(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092414
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】インゴット鋳造装置
(51)【国際特許分類】
B22D 7/00 20060101AFI20230626BHJP
B22D 21/00 20060101ALI20230626BHJP
B22D 5/02 20060101ALI20230626BHJP
B22D 27/04 20060101ALI20230626BHJP
B22D 33/02 20060101ALI20230626BHJP
B22D 23/00 20060101ALI20230626BHJP
B22D 23/06 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
B22D7/00 Z
B22D21/00 A
B22D5/02 B
B22D27/04 G
B22D33/02
B22D23/00 C
B22D23/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016663
(22)【出願日】2022-02-04
(31)【優先権主張番号】P 2021207243
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】391004034
【氏名又は名称】吉田キャスト工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】595176674
【氏名又は名称】株式会社ウェイナ総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100166958
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 喜代造
(72)【発明者】
【氏名】小島 晟
(72)【発明者】
【氏名】中村 精三
(57)【要約】
【課題】1回の不活性ガスの注入作業で多数の金属インゴットを鋳造することができる、インゴット鋳造装置を提供する。
【解決手段】鋳造装置1は、チャンバー3内の下部に設けられたターンテーブル4と、ターンテーブル4を回転させる回転機構42と、チャンバー3内に設けられた加熱コイル51と、平面視で加熱コイル51と異なる箇所に設けられた冷却昇降機構6と、を備え、ターンテーブル4には、金属の粒状体を収容した型材Mをそれぞれに配置可能な複数の配置部41が形成され、回転機構42がターンテーブル4を回転させることにより、複数の配置部41の位置が可変とされ、加熱コイル51が一の型材Mを加熱することにより、一の型材Mに収容された粒状体を溶湯に溶融する加熱処理と、冷却昇降機構6が他の型材Mを冷却することにより、他の型材Mに収容された溶湯を金属インゴットに固形化する冷却処理と、を同時に行うことを可能とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の本体部と、前記本体部を閉塞可能な蓋部と、を備えるチャンバーと、
前記チャンバー内の下部に設けられたターンテーブルと、
前記ターンテーブルを回転させる回転機構と、
前記チャンバー内に設けられた加熱機構と、
平面視で前記加熱機構と異なる箇所に設けられた少なくとも一個の冷却機構と、を備えたインゴット鋳造装置であって、
前記ターンテーブルには、金属の粒状体を収容した型材をそれぞれに配置可能な複数の配置部が形成され、
前記回転機構が前記ターンテーブルを回転させることにより、複数の前記配置部の位置が可変とされ、
前記加熱機構が一の前記型材を加熱することにより、一の前記型材に収容された粒状体を溶湯に溶融する加熱処理と、前記冷却機構が他の前記型材を冷却することにより、他の前記型材に収容された溶湯を金属インゴットに固形化する冷却処理と、を同時に行うことを可能とする、インゴット鋳造装置。
【請求項2】
前記加熱機構は、前記チャンバー内で前記ターンテーブルの上側に設けられ、
平面視で前記加熱機構と同じ箇所には、前記ターンテーブルの下側に加熱昇降機構が設けられ、
前記加熱機構による加熱処理を、前記加熱昇降機構が一の前記型材を上昇させた状態で行う、請求項1に記載のインゴット鋳造装置。
