IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソーク インスティテュート フォー バイオロジカル スタディーズの特許一覧

特開2023-92453非分裂細胞のゲノム編集のための方法と組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092453
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】非分裂細胞のゲノム編集のための方法と組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 48/00 20060101AFI20230626BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20230626BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20230626BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230626BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20230626BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230626BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230626BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230626BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230626BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20230626BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230626BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20230626BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20230626BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230626BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230626BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230626BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230626BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20230626BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20230626BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230626BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230626BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20230626BHJP
   C12N 15/86 20060101ALN20230626BHJP
   C12N 15/85 20060101ALN20230626BHJP
   C12N 9/10 20060101ALN20230626BHJP
【FI】
A61K48/00
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/09 110
A61P27/02
A61P21/04
A61P25/00
A61P25/28
A61P13/12
A61P35/00
A61P1/00
A61P3/00
A61P5/00
A61P7/00
A61P9/00
A61P11/00
A61P17/00
A61P25/16
A61P25/14
A61P37/00
A61K31/7088
A61K35/76
A61K35/761
C12N15/86 Z
C12N15/85 Z
C12N9/10
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022159696
(22)【出願日】2022-10-03
(62)【分割の表示】P 2019501985の分割
【原出願日】2017-07-14
(31)【優先権主張番号】62/363,164
(32)【優先日】2016-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】513037649
【氏名又は名称】ソーク インスティテュート フォー バイオロジカル スタディーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】恒川 雄二
(72)【発明者】
【氏名】イズピスア ベルモンテ,ファン カルロス
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】ヘルナンデス-ベニテス,レイナ
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ジュン
【テーマコード(参考)】
4B050
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B050CC03
4B050CC10
4B050DD20
4B050LL01
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZA02
4C084ZA15
4C084ZA16
4C084ZA33
4C084ZA36
4C084ZA51
4C084ZA59
4C084ZA66
4C084ZA94
4C084ZA96
4C084ZB07
4C084ZB26
4C084ZC02
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZA51
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA94
4C086ZA96
4C086ZB07
4C086ZB26
4C086ZC02
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA15
4C087ZA16
4C087ZA33
4C087ZA36
4C087ZA51
4C087ZA59
4C087ZA66
4C087ZA94
4C087ZA96
4C087ZB07
4C087ZB26
4C087ZC02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】遺伝性疾患の治療のための組成物の使用を提供する。
【解決手段】外来性DNA配列に対して逆配向である標的配列を含む標的構築物、前記標的配列に相同する相補鎖オリゴヌクレオチド、及びCRISPRヌクレアーゼを含み、ここで、前記外来性DNA配列はゲノムと比較して少なくとも1つのヌクレオチドとの差異を含み、標的配列とゲノム中の標的核酸配列はCRISPRヌクレアーゼにより認識され、前記ゲノム中の前記標的核酸配列は、一旦、前記外来性DNA配列が正確な配向で前記非分裂細胞の前記ゲノムに組み込まれると、ゲノム中に存在しなくなる、組成物の使用を提供する。
【選択図】図1F
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非分裂細胞のゲノムに外来性DNA配列を組み込む方法であって、該方法は、外来性DNA配列と標的配列を含む標的構築物、標的配列に相同する相補鎖オリゴヌクレオチド、及びヌクレアーゼに非分裂細胞を接触させる工程を含み、ここで、外来性DNA配列は、ゲノムと比較して少なくとも1つのヌクレオチドの差異を含み、標的配列はヌクレアーゼにより認識される、方法。
【請求項2】
外来性DNA配列は非分裂細胞のゲノムにおける突然変異を修正する、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
外来性DNA配列は非分裂細胞のゲノムにおける突然変異を引き起こす、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
突然変異は、ミスセンス突然変異、ナンセンス突然変異、サイレント突然変異、挿入、及び欠失から選択される、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
ヌクレアーゼは、CRISPRヌクレアーゼ、TALEN、DNA誘導型ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、及びジンクフィンガーヌクレアーゼから選択される、ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1つに記載の方法。
【請求項6】
CRISPRヌクレアーゼは、Cas9、Cpf1、Cas12b(C2c1)、Cas13a(C2c2)、Cas13b(C2c6)、及びC2c3から選択される、ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1つに記載の方法。
【請求項7】
DNA誘導型ヌクレアーゼはNgAgoヌクレアーゼである、ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1つに記載の方法。
【請求項8】
標的配列は、一旦、外来性DNAが正確な配向でゲノムに組み込まれると存在しなくなる、ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1つに記載の方法。
【請求項9】
非分裂細胞は最終分化細胞を含む、ことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1つに記載の方法。
【請求項10】
標的構築物、相補鎖オリゴヌクレオチド、及び、ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、非ウイルスベクター又はウイルスベクターに含まれている、ことを特徴とする請求項1乃至9の何れか1つに記載の方法。
【請求項11】
ウイルスベクターは、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスから選択される、ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
標的配列は、ヌクレアーゼによって特異的に切断される配列である、ことを特徴とする請求項1乃至11の何れか1つに記載の方法。
【請求項13】
標的構築物は、外来性DNA配列に隣接する2つの標的配列を含む、ことを特徴とする請求項1乃至12の何れか1つに記載の方法。
【請求項14】
標的構築物はミニサークルを含む、ことを特徴とする請求項1乃至13の何れか1つに記載の方法。
【請求項15】
非分裂細胞は、リンパ球、単球、好中球、好酸球、好塩基球、内皮細胞、上皮細胞、肝細胞、骨細胞、血小板、脂肪細胞、心筋細胞、ニューロン、網膜細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、精母細胞、卵母細胞、及び膵臓β細胞のうち1つ以上から選択される、ことを特徴とする請求項1乃至14の何れか1つに記載の方法。
【請求項16】
非分裂細胞のゲノムにおけるDNA配列を改変する方法であって、該方法は、外来性DNA配列と標的配列を含む標的構築物、標的配列に相同する相補鎖オリゴヌクレオチド、及びヌクレアーゼに非分裂細胞を接触させる工程を含み、ここで、外来性DNA配列は、ゲノムDNA配列と比較して少なくとも1つのヌクレオチドの差異を含み、標的配列はヌクレアーゼにより認識される、方法。
【請求項17】
外来性DNA配列は非分裂細胞のゲノムにおける突然変異を修正する、ことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
外来性DNA配列は非分裂細胞のゲノムにおける突然変異を引き起こす、ことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
突然変異は、ミスセンス突然変異、ナンセンス突然変異、サイレント突然変異、挿入、及び欠失から選択される、ことを特徴とする請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
ヌクレアーゼは、CRISPRヌクレアーゼ、TALEN、DNA誘導型ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、及びジンクフィンガーヌクレアーゼから選択される、ことを特徴とする請求項16乃至19の何れか1つに記載の方法。
【請求項21】
CRISPRヌクレアーゼは、Cas9、Cpf1、Cas12b(C2c1)、Cas13a(C2c2)、Cas13b(C2c6)、及びC2c3から選択される、ことを特徴とする請求項16乃至20の何れか1つに記載の方法。
【請求項22】
DNA誘導型ヌクレアーゼはNgAgoヌクレアーゼである、ことを特徴とする請求項16乃至21の何れか1つに記載の方法。
【請求項23】
標的配列は、一旦、ゲノムDNA配列が改変されると存在しなくなる、ことを特徴とする請求項16乃至22の何れか1つに記載の方法。
【請求項24】
非分裂細胞は最終分化細胞を含む、ことを特徴とする請求項16乃至23の何れか1つに記載の方法。
【請求項25】
標的構築物、相補鎖オリゴヌクレオチド、及び、ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、非ウイルスベクター又はウイルスベクターに含まれている、ことを特徴とする請求項16乃至24の何れか1つに記載の方法。
【請求項26】
ウイルスベクターは、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスから選択される、ことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
標的配列は、ヌクレアーゼによって特異的に切断される、ことを特徴とする請求項16乃至26の何れか1つに記載の方法。
【請求項28】
標的構築物は、外来性DNA配列に隣接する2つの標的配列を含む、ことを特徴とする請求項16乃至27の何れか1つに記載の方法。
【請求項29】
標的構築物はミニサークルを含む、ことを特徴とする請求項16乃至28の何れか1つに記載の方法。
【請求項30】
非分裂細胞は、リンパ球、単球、好中球、好酸球、好塩基球、内皮細胞、上皮細胞、肝細胞、骨細胞、血小板、脂肪細胞、心筋細胞、ニューロン、網膜細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、精母細胞、卵母細胞、及び膵臓β細胞のうち1つ以上から選択される、ことを特徴とする請求項16乃至29の何れか1つに記載の方法。
【請求項31】
DNA配列を改変する方法であって、該方法は、外来性DNA配列と標的配列の2つのコピーとを含む標的構築物、標的配列に相同する相補鎖オリゴヌクレオチド、及びヌクレアーゼに、DNA配列を接触させる工程を含み、ここで、外来性DNA配列は、DNA配列と比較して少なくとも1つのヌクレオチドの差異を含み、標的配列はヌクレアーゼにより認識される、方法。
【請求項32】
外来性DNA配列は突然変異を修正する、ことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
外来性DNA配列は突然変異を引き起こす、ことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項34】
突然変異は、ミスセンス突然変異、ナンセンス突然変異、サイレント突然変異、挿入、及び欠失から選択される、ことを特徴とする請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
ヌクレアーゼは、CRISPRヌクレアーゼ、TALEN、DNA誘導型ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、及びジンクフィンガーヌクレアーゼから選択される、ことを特徴とする請求項31乃至34の何れか1つに記載の方法。
【請求項36】
DNA誘導型ヌクレアーゼはNgAgoヌクレアーゼである、ことを特徴とする請求項31乃至35の何れか1つに記載の方法。
【請求項37】
CRISPRヌクレアーゼは、Cas9、Cpf1、Cas12b(C2c1)、Cas13a(C2c2)、Cas13b(C2c6)、及びC2c3から選択される、ことを特徴とする請求項31乃至36の何れか1つに記載の方法。
【請求項38】
DNA配列は細胞のゲノムの少なくとも一部である、ことを特徴とする請求項31乃至37の何れか1つに記載の方法。
【請求項39】
細胞は分裂細胞である、ことを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項40】
細胞は非分裂細胞である、ことを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項41】
非分裂細胞は最終分化細胞である、ことを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項42】
非分裂細胞は、リンパ球、単球、好中球、好酸球、好塩基球、内皮細胞、上皮細胞、肝細胞、骨細胞、血小板、脂肪細胞、心筋細胞、ニューロン、網膜細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、精母細胞、卵母細胞、及び膵臓β細胞のうち1つ以上から選択される、ことを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項43】
標的配列は、一旦、DNA配列が正確な配向で標的配列により改変されると存在しなくなる、ことを特徴とする請求項31乃至42の何れか1つに記載の方法。
【請求項44】
標的構築物、相補鎖オリゴヌクレオチド、及び、ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、非ウイルスベクター又はウイルスベクターに含まれている、ことを特徴とする請求項31乃至43の何れか1つに記載の方法。
【請求項45】
ウイルスベクターは、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスから選択される、ことを特徴とする請求項44に記載の方法。
【請求項46】
標的配列は、ヌクレアーゼによって特異的に切断される、ことを特徴とする請求項31乃至45の何れか1つに記載の方法。
【請求項47】
必要とする被験体の遺伝性疾患を処置する方法であって、ここで、遺伝性疾患は、野生型遺伝子と比較して少なくとも1つの変更されたヌクレオチドを持つ突然変異遺伝子から結果として生じ、前記方法は、野生型遺伝子又はその断片に相同するDNA配列と標的配列とを含む標的構築物、標的配列に相同する相補鎖オリゴヌクレオチド、及びヌクレアーゼを含む組成物に、被験体の少なくとも1つの細胞を接触させる工程を含み、標的配列は、突然変異遺伝子又はその突然変異断片が野生型遺伝子又はその断片と置き換えられるようにヌクレアーゼによって認識される、方法。
【請求項48】
突然変異遺伝子は、ミスセンス突然変異、ナンセンス突然変異、サイレント突然変異、挿入、及び欠失から選択される突然変異を含む、ことを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項49】
ヌクレアーゼは、CRISPRヌクレアーゼ、TALEN、DNA誘導型ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、及びジンクフィンガーヌクレアーゼから選択される、ことを特徴とする請求項47又は48に記載の方法。
【請求項50】
CRISPRヌクレアーゼは、Cas9、Cpf1、Cas12b(C2c1)、Cas13a(C2c2)、Cas13b(C2c6)、及びC2c3から選択される、ことを特徴とする請求項47乃至49の何れか1つに記載の方法。
【請求項51】
DNA誘導型ヌクレアーゼはNgAgoである、ことを特徴とする請求項47乃至49の何れか1つに記載の方法。
【請求項52】
標的構築物、相補鎖オリゴヌクレオチド、及び、ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、非ウイルスベクター又はウイルスベクターに含まれている、ことを特徴とする請求項47乃至51の何れか1つに記載の方法。
【請求項53】
ウイルスベクターは、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスから選択される、ことを特徴とする請求項47乃至52の何れか1つに記載の方法。
【請求項54】
標的配列は、ヌクレアーゼによって特異的に切断される、ことを特徴とする請求項47乃至53の何れか1つに記載の方法。
【請求項55】
標的配列は、一旦、突然変異遺伝子又はその断片が正確な配向で野生型遺伝子又はその断片と置き換えられると存在しなくなる、ことを特徴と請求項47乃至54の何れか1つに記載の方法。
【請求項56】
遺伝性疾患は、軟骨無形成症、α1-アンチトリプシン欠損症、アルツハイマー病、抗リン脂質抗体症候群、自閉症、常染色体優性多発性嚢胞腎、乳癌、癌、シャルコー・マリー・トゥース病、結腸癌、ネコ鳴き症候群、クローン病、嚢胞性繊維症、ダーカム病、ダウン症候群、デュアン症候群、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、第V因子ライデン血栓症、家族性高コレステロール血症、家族性地中海熱、脆弱X症候群、ゴーシェ病、ヘモクロマトーシス、血友病、全前脳症、ハンチントン病、クラインフェルター症候群、レーバー先天黒内障、マルファン症候群、筋緊張性ジストロフィー、神経線維腫症、ヌーナン症候群、骨形成不全症、パーキンソン病、フェニルケトン尿症、ポーランド症候群、ポルフィリン症、早老症、前立腺癌、色素性網膜炎、重症複合免疫不全症(SCID)、鎌状赤血球症、皮膚癌、脊髄性筋萎縮症、シュタルガルト病、テイ・ザックス病、サラセミア、トリメチルアミン尿症、ターナー症候群、口蓋心臓顔面症候群、WAGR症候群、及びウィルソン病から選択される、ことを特徴とする請求項47乃至55の何れか1つに記載の方法。
【請求項57】
細胞は、リンパ球、単球、好中球、好酸球、好塩基球、内皮細胞、上皮細胞、肝細胞、骨細胞、血小板、脂肪細胞、心筋細胞、ニューロン、網膜細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、精母細胞、卵母細胞、及び膵臓β細胞のうち1つ以上から選択される非分裂細胞である、ことを特徴とする請求項47乃至56の何れか1つに記載の方法。
【請求項58】
遺伝性疾患の処置に使用するための、野生型遺伝子又はその断片に相同するDNA配列と標的配列とを含む標的構築物、標的配列に相同する相補鎖オリゴヌクレオチド、及びヌクレアーゼを含む、組成物であって、標的配列はヌクレアーゼにより認識される、組成物。
【請求項59】
遺伝性疾患は、ミスセンス突然変異、ナンセンス突然変異、サイレント突然変異、挿入、及び欠失から選択される突然変異により引き起こされる、ことを特徴とする請求項58に記載の組成物。
【請求項60】
ヌクレアーゼは、CRISPRヌクレアーゼ、TALEN、DNA誘導型ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、及びジンクフィンガーヌクレアーゼから選択される、ことを特徴とする請求項58又は59に記載の組成物。
【請求項61】
CRISPRヌクレアーゼは、Cas9、Cpf1、Cas12b(C2c1)、Cas13a(C2c2)、Cas13b(C2c6)、及びC2c3から選択される、ことを特徴とする請求項58乃至60の何れか1つに記載の組成物。
【請求項62】
DNA誘導型ヌクレアーゼはNgAgoヌクレアーゼである、ことを特徴とする請求項58乃至60の何れか1つに記載の組成物。
【請求項63】
標的構築物、相補鎖オリゴヌクレオチド、及び、ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、非ウイルスベクター又はウイルスベクターに含まれている、ことを特徴とする請求項58乃至62の何れか1つに記載の組成物。
【請求項64】
ウイルスベクターは、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスから選択される、ことを特徴とする請求項58乃至63の何れか1つに記載の組成物。
【請求項65】
標的配列は、ヌクレアーゼによって特異的に切断される、ことを特徴とする請求項58乃至64の何れか1つに記載の組成物。
【請求項66】
標的配列は、一旦、突然変異遺伝子又はその断片が正確な配向で野生型遺伝子又はその断片と置き換えられると存在しなくなる、ことを特徴と請求項58乃至65の何れか1つに記載の組成物。
【請求項67】
遺伝性疾患は、軟骨無形成症、α1-アンチトリプシン欠損症、アルツハイマー病、抗リン脂質抗体症候群、自閉症、常染色体優性多発性嚢胞腎、乳癌、癌、シャルコー・マリー・トゥース病、結腸癌、ネコ鳴き症候群、クローン病、嚢胞性繊維症、ダーカム病、ダウン症候群、デュアン症候群、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、第V因子ライデン血栓症、家族性高コレステロール血症、家族性地中海熱、脆弱X症候群、ゴーシェ病、ヘモクロマトーシス、血友病、全前脳症、ハンチントン病、クラインフェルター症候群、レーバー先天黒内障、マルファン症候群、筋緊張性ジストロフィー、神経線維腫症、ヌーナン症候群、骨形成不全症、パーキンソン病、フェニルケトン尿症、ポーランド症候群、ポルフィリン症、早老症、前立腺癌、色素性網膜炎、重症複合免疫不全症(SCID)、鎌状赤血球症、皮膚癌、脊髄性筋萎縮症、シュタルガルト病、テイ・ザックス病、サラセミア、トリメチルアミン尿症、ターナー症候群、口蓋心臓顔面症候群、WAGR症候群、及びウィルソン病から選択される、ことを特徴とする請求項58乃至66の何れか1つに記載の方法。
【請求項68】
遺伝性疾患は、リンパ球、単球、好中球、好酸球、好塩基球、内皮細胞、上皮細胞、肝細胞、骨細胞、血小板、脂肪細胞、心筋細胞、ニューロン、網膜細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、精母細胞、卵母細胞、及び膵臓β細胞のうち1つ以上から選択される非分裂細胞における突然変異によって引き起こされる、ことを特徴とする請求項58乃至67の何れか1つに記載の組成物。
【請求項69】
外来性DNA配列と少なくとも2つの標的配列とを含む標的構築物、標的配列に相同する相補鎖オリゴヌクレオチド、及びヌクレアーゼを含む、組成物であって、標的配列はヌクレアーゼにより認識される、組成物。
【請求項70】
組成物は非分裂細胞を含む、ことを特徴とする請求項69に記載の組成物。
【請求項71】
標的構築物、相補鎖オリゴヌクレオチド、及び、ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、非ウイルスベクター又はウイルスベクターに含まれている、ことを特徴とする請求項69又は70に記載の組成物。
【請求項72】
ウイルスベクターは、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスから選択される、ことを特徴とする請求項71に記載の組成物。
【請求項73】
薬学的に許容可能なバッファー又は賦形剤を含む、請求項69乃至72の何れかに記載の組成物。
【請求項74】
外来性DNA配列と、非分裂細胞のゲノムに挿入される標的配列の第1の半分及び第2の半分とを含む組成物であって、標的配列の第1の半分及び第2の半分はヌクレアーゼによって切断され、標的配列の第1の半分及び第2の半分は、外来性DNA配列のゲノム上流及び下流に挿入される、組成物。
【請求項75】
外来性DNA配列は、ウイルス及びヌクレアーゼによって非分裂細胞のゲノムに組み込まれる、ことを特徴とする請求項74に記載の組成物。
【請求項76】
ウイルスは、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスから選択される、ことを特徴とする請求項75に記載の組成物。
【請求項77】
ヌクレアーゼは、CRISPRヌクレアーゼ、TALEN、DNA誘導型ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、及びジンクフィンガーヌクレアーゼから選択される、ことを特徴とする請求項74乃至76の何れか1つに記載の組成物。
【請求項78】
CRISPRヌクレアーゼは、Cas9、Cpf1、Cas12b(C2c1)、Cas13a(C2c2)、Cas13b(C2c6)、及びC2c3から選択される、ことを特徴とする請求項74乃至77の何れか1つに記載の組成物。
【請求項79】
DNA誘導型ヌクレアーゼはNgAgoヌクレアーゼである、ことを特徴とする請求項74乃至78の何れか1つに記載の組成物。
【請求項80】
薬学的に許容可能なバッファー又は賦形剤を含む、請求項74乃至79の何れかに記載の組成物。
【請求項81】
非分裂細胞は、リンパ球、単球、好中球、好酸球、好塩基球、内皮細胞、上皮細胞、肝細胞、骨細胞、血小板、脂肪細胞、心筋細胞、ニューロン、網膜細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、精母細胞、卵母細胞、及び膵臓β細胞のうち1つ以上から選択される、ことを特徴とする請求項74乃至80の何れか1つに記載の組成物。
【請求項82】
外来性DNA配列と少なくとも1つの標的配列とを含む標的構築物、標的配列に相同する相補鎖オリゴヌクレオチド、ヌクレアーゼ、及び非分裂細胞への遺伝子改変を行なうための指示書を含む、キットであって、標的配列はヌクレアーゼにより認識される、キット。
【請求項83】
標的構築物は少なくとも2つの標的配列を含む、ことを特徴とする請求項82に記載のキット。
