(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092472
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】内装用表示装置の外装用フィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20230626BHJP
C08L 67/03 20060101ALI20230626BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20230626BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20230626BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20230626BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20230626BHJP
C08K 5/3475 20060101ALI20230626BHJP
C08K 5/3492 20060101ALI20230626BHJP
C08K 5/315 20060101ALI20230626BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20230626BHJP
C08K 5/49 20060101ALI20230626BHJP
C08K 5/36 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
C08L67/03
C08K5/098
C08L23/08
C08L23/26
C08K5/13
C08K5/3475
C08K5/3492
C08K5/315
C08K5/17
C08K5/49
C08K5/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191249
(22)【出願日】2022-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2021206812
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】322012860
【氏名又は名称】東レ・セラニーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186484
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 満
(72)【発明者】
【氏名】西山 彰秀
(72)【発明者】
【氏名】中尾 優一
(72)【発明者】
【氏名】植村 裕司
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA15
4F071AA47
4F071AA75
4F071AA80
4F071AA84
4F071AB03
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4J002CF271
4J002EE039
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4J002EU079
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4J002EW068
4J002FD059
4J002FD206
4J002FD207
4J002FD208
4J002GL00
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、内装用表示装置の外装用に好適な、柔軟で、優れた透明性を保ちつつ、紫外線や熱への耐変色性に優れたポリエステルエラストマ樹脂組成物からなる外装用フィルムを提供することにある。
【解決手段】本発明は、内装用表示装置の外装用フィルムであって、結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a)10~50質量%と、脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメント(b)90~50質量%とを含むポリエステルブロック共重合体(A)、前記ポリエステルブロック共重合体(A)100質量部に対して、炭素数10以上20以下の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(B)0.01~3質量部、側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン共重合体(C)0.2~20質量部、炭素、水素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル補足剤(D)0.05質量部以上1.0質量部以下および過酸化物分解剤(E)0.05~1.0質量部を含有したポリエステルエラストマ樹脂組成物からなり、厚さ2mmのシートで測定した全光線透過率が5%以上、ヘイズ値(曇度)が95%以下で、JIS K7215に準拠する表面硬度が20~50Dであることを特徴とする内装用表示装置の外装用フィルムである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a)10~50質量%と、脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメント(b)90~50質量%とを含むポリエステルブロック共重合体(A)、前記ポリエステルブロック共重合体(A)100質量部に対して、炭素数10以上20以下の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(B)0.01~3質量部、側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン共重合体(C)0.2~20質量部、炭素、水素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル補足剤(D)0.05質量部以上1.0質量部以下および過酸化物分解剤(E)0.05~1.0質量部を含有したポリエステルエラストマ樹脂組成物からなり、厚さ2mmのシートで測定した全光線透過率が5%以上、ヘイズ値(曇度)が95%以下で、JIS K7215に準拠する表面硬度が20~50Dであることを特徴とする内装用表示装置の外装用フィルム。
【請求項2】
前記ポリエステルエラストマ樹脂組成物が前記ポリエステルブロック共重合体(A)100質量部に対して、紫外線吸収剤(F)0.05~2.5質量部およびヒンダードアミン系化合物(G)0.01~2.5質量部を含有することを特徴とする請求項1記載の内装用表示装置の外装用フィルム。
【請求項3】
前記ヒンダードアミン系化合物(G)のアミンの級数は3級であることを特徴とする請求項2記載の内装用表示装置の外装用フィルム。
【請求項4】
前記紫外線吸収剤(F)は、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート系化合物の中からなる群から選ばれる1種類以上であることを特徴とする請求項2記載の内装用表示装置の外装用フィルム。
【請求項5】
自動車内装用であることを特徴とする請求項1~4いずれか記載の内装用表示装置の外装用フィルム。
【請求項6】
インストルメントパネルや表皮に使用されることを特徴とする請求項5記載の内装用表示装置の外装用フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内装用表示装置の外装用フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車デザインにおけるCMF(カラー、マテリアル、フィニッシュ)デザインは、車両のコンセプトを伝えるとともに、ユーザーの選択肢を広げる役割を担っている。自動車の車室等において、例えばシート材料では、本革から合成皮革の使用が増え、合成革材料として、塩化ビニルやウレタン樹脂が使用されており、様々な合成樹脂が使用されている。皮革材料では、人が触れるため良触感や意匠性が求められるため、柔軟な材料が求められる。
【0003】
特に、自動車内装品は、車室内に設けられるものではあるが、自動車のフロントガラスやサイドガラス等を経て車内に差し込む紫外線による劣化や、夏季の高温環境の屋外に、長時間自動車が放置された場合には、車室内も高温となることによる熱劣化が大きな劣化要因となることから、紫外線や熱による変色しにくい材料が求められる。
【0004】
また、建物(店舗やホテルや一般家屋等)内においても、表示装置は多く使用されており、そのような車室内や建物内の内装用表示装置の外装に用いられる材料は、視認性を高めるための高透明性、人目に触れるため、良触感や意匠性、ガラス窓等を経て室内に差し込む紫外線による透明性や色相、機械的強度の低下がないことが求められる。
【0005】
