(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092604
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】多糖類含有粒子、該粒子の製造方法、及び該粒子の用途
(51)【国際特許分類】
C08B 30/06 20060101AFI20230627BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230627BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
C08B30/06
A61K47/36
C08J3/12 101
C08J3/12 CEP
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207724
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 理紗
(72)【発明者】
【氏名】前山 洋輔
【テーマコード(参考)】
4C076
4C090
4F070
【Fターム(参考)】
4C076BB31
4C076EE38A
4C090AA03
4C090BA13
4C090BD02
4C090BD03
4C090BD19
4C090CA12
4C090CA19
4C090DA22
4C090DA28
4C090DA31
4C090DA32
4F070AA01
4F070AA03
4F070AC12
4F070AC13
4F070AE27
4F070CA03
4F070DA34
4F070DB01
4F070DB10
4F070DC06
4F070DC16
(57)【要約】
【課題】多糖類を主成分とし、吸油性に優れ、且つ、ざらつきの少ない触感及び高い疎水性を有する粒子を提供する。
【解決手段】多糖類を主成分として含有し、水に対する接触角が40°以上150°以下であり、アマニ油吸油量が80mL/100g以上300mL/100g以下であり、摩擦係数の平均偏差(MMD)が0.010未満である、多糖類含有粒子。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多糖類を主成分として含有し、
水に対する接触角が40°以上150°以下であり、
アマニ油吸油量が80mL/100g以上300mL/100g以下であり、
摩擦係数の平均偏差(MMD)が0.010未満である、多糖類含有粒子。
【請求項2】
体積平均粒子径が、0.1μm以上100μm以下である、請求項1に記載の多糖類含有粒子。
【請求項3】
表面にクレーター状の凹部を少なくとも1個有する、請求項1又は2に記載の多糖類含有粒子。
【請求項4】
前記多糖類が、加工澱粉である、請求項1~3のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子の製造方法であって、
多糖類を含む溶液を噴霧乾燥して前駆体を得る噴霧乾燥工程と、
前記噴霧乾燥工程で得られた前駆体をイオン交換処理して多糖類含有粒子を得るイオン交換工程と、
を備える、製造方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子を含む、外用剤。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子を含む、コーティング材料。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子を含む、樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子を含む、ブロッキング防止剤。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子を含む、光拡散フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多糖類含有粒子、該粒子の製造方法、及び該粒子の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多糖類を含有する粒子は、化粧料、医薬品、食品、塗料等への添加剤として幅広い用途に使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、表面に皺状又は襞状の凹凸構造を有し、結晶化度が80%以下である、セルロース又はセルロース誘導体を主成分として含む、粒子が記載されている。
【0004】
特許文献2には、アルケニルコハク酸澱粉エステルアルミニウムの水分散液のドラムドライヤー乾燥粉末からなることを特徴とする液状物質の粉末化用基材が記載されている。
【0005】
特許文献3には、澱粉及び/又はセルロース粉体を、カルボキシル基を二つ有する二塩基酸から誘導される無水二塩基酸で一次処理して粉体表面を-COOアルカリ金属塩とする第一ステップ、及び、二次処理として水溶性の価数2~4の金属イオンを有する多価金属塩と、炭素数6から22の脂肪酸、アミノ酸、炭素数6から22の脂肪酸が結合したアミノ酸、水溶性の酸性多糖類、水溶性の酸性合成高分子及び水溶性の酸性紫外線吸収剤から選ばれる一種又は二種以上のアルカリ金属化合物と、を一次処理した粉体と多価金属を介して反応させる第二ステップからなる表面処理澱粉又は表面処理セルロースが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2019/151486号
【特許文献2】特開平08-183805号公報
【特許文献3】特開2014-240479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の粒子は、親水性であるため、該粒子を油相に添加した場合に該粒子の凝集が避けられない問題がある。
【0008】
特許文献2に記載の液状物質の粉末化用基材は、多孔質な状態になっているため吸油性には優れているが、ドラムドライヤーを用いて乾燥しているため基材の形状が不定形であり、ざらつきが多く触感が悪い問題がある。
【0009】
特許文献3に記載の表面処理澱粉又は表面処理セルロースは、化粧料に配合して使用する際にしっとり感及び伸びが良好ではあるが、吸油性が悪いため、化粧料に配合して使用する際に皮脂を十分に吸収せず、化粧崩れの原因となる問題がある。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、吸油性に優れ、且つ、ざらつきの少ない触感及び高い疎水性を有する多糖類含有粒子、該粒子の製造方法、並びに、該粒子の用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の物性値を有する多糖類含有粒子を開発することに成功し、該粒子を使用することにより上記課題を達成できることを見出した。本発明は、さらに研究を重ね、完成させたものである。
【0012】
本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.多糖類を主成分として含有し、
水に対する接触角が40°以上150°以下であり、
アマニ油吸油量が80mL/100g以上300mL/100g以下であり、
摩擦係数の平均偏差(MMD)が0.010未満である、多糖類含有粒子。
項2.体積平均粒子径が、0.1μm以上100μm以下である、項1に記載の多糖類含有粒子。
項3.表面にクレーター状の凹部を少なくとも1個有する、項1又は2に記載の多糖類含有粒子。
項4.前記多糖類が、加工澱粉である、項1~3のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子。
項5.項1~4のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子の製造方法であって、
多糖類を含む溶液を噴霧乾燥して前駆体を得る噴霧乾燥工程と、
前記噴霧乾燥工程で得られた前駆体をイオン交換処理して多糖類含有粒子を得るイオン交換工程と、
を備える、製造方法。
項6.項1~4のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子を含む、外用剤。
項7.項1~4のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子を含む、コーティング材料。
項8.項1~4のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子を含む、樹脂組成物。
項9.項1~4のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子を含む、ブロッキング防止剤。
項10.項1~4のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子を含む、光拡散フィルム。
【発明の効果】
【0013】
本発明の多糖類含有粒子は、吸油性に優れ、且つ、ざらつきの少ない触感及び高い疎水性を有する。特に本発明の多糖類含有粒子は、優れた吸油性を有することから、化粧料等の外用剤に配合した場合、優れた吸油性を付与することができるため、皮脂による化粧崩れを抑制することができる。また、本発明の多糖類含有粒子は、ざらつきの少ない触感を有することから、化粧料等の外用剤に配合した場合、外用剤のざらつき感を低減させることができ、且つ、使用感を高めることができる。さらに、本発明の多糖類含有粒子は、高い疎水性を有することから、化粧料等の外用剤に配合した場合、分散性が良好となるため、粒子の凝集を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1で得られた粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で約2000倍の倍率で撮影した写真である。
