(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092473
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】体位変更補助システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61G 7/057 20060101AFI20230626BHJP
A47C 27/10 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
A61G7/057
A47C27/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193980
(22)【出願日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2021207041
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521557768
【氏名又は名称】有限会社アイム・エイム
(74)【代理人】
【識別番号】100146020
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 善光
(74)【代理人】
【識別番号】100062328
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 剛啓
(72)【発明者】
【氏名】木村 茂正
(72)【発明者】
【氏名】中島 勝幸
(72)【発明者】
【氏名】石井 和之
【テーマコード(参考)】
3B096
4C040
【Fターム(参考)】
3B096AB01
4C040AA01
4C040AA03
4C040CC04
4C040EE05
(57)【要約】
【課題】ベッド等に寝たきりの筋力が衰えた患者が自分の意思で身体の変えたい部位を自分ですることができる体位変更補助システム及びプログラムを提供することを課題とする。
【解決手段】患者が動かしたい身体の部位の下に置いた複数の空気袋と、複数の空気袋それぞれの給気側流路に設けた常時閉式の給気側電磁弁と、複数の空気袋それぞれの排気側流路に設けた常時閉式の排気側電磁弁と、すべての給気側電磁弁と接続された空気を圧送する空気ポンプと、給気側電磁弁、排気側電磁弁及び空気ポンプをオンオフ制御する作動指示手段と、を備え、患者により作動指示手段から選択された空気袋の給気指示が出された間のみ空気ポンプと選択された空気袋の給気側電磁弁を開にする制御をし、患者により作動指示手段から選択された空気袋の排気指示が出された間のみ選択された空気袋の排気側電磁弁を開にする制御をする体位変更補助システムにより課題解決ができた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋肉が衰え寝たきりの患者が自分の意思で体位の変更を可能にする体位変更補助システムであって、
前記患者が動かしたい身体の複数の部位の下に置いた複数の空気袋と、
複数の前記空気袋それぞれと給気側流路で接続された、前記空気袋に空気を圧送する1つの空気ポンプと、
複数の前記空気袋それぞれの前記給気側流路に設けた常時閉式の給気側電磁弁と、
複数の前記空気袋それぞれの排気側流路に設けた常時閉式の排気側電磁弁と、
複数の前記給気側電磁弁を個別に、複数の前記排気側電磁弁を個別に、及び、1つの前記空気ポンプをオンオフ制御する作動指示手段と、を備え、
前記作業指示手段が、
前記患者により選択された空気袋の給気指示を受けた間のみ前記空気ポンプを作動させ、かつ前記選択された空気袋の給気側電磁弁を開にする制御をし、
前記患者により選択された空気袋の排気指示を受けた間のみ前記選択された空気袋の排気側電磁弁を開にする制御をすることを特徴とする体位変更補助システム。
【請求項2】
前記作動指示手段が、
複数の前記給気側電磁弁を個別に、複数の前記排気側電磁弁を個別に、及び、1つの前記空気ポンプを、身体の動きによりオンオフする導通スイッチ手段を備えた導通スイッチ直接制御型、あるいは、
身体の動きによりオンオフ信号を出力するスイッチ手段、及び/又は、視線によりオンオフ信号を出力する視線検出手段と、
前記スイッチ手段及び前記視線検出手段と接続された、前記空気袋の選択、給気指示、及び、排気指示の釦画像を表示する表示画面を有し、体位変更補助アプリケーションがインストールされた患者用情報端末と、
前記患者用情報端末と接続され、並びに、複数の前記給気側電磁弁と個別に、複数の前記排気側電磁弁と個別に、及び、1つの前記空気ポンプと接続され、前記患者用情報端末からの作動指示信号に従って前記空気ポンプ、前記給気側電磁弁又は前記排気側電磁弁をオンオフするスイッチ回路を備えた制御装置と、を備えたアプリ使用型であることを特徴とする請求項1に記載の体位変更補助システム。
【請求項3】
前記表示画面が、
複数の前記空気袋の位置を表示した空気袋位置釦画像、前記空気袋の給気指示情報を出す給気釦画像、及び、前記空気袋の排気指示情報を出す排気釦画像が表示された釦表示画面、あるいは、
空気袋識別表示と給気表示、又は、空気袋識別表示と排気表示をした空気袋作動指示釦画像をすべての前記空気袋について碁盤目状に表示された碁盤目状表示画面であることを特徴とする請求項2に記載の体位変更補助システム。
【請求項4】
前記作動指示手段が、前記アプリ使用型で前記碁盤目状表示画面を有し前記視線検出手段により作動指示する形態の場合、
前記患者用情報端末が、前記碁盤目状表示画面を見る前記患者の視線を検出する視線検出手段と接続され、
前記患者用情報端末の制御部により、
前記表示画面に表示された、前記碁盤目状表示画面における視線の位置情報を検出させ、前記検出した視線の位置情報を、注視時間の所定の閾値により前記患者の意思とするか否かの判定をし、
前記患者の意思と判定した前記位置情報に該当する空気袋作動指示釦画像を特定し、特定された前記空気袋作動指示釦画像の空気袋作動指示情報を記憶部に記憶し、
前記空気袋作動指示釦画像が特定されると、前記視線の前記空気袋作動指示釦画像を前記特定後から注視されている間のみ、又は、前記特定後から予め設定した所定の時間のみ、前記患者の意思と判定した情報を、特定された空気袋の前記給気側電磁弁の開及び前記空気ポンプ作動の作動指示信号に、又は、特定された空気袋の前記排気側電磁弁の開及の作動指示信号に変換し、前記作動指示信号を送受信部から前記制御装置に送信し、
前記患者用情報端末から前記作動指示信号を受信した前記制御装置は、
前記作動指示信号を受信している間のみ、前記空気ポンプを作動させ、前記特定された空気袋に接続された前記給気側電磁弁を開にし、又は、前記特定された空気袋に接続された前記排気側電磁弁を開にするスイッチ作動をすることを特徴とする請求項2又は3に記載の体位変更補助システム。
【請求項5】
前記作動指示手段が、前記アプリ使用型で前記碁盤目状表示画面を有し前記視線検出手段及び前記スイッチ手段の併用により作動指示する形態の場合、
前記患者用情報端末が、前記碁盤目状表示画面を見る前記患者の視線を検出する視線検出手段、及び、前記スイッチ手段と接続され、
前記患者用情報端末の制御部により、
前記表示画面に表示された、前記碁盤目状表示画面における視線の位置情報を検出させ、前記検出した視線の位置情報を、注視時間の所定の閾値により前記患者の意思とするか否かの判定をし、
前記患者の意思と判定した前記位置情報に該当する空気袋作動指示釦画像を特定し、特定された前記空気袋作動指示釦画像の空気袋作動指示情報を記憶部に記憶し、
前記空気袋作動指示釦画像が特定された後に、前記患者により前記スイッチ手段がオンされると、前記オンされている時間のみ、又は、前記患者により前記スイッチ手段がオンされた瞬間から予め設定した所定の時間のみ、
特定された空気袋の前記給気側電磁弁の開及び前記空気ポンプ作動の作動指示信号に、又は、特定された空気袋の前記排気側電磁弁の開の作動指示信号に変換し、前記作動指示信号を送受信部から前記制御装置に送信し、
前記患者用情報端末から前記作動指示信号を受信した前記制御装置は、
前記作動指示信号を受信している間のみ、前記空気ポンプを作動させ、前記特定された空気袋に接続された前記給気側電磁弁を開にし、又は、前記特定された空気袋に接続された前記排気側電磁弁を開にするスイッチ作動をすることを特徴とする請求項2又は3に記載の体位変更補助システム。
【請求項6】
前記作動指示手段が、前記アプリ使用型で前記碁盤目状表示画面を有し前記スイッチ手段により作動指示する形態の場合、
前記患者用情報端末が、身体の動きによりオンオフ信号を出力するスイッチ手段と接続され、
前記患者用情報端末の制御部により、
前記患者により前記スイッチ手段が第一オンされると、前記碁盤目状の空気袋作動指示釦画像群の一列分の大きさの枠体状の大カーソルを自動的に前記碁盤目状の左右端部間を横方向に一列ごとに所定の時間停止をさせながら往復移動させ、