【請求項84】
標的構築物はミニサークルを含む、ことを特徴とする請求項82又は83に記載のキット。
【請求項85】
標的構築物、相補鎖オリゴヌクレオチド、及び、ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、非ウイルスベクター又はウイルスベクターに含まれている、ことを特徴とする請求項82乃至84の何れか1つに記載のキット。
【請求項86】
ヌクレアーゼは、CRISPRヌクレアーゼ、TALEN、DNA誘導型ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、及びジンクフィンガーヌクレアーゼから選択される、ことを特徴とする請求項82乃至85の何れか1つに記載のキット。
【請求項87】
CRISPRヌクレアーゼは、Cas9、Cpf1、Cas12b(C2c1)、Cas13a(C2c2)、Cas13b(C2c6)、及びC2c3から選択される、ことを特徴とする請求項82乃至86の何れか1つに記載のキット。
【請求項88】
DNA誘導型ヌクレアーゼはNgAgoヌクレアーゼである、ことを特徴とする請求項82乃至87の何れか1つに記載のキット。
【請求項89】
ウイルスベクターは、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスから選択される、ことを特徴とする請求項82乃至88の何れか1つに記載のキット。
【請求項90】
非分裂細胞は、リンパ球、単球、好中球、好酸球、好塩基球、内皮細胞、上皮細胞、肝細胞、骨細胞、血小板、脂肪細胞、心筋細胞、ニューロン、網膜細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、精母細胞、卵母細胞、及び膵臓β細胞のうち1つ以上から選択される、ことを特徴とする請求項82乃至89の何れか1つに記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2016年7月15日出願の米国仮特許出願第62/363,164号の利益を主張するものであり、その内容は全体の引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究の記載
本発明は、国立衛生研究所により与えられたNIHグラントR01HL123755の下、政府支援により行なわれた。政府は本発明に一定の権利を有している。
【背景技術】
【0003】
機能突然変異の損失により引き起こされた有害な細胞表現型と戦うための主な治療方法のうち1つは、野生型遺伝子のコピーの細胞内輸送に依存する。この点に関して、急速に発展しつつある分野として、ウイルス媒介性の遺伝子置換療法は、導入遺伝子のコピー数及び発現レベルに対する不完全な制御の他、癌原遺伝子の挿入突然変異及び活性化などの有害な表現効果のリスクによって制限される、幾つかの解決策を提供している。相同組換え修復(HDR)経路を活用する部位特異的な導入遺伝子の組み込みは、このような問題に1つの解決策を提供する。しかし、HDRの有用性は、その効率の低さによって、大半の初代細胞において制限されている。更に、HDRは細胞周期のS/G2期にのみ生じ、これにより出生後の動物組織において普及している非分裂細胞へのアクセスを不能にする。
【発明の概要】
【0004】
幾つかの態様において、非分裂細胞のゲノムに外来性DNA配列を組み込む方法が提供される。幾つかの実施形態において、前記方法は、外来性DNA配列と標的配列を含む標的構築物、標的配列に相同する相補鎖オリゴヌクレオチド、及びヌクレアーゼに非分裂細胞を接触させる工程を含み、ここで、外来性DNA配列は、ゲノムと比較して少なくとも1つのヌクレオチドの差異を含み、標的配列はヌクレアーゼにより認識される。幾つかの実施形態において、外来性DNA配列はレポーター遺伝子を含む。幾つかの実施形態において、レポーター遺伝子は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、及びβ-グルクロニダーゼのうち少なくとも1つから選択される。幾つかの実施形態において、外来性DNA配列は遺伝子転写調節要素を含む。幾つかの実施形態において、遺伝子転写調節要素は、プロモーター配列又はエンハンサー配列を含む。幾つかの実施形態において、外来性DNA配列は非分裂細胞のゲノムにおける突然変異を修正する。幾つかの実施形態において、外来性DNA配列は非分裂細胞のゲノムにおける突然変異を引き起こす。幾つかの実施形態において、突然変異は、ミスセンス突然変異、ナンセンス突然変異、サイレント突然変異、挿入、及び欠失から選択される。幾つかの実施形態において、ヌクレアーゼは、CRISPRヌクレアーゼ、TALEN、メガヌクレアーゼ、DNA誘導型ヌクレアーゼ、及びジンクフィンガーヌクレアーゼから選択される。幾つかの実施形態において、CRISPRヌクレアーゼは、Cas9、Cpf1、Cas12b(C2c1)、Cas13a(C2c2)、Cas13b(C2c6)、及びC2c3から選択される。幾つかの実施形態において、DNA誘導型ヌクレアーゼは、アルゴノートヌクレアーゼ及びNgAgoヌクレアーゼから選択される。幾つかの実施形態において、標的配列は、一旦、外来性DNAが正確な配向でゲノムに組み込まれると存在しなくなる。幾つかの実施形態において、非分裂細胞は最終分化細胞を含む。幾つかの実施形態において、標的構築物、相補鎖オリゴヌクレオチド、及び、ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、非ウイルスベクター又はウイルスベクターに含まれている。幾つかの実施形態において、ウイルスベクターは、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスから選択される。幾つかの実施形態において、標的配列は、ヌクレアーゼにより特異的に切断された配列である。幾つかの実施形態において、標的構築物は、外来性DNA配列に隣接する2つの標的配列を含む。幾つかの実施形態において、標的構築物はミニサークルを含む。
【0005】
付加的な態様において、非分裂細胞のゲノムにおけるDNA配列を改変させる方法が提供される。幾つかの実施形態において、前記方法は、外来性DNA配列と標的配列を含む標的構築物、標的配列に相同する相補鎖オリゴヌクレオチド、及びヌクレアーゼに非分裂細胞を接触させる工程を含み、ここで、外来性DNA配列は、ゲノムDNA配列と比較して少なくとも1つのヌクレオチドの差異を含み、標的配列はヌクレアーゼにより認識される。幾つかの実施形態において、外来性DNA配列はレポーター遺伝子を含む。幾つかの実施形態において、レポーター遺伝子は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、及びβ-グルクロニダーゼのうち少なくとも1つから選択される。幾つかの実施形態において、外来性DNA配列は遺伝子転写調節要素を含む。幾つかの実施形態において、遺伝子転写調節要素は、プロモーター配列又はエンハンサー配列を含む。幾つかの実施形態において、外来性DNA配列は非分裂細胞のゲノムにおける突然変異を修正する。幾つかの実施形態において、外来性DNA配列は非分裂細胞のゲノムにおける突然変異を引き起こす。幾つかの実施形態において、突然変異は、ミスセンス突然変異、ナンセンス突然変異、サイレント突然変異、挿入、及び欠失から選択される。幾つかの実施形態において、ヌクレアーゼは、CRISPRヌクレアーゼ、TALEN、DNA誘導型ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、及びジンクフィンガーヌクレアーゼから選択される。幾つかの実施形態において、CRISPRヌクレアーゼは、Cas9、Cpf1、Cas12b(C2c1)、Cas13a(C2c2)、Cas13b(C2c6)、及びC2c3から選択される。幾つかの実施形態において、DNA誘導型ヌクレアーゼは、アルゴノートヌクレアーゼ及びNgAgoヌクレアーゼから選択される。幾つかの実施形態において、標的配列は、一旦、ゲノムDNA配列が改変されると存在しなくなる。幾つかの実施形態において、非分裂細胞は最終分化細胞を含む。幾つかの実施形態において、標的構築物、相補鎖オリゴヌクレオチド、及び、ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、非ウイルスベクター又はウイルスベクターに含まれている。幾つかの実施形態において、ウイルスベクターは、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスから選択される。幾つかの実施形態において、標的配列は、ヌクレアーゼにより特異的に切断される。幾つかの実施形態において、標的構築物は、外来性DNA配列に隣接する2つの標的配列を含む。幾つかの実施形態において、標的構築物はミニサークルを含む。
【0006】
付加的な態様において、DNA配列を改変させる方法が提供される。幾つかの実施形態において、前記方法は、外来性DNA配列と標的配列の2つのコピーとを含む標的構築物、標的配列に相同する相補鎖オリゴヌクレオチド、及びヌクレアーゼにDNA配列を接触させる工程を含み、ここで、外来性DNA配列は、DNA配列と比較して少なくとも1つのヌクレオチドの差異を含み、標的配列はヌクレアーゼにより認識される。幾つかの実施形態において、外来性DNA配列はレポーター遺伝子を含む。幾つかの実施形態において、レポーター遺伝子は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、及びβ-グルクロニダーゼのうち少なくとも1つから選択される。幾つかの実施形態において、外来性DNA配列は遺伝子転写調節要素を含む。幾つかの実施形態において、遺伝子転写調節要素は、プロモーター配列又はエンハンサー配列を含む。幾つかの実施形態において、外来性DNA配列は突然変異を修正する。幾つかの実施形態において、外来性DNA配列は突然変異を引き起こす。幾つかの実施形態において、突然変異は、ミスセンス突然変異、ナンセンス突然変異、サイレント突然変異、挿入、及び欠失から選択される。幾つかの実施形態において、ヌクレアーゼは、CRISPRヌクレアーゼ、TALEN、DNA誘導型ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、及びジンクフィンガーヌクレアーゼから選択される。幾つかの実施形態において、CRISPRヌクレアーゼは、Cas9、Cpf1、Cas12b(C2c1)、Cas13a(C2c2)、Cas13b(C2c6)、及びC2c3から選択される。幾つかの実施形態において、DNA誘導型ヌクレアーゼは、アルゴノートヌクレアーゼ及びNgAgoヌクレアーゼから選択される。幾つかの実施形態において、DNA配列は細胞のゲノムの少なくとも一部である。幾つかの実施形態において、細胞は分裂細胞である。幾つかの実施形態において、細胞は非分裂細胞である。幾つかの実施形態において、非分裂細胞は最終分化細胞である。幾つかの実施形態において、標的配列は、一旦、DNA配列が正確な配向で標的配列により改変されると存在しなくなる。幾つかの実施形態において、標的構築物、相補鎖オリゴヌクレオチド、及び、ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、非ウイルスベクター又はウイルスベクターに含まれている。幾つかの実施形態において、ウイルスベクターは、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスから選択される。幾つかの実施形態において、標的配列は、ヌクレアーゼにより特異的に切断される。
【0007】
更なる態様において、必要とする被験体の遺伝性疾患を処置する方法が提供される。幾つかの実施形態において、遺伝性疾患は、野生型遺伝子と比較して少なくとも1つの変更されたヌクレオチドを持つ突然変異遺伝子から結果として生じる。幾つかの実施形態において、前記方法は、野生型遺伝子又はその断片に相同するDNA配列と標的配列とを含む標的構築物、標的配列に相同する相補鎖オリゴヌクレオチド、及びヌクレアーゼを含む組成物に、被験体の少なくとも1つの細胞を接触させる工程を含む。幾つかの実施形態において、突然変異遺伝子又はその突然変異した断片が野生型遺伝子又はその断片と置き換えられるように、標的配列はヌクレアーゼによって認識される。幾つかの実施形態において、突然変異は、ミスセンス突然変異、ナンセンス突然変異、サイレント突然変異、挿入、及び欠失から選択される突然変異を含む。幾つかの実施形態において、ヌクレアーゼは、CRISPRヌクレアーゼ、TALEN、DNA誘導型ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、及びジンクフィンガーヌクレアーゼから選択される。幾つかの実施形態において、CRISPRヌクレアーゼは、Cas9、Cpf1、Cas12b(C2c1)、Cas13a(C2c2)、Cas13b(C2c6)、及びC2c3から選択される。幾つかの実施形態において、DNA誘導型ヌクレアーゼは、アルゴノートヌクレアーゼ及びNgAgoヌクレアーゼから選択される。幾つかの実施形態において、標的構築物、相補鎖オリゴヌクレオチド、及び、ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、非ウイルスベクター又はウイルスベクターに含まれている。幾つかの実施形態において、ウイルスベクターは、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスから選択される。幾つかの実施形態において、標的配列は、ヌクレアーゼにより特異的に切断される。幾つかの実施形態において、標的配列は、一旦、突然変異遺伝子又はその断片が正確な配向で野生型遺伝子その断片と置き換えられると存在しなくなる。幾つかの実施形態において、遺伝性疾患は、軟骨無形成症、αアンチトリプシン欠損症、アルツハイマー病、抗リン脂質抗体症候群、自閉症、常染色体優性多発性嚢胞腎、乳癌、癌、シャルコー・マリー・トゥース病、結腸癌、ネコ鳴き症候群、クローン病、嚢胞性繊維症、ダーカム病、ダウン症候群、デュアン症候群、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、第V因子ライデン血栓症、家族性高コレステロール血症、家族性地中海熱、脆弱X症候群、ゴーシェ病、ヘモクロマトーシス、血友病、全前脳症、ハンチントン病、クラインフェルター症候群、レーバー先天黒内障、マルファン症候群、筋緊張性ジストロフィー、神経線維腫症、ヌーナン症候群、骨形成不全症、パーキンソン病、フェニルケトン尿症、ポーランド症候群、ポルフィリン症、早老症、前立腺癌、色素性網膜炎、重症複合免疫不全症(SCID)、鎌状赤血球症、皮膚癌、脊髄性筋萎縮症、シュタルガルト病、テイ・ザックス病、サラセミア、トリメチルアミン尿症、ターナー症候群、口蓋心臓顔面症候群、WAGR症候群、及びウィルソン病から選択される。
【0008】
付加的な態様において、野生型遺伝子又はその断片に相同するDNA配列と標的配列とを含む標的構築物、標的配列に相同する相補鎖オリゴヌクレオチド、及びヌクレアーゼを含む、組成物が提供される。幾つかの実施形態において、標的配列は、遺伝性疾患を処置する際の使用のために、ヌクレアーゼによって認識される。幾つかの実施形態において、遺伝性疾患は、ミスセンス突然変異、ナンセンス突然変異、サイレント突然変異、挿入、及び欠失から選択される突然変異によって引き起こされる。幾つかの実施形態において、ヌクレアーゼは、CRISPRヌクレアーゼ、TALEN、DNA誘導型ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、及びジンクフィンガーヌクレアーゼから選択される。幾つかの実施形態において、CRISPRヌクレアーゼは、Cas9、Cpf1、Cas12b(C2c1)、Cas13a(C2c2)、Cas13b(C2c6)、及びC2c3から選択される。幾つかの実施形態において、DNA誘導型ヌクレアーゼは、アルゴノートヌクレアーゼ及びNgAgoヌクレアーゼから選択される。幾つかの実施形態において、標的構築物、相補鎖オリゴヌクレオチド、及び、ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、非ウイルスベクター又はウイルスベクターに含まれている。幾つかの実施形態において、ウイルスベクターは、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスから選択される。幾つかの実施形態において、標的配列は、ヌクレアーゼにより特異的に切断される。幾つかの実施形態において、標的配列は、一旦、突然変異遺伝子又はその断片が正確な配向で野生型遺伝子その断片と置き換えられると存在しなくなる。幾つかの実施形態において、遺伝性疾患は、軟骨無形成症、αアンチトリプシン欠損症、アルツハイマー病、抗リン脂質抗体症候群、自閉症、常染色体優性多発性嚢胞腎、乳癌、癌、シャルコー・マリー・トゥース病、結腸癌、ネコ鳴き症候群、クローン病、嚢胞性繊維症、ダーカム病、ダウン症候群、デュアン症候群、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、第V因子ライデン血栓症、家族性高コレステロール血症、家族性地中海熱、脆弱X症候群、ゴーシェ病、ヘモクロマトーシス、血友病、全前脳症、ハンチントン病、クラインフェルター症候群、レーバー先天黒内障、マルファン症候群、筋緊張性ジストロフィー、神経線維腫症、ヌーナン症候群、骨形成不全症、パーキンソン病、フェニルケトン尿症、ポーランド症候群、ポルフィリン症、早老症、前立腺癌、色素性網膜炎、重症複合免疫不全症(SCID)、鎌状赤血球症、皮膚癌、脊髄性筋萎縮症、シュタルガルト病、テイ・ザックス病、サラセミア、トリメチルアミン尿症、ターナー症候群、口蓋心臓顔面症候群、WAGR症候群、及びウィルソン病から選択される。
【0009】
付加的な態様において、外来性DNA配列と少なくとも2つの標的配列とを含む標的構築物、標的配列に相同する相補鎖オリゴヌクレオチド、及びヌクレアーゼを含む、組成物が提供される。幾つかの実施形態において、外来性DNA配列はレポーター遺伝子を含む。幾つかの実施形態において、レポーター遺伝子は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、及びβ-グルクロニダーゼのうち少なくとも1つから選択される。幾つかの実施形態において、外来性DNA配列は遺伝子転写調節要素を含む。幾つかの実施形態において、遺伝子転写調節要素は、プロモーター配列又はエンハンサー配列を含む。幾つかの実施形態において、標的配列は、ヌクレアーゼにより認識される。幾つかの実施形態において、組成物は非分裂細胞を含む。幾つかの実施形態において、標的構築物、相補鎖オリゴヌクレオチド、及び、ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、非ウイルスベクター又はウイルスベクターに含まれている。幾つかの実施形態において、ウイルスベクターは、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスから選択される。幾つかの実施形態において、組成物は、薬学的に許容可能なバッファー又は賦形剤を含む。
【0010】
付加的な態様において、外来性DNA配列と、非分裂細胞のゲノムに挿入される標的配列の第1の半分及び第2の半分とを含む組成物が提供される。幾つかの実施形態において、標的配列の第1の半分及び第2の半分はヌクレアーゼによって切断され、標的配列の第1の半分及び第2の半分は、外来性DNA配列のゲノム上流及び下流に挿入される。幾つかの実施形態において、外来性DNA配列はレポーター遺伝子を含む。幾つかの実施形態において、レポーター遺伝子は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、及びβ-グルクロニダーゼのうち少なくとも1つから選択される。幾つかの実施形態において、外来性DNA配列は遺伝子転写調節要素を含む。幾つかの実施形態において、遺伝子転写調節要素は、プロモーター配列又はエンハンサー配列を含む。幾つかの実施形態において、外来性DNA配列は、ウイルス及びヌクレアーゼによって非分裂細胞のゲノムに組み込まれる。幾つかの実施形態において、ウイルスは、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスから選択される。幾つかの実施形態において、ヌクレアーゼは、CRISPRヌクレアーゼ、TALEN、DNA誘導型ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、及びジンクフィンガーヌクレアーゼから選択される。幾つかの実施形態において、CRISPRヌクレアーゼは、Cas9、Cpf1、Cas12b(C2c1)、Cas13a(C2c2)、Cas13b(C2c6)、及びC2c3から選択される。幾つかの実施形態において、DNA誘導型ヌクレアーゼは、アルゴノートヌクレアーゼ及びNgAgoヌクレアーゼから選択される。幾つかの実施形態において、組成物は、薬学的に許容可能なバッファー又は賦形剤を含む。
【0011】
付加的な態様において、外来性DNA配列と少なくとも1つの標的配列とを含む標的構築物、標的配列に相同する相補鎖オリゴヌクレオチド、ヌクレアーゼ、及び非分裂細胞への遺伝子改変を行なうための指示書を含む、キットが提供される。幾つかの実施形態において、外来性DNA配列はレポーター遺伝子を含む。幾つかの実施形態において、レポーター遺伝子は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、及びβ-グルクロニダーゼのうち少なくとも1つから選択される。幾つかの実施形態において、外来性DNA配列は遺伝子転写調節要素を含む。幾つかの実施形態において、遺伝子転写調節要素は、プロモーター配列又はエンハンサー配列を含む。幾つかの実施形態において、標的配列は、ヌクレアーゼにより認識される。幾つかの実施形態において、標的構築物は少なくとも2つの標的配列を含む。幾つかの実施形態において、標的構築物はミニサークルを含む。幾つかの実施形態において、標的構築物、相補鎖オリゴヌクレオチド、及び、ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、非ウイルスベクター又はウイルスベクターに含まれている。幾つかの実施形態において、ヌクレアーゼは、CRISPRヌクレアーゼ、TALEN、DNA誘導型ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、及びジンクフィンガーヌクレアーゼから選択される。幾つかの実施形態において、CRISPRヌクレアーゼは、Cas9、Cpf1、Cas12b(C2c1)、Cas13a(C2c2)、Cas13b(C2c6)、及びC2c3から選択される。幾つかの実施形態において、DNA誘導型ヌクレアーゼは、アルゴノートヌクレアーゼ及びNgAgoヌクレアーゼから選択される。幾つかの実施形態において、ウイルスベクターは、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスから選択される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の新規な特徴は、特に、添付の特許請求の範囲内に明記される。本発明の特徴及び利点のより良い理解は、本発明の原理が用いられる例示的実施形態を説明する以下の詳細な説明と、以下の添付図面とを引用することによって得られるであろう。
図1A】インビトロでの分裂細胞及び非分裂細胞のための相同性に基づかない標的化組み込み(homology-independent targeted integration)(HITI)方法の進行を示す。図1Aは、HEK293 GFP修正株(correction line)における相同組換え修復(HDR)又はHITIによる標的遺伝子修飾の概略図を示す。五角形はCas9/gRNA標的配列である。五角形内の黒線はCas9切断部位である。0、1、又は2つのCRISPR-Cas9標的部位を備えた、プロモーターを持たないIRESmCherryプラスミド(それぞれIRESmCherry-0c、IRESmCherry-1c、及びIRESmCherry-2c)が、HITI効率を測定するために使用された。HDRドナー(tGFP)が、HDR効率を測定するために使用された。
図1B】インビトロでの分裂細胞及び非分裂細胞のための相同性に基づかない標的化組み込み(HITI)方法の進行を示す。図1Bは、HDR及びHITIによるHEK293細胞における標的遺伝子修飾の、代表的な画像を示す。スケールバーは100μmである。
図1C】インビトロでの分裂細胞及び非分裂細胞のための相同性に基づかない標的化組み込み(HITI)方法の進行を示す。図1Cは、HDR及びHITIによる標的遺伝子修飾の効率を示す。N=3である。
図1D】インビトロでの分裂細胞及び非分裂細胞のための相同性に基づかない標的化組み込み(HITI)方法の進行を示す。図1Dは、異なるHITI標的化ベクターを用いたmCherry+細胞の割合に関する経時的研究を示す。
図1E】インビトロでの分裂細胞及び非分裂細胞のための相同性に基づかない標的化組み込み(HITI)方法の進行を示す。図1Eは、異なるHITI標的化ベクターを用いた、初期継代(10日目)及び後期継代(79日目)でのmCherry遺伝子のCpGメチル化状況を示す。2つの半分の矢印はバイサルファイトシーケンシングのためのプライマーを示す。
図1F】インビトロでの分裂細胞及び非分裂細胞のための相同性に基づかない標的化組み込み(HITI)方法の進行を示す。図1Fは、初代神経細胞におけるインビトロでのHITIによる標的GFPノックインのための実験計画の概略図を示す。GFPを含むドナーDNA、Cas9発現プラスミド、及びgRNA-mCherry発現プラスミドは、E14.5胚に由来するマウス初代神経細胞へと同時形質移入された。EdUは、形質移入後3日目から8日目まで処置された。
図1G】インビトロでの分裂細胞及び非分裂細胞のための相同性に基づかない標的化組み込み(HITI)方法の進行を示す。図1Gは、BPNLS-Cas9、gRNA-mCherry、及びTubb3-MCプラスミドで形質移入されたGFP+ニューロンの代表的な画像を示す。スケールバーは100μmである。
図1H】インビトロでの分裂細胞及び非分裂細胞のための相同性に基づかない標的化組み込み(HITI)方法の進行を示す。図1Hは、EdU+又はEdU-何れかのニューロンにおける形質移入されたmCherry+細胞1つあたりのノックインGFP+細胞の割合を示す。N=3である。
図1I】インビトロでの分裂細胞及び非分裂細胞のための相同性に基づかない標的化組み込み(HITI)方法の進行を示す。図1Iは、HDRドナー(Tubb3-HDR)、1カットのドナー(Tubb3-1c)、2カットのドナー(Tubb3-2c)、及びミニサークルドナー(Tubb3-MC)で形質移入されたmCherry+細胞1つあたりのノックインGFP+細胞の割合を示す。**P<0.01。n=3、スチューデントt検定。
図1J】インビトロでの分裂細胞及び非分裂細胞のための相同性に基づかない標的化組み込み(HITI)方法の進行を示す。図1Jの左のパネルは、HITIドナーを用いた異なる挿入DNA配列の概略図を示す。五角形はCas9標的配列である。五角形内の黒線はCas9切断部位である。下線を付けた配列はPAM配列である。pAはポリAである。右のパネルはTubb3-GFPの細胞内分布を示す。
図1K】インビトロでの分裂細胞及び非分裂細胞のための相同性に基づかない標的化組み込み(HITI)方法の進行を示す。図1Kの左のパネルは、Tubb3コード領域の3’末端でのTubb3-2c及びTubb3-MCのドナー組込みの概略図を示す。半分の矢印は、組み込まれた配列を検出するためのPCRプライマー対を示す。右のパネルはPCRの結果である。
図1L】インビトロでの分裂細胞及び非分裂細胞のための相同性に基づかない標的化組み込み(HITI)方法の進行を示す。図1Lは、空ベクター、Cas9(+NLS)、及びCas9(+BPNLS)で形質移入されたmCherry+細胞1つあたりのノックインGFP+細胞の割合を示す。
図2A】非ウイルスベクターを介したインビボのHITIを示す。図2Aは、子宮内電気穿孔法(in utero electroporation)を介した胎児脳におけるHITIによる標的GFPノックインに関する実験計画の概略図を示す。BPNLS-Cas9発現プラスミド(CAG-Cas9)、gRNA及びmCherry発現プラスミド(gRNA-mCherry)、及びミニサークルドナー(Tubb3-MC)は、E15.5マウス胚の脳に電気穿孔され、生後のP21にて分析された。
図2B】非ウイルスベクターを介したインビボのHITIを示す。図2Bは、子宮内電気穿孔法による胎児脳におけるTubb3遺伝子座でのGFPノックインの代表的な画像を示す。スケールバーは100μmである。mCherryは成功裡に形質移入された細胞を標識する。
図2C】非ウイルスベクターを介したインビボのHITIを示す。図2Cは、全てのmCherry+細胞中のGFP+細胞の割合によって測定されるノックイン効率を示す。N=3である。
図2D】非ウイルスベクターを介したインビボのHITIを示す。図2Dは、新生のマウス脳におけるHITIによるインビボの標的GFPノックインのための実験計画の概略図を示す。誘導可能なBPNLS-Cas9発現プラスミド(CAG-floxSTOP-Cas9)、タモキシフェン(TAM)誘導可能なCreERT2発現プラスミド(ERT2-Cre-ERT2)、gRNA-mCherry、及びTubb3-MCは最初に、E15.5マウス胚の脳へと電気穿孔された。出生後にCas9発現を誘導するために、タモキシフェンはP10及びP11にて注入され、その後P21にて分析された。
図2E】非ウイルスベクターを介したインビボのHITIを示す。図2Eは、HDRドナー(Tubb3-HDR)又はミニサークルドナー(Tubb3-MC)を用いた誘導可能なCas9発現による新生児脳におけるTubb3遺伝子座でのGFPノックインの代表的な画像を示す。スケールバーは100μmである。
図2F】非ウイルスベクターを介したインビボのHITIを示す。図2Fは、全てのmCherry+細胞中のGFP+細胞の割合によって測定されるようなタモキシフェン処置を用いた、又は用いない、HDR及びHITIドナーのノックイン効率を示す。N=3である。**P<0.01、スチューデントt検定。
