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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009253
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】固液分離設備
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/18 20060101AFI20230112BHJP
【FI】
B01D21/18 K
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183960
(22)【出願日】2022-11-17
(62)【分割の表示】P 2018220010の分割
【原出願日】2018-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】508165490
【氏名又は名称】アクアインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】米山 和彦
(57)【要約】
【課題】これまでにない新たな効果を奏する固液分離設備を提供する
【解決手段】底部に設けられたトラフ4と、トラフ4の長手方向に沿って延在し下部に開口71aが設けられた中空状の空間形成部材71と、空間形成部材71の内周面によって画定された内部空間ISに流体を吐出する吐出口73aとを備え、トラフ4は、内周面の上側部分が直線状に形成され内周面の下側部分が1/2円弧の円弧状に形成されたものであり、開口71aは、トラフ4における円弧状の内周面に対向して配置されたものであり、空間形成部材71は、空間形成部材71の外周面とトラフ4の内周面との間の最短距離が空間形成部材71の上端から開口71aに近づくにつれて短くなるようにトラフ4によって形成された溝内に配置され、断面形状が円弧の形状をしたものであって、円弧を円周の一部として含む円の中心がトラフ4の上側部分と下側部分との境界よりも下方に位置している。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受け入れた液体に含まれている固体が底部に沈降する固液分離設備であって、
前記底部に設けられた溝形成部材と、
前記溝形成部材の長手方向に沿って延在し、下部に開口が設けられた中空状の空間形成部材と、
前記空間形成部材の内周面によって画定された内部空間に流体を吐出する吐出口とを備え、
前記溝形成部材は、該溝形成部材の内周面の上側部分が直線状に形成され、該溝形成部材の内周面の下側部分が1/2円弧の円弧状に形成されたものであり、
前記開口は、前記溝形成部材における円弧状の内周面に対向して配置されたものであり、
前記空間形成部材は、該空間形成部材の外周面と前記溝形成部材の内周面との間の最短距離が該空間形成部材の上端から該空間形成部材の外周面に沿って前記開口に近づくにつれて短くなるように、該溝形成部材によって形成された溝内に配置され、断面形状が円弧の形状をしたものであって、該円弧を円周の一部として含む円の中心が、前記溝形成部材の前記上側部分と前記下側部分との境界よりも下方に位置していることを特徴とする固液分離設備。
【請求項2】
前記溝形成部材は、前記上側部分が溝幅方向外側に広がった直線状に形成されたものであることを特徴とする請求項1記載の固液分離設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受け入れた液体に含まれている固体が底部に沈降する固液分離設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、汚水処理場には、下水および雨水などの汚水を受け入れ、その汚水に含まれている砂を、池底部に配置された溝形成部材によって形成された溝内に沈降させた後、溝内に堆積した砂を集砂ピットに集めて汚水から取り除く沈砂池といった固液分離設備が設けられている場合がある。この沈砂池には、溝内に堆積した砂を集砂ピットに移送するための移送機構として、溝内に配置されたスクリューコンベアと、スクリューコンベアを駆動するための駆動装置を備えているものが存在する。このスクリューコンベアおよび駆動装置を備えた沈砂池として、たとえば特許文献1に記載されたものが知られている。以下、特許文献1に記載された方式の移送機構をスクリューコンベア式移送機構と称する。また近年では、下端部分に開口が設けられた移送空間形成部材と、その移送空間形成部材によって形成された移送空間内に流体を吐出する吐出口とを備えた移送機構が設けられた沈砂池として、特許文献2に記載されたものが開発されている。以下、特許文献2に記載された方式の移送機構をエジェクタ式移送機構と称する。このエジェクタ式移送機構における移送空間形成部材の開口は、砂が沈降する溝内に設けられており、吐出口から吐出された流体の流れによって、溝内に堆積した砂を移送空間内に吸い込む吸込口として機能する。そして、移送空間内に吸い込まれた砂は、その流体の流れによって移送方向下流側にある集砂ピットに向かって移動する。
【0003】
スクリューコンベア式移送機構を備えた沈砂池は、スクリューコンベアを駆動して砂を集砂ピットに集めるため、スクリューコンベアの駆動装置が摩耗して交換が必要になることがある。また、駆動装置からスクリューコンベアの間に配置され、スクリューコンベアに駆動力を伝達する駆動力伝達装置に汚物などが噛み込んでトラブルが生じる可能性がある。さらに、駆動力伝達装置は、汚水中に配置されるため、腐食により破損してしまう可能性もある。これらにより、スクリューコンベア式移送機構は維持管理費が高くなるという問題がある。一方、エジェクタ式移送機構を備えた沈砂池では、駆動装置や駆動力伝達装置が存在しないためトラブルも少なく、維持管理費も安くすむ。
【0004】
また、沈砂池に限らず、受け入れた液体に含まれている固体(例えば金属粉等)を底部に沈降させて液体と固体を分離させる固液分離設備は、汚水処理場の他にも使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-282607号公報
【特許文献2】特開2015-361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
昨今では、これまでにない新たな効果を奏する固液分離設備が望まれるようになってきている。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、これまでにない新たな効果を奏する固液分離設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を解決する本発明の固液分離設備は、
受け入れた液体に含まれている固体が底部に沈降する固液分離設備であって、
前記底部に設けられた溝形成部材と、
前記溝形成部材の長手方向に沿って延在し、下部に開口が設けられた中空状の空間形成部材と、
