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特開2023-92544活性エネルギー線重合性樹脂組成物及び積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092544
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】活性エネルギー線重合性樹脂組成物及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/68 20060101AFI20230627BHJP
   C08F 2/48 20060101ALI20230627BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20230627BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20230627BHJP
   C08F 2/02 20060101ALN20230627BHJP
   C08L 33/04 20060101ALN20230627BHJP
【FI】
C08G59/68
C08F2/48
C08L63/00 C
B32B27/26
C08F2/02
C08L33/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207639
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石崎 慎治
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 大
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
4J011
4J036
【Fターム(参考)】
4F100AJ06B
4F100AK01A
4F100AK01C
4F100AK02A
4F100AK02B
4F100AK02C
4F100AK07B
4F100AK21B
4F100AK25B
4F100AK41B
4F100AK45B
4F100AK49B
4F100AK53A
4F100AT00B
4F100AT00D
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100CB00A
4F100CB00C
4F100JA07A
4F100JA07C
4F100JB12A
4F100JB12C
4F100JD09B
4F100JD09D
4F100JN00
4F100YY00A
4F100YY00C
4J002BG071
4J002BN111
4J002CD011
4J002CD021
4J002CD051
4J002CD151
4J002CK021
4J002EV066
4J002EV076
4J002EV086
4J002EV297
4J002EV308
4J002EW139
4J002EY017
4J002FD076
4J002FD157
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4J002FD159
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4J011CB04
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4J011FA05
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4J011PA36
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4J011PA45
4J011PB24
4J011PB30
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4J011QC05
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4J011SA61
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4J011WA06
4J011WA10
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4J036AA05
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4J036AJ01
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4J036GA03
4J036GA22
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4J036GA26
4J036GA29
4J036HA02
4J036JA01
4J036JA06
4J036JA08
4J036JA15
(57)【要約】
【課題】
保存安定性に優れ、かつ高い耐熱性および優れた硬化性を有する活性エネルギー線重合性組成物を提供することである。また、その高い耐熱性により、加熱塗布工程にも適応可能であり、さらには、優れた硬化性により、紫外線吸収基材を用いた場合であっても、接着性、耐湿熱性、および屈曲耐性の良好な活性エネルギー線重合性組成物を提供すること、及び該活性エネルギー線重合性組成物により形成された積層体を提供すること。
【解決手段】
カチオン重合性化合物(K)1~99質量%と、スルフィド化合物(S)(ただし、チオキサントン化合物(T)は除く)0.01質量%~10質量%と、酸発生剤(KE)とを含む、活性エネルギー線重合性樹脂組成物により解決される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン重合性化合物(K)1~99質量%と、スルフィド化合物(S)(ただし、チオキサントン化合物(T)は除く)0.01~10質量%と、酸発生剤(KE)とを含む、活性エネルギー線重合性樹脂組成物。
【請求項2】
酸発生剤(KE)は、ヨードニウム塩系酸発生剤(KE1)である、請求項1に記載の活性エネルギー線重合性樹脂組成物。
【請求項3】
酸発生剤(KE)は、スルホニウム塩系酸発生剤(KE2)である、請求項1に記載の活性エネルギー線重合性樹脂組成物。
【請求項4】
更に、チオキサントン化合物(T)を含む、請求項2項記載の活性エネルギー線重合性樹脂組成物。
【請求項5】
更に、α,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(M)を含む、請求項1~4いずれか1項記載の活性エネルギー線重合性樹脂組成物。
【請求項6】
α,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(M)は、質量平均分子量1000未満であり、かつ水酸基とα,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(Ma1)を含む、請求項5記載の活性エネルギー線重合性樹脂組成物。
【請求項7】
α,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(M)は、質量平均分子量1,000以上60,000以下のα,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(Mb)を含む、請求項5または6記載の活性エネルギー線重合性樹脂組成物。
【請求項8】
α,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(M)は、質量平均分子量1000未満であり、かつ2個以上の、シクロアルカン骨格およびシクロアルケン骨格の少なくともいずれかと、α,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(Ma2)を含む、請求項5~7いずれか1項記載の活性エネルギー線重合性樹脂組成物。
【請求項9】
接着剤である、請求項1~8いずれか1項記載の活性エネルギー線重合性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~9いずれか1項記載の活性エネルギー線重合性樹脂組成物からなる樹脂組成物層を、基材(F)の片面または両面に積層されてなる積層体。
【請求項11】
基材(F)は、ポリアセチルセルロース系フィルム,ポリノルボルネン系フィルム,ポリプロピレン系フィルム,ポリアクリル系フィルム,ポリカーボネート系フィルム,ポリエステル系フィルム,ポリビニルアルコール系フィルム又はポリイミド系フィルムである、請求項10記載の積層体。
【請求項12】
第一の基材(F)、請求項4~9いずれか1項記載の活性エネルギー線重合性樹脂組成物からなる樹脂組成物層、および第二の基材(F)をこの順に備え、
少なくとも一方の基材(F)は、紫外線吸収性基材である積層体。
【請求項13】
第一の基材(F)および第二の基材(F)のいずれも紫外線吸収性基材である、請求項12記載の積層体。
【請求項14】
光学素子用である、請求項10~13いずれか1項記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線重合性樹脂組成物及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギー線重合性樹脂組成物は、重合速度が速く、また一般に無溶剤で使用できるため、作業性に優れ、さらに重合時に必要となるエネルギーが極めて低い等の優れた特性を有している。活性エネルギー線重合性樹脂組成物としては、ラジカル系、カチオン系、またはラジカル系とカチオン系の併用系(ハイブリッド系)の活性エネルギー線重合性樹脂組成物が挙げられ、接着剤やコート剤等の幅広い分野で使用されている。
【0003】
また、液晶表示関連分野などに用いられる偏光子は、通常ポリビニルアルコール(PVA)にヨウ素や染料を吸着させたものを一軸延伸して製造される。このポリビニルアルコール系偏光子は、熱や水分により収縮し、偏光性能の低下をきたす。そこで、PVA系偏光子の表面に保護フィルムを貼合せたものが偏光板として用いられている。
【0004】
PVA系偏光子と保護フィルムの貼り合わせには、水系接着剤や活性エネルギー線重合性樹脂組成物が使用されており、なかでも保護フィルムに用いられる基材の汎用性や、生産面における効率化や省エネルギー化の観点から、接着剤として、活性エネルギー線重合性樹脂組成物の利用が進んでいる。なかでも、耐水性、耐湿熱性の観点からは、カチオン系およびハイブリッド系の活性エネルギー線重合性樹脂組成物が検討されている。(特許文献1、2)
【0005】
偏光板に用いられる保護フィルムは、トリアセチルセルロース系、アクリル系、シクロオレフィン系、ポリエステル系、またはポリカーボネート系などが用いられている。保護フィルムを含む偏光板の構成は、液晶ディスプレイ用途であれば、液晶パネルの方式により選択される。近年は、有機ELディスプレイ用途としても、偏光板に位相差フィルムを組み合わせることで円偏光板として使用されており、偏光板の用途により様々な保護フィルムが選択される。
【0006】
このように偏光板の構成として様々な保護フィルムが用いられる中で、偏光板の製造においては、一つの生産ラインで複数の構成の偏光板を生産する必要がある。そこで、幅広い種類の保護フィルムに対して、活性エネルギー線重合性樹脂組成物を置き換えることなく、接着力を確保する方法として、活性エネルギー線重合性樹脂組成物を加熱することで保護フィルムを侵食させ、接着力を高める方法がとられることがある。
【0007】
しかし、カチオン系またはハイブリッド系の活性エネルギー線重合性樹脂組成物を加熱し、ロングランを実施すると、粘度上昇してしまい、塗布に不具合が発生したり、接着力が低下することがある。
【0008】
さらに、有機ELディスプレイ向けの円偏光板では、偏光板の保護フィルムとして、波長380nm以下の紫外線から有機EL素子を保護するため、波長380nm以下の紫外線を吸収するフィルム(紫外線吸収性基材)が用いられることがある。
【0009】
このような偏光板構成では、偏光子と保護フィルムとを活性エネルギー線重合性樹脂組成物を用いて貼り合わせる際に、紫外線吸収基材を通して紫外線を照射しても、活性エネルギー線重合性樹脂組成物が開始反応を起こす領域の波長の紫外線が紫外線吸収基材に吸収されてしまうため、硬化不良を生じやすく、性能を十分に発揮させることが難しい。
【0010】
そのため、このような偏光板構成に対して、偏光子と保護フィルムを貼り合わせるために用いられる活性エネルギー線重合性樹脂組成物に、波長380nmより長波長の吸収端を持つ光開始剤を用いる技術が検討されている。(特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004-245925号公報
【特許文献2】特開2010-018722号公報
【特許文献3】国際公開第2011/013663号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、これら従来の活性エネルギー線重合性樹脂組成物では、硬化性と温度安定性を両立することはできていないのが現状である。
【0013】
そこで本発明の課題は、保存安定性に優れ、かつ高い耐熱性および優れた硬化性を有する活性エネルギー線重合性組成物を提供することである。また、その高い耐熱性により、加熱塗布工程にも適応可能であり、さらには、優れた硬化性により、紫外線吸収基材を用いた場合であっても、接着性、耐湿熱性、および屈曲耐性の良好な活性エネルギー線重合性組成物を提供すること、及び該活性エネルギー線重合性組成物により形成された積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す活性エネルギー線重合性組成物により前記目標達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
[1]カチオン重合性化合物(K)1~99質量%と、スルフィド化合物(S)(ただし、チオキサントン化合物(T)は除く)0.01~10質量%と、酸発生剤(KE)とを含む、活性エネルギー線重合性樹脂組成物。
[2]酸発生剤(KE)は、ヨードニウム塩系酸発生剤(KE1)である、[1]記載の活性エネルギー線重合性樹脂組成物。
[3]酸発生剤(KE)は、スルホニウム塩系酸発生剤(KE2)である、[1]記載の活性エネルギー線重合性樹脂組成物。
[4]更に、チオキサントン化合物(T)を含む、[2]記載の活性エネルギー線重合性樹脂組成物。
[5]更に、α,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(M)を含む、[1]~[4]いずれか記載の活性エネルギー線重合性樹脂組成物。
[6]α,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(M)は、質量平均分子量1000未満であり、かつ水酸基とα,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(Ma1)を含む、[5]記載の活性エネルギー線重合性樹脂組成物。
