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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092470
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20230626BHJP
【FI】
H01G4/30 201L
H01G4/30 201M
H01G4/30 201N
H01G4/30 515
H01G4/30 512
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184576
(22)【出願日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】10-2021-0184078
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カン、ス ジ
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AD02
5E001AE04
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE01
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】耐湿信頼性を向上させた積層型電子部品を提供する。
【解決手段】積層型電子部品は、複数の誘電体層111を含み、第1方向に対向する第1、第2面、第1、第2面と連結され、第2方向に対向する第3、第4面、第1面~第4面と連結され、第3方向に対向する第5、第6面を含む本体と、第5、第6面に配置されるサイドマージン部114、115と、第3、第4面に配置される外部電極とを含む。本体は、誘電体層を間に挟んで第1方向に交互に配置される内部電極121、122を含む活性部Ac及び活性部の第1方向の両端面に配置されるカバー部112、113を含む。活性部、カバー部及びサイドマージン部は、Moを含み、活性部のうち、カバー部及びサイドマージン部に隣接する領域である界面部におけるMo含量が活性部の中央部におけるMo含量より高く、カバー部及びサイドマージン部のMo含量が界面部におけるMo含量より高い。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層を含み、第1方向に対向する第1及び第2面、前記第1及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3及び第4面、前記第1面~第4面と連結され、第3方向に対向する第5及び第6面を含む本体と、
前記第5及び第6面に配置されるサイドマージン部と、
前記第3及び第4面に配置される外部電極と、を含み、
前記本体は、前記複数の誘電体層を間に挟んで第1方向に交互に配置される内部電極を含む活性部及び前記活性部の前記第1方向の両端面に配置されるカバー部を含み、
前記活性部、カバー部及びサイドマージン部はMoを含み、
前記活性部のうち、前記カバー部及びサイドマージン部に隣接する領域である界面部におけるMo含量が前記活性部の中央部におけるMo含量より高く、
前記カバー部及びサイドマージン部のMo含量が前記界面部におけるMo含量より高い、積層型電子部品。
【請求項2】
前記活性部の中央部はMoを含まない、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記カバー部及びサイドマージン部に含まれたMoの含量が0.1at%以上5.5at%以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記界面部に含まれたMoの含量が0.05at%以上1.0at%以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記界面部から前記カバー部及びマージン部の外側方向に500nm離隔した領域に含まれたMoの含量が0.1at%以上5.5at%以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記カバー部及びサイドマージン部から前記界面部の内側方向に20nm離隔した領域に含まれたMoの含量が0.05at%以上1.0at%以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記界面部から前記カバー部及びマージン部の外側方向に500nm離隔した領域に含まれたMoの含量が0.1at%以上5.5at%以下であり、
前記カバー部及びサイドマージン部から前記界面部の内側方向に20nm離隔した領域に含まれたMoの含量が0.05at%以上1.0at%以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記内部電極の平均厚さは0.4μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記複数の誘電体層の平均厚さは0.4μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記サイドマージン部の平均幅は20μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記カバー部の平均厚さは20μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン、及び携帯電話など、様々な電子製品の印刷回路基板に装着され、電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ型のコンデンサである。