【請求項3】
前記加熱機構は加熱コイルを備え、
前記型材が導電体で形成され、
前記加熱昇降機構が前記加熱コイルの内側に一の前記型材を上昇させた状態で、前記加熱コイルに電圧を印加して一の前記型材を誘導加熱することにより加熱処理を行う、請求項2に記載のインゴット鋳造装置。
【請求項4】
前記冷却機構が前記ターンテーブルの下側に設けられた冷却昇降機構であって、
前記冷却昇降機構が他の前記型材を上昇させた状態で冷却処理を行う、請求項1から請求項3の何れか一項に記載のインゴット鋳造装置。
【請求項5】
前記冷却昇降機構は、金属製の冷却板と、前記冷却板の内部に形成された冷却経路と、を備え、前記冷却昇降機構が前記冷却板を介して他の前記型材を上昇させた状態で、前記冷却経路に冷却水を流通させることにより冷却処理を行う、請求項4に記載のインゴット鋳造装置。
【請求項6】
前記冷却昇降機構は、前記冷却板の上方に固定された上側冷却部を備え、
前記冷却昇降機構が前記冷却板を介して他の前記型材を上昇させた際に、前記冷却板と前記上側冷却部とで他の前記型材を挟み込む、請求項5に記載のインゴット鋳造装置。
【請求項7】
前記上側冷却部の内部に冷却通路が形成され、前記冷却板と前記上側冷却部とで他の前記型材を挟み込んだ状態で、前記冷却通路に冷却水を流通させることにより冷却処理を行う、請求項6に記載のインゴット鋳造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金や銀等の貴金属のインゴットを鋳造するインゴット鋳造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金や銀等の貴金属を溶融させて鋳造を行う技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1には、窒素やアルゴン等の不活性ガスの環境下で粒状体の貴金属を溶融させた後に冷却して金属インゴットに固体化する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術においては、型材の交換の際に加熱炉が開放されるため、型材を加熱して貴金属を溶融した後に型材を入れ替える毎に、毎回加熱炉を真空状態にして不活性ガスを注入する作業が必要となる。即ち、多くの金属インゴットを鋳造するために必要な時間が長くなるため、鋳造効率の向上が求められていた。そこで、本開示は、上記に関する課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下では、上記課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
本発明に係るインゴット鋳造装置は、中空の本体部と、前記本体部を閉塞可能な蓋部と、を備えるチャンバーと、前記チャンバー内の下部に設けられたターンテーブルと、前記ターンテーブルを回転させる回転機構と、前記チャンバー内に設けられた加熱機構と、平面視で前記加熱機構と異なる箇所に設けられた少なくとも一個の冷却機構と、を備えたインゴット鋳造装置であって、前記ターンテーブルには、金属の粒状体を収容した型材をそれぞれに配置可能な複数の配置部が形成され、前記回転機構が前記ターンテーブルを回転させることにより、複数の前記配置部の位置が可変とされ、前記加熱機構が一の前記型材を加熱することにより、一の前記型材に収容された粒状体を溶湯に溶融する加熱処理と、前記冷却機構が他の前記型材を冷却することにより、他の前記型材に収容された溶湯を金属インゴットに固形化する冷却処理と、を同時に行うことを可能とする。
【0007】
また、本発明に係るインゴット鋳造装置において、前記加熱機構は、前記チャンバー内で前記ターンテーブルの上側に設けられ、平面視で前記加熱機構と同じ箇所には、前記ターンテーブルの下側に加熱昇降機構が設けられ、前記加熱機構による加熱処理を、前記加熱昇降機構が一の前記型材を上昇させた状態で行うことが好ましい。
【0008】
また、本発明に係るインゴット鋳造装置において、前記加熱機構は加熱コイルを備え、前記型材が導電体で形成され、前記加熱昇降機構が前記加熱コイルの内側に一の前記型材を上昇させた状態で、前記加熱コイルに電圧を印加して一の前記型材を誘導加熱することにより加熱処理を行うことが好ましい。