[7]α,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(M)は、質量平均分子量1,000以上60,000以下のα,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(Mb)を含む、[5]または[6]記載の活性エネルギー線重合性樹脂組成物。
[8]α,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(M)は、質量平均分子量1000未満であり、かつ2個以上の、シクロアルカン骨格およびシクロアルケン骨格の少なくともいずれかと、α,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(Ma2)を含む、[5]~[7]いずれか1項記載の活性エネルギー線重合性樹脂組成物。
[9]接着剤である、[1]~[8]いずれか記載の活性エネルギー線重合性樹脂組成物。
[10][1]~[9]いずれか1項記載の活性エネルギー線重合性樹脂組成物からなる樹脂組成物層を、基材(F)の片面または両面に積層されてなる積層体。
[11]基材(F)は、ポリアセチルセルロース系フィルム,ポリノルボルネン系フィルム,ポリプロピレン系フィルム,ポリアクリル系フィルム,ポリカーボネート系フィルム,ポリエステル系フィルム,ポリビニルアルコール系フィルム又はポリイミド系フィルムである、[10]記載の積層体。
[12]第一の基材(F)、[4]~[9]いずれか1項記載の活性エネルギー線重合性樹脂組成物からなる樹脂組成物層、および第二の基材(F)をこの順に備え、
少なくとも一方の基材(F)は、紫外線吸収性基材である積層体。
[13]第一の基材(F)および第二の基材(F)のいずれも紫外線吸収性基材である、請求項12記載の積層体。
[14]光学素子用である、[10]~[13]記載の積層体。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、保存安定性に優れ、かつ高い耐熱性および優れた硬化性を有する活性エネルギー線重合性組成物を提供することができる。また、その高い耐熱性により、加熱塗布工程にも適応可能であり、さらには、優れた硬化性により、紫外線吸収基材を用いた場合であっても、接着性、耐湿熱性、および屈曲耐性の良好な活性エネルギー線重合性組成物を提供すること、及び該活性エネルギー線重合性組成物により形成された積層体を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。また、本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の範囲として含むものとする。また、主成分とはその成分において最も含有率が多い成分のことをいう。
また、本明細書において「フィルム」や「シート」は、厚みによって区別されないものとする。換言すると、本明細書の「シート」は、厚みの薄いフィルム状のものも含まれ、本明細書の「フィルム」は、厚みのあるシート状のものも含まれるものとする。
尚、本明細書では、「(メタ)アクリル」、と表記した場合には、特に断りがない限り、それぞれ「アクリルまたはメタクリル」を表す。
また、「ヨードニウム塩系酸発生剤(KE1)」を「化合物(KE1)」と、「スルホニウム塩系酸発生剤(KE2)」を「化合物(KE2)」と、「α,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(M)」を「化合物(M)」と、「質量平均分子量1,000未満のα,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(Ma)」を「化合物(Ma)」、「水酸基とα,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(Ma1)」を「化合物(Ma1)」、「質量平均分子量1,000未満であり、かつ2個以上の、シクロアルカン骨格およびシクロアルケン骨格の少なくともいずれかとα,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(Ma2)」を「化合物(Ma2)」、「質量平均分子量1,000以上60,000以下のα,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(Mb)」を「化合物(Mb)」、「ポリウレタン系オリゴマーである化合物(Mb1)」を「化合物(Mb1)」、「ポリエステル系オリゴマーである化合物(Mb2)」を「化合物(Mb2)」、「ポリエポキシ系オリゴマーである化合物(Mb3)」を「化合物(Mb3)」、「その他質量平均分子量1000以上60000以下のα,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(Mb4)」を「化合物(Mb4)」、「「分子量60,000を超えるα,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(Mc)」を「化合物(Mc)」、「活性エネルギー線重合性樹脂組成物」を「樹脂組成物」と、それぞれ称することがある。
本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に1種単独で、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0018】
《活性エネルギー線重合性樹脂組成物》
本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物は、カチオン重合性化合物(K)1~99質量%と、スルフィド化合物(S)(ただし、チオキサントン化合物(T)は除く)0.01~10質量%と、酸発生剤(KE)とを含む。
これにより、保存安定性に優れ、かつ高い耐熱性および優れた硬化性を有する活性エネルギー線重合性組成物とすることができ、接着剤またはコート剤等に好適に用いることができ、接着性、耐湿熱性、および屈曲耐性に優れる。
また、用途にあわせて、高い耐熱性により、加熱塗布工程にも適応可能であり、さらには、優れた硬化性により、紫外線吸収基材を用いた場合であっても、接着性、耐湿熱性、および屈曲耐性も優れるため、ハードコートフィルム、偏光フィルムなどの光学素子用積層体、または加飾フィルム等のさまざまな用途に適用が可能である。
【0019】
<カチオン重合性化合物(K)>
カチオン重合性化合物(K)は、活性エネルギー線重合性樹脂組成物100質量%中、1~99質量%含む。99質量%以下であることにより、保存安定性が高く、長期保存後の接着力、耐屈曲性が高い活性エネルギー線重合性樹脂組成物となり、1質量%未満では密着性、耐湿熱性が不十分である。保存安定性、および基材密着性と耐湿熱性の観点から、より好ましくは5~99質量%、さらに好ましくは5~50質量%である。
カチオン重合性化合物(K)としては、三員環エーテル化合物であるオキシラン化合物であるカチオン重合性化合物(K1)、もしくはオキシラン化合物以外の環状ヘテロ化合物であるカチオン重合性化合物(K2)である環状ヘテロ化合物、またはビニルエーテル化合物等が挙げられる。なかでも、活性エネルギー線による反応性に優れ、硬化後の樹脂組成物層の柔軟性、および接着強度に優れる観点から、環状ヘテロ化合物がより好ましく、カチオン重合性化合物(K1)が特に好ましい。
【0020】
カチオン重合性化合物(K)としては、カチオン重合性化合物(K1)、およびカチオン重合性化合物(K2)の少なくともいずれかを主成分として用いることが好ましい。
カチオン重合性化合物(K)100質量%中のカチオン重合性化合物(K1)、およびカチオン重合性化合物(K2)の含有率は、基材密着性の観点から、50~100質量%であることが好ましく、80~100質量%であることがより好ましい。
なお、カチオン重合性化合物(K1)、およびカチオン重合性化合物(K2)の両方を含む場合には、その合計含有率が上記範囲にあることが好ましい。
【0021】
[カチオン重合性化合物(K1)]
カチオン重合性化合物(K1)は、三員環エーテル化合物であるオキシラン化合物であり、三員環状の環状エーテル基を有する化合物中の水素原子を1個又は複数個取り除いた形の基が他の化学構造に結合した化合物であれば特に制限されない。
カチオン重合性化合物(K1)として例えば、オキシラン、メチルオキシラン、フェニルオキシラン、1,2-ジフェニルオキシラン、メチリデンオキシラン、オキシラニルメチル、オキシラニルメタノール、オキシランカルボン酸、(クロロメチル)オキシラン、(ブロモメチル)オキシラン、オキシラニルアセトニトリル等の脂肪族系環状エーテル基;例えば、3,4-オキシランシクロヘキシルメチル 3,4-オキシランシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-オキシラン-6-メチルシクロヘキシルメチル 3,4-オキシラン-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチレンビス(3,4-オキシランシクロヘキサンカルボキシレート)、ビス(3,4-オキシランシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-オキシラン-6-メチルシクロヘキシルメチル) アジペート、ジエチレングリコールビス(3,4-オキシランシクロヘキシルメチルエーテル)、エチレングリコールビス(3,4-オキシランシクロヘキシルメチルエーテル)、2,3,14,15-ジオキシラン-7,11,18,21-テトラオキサトリスピロ-[5.2.2.5.2.2]ヘンイコサン(また、3,4-オキシランシクロヘキサンスピロ-2’,6’-ジオキサンスピロ-3’’,5’’-ジオキサンスピロ-3’’’,4’’’-オキシランシクロヘキサンとも命名できる化合物)、4-(3,4-オキシランシクロヘキシル)-2,6-ジオキサ-8,9-オキシランスピロ[5.5]ウンデカン、4-ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ビス-2,3-オキシランシクロペンチルエーテル、及びジシクロペンタジエンジオキサイド等の脂環式環に結合した三員環状の環状エーテル基が挙げられる。
【0022】
カチオン重合性化合物(K1)のオキシラン当量は、通常、30~3000g/eqであり、50~1500g/eqが好ましく、80~500g/eqがより好ましい。オキシラン当量が30g/eq以上であると、硬化後の樹脂組成物層の柔軟性が優れ、接着強度が高いために好ましい。一方、3000g/eq以下であると、他の成分との相溶性がより優れる。80~500g/eqがそのバランスがよいために好ましい。
【0023】
また、カチオン重合性化合物(K1)は、アルコキシシリル基を有さないオキシラン化合物であるカチオン重合性化合物(K11)とアルコキシシリル基を有するオキシラン化合物であるカチオン重合性化合物(K12)に分類できる。さらにアルコキシシリル基を有さないオキシラン化合物であるカチオン重合性化合物(K11)は、芳香環を有するオキシラン化合物であるカチオン重合性化合物(K111)と芳香環を有しないオキシラン化合物であるカチオン重合性化合物(K112)に分類できる。さらに芳香環を有さないオキシラン化合物はオキシラン部位に脂環構造を含まないカチオン重合性化合物(K1121)とオキシラン部位に脂環構造を含むカチオン重合性化合物(K1122)に分類できる。
本発明の組成物中の主成分がカチオン重合性化合物(K)となる場合は、芳香環を有するオキシラン化合物であるカチオン重合性化合物(K111)を含むことが接着力向上のため好ましい。
【0024】
芳香環置換基としては、より具体的には、例えば、フェニル、フェニレン、トリル、トリレノ、ベンジル、ベンジリデン、ベンジリジン、キシリル、キシリレン、フタリリデン、イソフタリリデン、テレフタリリデン、フェネチリデン、フェネチリジン、スチリル、スチリリデン、as-プソイドクミル、v-プソイドクミル、s-プソイドクミル、メシチル、クメニル、α-クミル、ヒドロシンナミル、シンナミル、シンナミリデン、シンナミリジン、ジュリル、ジュリレン、チミル、カルバクリル 、クミニル、クミニリデン、ネオフィル、キセニル、ベンズヒドリル、ベンズヒドリリデン、トリチル等に代表される置換基が挙げられ、これらは、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン、ヘミメリテン、プソイドクメン、メシチレン、クメン、プレーニング、イソジュレン、ジュレン、シメン、メリテン等のベンゼン誘導体中の水素原子を1個又は複数個取り除いた形の基が他の化学構造に結合し得る芳香環が挙げられる。
【0025】
その他、例えば、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロブタジエン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン、シクロオクタシ゛エン等のシクロアルケン類;
【0026】
例えば、ベンゼン以外の炭素数を有する、環を構成する炭素数が3以上の[4n+2]アヌレンが挙げられる。
【0027】
例えば、ビフェニル、トリフェニルメタン等の芳香族多環化合物;
【0028】
例えば、ペンタレン、インデン、インダン、ニンヒドリン、ナフタレン、テトラリン、デカリン、サポタレン、カダレン、オイダレン、ナフトール、メナジオール、ゴシポール、ナフトキノン、ラウソン、ユグロン、メナジオン、プルンバギン、フチオコール、エキノクロムA、アルカンニン、シコニン、アセトナフトン、ナフトエ酸、ナフトイル、ナフタル酸、ナフタラート、アセトメナフトン、ナフチオン酸、ナフチオナート、ナフチオニル、ダンシル、クロセイン酸、フラビアン酸、クロモトロプ酸、ネオクペロン、アズレン、カマズレン、グアイアズレン、ヘプタレン、オクタレン、プルプロガリン等の炭素縮合二環系化合物:
【0029】
例えば、as-インダセン、s-インダセン、as-ヒドロインダセン、s-ヒドロインダセン、ビフェニレン、アセナフチレン、アセナフテン、アセナフトキノン、フルオレン、フェナレン、ペリナフテン、フェナントレン、フェナントリル、フェナントリリウム、フェナントリリデン、フェナントリレン、フェナントロール、モルホール 、フェナントロン、フェナントラキノン、ピマントレン、レテン、アントラセン、アントリル、アントリリウム、アントリリデン、アントリレン、アントロール、アントラノール 、アントラロビン、アントラリン、ジトラノール、アントロイル、アントロン、ビアントロン、アントラキノン、アントラキノニル、アントラキノニレン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、クリサジン、アントラガロール、プルプリン、フラボプルプリン、アントラプルプリン、キナリザリン、テクトキノン、クリソファノール、クリソファン酸、エモジン、レイン、ケルメス酸、カルミン酸、ジアントリミド、アントリミド、クリサンミン酸、コルヒチン等の炭素縮合三環系化合物;
【0030】