前記空間形成部材の内周面によって画定された内部空間に流体を吐出する吐出口とを備え、
前記溝形成部材は、該溝形成部材の内周面の上側部分が直線状に形成され、該溝形成部材の内周面の下側部分が1/2円弧の円弧状に形成されたものであり、
前記開口は、前記溝形成部材における円弧状の内周面に対向して配置されたものであり、
前記空間形成部材は、該空間形成部材の外周面と前記溝形成部材の内周面との間の最短距離が該空間形成部材の上端から該空間形成部材の外周面に沿って前記開口に近づくにつれて短くなるように、該溝形成部材によって形成された溝内に配置され、断面形状が円弧の形状をしたものであって、該円弧を円周の一部として含む円の中心が、前記溝形成部材の前記上側部分と前記下側部分との境界よりも下方に位置していることを特徴とする。
【0009】
この固液分離設備において、
前記溝形成部材は、前記上側部分が溝幅方向外側に広がった直線状に形成されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、これまでにない新たな効果を奏する固液分離設備を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】スクリューコンベア式移送機構を備えた沈砂池の平面図である。
図2図1に示す沈砂池のA-A断面図である。
図3】(a)は、図2に示す沈砂池のB-B断面図である。また、(b)は、図2に示す沈砂池のC-C断面図である。
図4】エジェクタ式移送機構を備えた沈砂池の平面図である。
図5図4に示す沈砂池のE-E断面図である。
図6】(a)は、図5に示す沈砂池のD-D断面図である。また、(b)は、図5に示す沈砂池のE-E断面図である。
図7図5に示す沈砂池のF-F断面図である。
図8】トラフ4の内周面4aの少なくとも一部を保護材で覆ったいくつかの例を示す図である。
図9】改修の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本発明の一実施形態である沈砂池は、汚水処理場に設置される固液分離設備であって、下水および雨水などの汚水に含まれる砂を沈降させた後、沈降させた砂を集砂ピットに移動させて汚水から取り除くものである。
【0013】
先ず、改修前の、スクリューコンベア式移送機構を備えた沈砂池について説明する。図1は、スクリューコンベア式移送機構を備えた沈砂池の平面図である。
【0014】
図1に示す、スクリューコンベア式移送機構を備えた沈砂池1は、図1における右側から下水および雨水などの汚水を受け入れる。受け入れた汚水は、この沈砂池1において、その汚水に含まれている砂を沈降させつつ図の左側に向かってゆっくりと流れていく(図1に示す直線の矢印参照)。以下、受け入れた汚水の流れにおける上流側を、単に上流側と称し、汚水の流れの下流側を、単に下流側と称する。なお、沈砂池1の上流端には、沈砂池に流れ込んできた汚水に混入している、所定の大きさよりも大きな混入物(し渣)を除去するための不図示の除塵機が設けられている。また、沈砂池1の上流端には、沈砂池1に汚水を受け入れるか遮断するかを選択するための不図示のゲートも設けられている。沈砂池1よりも下流側には、沈砂池1によって砂が取り除かれた汚水を貯留する不図示のポンプ井が配置されている。ポンプ井の内部には、揚水ポンプが設けられ、揚水ポンプによって吸引された汚水は、次の段階の汚水処理を行う沈殿池に送られる。
【0015】
図1に示すように、沈砂池1は、集砂ピット2と、池底面3と、トラフ4と、スクリューコンベア式移送機構5とを備えた、平面視で略長方形状の池である。沈砂池1の上部には、沈砂池1の一部を塞ぐように、沈砂池の短手方向に掛け渡された2つの梁9が設けられている。集砂ピット2は、沈砂池1の池底部における下流側部分に設けられている。集砂ピット2には、集砂ピット2内の砂を池外に搬出する不図示の揚砂ポンプが設けられている。池底面3は、集砂ピット2よりも上流側であって池幅方向左右それぞれに形成された面であり、沈砂池1の池底部に打設されたコンクリートの表面で構成されている。トラフ4は、集砂ピット2よりも上流側であって、池底部における沈砂池1の池幅方向中央に設けられている。本実施形態のトラフ4は、溝形成部材の一例に相当する。池底面3は、池幅方向両側からトラフ4に近づくにつれて下方に向かうように傾斜しており、その最下部でトラフ4に接続している。トラフ4により上方に向かって開放した溝41が形成されている。このトラフ4の長手方向、すなわち溝41の長手方向は、沈砂池1の長手方向と一致している。本実施形態におけるトラフ4の長手方向の長さは5mである。トラフ4の下流側端部は、集砂ピット2に接続している。沈砂池1に流れ込んだ汚水中の砂の多くは、集砂ピット2、池底面3、またはトラフ4に向かって沈降する。池底面3に向かって沈降した砂は、傾斜した池底面3を滑り落ちて溝41に堆積する。
【0016】
溝41の長手方向中央部分であってトラフ4の内周面4aには、ライナー42が設置されている。ライナー42は、ライナーベース421とライナートラフ422とから構成されている。ライナーベース421は板厚6mmの高張力鋼板によって構成されている。また、ライナートラフ422は板厚12mmの高張力鋼板によって形成されている。なお、ライナーベース421とライナートラフ422のそれぞれ又は一方を耐摩耗性の高い樹脂などの他の材料で形成してもよい。ライナートラフ422は、ライナーベース421に固定されている。ライナーベース421には、上下方向に長く形成された長孔421aが8つ設けられている。この長孔421aを貫通して不図示のボルトを池底面3にねじ込むことで、ライナー42は、着脱自在に池底面3に取り付けられている。なお、上下方向に長い長孔421aを設けることで、ライナー42は、その上下方向の取り付け位置が調整自在になっている。ライナートラフ422は、後に詳述するスクリューコンベア51が撓んで接触することで摩耗する。ライナートラフ422の摩耗量が一定量を超えたら、上述のボルトを取り外すことで、ライナー42を新しいものと取り換えることができる。
【0017】
図2は、図1に示す沈砂池のA-A断面図である。なお、この図2では、トラフの断面を示すハッチングを省略している。また、図2には、汚水の流れ方向が直線の矢印で示されている。
【0018】
図2に示すように、スクリューコンベア式移送機構5は、スクリューコンベア51と、駆動装置52と、駆動力伝達装置53と、第1カップリング54と、第2カップリング55とを有する。駆動装置52は、上流側の梁9の上に配置されたモータ521および減速機522、並びにその減速機522から池底方向に向かって伸びた駆動軸523によって構成されている。モータ521を駆動することで、減速機522を介して駆動軸523が回転する。駆動軸523は、第1カップリング54によって駆動力伝達装置53に連結されている。
【0019】