前記患者により前記大カーソルが希望する一列に来たときに前記スイッチ手段が第二オンされると、前記第二オンされた一列で一つの空気袋作動指示釦画像の大きさの枠状体の小カーソルを自動的に選択された前記一列の上下端部間を縦方向に空気袋作動指示釦画像ごとに所定の時間停止をさせながら往復移動させ、
前記患者により前記小カーソルが希望する空気袋作動指示釦画像に来たときに前記スイッチ手段が第三オンされると、前記スイッチ手段が第三オンされている間のみ、又は、前記スイッチ手段が第三オンされた瞬間から予め設定した所定の時間のみ、選択された空気袋作動指示釦画像に対応する作動指示信号に変換し、前記作動指示信号を送受信部から前記制御装置に送信し、
前記患者用情報端末から前記作動指示信号を受信した前記制御装置は、
前記作動指示信号を受信している間のみ、前記空気ポンプを作動させ、前記特定された空気袋に接続された前記給気側電磁弁を開にし、又は、前記特定された空気袋に接続された前記排気側電磁弁を開にするスイッチ作動をすることを特徴とする請求項2又は3に記載の体位変更補助システム。
【請求項7】
前記作動指示手段が、前記アプリ使用型で前記釦表示画面を有し前記視線検出手段により作動指示する形態の場合、
前記患者用情報端末が、前記表示画面を見る前記患者の視線を検出する視線検出手段と接続され、
前記患者用情報端末により、
前記表示画面に表示された、前記空気袋位置釦画像における視線の位置情報を検出させ、前記検出した視線の位置情報を、注視時間の所定の閾値により前記患者の意思とするか否かの判定をし、
前記患者の意思と判定した前記位置情報に該当する前記空気袋を特定し、特定された前記空気袋の位置情報を記憶部に記憶し、
前記空気袋の特定後に、前記表示画面に表示された前記給気釦画像及び前記排気釦画像における視線の位置情報を検出させ、前記検出した視線の位置情報を、注視時間の所定の閾値により前記患者の意思とするか否かの判定をし、
前記患者の意思と判定した前記給気釦画像又は排気釦画像を特定し、
前記給気釦画像が特定されると、前記視線の前記給気釦画像を前記特定後から注視されている間のみ、又は、前記特定後から予め設定した所定の時間のみ、前記患者の意思と判定した情報を、特定された空気袋の前記給気側電磁弁の開及び前記空気ポンプ作動の作動指示信号に変換し、前記作動指示信号を送受信部から前記制御装置に送信し、
又は、前記排気釦画像が特定されると、前記視線の前記排気釦画像を前記特定後から注視されている間のみ、又は、前記特定後から予め設定した所定の時間のみ、前記患者の意思と判定した情報を、特定された空気袋の前記排気側電磁弁の開の作動指示信号に変換し、前記作動指示信号を送受信部から前記制御装置に送信し、
前記患者用情報端末から前記作動指示信号を受信した前記制御装置は、
前記作動指示信号を受信している間のみ、前記空気ポンプを作動させ、前記特定された空気袋に接続された前記給気側電磁弁を開にし、又は、前記特定された空気袋に接続された前記排気側電磁弁を開にするスイッチ作動をすることを特徴とする請求項2又は3に記載の体位変更補助システム。
【請求項8】
前記作動指示手段が、前記アプリ使用型で釦表示画面を有し前記スイッチ手段により作動指示する形態の場合、
前記患者用情報端末が、空気袋選択信号、給気指示信号、又は、排気指示信号を出力する前記スイッチ手段と接続され、
前記患者用情報端末の制御部により、
前記患者により選択され前記スイッチ手段でオンされた前記空気袋の位置情報を記憶部に記憶し、
前記空気袋の選択後に、前記給気指示の前記スイッチ手段がオンされると、前記給気指示の前記スイッチ手段がオンされている間のみ、又は、前記スイッチ手段がオンされた瞬間から予め設定した所定の時間のみ、選択された空気袋の前記給気側電磁弁の開及び前記空気ポンプ作動の作動指示信号に変換し、前記作動指示信号を送受信部から前記制御装置に送信し、又は、前記排気指示の前記スイッチ手段がオンされると、前記排気指示の前記スイッチ手段がオンされている間のみ、選択された空気袋の前記排気側電磁弁の開の作動指示信号に変換し、前記作動指示信号を送受信部から前記制御装置に送信し、
前記患者用情報端末から前記作動指示信号を受信した前記制御装置は、
前記作動指示信号を受信している間のみ、前記空気ポンプを作動させ、前記選択された空気袋に接続された前記給気側電磁弁を開にし、又は、前記選択された空気袋に接続された前記排気側電磁弁を開にするスイッチ作動をすることを特徴とする請求項2又は3に記載の体位変更補助システム。
【請求項9】
前記作動指示手段が、前記導通スイッチ直接指示型の場合、
前記患者によりオンオフ可能な複数の導通スイッチのうちから選択された空気袋の給気スイッチ及びポンプスイッチがオンとなった間のみ、選択された前記給気側電磁弁を開にしかつ前記空気ポンプを作動させ、あるいは、排気スイッチがオンとなった間のみ、選択された空気袋に接続された前記排気側電磁弁を開にすることを特徴とする請求項1又は2に記載の体位変更補助システム。
【請求項10】
体位変更補助アプリケーションからなる体位変更補助アプリケーションプログラムであって、
前記体位変更補助アプリケーションがインストールされた患者用情報端末と、制御装置とは接続されており、
前記患者用情報端末は、表示画面を有し、
身体の動きによりオンオフ信号を出力するスイッチ手段、及び/又は、視線の動きによりオンオフ信号を出力する視線検出手段と接続され、
前記制御装置は、前記患者が動かしたい身体の複数の部位の下に置いた複数の空気袋と、複数の前記空気袋それぞれの給気側流路に設けた常時閉式の給気側電磁弁と、複数の前記空気袋それぞれの排気側流路に設けた常時閉式の排気側電磁弁と、すべての前記給気側電磁弁と接続された、前記空気袋に空気を圧送する空気ポンプと接続され、前記患者用情報端末からの作動指示信号を受信している間のみ、前記空気ポンプを作動させ、前記選択された空気袋に接続された前記給気側電磁弁を開にし、又は、前記選択された空気袋に接続された前記排気側電磁弁を開にするスイッチ作動を可能とし、
前記患者用情報端末のコンピュータを、
前記空気袋の識別、給気指示、及び、排気指示を前記表示画面に表示する表示手段、
前記表示画面における視線の位置情報を検出させ、前記検出した視線の位置情報を、注視時間の所定の閾値により患者の意思とするか否かの判定をする判定手段、
前記視線検出手段又は前記スイッチ手段から、患者により選択された空気袋識別・給気又は排気指示情報を受信すると、前記視線検出手段の場合は、患者の意思と判定し空気袋識別・給気又は排気指示を特定した後から患者により注視されている間のみ、又は、前記特定後から予め設定した所定の時間のみ、あるいは、前記スイッチ手段の場合は、前記スイッチ手段がオンされている間のみ、又は、前記スイッチ手段がオンされた瞬間から予め設定した所定の時間のみ、前記給気指示情報を受信したときは前記空気ポンプを作動及び前記選択された空気袋の給気側電磁弁を開にする作動指示信号に変換、又は、前記排気指示情報を受信したときは前記選択された空気袋の排気側電磁弁を開にする作動指示信号に変換する作動情報変換手段、及び、
前記作動指示信号を前記制御装置に送信する送受信手段、として機能させることを特徴とする体位変更補助アプリケーションプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、脳の神経に異常が起こって発症し筋肉が衰えていく病気のALS(筋委縮性側索硬化症)の発症などの筋肉が衰えておられる、ベッドに寝たきりの状態の患者が、身体の一部の向きを変えたいときに自分の意思で一人で身体の一部を動かすことができる体位変更補助システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、就寝者の下側に位置する寝具の内部に複数個配置される空気袋と、これら各空気袋に対応する、前記寝具の下、内部、または表面に設置され、印加荷重に応じた圧力信号を出力する複数の感圧センサと、これら感圧センサが出力する複数の圧力信号の時間的変化に基づいて各荷重圧力の推移を観測する荷重圧力観測手段と、前記空気袋の空気量を個別に調整可能な空気量調整手段とを備え、前記空気量調整手段は、前記荷重圧力観測手段が観測した各荷重圧力の推移に基づいて、各空気袋の空気量を増減する床ずれ防止装置が開示されている。
【0003】
特許文献2には、寝床に用いる体位変更用マットにおいて、寝床の縦方向のほぼ中心線を境にして左右に、体位変更用の袋部と、その外側に横ズレ防止用の袋部とを設け、左側の体位変更用の袋部は右側の横ズレ防止用の袋部と連動して、右側の体位変更用の袋部は左側の横ズレ防止用の袋部と連動して、それぞれの袋部内に流体を注出入させる構成からなる横ズレ防止帯付き体位変更用マットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-189472号公報