例えば、トリンデン、トリンダン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセフェナントレン、アセアントリレン、アセアントレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、テトラフェン、テトラセン、ナフタセン、ルブレン、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、プレイアデン、ベンゾアントロン等の炭素縮合四環系化合物;
【0031】
例えば、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセン、テトラフェニレン、コラントリレン、コラントレン等の炭素縮合五環系化合物;
【0032】
例えば、コランヌレン、フルミネン、アンタントレン、ゼトレン、ヘキサヘリセン、ヘキサフェン、ヘキサセン、ルビセン、コロネン、トリナフチレン、ヘプタフェン、ヘプタセン、ピラントレン、オクタフェン、オクタセン、テリレン、ナフタセノナフタセン、ノナフェン、ノナセン、ビオラントレン、ビオラントロン、イソビオラントレン、イソビオラントロン、オバレン、デカフェン、デカセン、デカシクレン、ペンタセノペンタセン、クアテリレン、ヘキサセノヘキサセン等の環数6以上の炭素縮合環系化合物等の環状化合物中の水素原子を1個又は複数個取り除いた形の基が他の化学構造に結合し得る芳香環が挙げられる。
【0033】
芳香環を有するオキシラン化合物であるカチオン重合性化合物(K111)としては耐熱性と接着力に優れるビスフェノールAのグリシジルエーテル、ビスフェノールFのグリシジルエーテル、1,3-フェニレンビス(メチレン)ビス(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン-3-カルボキシレイト)、1,3-ビス{(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン-3-イルメトキシ)メチル}ベンゼンが特に好ましい。
【0034】
オキシラン化合物以外の環状ヘテロ化合物であるカチオン重合性化合物(K2)としては4員環エーテルであるオキセタニル基を有する化合物や5員環以上の環状エーテル化合物、2個以上の酸素又は酸素以外のヘテロ基を有する化合物等が挙げられる。
【0035】
オキセタニル基を有する化合物としては3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、ジ(1-エチル-3-オキセタニル)メチルエーテル、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、フェノールノボラックオキセタン、3‐エチル-{(3-トリエトキシシリルプロポキシ)メチル}オキセタン、などが挙げられる。
【0036】
オキシラン化合物以外の環状ヘテロ化合物であるカチオン重合性化合物(K2)としては、環状エステル化合物、環状ホルマール化合物、環状カーボネート化合物、含フッ素環状化合物等がある。環状エステル化合物は、ラクトン類であることが好ましい。環状ホルマール化合物は、ジオキソラン類、ジオキサン類及びトリオキサン類から選択される化合物であることが好ましい。
【0037】
アルコキシシリル基を有するオキシラン化合物であるカチオン重合性化合物(K12)としては、アルコキシシリル基とオキシラン構造を有する化合物であれば制限されないが、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、オキシラン構造とアルコキシシリル基を側鎖に有するポリシロキサン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランとグリシジルメタクリレートの重合物があげられる。
【0038】
アルコキシシリル基を有するオキシラン化合物であるカチオン重合性化合物(K12)のアルコキシシリル基の安定性、他成分との溶解性、及び反応性の観点から、炭素数2以上13未満が好ましい。メトキシ(炭素数が1)では保存安定性が悪く、炭素数13以上では溶解性と反応性が悪くなる。所望するアルコキシシリル部位は、反応性が高いメトキシシリル基を有するオキシラン化合物と任意のアルコールとの交換反応により得ることできる。
【0039】
アルコキシシリル基を有するオキシラン化合物であるカチオン重合性化合物(K12)は基材密着性および耐湿熱性がより向上するため、活性エネルギー線重合性樹脂組成物100質量%中、0.1~20質量%であることが好ましい。0.1質量%以上であると耐湿熱性がより向上し、20質量%以下であると接着性がより優れる。
【0040】
<酸発生剤(KE)>
本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物は、酸発生剤(KE)を含む。
酸発生剤(KE)は、可視光線、紫外線、X線、または電子線のような活性エネルギー線の照射によって、酸を発生し、触媒的に作用してカチオン重合性化合物(K)の重合反応を開始するものである。酸発生剤としては、例えば、ヨードニウム塩系酸発生剤(KE1)、スルホニウム塩系酸発生剤(KE2)、ジアゾニウム塩系酸発生剤、アンモニウム塩系酸発生剤、ホスホニウム塩系酸発生剤などのオニウム塩系酸発生剤等を挙げることができる。
これらのなかでも、光分解効率に優れ、より硬化性に優れた活性エネルギー線重合性樹脂組成物とできる観点から、ヨードニウム塩系酸発生剤(KE1)、またはスルホニウム塩系酸発生剤(KE1)であることが好ましい。
高温における保存安定性の観点からは、スルホニウム塩系酸発生剤(KE2)が好ましい。
また、酸発生剤(KE)がヨードニウム塩系酸発生剤(KE1)である場合、さらにチオキサントン化合物(T)を含むことでチオキサントン化合物(T)の増感作用により420nm付近の紫外線を活用できる観点で好ましい。
ヨードニウム塩系酸発生剤(KE1)は、光分解効率の高さとチオキサントン化合物(T)からの増感作用が相まって、420nm付近の紫外線でも反応するため、基材として紫外線吸収基材を使用した場合であっても、接着力、耐湿熱性、屈曲耐性に優れる活性エネルギー線重合性樹脂組成物とすることができる。
【0041】
酸発生剤(KE)の含有率は、活性エネルギー線重合性樹脂組成物の硬化性の観点から、活性エネルギー線重合性樹脂組成物100質量%中、0.1質量%以上であることが好ましい。一方、耐湿熱性の観点から、20質量%以下であることが好ましく、0.5~10質量%であることがより好ましい。
【0042】
[ヨードニウム塩系酸発生剤(KE1)]
ヨードニウム塩系酸発生剤(KE1)としては、ビス(4-ターシャリーブチルフェニル)ヨードニウム・ヘキサフルオロホスファート、(4-メチルフェニル)[4(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウム・ヘキサフルオロホスファート、ジフェニルヨードニウム・ヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウム・テトラキス(ペンタフルオロ)ボレート等が挙げられる。
【0043】
ヨードニウム塩系酸発生剤(KE1)の市販品としては、例えば、ビス(4-ターシャリーブチルフェニル)ヨードニウム・ヘキサフルオロホスファート(WPI―170、和光純薬社製)、WPI-113(和光純薬社製)、IK-1(サンアプロ社製)、(4-メチルフェニル)[4(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウム・ヘキサフルオロホスファート(Omnicat250、IGM resins)などが挙げられる。
【0044】
ヨードニウム塩系酸発生剤(KE1)の含有率は、重合性、接着性、耐湿熱性の観点から活性エネルギー線重合性樹脂組成物100質量%中、0.2質量%以上であることが好ましい。一方、活性エネルギー線重合性樹脂組成物の保存安定性の観点から、10質量%以下であることが好ましく、1~5質量%であることがより好ましい。
【0045】
[スルホニウム塩系酸発生剤(KE2)]
スルホニウム塩系酸発生剤(KE2)としては、トリアリールスルホニウム・ヘキサフルオロホスフェート、トリアリールスルホニウム・ヘキサフルオロアンチモネート、トリアリールスルホニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0046】
スルホニウム塩系酸発生剤(KE2)の市販品としては、例えば、トリアリールスルホニウム・ヘキサフルオロホスフェート(CPI-110P、サンアプロ製)、UVACURE1590(ダイセル・サイテック製)などが挙げられる。
【0047】
スルホニウム塩系酸発生剤(KE2)の含有率は、活性エネルギー線重合性樹脂組成物の硬化性の観点から活性エネルギー線重合性樹脂組成物100質量%中、0.1質量%以上であることが好ましい。一方、耐湿熱性の観点から、20質量%以下であることが好ましく、0.5~10質量%であることがより好ましい。
【0048】
<チオキサントン化合物(T)>
チオキサントン化合物(T)はチオキサントン構造を有する化合物であれば制限されない。
酸発生剤(KE)がヨードニウム塩系酸発生剤(KE1)である場合、さらにチオキサントン化合物(T)を含むことが好ましい。ヨードニウム塩系酸発生剤(KE1)と、チオキサントン化合物(T)の組合せにより、保存安定性に優れ、加熱塗布工程にも適応可能な高い耐熱性を有するだけでなく、基材が紫外線吸収性基材の場合であっても、420nm付近の光を利用し、カチオン反応を進行させることができるため、硬化性に優れた活性エネルギー線重合性樹脂組成物とすることができる。
【0049】
チオキサントン化合物(T)としては、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-ヒドロキシチオキサントン、2-アセトキシチオキサントン、2-プロポキシチオキサントンが挙げられる。
【0050】
ヨードニウム塩系酸発生剤(KE1)とチオキサントン化合物(T)の最適量は、カチオン重合性化合物(K)の配合量によらず、活性エネルギー線重合性樹脂組成物全体100質量%に対しての濃度が影響する。
チオキサントン化合物(T)は、重合性、接着性、及び耐湿熱性の観点から、活性エネルギー線重合性樹脂組成物全体100質量%中、0.2質量%以上が好ましい。一方、重合性が高すぎると、接着力が低下するので、10質量%以下が好ましい。
ヨードニウム塩系酸発生剤(KE1)とチオキサントン化合物(T)の配合比をAM(KE1)/AM(T)とすると、AM(KE1)/AM(T)は4~0.2が好ましい。この範囲であることで、活性エネルギー線重合性樹脂組成物の保存安定性と接着性、耐湿熱性のバランスにより優れるものとできる。
【0051】
<スルフィド化合物(S)>
スルフィド化合物(S)とは、二価の硫黄原子に2個の炭化水素基が結合した有機化合物であれば特に制限されない。ただし、チオキサントン化合物(T)は除く。
スルフィド化合物(S)を含むことで、樹脂組成物が保存安定性に優れたものとでき、高温で樹脂組成物を保管しても耐湿熱性や屈曲性が悪化しない。それにより、スルフィド化合物(S)を含んだ樹脂組成物は高温塗布にも適用が可能である。
なお、本明細書においては、スルフィド化合物であっても、スルホニウム塩構造を有する場合はスルホニウム塩系酸発生剤(KE2)に分類する。
【0052】
スルフィド化合物(S)は樹脂組成物全体100質量%中、0.01質量%~10質量%含むことが好ましく、0.05~5質量%がより好ましい。0.01質量%以上あれば保存安定性等の効果が得られ、10質量%以下であると耐湿熱性がより向上する。
【0053】
[芳香環を有するスルフィド化合物(S1)]
芳香環を有するスルフィド化合物(S1)は、樹脂組成物の保存安定性を改善する効果が高いため好ましく、芳香環を有し、窒素原子を有さないスルフィド化合物(S11)と芳香環と窒素原子を有するスルフィド化合物(S12)に分類できる。
さらに芳香環を有し、窒素原子を有さないスルフィド化合物(S11)は、1分子中にフェノール構造を1つ以下有するスルフィド化合物(S111)と、フェノール構造を2つ以上有するスルフィド化合物(S112)に分類できる。
なかでも、スルフィド化合物(S)が窒素原子を有するとカチオン反応性が低下することがあるため、芳香環を有し、窒素原子を有さないスルフィド化合物(S11)であることが好ましく、さらにスルフィド化合物(S111)を用いた場合、保存安定性、接着力、耐湿熱性のバランスが最も優れるために好ましい。
【0054】
芳香環を有し、窒素原子を有さないスルフィド化合物(S11)としては、メチルフェニルスルフィド、2-メチルー3-(メチルチオ)フラン、フルフリルメチルスルフィド、エチルフェニルスルフィド、ベンジルメチルスルフィド、4-(メチルチオ)トルエン、アリルフェニルスルフィド、メトキシメチルフェニルスルフィド、4-(メチルチオ)ベンジルアルコール、3-メトキシチオアニソール、2-メトキシチオアニソール、4-メトキシチオアニソール、2-(フェニルチオ)エタノール、フルフリルイソプロピルスルフィド、2-(ベンジルチオ)エタノール、ベンジルスルフィド、2,2’-チオジエチルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール、2,4-ビス[(ドデシルチオ)メチル]-6-メチルフェノールが挙げられる。
【0055】
芳香環と窒素原子を有するスルフィド化合物(S12)としては、2-[4-(メチルチオ)ベンゾイル]-2-(4-モルホリニル)プロパン、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]オクタン-1,2-ジオン=2-(o-ベンゾイルオキシム)が挙げられる。
【0056】
[芳香環を有さないスルフィド化合物(S2)]
芳香環を有さないスルフィド化合物(S2)としては、アリルメチルスルフィド、エチルビニルスルフィド、2-ヒドロキシエチルメチルスルフィド、3-ヒドロキシプロピルメチルスルフィド、4-メチルチオ-2-ブタノン、酢酸メチルチオメチル、(メチルチオ)酢酸メチル、2-ヒドロキシエチルスルフィド、3-(メチルチオ)プロピオン酸メチル、(メチルチオ)酢酸エチル、2-ヒドロキシエチルイソブチルスルフィド、ブチル2-ヒドロキシエチルスルフィド、(メチルチオ)アセトアルデヒドジメチルアセタール、tert-ブチルスルフィド、sec-ブチルスルフィド、sec-ブチルスルフィド、ヘプチルメチルスルフィド、イソブチルスルフィド、酢酸3-(メチルチオ)プロピル、3-(メチルチオ)プロピオン酸エチル、3-(メチルチオ)-1-ヘキサノール、エチル2-ヒドロキシエチルスルフィド、4-ヒドロキシチアン、2-ヒドロキシエチルイソプロピルスルフィド、2-(プロピルチオ)エタノール、2-ヒドロキシエチルスルフィド、ビス[3-(ドデシルチオ)プロピオン酸]2,2-ビス[[3-(ドデシルチオ)-1-オキソプロピルオキシ]メチル]-1,3-プロパンジイル、3,3’-チオビスプロピオン酸ジトリデシルが挙げられる。
【0057】
本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物は、スルフィド化合物(S)含むことで酸発生剤(KE)を用いた活性エネルギー線重合性樹脂組成物の保存安定性を改善した。このメカニズムは明らかではないが、スルフィド化合物がヨードニウム塩系酸発生剤またはスルホニウム塩系酸発生剤等の酸発生剤(KE)を安定化させる可能性、または、ヨードニウム塩系酸発生剤またはスルホニウム塩系酸発生剤等が熱により開裂したときにスルフィド化合物(S)が共存することで、酸が発生する前に失活しやすくなる可能性が考えられる。
