体、又は及び第2の発光体の下流側に空気の渦が発生する様に配置する、空間のウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌し、脱臭する空間浄化システムである。
【00021】
また、本開示の別の一態様に係る空間浄化システムは、第1の発光体、又は及び第2の発光体が低圧水銀ランプである場合、低圧水銀ランプの長軸が、通気筒内の空気の流れと垂直になる様に配置する、空間のウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌し、脱臭する空間浄化システムである。
【00022】
また、本開示の別の一態様に係る空間浄化システムは、通気筒内または前記連結部に水を噴霧する加湿器を備え、前記通気筒内と空間を加湿する、空間のウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌し、脱臭する空間浄化システムである。
【00023】
また、本開示の別の一態様に係る空間浄化システムは、吸入口より吸入する空気の湿度を計測する湿度センサを備え、空間の湿度を60%以下に維持できる範囲で通気筒内の湿度を高く維持できように前記加湿器を制御する、空間のウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌し、脱臭する空間浄化システムである。
【00024】
また、本開示の別の一態様に係る空間浄化システムは、吸入口より吸入する空気中の臭い成分を計測する臭いセンサを備え、加湿器または及び第1の発光体4の発光強度を制御する、空間のウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌し、脱臭する空間浄化システムである。
【00025】
また、本開示の別の一態様に係る空間浄化システムは、通気筒の内壁の吸光面は、通気筒の空気の流れの下流側の端にまでに到達していない、空間のウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌し、脱臭する空間浄化システムである。
【00026】
また、本開示の別の一態様に係る空間浄化システムは、通気筒内において空気が旋回しながら流れる様に作用する旋回流生成手段を備えた、空間のウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌し、脱臭する空間浄化システムである。
【00027】
また、本開示の別の一態様に係る空間浄化システムは、空間に人が存在しない際に、第1の発光体の発光強度を増加、または及び第2の発光体の発光強度を抑制して高濃度オゾンを排出し、所定時間後に、第2の発光体の発光強度を増加、または及び第1の発光体の発光強度を抑制して、空間に残留するオゾンを分解する、空間のウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌し、脱臭する空間浄化システムである。
【発明の効果】
【00028】
本開示によれば、空間のウイルス、細菌や真菌などを不活化、殺菌することができるだけでなく、空間を安全に加湿する共に脱臭することで安全で快適な空間を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【00029】
【
図1】実施形態1に係る空間浄化システム1の模式図である。
【
図2】実施形態2に係る空間浄化システム2の模式図である。
【
図3】実施形態3に係る空間浄化システム3の模式図である。
【
図4】実施形態4に係る空間浄化システム4の模式図である。
【
図5】実施形態5に係る空間浄化システム5の模式図である。
【発明を実施するための形態】
(本開示の概要)
【00030】
本開示の一態様に係る空気浄化システムは、吸入した空気を加湿し、その空気にウイルス、細菌や真菌を不活化、殺菌する紫外線を照射することで、空間の湿度を調整する共に、空間を殺菌する空間浄化システムである。このように加湿することで、加湿に使用する水に細菌、真菌が存在していても、紫外線を照射することで殺菌されるので安全である。ウイルス、細菌や真菌を不活化、殺菌する紫外線としては、例えば波長が250~280nmの光を含む紫外線が好適である。