【特許文献2】実用新案開平02-135021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の床ずれ防止装置は、設定した体位変更時間になると高い荷重圧力が観測された部位の空気袋の空気量を減らし、その分を低い荷重圧力が観測された部位の空気袋の空気量を増やす技術であるので、寝たきりの患者が自分の身体の向きを変えたいときに、自分の変えたい身体の向きに変えることができないという問題があった。
【0006】
特許文献2の横ズレ防止帯付き体位変更用マットは、身体全体の向きを右側又は左側に変える考案であるので、身体の一部、例えば頭の向きを少し右側に傾けたいとか、右足のふくらはぎを少し上げたいということができないという問題があった。
【0007】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、ベッド等に寝たきりの筋力が衰えた例えばALS患者が自分の意思で身体の一部の向きを変えたいときに身体の変えたい一部の部位を看護・介護する人の手助けなく自分で実施することができる体位変更補助システム及びプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明において碁盤目状とは、縦横方向に等間隔で並べられた状態を意味し、縦列と横列のマス目の数はそれぞれ別々に設定でき、例えば縦方向が5列と横方向が6行とのマス目がそれぞれ等間隔である状態をいい、前記マス目の形状は、四角形、円形、三角形又は多角形などがあり、文字や図形などの識別表示が表示できるものであればいずれの形状でもよい。
【0009】
本発明の請求項1に記載の体位変更補助システムは、筋肉が衰え寝たきりの患者が自分の意思で体位の変更を可能にする体位変更補助システムであって、前記患者が動かしたい身体の複数の部位の下に置いた複数の空気袋と、複数の前記空気袋それぞれと給気側流路で接続された、前記空気袋に空気を圧送する1つの空気ポンプと、複数の前記空気袋それぞれの前記給気側流路に設けた常時閉式の給気側電磁弁と、複数の前記空気袋それぞれの排気側流路に設けた常時閉式の排気側電磁弁と、複数の前記給気側電磁弁を個別に、複数の前記排気側電磁弁を個別に、及び、1つの前記空気ポンプをオンオフ制御する作動指示手段と、を備え、前記作業指示手段が、前記患者により選択された空気袋の給気指示を受けた間のみ前記空気ポンプを作動させ、かつ前記選択された空気袋の給気側電磁弁を開にする制御をし、前記患者により選択された空気袋の排気指示を受けた間のみ前記選択された空気袋の排気側電磁弁を開にする制御をすることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項2に記載の体位変更補助システムは、請求項1において、前記作動指示手段が、複数の前記給気側電磁弁を個別に、複数の前記排気側電磁弁を個別に、及び、1つの前記空気ポンプを、身体の動きによりオンオフする導通スイッチ手段を備えた導通スイッチ直接制御型、あるいは、身体の動きによりオンオフ信号を出力するスイッチ手段、及び/又は、視線によりオンオフ信号を出力する視線検出手段と、前記スイッチ手段及び前記視線検出手段と接続された、前記空気袋の選択、給気指示、及び、排気指示の釦画像を表示する表示画面を有し、体位変更補助アプリケーションがインストールされた患者用情報端末と、前記患者用情報端末と接続され、並びに、複数の前記給気側電磁弁と個別に、複数の前記排気側電磁弁と個別に、及び、1つの前記空気ポンプと接続され、前記患者用情報端末からの作動指示信号に従って前記空気ポンプ、前記給気側電磁弁又は前記排気側電磁弁をオンオフするスイッチ回路を備えた制御装置と、を備えたアプリ使用型であることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項3に記載の体位変更補助システムは、請求項2において、前記表示画面が、複数の前記空気袋の位置を表示した空気袋位置釦画像、前記空気袋の給気指示情報を出す給気釦画像、及び、前記空気袋の排気指示情報を出す排気釦画像が表示された釦表示画面、あるいは、空気袋識別表示と給気表示、又は、空気袋識別表示と排気表示をした空気袋作動指示釦画像をすべての前記空気袋について碁盤目状に表示された碁盤目状表示画面であることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項4に記載の体位変更補助システムは、請求項2又は3において、前記作動指示手段が、前記アプリ使用型で前記碁盤目状表示画面を有し前記視線検出手段により作動指示する形態の場合、前記患者用情報端末が、前記碁盤目状表示画面を見る前記患者の視線を検出する視線検出手段と接続され、前記患者用情報端末の制御部により、前記表示画面に表示された、前記碁盤目状表示画面における視線の位置情報を検出させ、前記検出した視線の位置情報を、注視時間の所定の閾値により前記患者の意思とするか否かの判定をし、前記患者の意思と判定した前記位置情報に該当する空気袋作動指示釦画像を特定し、特定された前記空気袋作動指示釦画像の空気袋作動指示情報を記憶部に記憶し、前記空気袋作動指示釦画像が特定されると、前記視線の前記空気袋作動指示釦画像を前記特定後から注視されている間のみ、又は、前記特定後から予め設定した所定の時間のみ、前記患者の意思と判定した情報を、特定された空気袋の前記給気側電磁弁の開及び前記空気ポンプ作動の作動指示信号に、又は、特定された空気袋の前記排気側電磁弁の開及の作動指示信号に変換し、前記作動指示信号を送受信部から前記制御装置に送信し、前記患者用情報端末から前記作動指示信号を受信した前記制御装置は、前記作動指示信号を受信している間のみ、前記空気ポンプを作動させ、前記特定された空気袋に接続された前記給気側電磁弁を開にし、又は、前記特定された空気袋に接続された前記排気側電磁弁を開にするスイッチ作動をすることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項5に記載の体位変更補助システムは、請求項2又は3において、前記作動指示手段が、前記アプリ使用型で前記碁盤目状表示画面を有し前記視線検出手段及び前記スイッチ手段の併用により作動指示する形態の場合、前記患者用情報端末が、前記碁盤目状表示画面を見る前記患者の視線を検出する視線検出手段、及び、前記スイッチ手段と接続され、前記患者用情報端末の制御部により、前記表示画面に表示された、前記碁盤目状表示画面における視線の位置情報を検出させ、前記検出した視線の位置情報を、注視時間の所定の閾値により前記患者の意思とするか否かの判定をし、前記患者の意思と判定した前記位置情報に該当する空気袋作動指示釦画像を特定し、特定された前記空気袋作動指示釦画像の空気袋作動指示情報を記憶部に記憶し、前記空気袋作動指示釦画像が特定された後に、前記患者により前記スイッチ手段がオンされると、前記オンされている時間のみ、又は、前記患者により前記スイッチ手段がオンされた瞬間から予め設定した所定の時間のみ、特定された空気袋の前記給気側電磁弁の開及び前記空気ポンプ作動の作動指示信号に、又は、特定された空気袋の前記排気側電磁弁の開の作動指示信号に変換し、前記作動指示信号を送受信部から前記制御装置に送信し、前記患者用情報端末から前記作動指示信号を受信した前記制御装置は、前記作動指示信号を受信している間のみ、前記空気ポンプを作動させ、前記特定された空気袋に接続された前記給気側電磁弁を開にし、又は、前記特定された空気袋に接続された前記排気側電磁弁を開にするスイッチ作動をすることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項6に記載の体位変更補助システムは、請求項2又は3において、前記作動指示手段が、前記アプリ使用型で前記碁盤目状表示画面を有し前記スイッチ手段により作動指示する形態の場合、前記患者用情報端末が、身体の動きによりオンオフ信号を出力するスイッチ手段と接続され、前記患者用情報端末の制御部により、前記患者により前記スイッチ手段が第一オンされると、前記碁盤目状の空気袋作動指示釦画像群の一列分の大きさの枠体状の大カーソルを自動的に前記碁盤目状の左右端部間を横方向に一列ごとに所定の時間停止をさせながら往復移動させ、前記患者により前記大カーソルが希望する一列に来たときに前記スイッチ手段が第二オンされると、前記第二オンされた一列で一つの空気袋作動指示釦画像の大きさの枠状体の小カーソルを自動的に選択された前記一列の上下端部間を縦方向に空気袋作動指示釦画像ごとに所定の時間停止をさせながら往復移動させ、前記患者により前記小カーソルが希望する空気袋作動指示釦画像に来たときに前記スイッチ手段が第三オンされると、前記スイッチ手段が第三オンされている間のみ、又は、前記スイッチ手段が第三オンされた瞬間から予め設定した所定の時間のみ、選択された空気袋作動指示釦画像に対応する作動指示信号に変換し、前記作動指示信号を送受信部から前記制御装置に送信し、前記患者用情報端末から前記作動指示信号を受信した前記制御装置は、前記作動指示信号を受信している間のみ、前記空気ポンプを作動させ、前記特定された空気袋に接続された前記給気側電磁弁を開にし、又は、前記特定された