【0058】
<化合物(M)>
化合物(M)は、α,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物である。
本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物は、化合物(M)を含むことが好ましい。
化合物(M)の含有率が大きくなるほど、樹脂組成物中の化合物(K)の含有率が低下することで、本発明の樹脂組成物の保存安定性が良化できるために好ましい。
化合物(M)は、活性エネルギー線重合性樹脂組成物100質量%中、1~99質量%含むことが好ましく、50~95質量%がより好ましい。
また化合物(M)は、2つ以上のα,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物であることが、耐湿熱性がより改善できるため好ましい。
【0059】
化合物(M)は、質量平均分子量(以下、Mwと称す。)により、質量平均分子量1,000未満のα,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(Ma)、質量平均分子量1,000以上60,000以下のα,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(Mb)、質量平均分子量60,000を超えるα,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(Mc)に分類できる。このなかでも、質量平均分子量1000~60,000のα,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(Mb)、および質量平均分子量1,000未満のα,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(Ma)のうち、少なくとも一方を含むことが保存安定性の観点で好ましい。
なお、質量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の質量平均分子量である。これらは、[実施例]の項に記載の方法にて測定することができる。
【0060】
[化合物(Ma)]
化合物(Ma)は、質量平均分子量1,000未満のα,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物であり、水酸基とα,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(Ma1)、2個以上の、シクロアルカン骨格およびシクロアルケン骨格の少なくともいずれかとα,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(Ma2)、その他のα,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(Ma3)に分類される。
なかでも、化合物(Ma1)、および化合物(Ma2)の少なくともいずれかであることが好ましい。
化合物(Ma1)は基材密着性に優れる観点により好ましく、化合物(Ma2)は耐湿熱性に優れる観点により好ましい。
【0061】
化合物(Ma)としては、化合物(Ma1)、および化合物(Ma2)の少なくともいずれかを主成分として用いることが好ましい。
化合物(Ma)100質量%中の化合物(Ma1)、および化合物(Ma2)の含有率は密着性、および耐湿熱性の観点から5~90質量%が好ましく、10~70質量%であることがより好ましい。
なお、化合物(Ma1)、および化合物(Ma2)の両方を含む場合には、その合計含有率が上記範囲にあることが好ましい。
【0062】
(化合物(Ma1))
化合物(Ma1)は、質量平均分子量1,000未満であり、かつ水酸基とα,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物である。樹脂組成物中に化合物(Ma1)を含むことで、基材の水酸基等と水素結合を形成し、接着力が向上する。
【0063】
化合物(Ma1)としては、その構造中に水酸基を有するものであれば特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸1-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(メタ)アクリル酸エチル-α-(ヒドロキシメチル)、単官能(メタ)アクリル酸等の脂肪酸エステル系(メタ)アクリル酸エステル、あるいは、前記水酸基含有α,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物に対してε-カプロラクトンラクトンの開環付加により末端に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルや、前記水酸基含有α,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物に対してエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを繰り返し付加したアルキレンオキサイド付加(メタ)アクリル酸エステル等の水酸基含有の脂肪族(メタ)アクリル酸エステル類;
【0064】
例えば、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシオクチルビニルエーテル、ヒドロキシデシルビニルエーテル、ヒドロキシドデシルビニルエーテル、ヒドロキシオクタデシルビニルエーテル、グリセリルビニルエーテル、あるいはエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの繰り返し付加した末端に水酸基を有するアルキレンオキサイド付加系ビニルエーテル等の水酸基含有の脂肪族ビニルエーテル類;
【0065】
例えば、(メタ)アリルアルコール、イソプロペニルアルコール、ジメチル(メタ)アリルアルコール、ヒドロキシエチル(メタ)アリルエーテル、ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル、ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテル、ヒドロキシヘキシル(メタ)アリルエーテル、ヒドロキシオクチル(メタ)アリルエーテル、ヒドロキシデシル(メタ)アリルエーテル、ヒドロキシドデシル(メタ)アリルエーテル、ヒドロキシオクタデシル(メタ)アリルエーテル、グリセリル(メタ)アリルエーテル、あるいはエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの繰り返し付加した末端に水酸基を有するアルキレンオキサイド付加系(メタ)アリルエーテル等の水酸基含有の脂肪族(メタ)アリルアルコール類ないしは(メタ)アリルエーテル類;
【0066】
例えば、プロペンジオール、ブテンジオール、ヘプテンジオール、オクテンジオール、ジ(メタ)アクリル酸グルセロール等の複数の水酸基を有するα,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物類;
例えば、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド〔N-ヒドロキシエチルアクリルアミドとN-ヒドロキシエチルメタクリルアミドとを併せて「N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド」と表記する。以下同様。〕、N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリルアミド等の水酸基含有の(メタ)アクリルアミド類;
【0067】
例えば、ビニルアルコール等の水酸基とエテニル基を有する単量体類等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらは、1種だけを用いてもよいし、あるいは、複数種を併用してもよい。
化合物(Ma1)としては、基材との密着性の面より、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリル酸エステル、ε-カプロラクトン1~2mol付加(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル等の炭素数2~18であるα,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物が特に好ましい。
【0068】
(化合物(Ma2))
化合物(Ma2)は、質量平均分子量1,000未満であり、かつ2個以上の、シクロアルカン骨格およびシクロアルケン骨格の少なくともいずれかとα,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物である。
【0069】
化合物(Ma2)としては、シクロアルケン骨格およびシクロアルケン骨格をあわせて少なくとも2個有していれば、それぞれ単独でも、シクロ環が橋かけ構造であってもよい。環構造と環構造がアルキル基やエーテル基、エステル基などにより離れている化合物(Ma21)、およびノルボルナン、またはノルボルネン骨格を有する化合物(Ma22)、アダマンタン構造を有する化合物(Ma23)のようにシクロ環の橋かけ構造を有する化合物が挙げられるが、耐湿熱性に優れることより、ノルボルナン、またはノルボルネン骨格を有する化合物(Ma22)またはアダマンタン構造を有する化合物(Ma23)が好ましい。
【0070】
2個以上の、シクロアルカン骨格および/またはシクロアルケン骨格を有し、その環構造と環構造が離れているα,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(Ma21)としては水添ビフェノールAのジアクリレートや3,3-ジシクロプロピルアクリレート等が挙げられる。
ノルボルネンおよび/またはノルボルナン骨格を有するα,β-エチレン性不飽和二重結合基含化合物(Ma22)としては、ノルボルネンおよび/またはノルボルナン骨格とエチレン性不飽和二重結合を1個以上有していればよく、例えばジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0071】
ノルボルナン、またはノルボルネン骨格を有する化合物(Ma22)のうち、特に3個以上の環状骨格を有する化合物は、嵩高さをますことで硬化収縮を抑制し接着力の向上もみられ特に好ましく、具体的な化合物としてはジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレートなどである。
【0072】
アダマンタン骨格を有するα,β-エチレン性不飽和二重結合基含化合物(Ma23)は、3個以上の環状骨格を有するラジカル重合性化合物であり、耐熱性および接着性に優れる観点で好ましい。化合物(Ma23)として具体的には、3-ヒドロキシ-1-アダマンチル(メタ) アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-プロピル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、3,5-ジヒドロキシ-1-アダマンチル(メタ)アクリレート、1,3-アダマンチルジオールジ(メタ)アクリレート、1,3,5-アダマンチルトリ(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-1,5-アダマンチルジ(メタ)アクリレート、3,5-ジヒドロキシ-1-アダマンチル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、接着性が優れる点で、3-ヒドロキシ-1-アダマンチルアクリレート、2-メチル-2-アダマンチルアクリレート、2-エチル-2-アダマンチルアクリレートが好ましい。
【0073】
[化合物(Mb)]
化合物(Mb)は、質量平均分子量1000以上60000以下のα,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物であり、一般にオリゴマーといわれる化合物である。化合物(Mb)は、さらに、ポリウレタン系オリゴマーである化合物(Mb1)、ポリエステル系オリゴマーである化合物(Mb2)、ポリエポキシ系オリゴマーである化合物(Mb3)、及びその他質量平均分子量1000以上60000以下のα,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(Mb4)に分類され、化合物(Mb1)、化合物(Mb2)、及び化合物(Mb3)からなる群より選ばれる少なくとも1種類以上のオリゴマーが好ましく、特に制限が無く使用できる。
化合物(Mb)は屈曲耐性が優れるため好ましい。なかでも化合物(Mb1)は極性の大きいウレタン結合を有することから塗膜の靭性と基材密着性のバランスがよく、耐屈曲性が特に優れるために好ましい。
【0074】
化合物(Mb)の質量平均分子量は、1000~60,000であり、重合塗膜の相溶性や良好な屈曲耐性の観点から、5000~50,000の範囲が好ましい。化合物(Mb)の質量平均分子量がこの範囲であることで、活性エネルギー線重合性樹脂組成物の流動性、および化合物(Mb)以外の他の化合物(M)との相溶性が良化するために、活性エネルギー線重合性樹脂組成物の塗工性が向上でき、また接着剤として用いる場合には、重合塗膜の屈曲耐性に優れ、塗膜の白化を抑制できるために好ましい。
【0075】
化合物(Mb)の含有率は、活性エネルギー線重合性樹脂組成物100質量%中、1~40質量%であることが好ましく、2~20質量%がより好ましい。1質量%以上であれば屈曲耐性がより向上し、40質量%以下であれば、粘度が高くなりすぎず、塗工時の膜厚の制御が容易になる。
【0076】
(化合物(Mb1))
化合物(Mb1)は、ポリウレタン系オリゴマーであり、少なくとも1個のイソシアネート基を有する化合物と、化合物(Ma1)を反応させて得られる化合物、あるいは少なくとも1個のイソシアネート基を有する化合物と多価アルコールとを反応させて得られる末端イソシアネート基のウレタンプレポリマーと、化合物(Ma1)を反応させて得られる化合物、あるいは少なくとも1個のイソシアネート基を有する化合物と多価アルコールとを反応させて得られる末端イソシアネート基のウレタンプレポリマーと、更に少なくとも1個以上のアミノ基を有する化合物とを反応させて得られる末端イソシアネート基のウレタンプレポリマーと、化合物(Ma1)とを反応させて得られる化合物である。また、イソシアネート基とアミノ基とを反応させて得られるウレア結合基を含有したものもポリウレタン系オリゴマー(Mb1)に含む。
【0077】
化合物(Mb1)は、ジオール化合物と2個のイソシアネート基を有する化合物と化合物(Ma1)からなる化合物(Mb1)であることが好ましい。理論的に1分子の両末端にアクリレート基を有する構造となるため、柔軟さと架橋密度のバランスがよく、基材密着性と靭性が優れるため屈曲耐性が良好になるためである。