【0009】
また、本発明に係るインゴット鋳造装置において、前記冷却機構が前記ターンテーブルの下側に設けられた冷却昇降機構であって、前記冷却昇降機構が他の前記型材を上昇させた状態で冷却処理を行うことが好ましい。
【0010】
また、本発明に係るインゴット鋳造装置において、前記冷却昇降機構は、金属製の冷却板と、前記冷却板の内部に形成された冷却経路と、を備え、前記冷却昇降機構が前記冷却板を介して他の前記型材を上昇させた状態で、前記冷却経路に冷却水を流通させることにより冷却処理を行うことが好ましい。
【0011】
また、本発明に係るインゴット鋳造装置において、前記冷却昇降機構は、前記冷却板の上方に固定された上側冷却部を備え、前記冷却昇降機構が前記冷却板を介して他の前記型材を上昇させた際に、前記冷却板と前記上側冷却部とで他の前記型材を挟み込むことが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るインゴット鋳造装置において、前記上側冷却部の内部に冷却通路が形成され、前記冷却板と前記上側冷却部とで他の前記型材を挟み込んだ状態で、前記冷却通路に冷却水を流通させることにより冷却処理を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るインゴット鋳造装置によれば、1回の不活性ガスの注入作業で多数の金属インゴットを鋳造することができるため、鋳造効率を向上させることができる。
【0014】
また、本発明に係るインゴット鋳造装置によれば、加熱機構により加熱された型材がターンテーブルに与える熱の影響を抑制することができる。
【0015】
また、本発明に係るインゴット鋳造装置によれば、加熱機構による熱の影響を抑制することができる。
【0016】
また、本発明に係るインゴット鋳造装置によれば、冷却機構による型材の冷却効率を良くすることができる。
【0017】
また、本発明に係るインゴット鋳造装置によれば、冷却機構が冷却水を用いることにより、型材の冷却効率をさらに良くすることができる。
【0018】
また、本発明に係るインゴット鋳造装置によれば、冷却板と上側冷却部とで他の型材を挟み込むことにより、冷却機構による型材の冷却効率をより良くすることができる。
【0019】
また、本発明に係るインゴット鋳造装置によれば、上側冷却部に冷却水を流通させることにより、型材の冷却効率をさらに良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図4】ターンテーブルに型材を配置した状態を示す平面図。
【
図7】第二加熱工程及び第一冷却工程を示す断面図。
【
図9】第一変形例に係るインゴット鋳造装置における第二加熱工程及び第一冷却工程を示す断面図。
【
図10】第二変形例に係るインゴット鋳造装置における第二加熱工程及び第一冷却工程を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では
図1から
図5を用いて、本発明の一実施形態に係るインゴット鋳造装置(以下、単に「鋳造装置」と記載する)1について説明する。鋳造装置1は、「ショット」と呼ばれる貴金属(例えば、金や銀など)の粒状体を溶融させた後に冷却して固形化し、金属インゴットを製造する目的で用いられる。
【0022】
鋳造装置1を使用する際は、チャンバー3の内部に複数(本実施形態においては最大で六個)の型材Mを、それぞれの型材Mに形成された凹部Mrに粒状体を収容した状態で配置する。そして、型材Mを加熱して粒状体を溶融させた後に型材Mを冷却して金属インゴットを製造する。
【0023】
図1から
図5に示す如く、鋳造装置1は、筐体2、チャンバー3、ターンテーブル4、回転機構42、加熱機構5、加熱昇降機構52、及び、冷却昇降機構6等を構成要素として備える。また、鋳造装置1は図示しない真空ポンプ及び不活性ガス注入ボンベが接続される。以下、各構成要素について順に説明する。なお、本実施形態においては、
図1における右下側を鋳造装置1の前方とし、
図1における右上側を鋳造装置1の右側方として説明する。
【0024】