【00031】
本開示の一態様に係る空気浄化システムは、吸入した空気を加湿し、そしてその空気にウイルス、細菌や真菌を不活化、殺菌する紫外線だけでなく、波長が150~240nmの光を含む紫外線を照射することで、空間の湿度を調整する共に、空間を殺菌、脱臭する空気浄化システムである。このように加湿することで、加湿に使用する水に細菌、真菌が存在していても、紫外線を照射することで殺菌されるので安全である。また、臭い成分などの揮発性化学物質を分解することも可能で、安全で快適な空間を提供することができる。さらに波長が150~240nmの光を含む紫外線を照射することで生成したオゾンを空間へ放出して、空間にある物体の表面に付着したウイルス、細菌や真菌を不活化、殺菌できる。
【00032】
上記の様な本開示に用いる波長250~280nmの紫外線は、殺菌線とも呼ばれ、核酸に吸収される。この結果、核酸は変質し、ウイルス、細菌や真菌が不活性化、殺菌される。
【00033】
一方、波長が150~240nmの紫外線は、酸素に吸収されオゾンを生成する。生成されたオゾンは波長250~280nmの紫外線で分解され、同時に活性酸素を生成する。
ここで、オゾンランプとも呼ばれる波長が185nm及び254nmの紫外線を照射する低圧水銀ランプを用いてオゾンを生成すると、オゾンの生成と分解が同時に起こるので、従来は生成できるオゾン量が制限されていた。そこで、オゾンランプが照射する254nmの紫外線の分解作用を低減させるために、空気に照射される254nmの紫外線の照射量を低減させる構造を考案し、本開示に示した。
【00034】
活性酸素は匂い成分となる有機物を酸化して分解するので、脱臭できる。特に高湿度下では、活性酸素の中でも特に酸化力が強い、ヒドロキシラジカル(OH・)が多く生成され酸化効果が特に高い。なお、活性酸素は、強力な殺菌効果も示す(特許文献4)。ここでの活性酸素とは、スーパーオキサイド、ヒドロキシラジカル(OH・)等、酸素原子を含む多種多様な活性酸素化学種を指す。活性酸素は、紫外線に対して比較的強い耐性を示す真菌の殺菌に特に効果的である。
特に本開示では、十分なオゾンを生成できるので、活性酸素も十分生成でき、その効果を活用しやすし。
【00035】
以下、本開示の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は対応する構成部材には同一の参照符号を付して、その説明については省略する。また、紫外線を発光する深紫外線LED、殺菌ランプ、オゾンランプ、ファン、加湿器、オゾンセンサ、湿度センサ、光センサへ電力を供給したり信号を送受信するための配線は図示しない。
【00036】
(実施形態1)
図1を参照して実施の形態1に係る空間浄化システム1について説明する。
図1は、実施の形態1に係る空間浄化システム1の構成の一例を示した模式図である。
【00037】
1は空間の空気を吸入する吸入口、2は吸入した空気を通気する通気筒と、3は吸入口1と通気筒2を連結する連結部である。吸入口1の内部にはファンが組み込まれていて、所定の流量の空気を吸入する。ただし、ファンは必ずしも吸入口1の内部に組み込まれている必要はなく、外部のファン等と接続して外部の空気を送風する、または下流側である連結部3側から空気を吸引しても良い。また、
図1では側方から吸入するように配置されているが、側方以外の方向、例えば下方から吸入しても良い。
【00038】
吸入口1より吸入された空気は連結部3を介して通気筒2へ送られる。4は、通気筒2の内部に設置された、波長が250~280nmの光を含む紫外線、及び波長が150~240nmの光を含む紫外線を発光する第1の発光体である。5は、第1の発光体4の下流側の通気筒2の内部に設置された波長が250~280nmの光を含む紫外線を発光する第2の発光体である。
【00039】
第1の発光体4としては、オゾンランプとも呼ばれる185nmと254nmを照射する低圧水銀ランプを用いる。波長が150~240nmの紫外線は、酸素に吸収されオゾンを生成する。一方、波長が250~280nmの紫外線は、オゾンを分解し活性酸素を生成する。従って、この第1の発光体4で空気を照射するとオゾン生成と分解が同時に進行するので、活性酸素を継続的に生成できる。