【0078】
少なくとも1個のイソシアネート基を有する化合物としては、単官能ポリイソシアネート、及び多官能イソシアネートが挙げられ、それぞれ、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。単官能ポリイソシアネートとしては、より具体的に、例えば、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、ブチルイソシアネート、オクチルイソシアネート、デシルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、ステアリルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、ベンジルイソシアネート、p-クロロフェニルイソシアネート、p-ニトロフェニルイソシアネート、2-クロロエチルイソシアネート、2,4-ジクロロフェニルイソシアネート、3-クロロ-4-メチルフェニルイソシアネート、トリクロロアセチルイソシアネート、クロロスルホニルイソシアネート、(R)-(+)-α-メチルベンジルイソシアネート、(S)-(-)-α-メチルベンジルイソシアネート、(R)-(-)-1-(1-ナフチル)エチルイソシアネート、(R)-(+)-1-フェニルエチルイソシアネート、(S)-(-)-1-フェニルエチルイソシアネート、p-トルエンスルホニルイソシアネート等が挙げられる。
【0079】
多官能イソシアネートのうち、芳香族ポリイソシアネートとしては、より具体的に、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができる。
【0080】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(別名:HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0081】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0082】
脂環族ポリイソシアネートとしては、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:IPDI)、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0083】
また一部上記ポリイソシアネートの2-メチルペンタン-2,4-ジオールアダクト体、イソシアヌレート環を有する3量体等も併用することができる。ポリフェニルメタンポリイソシアネート(別名:PAPI)、ナフチレンジイソシアネート、及びこれらのポリイソシアネート変性物等を使用し得る。なおポリイソシアネート変性物としては、カルボジイミド基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、水と反応したビュレット基、イソシアヌレート基のいずれかの基、またはこれらの基の2種以上を有する変性物を使用できる。ポリオールとジイソシアネートの反応物も少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物として使用することができる。
【0084】
イソシアネート基を有する化合物は脂肪族ジイソシアネートまたは脂環族ジイソシアネート化合物が屈曲耐性の観点で好ましい。
【0085】
また、多価アルコールとしては、数平均分子量(Mn)が約50~500の比較的低分子量のポリオール類や、数平均分子量(Mn)が500~30,000の比較的高分子量のポリオール類が挙げられ、それぞれ、特に制限が無く使用できる。
なお、数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0086】
比較的低分子量のポリオール類としては、より具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ポリオキシエチレングリコール(付加モル数10以下)、ポリオキシプロピレングリコール(付加モル数10以下)、プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール,トリシクロデカンジメタノール、シクロペンタジエンジメタノール、ダイマージオール等の脂肪族又は脂環式ジオール類;
【0087】
1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,2-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4’-メチレンジフェノール、4,4’-(2-ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’-ジヒドロキシビフェノール、o-,m-及びp-ジヒドロキシベンゼン、4,4’-イソプロピリデンフェノール、ビスフェノールにアルキレンオキサイドを付加させた付加型ビスフェノール等の芳香族ジオール類等を挙げることができる。
【0088】
付加型ビスフェノールの原料ビスフェノールとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられ、原料アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。
比較的高分子量のポリオール類としては、より具体的には、例えば、高分子量ポリエーテルポリオール、高分子量ポリエステルポリオール、高分子量ポリアミドポリオール、高分子量ポリカーボネートポリオール及び高分子量ポリウレタンポリオールが挙げられる。高分子量ポリカーボネートポリオールは、上記の比較的低分子量のジオールと炭酸エステル又はホスゲンとの反応によって得られる。
【0089】
上記高分子量ポリエステルポリオールの市販品としては、例えば、東洋紡績社製のバイロンシリーズ、クラレ社製のクラレポリオールPシリーズ、協和発酵ケミカル社製のキョーワポールシリーズが挙げられる。
上記高分子量ポリアミドポリオールの市販品としては、富士化成工業社製のTPAE617等を使用できる。
上記高分子量ポリカーボネートポリオールの市販品としては、例えば、パーストープ社製のオキシマーN112、旭化成ケミカルズ社製のPCDLシリーズ、クラレ社製のクラレポリオールPMHCシリーズ、クラレポリオールCシリーズ等が挙げられる。
【0090】
上記高分子量ポリウレタンポリオールの市販品としては、例えば、東洋紡績社製のバイロンURシリーズ、三井化学ポリウレタン社製のタケラックE158(水酸基価=20,酸価<3)、タケラックE551T(水酸基価=30,酸価<3)、及び、タケラックY2789(水酸基価=10,酸価<2)等が挙げられる。
その他に、ポリカプロラクトンジオール、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)ジオール、ポリバレロラクトンジオール等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール等も、上記高分子量ポリオールとして使用できる高分子量ポリオールに含まれる。
【0091】
多価アルコールは高分子量ポリエーテルジオールまたは高分子量ポリエステルジオールが密着性の観点で好ましい。
【0092】
またアミノ基を有するアミン類としては、より具体的には、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリアミノプロパン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、(2-ヒドロキシエチルプロピレン)ジアミン、(ジ-2-ヒドロキシエチルエチレン)ジアミン、(ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレン)ジアミン、(2-ヒドロキシプロピルエチレン)ジアミン、(ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレン)ジアミン、ピペラジン等の脂肪族ポリアミン;
イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン等の脂環式ポリアミン;
フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、2,4-トリレンジアミン、2,6-トリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン,3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ビス-(sec-ブチル)ジフェニルメタン等の芳香族ジアミンなどが使用できる。
【0093】
(化合物(Mb2))
化合物(Mb2)は、ポリエステル系オリゴマーであり、主鎖骨格に多塩基酸と多価アルコールを重縮合して得られるポリエステルの末端あるいはポリエステル鎖中の水酸基と(メタ)アクリル酸、マレイン酸などの分子内に1個以上のカルボキシル基を有するα,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物とのエステル化によって得られる化合物、あるいはポリエステルの末端あるいはポリエステル鎖中のカルボキシル基と(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピルなどの前述の化合物(Ma1)とのエステル化によって得られる化合物等である。その他、酸無水物と(メタ)アクリル酸グリシジルと少なくとも1個の水酸基を有する化合物とから得られるポリエステルオリゴマー等もポリエステルオリゴマー(Mb2)として使用可能である。
【0094】
上記、多価アルコールとしては、化合物(Mb1)の合成で説明したものと同様の多価アルコールを用いることができる。
【0095】
上記、多塩基酸としては、脂肪族系、脂環族系、及び芳香族系が挙げられ、それぞれ特に制限が無く使用できる。脂肪族系多塩基酸としては、より具体的には、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、スベリン酸、マレイン酸、クロロマレイン酸、フマル酸、ドデカン二酸、ピメリン酸、シトラコン酸、グルタル酸、イタコン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等が挙げられ、これらの脂肪族ジカルボン酸及びその無水物が利用できる。又、無水コハク酸の誘導体(メチル無水コハク酸物、2,2-ジメチル無水コハク酸、ブチル無水コハク酸、イソブチル無水コハク酸、ヘキシル無水コハク酸、オクチル無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、フェニル無水コハク酸等)、無水グルタル酸の誘導体(無水グルタル酸、3-アリル無水グルタル酸、2,4-ジメチル無水グルタル酸、2,4-ジエチル無水グルタル酸、ブチル無水グルタル酸、ヘキシル無水グルタル酸等)、無水マレイン酸の誘導体(2-メチル無水マレイン酸、2,3-ジメチル無水マレイン酸、ブチル無水マレイン酸、ペンチル無水マレイン酸、ヘキシル無水マレイン酸、オクチル無水マレイン酸、デシル無水マレイン酸、ドデシル無水マレイン酸、2,3-ジクロロ無水マレイン酸、フェニル無水マレイン酸、2,3-ジフェニル無水マレイン酸等)等の無水物誘導体も利用できる。
【0096】
脂環族系多塩基酸としては、より具体的には、例えば、脂環族ジカルボン酸としては、例えば、ダイマー酸、シクロプロパン-1α,2α-ジカルボン酸、シクロプロパン-1α,2β-ジカルボン酸、シクロプロパン-1β,2α-ジカルボン酸、シクロブタン-1,2-ジカルボン酸、シクロブタン-1α,2β-ジカルボン酸、シクロブタン-1α,3β-ジカルボン酸、シクロブタン-1α,3α-ジカルボン酸、(1R)-シクロペンタン-1β,2α-ジカルボン酸、trans-シクロペンタン-1,3-ジカルボン酸、(1β,2β)-シクロペンタン-1,3-ジカルボン酸、(1β,3β)-シクロペンタン-1,3-ジカルボン酸、(1S,2S)-1,2-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,1-シクロヘプタンジカルボン酸、クバン-1,4-ジカルボン酸、2,3-ノルボルナンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸等の飽和脂環属ジカルボン酸や、1-シクロブテン-1,2-ジカルボン酸、3-シクロブテン-1,2-ジカルボン酸、1-シクロペンテン-1,2-ジカルボン酸、4-シクロペンテン-1,3-ジカルボン酸、1-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、2-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,3-ジカルボン酸、2,5-ヘキサジエン-1α,4α-ジカルボン酸等の環内に不飽和二重結合が1もしくは2個有した不飽和脂環属ジカルボン酸が挙げられ、これらの脂環族ジカルボン酸及びその無水物等が利用できる。
【0097】
また、ヘキサヒドロ無水フタル酸の誘導体((3-メチル-ヘキサヒドロ無水フタル酸、4-メチル-ヘキサヒドロ無水フタル酸)、テトラヒドロ無水フタル酸の誘導体(1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、4-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニル-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸等)等の水素添化した無水フタル酸誘導体も脂環族ジカルボン酸無水物として利用できる。
【0098】
芳香族系多塩基酸としては、より具体的には、例えば、芳香族ジカルボン酸としては、例えば、o-フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、2,5-ジメチルテレフタル酸、2,2’-ビフェニルジカルボン酸、4,4-ビフェニルジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ジフェニルメタン-4,4´-ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、1,2-アズレンジカルボン酸、1,3-アズレンジカルボン酸、4,5-アズレンジカルボン酸、(-)-1,3-アセナフテンジカルボン酸、1,4-アントラセンジカルボン酸、1,5-アントラセンジカルボン酸、1,8-アントラセンジカルボン酸、2,3-アントラセンジカルボン酸、1,2-フェナントレンジカルボン酸、4,5-フェナントレンジカルボン酸、3,9-ペリレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸や、無水フタル酸、4-メチル無水フタル酸等の芳香族ジカルボン酸無水物が挙げられ、これらの芳香族ジカルボン酸及びその無水物等が利用できる。
【0099】