図2G】非ウイルスベクターを介したインビボのHITIを示す。図2Gは、HITIによるインビボの標的GFP-NLS又はルシフェラーゼ遺伝子のノックインのための実験計画の概略図を示す。CAG-Cas9、gRNA-mCherry、及びミニサークルのドナー(Ai14-GFPNLS-MC又はAi14-luc-MC)は、8週目に圧力媒介型形質移入及び/又は電気穿孔を介してマウスの腎臓又は筋肉に局所送達され、2週間後に分析された。
図2H】非ウイルスベクターを介したインビボのHITIを示す。図2Hは、ルシフェラーゼ遺伝子ノックインの筋肉内注入後の2日目、8日目、及び14日目でのルシフェラーゼシグナルのインビボの画像を示す。右脚(-Cas9)は、空プラスミド、gRNA-mCherry、及びAi14-luc-MCで送達された。左脚(+Cas9)は、CAG-Cas9、gRNA-mCherry、及びAi14-luc-MCで送達された。矢印は、筋肉中のルシフェラーゼシグナルを示す。
図2I】非ウイルスベクターを介したインビボのHITIを示す。図2Iは、大腿四頭筋(上のパネル)及び皮筋層(下のパネル)へのGFP-NLSノックイン構築物の筋肉内電気穿孔後のGFP発現の免疫蛍光分析を示す。左のパネル(-Cas9)は、空プラスミド、gRNA-mCherry、及びAi14-GFPNLS-MCで送達された。右のパネル(+Cas9)は、CAG-Cas9、gRNA-mCherry、及びAi14-GFPNLS-MCで送達された。スケールバーは100μmである。矢印はGFPシグナルを示す。
図2J】非ウイルスベクターを介したインビボのHITIを示す。図2Jは、ルシフェラーゼ遺伝子ノックイン構築物の圧力媒介型の腎臓形質移入後の7日目及び14日目での、ルシフェラーゼシグナルのインビボの画像を示す。左のマウス(-Cas9)は、空プラスミド、gRNA-mCherry、及びAi14-luc-MCで送達された。右のマウス(+Cas9)は、CAG-Cas9、gRNA-mCherry、及びAi14-luc-MCで送達された。矢印は、右腎中のルシフェラーゼシグナルを示す。
図2K】非ウイルスベクターを介したインビボのHITIを示す。図2Kは、胃及び食道(St+E)、心臓(H)、肝臓(Li)、脾臓(Sp)、肺(Lu)、右(R)及び左(L)の腎臓(K)、膵臓(Pa)、小腸(SI)、盲腸(Ce)、及び結腸(Co)のエクスビボでのルシフェラーゼ画像化を示す。矢印は、右腎中のルシフェラーゼシグナルを示す。
図2L】非ウイルスベクターを介したインビボのHITIを示す。図2Lは、腎臓へのGFP-NLSノックイン構築物の電気穿孔後のGFP発現の免疫蛍光分析を示す。上のパネル(-Cas9)は、空プラスミド、gRNA-mCherry、及びAi14-GFPNLS-MCで送達された。下のパネル(+Cas9)は、CAG-Cas9、gRNA-mCherry、及びAi14-GFPNLS-MCで送達された。スケールバーは100μmである。
図3A】アデノ関連ウイルス(AAV)ベクターを介したインビボのHITIを示す。図3Aは、Tubb3遺伝子に3’でのノックインGFPのためのAAVベクターの概略図を示す。半分の矢印は、正確な遺伝子ノックインを検証するためのPCRプライマー対を示す。
図3B】アデノ関連ウイルス(AAV)ベクターを介したインビボのHITIを示す。図3Bは、AAV感染後のpan-ニューロンにおけるTubb3遺伝子座でのGFPノックインの代表的な画像を示す。上のパネルはAAV-mTubb3のみを示す。下のパネルはAAV-Cas9及びAAV-mTubb3である。スケールバーは100μmである。
図3C】アデノ関連ウイルス(AAV)ベクターを介したインビボのHITIを示す。図3Cは、AAV-Cas9及びAAV-mTubb3の感染後のGFPシグナルの細胞内分布を示す。
図3D】アデノ関連ウイルス(AAV)ベクターを介したインビボのHITIを示す。図3Dは、PCRによる正確な遺伝子ノックインの検証を示す。
図3E】アデノ関連ウイルス(AAV)ベクターを介したインビボのHITIを示す。図3Eは、成人の脳における局所AAV感染を介したHITIによるインビボの標的GFPノックインのための実験計画の概略図を示す。
図3F】アデノ関連ウイルス(AAV)ベクターを介したインビボのHITIを示す。図3Fは、AAVを注入した脳部分におけるGFP+ニューロンの代表的な免疫蛍光画像を示す。スケールバーは100μmである。
図3G】アデノ関連ウイルス(AAV)ベクターを介したインビボのHITIを示す。図3Gは、Ai14マウスのRosa26遺伝子座におけるCAGプロモーターの下流でのノックインGFP-NLSのためのAAVベクターの概略図を示す。矢印は、正確な遺伝子ノックインを検証するためのPCRプライマー対を示す。
図3H】アデノ関連ウイルス(AAV)ベクターを介したインビボのHITIを示す。図3Hは、筋肉内(IM)注入を介したHITIによるインビボの標的GFP-NLS遺伝子ノックインのための実験計画の概略図を示す。AAV-Cas9及びAAV-Ai14-GFPは、8週目に大腿四頭筋へと局所送達され、12週目に分析された。
図3I】アデノ関連ウイルス(AAV)ベクターを介したインビボのHITIを示す。図3Iは、AAVのIM送達後のGFP発現の免疫蛍光分析を示す。上のパネル(Cas9)はAAV-Ai14-GFPで送達された。下のパネル(+Cas9)は、AAV-Cas9及びAAV-Ai14-GFPで送達された。ジストロフィンは、筋肉細胞骨格タンパク質のためのマーカーとして使用された。スケールバーは100μmである。
図3J】アデノ関連ウイルス(AAV)ベクターを介したインビボのHITIを示す。図3Jは、PCRによる筋肉中の正確な遺伝子ノックインの検証を示す。
図3K】アデノ関連ウイルス(AAV)ベクターを介したインビボのHITIを示す。図3Kは、筋肉内(IV)AAV注入を介したHITIによるインビボの標的GFP-NLSノックインのための実験計画の概略図を示す。AAV-Cas9及びAAV-Ai14-GFPは、P1にて静脈内を介して全身送達され、2週間後に分析された。
図3L】アデノ関連ウイルス(AAV)ベクターを介したインビボのHITIを示す。図3Lは、AAVのIV注入後のGFP発現の免疫蛍光分析を示す。上のパネル(Cas9)はAAV-Ai14-GFPで送達された。下のパネル(+Cas9)は、AAV-Cas9及びAAV-Ai14-GFPで送達された。α-平滑筋アクチン(αSMA)及びアルブミンは、それぞれ心臓及び肝臓のためのマーカーとして使用された。スケールバーは200μmである。
図3M】アデノ関連ウイルス(AAV)ベクターを介したインビボのHITIを示す。図3Mは、PCRによる心臓及び肝臓の中の正確な遺伝子ノックインの検証を示す。
図4A】HITIを介したRPのラットモデルの標的インビボ遺伝子修正を示す。図4Aは、野生型及びRCSのラット両方におけるMertk遺伝子の概略図を示す。五角形はCas9/gRNA標的配列である。五角形内の黒線はCas9切断部位である。
図4B】HITIを介したRPのラットモデルの標的インビボ遺伝子修正を示す。図4Bは、Mertk遺伝子修正AAVベクターの概略図を示す。周囲のイントロンを含むエクソン2は、Cas9/gRNA標的配列により挟まれ、且つHITIによってMertkのイントロン1内に組み込まれる。半分の矢印は、正確なノックインを検証するためのPCRプライマー対を示す。
図4C】HITIを介したRPのラットモデルの標的インビボ遺伝子修正を示す。図4Cは、RCSラットにおけるMertk遺伝子修正のための実験計画の概略図を示す。AAV-Cas9及びAAV-rMertkは、3週目に網膜下注入によりRCSラットへ局所送達され、7-8週目に分析された。
図4D】HITIを介したRPのラットモデルの標的インビボ遺伝子修正を示す。図4Dは、PCRによるAAVを注入した目における正確な遺伝子ノックインの検証を示す。
図4E】HITIを介したRPのラットモデルの標的インビボ遺伝子修正を示す。図4Eは、AAVを注入した目における光受容体救出(photoreceptor rescue)を示す網膜の形態を示す。光受容体外核層(ONL)の保存の増大が、非常に薄いONL(赤色の丸括弧)しかない未処置のRCSの目に比べて観察された。スケールバーは100μmである。
図4F】HITIを介したRPのラットモデルの標的インビボ遺伝子修正を示す。図4Fの上のパネルは、AAV注入後の陽性GFPシグナルを示す。下のパネルは、処置されたRCSの目のRPEにおけるトランスジェニックrMertkの陽性効果を実証する、光受容体におけるロドプシンの発現増加を示す。スケールバーは50μmである。矢印はGFP又はロドプシンのシグナルを示す。
図4G】HITIを介したRPのラットモデルの標的インビボ遺伝子修正を示す。図4Gは、桿体と錐体の組み合わせの反応の改善を示し(左、波形;右、定量化バー)、AAV-Cas9及びAAV-rMertkを注入した目におけるb波値の改善を実証する。
図4H】HITIを介したRPのラットモデルの標的インビボ遺伝子修正を示す。図4Hは、AAV-Cas9及びAAV-rMertkを注入した目における、10Hzのフリッカー錐体反応の改善を示す。全ての棒グラフに関する動物の数は次の通りである:RCSラットはn=8、通常のラットはn=8、及びRCS+AAVの群はn=3である。P<0.05、スチューデントt検定。
図5A】HITIのためのドナーベクターの最適化を示す。図5Aは、異なるドナーベクターを用いたHITIの概略図を示す。Cas9/gRNAは、PAM配列の3bp上流にてDNA二本鎖切断(DSB)を導入し、2つの平滑末端をもたらした。Cas9/gRNA標的染色体配列は、異なるドナープラスミド(1カット、2カット、及びミニサークルのドナー)へと逆方向で加えられる。標的ゲノム遺伝子座の他、ドナープラスミドも、細胞中のCas9/gRNAにより切断され、及び、線形化されたドナーDNAは、古典的NHEJ DSB修復経路を介して標的部位にて組み込まれた。ドナーDNAが正確な配向で組み込まれる場合、結合配列はCas9/gRNAによる更なる切断から保護される。ドナーDNAが逆配向で組み込まれる場合、Cas9/gRNAは、無傷のCas9/gRNA標的部位により、組み込みドナーDNAを組み込み部位から切断し続ける。五角形はCas9/gRNA標的配列である。五角形内の黒線はCas9切断部位である。GOIは対象の遺伝子である。
図5B】HITIのためのドナーベクターの最適化を示す。図5Bは、HDR及びHITIによる標的遺伝子修飾効率に対するNHEJ阻害剤(NU7026;30μM)の効果を示す。N=3である。N.Sは、有意でないことを意味する。**P<0.01、スチューデントt検定。
図5C】HITIのためのドナーベクターの最適化を示す。図5Cは、IRESmCherry-1cドナーを用いたHEK293 GFP修正株のHITIによるIRESmCherryノックインの後の、5’及び3’の結合部位の配列を示す。五角形はCas9標的配列である。五角形内の黒線はCas9切断部位である。下線を付けた配列はPAM配列である。
図5D】HITIのためのドナーベクターの最適化を示す。図5Dは、IRESmCherry-2cドナーを用いたHEK293 GFP修正株のHITIによるIRESmCherryノックインの後の、5’及び3’の結合部位の配列を示す。
図5E】HITIのためのドナーベクターの最適化を示す。図5Eは、IRESmCherry-MCドナーを用いたHEK293 GFP修正株のHITIによるIRESmCherryノックインの後の、5’及び3’の結合部位の配列を示す。
図5F】HITIのためのドナーベクターの最適化を示す。図5Fは、IRESmCherry-MCドナーを用いたHITIのための挿入方向の分析を示す。mCherry-細胞からの単一コロニーからの逆に組み込まれたIRESmCherry-MCのPCR検出。48のクローンのうちの1だけ(#30)が逆方向で組み込まれ、結合部位における10bpの欠失がPCR及び配列決定分析により明らかにされた。
図6A】HITIのためのCas9の核輸送の最適化を示す。図6Aは、異なる核移行シグナルを備えた一連のdCas9構築物の概略図を示す。
図6B】HITIのためのCas9の核輸送の最適化を示す。図6Bは、dCas9局在化のための指標としてFlag抗体で染色される、形質移入されたHEK293細胞の代表的な免疫蛍光画像を示す。核はDAPIで示される。スケールバーは50μmである。
図6C】HITIのためのCas9の核輸送の最適化を示す。図6Cは、異なるNLSシグナルを備えたdCas9の核/細胞質の比率を示す。**P<0.01、スチューデントt検定。
図6D】HITIのためのCas9の核輸送の最適化を示す。図6Dは、ヒトESCにおけるCas9ヌクレアーゼ活性のアガロースゲル画像特徴化を示す。
図6E】HITIのためのCas9の核輸送の最適化を示す。図6Eは、ヒトESCにおけるCas9ヌクレアーゼ活性の定量特徴化を示す。図6D図6Eにおける結果は、KCNQ1遺伝子、及び異なるNLSを備えたCas9、即ち、Cas9-NLS(Cas9/NLSなし)、Cas9+NLS(1NLS-Cas9-1NLS)、及びCas9+BPNLS(1BPNLS-Cas9-1BPNLS)を標的とするgRNAを用いて行なわれる、surveyorヌクレアーゼアッセイからのものである。2つの下側結合(lower bands)は、Surveyorヌクレアーゼにより切断されたDNA産物である。NHEJ(%)は、Cas9/gRNA媒介型の遺伝子修飾の割合を示す。P<0.05、スチューデントt検定。
図7】異なるドナーDNAを備えたTubb3-GFPの細胞内局在を示す。BPNLS-Cas9、gRNA、及び異なるドナーDNA(Tubb3-HDR、Tubb3-1c、Tubb3-2c、又はTubb3-MC)で形質移入された初代神経細胞の代表的な蛍光画像。Tubb3-GFPの異なる細胞内局在のパターンが、ドナーについて観察された。スケールバーは100μmである。
図8A】マウス初代神経細胞におけるGFPノックインのDNA配列決定を示す。Tubb3-2cを備えたマウス初代神経細胞における、HITIによるGFPノックインの後の5’及び3’の結合部位の配列。
図8B】マウス初代神経細胞におけるGFPノックインのDNA配列決定を示す。Tubb3-MCを備えたマウス初代神経細胞における、HITIによるGFPノックインの後の5’及び3’の結合部位の配列。
図9A】インビトロでのhESC由来のニューロン全体(pan neurons)を示す。図9Aは、BPNLS-Cas9、gRNA、及び異なるドナーDNA(hTUBB3-1c又はhTUBB3-2c)で形質移入された、hESC由来のヒトニューロン全体の代表的な免疫蛍光画像を示す。スケールバーは100μmである。
図9B】インビトロでのhESC由来のニューロン全体を示す。図9Bは、ヒトニューロン全体におけるTUBB3遺伝子座にて組み込まれたGFP遺伝子のPCR分析を示す。
図9C】インビトロでのhESC由来のニューロン全体を示す。図9Cは、TUBB3-1cドナーでの、ヒトニューロン全体におけるHITIによるGFPノックインの後の5’結合部位の配列を示す。
図9D】インビトロでのhESC由来のニューロン全体を示す。図9Dは、TUBB3-2cドナー(図9D)での、ヒトニューロン全体におけるHITIによるGFPノックインの後の5’結合部位の配列を示す。
図10A】マウス初代神経細胞におけるAAV媒介性のHITIを示す。図10Aは、AAV-Cas9及びAAV-mTubb3に感染したニューロンの代表的な免疫蛍光画像を示す。スケールバーは50μmである。
図10B】マウス初代神経細胞におけるAAV媒介性のHITIを示す。図10Bは、HITIによるGFPノックインの後の5’及び3’の結合部位の配列を示す。
図11A】成体マウスにおけるAAVの尾静脈注射を介したインビボでのHITIを示す。図11Aは、Ai14マウスのRosa26遺伝子座におけるCAGプロモーターの下流でのノックインルシフェラーゼのためのAAVの概略図を示す。AAV-Cas9及びAAV-Ai14-lucは、8週齢のAi14マウスに尾静脈注射を介して全身送達され、12週目に分析された。
図11B】成体マウスにおけるAAVの尾静脈注射を介したインビボでのHITIを示す。図11Bは、ルシフェラーゼ遺伝子ノックイン構築物の尾静脈注射後14日目及び28日目での、ルシフェラーゼシグナルのインビボの画像を示す。矢印はルシフェラーゼシグナルを示す。
図11C】成体マウスにおけるAAVの尾静脈注射を介したインビボでのHITIを示す。図11Cは、睾丸(Te)、胃及び食道(St+E)、心臓(H)、肝臓(Li)、脾臓(Sp)、肺(Lu)、右(R)及び左(L)の腎臓(K)、膵臓(Pa)、脳(Br)、下垂体(Pi)、右(R)及び左(L)の目(Ey)、舌(To)、小腸(SI)、盲腸(Ce)、及び結腸(Co)のエクスビボでのルシフェラーゼ画像解析を示す。矢印は、AAV-Cas9及びAAV-Ai14-lucを注入したマウスの肝臓におけるルシフェラーゼシグナルを示す。
図11D】成体マウスにおけるAAVの尾静脈注射を介したインビボでのHITIを示す。図11Dは、HITI GFP-NLS遺伝子ノックインAAVの尾静脈注射後の肝臓におけるGFP発現の代表的な免疫蛍光画像を示す。スケールバーは200μmである。
図12A】新生のマウスにおけるIV注射を介したGFP-NLS遺伝子ノックインを示す。図12Aは、GFP-NLSノックインAAVのIV注射後の脳、筋肉、腎臓、副腎、脾臓、肺、及び目の脈絡叢におけるGFP発現の代表的な免疫蛍光画像を示す。上のパネル(Cas9)はAAV-Ai14-GFPのみで送達された。下のパネル(+Cas9)は、AAV-Cas9及びAAV-Ai14-GFPで送達された。スケールバーは100μmである。
図12B】新生のマウスにおけるIV注射を介したGFP-NLS遺伝子ノックインを示す。図12Bは、IV AAV注射を介したHITIによるGFP-NLSノックイン後の心臓及び肝細胞の5’及び3’の結合部位の配列を示す。
図13】AAVを注入した肝臓組織におけるオンターゲット部位及びオフターゲット部位での、CRISPR-Cas9で媒介されたインデル頻度の次世代配列決定分析を示す。HITI媒介性ゲノム修飾のインデル頻度を判定するために使用されたオンターゲット部位及びオフターゲット部位のリスト。「配列」のカラムにて灰色のヌクレオチドは、予測されたオフターゲット部位内の個々のミスマッチである。
図14A】HITIを介して遺伝子を修正したRCSラットの分析を示す。図14Aは、AAV-Cas9及びAAV-rMertkを注入したRCSラットの目における、AAV-rMertk由来のエクソン2と組み込み部位との間の、3’接続部位の配列を示す。
図14B】HITIを介して遺伝子を修正したRCSラットの分析を示す。図14Bは、未処置のRCSの目における大規模なRPE萎縮症(左)、AAV-Cas9及びAAV-rMertk注射後のRPE萎縮症の減少(中央)、及び野生型対照(右)を示す、眼底写真を示す。矢印は、RPE萎縮症による視認可能な大きな脈絡膜血管を実証した。
図15A】GFP HITI AAV9構築物を使用するノックインの効能を示す。図15Aは、Ai14マウスへの静脈内(IV)AAV注射を介したHITIによるインビボの標的GFP-NLSノックインの概略図を示す。
図15B】GFP HITI AAV9構築物を使用するノックインの効能を示す。図15Bは、9の血清型を持つHITI-AAVのIV注射後の肝臓、心臓、及び大腿四頭筋における細胞1つ当たりの量的GFPノックインの効率を示す。**P<0.01。
図15C】GFP HITI AAV9構築物を使用するノックインの効能を示す。図15Cは、9の血清型を持つHITI-AAVのIV注射後の肝臓、心臓、及び大腿四頭筋におけるGFP発現の代表的な免疫蛍光画像を示す。
図16A】HITIを使用したLmnaG609G/G609G(LIKI)マウスの処置の結果を示す。図16Aは、ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(HGPS)の処置のための概略図を示す。
図16B】HITIを使用したLmnaG609G/G609G(LIKI)マウスの処置の結果を示す。図16Bは、血清型9を持つLMNA遺伝子修正AAVベクターの概略図を示す。
図16C】HITIを使用したLmnaG609G/G609G(LIKI)マウスの処置の結果を示す。図16Cは、118日目でのPCRによる正確な遺伝子ノックインの検証を示す。
図16D】HITIを使用したLmnaG609G/G609G(LIKI)マウスの処置の結果を示す。図16Dは、35日目及び118日目でのqPCRによる遺伝子ノックインの効率を示す。
図16E】HITIを使用したLmnaG609G/G609G(LIKI)マウスの処置の結果を示す。図16Eは、処置したマウス及び未処置のマウスに関する年齢に対する体重の累積プロットを示す。
図16F】HITIを使用したLmnaG609G/G609G(LIKI)マウスの処置の結果を示す。図16Fは、処置したマウス対未処置のマウスに関する生存プロットを示す。
図16G】HITIを使用したLmnaG609G/G609G(LIKI)マウスの処置の結果を示す。図16Gは、4か月齢のLmna+/+(WT)、LmnaG609G/G609G(-HITI)、及びHITIで処置したLmnaG609G/G609Gマウス(+HITI)の代表的な写真を示す。
図16H】HITIを使用したLmnaG609G/G609G(LIKI)マウスの処置の結果を示す。図16Hは、HITI処置後のLmnaG609G/G609Gマウス及び未処置のマウス対野生型マウスからの脾臓の写真を示す。
図16I】HITIを使用したLmnaG609G/G609G(LIKI)マウスの処置の結果を示す。図16Iは、LAKI HITIで処置したマウスの大動脈弓の組織学的検査(H&E)、及び核密度の定量化を示す。スケールバーは500μmである。Ryan方法を用いた事後一元配置分散分析に従い、p<0.05であり、***p<0.001であり、****p<0.0001である。
図16J】HITIを使用したLmnaG609G/G609G(LIKI)マウスの処置の結果を示す。図16Jは、LAKI HITIで処置したマウスの腎臓の組織学的検査(PAS)、及び腎臓における糸球体の面積と網膜細管の直径の定量化を示す。スケールバーは200μmである。Ryan方法を用いた事後一元配置分散分析に従い、**p<0.01であり、****p<0.0001である。
図16K】HITIを使用したLmnaG609G/G609G(LIKI)マウスの処置の結果を示す。図16Kは、LAKI HITIで処置したマウスの脾臓の組織学的検査(H&E)、及び脾臓における白色髄の面積の定量化を示す。スケールバーは5mmである。Ryan方法を用いた事後一元配置分散分析に従い、**p<0.01であり、****p<0.0001である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ヌクレアーゼが設計された標的ゲノムは、基本的な生物医学研究を革命的に変化させ、遺伝子治療の大きな潜在性を有する。しかし、且つ急速な進歩にもかかわらず、インビボで標的とされた導入遺伝子の組込みの、需要の高い目標は、効果的な手法の欠如のせいで今なお定着していない。細胞を分割する際のゲノム編集は以前に記載されているが(例えば、He et al., Nucleic Acids Research, 44(9), 2016, Maresca et al., Genome Research 23:539-546, 2013, Auer et al., Genome Research 24: 142-153, 2014, Bachu et al. Biotechnology and Bioengineering 112(10) 2154-2162, 2015を参照)、このような技術は、成熟細胞及び組織のゲノム編集方法には有用でなかった。非分裂細胞の場合、成体組織の主要構成分である導入遺伝子の組込みは現在、現行の技術での標的とされたノックインにはアクセス不能である。これは、根本的な生物学的原理を解明すること、及び、広範囲の壊滅的な遺伝障害のための治療戦略を進展させることに障害を課す。本明細書には、強健な相同性に基づかない標的組込み(HITI)方法、及び、インビトロで分裂細胞及び非分裂細胞の両方での十分な標的ノックイン、及びより重要なことに、新生及び成体のマウスの分裂終了細胞におけるインビボでのオンターゲット導入遺伝子挿入を可能にする組成物を開示する。更に、盲目の網膜色素変性症のラットモデル、及び早老性疾患であるハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群のマウスモデルを使用して、インビボでのHITIの治療効力及び機能的救出(functional rescue)を実証する前臨床データが、本明細書で提供される。本明細書で提示されるHITI方法は、基礎研究調査及び標的遺伝子治療の両方の研究のための新たな手段を開く。
【0014】
要するに、強健且つ効果的な相同性に基づかない標的組込み方法(HITI)が本明細書で実証される。HITIは、培養細胞中の標的ノックインを容易にするだけでなく、非分裂細胞中のインビボでのレポーター遺伝子の効果的な標的組込みを可能にする。より重要なことに、HITIは、Mertk遺伝子の機能的エクソンの標的挿入による盲目や網膜色素変性症の共通の原因のラットモデルにおける、機能欠失型突然変異を救出するために成功裡に適用されている。更に、HITIは、偶発的な点突然変異を抱く欠損コピーを交換するための、下流のエクソン及び3’UTR配列の機能的コピーを含んでいる部分遺伝子の、LMNAのイントロンへの標的挿入により、早老性、即ちハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群のマウスモデルにおける機能獲得型突然変異を救出するために成功裡に適用されている。成体の中枢神経系のインビボでの標的導入遺伝子ノックインをHITIが可能にするという観察は以前に実証されておらず、基本的且つ翻訳上の神経科学研究を進歩させる助けとなる場合がある。幾つかの実施形態において、研究ツールは、神経細胞の活性に対する正確な細胞型に特異的な制御を可能にするために予め定められた遺伝子座の下流側への、チャネルロドプシンなどの光遺伝学的活性化因子の標的挿入を含む。幾つかの実施形態において、HITIはまた、生きている動物における細胞トレーシングのためのノックインレポーターの生成を可能にする。幾つかの実施形態において、これは、トランスジェニックツールが制限される動物モデル、例えば非ヒト霊長類における動物モデルの作成を可能にする。加えて、HITIは、幾つかの実施形態において、例えば白血病のためのキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法における疾患の処置又は予防のための新たな機能を備えた標的細胞を与える、標的ノックイン合成DNA配列を介して遺伝的強化を可能にする。幾つかの実施形態において、HITI方法は、インビボでの標的遺伝子組換え治療のための、効果的且つ最適化された組織に特異的なインビボの送達戦略(ウイルス又は非ウイルス性のいずれか)と共に使用される。
【0015】
組成物
本明細書には、標的細胞又は宿主細胞におけるゲノムDNAに変化を与えるための組成物が提供される。幾つかの実施形態において、このような組成物は、遺伝性疾患などの疾患を処置するのに有用である。幾つかの実施形態において、本明細書には、外来性DNA配列と少なくとも2つの標的配列とを組成物含む標的構築物、標的配列に相同する相補鎖オリゴヌクレオチド、及びヌクレアーゼを含む、組成物が提供され、標的配列はヌクレアーゼにより認識される。幾つかの実施形態において、外来性DNA配列と、非分裂細胞のゲノムに挿入される標的配列の第1の半分及び第2の半分とを含む組成物も提供され、標的配列の第1の半分及び第2の半分はヌクレアーゼによって切断され、標的配列の第1の半分及び第2の半分は、外来性DNA配列のゲノム上流及び下流に挿入される。
【0016】
外来性DNA配列
本明細書で提供される組成物は、外来性DNA配列を含む標的構築物を含む。外来性DNA配列は、標的ゲノムのゲノムDNAへと組み込まれるDNAの断片を含む。幾つかの実施形態において、外来性DNAは遺伝子の少なくとも一部を含む。幾つかの実施形態において、外来性DNAは遺伝子のエクソンを含む。幾つかの実施形態において、外来性DNAは遺伝子のイントロンを含む。幾つかの実施形態において、外来性DNAは、遺伝子のエンハンサー要素又はプロモーター要素を含む。幾つかの実施形態において、外来性DNAは、遺伝子の3’部分に縮合される遺伝子の5’部分を含む遺伝子の、不連続の配列を含む。幾つかの実施形態において、外来性DNAは野生型遺伝子配列を含む。幾つかの実施形態において、外来性DNAは突然変異遺伝子配列を含む。幾つかの実施形態において、外来性DNAは野生型遺伝子配列を含む。幾つかの実施形態において、外来性DNA配列はレポーター遺伝子を含む。幾つかの実施形態において、レポーター遺伝子は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、及びβ-グルクロニダーゼのうち少なくとも1つから選択される。幾つかの実施形態において、外来性DNA配列は遺伝子転写調節要素を含む。幾つかの実施形態において、遺伝子転写調節要素は、プロモーター配列又はエンハンサー配列を含む。幾つかの実施形態において、外来性DNA配列は1つ以上のエクソン又はその断片を含む。幾つかの実施形態において、外来性DNA配列は1つ以上のイントロン又はその断片を含む。幾つかの実施形態において、外来性DNA配列は、3’非翻訳領域又は5’非翻訳領域の少なくとも一部を含む。幾つかの実施形態において、外来性DNA配列は人工DNA配列を含む。幾つかの実施形態において、外来性DNA配列は核局在配列を含む。幾つかの実施形態において、外来性DNA配列は核輸出配列を含む。
【0017】
ヌクレアーゼ切断により生成される切断末端は主に、非相同末端結合(NHEJ)又は相同組換え修復(homology-directed repair)(HDR)により修復される。非分裂細胞において、ヌクレアーゼ切断により生成される切断末端はNHEJにより修復される。NHEJは、2つの切断末端上で行なわれ、これらは幾つかの実施形態において、欠失又は挿入されている塩基対などの非完全な修復をもたらす。NHEJは、幾つかの実施形態において、切断部位内の相同性又は非相同性の外来性DNA配列を組み込むために行なわれる。非相同性の外来性DNA配列を備えたNHEJは、幾つかの実施形態において、挿入部位の1つ又は両方の末端での塩基対の欠失或いは挿入をもたらす。HDRは、外来性DNA配列が、挿入部位の各側に対応する5’及び3’の両末端に相同性の領域を含む時、切断部位へと外来性DNA配列をシームレスに挿入するために使用される。