特許文献1によると、ポリカーボネート樹脂が自動車の運転席のインストルメントパネルの外装に使用されている。必要に応じて表皮(外装)の表面に光の図形や文字からなる表示体を透かし表示するようにした意匠性の高い内装部品の提案がされており、特許文献2によると、透光性を有するスモーク色のアクリル樹脂を外装に用いた車両用の内装部品、特許文献3によると、透光性ウレタン樹脂を外装に使用した車両用表示装置、特許文献4によると透光性オレフィン系熱可塑性エラストマの使用の例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5301847号公報
【特許文献2】特許第6350332号公報
【特許文献3】特許第4900877号公報
【特許文献4】特許第6677666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、内装用表示装置の外装にポリカーボネート樹脂が使用されているが、ポリカーボネート樹脂のような硬質な材料は、構造部品では有用であるが、外装用フィルムとしては、触感が乏しく、意匠性も限られることが考えられる。
【0008】
特許文献2では、透光性アクリル樹脂が外装に使用されているが、ポリカーボネート樹脂よりも柔軟であるため、良触感が得られるものの、一般的にアクリル樹脂は耐熱性が乏しく、長期間高温下にさらされると大きな熱収縮が生じてしまう。
【0009】
特許文献3では、透光性ウレタン樹脂が外装に使用されているが、ポリカーボネート樹脂よりも柔軟な材料であるため、良触感が得られているものの、アクリル樹脂よりも耐熱性が優れることが考えられるが、構造中にウレタン結合(-N-H-C=O-)を含有しているため、構造起因による光や紫外線による変色が大きいことが考えられる。
【0010】
特許文献4では、透光性オレフィン系熱可塑性エラストマが外装に使用されており、含有されている微分散ゴム成分の影響で柔軟で良触感が得られ、ウレタン結合を有していないため、光や紫外線による変色が小さいと考えられるが、微分散ゴム成分による光の散乱により表示部の不明瞭さが考えられる。また、オレフィン系エラストマの構造上、ウレタン系エラストマやポリエステル系エラストマに比べて、耐熱性が乏しいことが考えられる。
【0011】
そこで、本発明者らは柔軟なポリエステルエラストマ樹脂組成物に着目し、特定のポリエステルエラストマ樹脂組成物からなるフィルムであれば、内装用表示装置の外装用フィルムに好ましく使用できるのではないかと考え、鋭意努力を重ねた。
【0012】
本発明の目的は、内装用表示装置の外装用フィルムに好適な、柔軟で、優れた透明性を保ちつつ、紫外線や熱への耐変色性に優れたポリエステルエラストマ樹脂組成物からなるフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a)10~50質量%と、脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメント(b)90~50質量%とを含むポリエステルブロック共重合体(A)、前記ポリエステルブロック共重合体(A)100質量部に対して、炭素数10以上20以下の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(B)0.01~3質量部、側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン共重合体(C)0.2~20質量部、炭素、水素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル補足剤(D)0.05質量部以上1.0質量部以下および過酸化物分解剤(E)0.05~1.0質量部を含有したポリエステルエラストマ樹脂組成物からなり、前記ポリエステルエラストマ樹脂組成物は、厚さ2mmのシートで測定した全光線透過率が5%以上、ヘイズ値(曇度)が95%以下で、JIS K7215に準拠する表面硬度が20~50Dであることを特徴とする内装用表示装置の外装用フィルム。
(2)前記ポリエステルエラストマ樹脂組成物が前記ポリエステルブロック共重合体(A)100質量部に対して、紫外線吸収剤(F)0.05~2.5質量部およびヒンダードアミン系化合物(G)0.01~2.5質量部を含有することを特徴とする(1)記載の内装用表示装置の外装用フィルム。
(3)前記ヒンダードアミン系化合物(G)のアミンの級数は3級であることを特徴とする(1)または(2)記載の内装用表示装置の外装用フィルム。
(4)前記紫外線吸収剤(F)は、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート系化合物からなる群から選ばれる1種類以上であることを特徴とする(2)または(3)記載の内装用表示装置の外装用フィルム。
(5)自動車内装用であることを特徴とする(1)~(4)いずれか記載の内装用表示装置の外装用フィルム。
(6)インストルメントパネルや表皮に使用されることを特徴とする(1)~(5)いずれか記載の内装用表示装置の外装用フィルム。
【発明の効果】
【0014】
内装用表示装置に好適な、柔軟で、優れた透明性を保ちつつ、紫外線や熱への耐変色性に優れたポリエステルエラストマ樹脂組成物からなる外装用フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の内装用表示装置の外装用フィルムはポリエステルエラストマ樹脂組成物からなる。本発明の内装用表示装置の外装用フィルムに用いられるポリエステルエラストマ樹脂組成物は、2mm厚さのシートで測定した全光線透過率が5%以上、ヘイズ値(曇度)が95%以下で、JIS K7215に準拠する表面硬度が20~50Dである。後述のとおり、全光線透過率とヘイズ値(曇度)はASTM D1003に従い測定する。表面硬度は上述のとおりJIS K7215に準拠して測定する。
【0016】
2mm厚さのシートで測定した全光線透過率が5%以上で、ヘイズ値(曇度)が95%以下のポリエステルエラストマ樹脂組成物は、目視で透明あるいは半透明なものであり、目視では半透明であるが透光性は有し、印刷物の上にこのシートを置いた場合に文字を十分読むことができるものから、目視で透明であって印刷物の上にこのシートを置いた場合に文字がきわめて明瞭に見えるものまで含まれる。また、光源、印刷物、2mm厚さのシートの順で重ねた場合、光源が未発光時は印刷物が全く見えないが、光源が発光時には印刷物が見えるものまで含まれる。2mm厚さのシートで測定した全光線透過率が5%よりも小さく、ヘイズ値(曇度)が95%より大きいものは不透明で透光性も透明性も有さず、印刷物の上にこのシートを置くと文字は全く読むことができない。また、光源、印刷物、2mm厚さのシートの順で重ねた場合、光源が発光時でも全く見えない。なお、シートで厚さ2mmより大きいものは切創して厚さ2mmに調整し、厚さ2mmより小さいものは重ねて厚さ2mmになるように調節する。
【0017】
2mm厚さのシートで測定したJIS K7215に準拠する表面硬度が20~50Dであるポリエステルエラストマ樹脂組成物は、指で押すと大きく変形するものから、指で押すとやや変形するものまで含まれる。表面硬度が20D未満だと強度不十分であり、表面硬度が50Dよりも大きいと柔軟な感触が得られない。
【0018】
本発明におけるポリエステルエラストマ樹脂組成物は、結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a)10~50質量部と、脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメント(b)90~50質量部とを含むポリエステルブロック共重合体(A)、前記ポリエステルブロック共重合体(A)100質量部に対し、炭素数10以上20以下の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(B)0.01~3質量部、側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン共重合体(C)0.2~20質量部、炭素、水素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル補足剤(D)0.05質量部以上1.0質量部以下および過酸化物分解剤(E)0.05~1.0質量部を含有する。本発明のポリエステルエラストマ樹脂組成物は、紫外線吸収剤(F)0.05~2.5質量部およびヒンダードアミン系化合物(G)0.01~2.5質量部を含有することが好ましい。
【0019】
本発明におけるポリエステルブロック共重合体(A)は、結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a)と、脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメント(b)とを含む。
【0020】