さらに、無水クロレンド酸、無水ヘット酸、ビフェニルジカルボン酸無水物、無水ハイミック酸、エンドメチレン-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、メチル-3,6-エンドメチレン-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1-シクロペンテン-1,2-ジカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、1,8-ナフタレンジカルボン酸無水物、オクタヒドロ-1,3-ジオキソ-4,5-イソベンゾフランジカルボン酸無水物等の酸無水物類も多塩基酸として使用可能である。
【0100】
(化合物(Mb3))
化合物(Mb3)は、ポリエポキシ系オリゴマーであり、グリシジル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸、マレイン酸などの分子内に1個以上のカルボキシル基を有するα,β-不飽和二重結合基を有する化合物との反応により得られる化合物であり、代表例としてビスフェノール型、エポキシ化油型、フェノールノボラック型、脂環型が挙げられる。ビスフェノール型ポリエポキシ系オリゴマーとしては、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンとを反応させて得られるビスフェノール型ジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸などの分子内に1個以上のカルボキシル基を有するα,β-不飽和二重結合基を有する化合物とを反応して得られるものである。
【0101】
エポキシ化油ポリエポキシ系オリゴマーとしては、エポキシ化された大豆油等の油と(メタ)アクリル酸、マレイン酸などの分子内に1個以上のカルボキシル基を有するα,β-不飽和二重結合基を有する化合物との反応により得られるものを使用できる。ノボラック型ポリエポキシ系オリゴマーとしては、ノボラック型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸などの分子内に1個以上のカルボキシル基を有するα,β-不飽和二重結合基を有する化合物との反応により得られるものを使用できる。脂環型ポリエポキシ系オリゴマーとしては、脂環型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸などの分子内に1個以上のカルボキシル基を有するα,β-不飽和二重結合基を有する化合物との反応により合成されたものを使用できる。
【0102】
<ラジカル重合開始剤(E)>
本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物には更に、ラジカル重合開始剤(E)を含むことができる。ラジカル重合開始剤(E)を使用することによって、ラジカル重合反応を促進することができる。
なお、本明細書においては、ラジカル重合開始剤(E)に該当する化合物であっても、スルフィド構造を有していればスルフィド化合物(S)に分類する。
【0103】
ラジカル重合開始剤(E)としては、公知のものから任意に選択し使用できるが、その具体例としては、例えば、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、キサントフルオレノン、ベンズアルデヒド、アントラキノン、3-メチルアセトフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4‘-ジアミノベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、4-オキサントン、カンファーキノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、等が挙げられる。市販品としては、例えば、イルガキュアー184,907,651,1700,1800,819,369,261、DAROCUR-TPO(BASF社製 2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド)、Omnirad819(IGM ResinsB.V社製 ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド)ダロキュア-1173(メルク社製)、エザキュアーKIP150、TZT(日本シイベルヘグナー社製)、カヤキュアBMS、カヤキュアDMBI(日本化薬社製)等が挙げられる。
フォトブリーチング性を有することから2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドまたはビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドが好ましい。
【0104】
ラジカル開始剤(E)の配合割合は、活性エネルギー線重合性樹脂組成物100質量%中、0.01~20質量%含有することが好ましい。
【0105】
活性エネルギー線としては、紫外線と電子線を例示することができる。
なお、電子線照射によってラジカル重合反応を進行させる場合には、重合開始剤を含む必要はない。
【0106】
また、ラジカル開始剤(E)の性能を向上させるために、活性エネルギー線増感剤を併用してもよい。活性エネルギー線増感剤としては、代表的なものを例記すれば、アミン類、尿素類、含硫黄化合物、含燐化合物、含塩素化合物又はニトリル類もしくはその他の含窒素化合物などであるが、アントラセン系やベンゾフェノン系、ペリレン、フェノチアジン、ローズベンガル等が好ましく使用される。
【0107】
<その他成分>
本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で有れば、前記したような成分の他に添加剤を適宜配合することが可能である。例えば、重合硬化収縮率低減、熱膨張率低減、寸法安定性向上、弾性率向上、粘度調整、熱伝導率向上、強度向上、靭性向上、着色向上等の観点から有機又は無機の充填剤を配合できる。このような充填剤としては、ポリマー、セラミックス、金属、金属酸化物、金属塩、染顔料等を用いることができ、形状については粒子状、繊維状等特に限定されない。なお、上記ポリマーの配合に当っては、柔軟性付与剤、可塑剤、難燃化剤、保存安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、チクソトロピー付与剤、分散安定剤、流動性付与剤、消泡剤等、充填剤としてではなくポリマーブレンド、ポリマーアロイとして、活性エネルギー線重合性樹脂組成物中に溶解、半溶解又はミクロ分散させることも可能である。
【0108】
本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物は、実質的に水や有機溶剤を含まないことが乾燥設備や乾燥エネルギーの点で好ましい。しかし、酸発生剤(KE)またはラジカル開始剤(E)がカチオン重合性化合物(K)やα,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(M)に難溶性になったり、高粘度となったりする場合は、酸発生剤(KE)またはラジカル開始剤(E)を溶解するため少量の水又は有機溶剤は含んでもよい。活性エネルギー線重合性樹脂組成物中の水又は有機溶剤の含有量は5質量%以内である。使用可能な有機溶剤として、特に限定はないが、具体的にはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シクロヘキサン、トルエン、キシレンその他の炭化水素系溶媒等の有機溶媒や、水をさらに添加して、活性エネルギー線重合性樹脂組成物の粘度を調整することもできるし、活性エネルギー線重合性樹脂組成物を加熱して粘度を低下させることもできる。
【0109】
本発明における活性エネルギー線重合性樹脂組成物から形成されてなる樹脂組成物層の膜厚は特に制限されず、使用用途によって適宜調整できる。これらの実施形態に係る粘度の調整及び樹脂組成物の塗工は、必要に応じて、活性エネルギー線重合性樹脂組成物に溶剤を加えることによって、容易に実施することができる。
【0110】
樹脂組成物層の膜厚が、0.1~6μmの場合には、粘度は1~1500mPa・sであることが好ましく、10~1300mPa・sであることがより好ましく、20~1000mPa・sであることがさらに好ましい。粘度が1500mPa・s以下であれば、基材(F)に塗工した場合、0.1~6μmの薄膜塗工が可能であり、透過率等の光学的特性にも優れる。一方、粘度が1mPa・s以下であれば樹脂組成物層の膜厚制御が容易になるために好ましい。
【0111】
また、樹脂組成物層の膜厚が、6~300μmの場合には、粘度は1500~100,000mPa・sであることが好ましく、3,000~50,000mPa・sであることがより好ましい。なお、樹脂組成物の粘度は、質量平均分子量1000以上60000以下のα,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(Mb)の粘度による影響が大きい。そのため、樹脂組成物の粘度を制御するために、粘度が1~100,000mPa・sである化合物(Mb)を用いることが好ましい。
【0112】
次に、活性エネルギー線重合性樹脂組成物の塗工プロセスについて、説明する。
常法にしたがって適当な方法で、後述する基材(F)の片面、又は両面に活性エネルギー線重合性樹脂組成物を塗工し、必要に応じてさらに別の基材を活性エネルギー線重合性樹脂組成物の面に積層することで積層体を形成することができる。樹脂組成物層の要求膜厚は使用用途によって異なる。
【0113】
上記樹脂組成物を、後述のハードコートフィルム又は偏光フィルム等の光学素子用積層体の用途で使用する場合、上記樹脂組成物を薄膜塗工する。塗工によって形成される樹脂組成物層の厚さは0.1~6μmの薄膜塗工であることが好ましく、0.1μm~3μmであることがより好ましい。0.1μm以上にすることによって、樹脂組成物をコート剤又は接着剤等として使用した場合に、十分な密着性又は接着力を得ることが容易となる。一方、樹脂組成物層の厚さが6μmを超えると、密着性又は接着力等の特性において変化は見られない場合が多い。
【0114】
また、上記樹脂組成物を、後述の加飾フィルム(タッチパネル用充填シートを意味する)等の光学素子用積層体の用途で使用する場合は、上記樹脂組成物を厚膜塗工する。塗工によって形成される上記樹脂組成物層の厚さは6~300μmの厚膜塗工であることが好ましく、20μm~250μmであることがより好ましい。6μm以上であれば、十分な応力緩和性が得られ、300μm以下であれば、スジ引き等の塗工性の低下も抑制できる。
【0115】
本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物を基材等に塗工する方法としては、特に制限は無く、マイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、マイクログラビアコーター、リップコーター、コンマコーター、カーテンコーター、ナイフコーター、リバースコ-ター、スピンコーター等種々の塗工方法が挙げられるが、薄膜塗工や厚膜塗工等、用途により使用可能であり、特に制限はない。
【0116】
本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物は、公知慣用の方法により基材上に塗布し、形成された塗布層に活性エネルギー線を照射し、オキシラン基などのカチオン重合性基を有する化合物(K)を活性エネルギー線重合させることにより重合硬化する。活性エネルギー線の照射光源としては、150~550nm波長域の光を主体としたもので、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、LEDランプ、キセノンランプ又はメタルハライドランプなどが適当である。その他、レーザー光線、電子線なども露光用活性エネルギー線として利用できる。
【0117】
基材(F)として紫外線吸収性基材が用いられる場合には、紫外線照射装置のランプは、保護フィルムに含有される紫外線吸収剤の吸収波長よりも長波長側に照射量の多いランプを使用することが好ましい。
そのようなランプとしては、例えば、波長380~400nm域にも照射量が多い「Dバルブ」、波長420nm域を中心に405nm~425nm域に照射量が多い「Vバルブ」(前記バルブはいずれもヘレウス社製のUVランプ。)等が挙げられる。
【0118】
紫外線の照射量は、特に限定されるものではないが、波長320~390nm(UV-A領域)または、波長395~445nm(UV-V領域)、照度1~3000mW/cmの光を、照射量が10~5000mJ/cmとなるように照射して露光することが好ましい。照射量が10mJ/cm以上であれば、活性エネルギー線重合性樹脂組成物の硬化が促進し、欲する性能が発揮でき、照射量が10000mJ/cm以下であれば、照射時間が長くなりすぎず、生産性にも優れる。
【0119】
《積層体》
続いて、本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物を用いて、基材(F)の片面、又は両面に積層してなる積層体について説明する。
本発明の積層体は、光学素子用積層体としても好適に用いることができる。
また、本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物を用いることで、第一の基材(F)、樹脂組成物層、および第二の基材(F)をこの順に備える積層体における、少なくとも一方の基材(F)として紫外線吸収性基材を用いた場合であっても、さらには第一の基材(F)および第二の基材(F)のいずれも紫外線吸収性基材であっても、接着性、耐湿熱性、および屈曲耐性に優れる積層体とできる。
【0120】
本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物の活性エネルギー線による重合反応を使用する場合、基材(F)のうち、透明のフィルム状基材(透明フィルム)と該透明フィルムの少なくとも一方の面に位置する樹脂組成物層とを具備する積層体の形成に使用されることが好ましい。
【0121】
透明フィルムの積層体は、以下のようにして得ることができる。
透明フィルムの片面に、本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物を塗工し、別の透明フィルムを樹脂組成物層の表面に積層したり、更にこの積層体の片面や両面に活性エネルギー線重合性樹脂組成物を塗工し、更に別の透明フィルム、ガラス、あるいは透明成形体に積層することによって、積層体を得ることができる。
【0122】
活性エネルギー線重合性樹脂組成物の活性エネルギー線重合反応は、活性エネルギー線重合性樹脂組成物の塗工時、あるいは積層する際、さらには積層した後に活性エネルギー線を照射して進行するが、積層した後に活性エネルギー線を照射して重合反応を進めることが好ましい。
【0123】
<基材(F)>