【0003】
このような積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として使用できる。コンピュータ、モバイル機器など、各種の電子機器の小型化、高出力化に伴い、積層セラミックキャパシタに対する小型化及び高容量化への要求が増大している。
【0004】
また、最近、自動車用電装部品に対する業界の関心が高まり、積層セラミックキャパシタも自動車又はインフォテインメントシステムに使用されるために高信頼性及び高強度特性が求められている。そこで、電気自動車の普及率が急激に増加する傾向は続くものと見られ、このような流れに合わせて電気自動車、自律走行車両部品の高性能化及び軽量化が求められている実情である。
【0005】
特に、積層セラミックキャパシタの小型及び高容量化のためには、電極有効面積の極大化(容量実現に必要な有効体積分率の増加)が求められる。
【0006】
このように小型及び高容量の積層セラミックキャパシタを実現するために、積層セラミックキャパシタを製造するにあたり、内部電極を本体の幅方向に露出させることで、マージンのない設計により内部電極の幅方向の面積を極大化し、且つこのようなチップの作製後、焼成前の段階でチップの幅方向への電極露出面にサイドマージン部を別途取り付けて完成する方法が適用されている。
【0007】
しかし、サイドマージン部を別途取り付ける方法により、キャパシタの単位体積当たりの容量は向上させることができるが、サイドマージン部の厚さの減少などにより信頼性が低下するという問題点があった。
【0008】
また、一般に積層方向の最外層の内部電極とカバー部との間の隙間を介して水分が侵入し、積層型電子部品の特性劣化を引き起こすが、耐湿評価後に不良製品を破壊分析したとき、カバー部でバーント(burnt)不良が発生する割合が高い傾向があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国登録特許公報第10-1701049号
【特許文献2】韓国登録特許公報第10-2147408号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明のいくつかの目的の一つは、積層型電子部品の耐湿信頼性を向上させることにある。
【0011】
本発明のいくつかの目的の一つは、信頼性の高い小型、高容量の積層型電子部品を提供することにある。
【0012】
但し、本発明の目的は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態に係る積層型電子部品は、複数の誘電体層を含み、第1方向に対向する第1及び第2面、上記第1及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3及び第4面、上記第1面~第4面と連結され、第3方向に対向する第5及び第6面を含む本体と、上記第5及び第6面に配置されるサイドマージン部と、上記第3及び第4面に配置される外部電極と、を含み、上記本体は、上記誘電体層を間に挟んで第1方向に交互に配置される内部電極を含む活性部及び上記活性部の上記第1方向の両端面に配置されるカバー部を含み、上記活性部、カバー部及びサイドマージン部はMoを含み、上記活性部のうち上記カバー部及びサイドマージン部に隣接する領域である界面部におけるMo含量が上記活性部の中央部におけるMo含量より高く、上記カバー部及びサイドマージン部のMo含量が上記界面部におけるMo含量より高いことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のいくつかの効果の一つは、部位別にMo含量を制御することにより積層型電子部品の信頼性を向上させたことである。
【0015】
但し、本発明の多様かつ有益な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の斜視図を概略的に示したものである。
図2図1の積層型電子部品において、外部電極を除いて示した斜視図である。
図3図1の積層型電子部品において、外部電極及びサイドマージン部を除いて示した斜視図である。
図4図1のI-I'線に沿った断面図である。
図5図1のII-II'線に沿った断面図である。
図6図5のA領域を拡大した図である。
図7a図6のAa領域を拡大した図である。
図7b図7aに対応するサンプル領域のTEMイメージである。
図8a図5のB領域の一部であるBa領域を拡大した図である。
図8b図8aに対応するサンプル領域のTEMイメージである。
図9a図6のAb領域を拡大した図である。
図9b図9aに対応するサンプル領域のTEMイメージである。
図10a図9aのBb領域を拡大した図である。
図10b図10aに対応するサンプル領域のTEMイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどは、より明確な説明のために誇張されてもよく、図面上の同じ符号で示される要素は同じ要素である。
【0018】
そして、図面において本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、図面に示した各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜上、任意に示しているため、本発明は必ずしも図示されたものに限定されない。なお、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素については、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは特に反対となる記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0019】