【
図2】入射光-45°における反射光分布を測定し、その反射光強度を示すグラフである。具体的に、
図2(a)は、実施例9で得られた粒子を入射光-45°で反射光分布を測定し、その反射光強度を示したグラフであり、
図2(b)は、比較例5で使用した市販品のオクテニルコハク酸澱粉アルミニウム塩(「オクティエ」)を入射光-45°で反射光分布を測定し、その反射光強度を示したグラフである。
【
図3】実施例9で得られた粒子のSEM写真である。具体的に、
図3(a)は、実施例9で得られた粒子をSEMで約1000倍の倍率で撮影した写真であり
図3(b)は、実施例9で得られた粒子をSEMで約5000倍の倍率で撮影した写真である。
【
図4】比較例1で得られた粒子のSEM写真である。
【
図5】比較例3で得られた粉体のSEM写真である。
【
図6】比較例4で得られた粉体のSEM写真である。具体的に、
図6(a)は、比較例4で得られた粉体をSEMで約500倍の倍率で撮影した写真であり、
図6(b)は、比較例4で得られた粉体をSEMで約5000倍の倍率で撮影した写真である。
【
図7】実施例1の原料として使用した低粘性澱粉(「製品名「ソフトスターチSF-930」、三和澱粉工業株式会社製)をSEMで約1000倍の倍率で撮影した写真である。
【
図8】比較例5で使用した市販品のオクテニルコハク酸澱粉アルミニウム塩(製品名「オクティエ」、日澱化學株式会社製)をSEMで約1000倍の倍率で撮影した写真である。
【
図9】
図9は、比較例7で得られた粉体をSEMで約500倍の倍率で撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態及び具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本明細書において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0017】
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。また、本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値又は実施例から一義的に導き出せる値に置き換えてもよい。さらに、本明細書において、「~」で結ばれた数値は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。
【0018】
本明細書において、「A及び/又はB」とは、「A及びBの一方」又は「A及びBの両方」を意味し、具体的には、「A」、「B」、又は「A及びB」を意味する。
【0019】
本明細書において、室温とは、20℃~25℃の範囲内の温度を意味する。
【0020】
1.多糖類含有粒子
本発明の多糖類含有粒子は、以下の構成(i)乃至(iv)を備えている:
(i)多糖類を主成分として含有する。
(ii)水に対する接触角が40°以上150°以下である。
(iii)アマニ油吸油量が80mL/100g以上300mL/100g以下である。
(iv)摩擦係数の平均偏差(MMD)が0.010未満である。
【0021】
本発明の多糖類含有粒子は、上述した構成(i)乃至(iv)を備えていることにより、吸油性に優れ、且つ、ざらつきの少ない触感及び高い疎水性を有する。特に本発明の多糖類含有粒子は、優れた吸油性を有することから、化粧料等の外用剤に配合した場合、優れた吸油性を付与することができるため、皮脂による化粧崩れを抑制することができる点で、化粧料等の外用剤に特に好適に使用することができる。また、本発明の多糖類含有粒子は、ざらつきの少ない触感を有することから、化粧料等の外用剤に配合した場合、外用剤に滑らかな感触(さらさら感)を付与することができ、且つ、使用感を高めることができる点で、化粧料等の外用剤に特に好適に使用することができる。さらに、本発明の多糖類含有粒子は、高い疎水性を有することから、水系処方の化粧料中でも溶解することなく粒子形状を保ち、分散性が良好となるため、粒子の凝集を抑制することができる点で、化粧料等の外用剤に特に好適に使用することができる。
【0022】
以下、上述した構成(i)乃至(iv)を備える本発明の多糖類含有粒子を、単に「本発明」又は「本発明の粒子」と記載することもある。
【0023】
本発明は、多糖類を主成分として含有する多糖類含有粒子である。本発明において「主成分として含有する」とは、粒子に占める多糖類の含有割合(質量基準)が50質量%超であることを意味する。多糖類の含有割合(質量基準)は、好ましくは75質量%以上、より好ましくは90質量%以上、より一層好ましくは99質量%以上、特に好ましくは99.9質量%以上、最も好ましくは100質量%である。即ち、本発明の多糖類含有粒子は多糖類のみからなることが最も好ましい。
【0024】
<水に対する接触角>
本発明の粒子は、水に対する接触角が40°以上150°以下である。水に対する接触角が40°未満である場合、粒子の親水性が高くなるため、該粒子を油相に添加した場合に該粒子の凝集が起こりうる。水に対する接触角が150°より大きい場合、疎水性が強すぎるために、水相に添加した際に該粒子の凝集が起こりうる。本発明において、水に対する接触角は、粒子がより一層高い疎水性を有する点から、50°以上148°以下が好ましく、60°以上146°以下がより好ましく、70°以上144°以下がより一層好ましく、80°以上142°以下が特に好ましく、90°以上140°以下が最も好ましい。本発明において、水に対する接触角は、接触角測定装置で測定した値を意味し、具体的には、粒子の表面に水滴を1滴垂らしてから180秒後の水に対する接触角を意味する。水に対する接触角のより詳細な測定方法については、後述する実施例において説明する。
【0025】
<アマニ油吸油量>
本発明の粒子は、アマニ油吸油量が80mL/100g以上300mL/100g以下である。アマニ油吸油量が80mL/100g未満である場合、粒子を化粧料等の外用剤に配合して使用する際に皮脂を十分に吸収せず、化粧崩れの原因となる。アマニ油吸油量が300mL/100gより大きい場合、粒子を化粧料等の外用剤に配合して使用する際に粘度が増加するため、ハンドリング性が著しく低下する。本発明において、アマニ油吸油量は、粒子の吸油性がより一層向上する点から、85mL/100g以上275mL/100g以下が好ましく、90mL/100g以上250mL/100g以下がより好ましく、95mL/100g以上225mL/100g以下が特に好ましく、100mL/100g以上200mL/100g以下が最も好ましい。本発明において、アマニ油吸油量は、JIS K 5101-13-2-2004に準拠して測定された値を意味する。アマニ油吸油量の具体的な測定方法については、後述する実施例において説明する。
【0026】
<摩擦係数の平均偏差(MMD)>
本発明の粒子は、摩擦係数の平均偏差(MMD)が0.010未満である。摩擦係数の平均偏差(MMD)とは、「平均摩擦係数(MIU)の変動」を意味し、人の指で物体の表面を触るときに感じる、なめらかさやざらつき感を表す指標である。通常、MMDの数値が小さいほど、なめらかであり、数値が大きいほど、ざらつきを感じる。平均摩擦係数(MIU)とは、人の指で物体の表面を触るときに感じる、すべりやすさを表す指標である。通常、MIUの数値が小さいほどすべりやすく、数値が大きいほどすべりにくい。MMDが0.010以上である場合、粒子がざらつきの多い触感を有する。それ故、該粒子を化粧料等の外用剤に配合して使用した際に、ざらつきによる触感不良が生じ、使用感が大きく低下する。本発明において、MIU及びMMDは、摩擦感テスターで測定した値を意味する。MIU及びMMDの具体的な測定方法については、後述する実施例において説明する。本発明において、MMDは、好ましくは0.009以下、より好ましくは0.008以下である。本発明において、MIUは、好ましくは0.60以下、より好ましくは0.50以下である。
【0027】
<体積平均粒子径>
本発明において、触感特性の点から、体積平均粒子径は、0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。本発明において、体積平均粒子径は、精密粒度分布測定装置で得られた10万個の粒子の体積基準の粒度分布における算術平均径を意味する。体積平均粒子径の具体的な測定方法については、後述する実施例において説明する。本発明において、体積平均粒子径は、より好ましくは1.0μm以上75μm以下、より一層好ましくは2.0μm以上50μm以下、更に好ましくは3.0μm以上30μm以下、特に好ましくは4.0μm以上25μm以下、最も好ましくは5.0μm以上20μm以下である。
【0028】
<クレーター上の凹部>
本発明の粒子は、吸油性をより向上させる点から、表面にクレーター状の凹部を少なくとも1個有することが好ましい。
【0029】
本明細書において、「クレーター状の凹部」とは、粒子表面の平滑部分において一部が窪んだ部分を意味するだけでなく、凹部の周辺部に盛り上がりがある窪み(凹部の周囲を取り囲む盛り上がった部分を有する窪み)も意味する。本発明の粒子の表面のクレーター状の凹部を上から見た場合、凹部の形状は円形であってもよく、楕円形であってもよい。
【0030】
本明細書において、「クレーター状の凹部」とは、皺状又は襞状の外観を有する溝状の節目のような皺状又は襞状の凹凸構造を意味しない。また、本明細書において、「クレーター状の凹部」とは、花弁状粒子に見られる不定形の凹凸構造を意味しない。
【0031】
クレーター状の凹部は、好ましくは0.1μm~70μmの長径を有する。クレーター状の凹部は、好ましくは0.1μm~50μmの深さを有する。
【0032】