基材(F)としては、フィルム状基材、ガラス板、紙加工品等、特に制限無く使用できる。一方、二つ以上の基材(F)を貼り合わせる接着剤として使用する場合には、活性エネルギー線を照射して重合させるために、活性エネルギー線を透過し易い基材を使用する必要があり、特に透明フィルムや透明ガラス板を使用することが好ましい。片方を活性エネルギー線が透過し難い基材、例えば、木材、金属板、プラスチック板、紙加工品等を使用した場合でも、もう片方を透明フィルムや透明ガラス板を使用し、透明フィルムや透明ガラス板側から照射し、重合硬化を行えば使用は可能である。
【0124】
基材(F)としては、フィルム状基材を使用することが好ましく、セロハン、各種プラスチックフィルム等の透明のフィルム状基材(透明フィルム)が挙げられるが、各種プラスチックフィルムの使用が好ましい。フィルム状基材としては、単層のものであってもよいし、複数の基材を積層してなる多層状態にあるものも用いることができる。
【0125】
透明フィルムは、多層に使用する場合、同一組成であっても異なっていてもよい。例えば、片面にポリシクロオレフィン系フィルムを使用し、もう一方の片面にポリアクリル系フィルムを使用してもよい。
透明フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1~500μm程度である。特に1~300μmが好ましく、5~200μmがより好ましい。透明フィルムは、5~150μmの場合に特に好適である。
【0126】
また、透明フィルムは、ディスプレイやタッチパネル等の情報通信機器等の光学フィルムに使用することができる。
【0127】
光学フィルムは、各種透明フィルムのうち、主に光学用途にて用いられる透明フィルムが好適に使用される。ここで、光学フィルムとは、透明フィルムに特殊な処理を施されたものであり、光学的機能(光透過、光拡散、集光、屈折、散乱、HAZE等の諸機能)を有するものが光学フィルムと称されている。これらの光学フィルムは単独又は数種を組み合わせて使用することができる。
【0128】
光学フィルムとして使用される各種透明フィルムは、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。各種透明フィルムとしては、各種プラスチックフィルムやプラスチックシートともいわれ、例えば、ポリビニルアルコールフィルムや、ポリトリアセチルセルロースフィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系フィルム、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリノルボルネン系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリアクリル系フィルム、ポリフェニレンサルファイド系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリビニル系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリイミド系フィルム、ポリオキシラン系フィルムなどが挙げられる。
【0129】
<光学素子用積層体>
本発明の一実施形態では、基材(F)として、光学フィルムの少なくとも一方の主面に、本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物からなる樹脂組成物層を形成することによって、光学素子用積層体を構成することができる。
【0130】
光学素子用積層体は、液晶表示装置、PDPモジュール、タッチパネルモジュール、有機ELモジュール等のガラス板や上記の各種プラスチックフィルム等の透明フィルムに貼着して使用される。
【0131】
光学素子用積層体の基本的積層構成は、透明フィルム/樹脂層/透明フィルム、あるいは透明フィルム/樹脂層/透明フィルム/樹脂層/透明フィルムのようなシート状の両面活性エネルギー線重合性樹脂組成物積層体である。さらには、透明フィルム/樹脂層/透明フィルム/樹脂層/透明フィルム/樹脂層/透明フィルム、ガラス、あるいは光学成形体のような多層の光学フィルムを光学部材に固定化した光学素子用積層体として使用される。
これらの透明フィルムのいずれかが少なくとも光学フィルムである。
【0132】
光学素子用積層体の具体例として、例えば、ハードコートフィルム、帯電防止コートフィルム、防眩コートフィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射防止フィルム、光拡散フィルム、輝度向上フィルム、プリズムフィルム(プリズムシートともいう)、加飾フィルム(タッチパネル用充填シートを意味する)、及び導光フィルム(導光板ともいう)等が挙げられる。本発明の樹脂組成物を接着剤として使用して、上記光学素子用積層体を、さらに、液晶表示装置、PDPモジュール、タッチパネルモジュール、及び有機ELモジュール等のガラス板に貼着させてもよい。また、別の形態として、本発明の樹脂組成物を接着剤として使用して、上記光学素子用積層体を、上記各種光学フィルムに貼着させてもよい。
【0133】
以下、光学素子用積層体の一例として偏光フィルムを挙げ、上記積層体の実施形態について、より具体的に説明する。偏光フィルムは、偏光板とも呼ばれ、ポリビニルアルコール系偏光子の両面を2枚のポリアセチルセルロース系フィルムであるポリトリアセチルセルロース系保護フィルム(以下、「TACフィルム」という)や、ポリビニルアルコール系偏光子の片面や両面をポリノルボルネン系フィルムであるポリシクロオレフィン系フィルム、ポリアクリル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリエステル系フィルム等を、接着剤を介して積層した多層構造のシート状の光学素子用積層体であり、本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物を偏光フィルム用の該接着剤として好適に使用できる。
【0134】
偏光子の両側に透明保護フィルムを設ける場合、その表裏で同じポリマー材料からなる透明保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料等からなる透明フィルムを用いてもよい。
【0135】
偏光板(偏光フィルム)に用いられる保護フィルムとしては、TACフィルム、ポリシクロオレフィン系フィルム、ポリアクリル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリエステル系フィルムなどが好ましく用いられる。保護フィルムには、紫外線吸収剤を含む紫外線吸収基材を用いることもできる。紫外線吸収基材としては、400nm以下の紫外線の多くが吸収される基材が用いられる。本発明の積層体が偏光板である場合、2つの保護フィルムのうち、少なくもいずれか一方が紫外線吸収基材であってもよい。
【0136】
本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物を使用した偏光板(偏光フィルム)は、より具体的には、以下のようにして得ることができる。
【0137】
(I)第1の基材(F)として透明保護フィルムの一方の面に、活性エネルギー線重合性樹脂組成物を塗工し、第1の樹脂組成物層を形成し、
第2の基材(F)として第2の透明保護フィルムの一方の面に、活性エネルギー線重合性樹脂組成物を塗工し、第2の樹脂組成物層を形成し、
次いで、ポリビニルアルコール系偏光子の各面に、第1の樹脂組成物層及び第2の樹脂組成物面を、同時に/又は順番に重ね合わせた後、活性エネルギー線を照射し、第1の樹脂組成物層及び第2の樹脂組成物層を重合硬化することによって製造する方法。
【0138】
(II)ポリビニルアルコール系偏光子の一方の面に、活性エネルギー線重合性樹脂組成物を塗工し、第1の樹脂組成物層を形成し、形成された第1の樹脂組成物層の表面を第1の基材(F)として第1の透明保護フィルムで覆い、次いでポリビニルアルコール系偏光子の他方の面に、活性エネルギー線重合性樹脂組成物を塗工し、第2の樹脂組成物層を形成し、形成された第2の樹脂組成物層の表面を第2の基材(F)として第2の透明保護フィルムで覆い、活性エネルギー線を照射し、第1の重合性樹脂組成物層及び第2の樹脂組成物層を重合硬化することによって製造する方法。
【0139】
(III)第1の基材(F)として第1の透明保護フィルムとポリビニルアルコール系偏光子を重ねた端部及びポリビニルアルコール系偏光子の第1の透明保護フィルムがない面に重ねた第2の基材(F)として第2の透明保護フィルムの端部に活性エネルギー線重合性樹脂組成物をたらした後、ロールの間を通過させ各層間に樹脂組成物を広げる。次に活性エネルギー線を照射し、活性エネルギー線重合性樹脂組成物を重合硬化させることによって製造する方法
等があるが、特に限定するものではない。
【実施例0140】
以下に、本発明の具体的な実施例を比較例と併せて説明するが、本発明は、下記実施例に限定されない。また、下記実施例及び比較例中、「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を表し、「RH」は相対湿度を意味するものとする。
また、表中の配合量は、質量部であり、溶剤以外は、不揮発分換算値である。尚、表中の空欄は配合していないことを表す。
【0141】
<質量平均分子量の測定方法>
「質量平均分子量」は、東ソー株式会社製ゲルパーミエイションクロマトグラフィー「HLC-8220GPC」を使用した測定した数値であり、分離カラム:東ソー株式会社製「TSK-GEL SUPER H5000」、「TSK-GEL SUPER H4000」、「TSK-GEL SUPER H3000」、及び「TSK-GEL SUPER H2000」を4本直列に繋ぎ、移動相に温度40℃のテトラヒドロフランを用いて、0.6ml/分の流速で測定したポリスチレン換算質量平均分子量である。
【0142】
<水酸基価の測定方法>
水酸基価の測定は以下のとおりである。共栓三角フラスコ中に試料、約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解したのち、更にアセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mlとした溶液)を正確に5ml加え、約1時間攪拌した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定し、水酸基価を次式により求めた。水酸基価は樹脂の乾燥状態の数値とした(単位:mgKOH/g)。
水酸基価(mgKOH/g)=[{(b-a)×F×28.25}/S]/(不揮発分濃度/100)+D
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
D:酸価(mgKOH/g)
【0143】
実施例および比較例に用いた材料は以下の通りである。
<カチオン重合性化合物(K)>
[オキシラン化合物(K1)]
((K11)アルコキシシリル基を有さないオキシラン化合物)
「(K111)芳香環を有し、アルコキシシリル基を有さないオキシラン化合物」
JER828:ビスフェノールAジグリシジルエーテル(三菱ケミカル(株)製)
「(K112)芳香環およびアルコキシシリル基を有さないオキシラン化合物」
16HDDGE:1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル
CEL2021P:3,4-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート((株)ダイセル製 セロキサイド2021P)
((K12)アルコキシシリル基を有するオキシラン化合物)
KBE-402:3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業(株)製)
[オキシラン化合物以外の環状ヘテロ化合物(K2)]
OXT-101:3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(東亞合成(株)製 アロンオキセタンOXT-101)
【0144】
<スルフィド化合物(S)>
[芳香環を有するスルフィド化合物(S1)]
((S11)芳香環を有し、窒素原子を有さないスルフィド化合物)
Irganox1035:2,2’-チオジエチルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート (BASF製)
Irganox1520:2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール (BASF製)
Irganox1726:2,4-ビス[(ドデシルチオ)メチル]-6-メチルフェノール (BASF製)
((S12)芳香環と窒素原子を有するスルフィド化合物)
Omnirad907:2-[4-(メチルチオ)ベンゾイル]-2-(4-モルホニル)プロパン (IGM resins B.V.製)
OXE01:1-[4-(フェニルチオ)フェニル]オクタン-1,2-ジオン=2-(O-ベンゾイルオキシム) (BASF製、Irgacure OXE01)
[芳香環を有しないスルフィド化合物(S2)]
AO-412S:ビス[3-(ドデシルチオ)プロピオン酸]2,2-ビス[[3-(ドデシルチオ)-1-オキソプロピルオキシ]メチル]-1,3-プロパンジイル ((株)ADEKA製、アデカスタブAO-412S)
AO-503:3,3’-チオビスプロピオン酸ジトリデシル ((株)ADEKA製、アデカスタブAO-503)
【0145】
<酸発生剤(KE)>
[ヨードニウム塩系酸発生剤(KE1)]
Omnicat250:4-イソブチルフェニル(4-メチルフェニル)
ヘキサフルオロフォスフェート (IGM resins B.V.製 )
WPI-124:ビス[4-n-アルキル(C10~13)フェニル]ヨードニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート(フジフイルム和光純薬社製)
[スルホニウム塩系酸発生剤(KE2)]
CPI-110P:サンアプロ製 トリアリールスルホニウム・PF6塩タイプの光酸発生剤
CPI-101A:サンアプロ製 トリアリールスルホニウム・SbF6塩タイプの光酸発生剤
【0146】
<チオキサントン化合物(T)>
DETX-S:2,4-ジエチルチオキサントン
2-ITX:2-イソプロピルチオキサントン
<ラジカル重合開始剤(E)>
TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイト゛ (IGM resins B.V.製 Omnirad TPO)
【0147】
<α,β-エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(M)>
[化合物(Ma)]
(化合物(Ma1))
4HBA:アクリル酸4-ヒドロキシブチル
CHDMMA:シクロヘキサンジメタノールモノメタクリレート
(化合物(Ma2))
IBXA:イソボロニルアクリレート
TCDDA:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート
(化合物(Ma3))
EOEOEA:エトキシエトキシエチルアクリレート
DPGDA:ジプロピレングリコールジアクリレート
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート
【0148】
[化合物(Mb)]