空気袋に接続された前記排気側電磁弁を開にするスイッチ作動をすることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項7に記載の体位変更補助システムは、請求項2又は3において、前記作動指示手段が、前記アプリ使用型で前記釦表示画面を有し前記視線検出手段により作動指示する形態の場合、前記患者用情報端末が、前記表示画面を見る前記患者の視線を検出する視線検出手段と接続され、前記患者用情報端末により、前記表示画面に表示された、前記空気袋位置釦画像における視線の位置情報を検出させ、前記検出した視線の位置情報を、注視時間の所定の閾値により前記患者の意思とするか否かの判定をし、前記患者の意思と判定した前記位置情報に該当する前記空気袋を特定し、特定された前記空気袋の位置情報を記憶部に記憶し、前記空気袋の特定後に、前記表示画面に表示された前記給気釦画像及び前記排気釦画像における視線の位置情報を検出させ、前記検出した視線の位置情報を、注視時間の所定の閾値により前記患者の意思とするか否かの判定をし、前記患者の意思と判定した前記給気釦画像又は排気釦画像を特定し、前記給気釦画像が特定されると、前記視線の前記給気釦画像を前記特定後から注視されている間のみ、又は、前記特定後から予め設定した所定の時間のみ、前記患者の意思と判定した情報を、特定された空気袋の前記給気側電磁弁の開及び前記空気ポンプ作動の作動指示信号に変換し、前記作動指示信号を送受信部から前記制御装置に送信し、又は、前記排気釦画像が特定されると、前記視線の前記排気釦画像を前記特定後から注視されている間のみ、又は、前記特定後から予め設定した所定の時間のみ、前記患者の意思と判定した情報を、特定された空気袋の前記排気側電磁弁の開の作動指示信号に変換し、前記作動指示信号を送受信部から前記制御装置に送信し、前記患者用情報端末から前記作動指示信号を受信した前記制御装置は、前記作動指示信号を受信している間のみ、前記空気ポンプを作動させ、前記特定された空気袋に接続された前記給気側電磁弁を開にし、又は、前記特定された空気袋に接続された前記排気側電磁弁を開にするスイッチ作動をすることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項8に記載の体位変更補助システムは、請求項2又は3において、前記作動指示手段が、前記アプリ使用型で釦表示画面を有し前記スイッチ手段により作動指示する形態の場合、前記患者用情報端末が、空気袋選択信号、給気指示信号、又は、排気指示信号を出力する前記スイッチ手段と接続され、前記患者用情報端末の制御部により、前記患者により選択され前記スイッチ手段でオンされた前記空気袋の位置情報を記憶部に記憶し、前記空気袋の選択後に、前記給気指示の前記スイッチ手段がオンされると、前記給気指示の前記スイッチ手段がオンされている間のみ、又は、前記スイッチ手段がオンされた瞬間から予め設定した所定の時間のみ、選択された空気袋の前記給気側電磁弁の開及び前記空気ポンプ作動の作動指示信号に変換し、前記作動指示信号を送受信部から前記制御装置に送信し、又は、前記排気指示の前記スイッチ手段がオンされると、前記排気指示の前記スイッチ手段がオンされている間のみ、選択された空気袋の前記排気側電磁弁の開の作動指示信号に変換し、前記作動指示信号を送受信部から前記制御装置に送信し、前記患者用情報端末から前記作動指示信号を受信した前記制御装置は、前記作動指示信号を受信している間のみ、前記空気ポンプを作動させ、前記選択された空気袋に接続された前記給気側電磁弁を開にし、又は、前記選択された空気袋に接続された前記排気側電磁弁を開にするスイッチ作動をすることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項9に記載の体位変更補助システムは、請求項1又は2において、前記作動指示手段が、前記導通スイッチ直接指示型の場合、前記患者によりオンオフ可能な複数の導通スイッチのうちから選択された空気袋の給気スイッチ及びポンプスイッチがオンとなった間のみ、選択された前記給気側電磁弁を開にしかつ前記空気ポンプを作動させ、あるいは、排気スイッチがオンとなった間のみ、選択された空気袋に接続された前記排気側電磁弁を開にすることを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項10に記載の体位変更補助アプリケーションプログラムは、体位変更補助アプリケーションからなる体位変更補助アプリケーションプログラムであって、前記体位変更補助アプリケーションがインストールされた患者用情報端末と、制御装置とは接続されており、前記患者用情報端末は、表示画面を有し、身体の動きによりオンオフ信号を出力するスイッチ手段、及び/又は、視線の動きによりオンオフ信号を出力する視線検出手段と接続され、前記制御装置は、前記患者が動かしたい身体の複数の部位の下に置いた複数の空気袋と、複数の前記空気袋それぞれの給気側流路に設けた常時閉式の給気側電磁弁と、複数の前記空気袋それぞれの排気側流路に設けた常時閉式の排気側電磁弁と、すべての前記給気側電磁弁と接続された、前記空気袋に空気を圧送する空気ポンプと接続され、前記患者用情報端末からの作動指示信号を受信している間のみ、前記空気ポンプを作動させ、前記選択された空気袋に接続された前記給気側電磁弁を開にし、又は、前記選択された空気袋に接続された前記排気側電磁弁を開にするスイッチ作動を可能とし、前記患者用情報端末のコンピュータを、前記空気袋の識別、給気指示、及び、排気指示を前記表示画面に表示する表示手段、前記表示画面における視線の位置情報を検出させ、前記検出した視線の位置情報を、注視時間の所定の閾値により患者の意思とするか否かの判定をする判定手段、前記視線検出手段又は前記スイッチ手段から、患者により選択された空気袋識別・給気又は排気指示情報を受信すると、前記視線検出手段の場合は、患者の意思と判定し空気袋識別・給気又は排気指示を特定した後から患者により注視されている間のみ、又は、前記特定後から予め設定した所定の時間のみ、あるいは、前記スイッチ手段の場合は、前記スイッチ手段がオンされている間のみ、又は、前記スイッチ手段がオンされた瞬間から予め設定した所定の時間のみ、前記給気指示情報を受信したときは前記空気ポンプを作動及び前記選択された空気袋の給気側電磁弁を開にする作動指示信号に変換、又は、前記排気指示情報を受信したときは前記選択された空気袋の排気側電磁弁を開にする作動指示信号に変換する作動情報変換手段、及び、前記作動指示信号を前記制御装置に送信する送受信手段、として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の体位変更補助システム又は体位変更補助アプリケーションプログラムは、ベッド等に寝たきりの筋力が衰えた例えばALS患者が自分の意思で、右腕を少し上げたいとか、左足の太ももを少し上げたいなどの身体の一部を動かしたいときに、看護・介護する人の手助けなく自分の意思で実施することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】患者が仰臥して、アプリ使用型で視線検出手段により作動指示する形態の本発明の体位変更補助システムを使用している説明図である。なお、空気流路(給気側流路、排気側流路を意味する。以下同じ。)は空気袋の下を通すが、図では空気流路の接続先がわかるように空気袋の上側に表している。
【
図2】空気流路は空気袋の下を通すが、図では空気流路の接続先がわかるように空気袋の上側に空気流路を表した、アプリ使用型で、釦表示画面又は碁盤目状表示画面を有し視線検出手段により作動指示する形態の本発明の体位変更補助システムの説明図である。
【
図3】空気流路は空気袋の下を通すが、図では空気流路の接続先がわかるように空気袋の上側に空気流路を表した、アプリ使用型で釦表示画面を有しスイッチ手段として操作盤により作動指示する形態の本発明の体位変更補助システムの説明図である。
【
図4】空気流路は空気袋の下を通すが、図では空気流路の接続先がわかるように空気袋の上側に空気流路を表した、導通スイッチ直接制御型の本発明の体位変更補助システムの説明図である。
【
図5】空気袋、給気側電磁弁、排気側電磁弁、空気ポンプ、電気回路、空気流路の関連を説明する説明図である。
【
図6】空気袋の膨張・収縮の説明図で、(a)は空気袋にまだ空気が流入されず平らな状態を示す図で、(b)は空気袋に多くの空気量を流入させた状態の説明図で、(c)は空気袋に空気を流入又は排出させて、空気袋内の空気量を中程度にした状態の説明図である。
【
図7】表示画面に空気袋位置釦画像、空気袋の給気指示情報を出す給気釦画像、及び、空気袋の排気指示情報を出す排気釦画像の釦表示画面の1例の説明図である。
【
図8】操作盤に、空気袋位置釦、空気袋の給気指示情報を出す給気釦、及び、空気袋の排気指示情報を出す排気釦を配設したスイッチ手段の1例を示す図である。
【
図9】スイッチ盤に、空気袋ごとに給気スイッチ及び排気スイッチ、並びに、ポンプスイッチを配設した導通スイッチ手段の1例の説明図である。