筐体2は、鋳造装置1の外形形状を構成するとともに鋳造装置1の各構成要素を収容する。筐体2の上面における右側には、使用者が鋳造装置1における各種動作(チャンバー3内の減圧及び不活性ガスの注入、回転機構42によるターンテーブル4の回転、加熱機構5による型材Mの加熱、加熱昇降機構52の駆動、冷却昇降機構6による型材Mの冷却等)を制御するための操作部2aが設けられる。使用者が操作部2aを操作することにより、図示しない制御装置を介して鋳造装置1の各種の動作が制御される。
【0025】
筐体2の上面にはチャンバー3が設けられる。チャンバー3は、中空の本体部31と、本体部31を閉塞可能な蓋部32と、を備える。蓋部32はヒンジ33を介して筐体2に上下に回動可能に組付けられる。本体部31を閉塞した際にチャンバー3の内部を視認可能とするために、蓋部32には透明板で形成された窓部32aが設けられている。
【0026】
チャンバー3内の下部には、鉛直方向に回動軸を向けた円板形状のターンテーブル4が設けられる。ターンテーブル4は、例えばガラス繊維シートの積層体を結合剤で固めた耐熱材で形成される。また、筐体2の内部における本体部31の下方には、ターンテーブル4を回転させる回転機構42が収容される。
図5に示す如く、回転機構42は本体部31の底部の下面に固定される。
【0027】
図2及び
図3に示す如く、ターンテーブル4には60度ずつ角度を設けて、ターンテーブル4を貫通する開口部4aが六箇所に開口されている。それぞれの開口部4aの内縁には、型材Mを配置可能な配置部41が設けられている。配置部41は耐熱性のセラミックで形成されている。なお、ターンテーブル4に形成する開口部4aの個数(配置部41の個数)は六個に限定されるものではなく、他の任意の個数とすることもできる。
【0028】
回転機構42は、モータ支持部43、モータ44、及び、シャフト部材45で構成される。モータ支持部43は本体部31の中央部における下面に固定され、モータ44を支持する。モータ44は制御装置の制御によりシャフト部材45を回転させる。シャフト部材45にはターンテーブル4が固定されており、シャフト部材45の回転によりターンテーブル4が平面視で時計回りに回転する(
図2中の矢印を参照)。このように、回転機構42がターンテーブル4を回転させることにより、六個の配置部41の位置が可変とされる。
【0029】
チャンバー3の内面における右側には、加熱機構5として加熱コイル51が設けられる。加熱コイル51はターンテーブル4の上側に設けられ、巻回方向が略水平となるように配置される。加熱コイル51には制御装置の制御により電圧が印加される。加熱コイル51は内部が中空に形成された銅製の管状部材であり、内側に冷却水を流通させることが可能とされる。
【0030】
図3及び
図5に示す如く、平面視で加熱コイル51と同じ箇所には、ターンテーブル4の下側に加熱昇降機構52が設けられる。加熱昇降機構52は、シリンダ支持部53、加熱用昇降シリンダ54、加熱用ロッド55、ブロック支持部材56、及び、昇降ブロック57で構成される。
【0031】
シリンダ支持部53は加熱コイル51の下側における本体部31の下面に固定され、エアシリンダである加熱用昇降シリンダ54を支持する。加熱用昇降シリンダ54は制御装置の制御により加熱用ロッド55を上下方向に進退させる。加熱用ロッド55の上端部にはブロック支持部材56を介して耐熱セラミック製の昇降ブロック57が固定される。加熱用昇降シリンダ54の駆動により、
図6に示す如く昇降ブロック57が上昇する。この際、昇降ブロック57の上面はターンテーブル4の開口部4aを通過してターンテーブル4の上側に変位する。
【0032】
本実施形態に係る鋳造装置1において、型材Mは導電体であるカーボン素材が採用されている。そして、
図6及び
図7に示す如く、加熱昇降機構52が加熱コイル51の内側に型材Mを上昇させた状態で、
図6及び
図7中の矢印Cに示す如く加熱コイル51に電圧を印加する。このように、鋳造装置1においては加熱コイル51で型材Mを誘導加熱することにより加熱処理が行われる。
【0033】
本実施形態に係る鋳造装置1においては上記の如く、加熱コイル51による誘導加熱で型材Mを加熱している。これにより、加熱機構5の温度上昇を抑制できるため、加熱機構5による熱の影響を抑制することができる。なお、鋳造装置1においては、電熱ヒータによる加熱等、他の方法で型材Mを加熱する構成とすることも可能である。
【0034】