駆動力伝達装置53は、池底部であって、溝41の長手方向の一端につながった伝達装置設置空間V1に配置されている。この伝達装置設置空間V1は、池底面3およびトラフ4よりも上流側に設けられた直方体の空間である。駆動力伝達装置53は、駆動方向を変換する機能と減速機能とを備えた装置である。この駆動力伝達装置53は、上下方向に延びる軸を回転中心とした回転運動を溝41の長手方向に延びる軸を回転中心とした回転運動に変換しつつ回転数を低下させるものである。伝達装置設置空間V1には、汚水に含まれた砂の一部が沈降してくる。この沈降してきた砂によって、駆動力伝達装置53が埋もれてしまうことがあるため、駆動力伝達装置53は防砂機能を備えている。
【0020】
駆動力伝達装置53は、第2カップリング55によってスクリューコンベア51の一端に連結されている。従って、モータ521を駆動すると、駆動力伝達装置53等を介してスクリューコンベア51が回転する。スクリューコンベア51は、溝41内に配置された、周囲に螺旋形の羽根を有する中空状の軸である。なお、スクリューコンベア51を、周囲に螺旋形の羽根をもつ中実状の軸で構成してもよい。スクリューコンベア51の軸方向は、溝41の長手方向と一致している。スクリューコンベア51の他端は、集砂ピット2に少しだけ突出している。そして、その他端は、所定の位置に配置された軸受511によって支持されている。軸受511は、沈砂池1の左右側壁の間に掛け渡され、不図示のボルトによって側壁に固定された支持軸512によって支持されている。スクリューコンベア51が回転することにより、スクリューコンベア51の周囲の羽根が溝41内に堆積した砂を集砂ピット2に向かって押し込む。これにより、溝41内に堆積した砂は集砂ピット2に移送される。すなわち、図2における右側から左側に向かう方向が砂の移送方向になる。
【0021】
図3(a)は、図2に示す沈砂池のB-B断面図である。また、図3(b)は、図2に示す沈砂池のC-C断面図である。これらの図では、図の奥側から手前側に向かう方向が砂の移送方向になる。なお、この図3(a)および図3(b)ではトラフの断面を示すハッチングを省略している。
【0022】
図3(a)に示すように、トラフ4は、断面がU字状のコンクリートフリュームで構成されている。トラフ4は、下側部分が内径338mmの1/2円弧に形成され、上側部分が溝幅方向外側に2°広がった直線状に形成されている。また、トラフ4は、3本のアンカーボルト411によって池底部に打設されたコンクリートに固定されている。スクリューコンベア51は、羽根のほんの一部が溝41よりも上方に突出しているが、その他は溝41内に配置されている。スクリューコンベア51の羽根の外径は320mmである。すなわち、スクリューコンベア51の外径は、トラフ4の下側部分の円弧の内径よりも少し小さい。従って、スクリューコンベア51の羽根とトラフ4と間には隙間が形成されている。また、スクリューコンベア51の軸中心は、トラフ4の下側部分の円弧を円周の一部として含む円の中心よりも13mm上方に位置している。
【0023】
上述したように、溝41の長手方向中央部分であってトラフ4の内周面4aには、ライナー42が設置されている。図3(b)に示すように、ライナー42を構成するライナーベース421は、トラフ4の内周面4aを覆い、トラフ4よりも上方まで延びており、池底面3の下端部分も覆っている。ライナー42が配置された溝41の長手方向中央部分であってトラフ4の上端からライナーベース421の上端近傍までの部分は、図3(a)に示した溝41の長手方向中央部分以外と比較して池底面3が中央に少量突出している。この突出した部分において、ライナーベース421は、不図示のボルトによって池底面3に着脱自在に固定されている。ライナートラフ422は、ライナーベース421の下端内周面に貼り付けられている。スクリューコンベア51は、自重や砂を移送する際の反力によって下方に撓むことがある。撓みが大きくなると、スクリューコンベア51の軸方向の中央部分にある羽根がライナートラフ422に接触し、それ以上の撓みが抑制される。その接触した状態でスクリューコンベア51が回転すると、ライナートラフ422は摩耗する。ライナートラフ422が所定量摩耗したら、上述のボルトを外してライナー42を交換することで容易にメンテナンスを行うことができる。
【0024】
次に改修後の、エジェクタ式移送機構を備えた沈砂池について説明する。集砂ピット2、池底面3、トラフ4、および梁9は、上述した改修前のスクリューコンベア式移送機構5を備えた沈砂池1のものを改修後もそのまま用いるため、これらについては、これまで用いた符号を付して説明は省略する。
【0025】
図4は、エジェクタ式移送機構を備えた沈砂池の平面図である。この図4では、沈砂池の池底部の構造を示すため、沈砂池の上部にある梁は省略している。また、図5は、図4に示す沈砂池のE-E断面図である。この図5では、トラフの断面を示すハッチングを省略している。この図4および図5では、図の右側から左側に向かう方向が砂の移送方向になる。また、図4および図5には、汚水の流れ方向が直線の矢印で示されている。
【0026】
図4に示すように、改修後の沈砂池10は、図1図3に示した沈砂池1のスクリューコンベア式移送機構5に代えてエジェクタ式移送機構7を備えている。エジェクタ式移送機構7は、空間形成部材71と、支持部材72と、ノズル73と、ノズル用配管74とを有する。空間形成部材71は、下部に開口が設けられた中空長尺状の部材であって、溝41の長手方向に沿って延在している。空間形成部材71の延在方向の長さは5.05mであり、上流側の一端はトラフ4の一端と一致している。従って、空間形成部材71の他端は、トラフ4の他端よりも下流側に0.05m長く形成され、その長さ分だけ空間形成部材71は集砂ピット2内に突出している。空間形成部材71は、その一端側に設けられた副空間形成部712と主空間形成部711とを有する。副空間形成部712の断面形状は、主空間形成部711の断面形状と同一である。副空間形成部712は、主空間形成部711と比較して延在方向の長さが大幅に短い。副空間形成部712と主空間形成部711とは、ボルトとナットからなる締結部材713によって着脱自在に締結されている。支持部材72は、空間形成部材71の延在方向に等間隔で4つ設けられている。主空間形成部711は溝41内の所定の位置に配置されるように支持部材72によって支持されている。副空間形成部712には支持部材72が設けられておらず、主空間形成部711によって主空間形成部711に連なる位置に支持されている。主空間形成部711の内周面711a(図6(a)参照)と副空間形成部712の内周面712a(図7参照)は、空間形成部材71の延在方向に連続している。ノズル73の先端部分は、副空間形成部712によって画定された内部空間IS内(図7参照)に配置されている。主空間形成部711に対して副空間形成部712を着脱自在に締結しているので、例えばノズル73がつまってしまったとき等に、副空間形成部712を主空間形成部711から取り外してノズル73を露出させることで容易にメンテナンスができる。空間形成部材71および支持部材72については後にさらに詳しく説明する。
【0027】