本発明におけるポリエステルブロック共重合体(A)の高融点結晶性重合体セグメント(a)は、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールから形成されるポリエステルであり、好ましくはテレフタル酸および/またはジメチルテレフタレートと1,4-ブタンジオールから誘導されるポリブチレンテレフタレートであるが、この他に、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸、ジフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5-スルホイソフタル酸、あるいはこれらのエステル形成性誘導体などのジカルボン酸成分と、分子量300以下のジオール、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコールなどの脂肪族ジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロールなどの脂環式ジオール、キシリレングリコール、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(2-ヒドロキシ)フェニル]スルホン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシ-p-ターフェニル、4,4’-ジヒドロキシ-p-クオーターフェニルなどの芳香族ジオールなどから誘導されるポリエステル、あるいはこれらのジカルボン酸成分およびジオール成分を2種以上併用した共重合ポリエステルであっても良い。また、3官能以上の多官能カルボン酸成分、多官能オキシ酸成分および多官能ヒドロキシ成分などを5モル%以下の範囲で共重合することも可能である。
【0021】
本発明におけるポリエステルブロック共重合体(A)の低融点重合体セグメント(b)は、脂肪族ポリエーテルおよび/または脂肪族ポリエステルである。脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体などが挙げられる。
【0022】
また、脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが挙げられる。これらの脂肪族ポリエーテルおよび/または脂肪族ポリエステルのなかで得られるポリエステルブロック共重合体の弾性特性からポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが好ましい。また、これらの低融点重合体セグメントの数平均分子量としては共重合された状態において300~6000程度であることが好ましい。
【0023】
本発明におけるポリエステルブロック共重合体(A)における高融点結晶性重合体セグメント(a)の共重合量は10~50質量%、低融点重合体セグメント(b)の共重合量は90~50質量%である。好ましくは、ポリエステルブロック共重合体(A)における高融点結晶性重合体セグメント(a)の共重合量は10~40質量%、低融点重合体セグメント(b)の共重合量は90~60質量%である。高融点結晶性重合体セグメント(a)の共重合量が10質量%未満であると、結晶性が不十分となり成形性や耐熱性が悪くなる。一方、高融点結晶性重合体セグメント(a)の共重合量が50質量%を越えると、本発明の目的とする透明性が十分に発現しない。
【0024】
本発明におけるポリエステルブロック共重合体(A)は公知の方法で製造することができる。例えば、ジカルボン酸の低級アルコールジエステル、過剰量の低分子量グリコール、および低融点重合体セグメント成分を触媒の存在下エステル交換反応せしめ、得られる反応生成物を重縮合する方法。あるいはジカルボン酸と過剰量のグリコールおよび低融点重合体セグメント成分を触媒の存在下エステル化反応せしめ、得られる反応生成物を重縮合する方法。また、あらかじめ高融点結晶性セグメントを作っておき、これに低融点セグメント成分を添加してエステル交換反応によりランダム化せしめる方法。高融点結晶性セグメントと低融点重合体セグメントを鎖連結剤でつなぐ方法。さらにポリ(ε-カプロラクトン)を低融点重合体セグメントに用いる場合は、高融点結晶性セグメントにε-カプロラクトンモノマを付加反応させるなど、いずれの方法をとってもよい。
【0025】
本発明におけるポリエステルエラストマ樹脂組成物は、炭素数10以上20以下の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(B)0.01~3質量部を含有する。好ましくは、炭素数10以上18以下であり、さらに好ましくは炭素数10以上15以下である。脂肪族カルボン酸とは、直鎖または分岐した脂肪族基にカルボキシル基が付いた化合物であり、結合の一部に、不飽和基、脂環族基、芳香族基あるいは水酸基、リン酸エステル基などのその他の置換基を有していても良い。脂肪族カルボン酸としては、カプリン酸(炭素数10)、ウンデシル酸(炭素数11)、ラウリン酸(炭素数12)、トリデシル酸(炭素数13)、ミスチリン酸(炭素数14)、ペンタデシル酸(炭素数15)、パルミチン酸(炭素数16)、マルガリン酸(炭素数17)、ステアリン酸(炭素数18)、ツベルクロステアリン酸(炭素数19)、アラキジン酸(炭素数20)などが挙げられ、中でも、カプリン酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、トリデシル酸、ミスチリン酸、ペンタデシル酸が好ましい。アルカリ金属塩の中では、ナトリウム塩がポリエステルエラストマに対する溶解性、良結晶核形成性の点で好ましい。また、炭素数10以上20以下の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(B)は1種類または2種類以上併用しても良い。
【0026】
炭素数10以上20以下の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(B)は、融解性、ポリエーテルエステルブロック共重合体との相溶性、ブリードアウトの観点より、炭素数10以上20以下の脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩である。炭素数9以下の脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩は、少量の配合で透明性を向上させることができる点で好ましいが、炭素鎖が短いためブリードアウトを引き起こしてしまう。一方、炭素数が20より大きい脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩は、炭素鎖が長いためブリードアウトを抑制し、ポリエーテルエステルブロック共重合体の結晶性を阻害して透明性を向上させる点で好ましいが、十分な透明性を得るためには大量の添加が必要であり、大量の添加ではブリードアウトが生じてしまう。
【0027】
炭素数10以上20以下の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(B)の配合量は、ポリエステルブロック共重合体(A)100質量部に対して、0.01~3質量部であることが好ましい。炭素数10以上20以下の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(B)の添加量は、より好ましくは0.05~2質量部、さらに好ましくは0.1~1質量部である。
【0028】
炭素数10以上20以下の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(B)の配合量が3質量部を超えると加工時に発生するガスが多くなり、成形性に影響がでる場合があると考えられる。
【0029】
本発明におけるポリエステルエラストマ樹脂組成物は側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン共重合体(C)を含有する。側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン系共重合体(C)は、エチレンとアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸などのエチレン系不飽和カルボン酸との共重合体を、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、亜鉛イオンなどで中和したもので、これらは、例えばデュポン社から”サーリン”または三井・ダウポリケミカル社から”ハイミラン”として市販されているものである。中でもナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属イオンで中和したものが好ましい。
【0030】
これらの側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン系共重合体(C)は、ポリエステルブロック共重合体(A)100質量部に対して0.2質量部以上20質量部以下である。好ましくは、0.5~15質量部、特に好ましくは1~10質量部配合する。
【0031】
側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン系共重合体(C)の配合量が0.2質量部未満では、透光性や透明性が不十分であり、20質量部以上では相分離が起こり、機械的な物性と透光性や透明性、成形時の金型との離形成が低下すると考えられる。
【0032】
本発明におけるポリエステルエラストマ樹脂組成物は、炭素、水素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル捕捉剤(D)および過酸化物分解剤(E)を含有する。炭素、水素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル補足剤(D)および過酸化物分解剤(E)は、ポリエステルエラストマ樹脂組成物の熱による変色を抑制する酸化防止剤として使用する。また、炭素、水素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル補足剤(D)および過酸化物分解剤(E)は核剤として働くため、炭素数10以上20以下の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(B)および側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン系共重合体(C)と併用することで透明性が向上する。