図面において、第1方向は積層方向又は厚さT方向、第2方向は長さL方向、第3方向は幅W方向と定義することができる。
【0020】
積層型電子部品
図1は、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の斜視図を概略的に示したものであり、図2は、図1の積層型電子部品において、外部電極を除いて示した斜視図であり、図3は、図1の積層型電子部品において、外部電極及びサイドマージン部を除いて示した斜視図であり、図4は、図1のI-I'線に沿った断面図であり、図5は、図1のII-II'線に沿った断面図であり、図6は、図5のA領域を拡大した図である。
【0021】
以下、図1図6を参照して、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品について詳細に説明する。
【0022】
本発明の一実施形態に係る積層型電子部品100は、複数の誘電体層111を含み、第1方向に対向する第1及び第2面、上記第1及び第2面と連結され、 第2方向に対向する第3及び第4面、上記第1面~第4面と連結され、第3方向に対向する第5及び第6面を含む本体110と、上記第5及び第6面に配置されるサイドマージン部114、115、並びに上記第3及び第4面に配置される外部電極131、132を含み、上記本体110は、上記誘電体層111を間に挟んで第1方向に交互に配置される内部電極121、122を含む活性部及び上記活性部の第1方向の両端面に配置されるカバー部112、113を含み、上記活性部、カバー部112、113及びサイドマージン部114、115はMoを含み、上記活性部のうち上記カバー部112、113及びサイドマージン部114、115に隣接する領域である界面部におけるMo含量が上記活性部の中央部におけるMo含量より高く、上記カバー部112、113及びサイドマージン部114、115のMo含量が上記界面部におけるMo含量より高いことができる。
【0023】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されている。本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように、本体110は六面体形状又はこれと類似の形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮により、本体110は完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0024】
本体110は、第1方向に互いに対向する第1及び第2面、上記第1及び第2面と連結され、第2方向に互いに対向する第3及び第4面、第1~第4面と連結され、第3方向に互いに対向する第5及び第6面を有することができる。
【0025】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111間の境界は走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0026】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量が得られる限り特に制限されない。 例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料、又はチタン酸ストロンチウム系材料などを使用することができる。上記チタン酸バリウム系材料としては、BaTiO系セラミック粉末を含むことができ、上記セラミック粉末の例示としては、BaTiO、BaTiOにCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)等が一部固溶した(Ba1-xCa)TiO、Ba(Ti1-yCa)O、(Ba1-xCa)(Ti1-yZr)O又はBa(Ti1-yZr)Oなどが挙げられる。
【0027】
誘電体層111を形成する材料としては、チタン酸バリウム(BaTiO)などのパウダーに、本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などを添加することができる。例えば、誘電体層111は、チタン酸バリウム(BaTiO)などのパウダーを含んで形成されたスラリーをキャリアフィルム(carrier film)上に塗布及び乾燥して複数個のセラミックシートを設けることによって形成されることができる。セラミックシートは、セラミック粉末、バインダー、溶剤を混合してスラリーを製造し、スラリーをドクターブレード法により数μmの厚さを有するシート(sheet)状に作製することにより形成されることができるが、これに限定されるものではない。
【0028】
一方、誘電体層111の厚さtdは特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品100の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、誘電体層111の厚さtdは0.4μm以下であってもよい。ここで、誘電体層111の厚さtdは、誘電体層111の平均厚さを意味することができる。
【0029】