クレーター状の凹部における長径は、粒子の長径に対して、良好な吸油性の点から、好ましくは5%以上であり、より好ましくは10%以上であり、より一層好ましくは15%以上であり、また、良好な吸油性の点から、好ましくは95%以下であり、より好ましくは90%以下であり、より一層好ましくは85%以下である。クレーター状の凹部における長径及び粒子の長径は、例えば、粒子をSEMで約2000倍の倍率で観察して計測することができる。
【0033】
クレーター状の凹部の最大深さは、粒子の長径に対して、良好な吸油性の点から、好ましくは2%以上であり、より好ましくは3%以上であり、より一層好ましくは5%以上であり、また、良好な吸油性の点から、好ましくは90%以下であり、より好ましくは80%以下であり、より一層好ましくは70%以下である。クレーター状の凹部の最大深さは、例えば、粒子をSEMで約2000倍の倍率で観察して計測することができる。
【0034】
本発明の粒子において、より一層優れた吸油性の点から、クレーター状の凹部の数は、該粒子1個当たりに少なくとも1個以上であることが好ましく、2~20個がより好ましく、3~15個がより一層好ましく、4~10個が特に好ましい。
【0035】
<加工澱粉>
本発明において、より疎水性が高くなる点から、多糖類が、加工澱粉であることが好ましい。加工澱粉とは、トウモロコシ、馬鈴薯、甘藷、小麦、米、もち米、タピオカ、サゴヤシ等の澱粉を原料(以下、「澱粉原料」と表記)とし、これら澱粉原料に物理的処理、酵素的処理、又は化学的処理を加えることによって、澱粉原料の特性を改良したものを意味する。上記化学的処理としては、架橋処理;酸処理、アルカリ処理、酸化処理;アセチル化、リン酸化等のエステル化処理;ヒドロキシプロピル化等のエーテル化処理等が挙げられる。このような処理は、1種の処理が単独で施されていてもよく、また2種以上の処理が組み合わされて施されていてもよい。上記物理的処理としては、例えば、加熱処理、α化処理、湿熱処理、ボールミル処理、微粉砕処理等が挙げられる。このような処理は、1種の処理が単独で施されていてもよく、また2種以上の処理が組み合わされて施されていてもよい。
【0036】
上記澱粉原料としては、トウモロコシが好ましい。トウモロコシの種類としては、例えば、デント種(馬歯種)、フリント種(硬粒種)、ソフト種(軟粒種)、スイート種(甘味種)、ポップ種(爆裂種)、ワキシー種(もち種)等が挙げられる。これらの中でも、ソフト種(軟粒種)のトウモロコシが好ましい。
【0037】
本発明で用いることができる加工澱粉としては、アセチル化アジピン酸架橋澱粉及びその金属塩、アセチル化酸化澱粉及びその金属塩、アセチル化リン酸架橋澱粉及びその金属塩、酸化澱粉及びその金属塩、ヒドロキシプロピル澱粉及びその金属塩、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉及びその金属塩、カルボキシメチル澱粉及びその金属塩、酢酸澱粉及びその金属塩、アルケニルコハク酸澱粉及びその金属塩、リン酸澱粉及びその金属塩、リン酸架橋澱粉及びその金属塩、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉及びその金属塩が挙げられる。これらの加工澱粉は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記金属塩としては、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、カリウム塩、アルミニウム塩等の2価又は3価が挙げられる。上記金属塩としては、マグネシウム塩、カルシウム塩、カリウム塩及びアルミニウム塩が好ましく、カルシウム塩及びアルミニウム塩がより好ましく、アルミニウム塩がより一層好ましい。
【0038】
本発明において、加工澱粉は、より一層疎水性が高くなる点から、アルケニルコハク酸澱粉並びにアルケニルコハク酸澱粉のナトリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、カリウム塩及びアルミニウム塩が好ましい。本発明において、加工澱粉は、アルケニルコハク酸澱粉並びにアルケニルコハク酸澱粉のマグネシウム塩、カルシウム塩、カリウム塩及びアルミニウム塩がより好ましい。本発明において、加工澱粉は、アルケニルコハク酸澱粉並びにアルケニルコハク酸澱粉のカルシウム塩及びアルミニウム塩がより一層好ましい。本発明において、加工澱粉は、アルケニルコハク酸澱粉並びにアルケニルコハク酸澱粉のアルミニウム塩が特に好ましい。
【0039】
アルケニルコハク酸澱粉は、上記澱粉原料にアルケニルコハク酸無水物がエステル結合したものである。アルケニルコハク酸無水物としては、例えば、オクテニルコハク酸無水物(OSA)、ノネニルコハク酸無水物、デセニルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、テトラデセニルコハク酸無水物、ペンタデセニルコハク酸無水物、ヘキサデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物、エイコセニルコハク酸無水物等が挙げられる。これらのアルケニルコハク酸無水物は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。アルケニルコハク酸無水物としては、オクテニルコハク酸無水物、デセニルコハク酸無水物及びドデセニルコハク酸無水物からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましく、オクテニルコハク酸無水物がより好ましい。
【0040】
本発明において、加工澱粉は、
オクテニルコハク酸澱粉、オクテニルコハク酸澱粉のナトリウム塩、オクテニルコハク酸澱粉のマグネシウム塩、オクテニルコハク酸澱粉のカルシウム塩、オクテニルコハク酸澱粉のカリウム塩、オクテニルコハク酸澱粉のアルミニウム塩、
デセニルコハク酸澱粉、デセニルコハク酸澱粉のナトリウム塩、デセニルコハク酸澱粉のマグネシウム塩、デセニルコハク酸澱粉のカルシウム塩、デセニルコハク酸澱粉のカリウム塩、デセニルコハク酸澱粉のアルミニウム塩、
ドデセニルコハク酸澱粉、ドデセニルコハク酸澱粉のナトリウム塩、ドデセニルコハク酸澱粉のマグネシウム塩、ドデセニルコハク酸澱粉のカルシウム塩、ドデセニルコハク酸澱粉のカリウム塩及びドデセニルコハク酸澱粉のアルミニウム塩からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
【0041】
本発明において、加工澱粉は、
オクテニルコハク酸澱粉のマグネシウム塩、オクテニルコハク酸澱粉のカルシウム塩、オクテニルコハク酸澱粉のカリウム塩、オクテニルコハク酸澱粉のアルミニウム塩、
デセニルコハク酸澱粉のマグネシウム塩、デセニルコハク酸澱粉のカルシウム塩、デセニルコハク酸澱粉のカリウム塩、デセニルコハク酸澱粉のアルミニウム塩、
ドデセニルコハク酸澱粉のマグネシウム塩、ドデセニルコハク酸澱粉のカルシウム塩、ドデセニルコハク酸澱粉のカリウム塩及びドデセニルコハク酸澱粉のアルミニウム塩からなる群より選択される少なくとも一種がより好ましい。
【0042】
本発明において、加工澱粉は、
オクテニルコハク酸澱粉のカルシウム塩、オクテニルコハク酸澱粉のアルミニウム塩、
デセニルコハク酸澱粉のカルシウム塩、デセニルコハク酸澱粉のアルミニウム塩、
ドデセニルコハク酸澱粉のカルシウム塩及びドデセニルコハク酸澱粉のアルミニウム塩からなる群より選択される少なくとも一種がより一層好ましい。
【0043】
本発明において、加工澱粉は、
オクテニルコハク酸澱粉のアルミニウム塩、デセニルコハク酸澱粉のアルミニウム塩及びドデセニルコハク酸澱粉のアルミニウム塩からなる群より選択される少なくとも一種が特に好ましい。
【0044】
本発明の粒子は、適度な滑り性、皮膚への付着性の点から、アスペクト比が0.60以上1.00以下であることが好ましく、0.70以上0.97以下であることがより好ましく、0.80以上0.95以下であることがより一層好ましい。
【0045】
2.多糖類含有粒子の製造方法
本発明の多糖類含有粒子は、多糖類を含む溶液を噴霧乾燥して前駆体を得る噴霧乾燥工程と、該噴霧乾燥工程で得られた前駆体をイオン交換処理して多糖類含有粒子を得るイオン交換処理工程と、を備えることを特徴とする。
【0046】
本発明の製造方法によって製造された多糖類含有粒子の詳細は、特に言及がない限り、上記「1.多糖類含有粒子」に記載したとおりである。
【0047】
以下、本発明の多糖類含有粒子の製造方法について、詳述する。
【0048】
<噴霧乾燥工程>
噴霧乾燥工程は、多糖類を含む溶液を噴霧乾燥して前駆体を得る工程である。
【0049】
噴霧乾燥工程において使用する多糖類は加工澱粉であることが好ましい。加工澱粉の詳細は、特に言及がない限り、上記「1.多糖類含有粒子」における<加工澱粉>に記載したとおりである。
【0050】
噴霧乾燥工程において使用する溶液は、容器内で多糖類を溶媒中で混合して調製することが好ましい。容器の種類は特に限定されず、例えば、公知の容器を広く採用することができる。溶媒としては、例えば、水、有機溶媒、又は水と有機溶媒との混合溶媒が挙げられ、これらの中でも、水が好ましい。水としては、例えば、天然水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等が挙げられ、これらの中でも、イオン交換水が好ましい。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の脂肪族1価アルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;トルエン、キシレン等の芳香族化合物等が挙げられる。
【0051】
多糖類を含む溶液100質量部に対して、多糖類の含有量は、好ましくは0.5~20質量部、より好ましくは0.75~17.5質量部、より一層好ましくは1~15質量部である。