【0018】
外来性DNA配列は、幾つかの実施形態において、標的ゲノム遺伝子座にて組み込まれる核酸の部分を含む。外来性DNA配列は、幾つかの実施形態において、1つ以上の対象のポリヌクレオチドを含む。外来性DNA配列は、幾つかの実施形態において、1つ以上の発現カセットを含む。そのような発現カセットは、幾つかの実施形態において、対象の外来性DNA配列、選択マーカー及び/又はレポーター遺伝子をコードするポリヌクレオチド、及び、発現に影響を及ぼす調節成分を含む。
【0019】
外来性DNA配列は、幾つかの実施形態において、ゲノム核酸を含む。ゲノム核酸は、動物、マウス、ヒト、非ヒト、げっ歯類、非ヒト、ラット、ハムスター、ウサギ、ブタ、ウシ、シカ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ネコ、イヌ、フェレット、霊長類(例えばマーモセット、アカゲザル)、家畜哺乳動物又は農業哺乳動物、鳥類、細菌、古細菌、ウイルス、又は対象のその他生物体、或いはそれらの組み合わせに由来する。
【0020】
あらゆる適切な大きさの外来性DNA配列が標的ゲノムに組み込まれる。幾つかの実施形態において、ゲノムに組み込まれる外来性DNA配列は、3キロベース(kb)未満、約3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500キロベース、或いは500キロベースを超える長さである。幾つかの実施形態において、ゲノムに組み込まれる外来性DNA配列は、少なくとも約2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、又は500を超える長さ(kb)である。幾つかの実施形態において、ゲノムに組み込まれる外来性DNA配列は、最大約3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、或いは500を超える長さ(kb)である。
【0021】
標的配列
本明細書で提供される組成物は、少なくとも1つの標的配列を含む標的構築物を含む。幾つかの実施形態において、標的構築物は少なくとも2つの標的配列を含む。本明細書中の標的配列は、配列に特異的な様式で本明細書に開示されるヌクレアーゼによって認識且つ切断される核酸配列である。幾つかの実施形態において、標的配列は、長さ約9から約12のヌクレオチド、長さ約12から約18のヌクレオチド、長斜約18から約21のヌクレオチド、長さ約21から約40のヌクレオチド、長さ約40から約80のヌクレオチド、或いは部分範囲の組み合わせ(例えば9-18、9-21、9-40、及び9-80のヌクレオチド)である。幾つかの実施形態において、標的構築物はヌクレアーゼ結合部位を含む。幾つかの実施形態において、標的配列は、ニック/切断部位を含む。幾つかの実施形態において、標的配列は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列を含む。
【0022】
幾つかの実施形態において、標的核酸配列(例えばプロトスペーサー)は20のヌクレオチドである。幾つかの実施形態において、標的核酸は20未満のヌクレオチドである。幾つかの実施形態において、標的核酸は、少なくとも5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、又はそれ以上のヌクレオチドである。幾つかの実施形態において、標的核酸は、多くとも5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、又はそれ以上のヌクレオチドである。幾つかの実施形態において、標的核酸配列は、PAMの最初のヌクレオチドの5’に隣接する(immediately)16、17、18、19、20、21、22、又は23の塩基である。幾つかの実施形態において、標的核酸配列は、PAMの最後のヌクレオチドの3’に隣接する16、17、18、19、20、21、22、又は23の塩基である。幾つかの実施形態において、標的核酸配列は、PAMの最初のヌクレオチドの5’に隣接する20の塩基である。幾つかの実施形態において、標的核酸配列は、PAMの最後のヌクレオチドの3’に隣接する20の塩基である。幾つかの実施形態において、標的核酸配列はPAMの5’又は3’である。
【0023】
幾つかの実施形態において、標的配列は、相補鎖核酸の核酸標的部分が結合する標的核酸に存在する核酸配列を含んでいる。例えば、幾つかの実施形態において、標的配列は、相補鎖核酸が塩基対合を持つように設計される配列を含んでいる。幾つかの実施形態において標的配列は、例えば、細胞の核又は細胞質中に、或いは糸粒体又は葉緑体などの細胞の細胞小器官内に位置するポリヌクレオチドを含む。標的配列はヌクレアーゼのための切断部位を含む。標的配列は、幾つかの実施形態において、ヌクレアーゼのための切断部位に隣接している。
【0024】
ヌクレアーゼは、幾つかの実施形態において、相補鎖の核酸標的配列が結合する標的核酸に存在する核酸配列の内部又は外部の部位にて核酸を切断する。切断部位は、幾つかの実施形態において、ヌクレアーゼが一本鎖切断又は二本鎖切断を生成する核酸の場所を含む。例えば、プロテアーゼ認識配列にハイブリダイズされ且つプロテアーゼと複合される相補鎖核酸を含むヌクレアーゼ複合体の形成は、相補鎖核酸のスペーサー領域が結合する標的核酸に存在する核酸配列において、又はその付近で(例えば、核酸配列から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、19、20、23、50、又はそれ以上の塩基対内で)、1つ又は両方の鎖の切断をもたらす。切断部位は、幾つかの実施形態において、核酸のわずか一本の鎖、又は両方の鎖の上にある。幾つかの実施形態において、切断部位は、(平滑末端を生成する)核酸の両方の鎖の上の同じ場所、或いは、(付着末端を生成する)各鎖の上の異なる場所にある。付着末端は、幾つかの実施形態において、5’又は3’オーバーハング粘着末端である。付着末端は、幾つかの実施形態において、粘着末端を生成するヌクレアーゼ(例えばCpf1)により生成される。幾つかの実施形態において、付着末端は、例えば2つのヌクレアーゼを使用して生成され、その各々は、各鎖の上の異なる切断部位にて一本鎖切断を生成し、それにより二本鎖切断を生成する。例えば、第1のニッカーゼは、二本鎖DNA(dsDNA)の第1の鎖の上に一本鎖切断を作成し、第2のニッカーゼは、オーバーハング配列が作成されるようにdsDNAの第2の鎖の上に一本鎖切断を作成する。場合によっては、第1の鎖の上のニッカーゼのヌクレアーゼ認識配列は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、75、100、250、500、又は1000の塩基対により、第2の鎖の上のニッカーゼのヌクレアーゼ認識配列から分離される。
【0025】
ヌクレアーゼによる標的核酸の部位特異的な切断は、幾つかの実施形態において、相補鎖核酸と標的核酸との間の塩基対合相補性によって決定される位置に生じる。ヌクレアーゼタンパク質による標的核酸の部位特異的な切断は、幾つかの実施形態において、標的核酸中の、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と称される短いモチーフによって決定される位置に生じる。例えば、PAMは、認識配列の3’末端にてヌクレアーゼ認識配列に隣接する。例えば、ヌクレアーゼの切断部位は、幾つかの実施形態において、PAM配列の約1から約25、約2から約5、又は約19から約23の塩基対(例えば3の塩基対)の上流又は下流にある。幾つかの実施形態において、ヌクレアーゼの切断部位はPAM配列の3の塩基対の上流にある。幾つかの実施形態において、ヌクレアーゼの切断部位は、(+)鎖上の19の塩基、及び(-)鎖の上の23の塩基であり、5’オーバーハングの長さ5のヌクレオチド(nt)を生成する。場合によっては、切断は平滑末端を生成する。場合によっては、切断は、5’オーバーハングを備えた付着末端又は粘着末端を生成する。場合によっては、切断は、3’オーバーハングを備えた付着末端又は粘着末端を生成する。
【0026】
様々なヌクレアーゼタンパク質のオルソログは、異なるPAM配列を利用する。例えば、異なるCasタンパク質は、幾つかの実施形態において異なるPAM配列を認識する。例えば、ストレプトコッカス・ピオゲネスにおいて、PAMは配列5’-XRR-3’を含む標的核酸中の配列であり、ここで、RはA又はGの何れかであり、Xは、スペーサー配列により標的とされる標的核酸配列の3’に隣接する。ストレプトコッカス・ピオゲネスCas9(SpyCas9)のPAM配列は5’-XGG-3’であり、ここで、Xは任意のDNAヌクレオチドであり、標的DNAの非相補鎖のヌクレアーゼ認識配列の3’に隣接する。Cpf1のPAMは5’-TTX-3’であり、ここで、Xは任意のDNAヌクレオチドであり、ヌクレアーゼ認識配列の5’に隣接する。
【0027】
相補鎖核酸
相補鎖核酸、例えば相補鎖オリゴヌクレオチド、又は相補鎖RNAは、別の核酸、例えば細胞のゲノム中の標的核酸にハイブリダイズする核酸を指す。相補鎖核酸は、幾つかの実施形態においてRNAである。幾つかの実施形態において、相補鎖核酸はDNAである。相補鎖核酸は、幾つかの実施形態においてヌクレオチドアナログを含む。相補鎖核酸は、幾つかの実施形態において、修飾ヌクレオチドを含む。相補鎖核酸は、幾つかの実施形態において、核酸の配列に部位特異的に結合するようにプログラム又は設計される。
【0028】
相補鎖核酸は、幾つかの実施形態において、核酸に新たな又は強化した特徴を提供するために1つ以上の修飾を含む。幾つかの実施形態において、相補鎖核酸が核酸アフィニティータグを含む。幾つかの実施形態において、相補鎖核酸は、合成ヌクレオチド、合成ヌクレオチドアナログ、ヌクレオチド誘導体、及び/又は修飾ヌクレオチドを含む。
【0029】
相補鎖核酸は、幾つかの実施形態において、標的核酸中の配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列(例えばスペーサー)を、例えば5’末端又は3’末端にて、又はその付近で含む。幾つかの実施形態において、相補鎖核酸のスペーサーは、ハイブリダイゼーションを介した配列に特異的な様式(即ち塩基対合)で標的核酸と相互に作用する。幾つかの実施形態において、スペーサー配列は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の5’又は3’に位置する標的核酸(例えばプロトスペーサー配列)にハイブリダイズする。
【0030】
幾つかの実施形態において、相補鎖核酸は、二本相補鎖核酸と称される2つの別個の核酸分子を含む。幾つかの実施形態において、相補鎖核酸は、一本相補鎖核酸と称される単一の核酸分子を含む。幾つかの実施形態において、相補鎖核酸は、CrRNAを含む一本相補鎖核酸を含む。幾つかの実施形態において、相補鎖核酸は、縮合した構築物を含む一本相補鎖核酸を含む。
【0031】
相補鎖核酸の核酸標的領域は、幾つかの実施形態において、標的核酸中の配列に相補的なヌクレオチド配列を含む。核酸標的領域は、幾つかの実施形態においてスペーサー領域を含む。幾つかの実施形態において、スペーサー領域は、ハイブリダイゼーションを介した配列に特異的な様式(即ち塩基対合)で標的核酸と相互に作用する。スペーサー領域のヌクレオチド配列は変化し、相補鎖核酸が相互に作用する標的核酸の位置を決定する。相補鎖核酸のスペーサー領域は、幾つかの実施形態において、標的核酸内の望ましい配列にハイブリダイズするように修飾される。
【0032】
相補性は代替的に、完全、或いは実質的/十分である。2つの核酸間の完全な相補性は、2つの核酸が、中にある塩基全てがワトソン-クリック対合により相補的塩基に結合される二重鎖を形成することを意味する。実質的又は十分な相補性は、一本鎖の配列が対向する鎖の配列に対して完全に及び/又は完璧に相補性ではないが、ハイブリダイゼーション条件(例えば塩の濃度及び温度)の設定において安定した雑種複合体を形成するために2つの鎖の上の塩基間で十分な結合が生じることを意味する。このような条件は、ハイブリダイズされた鎖のTmを予測するために配列及び標準の数学的計算を使用することによって、或いは、慣例的な方法の使用によるTmの経験的決定によって予測することができる。
【0033】
幾つかの実施形態において、相補鎖核酸の核酸標的領域(例えばスペーサー領域)は、長さ18から72のヌクレオチドである。相補鎖核酸の核酸標的領域(例えばスペーサー領域)は、約12のヌクレオチドから約100のヌクレオチドの長さを有している。例えば、相補鎖核酸の核酸標的領域(例えばスペーサー領域)は、約12ヌクレオチド(nt)から約80nt、約12ntから約50nt、約12ntから約40nt、約12ntから約30nt、約12ntから約25nt、約12ntから約20nt、約12ntから約19nt、約12ntから約18nt、約12ntから約17nt、約12ntから約16nt、約12ntから約15ntの長さを有している。代替的に、DNA標的部分は、約18ntから約20nt、約18ntから約25nt、約18ntから約30nt、約18ntから約35nt、約18ntから約40nt、約18ntから約45nt、約18ntから約50nt、約18ntから約60nt、約18ntから約70nt、約18ntから約80nt、約18ntから約90nt、約18ntから約100nt、約20ntから約25nt、約20ntから約30nt、約20ntから約35nt、約20ntから約40nt、約20ntから約45nt、約20ntから約50nt、約20ntから約60nt、約20ntから約70nt、約20ntから約80nt、約20ntから約90nt、又は約20ntから約100ntの長さを有している。
【0034】
幾つかの実施形態において、相補鎖核酸の核酸標的領域(例えばスペーサー領域)は、長さ20のヌクレオチドである。幾つかの実施形態において、相補鎖核酸の核酸標的領域(例えばスペーサー領域)は、長さ19のヌクレオチドである。幾つかの実施形態において、相補鎖核酸の核酸標的領域(例えばスペーサー領域)は、長さ18のヌクレオチドである。幾つかの実施形態において、相補鎖核酸の核酸標的領域(例えばスペーサー領域)は、長さ17のヌクレオチドである。幾つかの実施形態において、相補鎖核酸の核酸標的領域(例えばスペーサー領域)は、長さ16のヌクレオチドである。幾つかの実施形態において、相補鎖核酸の核酸標的領域(例えばスペーサー領域)は、長さ21のヌクレオチドである。幾つかの実施形態において、相補鎖核酸の核酸標的領域(例えばスペーサー領域)は、長さ22のヌクレオチドである。
【0035】
プロトスペーサー配列は、幾つかの実施形態において、関心領域内のPAMを同定することによって、及び、プロトスペーサーとしてPAMの上流又は下流の望ましい大きさの領域を選択することによって同定される。対応するスペーサー配列は、プロトスペーサー領域の相補的配列を決定することにより設計される。
【0036】
スペーサー配列は、幾つかの実施形態において、コンピュータープログラム(例えば、機械可読コード)を使用して同定される。コンピュータープログラムは、幾つかの実施形態において、予測された融解温度、二次構造形成、及び予測されたアニール温度、配列同一性、ゲノムコンテキスト、クロマチンアクセシビリティ、%GC、ゲノムの発生の頻度、メチル化状況、SNPの存在などの変数を使用する。
【0037】
標的核酸(例えばプロトスペーサー)内の核酸標的配列(例えばスペーサー配列)とヌクレアーゼ認識配列との間の相補性の割合は、幾つかの実施形態において、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%である。標的核酸内の核酸標的配列とヌクレアーゼ認識配列との間の相補性の割合は、幾つかの実施形態において、約20の近接ヌクレオチドにわたって少なくとも60%である。
【0038】
幾つかの実施形態において、相補鎖核酸は、追加の望ましい特徴(例えば、修飾又は調節された安定性;細胞内標的;蛍光標識での追跡;タンパク質又はタンパク質複合体のための結合部位など)を提供する修飾又は配列を含む。そのような修飾の例は、例えば、5’キャップ(例えば、7-メチルグアニレート(methylguanylate)キャップ(m7G));3’ポリアデニル化尾部(即ち3’ポリ(A)尾部);リボスイッチ配列(例えば、タンパク質及び/又はタンパク質複合体によって安定性の調節及び/又はアクセシビリティの調節を可能にするためのもの);安定性制御配列;dsRNA二本鎖(即ちヘアピン)を形成する配列;細胞内位置(例えば核、ミトコンドリア、葉緑体など)にRNAを標的とする修飾又は配列;追跡(例えば、蛍光分子への直接抱合、蛍光検出を容易にする部分への抱合、蛍光検出を可能にする配列など)を提供する修飾又は配列;又はタンパク質(例えば、転写活性化因子、転写リプレッサー、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNAデメチラーゼ、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼ、及びそれらの組み合わせを含む、DNAに作用するタンパク質)のための結合部位を提供する修飾又は配列を含む。
【0039】
相補鎖核酸は任意の形態で提供される。例えば、幾つかの実施形態において、相補鎖核酸は、2つの分子(例えば別個のcrRNA及びtracrRNA)、或いは1つの分子(例えばsgRNA)として、RNAの形態で提供される。幾つかの実施形態において、相補鎖核酸は、ヌクレアーゼタンパク質との複合体の形態で提供される。代替的に、相補鎖核酸は、RNAをコードするDNAの形態でも提供される。相補鎖核酸をコードするDNAは代替的に、単一の相補鎖核酸(例えばsgRNA)又は別個のRNA分子(例えば別個のcrRNA及びtracrRNA)をコードする。後者の場合、相補鎖核酸をコードするDNAは、crRNA及びtracrRNAをそれぞれコードする別個のDNA分子として提供される。
【0040】
幾つかの実施形態において、相補鎖核酸をコードするDNAは、細胞のゲノムに安定して組み込まれ、そして随意に、細胞中のプロモーター活性に作用可能に連結される。相補鎖核酸をコードするDNAは、幾つかの実施形態において、発現構築物中のプロモーターに作用可能に連結される。
【0041】
相補鎖核酸は、任意の適切な方法により調製される。例えば、相補鎖核酸は、例えばT7 RNAポリメラーゼを使用するインビトロでの転写によって調製される。幾つかの実施形態において、相補鎖核酸は、化学合成により調製される、合成的に生成された分子である。
【0042】
ヌクレアーゼ
幾つかの実施形態において、本明細書に開示される組成物はヌクレアーゼを含む。標的配列を認識するヌクレアーゼが当業者に知られており、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)ヌクレアーゼ、及びメガヌクレアーゼを含むが、これらに限定されない。組成物に見出され且つ本明細書に開示される方法に有用なヌクレアーゼは、以下により詳細に記載される。
【0043】
ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)
「ジンクフィンガーヌクレアーゼ」又は「ZFN」は、FokIの切断ドメインと、3つ以上のジンクフィンガーモチーフを含むDNA認識ドメインとの間の融合である。正確な配向及び間隔における、2つの個々のZFNのDNA中の特定の場所でのヘテロ二量体化は、DNA中の二本鎖切断を引き起こす。場合によっては、ZFNは、各ジンクフィンガードメインのC末端に切断ドメインを融合させる。2つの切断ドメインがDNAを二量化させ且つ切断することを可能にするために、2つの個々のZFNは、特定の距離をおいて、対向するDNA鎖にそれらのC末端を結合させる。場合によっては、ジンクフィンガードメインと切断ドメインとの間のリンカー配列は、各結合部位の5’末端(edge)が約5-7bp分離されることを要求する。本発明に有用である典型的なZFNは、限定されないが、Urnov et al., Nature Reviews Genetics, 2010, 11:636-646;Gaj et al., Nat Methods, 2012, 9(8):805-7;米国特許第6,534,261号;第6,607,882号;第6,746,838号;第6,794,136号;第6,824,978号;第6,866,997号;第6,933,113号;第6,979,539号;第7,013,219号;第7,030,215号;第7,220,719号;第7,241,573号;第7,241,574号;第7,585,849号;第7,595,376号;第6,903,185号;第6,479,626号;及び米国特許出願公開第2003/0232410号及び2009/0203140号に記載されるものを含む。
【0044】
ZFNは、幾つかの実施形態において、標的DNAに二本鎖切断を生成し、遺伝子修飾の導入を可能にするDNA切断修復をもたらす。DNA切断修復は、幾つかの実施形態において、非相同末端結合(NHEJ)又は相同組換え修復(HDR)を介して生じる。幾つかの実施形態において、ZFNは、幾つかの実施形態において部位特異的な一本鎖DNA切断又はニックを誘導する操作されたZFNである、ジンクフィンガーニッカーゼである。ジンクフィンガーニッカーゼの記載は、例えば、Ramirez et al., Nucl Acids Res, 2012, 40(12):5560-8;Kim et al., Genome Res, 2012, 22(7):1327-33に見出される
【0045】
TALEN
「TALEN」又は「TALエフェクターヌクレアーゼ」は、DNA結合縦列反復の中央ドメイン、核移行シグナル、及びC末端転写活性化ドメインを含む、操作された転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼである。幾つかの例において、DNA結合縦列反復は、長さが33-35のアミノ酸を含み、且つ、1つ以上の特異的なDNA塩基対を認識する場所12及び13にて2つの超可変アミノ酸残基を含む。TALENは、DNA切断ドメインにTALエフェクターDNA結合ドメインを融合させることによって生成される。例えば、TALEタンパク質は、野生型又は突然変異したFokIエンドヌクレアーゼなどのヌクレアーゼ、或いはFokIの触媒ドメインに融合されることもある。FokIに対する様々な突然変異が、例えば切断特異性又は切断活性を改善する、TALENにおけるその使用のために生じさせられている。そのようなTALENは、望ましいDNA配列を結合するように操作される。
【0046】
TALENは頻繁に、後にNHEJ又はHDRを受ける、標的DNA配列に二本鎖切断を作成することによって遺伝子修飾を生成するために使用される。場合によっては、一本鎖ドナーDNA修複鋳型がHDRを促進するために提供される。
【0047】
TALEN、及び遺伝子編集のためのその使用についての詳細な説明は、例えば、米国特許第8,440,431号;第8,440,432号;第8,450,471号;第8,586,363号;及び第8,697,853号;Scharenberg et al., Curr Gene Ther, 2013, 13(4):291-303;Gaj et al., Nat Methods, 2012, 9(8):805-7;Beurdeley et al., Nat Commun, 2013, 4:1762;及びJoung and Sander, Nat Rev Mol Cell Biol, 2013, 14(1):49-55に見出される。
【0048】
DNA誘導型ヌクレアーゼ
「DNA誘導型ヌクレアーゼ」は、別の核酸、例えば細胞のゲノム中の標的核酸にハイブリダイズすることによってゲノム中の正確な場所にヌクレアーゼを導くために一本鎖DNA相補的ヌクレオチドを使用するヌクレアーゼである。幾つかの実施形態において、DNA誘導型ヌクレアーゼは、アルゴノートヌクレアーゼを含む。幾つかの実施形態において、DNA誘導型ヌクレアーゼは、TtAgo、PfAgo、及びNgAgoから選択される。幾つかの実施形態において、DNA誘導型ヌクレアーゼはNgAgoである。
【0049】
メガヌクレアーゼ
「メガヌクレアーゼ」は、レアカットエンドヌクレアーゼ又はホーミングエンドヌクレアーゼである。特定の実施形態において長さが少なくとも12の塩基対、例えば長さが12~40の塩基対、又は12~60の塩基対に及ぶ、高度に特異的な認識DNA標的部位である。幾つかの実施形態において、メガヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼの少なくとも1つの触媒ドメイン及び少なくとも1つのDNA結合ドメインを含む融合タンパク質、或いは核酸標的配列を明示するタンパク質などの、モジュラーDNA結合ヌクレアーゼである。DNA結合ドメインは、幾つかの実施形態において、一本鎖又は二本鎖DNAを認識する少なくとも1つのモチーフを含む。メガヌクレアーゼは代替的に単量体又は二量体である。
【0050】
幾つかの例において、メガヌクレアーゼは、自然発生型(自然に見い出される)又は野生型であり、他の例においてメガヌクレアーゼは、非天然、人工、操作された、合成、合理的に設計された、或いは人造のものである。特定の実施形態において、本発明のメガヌクレアーゼは、I-CreIメガヌクレアーゼ、I-CeuIメガヌクレアーゼ、I-MsoIメガヌクレアーゼ、I-SceIメガヌクレアーゼ、その変異体、その突然変異体、及びその誘導体を含む。
【0051】
任意のメガヌクレアーゼは、本明細書で使用されるものと考慮され、限定されないが、I-Scel、I-Scell、I-SceIII、I-SceIV、I-SceV、I-SceVI、I-SceVII、I-Ceul、I-CeuAIIP、I-Crel、I-CrepsbIP、I-CrepsbllP、I-CrepsbIIIP、I-CrepsbIVP、I-Tlil、I-Ppol、PI-PspI、F-Scel、F-Scell、F-Suvl、F-TevI、F-TevII、I-Amal、I-Anil、I-Chul、I-Cmoel、I-Cpal、I-CpaII、I-Csml、I-Cvul、I-CvuAIP、I-Ddil、I-DdiII、I-Dirl、I-Dmol、I-Hmul、I-HmuII、I-HsNIP、I-Llal、I-Msol、I-Naal、I-Nanl、I-NcIIP、I-NgrIP、I-Nitl、I-Njal、I-Nsp236IP、I-Pakl、I-PboIP、I-PcuIP、I-PcuAI、I-PcuVI、I-PgrlP、1-PobIP、I-Porl、I-PorIIP、I-PbpIP、I-SpBetaIP、I-Scal、I-SexIP、1-SneIP、I-Spoml、I-SpomCP、I-SpomIP、I-SpomIIP、I-SquIP、I-Ssp6803I、I-SthPhiJP、I-SthPhiST3P、I-SthPhiSTe3bP、I-TdeIP、I-Tevl、I-TevII、I-TevIII、I-UarAP、I-UarHGPAIP、I-UarHGPA13P、I-VinIP、1-ZbiIP、PI-MtuI、PI-MtuHIP PI-MtuHIIP、PI-PfuI、PI-PfuII、PI-PkoI、Pl-PkoII、PI-Rma43812IP、PI-SpBetaIP、PI-SceI、PI-TfuI、PI-TfuII、PI-Thyl、PI-Tlil、PI-TliII、又はそれらの任意の活性変異体或いは断片を含む。
【0052】
CRISPR
CRISPR(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート)/Cas(CRISPR関連タンパク質)ヌクレアーゼシステムは、ゲノム工学のために使用される細菌システムに基づく、操作されたヌクレアーゼシステムである。これは、多くの細菌及び古細菌の適応的免疫反応に部分的に基づく。ウイルス又はプラスミドが細菌に侵入すると、侵入物のDNAの部分は「免疫」応答によってCRISPR RNA(crRNA)に変換される。その後、crRNAは、「プロトスペーサー」と呼ばれる標的DNA中のcrRNAに相同する領域へとCas(例えばCas9)ヌクレアーゼを誘導するために、tracrRNAと呼ばれる別のタイプのRNAと、部分的な相補性の領域を通じて会合する。Cas(例えばCas9)ヌクレアーゼは、crRNA転写内に含まれる20のヌクレオチド相補鎖配列により明示される部位での二本鎖切断にて平滑末端を生成するために、DNAを切断する。Cas(例えばCas9)ヌクレアーゼは、幾つかの実施形態において、部位特異的なDNA認識及び切断にcrRNA及びtracrRNAの両方を必要とする。このシステムは現在、特定の実施形態においてcrRNAとtracrRNAが1つの分子(「単一誘導RNA」又は「sgRNA」)に組み合わせられ、且つ単一誘導RNAのcrRNA等価部分が望ましい配列を標的とするためにCas(例えばCas9)ヌクレアーゼを誘導するように設計されるように、設計されている(例えば、Jinek et al. (2012) Science 337:816-821; Jinek et al. (2013) eLife 2:e00471; Segal (2013) eLife 2:e00563を参照)。故に、CRISPR/Casシステムは、細胞のゲノム中の望ましい標的にて二本鎖切断を作成し、且つ相同組換え修復(HDR)又は非相同末端結合(NHEJ)により誘導された切断を修復するための細胞の内因的な機構を利用するように、操作することができる。
【0053】
幾つかの実施形態において、CasヌクレアーゼにはDNA切断活性がある。Casヌクレアーゼは、幾つかの実施形態において、標的DNA配列の1つの位置にて1つ又は両方の鎖の切断を導く。例えば、幾つかの実施形態において、Casヌクレアーゼは、標的DNA配列の一本鎖を切断する1つ以上の不活性化触媒ドメインを持つニッカーゼである。
【0054】