ノズル73は、丸パイプを上下方向から扁平状につぶして形成されたものであり、その先端に池幅方向に長く上下方向には短く形成された吐出口73aが形成されている。空間形成部材71の延在方向の両端は開放されている。ノズル73の先端部分はその開放された一方の端部から内部空間IS内(図7参照)に挿入されている。吐出口73aは、内部空間IS内に配置されており、砂を移送する際には空間形成部材71の延在方向に向かって流体を吐出する。吐出口73aから吐出する流体は、沈砂池10に貯留された汚水を不図示のポンプでくみ上げたものである。ただし、他の池や水道等の水を吐出口73aから吐出する流体として用いてもよい。また、この流体は、液体と気体が混合されたものであってもよいが、気体の割合が多すぎると吐出した液体の流れが弱まりやすいので、混合されたものを用いる場合でも気体の割合は少ない方が好ましい。本実施形態では、吐出口73aから吐出される汚水の吐出圧力は0.09MPaで、噴射水量は毎分1500リットルである。ただし、吐出圧力は0.05MPa以上0.3MPa以下であればよく、噴射水量は空間形成部材71の長さに応じて適宜調整すればよい。また、水の吐出流速は、8m/sec以上が好ましい。
【0028】
ノズル用配管74は、ノズル73に接続されている。このノズル用配管74は、上述の流体をノズル73に供給するためのものである。図5に示すように、ノズル用配管74の供給方向上流部分には、流量調整弁741および電動弁742が設置されている。なお、図5では流量調整弁741よりも供給方向上流側にあるノズル用配管74は図示省略している。ノズル73の一部およびノズル用配管74の供給方向下流端部分は、改修前に駆動力伝達装置53が設置されていた伝達装置設置空間V1(図2参照)に配置されている。以下、伝達装置設置空間V1のうち、このノズル73の一部およびノズル用配管74の供給方向下流端部分が配置された空間を配管設置空間V3と称する。配管設置空間V3は、伝達装置設置空間V1よりも小さな直方体をしている。また、配管設置空間V3は、溝41の長手方向の一端につながっている。伝達装置設置空間V1であった空間のうち配管設置空間V3を除いた部分には、図4に示すように、配管設置空間V3に近づくにつれて下方に向かう傾斜面8が形成されている。この傾斜面8は、溝41に近づくにつれて下方に向かうように傾斜しているともいえる。この傾斜面8は、上流傾斜面81と左右傾斜面82とで構成されている。上流傾斜面81は、配管設置空間V3を基準にして溝41とは反対側に形成され、配管設置空間V3の上流側の辺に連なっている。左右傾斜面82は、配管設置空間V3の池幅方向両端の辺に連なっている。ただし、左右傾斜面82を形成せず、傾斜面8として上流傾斜面81のみを形成してもよい。上流傾斜面81のみを形成する場合は、上流傾斜面81の、配管設置空間V3よりも池幅方向外側部分を池底面3まで延在させることが望ましい。傾斜面8は、打設されたコンクリートとの表面で構成されている。図5では、打設されたコンクリートの断面がクロスハッチングで示されている。傾斜面8を形成することで、傾斜面8に沈降してきた砂を配管設置空間V3に向かって滑り落とすことができる。上流傾斜面81の傾斜角度と左右傾斜面82の傾斜角度は同一である。また、本実施形態の傾斜面8の傾斜角度は、池底面3の傾斜角度よりも緩い(図7参照)が、これらの傾斜角度を全て一致させてもよい。傾斜面8を滑り落ちて、配管設置空間V3の下方に堆積した砂は、吐出口73aから流体を吐出した際に内部空間IS内(図7参照)に吸い込まれ、内部空間ISに吐出された汚水の流れによって集砂ピット2に向かって移送される。駆動力伝達装置53を撤去して伝達装置設置空間V1をそのまま残しておくと、伝達装置設置空間V1の池幅方向両側端部や伝達装置設置空間V1の上流側端部に堆積した砂は吐出口73aから遠いところにあるため、吐出口73aから流体を吐出しても内部空間ISに吸い込まれず残留してしまう。傾斜面8を形成することで、それらの端部に砂が残留してしまうことを防止できる。
【0029】
図6(a)は、図5に示す沈砂池のD-D断面図である。また、図6(b)は、図5に示す沈砂池のE-E断面図である。また、図7は、図5に示す沈砂池のF-F断面図である。これらの図では、図の奥側から手前側に向かう方向が砂の移送方向になる。図7では、傾斜面が二点鎖線で示され、沈砂池を形作っているコンクリート等の断面を示すハッチングは省略されている。なお、この図6(a)、図6(b)、および図7ではトラフの断面を示すハッチングは省略している。
【0030】
図6(a)に示すように、空間形成部材71は、下端部分に開口71aを有する5/6円の断面形状をしている。すなわち、空間形成部材71の断面形状は、中心71cを中心点とした円の一部からなる円弧の形状をしている。この空間形成部材71は、板厚3mmのステンレス製の板材を、内径150mmの円弧状に成形したものである。開口71aの幅は80mmである。この開口71aは、空間形成部材71の全長に渡って設けられている。また、この開口71aは、トラフ4の内周面4aの下端部分に対向して配置されており、溝41に堆積した砂を吸い込む吸込口として機能する。空間形成部材71は、溝41内を仕切っている。空間形成部材71によって形成された内部空間ISは、砂を移送する移送空間になる。空間形成部材71は、上側部分が閉塞した円弧状の断面を有しているので、沈砂池10内を空間形成部材71の上側部分に向かって沈降してきた砂は、空間形成部材71の上側部分の外表面を滑り落ちやすい。滑り落ちた砂は、溝41の下方に堆積する。また、空間形成部材71の、中心71cよりも下側の内部空間ISは、下方の開口71aに向かうにつれて池幅方向が狭くなっている。これにより、内部空間ISに吸い込まれた砂が内部空間ISから外に漏れ出にくい。なお、上述したように、トラフ4の下側部分の円弧の内径は338mmであるので、トラフ4の下側部分の内径は空間形成部材71の内径の倍以上の径を有している。
【0031】
空間形成部材71には、空間形成部材71の延在方向に等しく間隔をあけて4箇所に被支持部715が固定されている。被支持部715は、空間形成部材71の外周面71bに溶接されたものである。被支持部715は、後述する支持部材72と組み合わせて用いられるものである。図6(a)には、被支持部715と支持部材72の組みのうちの一つが示されている。他の3つの被支持部715と支持部材72も同一の構成をしているので他の3つの支持部材72の説明は省略する。被支持部715は、支持部材72によって支持されている。支持部材72は、支持板721と2本の支持ネジ軸722とを有する。支持板721は、断面がL字状のステンレス鋼板で構成されている。支持板721の下側部分における溝幅方向中央部分721aは板面が水平方向であり、支持板721の下側部分における溝幅方向両端部分721bは板面が池底面3と同一の傾斜角度で傾斜している。支持部材72は、溝幅方向両端部分721bに設けられた不図示の孔を貫通した不図示のボルトによって池底面3に固定されている。溝幅方向中央部分721aには溝幅方向に長い不図示の長孔が2つ形成され、その長孔を支持ネジ軸722が貫通している。