【0052】
噴霧乾燥工程では、多糖類を含む溶液から前駆体を得るために噴霧乾燥を行う。前駆体の形状は、好ましくは粉体である。上記多糖類を含む溶液は、多糖類(好ましくは澱粉)とアルケニルコハク酸無水物との反応物を含む溶液であることが好ましい。上記多糖類を含む溶液は、多糖類(好ましくは澱粉)とアルケニルコハク酸無水物とのアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩を含む溶液であることがより好ましい。上記多糖類を含む溶液は、多糖類(好ましくは澱粉)とアルケニルコハク酸無水物とのアルカリ金属塩を含む溶液であることがより一層好ましい。
【0053】
噴霧乾燥工程では、通常、スプレードライヤー等の噴霧乾燥機を用いて、多糖類を含む溶液を噴霧して乾燥させる。噴霧乾燥機における、多糖類を含む溶液の供給速度、入口温度、出口温度、滞留時間、アトマイザ回転数及び噴霧圧力等を適宜に調節することにより、得られる前駆体の大きさ、形状を調整することが可能である。
【0054】
噴霧乾燥工程において、入口温度(多糖類を含む溶液が噴霧乾燥機に導入される導入口の温度)の下限は、好ましくは80℃、より好ましくは90℃、より一層好ましくは100℃、特に好ましくは110℃である。噴霧乾燥工程において、入口温度の上限は、好ましくは250℃、より好ましくは240℃、より一層好ましくは230℃、特に好ましくは220℃である。
【0055】
噴霧乾燥工程において、出口温度(多糖類を含む溶液が噴霧乾燥されて前駆体として排出される排出口の温度)の下限は、好ましくは40℃、より好ましくは45℃、より一層好ましくは50℃、特に好ましくは55℃である。噴霧乾燥工程において、出口温度の上限は、好ましくは140℃、より好ましくは130℃、より一層好ましくは120℃、特に好ましくは110℃である。
【0056】
噴霧乾燥工程において、滞留時間(多糖類を含む溶液が噴霧乾燥に供される時間)は、好ましくは0.5秒~3秒である。
【0057】
<イオン交換工程>
イオン交換工程は、噴霧乾燥工程で得られた前駆体をイオン交換処理して多糖類含有粒子を得る工程である。イオン交換工程は、通常、噴霧乾燥工程で得られた前駆体中の金属陽イオンと、金属塩中の金属陽イオンとをイオン交換して多糖類含有粒子を得る工程である。この場合、前駆体中の金属陽イオンと、金属塩中の金属陽イオンとは、同一の金属陽イオンでないことが好ましい。
【0058】
上記前駆体中の金属陽イオンとしては、アルカリ金属陽イオン及び/又はアルカリ土類金属陽イオンが好ましい。該アルカリ金属陽イオンとしては、ナトリウムイオン及び/又はカリウムイオンが好ましい。該アルカリ土類金属陽イオンとしては、マグネシウムイオン及び/又はカルシウムイオンが好ましい。上記前駆体中の金属陽イオンとしては、ナトリウムイオンが特に好ましい。
【0059】
上記金属塩中の金属陽イオンとしては、アルカリ金属陽イオン、アルカリ土類金属陽イオン及びアルミニウムイオンからなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。該アルカリ金属陽イオンとしては、ナトリウムイオン及び/又はカリウムイオンが好ましい。該アルカリ土類金属陽イオンとしては、マグネシウムイオン及び/又はカルシウムイオンが好ましい。上記金属塩中の金属陽イオンとしては、アルミニウムイオンが特に好ましい。
【0060】
上記金属塩としては、マグネシウム塩、カルシウム塩、カリウム塩及びアルミニウム塩からなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、アルミニウム塩が特に好ましい。マグネシウム塩は、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、乳酸マグネシウム及び硫酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。カルシウム塩は、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、乳酸カルシウム及び硫酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。カリウム塩は、塩化カリウム、硝酸カリウム、乳酸カリウム及び硫酸カリウムからなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。アルミニウム塩は、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、乳酸アルミニウム及び硫酸アルミニウムからなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
【0061】
イオン交換工程において、噴霧乾燥工程で得られた前駆体中のナトリウムイオンと、アルミニウム塩中のアルミニウムイオンとをイオン交換処理して多糖類含有粒子を得ることが特に好ましい。
【0062】
イオン交換工程において、通常、前駆体を溶媒に分散させた溶液と、金属塩を溶媒に分散又は溶解させた溶液とを混合する。前駆体を分散させる溶媒と、金属塩を分散させる溶媒とは、同一であることが好ましい。
【0063】
イオン交換工程において使用する溶媒としては、例えば、水、有機溶媒、又は水と有機溶媒との混合溶媒が挙げられる。水としては、例えば、天然水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等が挙げられ、これらの中でも、イオン交換水が好ましい。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の脂肪族1価アルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;トルエン、キシレン等の芳香族化合物等が挙げられ、これらの中でも、エタノールが好ましい。
【0064】
イオン交換工程において、前駆体の使用量は、溶媒100質量部に対して、通常1~50質量部、好ましくは3~40質量部、より好ましくは5~30質量部、特に好ましくは10~20質量部である。
【0065】
イオン交換工程において、金属塩の使用量は、溶媒100質量部に対して、通常0.5~50質量部、好ましくは0.6~40質量部、より好ましくは0.8~30質量部、特に好ましくは1~20質量部である。
【0066】
イオン交換工程において、金属塩の使用量は、前駆体100質量部に対して、通常1~80質量部、好ましくは3~60質量部、より好ましくは5~45質量部、特に好ましくは10~30質量部である。
【0067】
本発明の製造方法は、噴霧乾燥工程の前工程として、多糖類を含む溶液を得る工程を備えることが好ましい。該多糖類を含む溶液は、多糖類(好ましくは澱粉)とアルケニルコハク酸無水物とを、アルカリ触媒の存在下、溶液中において反応させることにより、得ることができる。該多糖類を含む溶液は、多糖類(好ましくは澱粉)とアルケニルコハク酸無水物との反応物を含む溶液であることが好ましい。アルケニルコハク酸無水物の詳細は、上記「1.多糖類含有粒子」に記載したとおりである。アルカリ触媒としては、以下の<本発明の多糖類含有粒子の製造方法の好ましい実施形態>の<アルカリ触媒>において記載したアルカリ触媒を使用することが好ましい。
【0068】
<本発明の多糖類含有粒子の製造方法の好ましい実施形態>
以下、本発明の多糖類含有粒子の製造方法において、原料として多糖類の一種である澱粉を使用した場合の好ましい実施形態を説明する。
【0069】
本発明の多糖類含有粒子製造方法は、以下の工程(1)、(2)及び(3)をこの順で備えることが好ましい:
(1)澱粉とアルケニルコハク酸無水物とを、アルカリ触媒の存在下、溶液中において反応させて、澱粉とアルケニルコハク酸無水物との反応物を含む溶液を得る工程;
(2)前記工程(1)で得られた澱粉とアルケニルコハク酸無水物との反応物を含む溶液を噴霧乾燥して前駆体を得る工程;及び
(3)前記工程(2)で得られた前駆体と金属塩と反応させてアルケニルコハク酸澱粉の金属塩を含有する粒子を得る工程。
【0070】
上記工程(1)乃至(3)を経て製造された多糖類含有粒子は、多糖類として加工澱粉であるアルケニルコハク酸澱粉の金属塩を主成分として含有する。アルケニルコハク酸澱粉の金属塩は、粒子状である。
【0071】
工程(1)において、アルケニルコハク酸無水物の使用量は、澱粉100質量部に対して、通常1~120質量部、好ましくは5~80質量部、より好ましくは7.5~60質量部、特に好ましくは10~45質量部である。
【0072】
澱粉は、トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、小澱粉麦、米澱粉、もち米澱粉、タピオカ澱粉及びサゴヤシ澱粉からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0073】
アルケニルコハク酸無水物は、オクテニルコハク酸無水物(OSA)、ノネニルコハク酸無水物、デセニルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、テトラデセニルコハク酸無水物、ペンタデセニルコハク酸無水物、ヘキサデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物及びエイコセニルコハク酸無水物からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。アルケニルコハク酸無水物は、オクテニルコハク酸無水物、デセニルコハク酸無水物及びドデセニルコハク酸無水物からなる群より選択される少なくとも一種であることがより好ましく、オクテニルコハク酸無水物がより一層好ましい。
【0074】
<アルカリ触媒>