【00040】
第2の発光体5としては深紫外線LED、または殺菌ランプとも呼ばれる低圧水銀ランプを用いる。なお、ここでの殺菌ランプは、254nmの紫外線は照射するが、そのガラス管は波長が200nm以下の真空紫外線を吸収するガラスで構成されているので、水銀が発光する185nmの紫外線は照射しない。この第2の発光体5で空気を照射すると、殺菌や不活化するだけでなく、第1の発光体4で生成されたオゾンを分解し、活性酸素を生成できる。
上記の様に、第1及び第2の発光体を通気筒2内に配置することで、254nmの紫外線による不活化、殺菌作用と、活性酸素による不活化、殺菌、分解、脱臭作用を同時に発現させることができる。
【00041】
第2の発光体5の周囲の通気筒2の内壁は、反射面(図示せず)から成っている。このため、第2の発光体5から放出された紫外線は、通気筒2の内壁と内壁で多重反射されて、通気筒2内の空気を照射するので、紫外線が増強され、内壁に反射面を有していない場合よりも高強度の紫外線を空気に照射できる。
【00042】
一方、第1の発光体4の周囲の通気筒2の内壁は、紫外線を吸光する吸光面6(斜線でハッチングされた領域)から成っている。第1の発光体4から放出された紫外線は通気筒2の内壁の吸光面6で吸収され反射されない。従って、第2の発光体5から放出された紫外線の様に、多重反射により増強されることはない。
なお、通気筒2をアルミ等の金属で構成すれば、内壁は反射面として機能する。また、内壁に紫外線を吸収すると塗料などを塗布すると、吸光面6として機能させることができる。
【00043】
7は通気筒2内を通過した空気を排出する排出口である。8、9は通気筒2から空気は出入りするが紫外線を外部に漏らさない構造を有する通気遮光版である。なお、吸入口1内、通気筒2内、連結部3内、排出口7内の矢印は空気の流れる方向を示す。
【00044】
上記の様に構成することで、第1の発光体4から放出された真空紫外線で、より多くのオゾンを生成できる。この理由を以下に記載する。
波長が185nmの紫外線は酸素に吸収される。このため、波長が185nmの紫外線は空気中を伝搬すると減衰する。一方、波長が254nmの紫外線即ち殺菌線は酸素にほとんど吸収されないので、空気中を伝搬しても実質的に減衰しない。例えば、波長が185nmの紫外線が空気中を10cm伝搬すると、強度は50%以下に減衰する(非特許文献1
図2)。従って、波長が185nmの紫外線が空気中を20cm伝搬する、強度は25%以下になってしまう。一方、波長が254nmの紫外線即ち殺菌線は空気中を10cm伝搬して実質的に減衰しない。
【00045】
第1の発光体4はオゾンランプとも呼ばれる低圧水銀ランプで、波長が185nmの紫外線と、波長が254nmの紫外線を同時に放出する。これらの紫外線の強度の比は、上記に示したように空気中を伝搬するのに従って変化する。即ち、波長が185nmの紫外線とは伝搬しながら減衰するが、波長が254nmの紫外線は実質的に減衰しない。その結果、波長が185nmの紫外線強度の、波長が254nmの紫外線強度に対する比率は、空気中を伝搬するのに従って低下していく。
【00046】
例えば、低圧水銀ランプは、波長が185nmの紫外線と、波長が254nmの紫外線を同時に放出するが、放射時点での、波長が185nmの紫外線強度の、波長が254nmの紫外線強度に対する比率は、約0.1である(非特許文献1
図7)。これらの紫外線が空気中を20cm伝搬した時点では、波長が185nmの紫外線強度の、波長が254nmの紫外線強度に対する比率は、約0.025になってしまう。
【00047】
上記の様に、低圧水銀ランプから放出された紫外線が空気中を伝搬するのに伴って、波長が185nmの紫外線強度の、波長が254nmの紫外線強度に対する比率が低下する。このために、オゾンを生成する作用と、オゾンを分解する作用のバランスが、オゾンが分解する方向へ移行する。即ち、低圧水銀ランプの近傍では、オゾンを生成する作用の方が優位であるが、低圧水銀ランプから離れるに従って、オゾンを分解する作用が優位になっていく。
【00048】