(化合物(Mb1))
オリゴマー1:紫光UV3000B:日本合成化学工業社製 ポリウレタンアクリレート Mw=18,000
オリゴマー2:下記の方法にて製造したオリゴマーを用いた。
(化合物(Mb3))
オリゴマー3:下記の方法にて製造したオリゴマーを用いた。
【0149】
<オリゴマー2の製造>
撹拌機、還流冷却管、ガス導入管、温度計、滴下ロ-トを備えた5口セパラブルフラスコに、ポリテトラメチレングリコール(保土ヶ谷化学株式会社製:PTG850、水酸基価127.1mgKOH/g)を81.6部、イソホロンジイソシアネートを41.4部仕込み乾燥空気を導入しながら60℃に昇温した。ここへジブチル錫ジラウレートを0.05部添加し、1時間反応させた。別途、滴下ロートに4-ヒドロキシブチルアクリレートを27.0部、ハイドロキノンモノメチルエーテルを0.15部仕込み、1時間かけてセパラブルフラスコへ滴下した。滴下終了後、3時間80℃で攪拌を続けた後、赤外線吸収スペクトルにてイソシアナト基の吸収ピークがないことを確認し反応を終了しオリゴマー2を得た。生成物の質量平均分子量は4,000であった。
【0150】
<オリゴマー3の製造>
撹拌機、還流冷却管、ガス導入管、温度計を備えた5口セパラブルフラスコに、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製:JER1007P、エポキシ当量2250)を96.9部、アクリル酸を3.2部、ヒドロキノンモノメチルエーテルを0.1部、MEKを20部仕込み乾燥空気を導入しながら60℃に昇温し溶解した。ここへテトラブチルアンモニウムボレートを0.5部添加し、100℃に昇温し8時間反応させオリゴマー3を得た。オリゴマー3の質量平均分子量は5100であった。
【0151】
[実施例1]
カチオン重合性化合物(K)としてJER828を50部、16HDDGEを45.5部、スルフィド化合物(S)としてIrganox1035を0.5部、酸発生剤(KE)としてOmnicat250を3部、チオキサントン化合物(T)としてDETXを1部、を遮光された300mlのガラス瓶に仕込み、ディスパーにて十分に攪拌後、十分に脱泡を行い、活性エネルギー線重合性樹脂組成物を得た。
【0152】
[実施例2~30、比較例1~5]
表1~3に示すように、組成および配合量(質量部)を変更した以外は、実施例1と同ようにして、活性エネルギー線重合性樹脂組成物を得た。
【0153】
《活性エネルギー線重合性樹脂組成物の評価》
本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物の高温(70℃)での保存安定性を下記の方法で評価した。結果を表1~3に示す。
【0154】
<高温保存安定性>
活性エネルギー線重合性樹脂組成物を70℃の恒温槽に24時間保管し、保管前後の樹脂組成物1.1mlを測定用資料とし、E型粘度計(TVE-33LT、東機産業社製)を用いて、回転速度5rpm、25℃で測定し、粘度変化率により評価した。
粘度の変化率=保管後の粘度/保管前の粘度
[評価基準]
◎:0.95以上1.05未満、非常に優れる
〇:1.05以上1.1未満、または0.9以上0.95未満、優れる
△:1.1以上1.15未満、または0.85以上0.9未満、実用可
×:1.15以上、または0.85未満、実用不可
【0155】
《積層体の評価》
得られた活性エネルギー線重合性樹脂組成物を用いて下記積層体X1、X2を作製し、積層体を下記の方法で評価した。結果を表1~3に示す。
【0156】
<積層体X1(偏光板)の製造>
透明フィルム(1)、(2)として、紫外線吸収性基材である、富士フィルム社製の紫外線吸収剤含有ポリトリアセチルセルロース系(以下TACと略す)フィルム(商品名「フジタック:80μm」、波長300~380nmにおける透過率は20%T以下である)を用い、それぞれその表面に300W・分/mの放電量でコロナ処理を行い、表面処理後1時間以内に、得られた活性エネルギー線重合性樹脂組成物をワイヤーバーコーターを用いて膜厚4μmとなるように塗工して樹脂組成物層を形成し、前記樹脂組成物層との間に上記のポリビニルアルコール系偏光子を挟み、「透明フィルム(1)(紫外線吸収性TACフィルム)/樹脂組成物層/PVA系偏光子/樹脂組成物層/透明フィルム(2)紫外線吸収性TACフィルム」からなる積層体を得た。透明フィルム(2)がブリキ板に接するように、この積層体の四方をセロハンテープで固定し、ブリキ板に固定した。紫外線照射装置(Heraeus社製 V-bulb)で最大照度500mW/cm、積算光量1000mJ/cmの紫外線(UV-V領域)を透明フィルム(1)側から照射して、積層体X1(偏光板)を作製した。
【0157】
<積層体X2の製造>
波長300~380nmにおける透過率が20%T以下である厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す)フィルム上に、得られた活性エネルギー線重合性樹脂組成物を、100℃に加熱した上でバーコーターにより8μmの厚みに塗布した。これに厚さ50μmのPETフィルムをニップロールにより貼りあわせ、「透明フィルム(1)(PETフィルム)/樹脂組成物層/透明フィルム(2)(PETフィルム)」からなる積層体を得た後、紫外線照射装置(Heraeus社製 V-bulb)で最大照度500mW/cm、積算光量1000mJ/cmの紫外線を片側から照射して積層体X2を得た。
【0158】
それぞれについて、作製直後の活性エネルギー線重合性樹脂組成物を用いて製造した積層体X1および積層体X2を「初期」として評価に用いた。また、70℃24時間保管後の活性エネルギー線重合性樹脂組成物を用いて製造した積層体X1および積層体X2を「保管後(70℃24時間)」として評価に用いた。
【0159】
<接着力>
接着力は、JIS K6 854-4 接着剤-剥離接着強さ試験方法-第4部:浮動ローラー法に準拠して測定した。
即ち、得られた積層体X1を、25mm×150mmのサイズにカッターを用いて裁断して測定用サンプルとした。サンプルを両面粘着テープ(トーヨーケム社製DF8712S)を使用して、ラミネータを用いて金属板上に貼り付けて、偏光板と金属板との測定用の積層体を得た。測定用の積層体の偏光板には、透明フィルムと偏光子の間に予め剥離のキッカケを設けておき、この測定用の積層体を23℃、相対湿度50%の条件下で、300mm/分の速度で90°の角度で引き剥がし、剥離力とした。この際、ポリビニルアルコール系偏光子と透明フィルム(2)の剥離力を測定した。この剥離力を接着力として4段階で評価した。
[評価基準]
◎:剥離不可、あるいは偏光板破壊、非常に優れる
○:剥離力が2.0(N/25mm)以上、優れる
△:剥離力が1.0(N/25mm)以上2.0(N/25mm)未満、実用可
×:剥離力が1.0(N/25mm)未満、実用不可
【0160】
<耐湿熱性>
各接着剤で貼りあわされた積層体X2を、50mm×40mmの大きさに裁断し、温度60℃-90%RHの条件下、及び温度85℃-85%RHの条件下で1000時間暴露した。暴露後積層体Aの端部の剥がれの有無を目視にて、以下の4段階で評価をした。
85℃-85%RHの条件下で剥がれがある場合は、×、△、または〇とした。
[評価基準]
◎:85℃-85%RHの条件下でも剥がれが全く無く、非常に優れる
○:60℃-90%RHの条件下で剥がれが全く無く、優れる
△:60℃-90%RHの条件下で1mm未満の剥がれがあり、実用可
×:60℃-90%RHの条件下で1mm以上の剥がれがあり、実用不可
【0161】
<耐屈曲性>
積層体X2を幅120mm×長さ200mmのサイズに切り出し、折り曲げ試験機(ユアサシステム機器社製)にて、折り曲げた時の内径(直径)が2mmになるように条件設定し、折り曲げと180°開放とを1サイクルとして30万サイクル繰り返し行った。屈曲性は、試験後の外観を下記観点で評価した。
外観:試験用積層体の気泡の有無および樹脂組成物層の浮きや剥がれの有無を以下の条件で目視評価した。
[評価基準]
◎:気泡の発生、浮き・ハガレが全く認められず、非常に優れる
○:気泡の発生、浮き・ハガレがわずかに認められるが、優れる
△:気泡の発生、浮き・ハガレが認められるが、実用可
×:気泡の発生、浮き・ハガレが顕著に認められ、実用不可
【0162】
【表1】
【0163】
【表2】
【0164】
【表3】
【0165】
[実施例41]
カチオン重合性化合物(K)としてJER828を50部、16HDDGEを46部、スルフィド化合物(S)としてIrganox1035を0.5部、酸発生剤(KE)としてCPI-110Pを4部、を遮光された300mlのガラス瓶に仕込み、ディスパーにて十分に攪拌後、十分に脱泡を行い、活性エネルギー線重合性樹脂組成物を得た。
【0166】
[実施例42~54、比較例6~10]
表4、5に示すように、組成および配合量(質量部)を変更した以外は、実施例41と同ようにして、活性エネルギー線重合性樹脂組成物を得た。
【0167】
《活性エネルギー線重合性樹脂組成物の評価》
本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物の高温(70℃または100℃)での保存安定性を下記の方法で評価した。結果を表4、5に示す。
【0168】
<高温保存安定性>
活性エネルギー線重合性樹脂組成物を70℃、または100℃の恒温槽に24時間保管し、保管前後の樹脂組成物1.1mlを測定用資料とし、E型粘度計(TVE-33LT、東機産業社製)を用いて、回転速度5rpm、25℃で測定し、粘度変化率により評価した。
粘度の変化率=保管後の粘度/保管前の粘度
[評価基準]
◎:0.95以上1.05未満、非常に優れる
〇:1.05以上1.1未満、または0.9以上0.95未満、優れる
△:1.1以上1.15未満、または0.85以上0.9未満、実用可
×:1.15以上、または0.85未満、実用不可
【0169】
《積層体の評価》
得られた活性エネルギー線重合性樹脂組成物を用いて下記積層体Y1を作製し、積層体を下記の方法で評価した。結果を表4、5に示す。
【0170】
<積層体Y1(偏光板)の製造例>
透明フィルム(1)として、富士フィルム社製の紫外線吸収剤を含まないポリトリアセチルセルロース系フィルム(商品名「フジタック:80μm」)を用い、透明フィルム(2)として、富士フィルム社製の紫外線吸収剤含有ポリトリアセチルセルロース系フィルム(商品名「フジタック:80μm」、波長300~380nmにおける透過率は20%T以下である)を用い、それぞれその表面に300W・分/mの放電量でコロナ処理を行い、表面処理後1時間以内に、得られた活性エネルギー線重合性樹脂組成物を、ワイヤーバーコーターを用いて膜厚4μmとなるように塗工し、樹脂組成物層を形成し、前記樹脂組成物層との間に上記のポリビニルアルコール系偏光子を挟み、「透明フィルム(1)(TACフィルム)/樹脂組成物層/PVA系偏光子/樹脂組成物層/透明フィルム(2)(紫外線吸収性TACフィルム)」からなる積層体を得た。透明フィルム(2)がブリキ板に接するように、この積層体の四方をセロハンテープで固定し、ブリキ板に固定した。 紫外線照射装置(Heraeus社製 D-bulb)で最大照度400mW/cm、積算光量600mJ/cmの紫外線(UV-A領域)を透明フィルム(1)側から照射して、積層体Y1(偏光板)を作製した。
【0171】
<積層体Y2の製造>
波長300~380nmにおける透過率が20%T以下である厚み50μmのPETフィルム上に、得られた活性エネルギー線重合性樹脂組成物を、100℃に加熱した上でバーコーターにより8μmの厚みに塗布した。これに厚さ50μmのPETフィルムをニップロールにより貼りあわせ、「透明フィルム(1)(PETフィルム)/樹脂組成物層/透明フィルム(2)(PETフィルム)」からなる積層体を得た後、紫外線照射装置(Heraeus社製 V-bulb)で最大照度500mW/cm、積算光量1000mJ/cmの紫外線を片側から照射して積層体Y2を得た。
【0172】
それぞれについて、作製直後の活性エネルギー線重合性樹脂組成物を用いて製造した積層体Y1および積層体Y1を「初期」として評価に用いた。また、100℃24時間保管後の活性エネルギー線重合性樹脂組成物を用いて製造した積層体Y1および積層体Y2を「保管後(100℃24時間)」として評価に用いた。
【0173】
<接着力>
接着力は、JIS K6 854-4 接着剤-剥離接着強さ試験方法-第4部:浮動ローラー法に準拠して測定した。
即ち、得られた積層体Y1を、25mm×150mmのサイズにカッターを用いて裁断して測定用サンプルとした。サンプルを両面粘着テープ(トーヨーケム社製DF8712S)を使用して、ラミネータを用いて金属板上に貼り付けて、偏光板と金属板との測定用の積層体を得た。測定用の積層体の偏光板には、透明フィルムと偏光子の間に予め剥離のキッカケを設けておき、この測定用の積層体を23℃、相対湿度50%の条件下で、300mm/分の速度で90°の角度で引き剥がし、剥離力とした。この際、ポリビニルアルコール系偏光子と透明フィルム(2)の剥離力を測定した。この剥離力を接着力として4段階で評価した。
[評価基準]
◎:剥離不可、あるいは偏光板破壊、非常に優れる
○:剥離力が2.0(N/25mm)以上、優れる
△:剥離力が1.0(N/25mm)以上2.0(N/25mm)未満、実用可
×:剥離力が1.0(N/25mm)未満、実用不可
【0174】
<耐湿熱性>
各接着剤で貼りあわされた積層体Aを、50mm×40mmの大きさに裁断し、温度60℃-90%RHの条件下、及び温度85℃-85%RHの条件下で1000時間暴露した。暴露後積層体Y1の端部の剥がれの有無を目視にて、以下の4段階で評価をした。
85℃-85%RHの条件下で剥がれがある場合は、×、△、または〇とした。
[評価基準]
◎:85℃-85%RHの条件下でも剥がれが全く無く、非常に優れる
○:60℃-90%RHの条件下で剥がれが全く無く、優れる
△:60℃-90%RHの条件下で1mm未満の剥がれがあり、実用可
×:60℃-90%RHの条件下で1mm以上の剥がれがあり、実用不可
【0175】
<耐屈曲性>
積層体Y2を幅120mm×長さ200mmのサイズに切り出し、折り曲げ試験機(ユアサシステム機器社製)にて、折り曲げた時の内径(直径)が2mmになるように条件設定し、折り曲げと180°開放とを1サイクルとして30万サイクル繰り返し行った。屈曲性は、試験後の外観を下記観点で評価した。
外観:試験用積層体の気泡の有無および樹脂組成物層の浮きや剥がれの有無を以下の条件で目視評価した。
[評価基準]
◎:気泡の発生、浮き・ハガレが全く認められず、非常に優れる
○:気泡の発生、浮き・ハガレがわずかに認められるが、優れる
△:気泡の発生、浮き・ハガレが認められるが、実用可
×:気泡の発生、浮き・ハガレが顕著に認められ、実用不可
【0176】
【表4】
【0177】
【表5】
【0178】
表1~5に示すように、本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物は、保存安定性に優れ、かつ高い耐熱性および優れた硬化性を有することが確認できた。
また、活性エネルギー線重合性樹脂組成物の高い耐熱性により高温で保存された場合であっても、接着性、耐湿熱性、および屈曲耐性が良好であることが確認できた。