支持ネジ軸722は、軸の外周部分にネジが形成された軸である。この支持ネジ軸722にネジ結合された2つのナット723が、溝幅方向中央部分721aを上下から挟み込んでいる。これにより、支持ネジ軸722は上下方向の位置および溝幅方向の位置を調整自在に支持板721に固定されている。また、支持ネジ軸722は、被支持部715の上端部分に形成された不図示の孔も貫通している。支持ネジ軸722には、ナット723とは別の2つのナット724がネジ結合されており、このナット724が被支持部715の上端部分を上下から挟みこんでいる。これにより、被支持部715は上下方向の位置を調整自在に支持ネジ軸722に保持されている。この被支持部715と支持部材72により、空間形成部材71は、上下方向および溝幅方向の位置を調整自在に沈砂池1に固定されている。なお、支持ネジ軸722は、被支持部715および支持部材72のうちの一方に溶接などで固定されていてもよい。また、空間形成部材71の、上下方向および溝幅方向の位置を調整する必要がない場合、被支持部715と支持部材72とを一体に形成してもよい。ただし、空間形成部材71が配置される位置を上下方向および溝幅方向に調整自在にしておくことで、空間形成部材71を設置する際に空間形成部材71の高さ方向および溝幅方向の位置を施工現場で任意に設定することができるので好ましい。なお、空間形成部材71の、上下方向の位置および溝幅方向の位置うちの一方のみを調整自在にしてもよい。また逆に、上下方向の位置および溝幅方向に加え、空間形成部材71の延在方向にも調整自在に構成してもよい。
【0032】
上述したように、トラフ4の断面形状は、上側部分が直線状に形成され、下側部分が円弧状に形成されている。また、上述したように、空間形成部材71の断面形状は、下端部分に開口71aを有する円弧の形状である。そして、本実施形態では、その円弧を円周の一部として含む円の中心71cが、トラフ4の直線状部分とトラフ4の円弧状部分との境界線41bよりも下方に位置に配置されている。この配置にすることで、空間形成部材71の外周面71bとトラフ4の内周面4aとの間の最短距離は、空間形成部材71の上端から空間形成部材71の外周面71bに沿って開口71aに近づくにつれて短くなる。吐出口73a(図5参照)から、空間形成部材71によって形成された内部空間IS内に汚水を吐出すると、その内部空間IS内に汚水の流れが発生する。そして、流体の流れによって内部空間ISと空間形成部材71の外側との間で圧力差が生じる。すなわち、流体の流れが発生している内部空間ISには負圧が生じる。溝41内に堆積した砂は、負圧によって開口71aから内部空間IS内に吸い込まれる。その際、空間形成部材71の外周面71bとトラフ4の内周面4aとの間の最短距離が開口71aに近づくにつれて短くなっているので、溝41の下端部分において開口71a側に向かう砂の流れが速くなる。これにより、砂を開口71aから吸い込みやすくなり、砂が溝41に残留してしまうことを抑制できる。また、トラフ4がU字状の断面形状をしていると、円弧状の断面形状をしている場合と比較して溝41に大量の砂を堆積することができる。内部空間IS内に吸い込まれた砂は、内部空間IS内に生じている汚水の流れによって集砂ピット2に向かって移送される。
【0033】
図7に示すように吐出口73aの中心と、空間形成部材71の中心71cは一致している。また、吐出口73aの中心から吐出される汚水の吐出方向と空間形成部材71の延在方向は一致している。これらにより、吐出口73aが吐出した汚水は、吐出方向と直交する放射方向へ拡散しにくい。さらに、空間形成部材71によって、吐出口73aが吐出した汚水は、下方の開口71a以外の方向への拡散が防止されるため、長距離にわたって内部空間IS内で汚水の流れが維持される。
【0034】
図6(b)に示すように、改修後の沈砂池10では、改修前にあったライナー42は撤去されているので、溝41の長手方向中央部分もトラフ4の内周面4aが露出している。なお、改修前にライナー42が取り付けられていた部分は、池底面3の下端部分に池幅方向中央側に向かって突出した突出部分3aが形成されている。本実施形態では、この突出部分3aを残したままにしているが、ライナー42を撤去する際に斫って取り除いてもよい。
【0035】
また、トラフ4の内周面4aの少なくとも一部を保護材で覆ってもよい。
【0036】
図8は、トラフ4の内周面4aの少なくとも一部を保護材で覆ったいくつかの例を示す図である。
【0037】
図8(a-1)は、トラフ4の長手方向に沿って断面したトラフ底部の断面図であり、同図(a-2)は、同図(a-1)に底部が示されたトラフ4を、長手方向に交わる方向に断面したときの断面図である。
【0038】
この例では、ライナー42が撤去されており、円弧状の溝形成部材の新たな設置やコンクリートの打設は行われていないが、トラフ4の内周面4aには保護材61が設けられている。この保護材61は、トラフ4の内周面4aの全面を覆うよう塗布された樹脂製の保護層である。したがって、空間形成部材71の上端よりも上まで保護材61が設けられている。なお、保護材61は、トラフ4よりも高く設けてもよい。また、保護材61は、トラフ4の内周面4aに沿って設けられており、内周面4aと同じ形状である。エジェクタ式移送機構7によって移送される砂によって、トラフ4の内周面4aが摩耗することが考えられるが、この保護材61を設けておくことで、トラフ4の内周面4a自体が摩耗してしまうことを防ぐことができる。樹脂製の保護層である保護材61が摩耗した場合には、再度、保護層を塗布すればよい。保護層の再塗装の方が、トラフ4の交換よりも安価にすみ、保護材61を設けておく方が維持管理費が低額におさまる。
【0039】
図8(b-1)も、トラフ4の長手方向に沿って断面したトラフ底部の断面図であり、同図(b-2)は、同図(b-1)に底部が示されたトラフ4を、長手方向に交わる方向に断面したときの断面図である。
【0040】
図8(b-1)および同図(b-2)に示す例では、ライナー42は撤去されておらず、円弧状の溝形成部材の新たな設置やコンクリートの打設も行われていない。この例における保護材62は、ライナートラフ422と同じ材質の高張力鋼板であって、例えば、ボルト止め等によって取り替え可能に設置されている。
【0041】
図8(b-2)に示すように、ライナー42が残された部分では、ライナートラフ422を囲むように保護材62が設けられ、保護材62はライナーベース421の一部を覆っている。図8(b-2)に示す保護材62の厚さは、ライナートラフ422の厚さと同じ厚さである。このため、ライナートラフ422との段差は生じておらず、砂の残留を防止できる。
【0042】
一方、ライナー42が設けられていない部分では、図8(b-1)に示すように、保護材62はトラフ4の内周面4aに設けられており、図8(b-1)に示す保護材62は、ライナーベース421の厚さとライナートラフ422の厚さを足した厚さである。このため、ライナー42との段差も生じていない。
【0043】