Casヌクレアーゼの非限定的な例は、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1及びCsx12としても知られる)、Cas10、Cpf1、C2c3、C2c2、C2c1Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Cpf1、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、それらの相同体、それらの変異体、それらの突然変異体、及びそれらの誘導体を含む。Casヌクレアーゼの3つの主な型(I型、II型、及びIII型)、並びに、5つのI型、3つのII型、及び2つのIII型を含む10の亜型が存在する(例えば、Hochstrasser and Doudna, Trends Biochem Sci, 2015:40(1):58-66を参照)。II型Casヌクレアーゼは、Cas1、Cas2、Csn2、及びCas9を含むが、これらに限定されない。これらCasヌクレアーゼは当業者に既知である。例えば、ストレプトコッカス・ピオゲネスの野生型Cas9ポリペプチドのアミノ酸配列は、例えば、NBCI Ref. Seq. No. NP_269215に記載されており、ストレプトコッカス・サーモフィルスの野生型Cas9ポリペプチドのアミノ酸配列は、例えば、NBCI Ref. Seq. No. WP_011681470に記載されている。
【0055】
Casヌクレアーゼ、例えばCas9ポリペプチドは、幾つかの実施形態において様々な細菌種に由来し、限定されないが、ベイロネラ・アティピカ(Veillonella atypical)、フソバクテリウム・ヌクレアタム、フィリファクター・アロキス、ソロバクテリウム・ムーレイ(Solobacterium moorei)、コプロコッカス・カツス、トレポネーマ・デンティコラ、ペプトニフィルス・デュエルデニイ(Peptoniphilus duerdenii)、カテニバクテリウム・ミツオカイ、ストレプトコッカス・ミュータンス、リステリア・イノキュア、スタフィロコッカス・シュードインターメディウス、アシドアミノコックス・インテスティン(Acidaminococcus intestine)、オルセネラ・ウリ(Olsenella uli)、オエノコッカス・キタハラエ(Oenococcus kitaharae)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・ガセリ、フィネゴルディア・マグナ、滑走性マイコプラズマ、マイコプラズマ・ガリセプティクム、マイコプラズマ・オビニューモニエ、マイコプラズマ・カニス、マイコプラズマ・シノヴィエ、ユーバクテリウム・レクタレ、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ユーバクテリウム・ドリクム、ラクトバチルス・コリニフォルミス亜種トルケンス、イリオバクター・ポリトロパス、ルミノコッカス・アルブス、アッカーマンシア・ムシニフィラ、アシドサーマス・セルロリティカス、ビフィドバクテリウム・ロングム、ビフィドバクテリウム・デンティウム、コリネバクテリア・ジフテリア、エルシミクロビウム・ミヌトゥム、ニトラティフラクター・サルスガイニス、スピロヘータ・グロバス(Sphaerochaeta globus)、フィブロバクター・サクシノゲネス亜種サクシノゲネス、バクテロイデス・フラジリス、カプノサイトファガ・オクラセア、ロドシュードモナス・パルストリス、プレボテラ・ミカンス(Prevotella micans)、プレボテラ・ルミニコラ、フラボバクテリウム・コルムナーレ、アミノモナス・パウシボランス(Aminomonas paucivorans)、ロドスピリラム・ラブラム、カンジダタス ・プニセイスピリルム・マリナム(Candidatus Puniceispirillum marinum)、フェルミネフォロバクター・エイセニアエ(Verminephrobacter eiseniae)、ラルストニア・シジジイ、ディノロセオバクター・シバエ、アゾスピリルム、ニトロバクター・ハンブルゲンシス、ブラジリゾビウム、ウォリネラ・サクシノゲネス、カンピロバクター・ジェジュニ亜種ジェジュニ、ヘリコバクター・ムステラエ、バチルス・セレウス、アシドボラックス・エブレウス(Acidovorax ebreus)、クロストリジウム・パーフリンジェンス、パルビバクラム・ラバメンティボランス、ロゼブリア・インテスティナーリス、髄膜炎菌、パスツレラ・ムルトシダ亜種ムルトシダ、ステレラ・ワズワーセンシス(Sutterella wadsworthensis)、プロテオバクテリウム、レジュネラ・ニューモフィラ、パラサテレラ・エクスクレメンティホミニス、ウォリネラ・サクシノゲネス、及びフランシセラ・ノビシダを含む。
【0056】
「Cas9」は、RNA誘導型二本鎖DNA結合ヌクレアーゼタンパク質又はニッカーゼタンパク質を指す。野生型Cas9ヌクレアーゼには2つの機能ドメイン、例えば、異なるDNA鎖を切断するRuvC及びHNHがある。両方の機能ドメインが活性であると、Cas9は、ゲノムDNA(標的DNA)において二本鎖切断を誘導することができる。Cas9酵素は、幾つかの実施形態において、コリネバクター、サテレラ、レジオネラ、トレポネーマ、フィリファクター、ユーバクテリウム、レンサ球菌、ラクトバチラス、マイコプラズマ、バクテロイド、フラビイボラ、フラボバクテリウム、スフェロケタ(Sphaerochaeta)、アゾスピリルム、グルコナセトバクター、ナイセリア、ロゼブリア、パルビバクラム、スタフィロコッカス、ニトラティフラクター、及びカンピロバクターから成る群に属する細菌に由来するCas9タンパク質の1つ以上の触媒ドメインを含む。幾つかの実施形態において、Cas9は融合タンパク質であり、例えば、2つの触媒ドメインは異なる細菌種に由来する。
【0057】
Cas9ヌクレアーゼの有用な変異体は、RuvC-或いはHNH-酵素又はニッカーゼなどの、単一の不活性触媒ドメインを含む。Cas9ニッカーゼは、ほんの1つの活性機能ドメインを有しており、幾つかの実施形態において、標的DNAのほんの1つの鎖を切断し、それにより単鎖の切断又はニックを作り出す。幾つかの実施形態において、少なくとも1つのD10A突然変異を持つ突然変異体Cas9ヌクレアーゼは、Cas9ニッカーゼである。他の実施形態において、少なくとも1つのH840A突然変異を持つ突然変異体Cas9ヌクレアーゼは、Cas9ニッカーゼである。Cas9ニッカーゼに存在する突然変異の他の例は、限定されないがN854A及びN863Aを含む。相対するDNA鎖を標的とする少なくとも2つのDNA標的RNAが使用される場合、二本鎖切断は、Cas9ニッカーゼを使用して導入される。二重にニックをつけて誘導された(double-nicked induced)二本鎖切断は、NHEJ又はHDRにより修復される。この遺伝子編集の戦略はHDRを好み、オフターゲットDNA部位でのインデル突然変異の頻度を減少させる。Cas9ヌクレアーゼ又はニッカーゼは、幾つかの実施形態において、標的細胞又は標的生物のためにコドン最適化される。
【0058】
幾つか実施形態において、Casヌクレアーゼは、dCas9と称される、RuvC1及びHNHヌクレアーゼドメイン(D10AとH840A)の2つのサイレンシング突然変異を含むCas9ポリペプチドである。1つの実施形態において、化膿レンサ球菌由来のdCas9ポリペプチドは、位置D10、G12、G17、E762、H840、N854、N863、H982、H983、A984、D986、A987、又はそれらの任意の組み合わせにて少なくとも1つの突然変異を含む。そのようなdCas9ポリペプチド及びその変異体の記載は、例えば、国際特許公報WO2013/176772で提供される。dCas9酵素は、幾つか実施形態において、H840又はN863での突然変異と同様、D10、E762、H983、又はD986での突然変異を含む。幾つかの例において、dCas9酵素は、D10A又はD10Nの突然変異を含む。また、dCas9酵素は代替的に、突然変異H840A、H840Y、又はH840Nを含む。幾つかの実施形態において、本発明のdCas9酵素は、D10AとH840A;D10AとH840Y;D10AとH840N;D10NとH840A;D10NとH840Y;又はD10NとH840Nの置換を含む。置換は代替的に、Cas9ポリペプチドを触媒的に不活性にするために保存的置換又は非保存的置換であり、標的DNAに結合することができる。
【0059】
ゲノム編集の方法のために、Casヌクレアーゼは、幾つか実施形態において、dCas9に結合されるIIS型の制限酵素FokIの触媒ドメインを含むポリペプチドなどの、Cas9融合タンパク質を含む。FokI-dCas9融合タンパク質(fCas9)は、標的DNAの一本鎖に結合して二本鎖切断を生成するために、2つのガイドRNAを使用することができる。
【0060】
送達のための組成物
任意の適切な送達方法が、本開示の組成物を送達するために使用されることを考慮される。HITIシステムの個々の成分(例えば、ヌクレアーゼ及び/又は外来性DNA配列)は、幾つかの実施形態において、同時に又は一時的に分離されて送達される。遺伝子修飾の方法の選択は、形質転換される細胞のタイプ、及び/又は形質転換が生じる状況(例えば、インビトロ、エクスビボ、又はインビボ)に依存する。これら方法の一般的な議論は、Ausubel, et al., Short Protocols in Molecular Biology, 3rd ed., Wiley & Sons, 1995の中で見出される。
【0061】
幾つかの実施形態において、本明細書に開示される方法は、標的DNAを接触させる工程、或いは、細胞(又は細胞の集団)に、相補鎖核酸(例えばgRNA)、部位特異的修飾ポリペプチド(例えばCasタンパク質)、及び/又は外来性DNA配列をコードするヌクレオチド配列を含む1つ以上の核酸を導入する工程を含む。相補鎖核酸及び/又は部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む適切な核酸は発現ベクターを含み、ここで、相補鎖核酸及び/又は部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターは組換え発現ベクターである。
【0062】
送達方法又は形質転換の非限定的な例は、例えば、ウイルス感染又はバクテリオファージ感染、形質移入、抱合、原形質融合、リポフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介の形質移入、DEAEデキストラン媒介の形質移入、リポソーム媒介の形質移入、パーティクル・ガン技術、リン酸カルシウム沈殿、直接の微量注射、及びナノ粒子媒介の核酸送達を含む(例えば、Panyam et. , al Adv Drug Deliv Rev. 2012 Sep. 13. pii: 50169-409X(12)00283-9. doi: 10.1016/j.addr.2012.09.023を参照)。
【0063】
幾つかの態様において、本開示は、本明細書に記載されるような1つ以上のベクター、その1つ以上の転写物、及び/又はそこから転写された1つ以上のタンパク質などの、1つ以上のポリヌクレオチドを宿主細胞に送達する工程を含む方法を提供する。幾つかの態様において、本開示は、前記方法によって産生される細胞、及び、前記細胞を含むか又はそこから産生される生物体(動物、植物、又は真菌類など)を更に提供する。幾つかの実施形態において、相補鎖配列と組み合わせた、及び随意にそれと複合させたヌクレアーゼタンパク質は、細胞に送達される。従来のウイルスベース及び非ウイルスベースの遺伝子移入方法が、哺乳動物細胞又は標的組織に核酸を導入するために使用されることを考慮される。前記方法は、培養物、又は宿主生物中の細胞に、HITIシステムの成分をコードする核酸を投与するために使用される。非ウイルス性のベクター送達システムは、DNAプラスミド、RNA(例えば本明細書に記載されるベクターの転写)、ネイキッド核酸、及びリポソームなどの送達ビヒクルと複合された核酸を含む。ウイルスベクター送達システムは、DNAウイルス及びRNAウイルスを含むことができ、こららは、細胞への送達後にエピソームゲノム又は組み込まれたゲノムの何れか有することができる。遺伝子治療手順のレビューについては、Anderson, Science 256:808-813 (1992);Nabel & Felgner, TIBTECH 11:211-217 (1993);Mitani & Caskey, TIBTECH 11:162-166 (1993);Dillon. TIBTECH 11:167-175 (1993);Miller, Nature 357:455-460 (1992);Van Brunt, Biotechnology 6(10): 1149-1154 (1988);Vigne, Restorative Neurology and Neuroscience 8:35-36 (1995);Kremer & Perricaudet, British Medical Bulletin 51(1):31-44 (1995);Haddada et al., in Current Topics in Microbiology and Immunology Doerfler and Bohm (eds) (1995);及びYu et al., Gene Therapy 1:13-26 (1994)を参照。
【0064】
核酸の非ウイルス性送達の方法は、リポフェクション、ヌクレオフェクション(nucleofection)、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、バイオリスティック(biolistics)、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオン又は脂質:核酸の抱合体、ネイキッドDNA、人工ビリオン、及びDNAの薬剤により増強された取り込みを含み得る。リポフェクションは、例えば米国特許第5,049,386号、第4,946,787号;及び第4,897,355号に記載されており、リポフェクション試薬は市販されている例えばTransfectam(商標)及びLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効果的な受容体認識リポフェクションに適切なカチオン及び中性脂質は、Felgner、WO91/17424;WO91/16024のものを含んでいる。送達は、細胞(例えばインビトロ又はエクスビボの投与)或いは標的組織(例えばインビボの投与)を対象とすると考慮される。
【0065】
免疫脂質(immunolipid)複合体などの標的とされたリポソームを含む、脂質:核酸の複合体の調製は周知である(例えば、Crystal, Science 270:404-410 (1995); Blaese et al., Cancer Gene Ther. 2:291-297 (1995): Behr et al., Bioconjugate Chem. 5:382-389 (1994); Remy et al., Bioconjugate Chem. 5:647-654 (1994); Gao et al., Gene Therapy 2:710-722 (1995); Ahmad et al., Cancer Res. 52:4817-4820 (1992);米国特許第4,186,183号、第4,217,344号、第4,235,871号、第4,261,975号、第4,485,054号、第4,501,728号、第4,774,085号、第4,837,028号、及び第4,946,787号を参照)。
【0066】
RNA又はDNAウイルスベースのシステムは、身体中の特異的細胞を標的とするために使用され、細胞の核にウイルスペイロード(viral payload)を輸送する(trafficking)。ウイルスベクターは代替的に、直接(インビボ)投与され、或いは、インビトロで細胞を処置するために使用され、且つ、修飾された細胞は随意に投与される(エクスビボ)。ウイルスベースのシステムは、限定されないが、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、及び単純ヘルペスウイルスの遺伝子導入ベクターを含む。宿主ゲノムにおける組込みは、幾つかの実施形態において、レトロウイルス、レンチウイルス、及びアデノ随伴ウイルスの遺伝子移入方法により生じ、その結果、幾つかの実施形態において、挿入された導入遺伝子の長期的な発現がもたらされる。高い形質導入の効率が、多くの異種細胞型及び標的組織において観察される。
【0067】
レトロウイルスの指向性は、特定の実施形態において、外来性のエンベロープタンパク質を組み込み、標的細胞の潜在的な標的集団を拡大する。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞を形質導入する又は感染させることが可能であり、且つ高いウイルスの力価を生成するレトロウイルスベクターである。レトロウイルス遺伝子導入システムの選択は標的組織に依存する。レトロウイルスベクターは、幾つかの実施形態において、最大6-10kbの外来性の配列のためのパッケージング容量を持つ、シス作用性長末端反復を含む。最小限のシス作用性LTRは、幾つかの実施形態において、ベクターの複製及びパッケージングに十分であり、これらは、恒久的な導入遺伝子発現をもたらすために標的細胞へと治療遺伝子を組み込むことができる。レトロウイルスベクターは、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、及びそれらの組み合わせに基づくものに限定されない(例えば、Buchscher et al., J. Virol.66:2731-2739 (1992);Johann et al., J. Virol.66:1635-1640 (1992);Sommnerfelt et al., Virol.176:58-59 (1990);Wilson et al., J. Virol.63:2374-2378 (1989);Miller et al., J. Virol.65:2220-2224 (1991);PCT/US94/05700を参照)。
【0068】
幾つかの実施形態において、アデノウイルスベースのシステムが使用される。アデノウイルスベースのシステムは、幾つかの実施形態において、導入遺伝子の一時的発現を引き起こす。アデノウイルスベースのベクターは、細胞中の高い形質導入効率を可能にし、幾つかの実施形態において細胞分裂を必要としない。発現の高い力価及びレベルは、アデノウイルスベースのベクターにより可能である。幾つかの実施形態において、アデノ随伴ウイルス(「AAV」)ベクターは、標的核酸を備えた(例えば核酸とペプチドのインビトロの産生において、及び、インビボとエクスビボの遺伝子治療処置のために、標的核酸を持つ細胞を形質導入するために使用される(例えば、West et al., Virology 160:38-47 (1987);米国特許第4,797,368号;WO93/24641;Kotin, Human Gene Therapy 5:793-801 (1994);Muzyczka, J. Clin.Invest.94:1351(1994)を参照)。組換え型AAVベクターの構造は、米国特許第5,173,414号;Tratschin et al., Mol. Cell. Biol. 5:3251-3260 (1985);Tratschin, et al., Mol. Cell. Biol. 4:2072-2081 (1984);Hermonat & Muzyczka(PNAS 81:6466-6470(1984));及びSamulski et al., J. Virol. 63:03822-3828 (1989)を含む、多くの刊行物に記載されている。
【0069】
パッケージング細胞は、幾つかの実施形態において、宿主細胞を感染させることが可能なウイルス粒子を形成するために使用される。そのような細胞は、限定されないが、293細胞(例えば、アデノウイルスをパッケージングするためのもの)、.psi.2細胞、或いはPA317細胞(例えばレトロウイルスをパッケージングするためのもの)を含む。ウイルスベクターは、ウイルス粒子へと核酸ベクターをパッケージングする細胞株の生成によって生成される。場合によっては、ベクターは、宿主へのパッケージング及びその後の組込みに必要な最小限のウイルス配列を含む。場合によっては、ベクターは、発現されるポリヌクレオチドのための発現カセットと置き換えられる他のウイルス配列を含む。幾つかの実施形態において、欠損ウイルス機能は、パッケージング細胞株によりトランスにおいて供給される。例えば、幾つかの実施形態において、AAVベクターは、宿主ゲノムへのパッケージング及び組込みに必要な、AAVゲノムからのITR配列を含む。ウイルスDNAは、他のAAV遺伝子、即ちレプとキャップをコードするヘルパープラスミドを含むがITR配列を欠く、細胞株においてパッケージングされる。代替的に、細胞株はヘルパーとしてアデノウイルスに感染する。ヘルパーウイルスは、AAVベクターの複製、及びヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進する。アデノウイルスによる汚染は、例えば熱処理によって減らされ、この処理に対して、アデノウイルスはAAVよりも敏感である。
【0070】
宿主細胞は代替的に、本明細書に記載される1つ以上のベクターにより一時的又は非一時的に形質移入される。幾つかの実施形態において、細胞は、被験体中で自然に生じるように形質移入される。幾つかの実施形態において、細胞は、被験体から得られ又は被験体に由来し、且つ形質移入される。幾つかの実施形態において、細胞は、細胞株など、被験体から得られる細胞に由来する。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される1つ以上のベクターで形質移入された細胞は、1つ以上のベクター由来の配列を含む新たな細胞株を確立するために使用される。幾つかの実施形態において、(1つ以上のベクターの一時的な形質移入、或いはRNAでの形質移入などによる)本明細書に記載されるようなCRISPRシステムの成分で一時的に形質移入され、及びCRISPR複合体の活性を介して修飾された細胞は、修飾を含むが他の外因性配列を欠いている細胞を含む新たな細胞株を確立するために使用される。
【0071】
宿主細胞に適合する任意の適切なベクターは、本発明の方法と共に使用されると考慮される。真核生物の宿主細胞のためのベクターの非限定的な例は、pXT1、pSG5、pSVK3、pBPV、pMSG、及びpSVLSV40を含む。
【0072】
幾つかの実施形態において、相補鎖核酸及び/又は部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、調節要素、例えば、プロモーターなどの転写調節要素に作用可能に結合される。転写調節要素は、幾つかの実施形態において、真核細胞(例えば哺乳動物細胞)又は原核細胞(例えば細菌又は古細菌の細胞)の何れかにおいて機能的である。幾つかの実施形態において、相補鎖核酸及び/又は部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、原核生物及び/又は真核細胞における相補鎖核酸及び/又は部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の発現を可能にする、複数の調節要素に作用可能に結合される。
【0073】
利用された宿主/ベクターの系に依存して、構成的プロモーター及び誘導プロモーター、転写エンハンサー要素、転写ターミネーターなどを含む多くの適切な転写制御要素と翻訳制御要素のいずれかが、発現ベクターに使用され得る(例えば、U6プロモーター、H1プロモーター等;上記を参照)(例えば、Bitter et al.(1987)Methods in Enzymology,153:516-544を参照)。
【0074】
いくつかの実施形態では、相補鎖核酸及び/又は部位特異的な修飾ポリペプチドは、RNAとして提供される。そのような場合、部位特異的な修飾ポリペプチドをコードする相補鎖核酸及び/又はRNAは、直接の化学合成によって生成され、あるいは相補鎖核酸をコードするDNAからインビトロで転写される場合もある。相補鎖核酸及び/又は部位特異的な修飾ポリペプチドをコードするRNAは、RNAポリメラーゼ酵素(例えばT7ポリメラーゼ、T3ポリメラーゼ、SP6ポリメラーゼ等)を使用して、インビトロで合成される。一旦合成されたならば、RNAは標的DNAに直接接触し、又は細胞に核酸を導入するための任意の適切な技術を使用して細胞に導入される(例えばマイクロインジェクション、電気穿孔、形質移入など)。
【0075】
相補鎖核酸(DNA又はRNAのいずれかとして導入される)及び/又は部位特異的な修飾ポリペプチド(DNA又はRNAとして導入される)、及び/又は外来性DNA配列をコードするヌクレオチドは、適切な形質移入技術を使用して細胞に提供される;例えば、Angel and Yanik(2010)PLoS ONE 5(7):e11756を参照されたい;及び市販で入手可能な、QiagenのTransMessenger.RTM.試薬、StemgentのStemfect.TM.RNA Transfection Kit、及びMirus Bio LLCのTransIT.RTM.-mRNA Transfection Kit。相補鎖核酸及び/又は部位特異的な修飾ポリペプチド、及び/又はキメラ型の部位特異的な修飾ポリペプチド、及び/又は外来性DNA配列をコードする核酸は、DNAベクターに提供されてもよい。標的細胞に核酸を転写するのに有用な多くのベクター、例えばプラスミド、コスミド、ミニサークル、ファージ、ウイルス等が有効である。いくつかの実施形態における核酸を含むベクターは、例えばプラスミド、ミニサークルDNA、サイトメガロウイルスやアデノウイルス等のウイルスとして、エピソームで保全され、又は、相同組換え又はランダムインテグレーションを通じて、標的細胞ゲノム、例えばMMLV、HIV-1及びALVなどのレトロウイルス由来ベクターに組み込まれる。
【0076】
<ゲノムDNAに変更を加える方法>
本明細書に提供されるのは、相同性に基づかない標的化組み込み方法(HITI)及び組成物であって、分裂しない非分裂細胞又は最終分化細胞のゲノムDNAを含む、ゲノムDNAなどの核酸に変更を加えるためのものである。少なくともいくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、相同性に依存せず、非分裂細胞又は最終分化細胞などの細胞の、ゲノムDNAなどの標的DNAに外来性DNAを挿入するために、非相同末端結合を使用する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、非分裂細胞のゲノムに外来性DNA配列を組み込む方法を含み、該方法は、外来性DNA配列と標的配列を含む標的構築物、標的配列に相同する相補鎖オリゴヌクレオチド、及びヌクレアーゼを含む組成物に非分裂細胞を接触させる工程を含み、ここで外来性DNA配列は、ゲノムと比較して少なくとも1つのヌクレオチドの差異を含み、標的配列はヌクレアーゼにより認識される。
【0077】
本明細書に開示されるHITI方法のいくつかの実施形態では、外来性DNA配列は、標的細胞又は宿主細胞のゲノムに挿入される所望の配列を含んだDNAの断片である。外来性DNA配列の少なくとも一部には、標的細胞又は宿主細胞のゲノムの一部に相同する配列があり、又は外来性DNA配列の少なくとも一部には、標的細胞又は宿主細胞のゲノムの一部に相同しない配列がある。例えば、いくつかの実施形態では、外来性DNA配列は、突然変異を伴った宿主細胞ゲノムDNA配列の一部を含む場合もある。したがって、外来性DNA配列が宿主細胞又は標的細胞のゲノムに組み込まれる場合、外来性DNA配列に見られる突然変異は、宿主細胞又は標的細胞のゲノムに運ばれる。
【0078】
本明細書に開示されるHITI方法のいくつかの実施形態では、外来性DNA配列は、少なくとも1つの標的配列に隣接する。いくつかの実施形態では、外来性DNA配列は、2つの標的配列に隣接する。標的配列は、少なくとも1つのヌクレアーゼにより認識される特異的なDNA配列を含む。いくつかの実施形態では、標的配列は、標的配列に相同する配列を有する相補鎖オリゴヌクレオチドの存在下で、ヌクレアーゼによって認識される。
【0079】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるHITI方法において、標的配列は、ヌクレアーゼによって認識されて切断されるヌクレオチド配列を含む。標的配列を認識するヌクレアーゼは当業者には既知であり、限定されないがZFN(ジンクフィンガーヌクレアーゼ)、TALEN(transcription activator-like effector nuclease)、CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeat)ヌクレアーゼが含まれる。いくつかの実施形態では、ZFNは、共に融合して配列特異的なヌクレアーゼを生成する、ジンクフィンガーDNA結合ドメイン及びDNA切断ドメインを含む。いくつかの実施形態では、TALENは、共に融合して配列特異的なヌクレアーゼを生成する、TALエフェクターDNA結合ドメイン及びDNA切断ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CRISPRヌクレアーゼは、通常は原核生物のDNAに見られる、CRISPRに相同するDNA配列を認識する、自然発生のヌクレアーゼである。CRISPRヌクレアーゼとして、限定されないがCas9Cpf1、C2c3、C2c2、及びC2c1があげられる。