アルカリ触媒は、アルカリ金属の水酸化物又はアルカリ土類金属の水酸化物;アルカリ金属の炭酸塩又はアルカリ土類金属の炭酸塩;アルカリ金属のアルコキシド又はアルカリ土類金属のアルコキシド;アンモニア;炭素数1以上6以下のアルキル基を有するモノアルキルアミン、炭素数1以上6以下のアルキル基を有するジアルキルアミン又は炭素数1以上6以下のアルキル基を有するトリアルキルアミン;アルコール性水酸基を有するジアルコールアミン又はアルコール性水酸基を有するトリアルコールアミン等が挙げられる。これらのアルカリ触媒は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。アルカリ触媒は、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属のアルコキシド及びアルカリ土類金属のアルコキシドからなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。アルカリ触媒は、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩及びアルカリ金属のアルコキシドからなる群より選択される少なくとも一種がより好ましい。
【0075】
アルカリ金属の水酸化物又はアルカリ土類金属の水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム及び水酸化カルシウムからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。
【0076】
アルカリ金属の炭酸塩又はアルカリ土類金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム及び炭酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、炭酸ナトリウムがより好ましい。
【0077】
アルカリ金属のアルコキシド又はアルカリ土類金属のアルコキシドとしては、例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、マグネシウムメトキシド、カルシウムメトキシド等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、マグネシウムメトキシド及びカルシウムメトキシドからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、ナトリウムメトキシド及び/又はナトリウムエトキシドがより好ましい。
【0078】
炭素数1以上6以下のアルキル基を有するモノアルキルアミン、炭素数1以上6以下のアルキル基を有するジアルキルアミン又は炭素数1以上6以下のアルキル基を有するトリアルキルアミンとしては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、第2級ブチルアミン、第3級ブチルアミン、アミルアミン、第2級アミルアミン、第3級アミルアミン、ヘキシルアミン等が挙げられる。
【0079】
アルコール性水酸基を有するジアルコールアミン又はアルコール性水酸基を有するトリアルコールアミンとしては、例えば、ジエタノールアミントリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0080】
工程(1)において使用する溶液は、容器内で澱粉とアルケニルコハク酸無水物とを溶媒中で混合して調製することが好ましい。容器の種類は特に限定されず、例えば、公知の容器を広く採用することができる。溶媒としては、例えば、水、有機溶媒、又は水と有機溶媒との混合溶媒が挙げられ、これらの中でも、水が好ましい。水としては、例えば、天然水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等が挙げられ、これらの中でも、イオン交換水が好ましい。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の脂肪族1価アルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;トルエン、キシレン等の芳香族化合物等が挙げられる。
【0081】
工程(1)において、反応は、pHを4.0以上11.0以下(より好ましくは、pH4.0以上6.5以下、又はpH6.5以上8.0以下)の範囲内に維持しながら行うこと好ましい。
【0082】
工程(1)において、反応は、10℃以上50℃以下の範囲内の温度に維持しながら行うこと好ましい。
【0083】
工程(1)において、反応時間は、通常1時間以上10時間以内である。
【0084】
工程(1)において、澱粉とアルケニルコハク酸無水物との反応物は、アルケニルコハク酸澱粉のアルカリ金属塩及び/又はアルケニルコハク酸澱粉のアルカリ土類金属塩が好ましく、アルケニルコハク酸澱粉のアルカリ金属塩がより好ましい。
【0085】
アルケニルコハク酸澱粉のアルカリ金属塩は、アルケニルコハク酸澱粉のナトリウム塩及びアルケニルコハク酸澱粉のカリウム塩が好ましく、アルケニルコハク酸澱粉のナトリウム塩がより好ましい。
【0086】
アルケニルコハク酸澱粉のアルカリ土類金属塩は、アルケニルコハク酸澱粉のマグネシウム塩及びアルケニルコハク酸澱粉のカルシウム塩が好ましく、アルケニルコハク酸澱粉のカルシウム塩がより好ましい。
【0087】
工程(1)において、アルケニルコハク酸澱粉のアルカリ金属塩又はアルケニルコハク酸澱粉のアルカリ土類金属塩が生成される場合の反応機構は以下のとおりである。まず、アルカリ触媒によってアルケニルコハク酸無水物が開環し、開環したアルケニルコハク酸無水物を構成する2つのカルボキシ基の一方が澱粉にエステル結合し、アルケニルコハク酸澱粉エステルが得られる。次いで、得られたアルケニルコハク酸澱粉エステルを構成するカルボキシ基(上記開環したアルケニルコハク酸無水物を構成する2つのカルボキシ基のうち、澱粉にエステル結合していない他方のカルボキシ基)と、アルカリ金属又はアルカリ土類金属とが反応し、アルケニルコハク酸澱粉のアルカリ金属塩(アルケニルコハク酸澱粉の-COOアルカリ金属塩)又はアルケニルコハク酸澱粉のアルカリ土類金属塩(アルケニルコハク酸澱粉の-COOアルカリ土類金属塩)が生成される。
【0088】
工程(2)では、工程(1)で得られた澱粉とアルケニルコハク酸無水物との反応物を含む溶液から、前駆体を得るために噴霧乾燥を行う。該前駆体は、澱粉とアルケニルコハク酸無水物との反応物の粉体である。
【0089】
噴霧乾燥を行う条件の詳細は、特に言及がない限り、上記<噴霧乾燥工程>に記載したとおりである。
【0090】
工程(3)では、アルケニルコハク酸澱粉の金属塩を含有する粒子を得るために、工程(2)で得られた前駆体と金属塩とを反応させる。工程(3)における反応は、好ましくはイオン交換反応である。イオン交換反応の詳細は、特に言及がない限り、上記<イオン交換工程>に記載したとおりである。
【0091】
工程(1)における澱粉とアルケニルコハク酸無水物との反応物が、アルケニルコハク酸澱粉のアルカリ金属塩の場合、工程(3)において、工程(2)で得られた前駆体と反応させる金属塩を構成する金属には、工程(1)で得られるアルカリ金属塩を構成するアルカリ金属と同一のアルカリ金属が含まれないことが好ましい。
【0092】
工程(1)における澱粉とアルケニルコハク酸無水物との反応物が、アルケニルコハク酸澱粉のアルカリ土類金属塩の場合、工程(3)において、工程(2)で得られた前駆体と反応させる金属塩を構成する金属には、工程(1)で得られるアルカリ土類金属塩を構成するアルカリ土類金属と同一のアルカリ土類金属が含まれないことが好ましい。
【0093】
上記工程(3)において、金属塩の使用量は、粉体100質量部に対して、通常1~80質量部、好ましくは3~60質量部、より好ましくは5~45質量部、特に好ましくは10~30質量部である。
【0094】
工程(3)において、金属塩としては、マグネシウム塩、カルシウム塩、カリウム塩及びアルミニウム塩からなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、アルミニウム塩がより好ましい。マグネシウム塩は、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、乳酸マグネシウム及び硫酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。カルシウム塩は、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、乳酸カルシウム及び硫酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。カリウム塩は、塩化カリウム、硝酸カリウム、乳酸カリウム及び硫酸カリウムからなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。アルミニウム塩は、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、乳酸アルミニウム及び硫酸アルミニウムからなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
【0095】
3.多糖類含有粒子の用途
本発明の多糖類含有粒子は、外用医薬品、化粧料等の外用剤の添加剤;塗料用艶消し剤、粉体塗料等のコーティング材料の添加剤;自動車材料、建築材料等の樹脂組成物の添加剤;ブロッキング防止剤の添加剤;又は光拡散フィルムの添加剤等として好適に使用することができる。
【0096】
本発明の多糖類含有粒子は、外用医薬品、化粧料等の外用剤の添加剤としてより好適に使用することができる。本発明の多糖類含有粒子は、化粧料の添加剤として特に好適に使用することができる。