誘電体層111の平均厚さは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて、一つの誘電体層を長さ方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。上記等間隔である30個の地点は活性部Acで指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の誘電体層に拡張して平均値を測定すると、誘電体層の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0030】
本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量を形成する活性部Acと、活性部Acの第1方向の上部及び下部に形成されるカバー部112、113とを含むことができる。すなわち、カバー部112、113は、活性部Acの第1方向の両端面に配置されることができる。
【0031】
活性部Acは、キャパシタの容量形成に寄与する部分であって、誘電体層111を間に挟んで複数の第1及び第2内部電極が繰り返し積層されて形成されることができる。
【0032】
カバー部112、113は、単一の誘電体層111又は2つ以上の誘電体層111を活性部Acの上下面にそれぞれ第1方向に積層して形成することができ、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0033】
カバー部112、113は内部電極121、122を含まず、誘電体層111と同じ材料を含むことができる。すなわち、カバー部112、113はセラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)系セラミック材料を含むことができる。
【0034】
一方、カバー部112、113の厚さtpは特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品100の小型化及び高容量化をより容易に達成し、単位体積当たりの容量を増大させるために、カバー部112、113の厚さtpは20μm以下であってもよい。
【0035】
カバー部112、113の平均厚さtpは、第1方向のサイズを意味することができ、活性部Acの上部又は下部において等間隔の5個の地点で測定したカバー部112、113の第1方向のサイズを平均した値であることができる。
【0036】
また、活性部Acの第3方向の両端面にはサイドマージン部114、115が配置されることができる。
【0037】
サイドマージン部114、115は、本体110の第5面に配置された第1サイドマージン部114と、第6面に配置された第2サイドマージン部115とを含むことができる。
【0038】
サイドマージン部114、115は、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後の内部電極121、122が本体110の第5及び第6面に露出するように切断した後、単一の誘電体層111又は2つ以上の誘電体層111を活性部Acの第3方向の両端面に第3方向に積層して形成されることができ、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0039】
サイドマージン部114、115は内部電極121、122を含まず、誘電体層111と同じ材料を含むことができる。すなわち、サイドマージン部114、115はセラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)系セラミック材料を含むことができる。
【0040】
一方、サイドマージン部114、115の幅は特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成し、単位体積当たりの容量を増大させるために、サイドマージン部114、115の平均幅は20μm以下であってもよい。
【0041】
サイドマージン部114、115の幅は第1方向のサイズを意味することができ、活性部Acの上部又は下部において等間隔の5個の地点で測定したカバー部112、113の第1方向のサイズを平均した値であることができる。
【0042】
内部電極121、122は、誘電体層111を間に挟んで交互に配置されることができる。
【0043】
また、内部電極121、122は、第1及び第2内部電極を含むことができる。第1及び第2内部電極は、活性部Acを構成する誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第2方向である第3及び第4面にそれぞれ露出することができる。
【0044】
図3を参照すると、第1内部電極121は第4面と離隔し、第3面を介して露出し、第2内部電極122は第3面と離隔し、第4面を介して露出することができる。また、第1内部電極121は、第3、第5及び第6面を介して露出することができる。このとき、第1及び第2内部電極は間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離することができる。
【0045】
内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上を含むことができる。
【0046】
一方、内部電極121、122の厚さteは特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品100の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、内部電極121、122の厚さteは0.4μm以下であってもよい。ここで、内部電極121、122の厚さteは、内部電極121、122の平均厚さを意味することができる。