また、本実施形態に係る鋳造装置1においては上記の如く、加熱昇降機構52により型材Mを上昇させた状態で加熱処理を行っている。これにより、ターンテーブル4から離れた箇所で型材Mを加熱できるため、加熱機構5により加熱された型材Mがターンテーブル4に与える熱の影響を抑制することができる。
【0035】
チャンバー3の下面には、加熱昇降機構52から時計回りに60度変位した箇所に冷却昇降機構6(第一冷却昇降機構6A)が設けられる。また、チャンバー3の下面における第一冷却昇降機構6Aから時計回りに60度変位した箇所には冷却昇降機構6(第二冷却昇降機構6B)が設けられる。本実施形態において、第一冷却昇降機構6Aと第二冷却昇降機構6Bの構成は同一であるため、以下では第一冷却昇降機構6Aについて説明する。
【0036】
冷却昇降機構6は、シリンダ支持部61、冷却用昇降シリンダ62、冷却用ロッド63、冷却ブロック64、及び、冷却板65で構成される。シリンダ支持部61は本体部31の下面に固定され、エアシリンダである冷却用昇降シリンダ62を支持する。冷却用昇降シリンダ62は制御装置の制御により冷却用ロッド63を上下方向に進退させる。冷却用ロッド63の上端部には冷却ブロック64を介して銅製の板材である冷却板65が固定される。
【0037】
冷却ブロック64の内部には冷却経路64aが形成される。また、冷却板65の内部には冷却経路65aが形成される。冷却経路64a・65aは互いに連通されるとともに、配管Pに接続される。
図7及び
図8に示す如く、配管Pから冷却水Wが供給されることにより、冷却ブロック64及び冷却板65の内部に冷却水Wが流通する。
【0038】
冷却用昇降シリンダ62の駆動により、
図7及び
図8に示す如く冷却板65が上昇する。この際、冷却板65の上面はターンテーブル4の開口部4aを通過してターンテーブル4のやや上側に変位する。本実施形態においては、冷却昇降機構6が冷却板65の内部に冷却水Wを流通させた状態で、
図7及び
図8に示す如く冷却板65を型材Mに当接させて上昇させる。このように、鋳造装置1においては冷却板65に冷却水Wを流通させることにより冷却処理が行われる。
【0039】
本実施形態に係る鋳造装置1においては上記の如く、冷却板65に冷却水Wを流通させて型材Mを冷却することにより、冷却昇降機構6による型材Mの冷却効率を良くしている。なお、なお、鋳造装置1においては、冷却風による冷却等、他の方法で型材Mを冷却する構成とすることも可能である。
【0040】
また、本実施形態に係る鋳造装置1においては上記の如く、冷却昇降機構6により型材Mを上昇させた状態で冷却処理を行っている。これにより、型材Mに冷却板65を密着させることができるため、冷却昇降機構6による型材Mの冷却効率を良くすることができる。
【0041】
なお、本実施形態において冷却昇降機構6は二個設けられることにより、一個の型材Mに対して冷却処理を二回施すように構成しているが、鋳造装置1においては少なくとも一個の冷却機構を備えていれば良く、その数は限定されるものではない。即ち、鋳造装置1が備える冷却機構の数を一個又は三個以上(本実施形態においては最大で五個)とすることも可能である。
【0042】
次に、
図1から
図8を用いて、本実施形態に係る鋳造装置1を使用する際の手順について説明する。以下では、鋳造装置1で使用可能な最大数である六個の型材Mで金属インゴットを製造する場合について説明する。
【0043】
まず、それぞれの型材Mに形成された凹部Mrに金属の粒状体を収容して蓋をし、
図4に示す如くそれぞれの型材Mを六箇所の配置部41に配置する。その後、チャンバー3の蓋部32を閉塞して本体部31を密閉し、チャンバー3内の真空引きと不活性ガスの注入を行う。
【0044】
本実施形態に記載の型材Mは、
図4に示す如く一個あたり六箇所に凹部Mrが形成されている。このため、
図4に示す如く、鋳造装置1においては一回の鋳造工程で最大三十六個の金属インゴットを製造することができる。
【0045】
本実施形態に係る鋳造装置1においては、製造する金属インゴットの大きさ(重量)に応じて、型材Mに形成する凹部Mrの大きさ及び数を変更することも可能である。例えば、一個の型材Mに凹部Mrを二個形成した場合は、鋳造装置1においては一回の鋳造工程で最大十二個の金属インゴットを製造することができる。
【0046】