【0033】
炭素、水素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル補足剤(D)の配合量は、ポリエステルブロック共重合体(A)100質量部に対して、0.05質量部以上1.0質量部以下である。好ましくは0.05~0.50質量部、さらに好ましくは0.05~0.25質量部、最も好ましくは0.05~0.15質量部である。
【0034】
過酸化物分解剤(E)の配合量は、ポリエステルブロック共重合体(A)100質量部に対して、0.05質量部~1.0質量部である。好ましくは0.05~0.75質量部、さらに好ましくは0.05~0.50質量部、最も好ましくは0.05~0.30質量部である。
【0035】
炭素、水素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル補足剤(D)および過酸化物分解剤(E)の配合量は、炭素、水素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル補足剤(D)および過酸化物分解剤(E)の配合量が0.05質量部未満では熱劣化防止効果に乏しい。炭素、水素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル補足剤(D)および過酸化物分解剤(E)の配合量が1.0質量部を超えると、ブリードアウトや熱による変色および初期色調、外観に問題が生じる。
【0036】
炭素、水素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル捕捉剤(D)は、重合時に加えるのが好ましいが、重合後のポリエステルブロック共重合体に加えても良い。
【0037】
本発明における樹脂組成物の含有する炭素、水素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル捕捉剤(D)および過酸化物分解剤(E)以外の酸化防止剤を含んでいても構わないが、炭素、水素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル捕捉剤(D)および過酸化物分解剤(E)のみ含有されることが好ましい。
【0038】
炭素、水素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル補足剤(D)としては、例えば、テトラキス〔メチレン-3(3’,5’-ジ-t-4’-ヒドロキシフェノール)プロピオネート〕メタン、2,4,6-トリス(3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシベンジル)メシチレン、1,1,3-トリ(4-ヒドロキシ-2-メチル-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,1-ビス(3-t-ブチル-6-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ブタン、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-ベンゼンプロパノイック酸、ペンタエリトリトールテトラキス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸オクタデシル、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジイソプロピルフェニル)プロピオン酸オクチル2,4-ジメチル-6(-1-メチルペンタデシル)フェノール、ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルベンゼンプロパン酸)エチレンビス(オキシエチレン)、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,4’,4’’-(1-メチルプロパニル-3-インデン)トリス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、6,6’-ジ-t-ブチル-4,4’-ブチリデンジ-m-クレゾール、オクタデシル3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]等が挙げられる。
【0039】
過酸化物分解剤(E)としては、リン系過酸化物分解剤および硫黄系過酸化物分解剤が好ましい。リン系過酸化物分解剤の中には、吸湿性を有する過酸化物分解剤もあるため、取り扱いの観点では、硫黄系酸化防止剤がより好ましい。
【0040】
リン系過酸化物分解剤としては、3,9-ビス(p-ノニルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジフォスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(オクタデシロキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジフォスファスピロ[5.5]ウンデカン、トリ(モノノニルフェニル)フォスファイト、トリフェノキシフォスフィン、イソデシルフォスファイト、ビス[2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、ジエチル[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォネート、トリスノニルフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)フォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(トリデシル)フォスファイト、トリオレイルフォスファイト、ジフェニルモノ(2-エチルヘキシル)フォスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ジエチルハイドロゲンホスファイト、ビス(2-エチルヘキシル)ハイドロゲンフォスファイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジオレイルハイドロゲンホスファイト、ジフェニルハイドロゲンホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、テトラ(C12~C15アルキル)-4,4’-イソプロピリデンジフェニルホスファイト、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、トリイソデシルフォスファイト、トリオクタデシルホスファイト、テトラフェニルテトラトリデシルペンタエリスリトールテトラフォスファイト、ジエチルエステルオブ3,5-ジ-tert-ブチル-4-ハイドロキシベンジルホスホリックアッシド、フェニルジイソデシルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニル(トリデシル)ホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、トリス(4-フェニルフェノール)ホスファイト、ジフェニルノニルフェニルホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ジノニルフェニルホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト、ビス[2-t-ブチル-6-メチル-4-{2-(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、トリフェニルホスファイト、10-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-デシロキシ-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイトが挙げられる。
【0041】
硫黄系過酸化物分解剤としては、ジラウリルチオプロピオネート、ジステアリルテオジプロピオネート、ラウリルスステアリルテオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジオクタデシル3,3’-チオジプロピオネート、ジオクタデシル3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリルル-3,3’-チオジプロピオネートジラウリル-3,3-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジミシスチルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジステアリル-β,β’-チオジブチレート、3,3’チオジプロピオン酸、ペンタエリスリトールテトラ(β-ラウリルチオプロピオン酸エステル)、ビス[3,3’-ビス(4’ハイドロキシ-3’-tert-ブチルフェニル)ブチリックアッシド]グリコールエステル、チオジエチレン-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートがあげられる。