【0080】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるHITI方法は、宿主ゲノム又は標的ゲノムの突然変異を修復すると共に、宿主ゲノム又は標的ゲノムに突然変異を導入することもできる。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、突然変異又は野生型配列は、宿主ゲノム又は標的ゲノムに挿入される外来性DNA配列に見られる。突然変異は当業者にとって既知であり、一塩基対の改変又は点突然変異、挿入及び欠失を含む。いくつかの実施形態では、一塩基対の改変は、野生型配列とは異なる転写されたmRNAのアミノ酸をコードするコドンを作り出すミスセンス突然変異をもたらす。いくつかの実施形態では、一塩基対の改変は、転写されたmRNAの終止コドンをコードするナンセンス突然変異をもたらす。いくつかの実施形態では、転写されたRNAの終止コドンは、mRNAから翻訳されたタンパク質の早期のトランケーションをもたらす。いくつかの実施形態では、一塩基対の改変は、宿主ゲノム又は標的ゲノムから転写されたmRNAによりコードされたアミノ酸に何の変化ももたらさないサイレント突然変異に帰結する。いくつかの実施形態では、サイレント突然変異はイントロンにある。いくつかの実施形態では、サイレント突然変異はエクソンにあり、野生型配列と同じアミノ酸をコードするためのコドンを作り出す。いくつかの実施形態では、サイレント突然変異は、プロモーター、エンハンサー、5’UTR、3’UTR、又は宿主ゲノム又は標的ゲノムの他の非コード領域にある。いくつかの実施形態では、サイレント突然変異は、結果としてmRNA転写の異常なスプライシングをもたらす。いくつかの実施形態では、サイレント突然変異は、RNAのスプライス供与部位又はスプライス受容部位を破壊する。いくつかの実施形態では、サイレント突然変異は、結果として異常なRNAの排出をもたらす。いくつかの実施形態では、サイレント突然変異は、結果としてmRNAの翻訳の異常又は減少をもたらす。いくつかの実施形態では、サイレント突然変異は、結果としてRNAの転写の異常又は減少をもたらす。いくつかの実施形態では、突然変異は、宿主ゲノム又は標的ゲノムへの挿入を含む。いくつかの実施形態では、挿入は、1-1,000,000の塩基対、例えば1-10、5-20、15-30、20-50、40-80、50-100、100-1000、500-2000、1000-5000、2000-8000、5000-10000、10000-50000、50000-100000、100000-120000、120000-150000、150000-300000、250000-500000、400000-800000、又は500000-1000000の塩基対の、特定の数のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、欠失は、1-10,000の塩基対の範囲の、特定の数のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、該方法は、宿主ゲノム又は標的ゲノムから、少なくとも1つの遺伝子又はその断片を除去する工程を含む。いくつかの実施形態では、該方法は、宿主ゲノム又は標的ゲノムに、外来性遺伝子又はその断片を導入する工程を含む。いくつかの実施形態では、該方法は、宿主ゲノム又は標的ゲノムにおいて、変異した遺伝子又はその断片を、野生型の遺伝子又はその断片に取り換える工程を含む。いくつかの実施形態では、該方法は、宿主ゲノム又は標的ゲノムの少なくとも1つのヌクレオチドを改変し、結果として遺伝子の発現を高める。いくつかの実施形態では、該方法は、宿主ゲノム又は標的ゲノムの少なくとも1つのヌクレオチドを改変し、結果として遺伝子の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、該方法は、宿主ゲノム又は標的ゲノムに外来性プロモーターを導入し、結果として遺伝子の発現を変化させる。いくつかの実施形態において、プロモーターは誘導プロモーターである。
【0081】
本明細書に開示されるHITI方法は、ゲノムDNAに変更を加える既存の方法ではアクセスできない非分裂細胞のゲノムDNAに変更を加える能力を高める。非分裂細胞は、円熟した有機体、及び最終分化細胞又は静止期にある幹細胞に、大きな数で存在する。非分裂細胞として、限定されないが:ニューロン、オリゴデンドロサイト、ミクログリア及び上衣細胞を含む中枢神経系の細胞;感覚変換器細胞;自律神経細胞;感覚器官と末梢ニューロンの支持細胞;光受容体、桿体及び錐体を含む網膜の細胞;壁細胞、糸球体有足細胞、近位尿細管刷子縁細胞、ヘンレの細い部分のループの細胞、遠位尿細管細胞、集合管細胞を含む腎臓の細胞;リンパ球、単球、好中球、好酸球、好塩基球、血小板を含む造血系の細胞;肝細胞、星細胞、クッパー細胞及び肝臓内皮細胞を含む肝臓の細胞;アルファ、ベータ、デルタ、ガンマ及びイプシロン細胞を含む膵臓の内分泌細胞;線毛細胞、基底細胞、さかずき細胞及び肺胞細胞を含む気道上皮の細胞、卵原細胞/卵母細胞、精子細胞、精母細胞、精原細胞及び精子を含む生殖細胞;骨細胞、破骨細胞及び骨芽細胞を含む骨の細胞;心筋細胞及び心臓ペースメーカー細胞を含む心臓の細胞;甲状腺の濾胞上皮細胞;漿液細胞、粘液細胞及び味蕾を含む上部消化管の細胞;壁細胞、主細胞、腸内分泌細胞を含む胃の細胞;内皮細胞、上皮細胞、脂肪細胞、骨髄細胞、内耳細胞、真皮細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞があげられる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるHITI方法は、分裂細胞においてゲノムDNAに変更を加える方法を提供し、該方法は、本技術分野で既に開示されている方法よりも有効性が高い。分裂細胞として、限定されないが、造血幹細胞、間葉系幹細胞、神経幹細胞、肝幹細胞、筋サテライト細胞、上皮細胞、膠細胞、及びアストロサイトがあげられる。
【0082】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のHITI方法のための、標的構築物、相補鎖オリゴヌクレオチド、及び/又はヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、ウイルスによって標的細胞又は宿主細胞に導入される。いくつかの実施形態では、ウイルスは標的細胞を感染させ、標的構築物、相補鎖オリゴヌクレオチド、及びヌクレアーゼを発現し、その結果、標的構築物の外来性DNAを宿主ゲノムに組み込むことを可能にする。いくつかの実施形態では、ウイルスは、センダイウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、バキュロウイルス、アデノウイルス又はアデノ随伴ウイルスを含む。いくつかの実施形態において、ウイルスは偽型ウイルスである。いくつかの実施形態では、標的構築物、相補鎖オリゴヌクレオチド、及び/又は本明細書に記載のHITI方法用にヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、非ウイルス遺伝子導入法によって標的細胞又は宿主細胞に導入される。いくつかの実施形態では、非ウイルス遺伝子導入法は、標的細胞に遺伝物質(DNA、RNA及びタンパク質を含む)を送達し、及び標的構築物、相補鎖オリゴヌクレオチド、及びヌクレアーゼを発現し、その結果、標的構築物の外来性DNAを宿主ゲノムに組み込むことを可能にする。いくつかの実施形態では、非ウイルス法は、DNA、mRNA又はタンパク質のための形質移入試薬(ナノ粒子を含む)、又は電気穿孔を含む。
【0083】
<疾患を処置する方法>
さらに本明細で提供されるのは、遺伝性疾患などの疾患を処置するための方法と組成物である。遺伝性疾患は、受け継いだDNAにおける突然変異によって引き起こされるものである。いくつかの実施形態において、遺伝性疾患は、ゲノムDNAにおける突然変異によって引き起こされる。遺伝子突然変異は当業者にとって既知であり、一塩基対の改変又は点突然変異、挿入及び欠失を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、必要とする被験体の遺伝性疾患を処置する方法を含み、ここで遺伝性疾患は、野生型遺伝子と比較して少なくとも1つの変更されたヌクレオチドを持つ突然変異遺伝子から生じ、前記方法は、野生型遺伝子に相同するDNA配列と標的配列とを含む標的構築物、標的配列に相同する相補鎖オリゴヌクレオチド、及びヌクレアーゼを含む組成物に、被験体の少なくとも1つの細胞を接触させる工程を含み、標的配列は、突然変異遺伝子又はその断片が野生型遺伝子又はその断片と置き換えられるようにヌクレアーゼによって認識される。
【0084】
本明細書に開示される方法によって処置される遺伝性疾患として、限定されないが以下があげられる:無セルロプラスミン血症、軟骨無発生症II型、軟骨無形成症、急性間欠性ポルフィリン症、アデニロコハク酸リアーゼ欠損症、副腎白質ジストロフィー、ALAデヒドラターゼ欠損症、アラジール症候群、白皮症、アレキサンダー病、アルカプトン尿症、α-1-アンチトリプシン欠乏症、アルストレーム症候群、アルツハイマー病、エナメル質形成不全症、筋萎縮性側索硬化症、アンドロゲン不感性症候群、貧血、アンゲルマン症候群、アペール症候群、毛細血管拡張性運動失調、ベーレ・スティーブンソン脳回状頭皮症候群、ベンジャミン症候群、β地中海貧血、ビオチニダーゼ欠損、膀胱癌、ブルーム症候群、骨疾患、乳癌、バート・ホッグ・デュベ症候群、CADASIL症候群、CGD慢性肉芽腫性障害、屈曲肢異形成症、カナバン病、癌、シャルコー・マリー・トゥース病、CHARGE症候群、コケーン症候群、コフィン・ローリー症候群、II型及びXI型コラーゲン異常症、結腸直腸癌、結合織病、カウデン症候群、ネコ鳴き症候群、クローン病(fibrostenosing)、クルーゾン症候群、Crouzonodermoskeletal症候群、変性神経疾患、発達障害、ディジョージ症候群、遠位遺伝性運動ニューロパシー、低身長症、エーラス・ダンロス症候群、骨髄性プロトポルフィリア、ファブリー病、顔面損傷及び障害、第V因子ライデン血栓症、家族性腺腫性ポリポーシス、家族性自律神経失調症、FG症候群、脆弱X症候群、フリードライヒ運動失調、G6PD欠損症、ガラクトース血症、ゴーシェ病、遺伝子脳障害、ハーレクイン型魚鱗癬、頭部及び脳の奇形、聴覚障害及び難聴、小児の聴覚問題、ヘモクロマトーシス、血友病、肝性骨髄性ポルフィリン症、遺伝性コプロポルフィリン症、遺伝性出血性毛細管拡張症(HHT)、遺伝性多発性外骨腫症、遺伝的性非ポリポーシス結腸直腸癌、ホモシスチン尿、ハンチントン病、原発性高シュウ酸尿症、高フェニルアラニン血症、軟骨低発生症、軟骨低形成症、色素失調症、乳児期発症上向性遺伝性痙性麻痺、不妊症、ジャクソン・ワイス症候群、ジュベール症候群、クラインフェルター症候群、レーバー先天黒内症、Kniest異形成、クラッベ病、レッシュ・ナイハン症候群、白質ジストロフィー、リ・フローメニ症候群、家族性リポ蛋白リパーゼ欠損症、男性生殖器疾患、マルファン症候群、マッキューン・オルブライト症候群、マクラウド症候群、MEDNIK、家族性地中海熱、メンケス病、代謝異常、メトヘモグロビン血症ベータ・グロビン・タイプ、メチルマロン酸血症、マイクロ症候群、小頭症、運動障害、モワット・ウィルソン症候群、ムコ多糖沈着(MPS I)、Muenke症候群、筋ジストロフィー、Duchenne型及びBecker型筋ジストロフィー、筋緊張性ジストロフィー、神経線維腫症I型、神経線維腫症型II型、神経疾患、神経筋疾患、スフィンゴミエリンホスホジエステラーゼ1SMPD1、非症候性難聴、ヌーナン症候群、オグデン症候群、骨形成不全症、OSMED(otospondylomegaepiphyseal dysplasia)、パントテン酸キナーゼ関連神経変性症、ペンドレッド症候群、ポイツ・ジェガーズ症候群、ファイフェル症候群、フェニルケトン尿症、多発性嚢胞腎疾患、ポルフィリン症、プラーダー・ヴィリ症候群、原発性線毛機能不全(PCD)、原発性肺高血圧症、早老、プロピオン酸血症、プロテインC欠乏症、プロテインS欠乏症、擬似ゴーシェ病、弾力線維性仮性黄色腫、網膜障害、網膜胚種細胞腫、レット症候群、ルービンスタイン・テービ症候群、Scシュワルツ・ヤンペル症候群、サダン症候群(severe achondroplasia with developmental delay and acanthosis nigricans,SADDAN)、鎌状赤血球貧血、Siderius X連鎖精神遅滞症候群、皮膚色素沈着障害、スミス・レムリ・オピッツ症候群、スミス・マゲニス症候群、発話障害及びコミュニケーション障害、球脊髄性筋萎縮症、脊髄性筋萎縮症、シュタルガルト病、脊髄小脳失調症、脊椎骨端骨幹端異形成症Strudwick型、スティックラー症候群、テイ・ザックス病、テトラヒドロビオプテリン欠損症、致死性骨異形成症、甲状腺疾患、トレチャー・コリンズ症候群、アッシャー症候群、異型ポルフィリン症、フォンヒッペル・リンダウ病、ワールデンブルヒ症候群、Weissenbacher-Zweymuller症候群、ウィリアムズ症候群、ウィルソン病、ウォルフ・ヒルショルン症候群、色素性乾皮症、X連鎖重症複合免疫不全症又はX連鎖鉄芽球性貧血。
【0085】
本明細書に開示される遺伝性疾患を処置する方法は、突然変異した遺伝子のDNA配列に対応する野性型DNA配列の少なくとも一部を含む外来性DNA配列を使用し、その結果、該方法において、突然変異したDNA配列は野性型DNA配列に置き換えられる。いくつかの実施形態では、外来性DNA配列は、野性型DNA配列の100塩基対を含む。いくつかの実施形態では、外来性DNA配列は、野性型DNA配列の200塩基対を含む。
【0086】
特に別記されない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する当該技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。さらに、本明細書に記載される方法又は物質に類似の、又は同等の任意の方法又は物質を、本発明の実施に使用することができる。本発明の目的ために、以下の用語が定義される。
【0087】
本明細書で使用される用語「a」、「an」又は「the」は、1つの構成員を有する態様だけでなく、複数の構成員を有する態様を含む。例えば、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に指定していない限り、複数の指示物を含む。したがって、例えば「細胞」への言及は、複数のそのような細胞を含み、「薬剤」への言及は、当業者に既知の1つ以上の薬剤への言及を含む等々である。
【0088】
用語「ゲノム編集」は、1つ以上のヌクレアーゼ及び/又はニッカーゼを使用して、DNAを挿入する、置き換える、又は標的DNAから、例えば細胞のゲノムから除去する、一種の遺伝子工学を指す。ヌクレアーゼは、ゲノムの望ましい位置に特定の二本鎖切断(DSB)を作り出し、非相同末端結合(NHEJ)によって、誘導された破壊を修復するために、細胞内因性メカニズムを利用する。ニッカーゼは、ゲノムの望ましい位置に特定の一本鎖切断を作り出す。1つの非限定的な例では、2つのニッカーゼを使用して、標的DNAの相対する鎖に2つの一本鎖切断を作り出すことができ、その結果として平滑末端又は粘着末端が生成される。標的DNA配列のゲノムの編集を誘導するために、任意の適切なヌクレアーゼを細胞に導入することができ、限定されないが、CRISPR関連タンパク質(Cas)ヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALEN(transcription activator-like effector nuclease)、メガヌクレアーゼ、他のエンドヌクレアーゼ又はエキソヌクレアーゼ、それらの変異体、それらの断片、及びそれらの組み合わせがあげられる。
【0089】
用語「相同組換え修復」又は「HDR」は、修復を誘導するために相同の鋳型を使用して、正確かつ精密に二本鎖DNA切断を修復する細胞内のメカニズムを指す。HDRの最も一般的な形態は、相同組換え(HR)、ヌクレオチド配列が2つの類似する、又は同一のDNA分子間で交換される一種の遺伝的組換えである。
【0090】
用語「非相同末端結合」又は「NHEJ」は、相同の鋳型を必要とすることなく切断末端を直接繋ぎ合わせる、二本鎖DNA切断を修復する経路を指す。
【0091】
用語「核酸」、「ヌクレオチド」又は「ポリヌクレオチド」は、一本鎖、二本鎖又は多重鎖のいずれかの形態の、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、及びそれらのポリマーを指す。該用語は、限定されないが、一本鎖、二本鎖、三本鎖のDNA又はRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、あるいはプリン塩基及び/又はピリミジン塩基、又は他の天然の、化学的に、生化学的に修飾された、非天然の、合成された、又は誘導体化された、ヌクレオチド塩基を含むポリマーを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、DNA、RNA、及びそれらの類似体の混合物を含み得る。具体的に限定されない限り、この用語は、参照される核酸と同様の結合特性を有し、自然発生のヌクレオチドと同様の方式で代謝される、天然のヌクレオチドの既知の類似体を含む核酸を包含する。別記されない限り、特定の核酸配列はまた、その保守的に修飾された変異体(例えば縮重コドン置換)、対立遺伝子、オルソログ、一塩基多型(SNP)、及び明示される配列と共に相補的配列を暗に包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1つ以上の選択された(又は全ての)コドンの第3の位置が、混合基及び/又はデオキシイノシン残基と置換されている配列の生成により達成され得る。核酸という用語は、遺伝子、cDNA、及び遺伝子によりコードされたmRNAと同義で使用される。
【0092】
用語「遺伝子」又は「ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列」は、ポリペプチド鎖の生成に関与するDNAのセグメントを意味する。DNAセグメントは、個々の翻訳セグメント(エクソン)間の介在配列(イントロン)と共に、遺伝子産物の転写/翻訳、及び転写/翻訳の調節に関与する翻訳領域(リーダーとトレーラー)に先立つ領域と後続する領域を含み得る。
【0093】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指し、本明細書で区別なく使用される。該用語は、1つ以上のアミノ酸残基が、自然発生のアミノ酸ポリマー及び非自然発生のアミノ酸ポリマーに加えて、対応する自然発生のアミノ酸の人工的な化学的模倣体であるアミノ酸ポリマーに適用される。本明細書で使用されるように、該用語は、完全長のタンパク質を含む任意の長さのアミノ酸鎖を含み、ここでアミノ酸残基は共有結合性ペプチド結合により結合される。
【0094】
「組換え発現ベクター」は核酸構築物であり、宿主細胞において特定のポリヌクレオチド配列の転写を可能にする一連の特定の核酸要素で、組換えにより、又は合成されて生成される。発現ベクターは、プラスミド、ウイルススゲノム又は核酸断片の一部であり得る。典型的には、発現ベクターは、転写され、プロモーターに作用可能に結合される、ポリヌクレオチドを含む。この文脈での「作用可能に結合した」は、コード配列の転写を命令するプロモーターなどのエレメントの適切な生体機能を可能にする相対的な位置に配された、ポリヌクレオチドコード配列及びプロモーターなどの2つ以上の遺伝要素を意味する。用語「プロモーター」は、核酸の転写を命令する一連の核酸制御配列を指し、本明細書で使用される。本明細書において使用されるように、プロモーターは、転写の開始部位近くの必要な核酸配列を含み、ポリメラーゼII型プロモーターの場合はTATAエレメント等である。プロモーターはまた、随意に、転写の開始位置から数千塩基対に位置し得る、遠位エンハンサー又は抑制因子エレメントを含む。発現ベクターに存在し得る他の要素には、転写を増強し(例えばエンハンサー)、及び転写を終了させる(例えばターミネーター)ものが含まれ、及び発現ベクターから生成される組換えタンパク質に対して結合親和性又は抗原性を与えるものが含まれる。
【0095】
「組換え体」は遺伝子組み換えのポリヌクレオチド、ポリペプチド、細胞、組織又は有機体を指す。例えば、組換えポリヌクレオチド(あるいは組換えポリヌクレオチドのコピー又は補体)は、周知の方法を使用して操作されたものである。第2のポリヌクレオチド(例えばコード配列)に作用可能に結合したプロモーターを含む組換え発現カセットは、人間の操作の結果として第2のポリヌクレオチドに非相同なポロモーターを含み得る(例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning-A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York,(1989)、又はCurrent Protocols in Molecular Biology Volumes1-3,John Wiley&Sons,Inc.(1994-1998)に記載の方法による)。組換え発現カセット(又は発現ベクター)は典型的に、本来は見られない組み合わせのポリヌクレオチドを含む。例えば、人間により操作された制限部位又はプラスミドベクター配列は、プロモーターに隣接し、又は他の配列からプロモーターを分離することができる。組換えタンパク質は組換えポリヌクレオチドから発現するものであり、及び組換え細胞、組織及び有機体は、組換え配列(ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチド)を含むものである。
【0096】
用語「一塩基多型」又は「SNP」は、対立遺伝子内を含む、ポリヌクレオチドを伴う単一のヌクレオチドの変異を指す。これは、1つのヌクレオチドが他のヌクレオチドによって置き換えられること、及び単一のヌクレオチドの欠失又は挿入を含み得る。最も典型的には、SNPは2対立遺伝子のマーカーであるが、3対立遺伝子及び4対立遺伝子のマーカーもまた存在し得る。非限定的な例として、SNP A/Cを含む核酸分子は、多形性の位置にC又はAを含む場合もある。
【0097】
用語「被験体」、「患者」及び「個体」は、ヒト又は動物を含み、本明細書で区別なく使用される。例えば、動物被験体は、哺乳動物、霊長類(例えばサル)、家畜動物(例えばウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、又はヤギ)、伴侶動物(例えばイヌ、ネコ)、臨床試験用動物(例えばマウス、ラット、モルモット、トリ)、獣医学的に重要な動物、又は経済的に重要な動物であり得る。
【0098】
本明細書で使用されるように、用語「投与」は、被験体への経口投与、局所的接触、坐薬としての投与、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、損傷内投与、クモ膜下腔内投与、鼻腔内投与、又は皮下投与を含む。投与は、非経口及び口腔粘膜を含む任意の経路による(例えば、バッカル、舌下、口蓋、歯肉、鼻、膣、直腸、又は経皮)。非経口投与は、例えば静脈内、筋肉内、小動脈内、皮内、皮下、腹腔内、脳室内、及び頭蓋内を含む。他の送達方法として、限定されないが、リポソーム製剤、静脈注射、経皮パッチなどの使用があげられる。
【0099】
用語「処置(する)」は、限定されないが治療効果及び/又は予防効果を含む、有益又は望ましい結果を得るための手法を指す。治療効果は、処置下の1つ以上の疾患、疾病又は症状に対する、治療に関連する改善又は効果を意味する。予防効果については、組成物は、疾患、疾病又は症状がまだ現れていないとしても、特定の疾患、疾病又は症状が進行するリスクのある被験体に、又は疾患の1つ以上の生理学的症状が報告されている被験体に投与され得る。
【0100】
用語「有効な量」又は「十分な量」は、有益又は望ましい結果を達成するのに十分な薬剤(例えばDNAヌクレアーゼ等)の量を指す。治療上有効な量は、以下の1つ以上に依存して変化し得る:処置される被験体と疾患の状態、被験体の体重と年齢、疾患の状態の重症度、投与方法等、これらは当業者によって容易に判定され得る。特定量は、以下の1つ以上に依存して変化し得る:選択される特定の薬剤、標的細胞の種類、被験体の標的細胞の位置、続く投与レジメン、他の化合物と併用されるか否か、投与のタイミング、及びそれが運ばれる物理的送達システム。
【0101】
用語「薬学的に許容可能な担体」は、細胞、有機体又は被験体への薬剤(例えばDNAヌクレアーゼ等)の投与を助ける物質を指す。「薬学的に許容可能な担体」は、組成物又は製剤に含むことができる、患者に重大で有害な中毒作用をもたらさない担体又は賦形剤を指す。薬学的に許容可能な担体の非限定的な例として、水、NaCl、正常食塩溶液、乳酸加リンゲル液、正常なスクロース、正常なグルコース、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング、甘味料、着香料、及び着色料などがあげられる。当業者は、他の医薬担体が本発明に有用であることを認識するだろう。
【0102】
参照数値に関する用語「約」は、その値の±10%の値の範囲を含み得る。例えば、「約10」という量は、9~11の量を含み、9、10、11の参照数を含む。参照数値に関する用語「約」はまた、その値の±10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%の値の範囲を含み得る。
【実施例0103】
以下の実施例は、本発明の様々な実施形態を例示する目的で与えられ、いかなる方法でも本発明を制限するようには意図されていない。実施例は、本明細書に記載される方法と共に、好ましい実施形態を現時点で代表するものであり、例示的なものであり、及び本発明の範囲を限定するものとしては意図されていない。その中での変更、及び特許請求の範囲により定義される本発明の精神内に包含される他の使用が、当業者に想到されるであろう。
【0104】
実施例1:方法
【0105】
プラスミド。gRNAとmCherry(pCAGmCherry-gRNA)の両方を発現するベクターを生成した。gRNA発現ベクターを構築するために、20bp標的配列の各々を、pCAGmCherry-gRNA又はgRNA_Cloning Vector(Addgene41824)へとサブクローニングした。pMDLg/pRRE、pRSV-Rev及びpMD2.G(Addgene12251、12253及び12259)を、レンチウイルスのパッケージングに使用した。pEGIP*35及びtGFP(Addgene26776及び26864)を、HDRとHITIの有効性を検討するために使用した。IRESmCherry-0c、IRESmCherry-1c及びIRESmCherry-2cを構築するために、IRES及びmCherry配列を、それぞれpEGIP*35及びpCAGmCherry-gRNAからPCRによってCas9標的配列で増幅させ、pCR-bluntIIベクター(Invitrogen)へと共組換えした。異なるNLS-dCas9構築物を生成するために、pMSCV-LTR-dCas9-VP64-BFP(Addgene46912)を使用してdCas9を増幅させ、異なるNLS及び3xFlagタグを用いてpCAG含有プラスミドへとサブクローニングした。pCAG-Cas9(NLS無し)、pCAG-1NLS-Cas91NLS、及びpCAG-1BPNLS-Cas91-BPNLSを構築するために、dCas9プラスミドのD10AとH840Aの突然変異を、In-Fusion HD Cloningキット(Clontech)によって野生型配列に取り替えた。その後、pCAG-Cas9-2AGFP(NLS無し)、pCAG-1NLS-Cas9-1NLS-2AGFP、及びpCAG-1BPNLS-Cas9-1BPNLS-2AGFPを、Cas9の下流に2AGFPを加えることによって構築した。pCAG-floxSTOP-1BPNLS-Cas9-1BPNLSを構築するために、1BPNLS-Cas9-1BPNLSをPCRによって増幅させ、pCAG-floxSTOP-EGFP-N1ベクターのGFPに取り替えた。マウス及びヒトTubb3遺伝子(Tubb3-1c、Tubb3-2c、hTUBB3-1c及びhTUBB3-2c)のためのHITIドナープラスミドを構築するために、1つ又は2つのCAS9/gRNA標的配列を備えたpCAG-floxSTOPプラスミドへと、GFPをサブクローニングした。マウスTubb3遺伝子(Tubb3HR)、GFPのためのHDRドナーを構築するために、5’及び3’のホモロジーアームをpCAG-GFP-N1又はマウスゲノムから増幅させ、次にpCAG-floxSTOPプラスミドにサブクローニングした。pCAG-ERT2-Cre-ERT2を、Addgeneから購入した(13777)。PX551とPX552を、Addgeneから購入した(60957と60958)。AAV-Cas9を構築するために、nEF(ハイブリッドEF1α/HTLV)プロモーター(Invivogen)を、PX551のMecp2プロモーターに取り替えた。ドナー/gRNA AAVを構築するために、Cas9/gRNA標的配列、gRNA発現カセット及びGFPKASH(あるいはmCherryKASH)発現カセットによって挟まれたドナーDNAを、PX552のITRの間でサブクローニングした。
【0106】
ゲノムDNA抽出及びゲノムPCR。すべてのゲノムDNAは、Blood&Tissueキット(QIAGEN)又はPicoPure DNA Extractionキット(Thermo Fisher Scientific)を使用して抽出された。全てのゲノムPCRは、PrimeSTAR GXL DNAポリメラーゼ(タカラ)で行われた。
【0107】
重亜硫酸塩配列。形質移入されたHEK293株からのゲノムDNAを抽出し、Zymo EZ DNA Methylation-direct Kit(Zymo Research)を使用して重亜硫酸塩を変換した。mCherryの前述の領域のDNAメチル化プロフィールを、前述のようにTOPOクローニングによって分析した(Liu,G.-H.G.et al.Targeted gene correction of laminopathy-associated LMNA mutations in patient-specific iPSCs.Cell Stem Cell 8,688-694(2011))。
【0108】
細胞株。H1 hESCを、WiCell Researchより購入し、hESC培地で保全した(Liu,G.-H.G.et al Recapitulation of premature ageing with iPSCs from Hutchinson-Gilford progeria syndrome.Nature 472,221-225(2011))。HEK293細胞はATCCから購入した。
【0109】
AAV生成。すべてのAAVを、血清型8又は血清型9でパッケージングした。
【0110】