本実施形態に係る鋳造装置1において、ターンテーブル4は平面視で時計回りに回転するため、型材Mは反時計回りに加熱処理が施される。
図4では、最初に加熱処理が施される型材Mを第一型材M1とし、以降、加熱処理が施される順番で、反時計回り方向に第二型材M2~第六型材M6としている。
【0047】
次に、
図6に示す如く加熱用昇降シリンダ54を駆動して、昇降ブロック57の上面で第一型材M1を加熱コイル51の内側に上昇させた状態で、加熱コイル51に電圧を印加する。これにより、加熱コイル51で第一型材M1を誘導加熱することにより加熱処理が行われ、第一型材M1中の粒状体を溶融させる(第一加熱工程)。
【0048】
その後、加熱用昇降シリンダ54を駆動して、第一型材M1をターンテーブル4の上面に降下させる。さらに、回転機構42を駆動させて、ターンテーブル4を平面視で時計回り方向に60度回転させる。これにより、第一型材M1が第一冷却昇降機構6Aと同じ位置に配置され、第二型材M2が加熱コイル51及び加熱昇降機構52と同じ位置に配置される。
【0049】
次に、
図7に示す如く加熱用昇降シリンダ54を駆動して、昇降ブロック57の上面で第二型材M2を加熱コイル51の内側に上昇させた状態で、加熱コイル51に電圧を印加する。これにより、加熱コイル51で第二型材M2を誘導加熱することにより加熱処理が行われ、第二型材M2中の粒状体を溶融させる(第二加熱工程)。
【0050】
第二加熱工程と同時に、
図7に示す如く第一冷却昇降機構6Aにおいて、冷却板65の内部に冷却水Wを流通させた状態で、冷却板65を第一型材M1に当接させて上昇させる。これにより、冷却板65に冷却水Wを流通させることにより一回目の冷却処理が行われ、第一型材M1中の溶湯が固形化する(第一冷却工程)。
【0051】
このように、鋳造装置1においては、加熱機構5における加熱処理と、冷却昇降機構6(第一冷却昇降機構6A及び第二冷却昇降機構6B)における冷却処理とを同時に行うことができる。さらに、ターンテーブル4を60度回転させて、加熱機構5における第三型材M3の加熱、第一冷却昇降機構6Aにおける第二型材M2の一回目の冷却、第二冷却昇降機構6Bにおける第一型材M1の二回目の冷却を同時に行う(第三加熱工程及び第二冷却工程)。
【0052】
以下同様に、ターンテーブル4を60度ずつ回転させて、第四加熱工程及び第三冷却工程、第五加熱工程及び第四冷却工程、第六加熱工程及び第五冷却工程を行う。その後、
図8に示す如く第六型材M6が第一冷却昇降機構6Aと同じ位置に配置された状態においては、第一型材M1が加熱コイル51及び加熱昇降機構52と同じ位置に配置されるため、第六冷却工程の際は第一冷却昇降機構6Aにおける第六型材M6の冷却のみを行う。第一冷却昇降機構6Aにおいて第六型材M6を充分に冷却した後に、チャンバー3の蓋部32を開放し、型材M及び三十六個の金属インゴットを取り出す。
【0053】
上記の如く、本実施形態に係る鋳造装置1においては、加熱機構5が一の型材Mを加熱することにより、一の型材Mに収容された粒状体を溶湯に溶融する加熱処理と、冷却昇降機構6が他の型材Mを冷却することにより、他の型材Mに収容された溶湯を金属インゴットに固形化する冷却処理と、を同時に行うことを可能とする。
【0054】
これにより、チャンバー3への1回の真空引き及び不活性ガスの注入作業で多数の金属インゴットを鋳造することができる。即ち、製造する金属インゴットの数に対するチャンバー3の真空引き及び不活性ガスの注入作業を行う回数を低減させることができるため、金属インゴットの鋳造効率を向上させることができる。
【0055】
また、鋳造装置1においては、一の型材Mに対する加熱処理と他の型材Mに対する冷却処理とを同時に行うことにより、金属インゴットの鋳造に必要な工程を並行して進めることができるため、金属インゴットの鋳造効率を向上させることができる。即ち、多数の金属インゴットの鋳造に必要な時間を短縮することが可能となる。
【0056】
次に、
図9を用いて、本発明の第一変形例に係る鋳造装置について説明する。本変形例以降に記載する鋳造装置は、前記実施形態に係る鋳造装置1の構成に対して、上側冷却部70を付加した構成である。即ち、以降の鋳造装置については、上側冷却部70以外の構成は鋳造装置1と同様であるため、鋳造装置1と同じ構成には同符号を付して詳細な説明を省略するとともに、上側冷却部70の構成を中心に説明する。