【
図10】アプリ使用型で視線検出手段又はスイッチ手段により作動指示する形態の本発明の体位変更補助システムのシステム構成の説明図である。
【
図11】空気流路は空気袋の下を通すが、図では空気流路の接続先がわかるように空気袋の上側に空気流路を表した、アプリ使用型で、碁盤目状表示画面を有し視線検出手段により作動指示する形態の本発明の体位変更補助システムの説明図である。
【
図12】空気流路は空気袋の下を通すが、図では空気流路の接続先がわかるように空気袋の上側に空気流路を表した、アプリ使用型で、碁盤目状表示画面を有し視線検出手段とスイッチ手段の併用により作動指示する形態の本発明の体位変更補助システムの説明図である。
【
図13】空気流路は空気袋の下を通すが、図では空気流路の接続先がわかるように空気袋の上側に空気流路を表した、アプリ使用型で、碁盤目状表示画面を有しスイッチ手段により作動指示する形態の本発明の体位変更補助システムの説明図である。
【
図14】碁盤目状表示画面を有し視線検出手段により作動指示する形態の表示画面の説明図である。
【
図15】碁盤目状表示画面を有し視線検出手段とスイッチ手段の併用により作動指示する形態の表示画面とスイッチ手段の説明図である。
【
図16】碁盤目状表示画面を有しスイッチ手段により作動指示する形態の説明図で、(a)は第二オンに関する説明図で、(b)は第三オンに関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の体位変更補助システム1又は体位変更補助アプリケーションプログラムは、例えば、脳の神経に異常が起こって発症し筋肉が衰えていく病気のALS(筋委縮性側索硬化症)の発症などの筋肉が衰えておられる、ベッド90に寝たきりの状態の患者80が、身体の一部の向きを変えたいときに自分の意思で一人で身体の一部を動かすことができるものである。ベッド90に仰臥している患者80は、
図1に示すように、体位変更補助システム1の空気袋2を、体位を変更したい身体の部位の下に置いて使用する。
【0022】
本発明の体位変更補助システム1は、
図1~
図4、
図11~
図13に示すように、筋肉が衰え寝たきりの患者80が自分の意思で体位の変更を可能にする体位変更補助システム1であって、前記患者80が動かしたい身体の複数の部位の下に置いた複数の空気袋2と、複数の前記空気袋2それぞれと給気側流路11で接続された、前記空気袋2に空気を圧送する1つの空気ポンプ5と、複数の前記空気袋2それぞれの前記給気側流路11に設けた常時閉式の給気側電磁弁3と、複数の前記空気袋2それぞれの排気側流路12に設けた常時閉式の排気側電磁弁4と、複数の前記給気側電磁弁3を個別に、複数の前記排気側電磁弁4を個別に、及び、1つの前記空気ポンプ5をオンオフ制御する作動指示手段と、を備え、前記作業指示手段が、前記患者80により選択された空気袋2の給気指示を受けた間のみ前記空気ポンプ5を作動させ、かつ前記選択された空気袋2の給気側電磁弁3を開にする制御をし、前記患者80により選択された空気袋2の排気指示を受けた間のみ前記選択された空気袋2の排気側電磁弁4を開にする制御をする。
【0023】
前記空気袋2は、
図1~
図4に示すように、例えばベッド90上に仰臥されている患者80が動かしたい身体の複数の部位、例えば右肩、左肩、右腰、左腰、右大腿部、左大腿部、右足首、左足首の下に置く。前記置く部位は患者80の置きたい部位に置けばよく、いずれの部位でもよい。前記空気袋2は、
図6に示すように、空気袋2内に空気を送り込むと膨張し、空気を排出するとしぼみ、さらに膨張又は排出を任意のタイミングで止めることができるので、身体の一部を持上げたい高さまで思い通りに膨張させ、又は、持ち上げた部位を思い通りの高さまで収縮させることができる。なお、前記空気袋2の数としては、例えば、2か所、3か所、4か所、5か所、6か所等いずれでもよい。以下、実施例として8か所の場合で説明するが、空気袋2の数は実施例に限らない。
【0024】
前記空気袋2は、空気を給気側の可撓性を有する給気側流路11と排気側の可撓性を有する排気側流路12が接続された、膨張・収縮が可能な弾性のある表皮材でつくられた袋体である。また、平面視の形状は、
図5に示すように四角形でもよく、円形状でもよく、人体の部位の外面形状に対応した形状でもよく、空気を給気すると容易に膨張し、空気を排気すると容易に収縮する形状であればいずれの形状や材質でもよい。また、大きさは身体の部位によって異なってもよく、同じであってもよく、身体の一部を持ち上げ可能な形状であればいずれの形状でもよい。
【0025】
前記給気側電磁弁3は、常時閉式で導通時に開となる電磁弁であり、閉のときは空気の流路を遮断して空気袋2に給気ができず開のときのみ空気の流路を開放して空気袋2に給気ができるようにしている。前記給気側電磁弁3は、空気袋2ごとに給気側流路11に設けられる。
【0026】
前記排気側電磁弁4は、常時閉式で導通時に開となる電磁弁であり、閉のときは空気の流路を遮断して空気袋2から排気ができず開のときのみ空気の流路を開放して空気袋2から排気ができるようにしている。前記排気側電磁弁4は、空気袋2ごとに排気側流路12にそれぞれ設けられる。
【0027】
前記空気ポンプ5は体位変更補助システム1で1つであり、
図1~
図4、
図11~
図13に示すように、すべての前記給気側電磁弁3とそれぞれ分岐されながら接続され、前記空気袋2に空気を圧送する。導通時のみ前記空気ポンプ2が稼働し空気を送り出す。
【0028】
前記空気袋2、前記給気側電磁弁3、前記排気側電磁弁4及び前記空気ポンプ5の配置は、
図5に示すように、1つの前記空気袋2に1つの給気側流路11と1つの排気側流路12が接続され、前記給気側流路11に1つの給気側電磁弁3が設けられ、その給気側流路3の上流側には前記空気ポンプ5が設けられて、前記排気側流路12に1つの前記排気側電磁弁4が設けられて前記排気側流路12の先端は開口状態にし空気を方向Hで大気中に排出にしている。前記給気側電磁弁3、前記排気側電磁弁4及び前記空気ポンプ5は、それぞれ制御装置9と電気配線13で接続されている。
【0029】
よって、
図5に示すように、前記空気ポンプ5が作動して空気を方向Kの下流側へ圧送し、常時閉式の前記給気側電磁弁3が導通により開状態になった間のみ空気が前記空気袋2内に流入し、前記導通させる時間の長短によって前記空気袋2内に流入させる空気量を変え前記空気袋2の高さを変えることができる。
【0030】
また、常時閉式の前記排気側電磁弁4が導通により開状態になった間のみ、前記空気袋2内に貯留された空気を大気中に排気し、前記導通させる時間の長短によって前記空気袋2内から排気させる空気の量を変え前記空気袋の高さを変えることができる。
【0031】
例えば、
図6(a)に示すように前記空気袋2が膨らんでいない平ら状態から、前記空気ポンプ5を作動させ前記給気側電磁弁3を導通させて開状態にすると、
図6(c)に示すように前記空気袋2を中程度の高さに膨張させ、さらに前記開状態を維持すると、
図6(b)に示すように前記空気袋2の高さをより高くすることができる。これにより患者80は体位の変えたい高さを自分で調整することができる。
【0032】
また、例えば、
図6(b)に示すように前記空気袋2が膨張して高くなった状態から、前記排気側電磁弁4を導通させて開状態にすると開状態を維持した間に応じて前記空気袋2を収縮することができる。例えば、前記開状態の間が短いときは
図6(b)に示すように前記空気袋2を中程度の高さにすることができ、前記開状態の間を長くすると
図6(a)に示すように前記空気袋2を平らの状態にすることができる。
【0033】
前記作動指示手段は、複数の前記給気側電磁弁3、複数の前記排気側電磁弁4、及び、1つの前記空気ポンプ5をオンオフ制御するものであり、前記患者80により前記作動指示手段から選択された空気袋2の給気指示が出された間のみ前記空気ポンプ5を作動させ、かつ前記選択された空気袋2の給気側電磁弁3を開にする制御をし、前記患者80により前記作動指示手段から選択された空気袋2の排気指示が出された間のみ前記選択された空気袋2の排気側電磁弁4を開にする制御をする。
【0034】
すなわち、前記作動指示手段を患者80が使用することにより、複数の空気袋2の中から患者80が体位を変えたい部位の前記空気袋2を自分で選択し、その空気袋2を膨張又は収縮させるという、患者80が自分の意思で前記給気側電磁弁3、前記排気側電磁弁4及び前記空気ポンプ5を作動させることができる。
【0035】
前記作動指示手段が、
図4に示すように、複数の前記給気側電磁弁3を個別に、複数の前記排気側電磁弁4を個別に、及び、1つの前記空気ポンプ5を、身体の動きによりオンオフする導通スイッチ手段50を備えた導通スイッチ直接制御型、あるいは、
図1~
図4、
図11~