また、通気筒2の内壁が反射面であると、波長が254nmの紫外線は空気中を伝搬しても減衰しないので、多重反射によって強度が増強される。一方、波長が185nmの紫外線は空気中を伝搬すると減衰するので、多重反射による強度の増強は僅かである。従って、通気筒2の内壁が反射面であると、通気筒2の第1の発光体4の周囲の全域のオゾンを分解する作用が強くなる。その結果、オゾンを生成する作用とオゾンを分解する作用のバランスが、オゾンが分解する方向へ移行して、第1の発光体4で生成されるオゾンの量が減少する。
【00049】
一方、通気筒2の内壁が吸光面であると、波長が254nmの紫外線も増強されないので、内壁が反射面である場合よりも、オゾンの生成量を増加できる。
【00050】
上記の様に構成することで、第1の発光体4によるオゾンの生成量を増加でき、第2の発光体5の周囲に十分なオゾンを供給できるので、活性酸素も十分生成できる。活性酸素は匂い成分となる有機物を酸化して分解するので、脱臭効果も高い。
【00051】
以上の様に、本実施の形態1によれば、空間のウイルス、細菌や真菌などを不活化、殺菌することができるだけでなく、空間を脱臭することで安全で快適な空間を提供することができる。
【00052】
さらに、オゾンを積極的に空間に放出して、空間中にある物体表面を殺菌、不活化する場合には、第2の発光体5を停止させ、通気筒2内でのオゾンの分解を抑制すれば良い。その際、本実施の形態1においては、第1の発光体4によるオゾンの生成量を増加できるので、空間へ放出するオゾン量を増加できるので、より効果的に空間中にある物体表面を殺菌、不活化できる。
(実施形態2)
【00053】
実施の形態2について
図2を用いて説明する。
図2の、1、2,3、4、5,7,8、9は、それぞれ実施の形態1の
図1の1、2,3、4、5,7,8、9と同様である。10は、第1の発光体4を覆う様に配置された、流路制限筒である。流路制限筒10は、通気筒2内に設けられ、通気筒2内を通気する空気の流路を第1の発光体4の近傍に限定している。流路制限筒10の効果により、空気はオゾンが生成される作用が優位である領域のみを通過するので、オゾンの生成量を増加できる。さらに。この流路制限筒10の内壁を吸光面で構成することで、よりオゾンの生成量を増加できる。
【00054】
以上の様に、本実施の形態2によれば、通気筒2内の第2の発光体5の周囲に十分なオゾンを供給できるので、活性酸素も十分生成できる。活性酸素は匂い成分となる有機物を酸化して分解するので、高い脱臭効果が期待できる。
(実施形態3)
【00055】
実施の形態3について
図3を用いて説明する。
図3は、右半分に、本実施の形態の正面図を左半分に、側面図を示している。
図3の、1、2,3、4、5,6、7,8、9は、それぞれ実施の形態1の
図1の1、2,3、4、5,6、7,8、9と同様であるが、形状、配置や数が異なる。
第1の発光体4及び、第2の発光体5は、
図3に示す様に、空気の流れに対して垂直に配置されている。さらに、
図3は、第1の発光体4は3本、第2の発光体5は2本の例を示している。また、第1の発光体4の周囲の内壁は吸光面6からなっている。なお、
図1と同様に、第1の発光体4は、第2の発光体5より上流側に配置されている。
【00056】
11はオゾンセンサで、排出口4から排出される空気のオゾン濃度を計測する。12は、第1の発光体4及び、第2の発光体5の下流側即ち風下側に発生する空気の渦を示している。
本実施の形態3では、オゾンセンサ11の出力信号に基づき、排出される空気中のオゾン濃度が所定値以上になった場合に、第1の発光体4の一部の発光を停止することで、オゾンの生成量を低減できる。この動作により、空間のオゾン濃度が高くなりすぎることがなく、より安全性が向上する。なお、オゾン濃度の所定値としては、例えば作業環境基準である0.1ppmを用いても良い。
【00057】
さらに、本実施の形態3では、第1の発光体4及び、第2の発光体5が空気の流れに対して垂直に配置されているので、これらの下流側即ち風下側に、空気の渦12が発生する。この渦12により、空気が攪拌され、通気筒2内のオゾンや活性酸素が均一に分布しやすい。その結果、オゾンや活性酸素の濃度が低い領域を通過する空気が少なくなり、高い殺菌、脱臭効果を実現できる。
【00058】