【0057】
図9は本変形例に係るインゴット鋳造装置における第二加熱工程及び第一冷却工程(前記実施形態における
図7に相当)を示す断面図である。
図9に示す如く、上側冷却部70は、固定部材71、支持部材72、及び、上側冷却板73を備えて構成される。
【0058】
固定部材71はチャンバー3の本体部31の内側壁に固定される棒状部材である。固定部材71の上部には、本体部31の中心方向に向かって延出される支持部材72が固定される。支持部材72の下部には銅板の下側にセラミック製の断熱板が設けられた上側冷却板73が自在ボルトを介して連結される。
【0059】
図9に示す如く、上側冷却板73は第一冷却昇降機構6Aの上側に配置されている。これにより、第一冷却昇降機構6Aが冷却板65を介して第一型材M1を上昇させた際に、第一型材M1は、冷却板65と、上側冷却部70の上側冷却板73と、により挟み込まれる。
【0060】
本変形例においては上記の如く構成することにより、冷却処理の際に型材Mの上面に上側冷却板73を当接させた状態で冷却処理を行っている。これにより、型材Mの上面から上側冷却板73への熱伝導による冷却が促進される。即ち、本変形例に係る鋳造装置によれば、冷却板65と上側冷却部70とで型材Mを挟み込むことにより、第一冷却昇降機構6Aによる型材Mの冷却効率をより良くすることができる。
【0061】
次に、
図10を用いて、本発明の第二変形例に係る鋳造装置について説明する。本変形例以降に記載する鋳造装置についても、上側冷却部170以外の構成は鋳造装置1と同様であるため、鋳造装置1と同じ構成には同符号を付して詳細な説明を省略するとともに、上側冷却部170の構成を中心に説明する。
【0062】
図10は本変形例に係るインゴット鋳造装置における第二加熱工程及び第一冷却工程を示す断面図である。
図10に示す如く、上側冷却部170は、固定部材171、支持部材172、上側冷却板173、及び配管174を備えて構成される。
【0063】
固定部材171はチャンバー3の本体部31の内側壁に固定される棒状部材である。固定部材171の上部には、本体部31の中心方向に向かって延出される支持部材172が固定される。支持部材172の下部には銅製の板部材である上側冷却板173が自在ボルトを介して連結される。上側冷却板173の内部には、外部の冷却ポンプと配管174で接続された冷却通路173aが形成されている。
【0064】
図10に示す如く、上側冷却板173は第一冷却昇降機構6Aの上側に配置されている。これにより、第一冷却昇降機構6Aが冷却板65を介して第一型材M1を上昇させた際に、第一型材M1は、冷却板65と、上側冷却部170の上側冷却板173と、により挟み込まれる。
【0065】
本変形例においては上記の如く構成することにより、冷却処理の際に型材Mの上面に上側冷却板173を当接させ、冷却通路173aに冷却水を流通させた状態で冷却処理を行っている。これにより、型材Mの上面から上側冷却板173への熱伝導による冷却をより促進できる。即ち、本変形例に係る鋳造装置によれば、冷却板65と上側冷却部170とで型材Mを挟み込んだ状態で上側冷却板173に冷却水を流通させることにより、第一冷却昇降機構6Aによる型材Mの冷却効率をさらに良くすることができる。
【符号の説明】
【0066】
1 鋳造装置(インゴット鋳造装置)
2 筐体 2a 操作部
3 チャンバー 4 ターンテーブル
4a 開口部 5 加熱機構
6 冷却昇降機構(冷却機構)
6A 第一冷却昇降機構 6B 第二冷却昇降機構
31 本体部 32 蓋部
32a 窓部 33 ヒンジ
41 配置部 42 回転機構
43 モータ支持部 44 モータ
45 シャフト部材
51 加熱コイル 52 加熱昇降機構
53 シリンダ支持部 54 加熱用昇降シリンダ
55 加熱用ロッド 56 ブロック支持部材
57 昇降ブロック
61 シリンダ支持部 62 冷却用昇降シリンダ
63 冷却用ロッド 64 冷却ブロック
64a 冷却経路 65 冷却板
65a 冷却経路
70 上側冷却部 71 固定部材
72 支持部材 73 上側冷却板
170 上側冷却部 171 固定部材
172 支持部材 173 上側冷却板
173a 冷却通路 174 配管
M 型材 M1~M6 第一型材~第六型材
Mr 凹部 W 冷却水
P 配管