【0047】
誘電体層111の平均厚さは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて、一つの誘電体層を長さ方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。上記等間隔である30個の地点は活性部Acで指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の誘電体層に拡張して平均値を測定すると、誘電体層の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0048】
小型及び高容量の積層セラミックキャパシタを実現するために、積層セラミックキャパシタを製造するにあたり、内部電極121、122を本体110の第3方向に露出させることで、マージンのない設計により内部電極121、122の第3方向の面積を極大化し、且つこのようなチップの作製後、焼成前の段階でチップの第3方向への電極露出面にサイドマージン部114、115を別途取り付けて完成する方法が適用されている。しかし、サイドマージン部114、115を別途取り付ける方法によりキャパシタの単位体積当たりの容量を向上させることはできるが、サイドマージン部114、115の厚さの減少などの設計により信頼性が低下し得るという問題点があった。
【0049】
また、積層方向の最外層の内部電極とカバー部112、113との間の隙間を介して水分が侵入し、積層セラミックキャパシタの特性劣化を引き起こすことがある。そこで、耐湿評価後に不良製品を破壊分析したとき、カバー部112、113ではバーント現象による不良が発生する割合が高い傾向があった。
【0050】
バーント現象とは、隣接する内部電極と誘電体層間において、材料的又は熱的特性が異なるため、内部電極部位で電気エネルギーが熱エネルギーに転換されるときに黒く燃えながら発生する小さなホール(hole)を意味する。
【0051】
これを解決するために、内部電極121、122にMoを添加して信頼性を向上させようとする試みがあったが、内部電極121、122用導電性ペーストにMoを添加する場合、既存の焼成条件を変更する必要があり、且つ、誘電体層111に拡散するMoのため焼結挙動と誘電特性の制御がかなり難しくなるという問題点があった。
【0052】
本発明の一実施形態において、活性部Ac、カバー部112、113及びサイドマージン部114、115はMoを含むことができる。特に、界面部におけるMo含量が活性部Acの中央部におけるMo含量より高く、カバー部112、113及びサイドマージン部114、115のMo含量が界面部におけるMo含量より高いことができる。このとき、界面部は、カバー部112、113に隣接する領域を第1及び第3界面部、サイドマージン部114、115に隣接する領域を第2及び第4界面部と定義することができる。
【0053】
より具体的に、カバー部112、113及びサイドマージン部114、115に界面部より高い濃度のMoを添加することにより、焼成工程中に隣接活性部Ac内である内部電極又は誘電体にMoを拡散させ、従来の活性部の設計及び焼成条件を大きく変更する必要なく、活性部内の耐湿不良に脆弱な部位の耐腐食性を向上させることで、耐湿信頼性を向上させることができる。
【0054】
一般に、Ni-Mo合金は、耐腐食性に優れた合金として広く知られており、Ni-Mo合金の内部電極121、122を適用すると、一定Moの含量が増加する程度に応じて腐食の程度を急減することができる。これにより、めっき工程中のめっき液浸透によって発生するNi腐食による不良の改善に大きな効果があり、高温高湿信頼性の評価においても改善された特性を示すことができる。
【0055】
すなわち、活性部Ac内において、カバー部112、113及びサイドマージン部114、115に隣接する領域でありながらもMoを含む界面部は、界面部とカバー部112、113及びサイドマージン部114、115の界面におけるショットキー障壁(Schottky barier)を高めて高温負荷寿命と耐湿信頼性を改善する役割を果たすことができる。
【0056】
ショットキー障壁(Schottky barrier)は、金属と半導体を接触させたときに発生する電位障壁(エネルギー障壁)であって、金属と半導体を接触させると、両物体のフェルミ準位(Fermi level)が一致するようにキャリア(carrier)が移動し、半導体の表面に空間電荷層(space charge layer)が形成されて電位障壁を構成するようになる。金属と半導体を接触させたときと同様に、誘電体と内部電極が接触する時にも誘電体と内部電極の表面との間にショットキー障壁が発生し、これにより空間電荷効果が発現することにより誘電率が向上する。
【0057】
また、外部電極131、132のめっき層131b、132bを形成するためのめっき工程中に発生する水素が、内部電極121、122を介して誘電体層111まで拡散して信頼性が低下するおそれがあるが、本発明の一実施形態によると、内部活性部Acの界面部に含まれたMoが水素を吸着して水素が内部電極121、122を介して誘電体層111まで拡散することを抑制することができる。これにより、水素拡散による信頼性の低下を抑制することができる。
【0058】