図13に示すように、身体の動きによりオンオフ信号を出力するスイッチ手段40、及び/又は、視線によりオンオフ信号を出力する視線検出手段7と、前記スイッチ手段40及び前記視線検出手段7と接続された、前記空気袋2の選択、給気指示、及び、排気指示の釦画像を表示する表示画面10を有し、体位変更補助アプリケーションがインストールされた患者用情報端末6と、前記患者用情報端末6と接続され、並びに、複数の前記給気側電磁弁3と個別に、複数の前記排気側電磁弁4と個別に、及び、1つの前記空気ポンプ5と接続され、前記患者用情報端末6からの作動指示信号に従って前記空気ポンプ5、前記給気側電磁弁3又は前記排気側電磁弁4をオンオフするスイッチ回路を備えた制御装置9と、を備えたアプリ使用型がある。
【0036】
前記スイッチ手段40には、例えば触覚センサ、近接センサ、押釦又はスイッチなどのオンオフ制御ができるスイッチが含まれる。前記触覚センサには、例えば、歪ゲージ、感圧導電性ゴム、空気圧を用いたセンサ、圧電素子等を用いた力覚センサがあり、瞼、手、指、腕、足、顔又は頭による微小の動きで生じるわずかな力を感知することによりオンオフ制御させることができる。手押しによる押釦の例としては、例えば、
図8に示すように、押釦41、42及び43を取り付けた操作盤40aがあり、手によるスイッチの例としては、例えば、
図9に示すように、スイッチ51、52及び53を取り付けたスイッチ盤40bがある。
【0037】
前記視線検出手段7は、視線検出機能を果たす手段であり、近赤外線光源とカメラを備えかつ視線位置を検出可能な機器であり、例えばアイトラッカー(例えばTobii社製)がある。
【0038】
前記患者用情報端末6は、
図10に示すように、表示画面10を有し、前記視線検出手段7及び前記スイッチ手段40と接続され、制御装置9と接続されている。そして、前記患者用情報端末6は、体位変更補助アプリケーションプログラムに基づき制御をする制御部62と、体位変更補助アプリケーションプログラムを記憶し制御部62の指示により記憶する記憶部64と、制御部62の指示により表示画面10に表示する表示部61と、制御部62の指示により前記視線検出手段7、前記スイッチ手段40又は前記制御装置9と送受信する送受信部63と、制御部62の指示により情報処理をする情報処理部65と、を備える。
【0039】
前記制御部62の指示により前記情報処理部65は、検出した視線の位置情報を、注視時間の所定の閾値により患者80の意思とするか否かの判定をし、患者80の意思と判定するとそれ特定する情報処理、あるいは、患者80による視線検出手段6又はスイッチ手段40からのオン情報を、特定された空気袋2の前記給気側電磁弁3の開及び前記空気ポンプ5作動の作動指示信号に、又は、特定された空気袋2の前記排気側電磁弁4の開及の作動指示信号に変換する情報処理などを行う。
【0040】
前記制御装置9は、
図10に示すように、前記患者用情報端末6と接続され、並びに、複数の前記給気側電磁弁3と個別に、複数の前記排気側電磁弁4と個別に、及び、1つの前記空気ポンプ5と接続され、前記患者用情報端末6からの作動指示信号に従って前記空気ポンプ5、前記給気側電磁弁3又は前記排気側電磁弁4をオンオフするスイッチを組み込んだスイッチ回路を備えている。
【0041】
前記表示画面10は、
図7に示すように、複数の前記空気袋2の位置を表示した空気袋位置釦画像31、前記空気袋2の給気指示情報を出す給気釦画像32、及び、前記空気袋の排気指示情報を出す排気釦画像33が表示された釦表示画面10b、あるいは、
図14~
図16に示すように、空気袋識別表示と給気表示、又は、空気袋識別表示と排気表示をした空気袋作動指示釦画像21をすべての前記空気袋2について碁盤目状に表示された碁盤目状表示画面10aがある。前記表示画面10は、前記釦表示画面10b又は前記碁盤目状表示画面10aにこだわらず、空気袋2の選択、給気又は排気の選択ができる表示画面であればいずれの表示画面であってもよい。
【0042】
よって、本発明の体位変更補助システム1は、複数の空気袋2、空気ポンプ5、常時閉式の給気側電磁弁3、及び、常時閉式の排気側電磁弁4の構成は同じ形態であるが、オンオフ制御する作動指示手段に種々の異なる形態がある。前記作動指示手段の形態には、体位変更補助アプリケーションがインストールされていない導通スイッチ直接制御型と、体位変更補助アプリケーションがインストールされたアプリ使用型があり、前記アプリ使用型の形態には、患者80の意思を発する手段として、スイッチ手段40の形態、視線検出手段7の形態、並びに、スイッチ手段40及び視線検出手段7の併用の形態がある。そして、表示画面10の表示形態としては、例えば空気袋と給気と排気の釦表示を別々にした前記釦表示画面10bの形態と、空気袋と給気又は排気を同じ釦表示にした前記碁盤目状表示画面10aの形態がある。
【0043】
前記アプリ使用型において、患者80の意思を発する手段が異なっても、表示画面10の表示形態が異なっても、前記患者用情報端末6からの作動指示信号に従って前記空気ポンプ5、前記給気側電磁弁3又は前記排気側電磁弁4をオンオフするスイッチ回路を備えた制御装置9は、同じ形態である。前記制御装置9は、前記患者用情報端末6から作動指示信号を受信部71が受信すると、スイッチ72群を有するスイッチ回路の該当するスイッチ72を、前記作動指示信号を受信している間のみオンにし、該当する空気袋2の給気側電磁弁3を開にして空気ポンプ5を作動させて、該当する空気袋2を患者80の意思に従って膨張させ、又は、該当する空気袋2の排気側電磁弁4を開にし、該当する空気袋2を患者80の意思に従って収縮させる。
【0044】
したがって、前記作動指示手段の形態としては、
図13に示すように、前記アプリ使用型で前記碁盤目状表示画面10aを有し前記スイッチ手段40により作動指示する形態Aがあり、
図12に示すように、前記アプリ使用型で前記碁盤目状表示画面10aを有し前記視線検出手段7及び前記スイッチ手段40の併用により作動指示する形態Bがあり、
図1、
図2又は
図11に示すように、前記アプリ使用型で前記碁盤目状表示画面10aを有し前記視線検出手段7により作動指示する形態C、
図1又は
図2に示すように、前記アプリ使用型で前記釦表示画面10bを有し前記視線検出手段7により作動指示する形態Dがあり、
図3に示すように、前記アプリ使用型で釦表示画面10bを有し前記スイッチ手段40により作動指示する形態Eがあり、
図4に示すように導通スイッチ手段50により作動指示する導通スイッチ直接制御型の形態Fがある。前記アプリ使用型には形態A~Eの5形態があり、前記導通スイッチ直接制御型には形態Fの1形態のみである。
【0045】
まず、前記作動指示手段が、前記アプリ使用型で前記碁盤目状表示画面10aを有し前記スイッチ手段40により作動指示する形態Aについて説明する。前記形態Aの前記作動指示手段は、
図13、
図16に示すように、前記患者用情報端末6が、身体の動きによりオンオフ信号を出力するスイッチ手段40と接続され、前記患者用情報端末6の制御部63により、前記患者80により前記スイッチ手段40が患者80により第一オンされると、
図16(a)に示すように、前記碁盤目状の空気袋作動指示釦画像21群の一列分の大きさの枠体状の大カーソル22bを自動的に前記碁盤目状の左右端部間を横方向Xに一列ごとに所定の時間停止をさせながら往復移動させる。
【0046】
前記大カーソル22bが横方向Xに往復移動中に、前記大カーソル22bが患者80が希望する一列に来たときに、例えば
図16(b)に示すように、前記大カーソル22bが左から3番目に来たときに、前記患者80により前記スイッチ手段40が第二オンされると、前記第二オンされた一列で一つの空気袋作動指示釦画像21の大きさの枠状体の小カーソル22aを自動的に選択された前記一列の上下端部間を縦方向Yに空気袋作動指示釦画像21ごとに所定の時間停止をさせながら往復移動させる。
【0047】
前記小カーソル22aが縦方向Yに往復移動中に、前記小カーソル22aが希望する空気袋作動指示釦画像21に来たときに、例えば
図16(b)に示すように、上から2番目の左大腿排気の空気袋作動指示釦画像21にきたときに、患者80により前記スイッチ手段40が第三オンされると、前記スイッチ手段40が第三オンされている間のみ、又は、前記スイッチ手段40が第三オンされた瞬間から予め設定した所定の時間のみ、制御部62が情報処理部65に選択された空気袋作動指示釦画像21に表示されている左大腿排気の情報を前記左大腿排気に対応する作動指示信号に変換させ、前記作動指示信号を送受信部63に前記制御装置9に送信させる。
【0048】
そして、前記患者用情報端末6から前記作動指示信号を受信した前記制御装置9は、前記作動指示信号を受信している間のみ、前記空気ポンプ5を作動させ、前記特定された空気袋2に接続された前記給気側電磁弁3を開にし、又は、前記特定された空気袋2に接続された前記排気側電磁弁4を開にするスイッチ作動をする。例えば、
図16(b)に示すように、前記制御装置9が左大腿排気の作動指示信号を受信したときは、患者80の左大腿の下に置いてある空気袋2から作動指示信号を受信している間のみ空気が排気され前記空気袋2が収縮し高さが低くなる。