【0097】
(外用剤)
本発明の粒子を含む外用剤の態様について、以下に例示する。本態様において、外用剤は、本発明の粒子を含む。本発明の外用剤は、肌に塗布されることで、毛穴、シミ、シワ等を目立たなくすることができる。
【0098】
本態様において、外用剤における本発明の粒子の含有割合は、外用剤の種類に応じて適宜設定できるが、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、より一層好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下、より好ましくは50質量%以下、より一層好ましくは40質量%以下である。
【0099】
本態様において、外用剤は、例えば、外用医薬品、化粧料として使用できる。外用医薬品としては、例えば、クリーム、軟膏、乳剤等が挙げられる。化粧料の剤型は、特に限定されるものではなく、水系、可溶化系、水中油系、油中水系、油系のいずれの剤型においても、適用することができる。化粧料としては、例えば、石鹸、ボディシャンプー、洗顔クリーム、スクラブ洗顔料、歯磨き等の洗浄用化粧品;おしろい類、フェイスパウダー(ルースパウダー、プレストパウダー等)、ファンデーション(パウダーファンデーション、リキッドファンデーション、乳化型ファンデーション等)、口紅、リップクリーム、頬紅、眉目化粧品(アイシャドー、アイライナー、マスカラ等)、マニキュア等のメイクアップ化粧料;プレシェーブローション、ボディローション等のローション剤;ボディパウダー、ベビーパウダー等のボディー用外用剤;化粧水、クリーム、乳液(化粧乳液)等のスキンケア剤;制汗剤(液状制汗剤、固形状制汗剤、クリーム状制汗剤等)、パック類、洗髪用化粧品、染毛料、整髪料、芳香性化粧品、浴用剤、日焼け止め製品、サンタン製品、ひげ剃り用クリーム等が挙げられる。
【0100】
本態様において、上記化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で、一般に用いられている主剤又は添加物を目的に応じて配合できる。そのような主剤又は添加物としては、例えば、水、低級アルコール(炭素数5以下のアルコール)、油脂及びロウ類、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、ステロール、脂肪酸エステル、金属石鹸、保湿剤、界面活性剤、高分子化合物、色材原料、香料、粘土鉱物類、防腐・殺菌剤、抗炎症剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、有機無機複合粒子、pH調整剤(トリエタノールアミン等)、特殊配合添加物、医薬品活性成分等が挙げられる。
【0101】
上記油脂及びロウ類としては、例えば、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、カカオ脂、牛脂、ゴマ脂、小麦胚芽油、サフラワー油、シアバター、タートル油、椿油、パーシック油、ひまし油、ブドウ油、マカダミアナッツ油、ミンク油、卵黄油、モクロウ、ヤシ油、ローズヒップ油、硬化油、シリコーン油、オレンジラフィー油、カルナバロウ、キャンデリラロウ、鯨ロウ、ホホバ油、モンタンロウ、ミツロウ、ラノリン等が挙げられる。
【0102】
上記炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、ワセリン、パラフィン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン等が挙げられる。
【0103】
上記高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ウンデシレン酸、オキシステアリン酸、リノール酸、ラノリン脂肪酸、合成脂肪酸等の炭素数11以上の脂肪酸が挙げられる。
【0104】
上記高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール、水素添加ラノリンアルコール、へキシルデカノール、オクチルデカノール、イソステアリルアルコール、ホホバアルコール、デシルテトラデカノール等の炭素数6以上のアルコールが挙げられる。
【0105】
上記ステロールとしては、例えば、コレステロール、ジヒドロコレステロール、フィトコレステロール等が挙げられる。
【0106】
上記脂肪酸エステルとしては、例えば、リノール酸エチル等のリノール酸エステル;ラノリン脂肪酸イソプロピル等のラノリン脂肪酸エステル;ラウリン酸ヘキシル等のラウリン酸エステル;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル等のミリスチン酸エステル;オレイン酸デシル、オレイン酸オクチルドデシル等のオレイン酸エステル;ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル等のジメチルオクタン酸エステル;イソオクタン酸セチル(2-エチルヘキサン酸セチル)等のイソオクタン酸エステル;パルミチン酸デシル等のパルミチン酸エステル;トリミリスチン酸グリセリン、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、ジオレイン酸プロピレングリコール、トリイソステアリン酸グリセリン、トリイソオクタン酸グリセリン、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、リンゴ酸ジイソステアリル、イソステアリン酸コレステリル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル等の環状アルコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0107】
上記金属石鹸としては、例えば、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ウンデシレン酸亜鉛等が挙げられる。
【0108】
上記保湿剤としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、dl-ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ソルビトール、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリグリセリン、キシリット、マルチトール等が挙げられる。
【0109】
上記界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸石鹸、高級アルコール硫酸エステル、N-アシルグルタミン酸塩、リン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤;アミン塩、第4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;ベタイン型、アミノ酸型、イミダゾリン型、レシチン等の両性界面活性剤;脂肪酸モノグリセリド、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、酸化エチレン縮合物等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0110】
上記高分子化合物としては、例えば、アラビアゴム、トラガントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、アイリスモス、クインスシード、ゼラチン、セラック、ロジン、カゼイン等の天然高分子化合物;カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、エステルガム、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース等の半合成高分子化合物;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミド樹脂、シリコーン油、ナイロン粒子、ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子(例えば、ポリメタクリル酸メチル粒子等)、ポリスチレン粒子、シリコーン粒子、ウレタン粒子、ポリエチレン粒子、シリカ粒子等の合成高分子化合物が挙げられる。
【0111】
上記色材原料としては、例えば、酸化鉄(赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄等)、群青、コンジョウ、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、マンガンバイオレット、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、雲母、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー等の無機顔料、アゾ系、ニトロ系、ニトロソ系、キサンテン系、キノリン系、アントラキノリン系、インジゴ系、トリフェニルメタン系、フタロシアニン系、ピレン系等のタール色素が挙げられる。
【0112】
なお、上記した高分子化合物の粉体原料や色材原料などの粉体原料は、予め表面処理を行ったものも使用することができる。表面処理の方法としては、公知の表面処理技術が利用でき、例えば、炭化水素油、エステル油、ラノリン等による油剤処理、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等によるシリコーン処理、パーフルオロアルキル基含有エステル、パーフルオロアルキルシラン、パーフルオロポリエーテルおよびパーフルオロアルキル基を有する重合体等によるフッ素化合物処理、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等によるシランカップリング剤処理、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート等によるチタンカップリング剤処理、金属石鹸処理、アシルグルタミン酸等によるアミノ酸処理、水添卵黄レシチン等によるレシチン処理、コラーゲン処理、ポリエチレン処理、保湿性処理、無機化合物処理、メカノケミカル処理等の処理方法が挙げられる。