要するに、カバー部112、113及びサイドマージン部114、115にMo元素を含ませた後、焼成工程を行ってカバー部112、113及びサイドマージン部114、115内のMoが一部還元され、隣接する活性部Acである界面部に拡散して選別的に合金を形成することができる。相対的に水分が浸透しやすい活性部Acの最外層の内部電極と、サイドマージン部114、115に隣接する活性部Ac内の内部電極の端部位で選別的に耐腐食性が改善され、耐湿信頼性特性を向上させることができる。すなわち、相対的にMo含量が少ない界面部と相対的にMo含量が高いカバー部112、113及びサイドマージン部114、115との間で濃度勾配が形成されることにより、カバー部112、113及びサイドマージン部114、115から界面部方向にMoが拡散して最終製品の耐湿信頼性を向上させることができる。
【0059】
一実施形態において、活性部Acの中央部はMoを含まないことがある。より具体的に、カバー部112、113及びサイドマージン部114、115に含まれたMoが焼成工程の進行中に、界面部までは濃度勾配による拡散が発生するが、界面部から中央部まではMoの拡散が起こらなかったことを意味する。
【0060】
一実施形態において、カバー部112、113及びサイドマージン部114、115に含まれたMoの含量は、0.1at%以上5.5at%以下であってもよい。
【0061】
カバー部112、113及びサイドマージン部114、115に含まれたMoの含量が0.1at%未満の場合には、界面部に十分な拡散が発生せず、Moが添加されることで期待できる耐腐食性等の耐湿信頼性の向上効果が不十分である可能性があり、5.5at%超である場合には、活性部AcにMoが過度に拡散したものであって、焼結挙動の制御が難しい可能性がある。また、焼成工程の初期にカバー部112、113及びサイドマージン部114、115のMo含量と活性部AcのMo含量との差が大きすぎて、カバー部112、113及びサイドマージン部114、115の焼結挙動と活性部Acの焼結挙動との差が過度に大きくなることにより、焼結挙動のmismatchによるクラック(crack)や剥離(delamination)が発生し、耐湿信頼性が低下する可能性がある。
【0062】
焼結挙動は粉末の粒度に大きな影響を受けるが、一般に、焼結に使用される粉末は、粒度が小さいほど比表面積が増加して焼結温度が低くなり、粉末の粒度が大きいほど比表面積が減少して焼結温度が上がる現象が発生する。これにより、粒度を微細化する場合、同種材料の焼結時には低温、低エネルギー工程で焼結素材部品の製造が可能となるため焼結に有利となる。
【0063】
これに対して、焼結挙動が異なる異種素材、例えば、金属とセラミックを交互に積層して焼結する場合、使用される粉末の粒度が減少するほど焼結収縮挙動の相違性が増幅し、不連続層の発生や層間剥離を促進する可能性がある。
【0064】
一実施形態において、界面部に含まれたMo含量は、0.05at%以上1.0at%以下であってもよい。
【0065】
同様に、界面部に含まれたMo含量が0.05at%未満の場合には、焼成工程中にカバー部112、113及びサイドマージン部114、115から界面部方向にMoの十分な拡散が発生しなかったものであって、Moが含まれることにより期待できる十分な耐腐食性などの耐湿信頼性の向上効果が不十分である可能性がある。界面部に含まれたMo含量が5.5at%超である場合には、活性部AcにMoが過度に拡散したものであって、焼結挙動の制御が難しい可能性がある。また、焼成工程の初期にカバー部112、113及びサイドマージン部114、115のMo含量と活性部AcのMo含量との差が大きすぎて、カバー部112、113及びサイドマージン部114、115の焼結挙動と活性部Acの焼結挙動との差が過度に大きくなることにより、焼結挙動のmismatchによるクラック(crack)や剥離(delamination)が発生し、耐湿信頼性が低下する可能性がある。
【0066】
一実施形態において、界面部からカバー部112、113及びマージン部の外側方向に500nm離隔した領域に含まれたMoの含量は、0.1at%以上5.5at%以下であってもよい。
【0067】
図7a又は図8aを参照すると、界面部からカバー部112、113の外側方向に500nm離隔した領域(図7aの1、2、3に対応)及び界面部からサイドマージン部114、115の外側方向に500nm離隔した領域(図8aの4、5、6に対応)に含まれたMoの含量が0.1at%以上5.5at%以下であることを意味することができる。
【0068】
これは、界面部と隣接する領域のカバー部112、113及びサイドマージン部114、115にMoが0.1at%以上5.5at%以下の範囲で含有されており、界面部とカバー部及びサイドマージン部の界面の間で耐湿信頼性が向上したことを意味する。
【0069】
一実施形態において、カバー部112、113及びサイドマージン部114、115から界面部の内側方向に20nm離隔した領域に含まれたMoの含量は、0.05at%以上1.0at%以下であってもよい。
【0070】
図9a又は図10aを参照すると、カバー部112、113から界面部の内側方向に20nm離隔した領域である内部電極の最外層(図9aの1、2、3に対応)及びサイドマージン部114、115から界面部の内側方向に20nm離隔した領域である内部電極121の端(図10aの4、5、6に対応)に含まれたMoの含量が0.05at%以上1.0at%以下であることを意味することができる。
【0071】
これは、カバー部112、113及びサイドマージン部114、115に含まれたMoの含量が界面部に含まれたMoの含量より相対的に高く、焼成工程の進行中にカバー部112、113及びサイドマージン部114、115から界面部への濃度勾配によるMoの拡散が発生したものと見なすことができる。Moが拡散することによって、カバー部112、113及びサイドマージン部114、115と界面部との間で耐湿信頼性が向上したことを意味する。