この例における保護材62は、空間形成部材71の上端よりも低いところまでしか設けられていないが、それでも、砂の移送によってトラフ4の内周面4aが摩耗してしまうことを抑えることができる。鋼板製の保護材62が摩耗した場合には、保護材62を取り替えればよく、保護材62の取り替え費用の方が、トラフ4の交換よりも安価にすみ、鋼板製の保護材62を設けておいても維持管理費が低額におさまる。
【0044】
なお、保護材62は、高張力鋼板に代えてステンレス鋼板等であってもよい。また、保護材62は、空間形成部材71より下方の部分のみに設けられてもよいし、空間形成部材71の開口71aに対向する部分のみに設けられてもよい。
【0045】
図8(c-1)も、トラフ4の長手方向に沿って断面したトラフ底部の断面図であり、同図(c-2)は、同図(c-1)に底部が示されたトラフ4を、長手方向に交わる方向に断面したときの断面図である。
【0046】
図8(c-1)および同図(c-2)に示す例でも、ライナー42は撤去されておらず、円弧状の溝形成部材の新たな設置やコンクリートの打設も行われていない。この例における保護材63は、織布あるいは不織布等に硬化性樹脂を含浸したものや樹脂の板材を接着させるようなライニング材である。
【0047】
図8(c-2)に示すように、ライナー42が残された部分では、ライナートラフ422の上から保護材63が設けられ、ライナートラフ422は保護材63によって覆われている。保護材63の、ライナートラフ422の縁周辺を覆う部分では、なだらか傾斜しており、急激な段差は生じておらず、砂の残留を抑えることができる。
【0048】
一方、ライナー42が設けられていない部分では、図8(c-1)に示すように、保護材62はトラフ4の内周面4aに設けられている。また、図8(c-1)に示すように、保護材63の、ライナー42の縁周辺を覆う部分でも、なだらか傾斜しており、急激な段差は生じておらず、砂の残留を抑えることができる。
【0049】
この例における保護材63は、空間形成部材71の上端と同じ高さまでしか設けられていないが、砂の移送によってトラフ4の内周面4aが摩耗してしまうことを抑えることができる。ライニング材である保護材63が摩耗した場合には、保護材63を再度ライニングすればよく、保護材63のライニング費用の方が、トラフ4の交換よりも安価にすみ、ライニング材である保護材62を設けておいても維持管理費が低額におさまる。
【0050】
図9は、改修の流れを示すフローチャートである。
【0051】
図1図3に示したスクリューコンベア式移送機構5を備えた沈砂池1を、図4図7に示したエジェクタ式移送機構7を備えた沈砂池10へ改修する流れの一例を図2図5および図9等を参照して説明する。改修においては、図2に示したスクリューコンベア式移送機構5の撤去作業を行うが、この撤去作業の前に不図示のゲートを閉じて沈砂池1に流れ込んでくる汚水を遮断し、沈砂池1の水を不図示のポンプで吸い上げて沈砂池1を空にしておく(改修前作業)。そして、第2カップリング55を緩め、軸受511および支持軸512を取り除き、溝41内に配置されていたスクリューコンベア51を第2カップリング55から引き抜いて撤去する(ステップS1)。次に、第1カップリング54を緩め、上流側の梁9の上に配置されたモータ521および減速機522を撤去し、駆動軸523を第1カップリング54から引き抜く(ステップS2)。そして、第1カップリング54と第2カップリング55とともに駆動力伝達装置53を地上に持ち上げて撤去する(ステップS3)。その後、溝41の長手方向中央部分に設置されていたライナートラフ422をライナーベース421とともに撤去する(ステップS4)。以上によりスクリューコンベア式移送機構5の撤去作業が完了する。撤去作業後の、ライナートラフ422およびライナーベース421が設置されていた部分は、ライナートラフ422およびライナーベース421の厚み分だけ溝41の断面積が拡大する。そして、溝41のうち、上流側端部および下流端部などの、ライナートラフ422およびライナーベース421が設置されていた以外の部分の断面積は改修前と同一である。すなわち、スクリューコンベア51が撤去された後の溝41は、撤去される前の断面積以上に保たれている。これらの断面積を保ったまま、空間形成部材71やノズル73等が設置される。
【0052】
次に、図5に示したエジェクタ式移送機構7の設置作業を行う。この設置作業では、先ず伝達装置設置空間V1(図2参照)のうち、配管設置空間V3以外の部分にコンクリートを打設して上流傾斜面81と左右傾斜面82を形成する(ステップS5)。その後、沈砂池10の側壁および左右傾斜面82の一方に沿って地上から配管設置空間V3までノズル用配管74を設置し、配管設置空間V3側の配管端部に、吐出口73aを有するノズル73を取り付ける(ステップS6)。最後に、スクリューコンベア51が撤去された溝41内に空間形成部材71を置き、支持部材72を池底面3に固定しする。そして、必要に応じて空間形成部材71の高さ位置を支持ネジ軸722によって調整しながら支持部材72に空間形成部材71を固定する(ステップS7)。このステップS6とS7が移送機構設置工程の一例に相当する。このステップS6とS7により、吐出口73aは内部空間IS内に配置される。
【0053】
この改修では、池底面3をそのまま利用するだけでなく、スクリューコンベア51が配置されていた溝41に新たな部材を追加することなく、スクリューコンベア式移送機構5を備えた沈砂池1からエジェクタ式移送機構7を備えた沈砂池10に改修している。すなわち、溝41から図2に示したライナー42を撤去する以外は、トラフ4をそのままエジェクタ式移送機構7に用いている。従って、エジェクタ式移送機構7を備えた沈砂池10への改修を安価に実施できる。なお、ライナー42を撤去しないで残しておいても構わない。しかし、ライナー42が残っていると溝41の長手方向の途中に段差ができてしまうので、砂が段差で堰き止められて内部空間ISに砂が吸い込めずに段差部分では砂が残留してしまう虞がある。このためライナー42は撤去することが望ましい。
【0054】
また、駆動力伝達装置53を撤去しないで伝達装置設置空間V1に残しておいても構わない。しかし、特に駆動力伝達装置53よりも上流側に堆積した砂は、駆動力伝達装置53に堰き止められて移送されにくく長期間滞留してしまうことがあるので、駆動力伝達装置53は撤去することが好ましい。また、駆動装置52も、撤去しないで残しておいても構わない。なお、残しておく場合は、ノズル用配管74のうち地上にある部分を、駆動装置52を避けるように図5等に示したものとは形状を変更する必要がある。加えて、軸受511および支持軸512も撤去しないで残しておいても構わないが、特に軸受511は、空間形成部材71の移送方向下流端の一部を塞ぐ位置に存在し、内部空間IS内を流れる汚水の流れを妨げてしまう虞があるので撤去することが望ましい。
【0055】