動物。ICR、C57BL/6及びROSALSL-tdTomato/LSL-tdTomatoマウス(Ai14マウスとしても知られる、Madisen,L.et al.A robust and high-throughput Cre reporting and characterization system for the whole mouse brain.Nat Neurosci 13,133-140(2009))を、Jackson laboratoryから購入した。妊娠しているICRマウスのいくつかは、SLC Japan(静岡、日本)から購入した。RCS及びBrown Norwayラットを、Jackson laboratoryから購入した。この研究に使用されたすべてのマウスは、雌雄混合、種混合の、P1から12週齢のものからであった。すべてのマウス実験は、IACUC委員会又は理化学研究所発生・再生科学総合研究センターにより承認され、規制基準に準拠した。全てのラットの処置は、カリフォルニア大学サンディエゴ校のInstitutional Animal Care Committeeの認可を受けて、その監督下で行なわれ、ARVO Statement for the Use of Animals in Ophthalmic and Vision Researchを厳守した。膣栓の正午は胎生0.5日目(E0.5)として指定された。
【0111】
ミニサークルDNAベクター。ミニサークルDNAベクターの構築と生成は、Kay,M.A.,He,C.-Y.&Chen,Z.-Y.A robust system for production of minicircle DNA vectors.Nature Biotechnology 28,1287-1289(2010)に以前に記載されているように行われた。手短に言えば、Pre-ミニサークルプラスミド(pIRESmCherry-MC、pTubb3-MC、phTUBB3-MC、pAi14-GFP-MC、及びpAi14-luc-MC)を構築するために、Cas9/gRNA標的配列を備えたIRESmCherry、GFP又はルシフェラーゼ遺伝子を、ミニサークル産生プラスミドpMC.BESPXのApaIとSmaI部位へとクローニングした。最終的なミニサークル構築物を、大腸菌株3S2Tに導入し、Terrific Broth(pH7.0)(Fisher Scientific)で一晩増幅した。一晩のTB培養を、新鮮なLB及び20%のL-アラビノース(SBI)を含むミニサークル誘導ミックスの等容積と混合し、続いて250rpmで振動させながら32℃で5時間インキュベートすることで、ミニサークルの産生を誘導した。ミニサークルDNAを、P1、P2及びP3バッファーの量を2倍にしたことを除けば、メーカーのプロトコルに従って、EndoFree Plasmid Mega Kit(QIAGEN)を用いて単離した。
【0112】
Surveyorアッセイ。生成された核局在型のCas9の有効性を検討するために、SurveyorアッセイをヒトH1 ESCで行なった。手短に言えば、各1.5×10のフィーダーなしの培養されたH1 ESCを、TrypLE(Invitrogen)によって分離させ、10μMのROCK阻害剤Y-27632(Biomol Inc.)を含む1mlのMEF調整培地で再懸濁した。25μgのpCAGmCherry-KCNQ1と、25μgの異なるCas9(pCAG-Cas9-2AGFP、pCAG-1NLS-Cas9-1NLS-2AGFP、又はpCAG-1BPNLS-Cas9-1BPNLS-2AGFP)で細胞を電気穿孔し、マトリゲルでコーティングされた100mmの皿の上に平板培養した。電気穿孔の2日後に、細胞をTrypLEにより分離し、及びCas9とgRNAを発現する細胞を、BD Influxセルソーター(BD)でGFP/mCherryダブルポジティブ細胞として選別し、DNeasy Blood&Tissue kit(QIAGEN)でゲノムDNAを抽出して、Sanjana,N.E.et al A transcription activator-like effector toolbox for genome engineering.Nature Protocols 7,171-192(2012)に以前に記載されているように、Surveyorアッセイのために使用する。
【0113】
HEK293 GFP修正株の生成。分裂細胞においてHDRとHITIによる標的遺伝子修飾の有効性を評価するために、変異したGFP遺伝子ベースのレポーター系を、HEK293において設定した。手短に言えば、公開されたプロトコル、Kutner,R.H.,Zhang,X.-Y.&Reiser,J.Production,concentration and titration of pseudotyped HIV-1-based lentiviral vectors.Nature Protocols 4,495-505(2009)に従って、pEGIP*35をpMDLg/pRRE、pRSV-Rev及びpMD2.Gと共に同時導入し、レンチウイルスベクターとしてパッケージングと精製を行った。HEK293細胞を、レンチウイルスEGIP*35ベクターと4μg/mlのポリブレンで1時間、懸濁液中でトランスダクションした。残存するレンチウイルスベクターを除去するための短時間の遠心分離の後、細胞を100mmの皿に播種した。トランスダクションの3日後に、ピューロマイシン(1-2μg/ml;Invitrogen)を培地に加えた。10日後に、単一コロニーを個別に採集し、HEK293 GFP修正株として拡張した。
【0114】
マウスニューロンの初代培養。ニューロンの初代培養を、E15.5日齢のマウスの大脳皮質から得た。胚を回収した後、2%のグルコース(Gibco)を有する1xリン酸緩衝食塩水(PBS)の冷たい溶液中ですべての切開術を行った。皮質組織をトリプシン処理によって分離させ、1.5×10細胞/cmを、2%のB27(Gibco)及び0.25%のGlutamax TM-I 100X(Gibco)を補足したNeurobasal培地(Gibco)を用いて、コーティングされたポリD-リジンカバーガラス(Neuvitro)上に平板培養した。培養を標準的な条件でインキュベートした(37℃、5%のCO/95%の大気の加湿雰囲気)。培地の体積の半分を3日ごとに取り替えた。
【0115】
ヒトESC由来ニューロン全体の分化と培養。ヒトESCからニューロン全体への分化プロトコルは、当業者によって慣例的に使用されている方法を使用して行われた。
【0116】
インビトロ培養細胞の形質移入。Lipofectamine 3000(Invitrogen)、CombiMag Reagent(OZBiosciences)、及びDNA-In Neuro Transfection Regent(Amsbio)を、HEK293細胞、マウス初代細胞、及びヒトESC由来ニューロン全体の、それぞれの形質移入に使用した。形質移入複合体を、メーカーの説明書に従って調製した。
【0117】
一次ニューロンの免疫細胞染色。細胞を室温で15分間、4%のパラホルムアルデヒド(PFA)中に固定した。次に細胞をブロックし、50分間、室温で震動させながら、PBS中の5%のウシ血清アルブミン(BSA)と0.1%のTritonX-100で透過処理した。一次抗体を、抗GFP(Aves)及び抗βIIIチューブリン(Sigma)抗体と共に、湿ったチャンバー内で、4°Cで一晩、2.5%のBSA/PBS中でインキュベートした。翌日、細胞をPBS中の0.2%のTween20で洗浄し、二次抗体Alexa fluor 488(Thermo Fisher)又はAlexa fluor 647(Thermo Fisher)と共に、室温で1時間インキュベートした。PBS中の0.2%のTween20での2回目の洗浄後、DAPI-I-Vector Shield mounting media(Vector)を使用して細胞を封入し、4℃で保存した。無分裂の状態を検査するために、形質移入されたニューロンに2μM EdUを加え(Invitrogen)、Click-iT EdU kit(Invitrogen)によってEdU陽性細胞を検出した。
【0118】
一次組織の免疫細胞染色。PBS、続いて4%のPFAを使用し、経心腔的灌流後に、動物を回収した。臓器をそれぞれ切開し、4℃で16-20時間、PBS中の2%のPFAと15%のスクロースでその後に固定し(post-fixed)、切断前に4°CでPBS中の30%のスクロースに浸した。マウスの脳を、4℃で24時間、0.1Mのリン酸塩バッファー(pH7.4)中の1%のPFAに固定し、その後、4℃で一晩、25%のスクロース中で凍結保護した。新生児の脳については、脳をOCT化合物(Sakura Tissue-Tek)に埋め込み、クリオスタット(14μm)で切断した。よく乾燥させた切片を、PBST(PBS中の1%のTween20)で3回洗浄し、室温で1時間、ブロッキングバッファー(PBS中の2%のロバ血清と0.2%のTritonX-100、pH7.4)で処理し、次に4°Cで一晩、同じバッファーで希釈した一次抗体と共にインキュベートした。使用された一次抗体は、Anti-GFP(Aves)とAnti-RFP(Abcam)であった。切片をPBSTで3回洗浄し、室温で1時間、Alexa488又はAlexa546(Jackson)に結合させた二次抗体で処理した。洗浄後、切片を封入剤(PermaFluor、Thermo scientific)で封入した。成体の脳については、50μmの冠状の脳切片を、凍結ミクロトームを使用して調製し、4°Cで0.01%のアジ化ナトリウムでPBS中に保存した。浮動性の切片を、PBS中のヤギの抗GFP(Rockland)一次抗体/0.5%の正常なロバ血清/0.1%のTritonX-100で、4℃で16-48時間インキュベートし、続いて室温で2-3時間、Alexa488(Molecular Probes)と結合した適切な第2の抗体でインキュベートした。細胞核を視覚化するために、切片を30分間、PBS中の10μMのDAPIで対比染色した。免疫染色された組織切片を、DABCOを含むポリビニルアルコール封入剤でスライドに封入し、一晩、空気乾燥させた。他の組織については、採取した組織をOCT化合物に埋め込んで凍結した。凍結した連続切片又は軸性の凍結切片(厚さ10-20μm)を、クリオスタットを使用して調製し、次にシラン処理したスライドに配置して風乾させた。切片をPBSで洗浄し、次に室温で1時間、PBS中の3%の正常なヤギ血清、0.3%及びトリトンX-100を含むブロッキングバッファーによってインキュベートし、その後、一次抗体の溶液で一晩インキュベートした。使用した一次抗体は、抗GFP(Aves)、抗mCherry(Abcam)、抗ジストロフィン(Sigma)、抗アクチン、α-Smooth Muscle antibody(Sigma)及び抗ヒト血清アルブミン抗体(R&D)であった。洗浄後、切片を室温で1時間、二次抗体の溶液で免疫染色した。使用された二次抗体は、Alexa488、568又は647(Molecular Probes)であった。0.2%のTween20/PBS、0.05%のTween20/PBS、及びPBSでの連続した洗浄後、切片をDAPI Fluoromount-G(Southern Biotech)で封入した。ラットについては、網膜の凍結切片をPBSですすぎ、室温で1時間、PBS中の5%のBSA中の0.5%のTritonX-100でブロックした。Anti-Mertk抗体(Santa Cruz)、Anti-Rhodopsin抗体(Santa Cruz)を、PBS中の5%のBSAに希釈して、4℃で一晩インキュベートした。その後、切片をPBSで3回洗浄し、室温で1時間、PBS中で、Alexa-488又はAlexa-555(Molecular Probes)でタグ付けしたIgG二次抗体でインキュベートし、PBSで洗浄した。細胞核をDAPIで対比染色した。切片をFluoromount-G(SouthernBiotech)で封入し、カバーグラスをかけた。KeyenceBZ-9000顕微鏡を使用して画像をキャプチャした。
【0119】
画像キャプチャ及び分析。免疫細胞染色分析のために、Zeiss LSM 780 Laser Scanning Confocal又はOlympus FV1000 共焦点顕微鏡(Olympus)を使用して、共焦点顕微鏡検査によって細胞と組織を視覚化した。顕微鏡を反転させ、少なくとも5つの画像を各カバーガラスから得た。ZEN 2(blue edition)及びNIH ImageJ(FIJI)ソフトウェアで画像を分析した。マウスの一次ニューロン及びヒトのニューロン全体の分析のために、各マーカーごとの陽性細胞の総数を、NIH ImageJソフトウェアのMulti-point toolで直接数えた。GFP+細胞の割合を、トランスフェクト細胞の量を考慮して計算した。細胞内のGFP分布を各条件ごとに約100の独立事象で観察し、ここで、核空間でのGFPの存在又は欠如を判定するために、異なるスタックで焦点を合わせた細胞を観察した。
【0120】
核/細胞質の比率。dCas9の細胞内での局在性を評価するために、既になされた報告に倣った(Wu,J.,Corbett,A.H.&Berland,K.M.The intracellular mobility of nuclear import receptors and NLS cargoes.Biophys.J.96,3840-3849(2009))。要するに、dCas9トランスフェクトHEK293細胞を4%のPFAで固定し、抗FLAG(Sigma)及びDAPI(Vector)で染色した。ImageJソフトウェアのPlotProfileツールを使用して、蛍光の強度を測定した。単一のトランスフェクト細胞の細胞質と核区画において個別に値を得た。核/細胞質の比率を得るために、核強度の相対的な蛍光値を、細胞質で見出した数値で割った。
【0121】
子宮内電気穿孔によるマウス胚への遺伝子導入。電気穿孔のための実験手順は、以前に記載されている(Takahashi,M.,Nomura,T.,&Osumi N.Transferring genes into cultured mammalian embryos by electroporation.Dev Growth Differ 50,485-497(2008))。10%のネンブタール(Dainippon sumitomo kagaku)の500μlの腹腔内注射によって、E15.5の妊娠しているICRに麻酔をかけた。pCAG-1BPNLS-Cas9-1BPNLSマウスTubb3遺伝子標的pCAGmCherry-gRNA(0.5μg/μl)、及びミニサークルドナー(Tubb3-MC)又はHDRドナー(Tubb3-HDR)のいずれかのベクター(0.8μg/μl)を含む1μlのDNA混合物を用いて、胚を半球に注入した。視覚的に注入を確認するために、0.005%のファーストグリーン溶液(Wako)をDNAと混合した。ピンセット電極(CUY21 electroporator、NEPA GENE)のパドルで胚を取り除いた。Cre依存的Cas9発現系を誘導可能なタモキシフェン(TAM)に関しては、pCAG-flox-1BPNLS-Cas9-1BPNLS(0.5μg/μl)、pCAG-ERT2CreERT2(0.5μg/μl)、pCAG-mcherry-U6-gRNA(0.5μg/μl)、及びミニサークルドナー(Tubb3-MC)又はHDRドナー(Tubb3-HDR)のいずれかのベクター(0.8μg/μl)を含む、1μlのDNA混合物を用いて、胚を半球に注入した。コーン油に溶かした10mg/mlのタモキシフェン(Sigma)を50μl、Cas9発現の誘導のために、P10とP11で電気穿孔したコイヌに注入した。
【0122】
インビボ筋肉電気穿孔。-Cas9(25μgの空ベクター、25μgのgRNA発現ベクター、10μgのAi14-luc-MC又はAi14-GFP-MC)、及び+Cas9(25μgのpCAG-1BPNLS-Cas9-1BPNLS、25μgのgRNA発現ベクター、及び10μgのAi14-luc-MC又はAi14-GFP-MC)用のDNA混合物を、50μlのTEに調製した。ケタミン(100mg/kg)及びキシラジン(16mg/kg)の腹腔内注射を用いてAi14マウスに麻酔をかけた。大腿四頭筋電気穿孔のために、大腿四頭筋のごく一部を、後ろ足において外科的に露出させた。プラスミドDNA混合物を、29ゲージのインスリン用シリンジを使用して筋肉に注入した。プラスミドDNA注射の1分後に、1組の電極を、DNA注射部位を包含するように5mmの深さまで筋肉に挿入し、Electro Square Porator T820(BTX Harvard Apparatus)を使用して筋肉を電気穿孔した。電気刺激を、20ミリ秒間、20パルス、100Vで送達した。電気穿孔の後、皮膚を閉じ、マウスを37°Cの暖かいパッドの上で回復させた。皮筋の電気穿孔のために、背中の皮膚の毛を脱毛クリームで除毛した。上記のDNA溶液の混合物を共役させ、右側と左側にそれぞれ皮下注射した。皮膚と皮下組織の注入面積は、プレート・フォーク型電極により垂直にはさまれ、これは1対のステンレス鋼ピンセットから成り.その1つは長さ10mm及び幅5mmの長方形のプレートを備え、もう1つは長さ10mm及び直径0.5mmの、2.5mm間隔の3本の直針から成るフォークを備える。皮膚と長方形の電極の接触面を、導電ゲル(SpectraGel 360,Parker Labs)で被覆した。Twently18V/50ms/1Hz-方形波を、続いて反極性の20パルスをさらに、Electro Square Porator T820を使用して送達した。電気穿孔の2週間後にマウスを安楽死させ、そして組織を得た。
【0123】
組織圧を媒介とした形質移入。-Cas9(100μgの空ベクター、100μgのgRNA発現ベクター、及び50μgのAi14-luc-MC)、及び+Cas9(100μgのpCAG-1BPNLS-Cas9-1BPNLS、100μgのgRNA発現ベクター、及び50μgのAi14-luc-MC)のためのDNA混合物を、200ulの生理食塩水中で調製した。正中線での開腹術を行い、Ai14マウスの右腎を露出させた。腎臓の露出後、マウスにプラスミドDNA混合物を静脈注射し、その直後に、(Mukai,H.,Kawakami,S.&Hashida,M.Renal press-mediated transfection method for plasmid DNA and siRNA to the kidney. Biochemical and Biophysical Research Communications 372,383-387(2008))に記載されるように、親指と人差し指でつかんだ右腎を1秒間に20回、押した。
【0124】
腎臓のためのインビボ電気穿孔。-Cas9(100ugの空ベクター、100ugのgRNA発現ベクター、及び50ugのAi14-GFP-MC)、及び+Cas9(100ugのpCAG-1BPNLS-Cas91BPNLS、100ugのgRNA発現ベクター、及び50ugのAi14-GFP-MC)のためのDNA混合物を、200ulの生理食塩水中で調製した。正中線での開腹を行なった。Ai14マウスの右腎を露出させ、その後カプセルを除去し(decapsulated)、副腎には手をつけなかった。その後、露出させた腎臓を、尾静脈からのプラスミドDNA混合物の注入後に電極針でつつき、続いてElectro Square Porator T820を使用し100V、50msパルスで6回、電気穿孔をした。
【0125】
ルシフェラーゼ検出。DNA形質移入又は電気穿孔の2週間後に、IVIS Kinetic 2200(Caliper Life sciences)を使用してBLIを行うことで、マウスを検査した。150mg/kgのD-ルシフェリン(BIOSYNTH)をマウスに腹腔内注射し、イソフルランで麻酔をかけ、そしてルシフェリン注入の10分後に背側の画像をキャプチャした。
【0126】
マウスの一次ニューロンにおけるAVV感染。3日後にニューロンの初代培養を培養に使用し、AAV溶液(-Cas9、AAV-mTubb3(1.5x1010GC);+Cas9、AAV-Cas9(1.5x1010GC)及びAAV-mTubb3(1.5x1010GC))を加え、免疫細胞染色又はDNA抽出後に、培養を5日間、標準状態で維持した。
【0127】
成人の脳へのStereotax AAV注入。C57BL/6マウスはP75にAAV注入を受けた。AAV-Cas9(1.5x1013GC/ml)とAAV-mTubb3(2.3x1013GC/ml)の1:1混合物を使用した。対照として、AAV-mTubb3とHBSSバッファーの1:1混合物を使用した。腹腔内注射を介して、100mg/kgのケタミンと10mg/kgのキシラジンのカクテルでマウスに麻酔をかけ、外科手術と定位固定の注入のためにstereotax(David Kopf Instruments Model 940シリーズ)に固定した。以下の座標を使用して、ウイルスをV1の中央に注入した:吻側3.4mm、ブレグマに対して外側2.6mm、及び軟膜から0.5-0.7mm腹側。200nlのAAVを、picospritzer(General Valve Corp)により気圧を使用して注入した。ウイルスの逆流を防ぐために、注入の完了後に5~10分間、ピペットを脳の中に残した。遺伝子ノックインを可能にするためにマウスを2週間、収容した。
【0128】
筋肉内AAV注入。ケタミン(100mg/kg)及びキシラジン(16mg/kg)の腹腔内注射を用いてAi14マウスに麻酔をかけた。大腿四頭筋のごく一部を、後ろ足において外科的に露出させた。AAV混合物(-Cas9、AAV-Ai14-GFP(1.5x1010GC);+Cas9、AAV-Cas9(1.5x1010GC)及びAAV-Ai14-GFP(1.5x1010GC))を、29ゲージのインスリン用シリンジを使用して大腿四頭筋に注入した。電気穿孔の後、皮膚を閉じ、マウスを37°Cの暖かいパッドの上で回復させた。
【0129】
静脈内(IV)AAV注入。Ai14マウスの新生児(P1)を、以下の既出の報告に従ってIV AAV注入のために使用した(Lampe,S.E.G.,Kaspar,B.K.&Foust,K.D.Intravenous Injections in Neonatal Mice.JoVE(Journal of Visualized Experiments)e52037-e52037(2014).doi:10.3791/52037)。AAV混合物(-Cas9、AAV-Ai14-GFP(5x1010GC);+Cas9、AAV-Cas9(5x1010GC)及びAAV-Ai14-GFP(5x1010GC))を、P1のマウスの側頭部を流れるいくつかの静脈を介して注入した。
【0130】
尾静脈AAV注入。AAV混合物(-Cas9、AAV-Ai14-luc(5x1010GC);+Cas9、AAV-Cas9(5x1010GC)及びAAV-Ai14-luc(5x1010GC))を、ルシフェラーゼノックイン用に尾静脈を介して注入した。AAV混合物(-Cas9、AAV-Ai14-GFP(5x1010GC);+Cas9、AAV-Cas9(5x1010GC)及びAAV-Ai14-GFP(5x1010GC))を、GFPノックイン用に尾静脈を介して注入した。
【0131】
標的ディープシーケンス。トップ12の予測されるオフターゲット部位を、CRISPR Design Toolを使用して探索した(Hsu,P.D.et al.DNA targeting specificity of RNA-guided Cas9 nucleases.Nature Biotechnology 31,827-832(2013))。オンターゲット領域及び潜在的オフターゲット領域を、PrimeSTAR GXL DNAポリメラーゼを使用し、IV注入を介して肝臓DNAから増幅し、ライブラリ構築に使用した。ゲノムDNAの等量を、ライブラリ構築のための、オンターゲット及びトップ12の予測されるオフターゲットのヌクレアーゼ結合部位に隣接するゲノム領域を増幅するために使用した。次に、Ampureビーズ(Beckman Coulter)を使用してPCRアンプリコンを精製し、その後、Illumina P5アダプター及びサンプル特異的なバーコードを取り付けるために2回目のPCRにさらした。精製されたPCR生成物を、Illumina MiSeqを使用して、シングルエンドシーケンシングのために等比でプールした。生の読み取り値を、BWAを使用してマウス参照ゲノムmm9にマッピングした(Li,H.&Durbin,R.Fast and accurate short read alignment with Burrows-Wheeler transform.Bioinformatics 25,1754-1760(2009))。Freebayesを使用して、ヌクレアーゼ結合部位の5ヌクレオチド上流から、5ヌクレオチド下流(合計32bp)までの挿入と欠失(インデル)事象に関して、高品質の読み取り値(スコア>30)を分析した。
【0132】
ラットへの網膜下注入。21日齢の類遺伝子性のRCSラットを試験に使用し、2つのグループに分けた。グループA(n=3)は、2ulのAAV混合物(AAV-Cas9(1.5x1010GC)及びAAV-rMertk(1.5x1010GC))の網膜下注射を目に受けた。グループB(n=3)には、ベシクルの注入を受ける負の対照として、偽薬を注入した。注入を受けない野性型ラット(n=3)を、正常な対照として使用した。ケタミンとキシラジンの混合物の腹腔内注射により実験用ラットに麻酔をかけた。1%の局所用トロピカミドで瞳孔を拡大させた。ポンプマイクロインジェクション装置(Picospritzer III;Parker Hannifin Corporation)と、ガラスマイクロピペット(内部直径50~75m)と共に解剖顕微鏡を使用して、網膜下注入を直接の可視化の下で行なった。2ulのAAV混合物を、強膜の小さな切開を通じて網膜下腔に注入した。小さな網膜下液のブレブの生成により、注入の成功を判断した。注入後直ちに眼底検査を行ない、出血などの網膜損傷の徴候を見せたラットを廃棄して、最終的な動物数から除外した。
【0133】
ERG記録。視覚を救う際の遺伝子ノックインの有効性をモニタリングするために、組織学のために動物を屠殺する前に、ERG試験を処置の4週間後に行なった。暗順応のERG応答を、以前に記載されたように記録した(Sauve,Y.,Lu,B.&Lund,R.D.The relationship between full field electroretinogram and perimetry-like visual thresholds in RCS rats during photoreceptor degeneration and rescue by cell transplants.Vision Research 44,9-18(2004)).要するに、各ERG記録セッションの開始に先立って、ラットを14時間、暗順応させた。上記の外科的処置に関して記載されたように、それらに深く麻酔をかけた。瞳孔の拡張を促進するために、1%の局所用トロピカミドで目を処置した。各ラットを固定状態で試験し、ガンツフェルトボウル(Ganzfeld bowl)(Diagnosys LLC)内の検査のための位置に入れた。1つの活性レンズ電極を各角膜に配置し、皮下に配置された接地針電極を後尾に位置づけ、及び基準電極を2つの目のほぼ中間の頭部領域の皮下に配置した。ガンツフェルトボウル内で、0.01と0.3cd/mで、光刺激をキセノンランプで送達した。フリッカーERG測定のために、ラットを10cd/mの背景光に適応させて、光刺激を30cd/mに設定した。その記録を、Diagnosysにより供給されたソフトウェアを使用して処理した。
【0134】
ラットに関する組織学的分析。ERG記録の後に、ラットを犠牲にして、ONL保存の組織学的評価のために網膜の断面図を用意した。ラットをCOで安楽死させ、目を切開して%のPFAに固定した。角膜、水晶体、及び硝子体を、網膜を害することなくそれぞれの目から取り出した。眼杯を含む残りの網膜を、30%のスクロースに浸潤させ、OCT化合物に埋め込んだ。水平な凍結切片をクリオスタット上で切断した。網膜の横断切片を、ヘマトキシリン・エオジン(H&E)で染色することにより、組織学的評価のために調整した。
【0135】
ラットの目からのDNA抽出及び遺伝子型判定。ゲノムDNAを、上記の埋め込まれた眼杯サンプルの凍結切片から単離した。20の凍結切片を切り取り、この材料をEppendorfチューブに移して、確立されたプロトコルを使用してDNA抽出の対象にした(Talaulikar,D.,Shadbolt,B.,McNiven,M.&Dahlstrom,J.E.DNA amplification from formalin‐fixed decalcified paraffin‐embedded bone marrow trephine specimens:does the duration of storage matter?Pathology 40,702-706(2008))。DNAの質(OD260/OD280)及び量(OD260)を、NANODROP 2000(Thermo Scientific)装置を使用して測定した。PCRと、遺伝子型決定のための直接DNAシーケンシングのためにDNAを使用した。
【0136】
統計分析。結果は平均±s.dとして示される。スチューデントのt検定で比較を行った。
【0137】
実施例2:効果的な標的導入遺伝子組み込みのための相同性に依存しない戦略
【0138】
機能欠失型変異により引き起こされた有害な細胞表現型と戦うための主な治療方法の1つは、野生型遺伝子のコピーの細胞内輸送に依存する。この点に関して、急速に発展しつつある分野であるウイルス媒介性の遺伝子置換療法は、いくつかの解決策を提供するが、導入遺伝子のコピー数と発現レベルに対する不完全な制御、及び挿入突然変異と癌原遺伝子の活性化などの有害な表現効果のリスクゆえの限界がある。相同組換え修復(HDR)経路を活用する部位特異的な導入遺伝子組み込みは、このような問題に最も適切な解決策を提供する。しかしHDRの有用性は、大半の初代細胞型において、その有効性の低さゆえの限界がある。さらに、HDRは細胞周期のS/G2期中にのみ生じ、これにより出生後の動物組織に広く認められる非分裂細胞へのアクセスを不可能にする。他の主要なDNA二本鎖切断(DSB)修復経路、非相同末端結合(NHEJ)は、増殖細胞と分裂終了細胞の両方を含む、様々な成体の細胞型の細胞周期全体にわたって活性がある。加えてほとんどの場合、NHEJ活性は高等生物におけるHDRのそれよりもはるかに高いことがわかっており、筋ジストロフィーのマウスモデルに関して、筋肉機能を改善するためのインビボでの効果的な標的遺伝子破壊のために、直近に利用された。これらの特質は、可能であれば、標的ノックインのためのNHEJ経路のハイジャックが、HDRに関連するハードルのいくつかに打ち勝つための有益なアプローチを構成し得ることを示唆する。相同性に依存しないNHEJベースのDNAライゲーションに頼る方法に関して、正確な導入遺伝子の挿入のためにHDRを回避することが提案されてきたが、分裂終了細胞でのそれらの有効性は捉えがたいままである。さらに、現在までに、成体の動物におけるインビボでの応用のために、そのような戦略を利用することができるかどうかは未知である。この目的のために、相同性に依存しない堅調な戦略が、分裂細胞と分裂終了細胞の両方における、インビボでの効果的な標的導入遺伝子組み込みのために開発された。