【0072】
外部電極131、132は本体110の第3及び第4面に配置される。外部電極131、132は、本体110の第3及び第4面にそれぞれ配置され、第1及び第2内部電極とそれぞれ連結された第1及び第2外部電極を含むことができる。
【0073】
図1を参照すると、外部電極131、132は、サイドマージン部114、115の第2方向の両端面を覆うように配置されることができる。本実施形態では、積層型電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造について説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変わることができる。
【0074】
外部電極131、132は、本体110の第3面に配置される第1外部電極131及び本体110の第4面に配置される第2外部電極132を含み、内部電極121、122は、第1外部電極131と接触する第1内部電極121及び第2外部電極132と接触する第2内部電極122を含み、第1及び第1 2内部電極の第3方向の両端部は、サイドマージン部114、115と接触することができる。
【0075】
一方、外部電極131、132は、金属などのように電気伝導性を有する物質であれば、如何なるものを使用して形成されてもよく、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されてもよく、さらに、多層構造を有してもよい。
【0076】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層131a、132a及び電極層131a、132a上に形成されためっき層131b、132bを含むことができる。電極層131a、132aに対するより具体的な例を挙げると、電極層131a、132aは、導電性金属及びガラスを含む焼成電極であってもよく、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であってもよい。
【0077】
また、電極層131a、132aは、本体110上に焼成電極及び樹脂系電極が順次に形成された形態であってもよい。また、電極層131a、132aは、本体110上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されてもよく、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されたものであってもよい。
【0078】
電極層131a、132aに含まれる導電性金属としては、電気伝導性に優れた材料を使用することができるが、特に限定されない。例えば、導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及びそれらの合金のうち一つ以上であってもよい。
【0079】
めっき層131b、132bは実装特性を向上させる役割を果たす。めっき層131b、132bは、スパッタ又は電解めっきによって形成されてもよいが、特にこれに制限されるものではない。
【0080】
めっき層131b、132bの種類は特に限定されず、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、鉛(Pb)及びこれらの合金のうち一つ以上を含むめっき層131b、132bであってもよく、複数の層で形成されてもよい。めっき層131b、132bに対するより具体的な例を挙げると、めっき層131b、132bはNi又はSnめっき層であってもよく、電極層131a、132a上にNiめっき層及びSnめっき層が順次に形成された形態であってもよく、Snめっき層、Niめっき層及びPdめっき層が順次に形成された形態であってもよい。また、めっき層131b、132bは、複数のNiめっき層及び/又は複数のSnめっき層を含むこともできる。めっき層131b、132bを含むことにより、基板との実装性、構造的信頼性、外部に対する耐久度、耐熱性及び/又は等価直列抵抗値(Equivalent Series Resistance、ESR)を改善することができる。
【0081】
積層型電子部品100のサイズは特に限定する必要はない。但し、小型及び高容量化を同時に達成するためには、誘電体層111及び内部電極121、122の厚さを薄くして積層数を増加させなければならないため、1005(長さ×幅、1.0mm×0.5mm)以下のサイズを有する積層型電子部品100において、本発明による信頼性の向上効果がより顕著となり得る。
【0082】
以下、実験例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これは、発明の具体的な理解を助けるためのものであり、本発明の範囲が実験例によって限定されるものではない。
【0083】
(実験例)
活性用セラミックグリーンシート上に内部電極用導電性ペーストを塗布して第1方向に積層した後、チップ単位体で切断して本体を設け、上記本体の第3方向の両端面にサイドマージン部用セラミックグリーンシートを第3方向に積層して焼成した後、外部電極を形成してサンプルチップを設けた。このとき、カバー部及びマージン部を形成するセラミックグリーンシートに含まれたMo含量を異ならせてサンプルチップを用意した。
【0084】
実験例1~6に対するカバー部及びサイドマージン部内の平均Mo(at%)、界面部内の平均Mo(at%)を測定し、耐湿信頼性を評価して下記表3に記載した。