また、図9に示す、改修の流れを示すフローチャートでは、溝内周面保護工程が含まれていないが、空間形成部材71を固定する(ステップS7)前に、図8を用いて説明した保護材61~63を設ける工程を実施してもよい。すなわち、スクリューコンベア51が撤去されたトラフ4の内周面4aの少なくとも一部を保護材61~63で覆う溝内周面保護工程を実施してもよい。この溝内周面保護工程は、ステップS2の実施後、ステップS7の実施前に実施すればよく、実施タイミングは限定されない。例えば、ステップS6の実施前に実施してもよい。また、ライナー42の撤去を行うステップS4を実施せずに、溝内周面保護工程を実施する場合があってもよい。溝内周面保護工程を実施したとしても、円弧状の溝形成部材の新たな設置やコンクリートの打設を行う必要がないため、スクリューコンベア式移送機構を備えた固液分離設備からエジェクタ式移送機構を備えた固液分離設備への改修を安価に実施できる。さらに、図8に示す保護材61~63で覆われたトラフ4の内周面4aは、砂の移動による摩耗から保護される。
【0056】
本発明は上述の実施形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形を行うことが出来る。たとえば、トラフ4をコンクリートフリュームで構成したが、コンクリートフリュームを用いずにコンクリートを打設して形成してもよい。この場合、コンクリートの表面部分が溝形成部材に相当する。また、駆動力伝達装置53は、駆動方向を変換する機能のみを有するものであってもよい。また、吐出口73aを内部空間IS内に配置した例を示したが、内部空間IS内に汚水を吐出する位置であれば、吐出口73aは内部空間ISの外にあっても構わない。また、吐出口73aを、空間形成部材71の延在方向の一端によって形成される面に一致した位置、つまり内部空間ISの延在方向端部の境界面に配置しても構わない。本実施形態では、スクリューコンベア51を撤去してから駆動力伝達装置53を撤去して駆動装置52を撤去し、その後にライナー42を撤去しているが、撤去の順番は異なっていてもよく、スクリューコンベア51と駆動力伝達装置53と駆動装置52とライナー42のうちのいくつかまたは全てを同時に撤去してもよい。さらに、駆動力伝達装置53、駆動装置52、およびライナー42は、空間形成部材71を設置した後に撤去してもよい。加えて、駆動装置52およびライナー42は、ノズル用配管74およびノズル73を設置、または傾斜面8を形成した後に撤去しても良い。また、本実施形態では、傾斜面8を作成してからノズル用配管74およびノズル73を設置し、その後に空間形成部材71を配置したが、こららの順番は異なっていてもよい。ただし、傾斜面8を形成する際にノズル用配管74およびノズル73が先に設置されていると、それらが傾斜面8の形成時に邪魔になる場合があるので、傾斜面8を形成してからノズル用配管74およびノズル73を設置することが望ましい。また、空間形成部材71、ノズル用配管74およびノズル73を設置前に組み合わせて一体化してから設置してもよい。加えて、本実施形態の空間形成部材71は、断面が円弧の形状をしているが、例えば下方が開放したコ字状の断面形状をしたものなどであってもよい。また、本実施形態のトラフ4は、断面がU字状をしているが、例えばV字状や上方が開放したコ字状の断面形状をしたものや円弧のみからなる断面形状(例えば、1/2円弧形状や1/2円弧未満の円弧形状や、1/2円弧を超える円弧形状)をしたものなどであってもよい。
【0057】
以上、汚水処理場に設置される沈砂池を例にあげて説明したが、本発明は、同じく汚水処理場に設置される沈殿池にも応用することができる。また、受け入れた液体に含まれている固体(例えば金属粉等)を底部に沈降させて液体と固体を分離させる固液分離設備は、汚水処理場の他にも使用されており、本発明は、広く一般の固液分離設備にも適用することができる。
【0058】
これまでに説明した固液分離設備は、
受け入れた液体に含まれている固体が底部に沈降する固液分離設備であって、
前記底部に設けられ円弧状の内周面を有する溝形成部材と、
前記溝形成部材の長手方向に沿って延在し、下部に開口が設けられた中空状の空間形成部材と、
前記空間形成部材の内周面によって画定された内部空間に流体を吐出する吐出口とを備え、
前記開口は、前記溝形成部材における円弧状の内周面に対向して配置されたものであり、
前記空間形成部材は、前記空間形成部材の外周面と前記溝形成部材の内周面との間の最短距離が該空間形成部材の上端から該外周面に沿って前記開口に近づくにつれて短くなるように、該溝形成部材によって形成された溝内に配置されたものであることを特徴としてもよい。
【0059】
この固液分離設備には、本発明の第1又は第2の固液分離設備の改修方法によって改修された固液分離設備が少なくとも含まれる。
【0060】
この固液分離設備によれば、前記溝の下端部分において前記開口側に向かう固体の流れが速くなるので、固体を該開口から吸い込みやすくなり、固体が該溝に残留してしまうことを抑制できる。したがって、本発明の固液分離設備は、これまでにない新たな効果を奏する固液分離設備である。
【0061】
なお、前記溝形成部材は、円弧状の断面形状のものであってもよいし、略U字状の断面形状のものであってもよい。ただし、前記溝形成部材が略U字状の断面形状をしていると、円弧状の断面形状をしている場合と比較して前記溝に大量の固体を堆積することができる。
【0062】
また、この固液分離設備において、前記溝形成部材は、内周面の上側部分が直線状に形成され、該内周面の下側部分が円弧状に形成されたものであり、
前記空間形成部材は、断面形状が円弧の形状をしたものであって、
前記円弧を円周の一部として含む円の中心が、前記溝形成部材の前記上側部分と前記下側部分との境界よりも下方に位置していてもよい。
【0063】
こうすることで、前記空間形成部材と前記溝形成部材との最短距離を、該空間形成部材の上端から該空間形成部材の外周面に沿って前記開口に近づくにつれて短くさせることができる。
【0064】
ところで、昨今では、スクリューコンベア式移送機構を備えた固液分離設備から、エジェクタ式移送機構を備えた固液分離設備へなるべく低額で改修することが望まれるようになってきている。
【0065】
これまでに説明した第1の固液分離設備の改修方法は、
上方に向かって開放した溝を形成する溝形成部材を底部に有する固液分離設備の改修方法であって、
前記溝内に配置されていたスクリューコンベアを撤去するスクリューコンベア撤去工程と、
前記スクリューコンベアが撤去された前記溝内に、下部に開口が設けられた中空長尺状の空間形成部材および該空間形成部材の内周面によって画定された内部空間内に流体を吐出する吐出口を設置する移送機構設置工程とを有し、
前記移送機構設置工程は、前記スクリューコンベアが撤去された前記溝の断面積を、該スクリューコンベアが撤去される前の該溝の断面積以上に保ったまま、前記空間形成部材および前記吐出口を設置する工程であることを特徴とする。
【0066】