【0042】
本発明におけるポリエステルエラストマ樹脂組成物は、紫外線吸収剤(F)およびヒンダードアミン系化合物(G)を含有しても良い。紫外線吸収剤(F)は、紫外領域に吸収をもつ物質で、紫外線が高分子鎖に作用するよりも前に、紫外線吸収剤自身が紫外線を吸収し、熱等の無害なものに変換し、高分子鎖自身の劣化を防ぐ役割として使用する。ヒンダードアミン系化合物(G)は、紫外線によって生じたラジカルを補足する役割として使用する。ヒンダードアミン系化合物(G)は、好ましくはアミンの級数が3級である。アミンの級数が1級あるいは2級の場合、耐候性は改善されるものの、熱による変色が生じてしまう可能性がある。
【0043】
紫外線吸収剤(F)とヒンダードアミン系化合物(G)は光による変色を抑制する機構が異なるため、組み合わせることで、相乗効果が生じる。また、紫外線吸収剤(F)およびヒンダードアミン系化合物(G)の添加は核剤として働くため、炭素数10以上20以下の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(B)および側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン系共重合体(C)と併用することで透明性が向上する。
【0044】
例えば、本発明におけるポリエステルエラストマ樹脂組成物に配合することができる紫外線吸収剤(F)として、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、p-t-ブチルフェニルサリシレート、2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-アミル-フェニル)ベンゾトリアゾール、2-〔2’-ヒドロキシ-3’、5’-ビス(α,α-ジメチルベンジルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンアゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,5-ビス-〔5’-t-ブチルベンゾキサゾリル-(2)〕-チオフェン、2-〔2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル〕-2H-ベンゾトリアゾール、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシ-4-i-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクタデシルオキシベンゾフェノン、サリチル酸フェニルなどを挙げることができる。
【0045】
紫外線吸収剤(F)は、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート系化合物からなる群から選ばれる1種類以上であることが好ましい。中でも、外観性を向上させるには、可視光領域波長である360mm以上の波長領域に吸光度が少ない紫外線吸収剤が好ましい。
【0046】
ヒンダードアミン系化合物(G)として、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールの重合物、ビス(2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、1-〔2-〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル〕-4-〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、セバシン酸モノ(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、コハク酸ジメチル・1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチル-マロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6,-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、2-〔〔3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル〕メチル〕-2-ブチルプロパン二酸ビス〔1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル〕などを挙げることができる。
【0047】
ヒンダードアミン系化合物(G)の中でも、アミンの級数が3級であることが好ましい。最も好ましくは、窒素原子に結合している原子が全て炭素原子である構造である。
【0048】
紫外線吸収剤(F)およびヒンダードアミン系化合物(G)の配合量は、ポリエステルブロック共重合体(A)100質量部に対して、それぞれ0.1~2.5質量部が好ましい。より好ましくは、0.1~2.0質量部、特に好ましくは0.1~1.0質量部である。
【0049】
本発明におけるポリエステルエラストマ樹脂組成物は、紫外線吸収剤(F)およびヒンダードアミン系化合物(G)以外の光安定剤を含んでいても構わないが、紫外線吸収剤(F)およびヒンダードアミン系化合物(G)のみ含有されることが好ましい。
【0050】
本発明におけるポリエステルエラストマ樹脂組成物は、着色剤(H)を含有しても良い。着色剤(H)は、顔料及び染料をいずれも用いることができる。中でも耐久性、耐候性の観点から、顔料が好ましい。顔料には特に制限はなく、所望の色相を達成するため、従来公知の種々の無機顔料、有機顔料等の1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。顔料としては、カーボンブラック、チタンブラック、群青、有機金属塩、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、金属シュウ酸化物、及び金属炭酸化物、二酸化チタン等の無機顔料及び有機顔料が挙げられる。
【0051】
有機顔料、無機顔料等の粒子径としては、発色性、隠蔽性及びハンドリング性の観点からは、平均一次粒子径が10nm~100μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは、10nm~50μmである。10nm未満だと取扱い性が困難になり、100μm以上だとシートにした場合凹凸が大きくなりヘイズ値が上昇してしまう恐れがある。
【0052】
顔料の平均一次粒子径は、走査型顕微鏡(SEM)、又は透過型顕微鏡(TEM)で観察し、粒子が凝集していない部分で粒子サイズを100個計測し、平均値を算出することによって求めることができる。
【0053】
有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー11,24,108,109,110,138,139,150,151,154,167,180,185,C.I.ピグメントオレンジ36,71,C.I.ピグメントレッド122,150,171,175,177,209,224,242,254,255,264,C.I.ピグメントバイオレット19,23,32,C.I.ピグメントブルー15:1,15:3,15:6,16,22,60,66,C.I.ピグメントブラウン25,28,C.I.ピグメントグリーン7,36,37,C.I.ピグメントブラック1等が挙げられる。
【0054】
金属酸化物としては、酸化物を形成する金属として、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、鉄、チタン、珪素、アンチモン、錫、銅、マンガン、コバルト、バナジウム、ビスマス、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、タングステン、パラジウム、銀、白金等が挙げられる。更に、複合金属酸化物としてITO(酸化インジウムスズ)、ATO(三酸化アンチモン)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)等が挙げられる。
【0055】
顔料の分散性を向上させるために、顔料分散剤、展着剤等適宜配合しても良い。
着色剤(H)を配合する場合、配合量としてはポリエステルブロック共重合体(A)100質量部に対して、1.5質量部未満が好ましく、好ましくは1.0質量部未満が好ましい。1.5質量部以上だとヘイズ値が大きくなり、不透明になることが考えられる。
【0056】
本発明におけるポリエステルエラストマ樹脂組成物には、その他各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、本発明におけるポリエーテルエステルブロック共重合体(A)や炭素数10以上20以下の脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩(B)、側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン系共重合体(C)、炭素、水素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル補足剤(D)、過酸化物分解剤(E)、着色剤(H)以外、難燃剤、無機フィラー、安定剤、及び老化防止剤をポリエステルブロック共重合体への添加剤として広く用いられているものを、本発明の特徴(厚さ2mmのシートで測定した全光線透過率が5%以上、ヘイズ値(曇度)が95%以下で、JIS K7215に準拠する表面硬度が20~50D)を損なわない範囲で添加することができる。