以上の様に、本実施の形態3によれば、空間のオゾン濃度が高くなりすぎることがなく、より安全性が向上する。さらに、通気筒2内のオゾンや活性酸素の分布の均一性が向上するので、高い殺菌、脱臭効果を実現できる。
【00059】
なお、本実施の形態3では、第1の発光体4は3本、第2の発光体5は2本配置した例を示したが、必ずしもこれらの本数である必要はない。オゾンの効果を発揮しやすくする、またはおよび、生成と分解のバランスを制御し易くするために、第1の発光体4と第2の発光体5の数を調整しても良い。例えば、オゾンの分解能力を増加したい場合には、第2の発光体5の数を増せば良い。逆にオゾンの生成能力を増加したい場合には、第1の発光体4の数を増せば良い。また、第2の発光体5を第1の発光体4の下流側に配置することで、第1の発光体4で生成されたオゾンは、第2の発光体5の周辺を通過する。そのため、オゾンの排出を抑制しやすい。
(実施形態4)
【00060】
実施の形態4について
図4を用いて説明する。
図4の、1、2,3、4、5,6、7,8、9、11は、それぞれ実施の形態3の
図3の1、2,3、4、5,6、7,8、9、11と同様であるが、形状、配置や数が異なる。
第1の発光体4は
図4に示す様に、空気の流れに対して垂直に配置されている。一方、第2の発光体5は、
図1と同様に、空気の流れに対して平行に配置されている。
図4は、第1の発光体4は1本、第2の発光体5は4本の例を示している。また、第1の発光体4は3本の周囲の内壁は吸光面6からなっている。
【00061】
13は、通気筒2内に水を噴霧するための加湿器である。14は、吸入口1より吸入する空気の臭い成分を計測する臭いセンサである。15は、吸入口1より吸入する空気の湿度を計測する湿度センサである。
【00062】
本実施の形態4では、オゾンセンサ11の出力信号に基づき、排出される空気中のオゾン濃度が所定値以上になった場合に、第2の発光体5の発光強度を増加させることで、オゾンの分解量を増加できる。この動作により、空間のオゾン濃度が高くなりすぎることがなく、より安全性が向上する。一方、オゾン濃度が低くなりすぎた際は、第2の発光体5の発光強度を低下させることで、オゾンの分解量を抑制できる。なお、上記の様な、第2の発光体5の発光強度の調整は、第2の発光体5へ供給する電力をインバータ制御等で、調整することで実現できる。
【00063】
また、本実施の形態4では、加湿器13により、通気筒2内の湿度を高くできるので、活性酸素の中でも特に酸化力が強い、ヒドロキシラジカル(OH・)が多く生成され酸化効果が高い。活性酸素は、強力な殺菌効果も示し紫外線に対して比較的強い耐性を示す真菌に対して特に効率的に殺菌できる。ここでの活性酸素とは、スーパーオキサイド、ヒドロキシラジカル(OH・)等、酸素原子を含む多種多様な活性酸素化学種を指す。
【00064】
さらに、臭いセンサ14の出力信号に基づき、加湿器13の加湿量を制御することで、必要以上に加湿することを防止できる。即ち、本実施の形態4では、空間中に匂い成分が無い時は、脱臭の必要がないので、加湿器13の加湿量を低減する、または加湿器13の動作を停止する。これにより、空間を過剰に加湿することを防げるだけでなく、加湿器13への水の補給頻度も低減でき、より利便性が向上する。また、空間中に匂い成分が無く、活性酸素による脱臭や殺菌、不活化が必要無い場合は、第1の発光体4の発光を停止しても良い。これにより第1の発光体4の寿命を延ばすことが可能になる。
【00065】
また、湿度センサ15の出力信号に基づき加湿器13を制御して、空間の湿度が60%を超えない範囲で通気筒2内の湿度を上げるように制御することで、空間中の物体に付着している真菌の繁殖を低減しつつ、活性酸素の効果を大きくすることができる。
以上の様に、本実施の形態4によれば、空間のウイルス、細菌や真菌などを不活化、殺菌することができるだけでなく、空間を安全に加湿する共に脱臭することで安全で快適な空間を提供することができる。ここで、加湿器13で噴霧した水にも紫外線を照射できるので、水に細菌や真菌など存在している場合でも、これらを殺菌できるので安全に加湿できる。
【00066】