この第1の固液分離設備の改修方法によれば、前記スクリューコンベアが配置されていた前記溝に円弧状の溝形成部材やコンクリート等を追加することなく、該溝に堆積した固体を前記空間形成部材と前記吐出口とを備えた移送機構で移送する固液分離設備へと改修するので、スクリューコンベア式移送機構を備えた固液分離設備からエジェクタ式移送機構を備えた固液分離設備への改修を安価に実施できる。
【0067】
これまでに説明した第2の固液分離設備の改修方法は、
上方に向かって開放した溝を形成する溝形成部材を底部に有する固液分離設備の改修方法であって、
前記溝内に配置されていたスクリューコンベアを撤去するスクリューコンベア撤去工程と、
前記スクリューコンベアが撤去された前記溝の内周面の少なくとも一部を保護材で覆う溝内周面保護工程と、
前記スクリューコンベアが撤去された前記溝内に、下部に開口が設けられた中空長尺状の空間形成部材および該空間形成部材の内周面によって画定された内部空間内に流体を吐出する吐出口を設置する移送機構設置工程とを有することを特徴とする。
【0068】
前記保護材は、前記溝形成部材の材質とは異なる材質のものであってもよい。また、前記保護材は、取り替え可能なものであったり、再施工可能であるものであることが好ましい。あるいは、前記保護材は、前記溝の内周面に沿った形状のものあってもよい。さらに、前記保護材は、後述するライナーの厚さと同じ厚さのものであってもよい。
【0069】
この第2の固液分離設備の改修方法によれば、前記スクリューコンベアが配置されていた前記溝の内周面の少なくとも一部を前記保護材で覆うだけですみ、前記溝に円弧状の溝形成部材やコンクリート等を追加する必要はない。このため、この第2の固液分離設備の改修方法によっても、スクリューコンベア式移送機構を備えた固液分離設備からエジェクタ式移送機構を備えた固液分離設備への改修を安価に実施できる。さらに、前記保護材で覆われた前記溝の内周面は、固体の移動による摩耗から保護される。
【0070】
なお、第1および第2の固液分離設備の改修方法でいう「前記溝内に配置されていた」および「溝内に、・・・設置する」とは、配置されていた部材または設置される部材の一部が溝外に突出している場合を含む概念である。
【0071】
また、第1および第2の固液分離設備の改修方法において、前記溝の長手方向一端につながる伝達装置設置空間に配置されていた、前記スクリューコンベアに駆動力を伝達するための駆動力伝達装置を撤去する伝達装置撤去工程を有していてもよい。
【0072】
前記駆動力伝達装置を残存させておくと、該駆動力伝達装置が固体の移動の障壁として作用して該駆動力伝達装置の周囲に堆積した固体が前記溝に移動できずに長期間同じ位置に滞留してしまう虞がある。駆動力伝達装置を撤去する工程を有することで、駆動力伝達装置が配置されていた位置の周囲に堆積した固体が長期間同じ位置に滞留してしまうことを抑制できる。
【0073】
さらに、第1および第2の固液分離設備の改修方法において、前記伝達装置設置空間内に、前記溝に近づくにつれて下方に向かう傾斜面を形成する傾斜面形成工程を有していてもよい。
【0074】
前記傾斜面によって、前記伝達装置設置空間に沈降してきた固体を前記溝に向かって滑り落とすことができるので、滑り落ちた固体を前記エジェクタ式移送機構により移送することができる。なお、前記吐出口付近に堆積した固体は、該吐出口よりも移送方向上流側に堆積したものであっても該吐出口から流体を吐出することで前記内部空間内に引き込まれるので、前記エジェクタ式移送機構によって移送することができる。
【0075】
また、第1および第2の固液分離設備の改修方法において、前記移送機構設置工程は、前記空間形成部材の外周面と前記溝形成部材の内周面との間の最短距離が該空間形成部材の上端から該外周面に沿って前記開口に近づくにつれて短くなる位置に該空間形成部材を設置する工程であってもよい。
【0076】
前記溝は、スクリューコンベアの大きさに合致させるために溝幅が広く形成されていることがある。上記最短距離が前記開口に近づくにつれて短くなる位置に前記空間形成部材を設置することで、前記溝の下端部分において前記開口側に向かう固体の流れが該空間形成部材の上端付近よりも速くなるので、溝幅が広い場合であっても固体を該開口から吸い込みやすくなる。これにより、固体が前記開口から吸い込まれないで前記溝に残留してしまうことを抑制できる。
【0077】
また、第1および第2の固液分離設備の改修方法において、前記溝の長手方向中央部分であって前記溝形成部材の内周面に配置されていた、前記スクリューコンベアが接触して摩耗する着脱自在なライナーを撤去するライナー撤去工程を有していてもよい。
【0078】
前記ライナーが残存していると、該ライナーによって前記溝の長手方向の途中に段差ができるので、前記段差によって固体が堰き止められて段差部分に残留してしまう虞もある。前記ライナーを撤去することで固体が段差部分に残留してしまうことを防止できる。
【0079】
なお、第2の固液分離設備の改修方法では、前記ライナー撤去工程を設けずに、前記ライナーを残したまま、前記溝の内周面のうち、該ライナーが存在しない領域を、該ライナーの圧さと同じ厚さの前記保護材で覆ってもよい。こうすることでも、前記ライナーによる段差は生じず、固体の残留を防止できる。
【0080】
いままでに説明した固液分離設備は、
受け入れた液体に含まれている固体が底部に沈降する固液分離設備であって、
前記底部に設けられ円弧状の内周面を有する溝形成部材と、
前記溝形成部材の長手方向に沿って延在し、下部に開口が設けられた中空状の空間形成部材と、
前記空間形成部材の内周面によって画定された内部空間に流体を吐出する吐出口とを備え、
前記開口は、前記溝形成部材における円弧状の内周面に対向して配置されたものであり、
前記空間形成部材は、前記空間形成部材の外周面と前記溝形成部材の内周面との間の最短距離が該空間形成部材の上端から該外周面に沿って前記開口に近づくにつれて短くなるように、該溝形成部材によって形成された溝内に配置されたものであり、
前記溝形成部材によって形成された前記溝の長手方向一端につながり、前記吐出口に流体を供給する配管が配置された配管設置空間を有し、
前記配管設置空間を基準にして前記溝とは反対側に該配管設置空間に近づくにつれて下方に向かう傾斜面を備えていることを特徴とする。
【0081】
前記傾斜面に沈降してきた固体を前記配管設置空間に向かって滑り落とすことができるので、前記吐出口から流体を吐出することで前記配管設置空間に堆積した固体を内部空間に吸い込ませて移送することができる。
【0082】
これらによれば、改修費用が低額ですむ固液分離設備の改修方法、およびその改修方法によって改修された固液分離設備を少なくとも含み、これまでにない新たな効果を奏する固液分離設備を提供することができる。
【符号の説明】
【0083】
1,10 沈砂池
4 トラフ
61,62,63 保護材
8 傾斜面
41 溝
42 ライナー
51 スクリューコンベア
53 駆動力伝達装置
71 空間形成部材
71a 開口
73a 吐出口
IS 内部空間
図1
図2
図3
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図8
図9