【0057】
また、その他の添加剤として、着色顔料、無機、有機系の充填剤、カップリング剤、タック性向上剤、クエンチャー、金属不活性化剤等の安定剤、多官能グリシジル基含有スチレン系ポリマ等を添加することもできる。あるいは、熱安定剤、光安定剤、架橋剤、分散剤、滑材、アンチスリップ剤、核剤、発泡剤、抗菌剤、消臭剤、吸着剤、導電剤、難燃剤なども含有しても良い。
【0058】
本発明におけるポリエステルエラストマ樹脂組成物は、ポリエーテルエステルブロック共重合体(A)、炭素数10以上20以下の脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩(B)、側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン系共重合体(C)、炭素、水素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル補足剤(D)、過酸化物分解剤(E)および着色剤(H)の合計で、80質量%以上を占めることが好ましい。(A)、(B)、(C)、(D)、(E)あるいは(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)あるいは(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(H)あるいは(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)、(H)の合計で、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。
【0059】
本発明のポリエステルエラストマ樹脂組成物の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステルブロック共重合体、炭素数10以上20以下の脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩、側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン系共重合体、炭素、水素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル補足剤、過酸化物分解剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物と他の添加物を一緒に配合した原料をスクリュー型押出機に供給し溶融混練する方法、またスクリュー型押出機に、まずポリエステルブロック共重合体を供給して溶融し、さらに他の供給口より、炭素数10以上20以下の脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩、側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン系共重合体、炭素、水素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル補足剤、過酸化物分解剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物と他の添加物を供給混練する方法など、適宜採用することができる。
【0060】
本発明のフィルムは、ポリエステルエラストマ樹脂組成物からなり、厚さ2mmのシートを用いた全光線透過率は5%以上である。好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは60%以上である。なお、全光透線過率は先述の通り、炭素数10以上20以下の脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩(B)、側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン系共重合体(C)、着色剤(H)を本発明の範囲で適宜配合することで、所望の全光線透過率を適宜選択できる。
【0061】
本発明のフィルムは、ポリエステルエラストマ樹脂組成物からなり、厚さ2mmのシートを用いたヘイズ値は95%以下である。好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下、さらに好ましくは30%以下である。なお、ヘイズ値は先述の通り、炭素数10以上20以下の脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩(B)、側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン系共重合体(C)、着色剤(H)を本発明の範囲で適宜配合することで、所望のヘイズ値を適宜選択できる。
【0062】
本発明のフィルムは、ポリエステルエラストマ樹脂組成物からなり、厚さ2mmのシートを用いて後述の熱変色性試験(110℃で250時間熱処理)を行った際の色差ΔEが10以下であることが好ましい。さらに好ましくは、色差ΔEが8以下であり、最も好ましくは色差ΔEが5以下である。後述の熱変色性試験(110℃で250時間熱処理)を行った際の色差ΔEが10以上であると、高温環境下で長期間使用した際に、外観に影響が生じることが考えられる。
【0063】
本発明のフィルムは、ポリエステルエラストマ樹脂組成物からなり、厚さ2mmのシートを用いて、後述の耐候性試験(ブラックパネル温度:63℃、雨なし、照度:255w/m2で150時間処理)を行った際の色差ΔEが10以下であることが好ましい。さらに、好ましくは、色差ΔEが8以下であり、最も好ましくは色差ΔEが5以下である。色差ΔEが10以上であると、紫外線を含む過酷な環境下で、長時間使用した際に、外観に影響が生じると考えられる。
【0064】
表示素子の非発光時の視認性を下げる場合、本発明のフィルムに前述の通り着色剤(H)を含有させる方法や本発明のフィルムの表面または表面にスモーク印刷層やマスク印刷層を設ける方法、ポリエステルエラストマと所定の顔料をスラッシュ成形により均一な膜厚のフィルムを作製する方法等が挙げられるが、公知のいずれの方法でも良い。外装フィルムの透過性を下げることで、表示素子非発光時は外装フィルムによって、表示素子を隠すことができ、外装フィルムを際立たせることができる。
【0065】
本発明のフィルムは、ポリエステルエラストマ樹脂組成物からなり、内装用表示装置の外装用フィルムである。本発明における内装用とは、太陽光や風雨に直接さらされることのない、しかしガラス越しには強い紫外線にさらされることが想定される環境下に設けられるものである。具体的には、建物(店舗やホテルや一般家屋等)内や自動車の車室内等の環境下である。
【0066】
本発明の表示装置とは、光源を含む表示素子と、表示素子と重なるように配置されるフィルムを有するものであり、表示素子に用いられる光源は、特に限定されるものではないが、バックライトを有する液晶素子やエレクトロルミネセンス素子やLED等を含む、従来から公知の構成であってよい。
【0067】
本発明における外装用フィルムとは、表示素子の外から見える部分を装飾・保護するものであり、人が触れうるフィルムを意味する。
【0068】
本発明における内装用表示装置は、自動車内装用であることが好ましく、主にフロントガラスやサイドガラス回りに使用される。本発明の内装用表示装置は、例えば、インストルメントパネルや表皮等に使用され、インストルメントパネルに使用されることが好ましい。インストルメントパネル部分としては、例えば、スピードメーターやタコメーターなどのメータパネル、カーナビゲーションシステムなどのナビゲーションパネル、オーバヘッドコントロールパネルなどのコントロールパネルである。表皮としては、ドアトリム、フロントパネル、グローブボックスパネル、シフターパネルなどである。
【0069】
本発明のフィルムの製造方法は、特に限定されるものではないが、射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形、圧縮成形、インモールド成形等の公知の方法であって良い。押出成形には、溶融流延法、Tダイ法、インフレーション法等が挙げられる。
【0070】
本発明のフィルムは、柔軟性を付与させるために、厚みとしては50μm以上2mm以下が好ましく、100μ以上1mm以下がさらに好ましい。表面状態としては、平滑または凹凸形状(凹凸を有する形状の場合には、幾何学形状や皮革様の形状を取っていてもよい。その中でも特に好ましくは200μm以上500μm以下の大きな凹凸の中に、1μm以上10μm以下の微細な凹凸が形成されたシボ形状である。)
凹凸の付け方としては、特に限定されるものではないが、インプリント転写法や樹脂塗布法等の公知の方法であってよい。
【0071】