【0139】
より堅調なNHEJベースの標的ノックインのために、既存の方法を改良した。分裂細胞におけるHDR及びNHEJベースの遺伝子ターゲティング活性のノックイン効率を測定するために、HEK293株が生成され、EF1αプロモーターによって駆り立てられる突然変異GFP遺伝子(GFP修正HEK293株として指定)を安定的に発現した。次に、Cas9/gRNA及び異なるドナープラスミドを同時導入した。HDR及びHITI(相同性に基づかない標的化組み込み方法)を介した標的遺伝子組換えの有効性は、GFPとmCherryのシグナルによりそれぞれ判定された(図1A)。このシステムを使用して、HEK293細胞におけるNHEJ対HDRドナー(tGFP)を介した1カットのドナー(IRESmCherry-1c)の組み込みの有効性がより高いことを確認した(図1B図1C)。しかしながら、恐らくmCherry遺伝子内のDNAメチル化の増加ゆえに、培養中のmCherry+細胞の割合は経時的に減少したことが認められた(図1D図1E)。細菌の骨格の封入により遺伝子抑制が引き起こされたのかもしれないと推論された。これを克服するために、IRESmCherry遺伝子の両側にgRNA認識配列を宿す2カットのプラスミド(IRESmCherry-2c)、及び細菌骨格を欠いたミニサークルDNA(IRESmCherry-MC)を設計して試験した。80日後の培養中で、より明白ではないDNAメチル化、及び有意により高い割合のmCherry+細胞によって証明されるように、高い有効性と最小限のサイレンシングで標的ゲノム遺伝子座に両方のプラスミドを挿入することができた(図1A-1E)。これらの結果は、これまでに報告された1カットのドナーよりも、2カット及びミニサークルのドナープラスミドによって開始される導入遺伝子の安定性の方が高いことを実証した。ミニサークルドナーでの有効性が、1カット及び2カットのドナーの有効性よりも高いことに留意されたい。NHEJ阻害剤NU7026での処置は、HITIの有効性を有意に減少させ、NHEJ修復機構によってHITIが媒介されることを示唆している(図5B)。結合前のDNA末端のプロセシングの必要性次第で、古典的なNHEJを媒介としたDSB修復は、誤りのある末端結合又は誤りのない末端結合のいずれかを生み出す。サンガー法の結果は、組み込みに際して大部分の結合部位に挿入又は欠失(インデル)がないことを示し、誤りのない修復がこの文脈において有力であることを示唆している(図5C-E)。標的挿入の方向性を調べるために(図5A)、mCherry細胞を選別して、単細胞クローンを生成した。試験した48のクローンのうち1つのみが(2.1%)、反対方向に組み込まれたIRESmCherryカセットを示し、HITIが主として一方向性のノックインを生成したことを示す(図5F)。総合すれば、2カット又はミニサークルのドナープラスミドを用いたHITI方法は、NHEJベースのDSB修復を介して、より安定的で効果的な導入遺伝子組み込みを提供することが、この結果により実証される。
【0140】
実施例3:非分裂細胞における遺伝子送達
【0141】
ノックインの有効性に加えて、Cas9の核内送達は、特に非分裂細胞に関して、CRISPR-Cas9遺伝子ターゲティング効果を高めるであろうと仮定された。この目的のために、Cas9の核輸送を、核移行シグナル(NLS)の設計の最適化によって改善した。触媒作用の不活性なCas9(dCas9)に付けられた一連のNLSを設計して構築し、及び核/細胞質の比率をHEK293細胞への送達に際して評価した。人工の長いNLS(二連のSV40 NLS又はBPNLS)は、2つのSV40NLSで挟まれた従来のCas9よりも、核内でのdCas9の富化においてより強力であることが、結果により明らかになった(図6A-C)。結果的に、BPNLSによって付与された核局在の有効性の増加は、触媒的に活性なCas9を用いたヒト胚性幹細胞(ESC)におけるより効果的なゲノム編集をもたらした(図6D及び6E)。
【0142】
HITI方法を、非分裂細胞においてインビトロで試験した。この目的のために、E14.5マウスの一次ニューロンを単離し、Cas9/gRNA構築物での形質移入の前に異なるドナープラスミドと共に、インビトロで3日間培養した。ドナープラスミドを、Tubb3遺伝子のGFP下流の標的挿入のために設計し、結果として内因性のTubb3プロモーター下でのTubb3-GFP融合タンパク質の発現がもたらされた。正確なGFPノックインは、GFPシグナルの細胞質内局在によって判定された。培養されたニューロンが本物の分裂終了細胞であったことを確認するために、形質移入されたニューロンを、増殖細胞を追跡するためにEdUで処理した。形質移入の5日後に、GFP発現を分析した(図1F)。細胞質でGFPを発現した多くのニューロンが見つかり、それらはβ-IIIチューブリン/Tuj1との共存下にあり、修正された遺伝子ノックインが確認された(図1G)。重要なことに、GFP+細胞はEdUであることがわかり、HITIを媒介とした遺伝子ノックイン事象が非分裂細胞で起こったことが実証された(図1H)。3つのドナープラスミド(1カット(Tubb3-1c)、2カット(Tubb3-2c)、及びミニサークル(Tubb3-MC))の比較は、2カット及びミニサークルのドナーが1カットのドナー(~30%)よりも、形質移入されたmCherry+ニューロンごとに有意に高いGFPノックインの有効性(~60%)を有していることを明らかにした(図1I)。GFPシグナルは、ミニサークルドナーを有する細胞質にもっぱら局在することがわかり、しかし1カット及び2カットのドナーは、より低い細胞質分布を示した(図1J及び図7)。これらの結果は、細菌骨格及びpolyAなどのDNA配列の封入が、Tubb3-GFPの内因性の局在パターンを混乱させることを示す。最小限のインデルを伴う正確な遺伝子ノックインをさらに、PCRとシーケンシングによって確認した(図1K図8A及び図8B)。異なるNLSの効果の比較は、分裂細胞に類似する非分裂ニューロンにおける従来のSV40NLSよりも、BPNLSでのより優れたノックイン効率を実証した(図1L図6A図6B図6C図6D、及び図6E)。さらに、HITIはまた、ヒトESC由来のニューロン全体を使用した、ヒトTubb3遺伝子座下流のノックインGFPに有効であった(図9A図9B図9C、及び図9D)。
【0143】
実施例4:インビボでのゲノム編集
【0144】
インビボでのゲノム編集治療は、広範な標的細胞型を、特にインビトロ培養に適用可能でないものを含む、エクスビボ戦略に対するいくつかの有利性を提供し、したがって多数の組織を標的とする潜在力を有する。培養細胞におけるHITIの実証の成功後、HITIの有効性を生きている動物で判定した。インビトロでの最適化研究に基づいて、BPNLS-Cas9をインビボ実験のためにミニサークルドナーと共に選択した。Tubb3遺伝子座でのノックインGFPを、子宮内電気穿孔、脳試験のための確立された非ウイルス媒介インビボ遺伝子送達法により、E15.5マウス胚で試みた。生誕の3週間後、20パーセントの成功裡に形質移入された細胞(mCherry+)は、脳内で細胞質GFP発現を示した(図2A-C)。HITI構築物を伴うE15.5における電気穿孔された前駆細胞は、依然として有系分裂的に活性であり、HITIが非分裂細胞に実際に生じたかどうかの確認を妨げた。HITIを媒介とした有系分裂後のノックインを明白に実証するために、タモキシフェン(TAM)誘導可能なCre依存Cas9発現系を、gRNA及びTubb3-MCドナーと共に、E15.5の胎児の脳へと、子宮内電気穿孔を介して送達した。Cas9発現を、TAM処置を介してP10とP11で誘発し、この段階では、電気穿孔された前駆細胞はすでに有系分裂後のニューロンに分解していた(図2D)。Tubb3-MCドナーDNAによるGFPノックインのより高い有効性と、HDRドナー(Tubb3-HDR)でのノックインのほぼ皆無の有効性が、結果により明らかになった(図2E及び図2F)。これらの結果は、HITIがさらに、分裂終了細胞における導入遺伝子の標的挿入にインビボで効果的であることを示す。
【0145】
インビボでの応用のためのHITIの有用性を広げるために、標的ノックインを、様々な他の体細胞組織でHITIプラスミドを使用して試験した。この目的のために、Rosa26遺伝子座に恒常的に活性のあるCAGプロモーターを挿入したAi14マウスを使用した。筋肉と腎臓の組織を編集するためのHITIの有効性を検討するために、ミニサークルドナープラスミドをコードするGFP又はルシフェラーゼ(それぞれAi14GFP-MC又はAi14luc-MC)を、電気穿孔又は圧力を媒介とした形質移入のいずれかによって、BPNLS-Cas9とgRNAと共に送達した(図2G)。電気穿孔の8日後に、ルシフェラーゼシグナルを、ルシフェラーゼミニサークルドナーのための大腿四頭筋細胞で検出した(図2H)。GFPミニサークルドナーが送達された時、少量の核局在GFPがさらに、大腿四頭筋と脂肪層の筋肉細胞において見られた(図2I)。同様の結果は腎臓でも観察された(図2J-L)。これらの結果は、様々な体細胞組織に対する標的導入遺伝子ノックインのためのHITIの適用可能性を実証する。
【0146】
実施例5:HITIのアデノ随伴ウイルス送達
【0147】
効果的ではあるが、電気穿孔と形質移入を介したプラスミド送達は、インビボでの適用には効果的ではなく、堅調でもない。効果的で正確なインビボ遺伝子送達のために選択された方法はアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)である。したがって、インビボでのHITIの有効性と有用性の改善を試みるために、Cas9、gRNA及びドナーDNAを2つのAAVベクターに充填した。ベクターの1つは、最小限の構成的ハイブリッドプロモーター(nEF)により駆り立てられるSV40NLSによって挟まれたCas9を宿した(AAV(AAV-Cas9)の限定されたクローニング能力ゆえに、BPNLSの代わりに)。別のベクターは、Tubb3-gRNA発現カセット、2カットのドナー、及び蛍光性マーカー(AAV-mTubb3)を収容するように構成された。両AAVを、血清型8でパッケージングし、それは事前に多くの臓器に対する高い感染能力と治療上の安全性を示した(図3A)。AAV-Cas9及びAAV-mTubb3に同時感染した培養された初代神経細胞は、細胞質でGFPを発現し、これはβ-IIIチューブリン染色と共存していた(図3B図3C及び図10A)。GFPノックインの性能は、PCR及びシーケンシングによってさらに確認された(図3D及び図10B)。
【0148】
次に、局所注入を介して、成体のマウス脳の視覚野にAAVを送達した。2週間後、脳切片を用意し、抗GFP抗体で染色した(図3E)。mCherry+細胞を、対照(AAV-mTubb3のみ)及び実験群(AAV-mTubb3+AAV-Cas9)の両方において観察し、AAV感染の成功が示された(図3F)。対照切片とは対照的に、最小限のGFPシグナルが検出された場合、多くの細胞質の局在GFP+ニューロンが実験群で見つかり、標的遺伝子挿入は有系分裂後のニューロンにおいてHITIを用いて達成可能であるという概念が支持された(図3F)。GFP及びルシフェラーゼノックインAAVを、Ai14マウス用に生成した(図3G及び図11A)。脳と同様に、成体マウスの筋肉内(IM)注射を通じた局所送達はさらに、Rosa26遺伝子座における正確なGFPノックインを示した(図3H-J)。インサイチュ注入に加えて、全身性送達もまた試験した。この目的のために、AAV-Cas9とAAV-Ai14-GFPを静脈内(IV)注射を介して新生児のAi14マウスに同時送達した。感染の2週間後、多くのGFP+細胞が、患畜の心臓と肝臓の両方の全体にわたって観察され、同様に、脳、筋肉、腎臓、副腎、脾臓、肺、及び目の脈絡叢を含む広範な他の臓器と組織の種類で観察された(図3K図3L及び図12A)。ゲノムPCR及びDNAシーケンシング分析は正確なノックインを確認した(図3M及び図12B)。興味深いことには、AAVの尾静脈注射後に、成体肝臓での優先的なノックインが観察された(図11A図11B図11C及び図11D)。HITIのインビボでのオフターゲット効果を試験するために、AAVに感染した肝臓組織を使用して、突然変異率を、オンターゲット、及び12の予測された最も高位のゲノムオフターゲット部位で検査した。次世代シーケンシング分析は、検査されたオフターゲットにおける最小限の挿入と欠失(インデル)の頻度を示唆した(図13)。
【0149】
実施例6:インビボ遺伝子治療
【0150】
レポーター遺伝子を介した特定の分裂終了細胞型の実際の追跡に加えて、及びその高い標的ノックイン効率ゆえに、HITIは遺伝子治療のための標的導入遺伝子組み込みに利用され得る。第1の概念実証のために、イングランド王立外科医師会(RCS)ラットモデルを選択した。RCSラットは、ヒトにおける失明の一般的要因である、網膜色素変性症と呼ばれる遺伝性の網膜変性の、広く使用される動物モデルである。イントロン1からエクソン2までの1.9kbの欠失を宿すMertk遺伝子におけるホモ変異体は、結果として、必然的なRPEと、上にある光受容体の退化及び失明を伴う、網膜色素上皮(RPE)の食作用機能の欠損をもたらす(図4A)。RCSラットにおける網膜変性は、網膜電図検査(ERG)による形態学及び視覚機能の検査によって評価することができる。光受容体の外顆粒層(ONL)退化における形態変化は、RCSラットにおいて、生後16日目(P16)に現われる。目のMertk遺伝子の網膜機能を修復するために、イントロン1でMertk遺伝子のエクソン2の機能性コピーを組み込むことができるAAVベクターを生成した(図4B)。AAVベクターを生後3週間のラットの目に注入し、7-8週で分析した(図4C)。DNA分析から、AAV注入された目での正確なDNAノックインが検出された(図4D及び図14A)。未処置のRCSラット対照と比較して、AAV-Cas9及びAAV-rMertk注入は、ONLの著しい保存を示した(図4E)。H&E染色は、注入を受けた目における光受容体ONLの増加を確認した。対照的に、未処置の目は、ONL中に1~2、又はまばらに分布した光受容細胞体のみを有していた。未処置の目(P<0.05)における54.6±6.8μmのONL厚さと比較して、平均ONL厚さは処置された目では94±4.4μmであった。GFP導入遺伝子の発現は、処置されたRCSの目のRPEで増加した(図4F)。同様に、ロドプシンの発現は、処置されたRCSの目のONLで増加した。網膜の生理作用に対する処置の効果を判定するために、注入(P50)の4週間後にERG応答を試験して、桿体と錐体の機能の電気活性を測定した(10Hzフリッカー)。AAV-Cas9及びAAV-rMertkで処置された全ての目は、ERG b波応答の有意な改善を示した。平均b波値は、処置された目では86.4±33.9μVであり、これは未処置の目の2倍である(44.1±12.8μV、P<0.05)(図4G)。同様に、錐体反応を評価する10Hzのフリッカー値が有意に改善され、未処置の目よりも4倍以上、高かった(21.9±1.0μV対4.6±2.1μV、P<0.05)(図4H)。眼底写真は、RPE萎縮による、目視可能の大きな脈絡膜管が、AAVを注入された目で改善されたことを示した(図14B)。これらの結果は、HITIベースのAAV-Cas9及びAAV-rMertk処置が、網膜の視覚機能を著しく救済し、かつ保存することができることを実証する。
【0151】
実施例7:インビボ遺伝子破壊
【0152】
いくつかの実施形態では、HITIは、遺伝子破壊を導入する突然変異を導入するための効果的な方法である。遺伝子破壊は、コード配列又は遺伝子のプロモーター/エンハンサー要素における突然変異を含み、結果として遺伝子の突然変異又は欠失、又は遺伝子発現の減少をもたらす。いくつかの実施形態では、遺伝子、例えば腫瘍遺伝子の過剰発現は、ヒト患者に疾患を引き起こす。
【0153】
KRASが過剰発現してマウスに癌をもたらす、癌、KRASのマウスモデルでノックアウトを生成する。標的構築物を、プロモーター/エンハンサー要素に欠失を含む、KRAS遺伝子のプロモーター/エンハンサー要素に対応する配列を有するように設計し、その結果としてKRAS遺伝子の発現は減少する。標的構築物をAAV-delKRAS構築物にパッケージングし、AAV-Cas9構築物と同時投与する。KRASのプロモーター/エンハンサー由来のdelKRAS断片がマウスに組み込まれる。処置されたマウスは、対照ウイルスで処置されたマウスよりも発現が少ない。さらに、処置されたマウスは、対照ウイルスで処置されたマウスよりも腫瘍の数が少ない。
【0154】
HITI技術は、ノックアウト又は妨害に、又は疾患を引き起こす遺伝子などの遺伝子の妨害に使用可能であることが、この実施例によって示される。
【0155】
実施例8:ノックイン効率の測定
【0156】
ノックイン効率は、HITI構築物を発現するAAV9のIV注入で処置されたマウスで測定された。図15Aは、処置の概要を示す。図15Bは、高いウイルス力価と低いウイルス力価でのノックインを示すGFP陽性細胞の割合を示す。図15Cは、肝臓、心臓及び筋肉におけるGFP陽性細胞の顕微鏡写真を示す。このデータは、遺伝子ノックイン効率が、感染したAAVの力価に依存することを示す。高いAAV力価を使用すると(1.5x1012)、25%までのノックインGFPが可能であった(筋肉)。
【0157】
実施例9:早老症の処置
【0158】
HITIは、網膜色素変性症(RP)ラットモデルの事前データに示されるように、大きな欠失に加えて点突然変異を伴う疾患の標的遺伝子修正を可能にするために使用された。概念実証のために、ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(HGPS)又は早老症(LAKI)のマウスモデルを使用し、それはLMNA遺伝子(LMNAG609G/G609G)に常染色体優性点突然変異を宿し、及び多数の組織における早老性表現型、多臓器における異常タンパク質(Progerin)蓄積、及び寿命の減少を示した。全身の突然変異を修正するために、AAV-HITIを1日目に静脈内の(IV)注射を通じて全身に注入した(図16Aの図表を参照)。
【0159】
大きなDNA欠失を修正するために、HITIシステムはDNAを挿入することができることが、上記の実施例において示された。この例は、変異したエクソンの前に機能性のエクソン及び3’UTRを導入する新たなHITI戦略を示し、したがってHITIの能力、例えば同じ遺伝子中の点突然変異、多数の突然変異、を拡大する。このマウスモデルは、エクソン11のCからTへの優性点突然変異を有し、したがって機能性のエクソン11、12及び3’UTRはHITIによってイントロン10に挿入された。図16Bは、血清型9を持つLMNA遺伝子修正AAVベクターの概略図を示す。
【0160】
機能障害の内因性のエクソンではなく、挿入されたカセットがその後、転写され、したがって非変異の野性型転写物を修復すると仮定された。突然変異はゲノムに依然として存在するが、修正された転写物の発現には影響しないだろう。注入の17週間後に、ノックインの修正がDNAレベルに見られた。118日目における、PCRによる正確な遺伝子ノックインの確証(図16C)。35日目及び118日目における、qPCRによる遺伝子ノックイン効率(図16D)。
【0161】
早老症マウスモデルは、体重がより少なく、寿命がより短い。両方の表現型は、HITI処置によって有意に救済された(図16E、体重;図16F、寿命)。これらの結果は、HITIを媒介としたインビボでの遺伝子修正が、優性点突然変異に対する治療効力を同様に達成したことを示唆する。
【0162】
処置されたマウスの外観もまた、HITI処置による影響を受けた。図16Gは、4ヶ月齢のLmna+/+(WT)、LmnaG609G/G609G(-HITI)、及び17週齢のHITIで処置したLmnaG609G/G609Gマウス(+HITI)の代表的な写真を示す。処置されたマウスは未処置のマウスよりもわずかに大きく、切開されたマウスでは臓器の外観が改善されていた。処置されたマウスはさらに、図16Hに示される脾臓退行の部分的救済を示す。
【0163】
LAKI HITI処置されたマウスの大動脈弓の組織像(H&E)における改善がさらに示された。図16Iは、HITI処置により部分的に救済された核密度の定量化と組み合わせた典型的な組織診断写真を示す。
【0164】
LAKI HITIで処置されたマウスの腎臓の組織構造(PAS)もまた改善された。腎臓の糸球体の面積と尿細管の直径は、HITI処置によって部分的に救済された。図16Jにおいて顕微鏡写真は、腎臓糸球体の面積及び尿細管の直径の定量化と共に示される。
【0165】
LAKI HITI処置されたマウスの脾臓の組織像(H&E)もまた改善し、脾臓中の白脾髄の面積も含めて、HITI処置によって部分的に救済された。処置されたマウスの脾臓の典型的な顕微鏡写真、及び白脾髄の面積の定量化は、図16Kに示される。
【0166】
この実施例は、HITIを媒介としたインビボでの遺伝子修正が、「優性」突然変異及び「点」突然変異を有する早老症マウスモデルに対する治療上の有効性を達成したことを示す。
【0167】
実施例10:ヒトにおける網膜色素変性症の処置
【0168】
AAV-Cas9及びAAV-rMertkを含む組成物を、網膜色素変性症を患う個体を処置するために使用する。静脈内投与による被験体への組成物の投与後、組成物は、Mertk遺伝子の突然変異を修正することができ、及び視力減退を含む網膜色素変性症の症状が改善される。10人の患者が組成物の静脈注射を受ける場合、9人は視力の改善を経験する。
【0169】
実施例11:ヒトにおける早老症の処置
【0170】
LMNA遺伝子(LMNAG609G/G609G)の突然変異を修正するAAV-HITIを含む組成物を、早老症を患う個体を処置するために使用する。静脈内投与による被験体への組成物の投与後、組成物は、LMNA遺伝子の突然変異を修正することができ、及び腎臓機能、脾臓機能、低成長及び脱毛症を含む早老症の症状が改善される。10人の患者が組成物の静脈注射を受ける場合、9人は早老症の症状の改善を経験する。
【0171】
本発明の好ましい実施形態が本明細書に示され、記載されたが、そのような実施形態が単なる例として提供されていることは、当業者にとって明白だろう。多数の変形、変更、及び置き換えが、本発明から逸脱することなく、当業者によって想到されるだろう。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代案が、本発明の実施において利用され得ることを理解されたい。以下の特許請求の範囲は本発明の範囲を定義するものであり、この特許請求の範囲内の方法と構造、及びそれらの同等物を包含することが意図されている。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図1J
図1K
図1L
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図2K
図2L
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図3J
図3K
図3L
図3M
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図15C
図16A
図16B
図16C
図16D
図16E
図16F
図16G
図16H
図16I
図16J
図16K
【配列表】
2023092453000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2022-10-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝性疾患の治療のための組成物の使用であって、該組成物は、外来性DNA配列に対して逆配向である標的配列を含む標的構築物、前記標的配列に相同する相補鎖オリゴヌクレオチド、及びCRISPRヌクレアーゼを含み、ここで、前記外来性DNA配列はゲノムと比較して少なくとも1つのヌクレオチドとの差異を含み、標的配列とゲノム中の標的核酸配列はCRISPRヌクレアーゼにより認識され、
前記ゲノム中の前記標的核酸配列は、一旦、前記外来性DNA配列が正確な配向で前記
非分裂細胞の前記ゲノムに組み込まれると、ゲノム中に存在しなくなる、組成物の使用。
【請求項2】
外来性DNA配列は非分裂細胞のゲノムにおける突然変異を修正する、請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項3】
外来性DNA配列は非分裂細胞のゲノムにおける突然変異を引き起こす、請求項1に記載の組成物の使用
【請求項4】
突然変異は、ミスセンス突然変異、ナンセンス突然変異、サイレント突然変異、挿入、
及び欠失から選択される、請求項2または3に記載の組成物の使用。
【請求項5】
CRISPRヌクレアーゼは、Cas9、Cpf1、Cas12b(C2c1)、Ca
s3Csf1、及びC2c3からなる群から選択される、請求項1乃至のいずれか1つに記載の組成物の使用。
【請求項6】
CRISPRヌクレアーゼは、Cas9である、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の組成物の使用。
【請求項7】
非分裂細胞は最終分化細胞または静止期にある幹細胞である、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の組成物の使用。
【請求項8】
標的構築物、相補鎖オリゴヌクレオチド、及び、ヌクレアーゼをコードするポリヌクレ
オチドは、ウイルスベクターに含まれている、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の組成物の使用。
【請求項9】
ウイルスベクターは、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ
随伴ウイルスから選択される、請求項8に記載の組成物の使用
【請求項10】
標的構築物、相補鎖オリゴヌクレオチド、及び、ヌクレアーゼをコードするポリヌクレ
オチドは、非ウイルスベクターに含まれている、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の組成物の使用。
【請求項11】
標的配列は、CRISPRヌクレアーゼによって特異的に切断される配列である、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の組成物の使用。
【請求項12】
標的構築物によってCRISPRヌクレアーゼをコードされる、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の組成物の使用。
【請求項13】
非分裂細胞は、リンパ球、単球、好中球、好酸球、好塩基球、内皮細胞、上皮細胞、肝
細胞、骨細胞、血小板、脂肪細胞、心筋細胞、ニューロン、網膜細胞、平滑筋細胞、骨格
筋細胞、精母細胞、卵母細胞、及び膵臓β細胞のうち1つ以上から選択される、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の組成物の使用。
【請求項14】
遺伝性疾患は、色素性網膜炎である、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の組成物の使用。
【請求項15】
遺伝性疾患は、型筋ジストロフィーである、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の組成物の使用。
【請求項16】
遺伝性疾患は、ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群である、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の組成物の使用。
【請求項17】
遺伝性疾患は、α-1-アンチトリプシン欠乏症である、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の組成物の使用。
【請求項18】
ゲノム中の標的核酸配列は、Mertkである、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の組成物の使用。
【請求項19】
非分裂細胞のゲノム中の標的核酸配列は、LMNAである、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の組成物の使用。
【請求項20】
非分裂細胞のゲノム中の標的核酸配列は、ロドプシンである、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の組成物の使用。
【請求項21】
非分裂細胞のゲノム中の標的核酸配列は、α-1-アンチトリプシンである、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の組成物の使用。
【請求項22】
非分裂細胞のゲノム中の標的核酸配列は、軟骨無形成症、α1-アンチトリプシン欠損症、アルツハイマー病、抗リン脂質抗体症候群、自閉症、常染色体優性多発性嚢胞腎、乳癌、癌、シャルコー・マリー・トゥース病、結腸癌、ネコ鳴き症候群、クローン病、嚢胞性繊維症、ダーカム病、ダウン症候群、デュアン症候群、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、第V因子ライデン血栓症、家族性高コレステロール血症、家族性地中海熱、脆弱X症候群、ゴーシェ病、ヘモクロマトーシス、血友病、全前脳症、ハンチントン病、クラインフェルター症候群、レーバー先天黒内障、マルファン症候群、筋緊張性ジストロフィー、神経線維腫症、ヌーナン症候群、骨形成不全症、パーキンソン病、フェニルケトン尿症、ポーランド症候群、ポルフィリン症、早老症、前立腺癌、色素性網膜炎、重症複合免疫不全症(SCID)、鎌状赤血球症、皮膚癌、脊髄性筋萎縮症、シュタルガルト病、テイ・ザックス病、サラセミア、トリメチルアミン尿症、ターナー症候群、口蓋心臓顔面症候群、WAGR症候群、及びウィルソン病からなる群から選択される遺伝性疾患の変異遺伝子を含む、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の組成物の使用。
【外国語明細書】