また、第1の発光体4が空気の流れに対して垂直に配置されているので、これらの下流側即ち風下側に、空気の渦が発生する。この渦により、空気が攪拌され、通気筒2内のオゾンが均一に分布しやすい。その結果、オゾンや活性酸素の濃度が低い領域を通過する空気が少なくなり、高い殺菌、脱臭効果を実現できる。さらに、実施の形態3に比べて、第2の発光体5から放出される紫外線が、第1の発光体4の周囲に侵入しにくい。なぜなら、第2の発光体5の発光強度の分布は側面方向が大きいからである。このため、第1の発光体4の周囲で生成するオゾンを増加させることができる。
(実施形態5)
【00067】
実施の形態5について
図5を用いて説明する。
図5の、1、2,3、4、5,6、7,8、9、11,12,13,14、15は、それぞれ実施の形態4の
図4の1、2,3、4、5,6、7,8、9、11,12,13,14、15と同様であるが、形状、配置や数が異なる。
第1の発光体4及び、第2の発光体5は、平行に並んで、空気の流れに沿った向きに配置されている。
図5は、第1の発光体4は1本、第2の発光体5も1本の例を示している。
【00068】
第1の発光体4の周囲の内壁は吸光面6からなっている。
図5に示す様に、吸光面6は、通気筒2の下流側の端にまでに到達していない。このように、吸光面6を短くすることによって、排出されるオゾンを低減できる。即ち、上流側は、吸光面6の作用でオゾンが多く生成されるが、下流側の端の付近では、吸光面6の作用が無くなるので、オゾン生成が、上流側より減るために、排出されるオゾンを低減できる。
【00069】
16は、通気筒2内を空気が旋回しながら流れる様に作用する旋回流生成手段である。旋回流生成手段16は、空気が流れる流路面積や方向を制限する整流板でも良いし、プロペラが回転する構造でも良い。また、モータでプロペラを回転させ、空気を流す動力を兼ねているファンでも良い。
旋回流生成手段16の作用で、通気筒2内に旋回流が発生するので、第1の発光体4で生成したオゾンが攪拌され、通気筒2内に均一に分布させることができる。その結果、オゾンや活性酸素の濃度が低い領域を通過する空気が少なくなり、高い殺菌、脱臭効果を実現できる。さらに、空気が殺菌線に照射される時間を延ばすことができるので、より高い殺菌を実現できる。
【00070】
以上の様に、本実施の形態5によれば、通風筒2内では高いオゾン濃度であっても、オゾンが排出されにくいので、通風筒2内での高いオゾン濃度を利用して、高い殺菌、脱臭効果を実現できる。さらに、通気筒2内のオゾン分布を均一化できるので、より高い殺菌、脱臭効果を実現できる。
【00071】
また、第1の発光体4の発光強度と、第2の発光体5の発光強度の比を制御することで、高濃度のオゾンを積極的に排出して空間中の物体の表面に付着いたウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌することも可能である。例えば、第2の発光体5の発光強度を低下して、第1の発光体4の発光強度を増加すれば、分解されるオゾン量を低減できかつ生成するオゾン量を増加できるので、排出するオゾン量を増加できる。または、第2の発光体5の発光強度を固定して、第1の発光体4の発光強度を増加すれば、生成されるオゾン量が増加するので排出するオゾン量を増加できる。または、第1の発光体4の発光強度を固定して、第2の発光体5の発光強度を低減すると、分解されるオゾン量が低減するので排出するオゾン量を増加できる。即ち、第1の発光体4によるオゾン生成を優位にする様に第1の発光体4の発光強度と、第2の発光体5の発光強度の比を制御することで、高濃度のオゾンを積極的に排出できる。
【00072】
一方、第1の発光体4の発光強度と、第2の発光体5の発光強度の比を制御することで、空間に残留するオゾンを分解することも可能である。例えば、第2の発光体5の発光強度を増加して、第1の発光体4の発光強度を低減すれば、分解されるオゾン量を増加できかつ生成するオゾン量を低減できるので、第2の発光体5によるオゾンの分解が優位になり空間に残留するオゾンを分解できる。