【0113】
上記粘土鉱物類としては、例えば、体質顔料および吸着剤などの数種の機能を兼ね備えた成分、例えば、タルク、マイカ、セリサイト、チタンセリサイト(酸化チタンで被覆されたセリサイト)、白雲母、バンダービルト社製のVEEGUM(登録商標)等が挙げられる。
【0114】
上記香料としては、例えば、アニスアルデヒド、ベンジルアセテート、ゲラニオール等が挙げられる。
【0115】
上記防腐・殺菌剤としては、例えば、メチルパラペン、エチルパラペン、プロピルパラペン、ベンザルコニウム、ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0116】
上記酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、トコフェロール等が挙げられる。
【0117】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化セリウム、微粒子酸化鉄、微粒子酸化ジルコニウム等の無機系吸収剤、安息香酸、パラアミノ安息香酸、アントラニリック酸、サルチル酸、桂皮酸、ベンゾフェノン、ジベンゾイルメタン等の有機系吸収剤が挙げられる。
【0118】
上記特殊配合添加物としては、例えば、エストラジオール、エストロン、エチニルエストラジオール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン等のホルモン類、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE等のビタミン類、クエン酸、酒石酸、乳酸、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム・カリウム、アラントインクロルヒドロキシアルムニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛、硫酸亜鉛等の皮膚収斂材剤、カンタリスチンキ、トウガラシチンキ、ショウキョウチンキ、センブリエキス、ニンニクエキス、ヒノキチオール、塩化カルプロニウム、ペンタデカン酸グリセリド、ビタミンE、エストロゲン、感光素等の発毛促進剤、リン酸-L-アスコルビン酸マグネシウム、コウジ酸等の美白剤等が挙げられる。
【0119】
(コーティング剤)
本発明の粒子を含むコーティング剤の態様について、以下に例示する。本態様において、コーティング剤は、本発明の粒子を含む。本態様において、コーティング剤における本発明の粒子の含有割合は、コーティング剤の種類に応じて適宜設定できるが、好ましくは1~90質量%、より好ましくは3~80質量%である。
【0120】
本態様において、コーティング材料は、必要に応じてバインダー樹脂、紫外線硬化樹脂、溶剤を含むことができる。バインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0121】
上記紫外線硬化性樹脂としては、多官能(メタ)アクリレート樹脂が好ましく、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多価アルコール多官能(メタ)アクリレート樹脂がより好ましい。1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多価アルコール多官能(メタ)アクリレート樹脂としては、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4-シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。これらの樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0122】
紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、紫外線硬化性樹脂に光重合開始剤を加えてバインダー樹脂とする。光重合開始剤は、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、α-ヒドロキシアルキルフェノン類、α-アミノアルキルフェノン、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類(特開2001-139663号公報等に記載)、2,3-ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、オニウム塩類、ボレート塩、活性ハロゲン化合物、α-アシルオキシムエステル等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0123】
上記溶剤としては、例えば、油系塗料であれば、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤等が挙げられ、水系塗料であれば、水、アルコール類等が挙げられる。これらの溶剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0124】
本態様において、コーティング材料には、必要に応じて、公知の塗面調整剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化触媒、体質顔料、着色顔料、金属顔料、マイカ粉顔料、染料等が含まれていてもよい。
【0125】
本態様において、コーティング材料を使用した塗膜の形成方法としては、例えば、スプレー塗装法、ロール塗装法、ハケ塗り法等の公知の塗膜形成方法が挙げられる。コーティング材料は、必要に応じて粘度を調整するために、希釈剤で希釈してもよい。希釈剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族化合物系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶剤;天然水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等の水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤等が挙げられる。これらの希釈剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0126】
また、基材等の任意の塗工面に塗工して塗工膜を作製し、この塗工膜を乾燥させた後、必要に応じて塗工膜を硬化させることによって、架塗膜を形成することができる。なお、コーティング材料を使用した塗膜は各種基材にコーティングして使用され、金属、木材、ガラス、プラスチックス等特に限定されない。また、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂等の透明基材にコーティングして用いることもできる。
【0127】
(樹脂組成物)
本発明の粒子を含む樹脂組成物の態様について、以下に例示する。本態様において、樹脂組成物は、基材樹脂及び本発明の粒子を含む。基材樹脂としては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコ-ル酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブシレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリ(エチレンサクシネート・テレフタレート)、ポリ(ブチレンサクシネート・テレフタレート)、ポリ(ブチレンアジペート・テレフタレート)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(β-プロピオラクトン)、ポリアミド4、ポリ(3-ヒドロキシブチレ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシバリレ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシカプロレ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシヘプタノエ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシオクタノエ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート・3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート・3-ヒドロキシバリレート)、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂、グルコサミン系樹脂等の生分解性樹脂;ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド12、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル-スチレン共重合樹脂)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルサルファイド、ポリスチレン、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー(PFA樹脂)、ポリエーテルケトン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの基材樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0128】