本発明のフィルムは、柔軟性を損なわない範囲で、耐摩耗性および耐傷付き性の向上と、触感や光沢調整、殺菌や消臭、導電性や難燃性向上のために、コーティングや添加剤の添加もして良く、表面にコート剤を薄く(数μmから数十μmの厚さに)塗布しても良い。目的に応じて本発明のフィルムの主要部分をなす層に添加する代わりに、表面フィルムの表面に位置するコーティング(コート剤)に添加したり、フィルムの裏面に位置する粘着層や積層体層に添加したりしてもよい。
【0072】
さらに、本発明のフィルムによると、優れた耐久性を実現することができる。すなわち、ポリエステルエラストマからなるフィルムであるため、耐熱性、耐光性、耐薬品性、耐油性、耐屈曲疲労特性などに優れる。耐熱性や耐候性が優れるため、使用する雰囲気の制限を受けにくく、高温下の室内や車室内で使用可能である。耐薬品性や耐油性も優れるので、手指の脂が付着した手での操作や、機械油等が付着する環境で使用しても劣化しにくいため、例えばタッチパネル、透光表皮等に使用できる。また、耐屈曲疲労特性が優れるので、次世代のフレキシブルな表示装置やフレキシブルモジュールにも対応可能である。
【0073】
本発明のフィルムは、表示装置の構成に合わせて、厚みが必要な場合は一部をポリエステルエラストマや他の熱可塑性エラストマ、透明性の高いその他の部材(基材)と構成してもよい。その際のポリエステルエラストマ層の厚さは、好ましくは10~300μm以下、より好ましくは、20~100μmである。このポリエステルエラストマ層と前述した透明性の高い基材とが積層されて多層構造のフィルムが構成され、透明性の高い基材によって、フィルムの強度の低下が防止される。透明性の高い基材としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリルなどからなるフィルムやシートや板が挙げられる。表面が薄いポリエステルエラストマであることにより、高級感のある外観と触感と明瞭性とのバランスに優れ、裏面が透明材料であることにより表示装置からの発光を妨げることが少なく、全体としての強度にも優れるフィルムとなる。
【0074】
本発明のフィルムは、多層構造であってもよく、ポリエステルエラストマ等からなるフィルムと積層されてそれを支持する基材は、圧電フィルム、ミラーフィルム、導電性フィルム、金属蒸着膜、回路パターンを有するフィルム、タッチパネル等であってよい。フィルムの外観は、前述したようなレザー状に限られず、木目調、壁紙調、メタル調、石目調、タイル調などであってもよい。
【0075】
また、本発明のフィルムは、成形性や熱融着性に優れているという利点をさらに有している。例えば、本発明のフィルムはポリエステルエラストマであるため、表面に配置されているガラスや樹脂ガラスと密着性が優れており、特に熱接着性や曲面追従に優れている。すなわち、本発明のフィルムは、任意の表示素子に隙間なく強固に密着するため、所望の形状の表示装置を形成することが容易にできる。この観点では、表面フィルムは熱可塑性を有する材料から形成されることが好ましい。また、優れた熱融着性を有しているが、さらに密着性を向上させるために、接着剤を使用してもよい。
【実施例0076】
以下に実施例によって本発明の効果を説明する。なお、実施例中の%および部とは、断りのない場合すべて質量基準である。また、実施例中に示される物性は次のように測定した。
【0077】
・融点
差動走査熱量計(TAインスツルメント社製DSC Q1000)を使用して、窒素ガス雰囲気下、10℃/分の昇温速度で加熱した時の融解ピークの頂上温度を測定した。
【0078】
・表面硬度(ショアDスケ-ル)
JIS K-7215に従って測定した。
【0079】
・成形性
日精樹脂工業社製の電気式射出成型機(NEX-1000)を用いて、220℃(金型温度:40℃)の条件で、125mm×75mm、厚さ2mmの試験片を作製する際に、成形性を確認した。成形性としては、下記に示す通り、離形成および発生ガス量で判断した。
離形性
○:離型性に問題なし、△:離型性にやや問題あり、×:離形性に問題あり
発生ガス量
○:少ない、×:多い。
【0080】
・全光線透過率およびヘイズ値
日精樹脂工業社製の電気式射出成型機(NEX-1000)を用いて、220℃(金型温度:40℃)の条件で、125mm×75mm、厚さ2mmの試験片を作製した。試験片の表面粗さは、KEYENCE社製VK-9700を用いて測定したところ、0.46μmであった。その試験片を用いて、ASTM D1003に従い、東洋精機製作所社製DIRECT READING HAZEMETERを用いて全光線透過率およびヘイズ値を測定した。
【0081】
・透光性評価
下から順に、LED光源、紙、前述の試験片(125mm×75mm、厚さ2mm)を重ねた。透光性としては、LEDの光源のON、OFFで紙に印字されている文字が読めるか下記に示す通りで判断した。
〇:LED光源ONの状態で、文字が明瞭に読める。
△:LED光源ONの状態で、文字が読める。
×:LED光源ONの状態で、文字が読めない。
【0082】
・色味変化(色差ΔE)測定
日精樹脂工業社製の電気式射出成型機(NEX-1000)を用いて、220℃(金型温度:40℃)の条件で、125mm×75mm、厚さ2mmの試験片を作製した。その試験片を用いて、JIS Z8722に従い、スガ試験機社製のSM-Tカラーメーター(光源:C、視野角:2度視野)を用いて、白色板で押さえて、L*、a*、b*を測定した。後述の熱変性試験や耐候性試験の前後で、L*、a*、b*を測定し、色差ΔEを算出した。
ΔEの算出式は、ΔE=〔(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2〕1/2である。
【0083】
・熱変色性試験
先に示した条件で作製した125mm×75mm、厚さ2mmの試験片を、エスペック社製GPH(H)-202型ギアオーブンを用いて、110℃で250時間熱処理を行い、試験片の色調について目視観察および前記SM-Tカラーメーターで色差ΔEを算出した。
【0084】
・耐候性試験
先に示した条件で作製した125mm×75mm、厚さ2mmの試験片を、スガ試験機社製S80HBサンシャインウェザーメーターを用いて、150時間処理を行い(ブラックパネル温度:63℃、雨なし、照度:255w/m2)、処理後の試験片の色調について目視観察および前記SM-Tカラーメーターで色差ΔEを算出した。
【0085】
参考例
ポリエステルブロック共重合体(A-1)の製造
結晶性芳香族ポリエステルからなる高融点結晶性重合体セグメントとなるテレフタル酸278部、脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメントとなる数平均分子量約1400のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール686部、さらに1,4-ブタンジオール316部、チタンテトラブトキシド0.1部を共にヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、190~225℃で3時間加熱して反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行なった。ポリエステルブロック共重合体成分100質量部に対して“IRGANOX”1330(炭素、水素および酸素からなるBASF社製ヒンダードフェノール系ラジカル補足剤)(D-1)0.1質量部を添加した後、245℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で2時間45分重合を行わせた。得られたポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングを行なってペレットとした。
【0086】
ポリエステルブロック共重合体(A-2)の製造
結晶性芳香族ポリエステルからなる高融点結晶性重合体セグメントとなるテレフタル酸234部、脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメントとなる数平均分子量約2000のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール754部、さらに、1,4-ブタンジオール228部、チタンテトラブトキシド0.2部と共にヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、190~225℃で3時間加熱して反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行なった。ポリエステルブロック共重合体成分100質量部に対して”IRGANOX”1330(IR1330、炭素、水素および酸素からなるBASF社製ヒンダードフェノール系ラジカル補足剤)(D-1)0.5質量部を添加した後、245℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で3時間30分重合を行わせた。得られたポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングを行なってペレットとした。
【0087】
ポリエステルブロック共重合体(A-3)の製造