または、第1の発光体4の発光強度を固定して、第2の発光体5を増加しても、分解されるオゾン量を増加できるので、第2の発光体5によるオゾンの分解が優位になり空間に残留するオゾンを分解できる。または、第2の発光体5を固定して、第1の発光体4の発光強度を低減しても、生成するオゾン量を低減できるので、第2の発光体5によるオゾンの分解が優位になり空間に残留するオゾンを分解できる。即ち、第2の発光体5によるオゾン分解を優位にする様に第1の発光体4の発光強度と、第2の発光体5の発光強度の比を制御することで、空間に残留するオゾンを分解できる。
【00073】
なお、上述した実施の形態1~5においては、ウイルス、細菌や真菌を不活化、殺菌可能な紫外線の量を照射する必要がある。紫外線の量は、紫外線の強度と紫外線を照射する時間の積に相当するので、紫外線の強度と紫外線を照射する時間を指標として設計する。紫外線の強度は、第1の発光体4と第2の発光体5の発光強度と通気筒2の内壁の紫外線反射率、通気筒2の形状とサイズから算出する。紫外線を照射する時間は、通気筒2の長さと風速から算出する。また、吸引風量は、通気筒2の通気部分の断面積と風速の積に相当する。このように、吸引風量は、第1の発光体4と第2の発光体5の発光強度と通気筒2の内壁の紫外線反射率、通気筒2の形状とサイズ、風速より算出することができる。
【00074】
例えば、第2の発光体5が、254nmの発光強度が4.9Wの低圧水銀ランプで、通気筒2の内空間の断面の形が正方形で、その一辺の長さが16cmで、通気方向の長さが80cmの場合、吸引風量は約2mm3/分程度である。ただし、言うまでもないが、この吸引風量を実現するための上記各種数値は一組だけではなく、いくつも存在する。従って、消費電力、騒音、コスト、全体のサイズ等から優先する要求項目を実現できる上記各種数値を決めれば良い。
【00075】
さらに、本開示では、紫外線の効果だけでなく活性酸素の効果も利用しているので、大きな不活化、殺菌効果を発現できる。従って、紫外線単独の効果を利用する構成よりもより大きい吸引風量は実現することができる。
(実施形態6)
【00076】
本実施の形態6は、調理場、作業室等の人の出入り時刻が固定されている閉空間に空間浄化システムを配置した場合の動作に関する開示である。本実施の形態6では、人が退出した時刻以降に、実施の形態1,2,3,4,5で示した第2の発光体5発光強度を低下もしくは第1の発光体4の発光強度を増加させて高濃度のオゾンを積極的に排出するように空間浄化システムを制御する。その結果、空間中の物体の表面に付着するウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌することができる。
【00077】
空間中の物体の表面に付着するウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌できる時間が経過後に、第2の発光体5の発光強度を増加もしくは第1の発光体4の発光強度を低下させて、空間に残留するオゾンを吸引した分解する。空間のオゾンを十分分解するできる時間が経過後は、オゾンを分解する動作を停止する。または、オゾンセンサ11の出力信号より空間にオゾン濃度が所定値以下になったことを確認後にオゾンを分解する動作を停止する。
【00078】
本実施の形態6で人が不在な時間帯には、空間浄化システムで、オゾンを排出し、人が入室する時刻までに、空間に残留するオゾン濃度を所定値以下にすることで、安全に空間中の物体の表面に付着するウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌することができる。
【産業上の利用可能性】
【00079】
本開示は、空間に飛び散った飛沫や、空間に浮遊する、ウイルス、細菌、真菌などを含んだ空気を吸引し、これらを不活化や殺菌したのちに再び空間に放出することで空間を浄化する空間浄化システムに関するものである。さらに、オゾンを空間に排出して、空間中の物体の表面に存在するウイルス、細菌、真菌などを不活化や殺菌するシステムに関する。また、本開示は、空間を安全に加湿する共に、脱臭することで安全で快適な空間を提供することができる。
【符号の説明】
【00080】
1 吸入口
2 通気筒
3 連結部
4 第1の発光体
5 第2の発光体
6 吸光面
7 排出口
8 遮光通風板
9 遮光通風板
10 流路制限筒
11 オゾンセンサ
12 渦
13 加湿器
14 臭いセンサ
15 湿度センサ
16 旋回流生成手段