【0085】
サンプルチップをWT面に対してL方向に1/2まで研磨した後、露出した断面の界面部、カバー部及びサイドマージン部の一定の地点におけるMo含量をTEM-EDS(Transmission Electron Microscope-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)装備で分析した。
【0086】
まず、実験例4のカバー部及びサイドマージン部内の測定位置1~6地点におけるMo(at%)含量を分析した。
【0087】
図7bを参照すると、カバー部と隣接する界面部の最外層の内部電極をイメージの縦の中間線と合わせた後、界面部の最外層の内部電極とカバー部の界面からカバー部の外側方向に500nmの領域において、横500nmの等間隔で測定位置1~3の(図7bの1、2、3に対応)地点でカバー部のMo含量を分析した。
【0088】
図8bを参照すると、サイドマージン部と隣接する界面部の内部電極の端をイメージの縦の中間線と合わせた後、内部電極の端からサイドマージン部の外側方向に500nmの領域において、縦500nmの等間隔で測定位置4~6の(図8bの4、5、6に対応)地点でサイドマージン部のMo含量を分析した。
【0089】
【表1】
【0090】
測定位置1~3はカバー部内に位置する。測定位置1の値は、図7bの1に該当する地点でMo含量が3.84at%であることを意味し、測定位置2の値は図7bの2、測定位置3の値は図7bの3に該当する。測定位置4~6はサイドマージン部内に位置する。測定位置4の値は図8bの4に該当する地点でMo含量が4.09at%であることを意味し、測定位置5の値は図8bの5、測定位置6の値は図8bの6に該当する。そして、測定位置1~6におけるMo含量の平均値である3.71at%を最下段に示した。次に、界面部内の測定位置1~6地点におけるMo(at%)含量を分析した。図9bを参照すると、界面部の最外層の内部電極とカバー部の界面から界面部の内側方向に20nmの領域において、横100nmの等間隔で測定位置1~3の(図9bの1、2、3に対応)地点で界面部の最外層の内部電極のMo含量を分析した。
【0091】
図10bを参照すると、界面部の内部電極の端とサイドマージン部の界面から界面部の内側方向に20nmの領域において、縦100nmの等間隔で測定位置4~6の(図10bの4、5、6に対応)地点で界面部の内部電極の端のMo含量を分析した。
【0092】
【表2】
【0093】
測定位置1~3は界面部の最外層の内部電極内に位置する。測定位置1の値は、図9bの1に該当する地点でMo含量が0.47at%であることを意味し、測定位置2の値は図9bの2、測定位置3は図9bの3に該当する。測定位置4~6は界面部の内部電極の端に位置する。測定位置4の値は図10bの4に該当する地点でMo含量が0.67at%であることを意味し、測定位置5の値は図10bの5、測定位置6の値は図10bの6に該当する。そして、測定位置1~6におけるMo含量の平均である0.56at%を最下段に示した。上記のような方法で測定した実験例4に対するカバー部及びサイドマージン部内の平均Mo(at%)、界面部内の平均Mo(at%)の値を下記表3に記載した。また、実験例4と同様の方法により、実験例1~3、5及び6に対するカバー部及びサイドマージン部内の平均Mo(at%)、界面部内の平均Mo(at%)の値を測定して下記表3に記載した。
【0094】
耐湿信頼性の評価は8585Testで行われ、各実験例当たり40個のサンプルチップを用意した後、40個のサンプルチップのうち温度85℃、相対湿度85%で電圧を1.2Vrにして6時間印加したとき、絶縁抵抗が初期絶縁抵抗に対して1/100以下の値に低下するサンプルチップについて不良と評価した。実験例1~6のうち、不良が4/40個以上の場合、Moの添加による耐湿信頼性の向上がないと評価した。
【0095】
【表3】
【0096】
カバー部及びサイドマージン部内のMo含量が0.1at%以上5.5at%以下であり、界面部のMo含量が0.05at%以上1.0at%以下である場合に、耐腐食性等の耐湿信頼性が向上したことを実験例2~5により確認することができる。これに対し、カバー部及びサイドマージン部内のMo含量が0.1at%未満であり、界面部のMo含量が0.05at%未満である場合、耐腐食性等の耐湿信頼性が向上しなかったことが実験例1により確認できる。また、カバー部及びサイドマージン部内のMo含量が5.5at%超であり、界面部のMo含量が1.0at%超である場合、カバー部及びサイドマージン部のMo含量と活性部のMo含量との差が大きすぎて、カバー部及びサイドマージン部の焼結挙動と活性部の焼結挙動との差が過度に大きくなることにより、焼結挙動のmismatchが発生し、耐湿信頼性が向上しなかったことが実験例6により確認できる。
【0097】
以上のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者により様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属すると言える。
【符号の説明】
【0098】
100:積層型電子部品
110:本体
111:誘電体層
112、113:カバー部
114、115:サイドマージン部
121、122:内部電極
131、132:外部電極
131a、132a:電極層
131b、132b:めっき層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
図10a
図10b