結晶性芳香族ポリエステルからなる高融点結晶性重合体セグメントとなるテレフタル酸374部、脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメントとなる数平均分子量約1400のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール610部、さらに、1,4-ブタンジオール335部、チタンテトラブトキシド0.2部と共にヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、190~225℃で3時間加熱して反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行なった。ポリエステルブロック共重合体成分100質量部に対して“IRGANOX”1330(炭素、水素および酸素からなるBASF社製ヒンダードフェノール系ラジカル補足剤)(D-1)0.1質量部を添加した後、245℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で2時間45分重合を行わせた。得られたポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングを行なってペレットとした。
【0088】
ポリエステルブロック共重合体(A-4)の製造
結晶性芳香族ポリエステルからなる高融点結晶性重合体セグメントとなるテレフタル酸テレフタル酸374部、脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメントとなる数平均分子量約1400のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール610部、さらに1,4-ブタンジオール335部、チタンテトラブトキシド0.2部と共にヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、190~225℃で3時間加熱して反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行なった。ポリエステルブロック共重合体成分100質量部に対して”IRGANOX”1098(BASF社製2級アミンを含む(炭素、水素および酸素からならない)ヒンダードフェノール系ラジカル補足剤)(D-3)0.05質量部を添加した後、245℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で2時間45分重合を行わせた。得られたポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングを行なってペレットとした。
【0089】
表1にA-1、A-2、A-3、A-4の組成と使用したヒンダードフェノール系ラジカル補足剤の量および物性を示す。
【0090】
【0091】
参考例に示したポリエステルブロック共重合体(A-1)、(A-2)、(A-3)、(A-4)には、重合時に、(D-1)あるいは(D-3)のラジカル補足剤(D)が含有されているが、以下に示す実施例では、重合時に添加したラジカル補足剤(D)を除いたポリエステルブロック共重合成分(A)100質量部に対しての配合比を示している。
【0092】
実施例1~7
参考例で得られたポリエステルブロック共重合体(A-1)、(A-2)、(A-3)に炭素、水素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル補足剤(BASF社製”IRGANOX”1010)(D-2)、炭素数10以上20以下の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(日東化成工業株式会社製NS-3A(ラウリン酸ナトリウム))(B-1)、側鎖にカルボン酸ナトリウム塩基を有するエチレン系共重合体(DuPont社製“サーリン”AD8610)(C-1)あるいは(三井・ダウポリケミカル株式会社製“ハイミラン”1707)(C-2)、リン系過酸化物分解剤(株式会社ADEKA社製“アデカスタブ“PEP-8)(E-1)あるいは硫黄系過酸化物分解剤(第一工業製薬株式会社”ラスミット“LG)(E-2)、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASF社製”Tinuvin”234)(F-1)、トリアジン系紫外線吸収剤(BASF社製”Tinuvin”1557)(F-2)、シアノクレート系紫外線吸収剤(BASF社製”Uvinul”3030)(F-3)、アミンの級数が3級であるヒンダードアミン系化合物(BASF社製”Tinuvin”144)(G-1)、カーボンブラック(三菱化学製#5、平均粒子粒径75nm)(H-1)を表2に示すような配合比率でドライブレンドし、45mmφのシリンダー径を有する二軸押出機を用いて、溶融混練したのちペレット化した。このペレットを80℃で3時間乾燥後、日精樹脂工業社製の電気式射出成型機(NEX-1000)を用いて、220℃(金型温度:40℃)の条件で、125mm×75mm、厚さ2mmの試験片を作製した。得られた厚さ2mmのシートを用いて全光線透過率、ヘイズ値を測定するとともに、ブリードアウトの有無を確認および表面硬度を測定した。さらに、先に示した透光性評価、熱変色性試験および耐候性試験を実施した。結果を表3に示す。
【0093】
なお、表2中の(D-1)および(D-3)は、前述の参考例で示したとおり、ポリエステルブロック共重合体(A)に重合時に含有されているラジカル補足剤(D)を意味する。
【0094】
比較例1~3
参考例で得られたポリエステルブロック共重合体(A-1)あるいは(A-4)に、炭素数10以上20以下の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(日東化成工業株式会社製NS-3A(ラウリン酸ナトリウム))(B-1)および(日東化成工業株式会社製ナトリウムステアレート(ステアリン酸ナトリウム))(B-2)、側鎖にカルボン酸ナトリウム塩基を有するエチレン系共重合体(DuPont社製“サーリン”AD8610)(C-1)あるいは(三井・ダウポリケミカル株式会社製“ハイミラン”1707)(C-2)、リン系過酸化物分解剤(株式会社ADEKA社製“アデカスタブ“PEP-8)(E-1)あるいは硫黄系過酸化物分解剤(第一工業製薬株式会社”ラスミット“LG)(E-2)、トリアジン系紫外線吸収剤(BASF社製”Tinuvin”1557)(F-2)、ヒンダードアミン系化合物(BASF社製”Tinuvin”144)(G-1)、カーボンブラック(三菱化学製#5、平均粒子粒径75nm)(H-1)を表2に示すような配合比率でドライブレンドし、45mmφのシリンダー径を有する二軸押出機を用いて、溶融混練したのちペレット化した。このペレットを80℃で3時間乾燥後、日精樹脂工業社製の電気式射出成型機(NEX-1000)を用いて、220℃(金型温度:40℃)の条件で、125mm×75mm、厚さ2mmの試験片を作製した。得られた厚さ2mmのシートを用いて全光線透過率、ヘイズ値を測定するとともに、ブリードアウトの有無を確認および表面硬度を測定した。さらに、先に示した透光性評価、熱変色性試験および耐候性試験を実施した。結果を表3に示す。
【0095】
【0096】
【0097】
表2、3の実施例1~7から明らかなように結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a)10~50質量%と、脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメント(b)90~50質量%とを含むポリエステルブロック共重合体(A)に、炭素数10以上20以下の脂肪族カルボン酸金属塩(B)および側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン共重合体(C)、炭素、水素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル捕捉剤(D)と過酸化物分解剤(E)とを本発明の範囲内で配合した樹脂組成物、そしてさらに紫外線吸収剤(F)やヒンダードアミン系化合物(G)、着色剤(H)を好適な範囲内で配合した樹脂組成物は透明性、外観、耐熱変色性、耐候特性に優れる。
【0098】
比較例1より、ポリエステルブロック共重合体(A)に炭素、水素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル補足剤(D)の代わりに2級アミンを含有するヒンダードフェノール系ラジカル補足剤(D-3)を少量でも含有すると、大きな熱変色がみられた。また、比較例2より、ポリエステルブロック共重合体(A)100質量部に対して、炭素数10以上20以下の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(B)を3質量部を超えて4質量部含有するとブリードアウトが見られた。また、成形時は発生ガスが多かった。また、比較例3より、ポリエステルブロック共重合体(A)100質量部に対して、着色剤(H)を1.5質量部以上配合すると、全光線透過率が0%、ヘイズが0%であり、透明性の大きな低下が見られた。
本発明のフィルムは、内装用表示装置の外装用フィルム用途で使用される従来の透光性を有するフィルムと比べて、柔軟かつ透光性、光や熱による耐変色性が優れるため、高い意匠性の求められる内装用途、特に自動車内装用途に使用される。