【0049】
前記形態Aの場合は、患者80が、空気袋の識別と給気又は排気が表示してある空気袋作動指示釦画像21が碁盤目状に表示してある碁盤目状表示画面10aを見ながら、瞼、手、指、腕、足、顔又は頭による微小の動きで生じるわずかな力を感知するスイッチ手段40によりオンさせて、患者80が自身の動きで、すなわち一人で膨張又は収縮させたい空気袋2を膨張又は収縮させることができる。
【0050】
次に、前記アプリ使用型で前記碁盤目状表示画面10aを有し前記視線検出手段7及び前記スイッチ手段40の併用により作動指示する形態Bについて説明する。前記形態Bの前記作動指示手段は、
図12に示すように、前記患者用情報端末6が、前記碁盤目状表示画面を見る前記患者80の視線を検出する視線検出手段7、及び、前記スイッチ手段40と接続され、前記患者用情報端末6の制御部62により、
図15に示すように、前記表示画面10aに表示された、前記碁盤目状表示画面10aにおける視線の位置情報を検出させ、前記検出した視線の位置情報を、注視時間の所定の閾値により前記患者80の意思とするか否かの判定をし、前記患者80の意思と判定した前記位置情報に該当する空気袋作動指示釦画像21を特定し、特定された前記空気袋作動指示釦画像21の空気袋作動指示情報を記憶部64に記憶する。
【0051】
例えば、
図15に示すように、患者80が、左腰給気が表示された前記空気袋作動指示釦画像21を見ていることを視線検出手段7により検出し左腰給気を特定し、記憶部64に左腰給気情報を記憶する。
【0052】
そして、前記空気袋作動指示釦画像21が特定された後に、前記患者80により前記スイッチ手段40がオンされると、情報処理部65が、前記オンされている時間のみ、又は、前記スイッチ手段4がオンされた瞬間から予め設定した所定の時間のみ、特定された空気袋2の前記給気側電磁弁3の開及び前記空気ポンプ5作動の作動指示信号に、又は、特定された空気袋2の前記排気側電磁弁4の開の作動指示信号に変換する。例えば、
図15に示すように、情報処理部65に左大腿給気の情報を前記左大腿給気に対応する作動指示信号に変換させ、前記作動指示信号を送受信部63に前記制御装置9に送信させる。
【0053】
前記患者用情報端末6から前記作動指示信号を受信した前記制御装置9は、前記作動指示信号を受信している間のみ、前記空気ポンプ5を作動させ、前記特定された空気袋2に接続された前記給気側電磁弁3を開にし、又は、前記特定された空気袋2に接続された前記排気側電磁弁4を開にするスイッチ作動をする。例えば、
図15に示すように、前記制御装置9が左腰給気の作動指示信号を受信したときは、患者80の左腰の下に置いてある空気袋2に作動指示信号を受信している間のみ空気が給気され前記空気袋2が膨張し高さが高くなる。
【0054】
前記形態Bの場合は、患者80が、空気袋の識別と給気又は排気が表示してある空気袋作動指示釦画像21が碁盤目状に表示してある碁盤目状表示画面10aを見ながら、視線検出手段7で膨張又は収縮させたい空気袋2を選択し、その選択した空気袋2を膨張又は収縮させる間を、瞼、手、指、腕、足、顔又は頭による微小の動きで生じるわずかな力を感知するスイッチ手段40によりオンさせて、患者80が自身の動きで、すなわち一人で膨張又は収縮させたい空気袋2を膨張又は収縮させることができる。
【0055】
次に、前記アプリ使用型で前記碁盤目状表示画面10aを有し前記視線検出手段7により作動指示する形態Cについて説明する。前記形態Cの前記作動指示手段は、
図1、
図2、
図14に示すように、前記患者用情報端末6が、前記碁盤目状表示画面を見る前記患者80の視線を検出する視線検出手段7と接続され、前記患者用情報端末6の制御部62により、前記表示画面10に表示された、前記碁盤目状表示画面10aにおける視線の位置情報を検出させ、前記検出した視線の位置情報を、注視時間の所定の閾値により前記患者80の意思とするか否かの判定をし、前記患者80の意思と判定した前記位置情報に該当する空気袋作動指示釦画像21を特定し、特定された前記空気袋作動指示釦画像21の空気袋作動指示情報を記憶部64に記憶する。
【0056】
例えば、
図14に示すように、患者80が、左腰給気が表示された前記空気袋作動指示釦画像21を見ていることを視線検出手段7により検出し左腰給気を特定し、記憶部64に左腰給気情報を記憶する。
【0057】
そして、前記空気袋作動指示釦画像21が特定されると、前記視線の前記空気袋作動指示釦画像21を前記特定後から注視されている間のみ、又は、前記特定後から予め設定した所定の時間のみ、前記患者80の意思と判定した情報を、特定された空気袋2の前記給気側電磁弁3の開及び前記空気ポンプ5作動の作動指示信号に、又は、特定された空気袋2の前記排気側電磁弁4の開及の作動指示信号に変換し、前記作動指示信号を送受信部63から前記制御装置9に送信する。前記特定後から予め設定した所定の時間は、予め時間を空気袋2の部位ごとに設定しておく。
【0058】
そして、同じ空気袋2に対して異なる時間で膨張又は収縮させたい場合には、同一の空気袋2に対して異なる時間を設定した空気袋作動指示釦画像21をそれぞれ設け、例えば、碁盤目状表示画面10aに、空気袋2の識別と前記所定の時間、給気又は排気が表示してある空気袋作動指示釦画像21が碁盤目状に表示される。すなわち、同一の識別表示された空気袋2に対して、所定の時間が5秒の空気袋作動指示釦画像21、及び、所定の時間が3秒の空気袋作動指示釦画像21が表示される。
【0059】
例えば、
図14に示すように、情報処理部65に左腰給気の情報を前記左腰給気に対応する作動指示信号に変換させ、前記作動指示信号を送受信部63に前記制御装置9に送信させる。
【0060】
そして、前記患者用情報端末6から前記作動指示信号を受信した前記制御装置9は、前記作動指示信号を受信している間のみ、前記空気ポンプ5を作動させ、前記特定された空気袋2に接続された前記給気側電磁弁3を開にし、又は、前記特定された空気袋2に接続された前記排気側電磁弁4を開にするスイッチ作動をする。例えば、
図14に示すように、前記制御装置9が左腰給気の作動指示信号を受信したときは、患者80の左腰の下に置いてある空気袋2に作動指示信号を受信している間のみ空気が給気され前記空気袋2が膨張し高さが高くなる。
【0061】
前記形態Cの場合は、患者80が、空気袋2の識別と給気又は排気が表示してある空気袋作動指示釦画像21が碁盤目状に表示してある碁盤目状表示画面10aを見ながら、視線検出手段7で膨張又は収縮させたい空気袋2の膨張又は収縮を表示した空気袋作動指示釦画像21を選択し、その選択した空気袋作動指示釦画像21を見続けることによって空気袋2の膨張又は収縮作動をオンさせて、患者80が自身の視線の動きで、すなわち一人で膨張又は収縮させたい空気袋2を膨張又は収縮させることができる。
【0062】
次に、前記アプリ使用型で前記釦表示画面10bを有し前記視線検出手段7により作動指示する形態Dについて説明する。前記形態Dの前記作動指示手段は、
図1、
図2、
図7に示すように、前記患者用情報端末6が、前記表示画面10bを見る前記患者80の視線を検出する視線検出手段7と接続され、前記患者用情報端末6により、前記表示画面10bに表示された、前記空気袋位置釦画像31a~31hにおける視線の位置情報を検出させ、前記検出した視線の位置情報を、注視時間の所定の閾値により前記患者80の意思とするか否かの判定をし、前記患者80の意思と判定した前記位置情報に該当する前記空気袋2を特定し、特定された前記空気袋2の位置情報を記憶部64に記憶する。
【0063】
例えば、
図7に示すように、患者80が、右足首の位置が表示された前記空気袋位置釦画像31を見ていることを視線検出手段7により検出し右足首を特定し、記憶部64に右足首情報を記憶する。
【0064】
そして、前記空気袋2の特定後に、前記表示画面10bに表示された前記給気釦画像32及び前記排気釦画像33における視線の位置情報を検出させ、前記検出した視線の位置情報を、注視時間の所定の閾値により前記患者80の意思とするか否かの判定をし、前記患者80の意思と判定した前記給気釦画像32又は排気釦画像33を特定し、前記給気釦画像32が特定されると、前記視線の前記給気釦画像32を前記特定後から注視されている間のみ、又は、前記特定後から予め設定した所定の時間のみ、前記患者80の意思と判定した情報を、特定された空気袋2の前記給気側電磁弁3の開及び前記空気ポンプ5作動の作動指示信号に変換し、前記作動指示信号を送受信部63から前記制御装置9に送信し、又は、前記排気釦画像33が特定されると、前記視線の前記排気釦画像33を前記特定後から注視されている間のみ、又は、前記特定後から予め設定した所定の時間のみ、前記患者80の意思と判定した情報を、特定された空気袋2の前記排気側電磁弁4の開の作動指示信号に変換し、前記作動指示信号を送受信部63から前記制御装置9に送信する。
【0065】
例えば、
図7に示すように、給気が表示された前記給気釦画像32が前記視線検出手段7で検出され注視時間が所定の閾値を超えたときは、制御部62は、情報処理部65に前記右足首情報及び前記給気情報に対応する作動指示信号に変換させ、前記作動指示信号を送受信部63に前記制御装置9に送信させる。
【0066】
そして、前記患者用情報端末6から前記作動指示信号を受信した前記制御装置9は、前記作動指示信号を受信している間のみ、前記空気ポンプ5を作動させ、前記特定された空気袋2に接続された前記給気側電磁弁3を開にし、又は、前記特定された空気袋2に接続された前記排気側電磁弁4を開にするスイッチ作動をする。
【0067】
前記形態Dの場合は、患者80が、空気袋2の位置釦、給気釦及び排気釦が別々に表示してある釦表示画面10bを見ながら、まず視線で空気袋2を選択し、次に視線で給気又は排気を選択して見続ける時間の長さに応じて、選択した空気袋2の膨張又は収縮をさせるので、患者80が自身の視線の動きで、すなわち一人で膨張又は収縮させたい空気袋2を膨張又は収縮させることができる。
【0068】
次に、前記アプリ使用型で釦表示画面10bを有し前記スイッチ手段40により作動指示する形態Eについて説明する。前記形態Eの前記作動指示手段は、
図3、
図8に示すように、前記患者用情報端末6が、
図7に示すような釦表示画面10bと接続され、空気袋選択信号、給気指示信号、又は、排気指示信号を出力する前記スイッチ手段40aと接続され、前記患者用情報端末6の制御部62により、前記患者80により選択され前記スイッチ手段40aでオンされた前記空気袋2の位置情報を記憶部64に記憶する。
【0069】
前記釦表示画面10bは、形態Dの前記釦表示画面10bと同じ表示であり、
図7に示すように、空気袋2の位置釦表示、給気釦表示及び排気釦表示が別々に表示してある。
【0070】
前記スイッチ手段40aは、
図8には手による微小の動きで生じるわずかな力を感知する、空気袋2の位置が表示された押釦41a~41h、給気が表示された押釦42、及び、排気が表示された押釦43が表示されているが、瞼、手、指、腕、足、顔又は頭による微小の動きで生じるわずかな力を感知するスイッチであればいずれのスイッチでもよい。例えば、
図8に示すように、右肩を表示した押釦を押すと、右肩のところにある空気袋2を選択した情報が記憶部64に記憶される。
【0071】
そして、前記空気袋2の選択後に、前記給気指示の前記スイッチ手段40がオンされると、制御部62は情報処理部65に、前記給気指示の前記スイッチ手段40aがオンされている間のみ、又は、前記スイッチ手段がオンされた瞬間から予め設定した所定の時間のみ、選択された空気袋2の前記給気側電磁弁3の開及び前記空気ポンプ5作動の作動指示信号に変換し、制御部62は送受信部63に、前記作動指示信号を前記制御装置9に送信させ、又は、前記排気指示の前記スイッチ手段40aがオンされると、制御部62は情報処理部65に、前記排気指示の前記スイッチ手段40aがオンされている間のみ、又は、前記スイッチ手段がオンされた瞬間から予め設定した所定の時間のみ、選択された空気袋2の前記排気側電磁弁4の開の作動指示信号に変換し、制御部62は送受信部63に、前記作動指示信号を前記制御装置9に送信させる。
【0072】
前記患者用情報端末6から前記作動指示信号を受信した前記制御装置9は、前記作動指示信号を受信している間のみ、前記空気ポンプ5を作動させ、前記選択された空気袋2に接続された前記給気側電磁弁3を開にし、又は、前記選択された空気袋2に接続された前記排気側電磁弁4を開にするスイッチ作動をする。
図8において、右肩のあとに給気が表示された押釦42を患者80がオンしそのオンを維持した時間分ほど、右肩の下に置いている空気袋2は膨張する。
【0073】
前記形態Eの場合は、患者80が、空気袋2の位置釦、給気釦及び排気釦が別々に表示してある釦表示画面10bを見ながら、空気袋2の位置釦、給気釦及び排気釦が別々に配置してあるスイッチ手段40aで空気袋2を選択し、次にスイッチ手段40aで給気又は排気を選択してスイッチオンさせている時間の長さに応じて、又は、前記スイッチ手段40aでスイッチオンした瞬間から予め設定した所定の時間のみ、選択した空気袋2の膨張又は収縮をさせるので、患者80が自身の身体の動きで、すなわち一人で膨張又は収縮させたい空気袋2を膨張又は収縮させることができる。
【0074】
次に、導通スイッチ手段50により作動指示する導通スイッチ直接制御型の形態Fについて説明する。前記形態Fの前記作動指示手段は、
図4、
図9に示すように、前記患者用情報端末6が、前記患者80によりオンオフ可能な複数の導通スイッチ手段50のうちから選択された空気袋2の給気スイッチ及びポンプスイッチがオンとなった間のみ、選択された前記給気側電磁弁3を開にしかつ前記空気ポンプ5を作動させ、あるいは、排気スイッチがオンとなった間のみ、選択された空気袋2に接続された前記排気側電磁弁4を開にする。
【0075】
前記導通スイッチ手段50は、
図9には手による微小の動きで生じるわずかな力を感知する、給気を表示した押釦の導通スイッチ51a~51h、排気を表示した押釦の導通スイッチ52a~52b、及び、ポンプを表示した押釦の導通スイッチ53があるが、瞼、手、指、腕、足、顔又は頭による微小の動きで生じるわずかな力を感知するスイッチであればいずれのスイッチでもよい。
【0076】
前記形態Fの場合は、患者80が、選択した空気袋2別の給気導通スイッチ51及びポンプ導通スイッチ53をオンさせた時間分を、あるいは、選択した空気袋2別の排気導通スイッチ52をオンさせた時間分を、選択した空気袋2を膨張又は収縮させるので、患者80が自身の身体の動きで、すなわち一人で膨張又は収縮させたい空気袋2を膨張又は収縮させることができる。
【0077】
次に、体位変更補助アプリケーションプログラムについて説明する。前記体位変更補助アプリケーションプログラムは、体位変更補助アプリケーションからなる体位変更補助アプリケーションプログラムであって、前記体位変更補助アプリケーションがインストールされた患者用情報端末6と、制御装置9とは接続されており、前記患者用情報端末6は、表示画面10を有し、身体の動きによりオンオフ信号を出力するスイッチ手段40、及び/又は、視線の動きによりオンオフ信号を出力する視線検出手段7と接続され、前記制御装置9は、前記患者80が動かしたい身体の複数の部位の下に置いた複数の空気袋2と、複数の前記空気袋2それぞれの給気側流路11に設けた常時閉式の給気側電磁弁3と、複数の前記空気袋2それぞれの排気側流路12に設けた常時閉式の排気側電磁弁4と、すべての前記給気側電磁弁3と接続された、前記空気袋2に空気を圧送する空気ポンプ5と接続され、前記患者用情報端末6からの作動指示信号を受信している間のみ、前記空気ポンプ5を作動させ、前記選択された空気袋2に接続された前記給気側電磁弁3を開にし、又は、前記選択された空気袋2に接続された前記排気側電磁弁4を開にするスイッチ作動を可能とし、前記患者用情報端末6のコンピュータを、前記空気袋2の識別、給気指示、及び、排気指示を前記表示画面10に表示する表示手段、前記表示画面10における視線の位置情報を検出させ、前記検出した視線の位置情報を、注視時間の所定の閾値により患者80の意思とするか否かの判定をする判定手段、前記視線検出手段7又は前記スイッチ手段40から、患者80により選択された空気袋識別・給気又は排気指示情報を受信すると、前記視線検出手段の場合は、患者80の意思と判定し空気袋識別・給気又は排気指示を特定した後から患者80により注視されている間のみ、又は、前記特定後から予め設定した所定の時間のみ、あるいは、前記スイッチ手段の場合は、前記スイッチ手段40がオンされている間のみ、又は、前記スイッチ手段40がオンされた瞬間から予め設定した所定の時間のみ、前記給気指示情報を受信したときは前記空気ポンプ5を作動及び前記選択された空気袋2の給気側電磁弁3を開にする作動指示信号に変換、又は、前記排気指示情報を受信したときは前記選択された空気袋2の排気側電磁弁4を開にする作動指示信号に変換する作動情報変換手段、及び、前記作動指示信号を前記制御装置9に送信する送受信手段、として機能させる。
【0078】
前記患者用情報端末6のコンピュータを、表示手段、判定手段、作動情報変換手段及び送受信手段として機能させる。
【符号の説明】
【0079】
1 体位変更補助システム
2 空気袋
3 給気側電磁弁
4 排気側電磁弁
5 空気ポンプ
6 患者側情報端末
7 視線検出手段
9 制御装置
10 表示画面
10a 基盤目状表示画面
10b 釦表示画面
11 給気側流路
12 排気側流路
13 電気配線
21 空気袋作動指示釦画像
22 カーソル
31 空気袋位置釦画像
32 給気釦画像
33 排気釦画像
40 スイッチ手段
40a 操作盤
40b スイッチ盤
41 空気袋選択釦
42 給気釦
43 排気釦
50 導通スイッチ手段
51 給気スイッチ
52 排気スイッチ
53 ポンプスイッチ
80 患者
90 ベッド