本態様において、樹脂組成物における本発明の粒子の含有量は、基材樹脂と本発明の粒子との総質量を基準にして、好ましくは0.1~70質量%であり、より好ましくは0.5~50質量%であり、より一層好ましくは1~30質量%である。
【0129】
本態様において、樹脂組成物には、必要に応じて、公知の添加剤が含まれていても良い。添加剤としては、ガラス繊維や炭素繊維などの強化繊維、難燃剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、体質顔料、着色顔料、金属顔料、染料などを挙げることができる。
【0130】
本態様において、樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、基材樹脂と本発明の粒子とを機械式粉砕混合方法等のような従来広く知られている方法で混合することにより製造できる。機械式粉砕混合方法では、例えば、ヘンシェルミキサー、V型混合機、ターブラミキサー、ハイブリダイザー、ロッキングミキサー等の装置を用いて、基材樹脂と本発明の粒子とを混合し撹拌することにより、樹脂組成物を製造できる。
【0131】
本態様において、樹脂組成物を使用した成形体の形成方法は、特に限定されず、公知の方法をいずれも使用できる。例えば、基材樹脂と本発明の粒子とを混合機で混合し、押出機等の溶融混練機で混練することで樹脂組成物からなるペレットを得た後、このペレットを押出、射出、ブロー等で成形することにより、自動車材料、建築材料、包装材料等に適した任意の形状の成形体を得ることができる。
【0132】
(ブロッキング防止剤)
本発明の粒子を含むブロッキング防止剤の態様について、以下に例示する。本発明の粒子は、樹脂フィルムを巻き取ったときなどに、互いに接した樹脂フィルム表面同士が密着して剥がれなくなること(ブロッキング)を防止するために、樹脂フィルムの表面に凹凸を付与するブロッキング防止剤として使用できる。
【0133】
本態様において、ブロッキング防止剤は、本発明の粒子の他、必要に応じて、公知の酸化防止剤、流動性調整剤、光安定剤、着色顔料等が含まれていてもよい。
【0134】
本態様において、ブロッキング防止剤における本発明の粒子の含有量は、好ましくは70~100質量%であり、より好ましくは80~100質量%であり、より一層好ましくは90~100質量%である。
【0135】
本態様において、ブロッキング防止剤を使用できる樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコ-ル酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブシレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリ(エチレンサクシネート・テレフタレート)、ポリ(ブチレンサクシネート・テレフタレート)、ポリ(ブチレンアジペート・テレフタレート)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(β-プロピオラクトン)、ポリアミド4、ポリ(3-ヒドロキシブチレ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシバリレ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシカプロレ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシヘプタノエ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシオクタノエ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート・3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート・3-ヒドロキシバリレート)、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂、グルコサミン系樹脂等の生分解性樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、(メタ)アクリロニトリル系樹脂、ノルボルネン系樹脂、非晶質ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、トリアセチルセルロース樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0136】
本態様において、樹脂フィルムにおける本発明の粒子の含有量は、好ましくは0.01~10質量%であり、より好ましくは0.01~5質量%であり、より一層好ましくは0.01~3質量%であり、特に好ましくは0.01~1質量%である。
【0137】
(光拡散フィルム)
本発明の粒子を含む光拡散フィルムの態様について、以下に例示する。本態様において、光拡散フィルムは、本発明の粒子を含む。本態様において、光拡散フィルムにおける本発明の粒子の含有量は、光拡散フィルムの種類に応じて適宜設定できるが、好ましくは1~90質量%、より好ましくは3~80質量%である。
【0138】
本態様において、光拡散フィルムは、例えば、本発明の粒子、バインダー樹脂、希釈剤などを公知の方法により混合して分散液を調製し、これを公知の方法により基材となるフィルム上に塗布・乾燥することにより製造することができる。
【0139】
本態様において、光拡散フィルムの製造に使用する基材としては、例えば、ガラス;ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)等からなるプラスチックシート、プラスチックフィルム、プラスチックレンズ、プラスチックパネル等が挙げられる。
【0140】
本態様において、光拡散フィルムの製造に使用するバインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0141】
本態様において、光拡散フィルムの製造に使用する希釈剤としては、希釈剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族化合物;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル化合物;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル化合物;天然水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等の水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール等が挙げられる。これらの希釈剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【実施例0142】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、「室温」とは、20℃~25℃の範囲内の温度を意味する。
【0143】
まず、実施例の項における測定方法及び評価方法について説明する。なお、測定方法及び評価方法において、各実施例、各比較例で得られた粒子又は粉体を、単に「測定対象の粒子」と称する。
【0144】
(表面形状の観察)
試料台に導電性テープを貼り付け、その上に、測定対象の粒子を搭載した。日本電子株式会社製「オートファインコータ JFC-1300」スパッタ装置を用いて、表面処理(40mA、180秒)を行った。次いで、株式会社日立ハイテクノロジーズ製「SU1510」走査型電子顕微鏡(SEM)の二次電子検出器を用いて、表面処理した測定対象の粒子の表面形状を撮影した。
【0145】
(体積平均粒子径の測定)
測定対象の粒子の体積平均粒子径は、精密粒度分布測定装置(製品名「コールターMultisizerTM 3」、ベックマン・コールター株式会社製)により測定した。測定は、ベックマン・コールター株式会社発行のMultisizerTM 3ユーザーズマニュアルに従って校正されたアパチャーを用いて実施した。なお、測定に用いるアパチャーは、測定対象の粒子の大きさによって、適宜選択した。Current(アパチャー電流)及びGain(ゲイン)は、選択したアパチャーのサイズによって、適宜設定した。例えば、50μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は-800と設定し、Gain(ゲイン)は4と設定した。
【0146】
試料としては、測定対象の粒子0.1gをアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(花王株式会社製の製品名「ぺレックスSS-H」)の水溶液に添加し、超音波洗浄器(株式会社ヴェルヴォクリーア製、「ULTRASONIC CLEANER VS-150」)を用いて分散させ、分散液としたものを使用した。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、粒子を10万個測定した時点で測定を終了した。測定対象の粒子の体積平均粒子径は、10万個の粒子の体積基準の粒度分布における算術平均径とした。
【0147】
(アマニ油吸油量の測定方法及び計算方法)
JIS K 5101-13-2-2004に準じた方法を用いて、測定対象の粒子のアマニ油吸油量の測定を行った。詳細は以下の通りである。
<装置及び器具>
・測定板:300×400×5mmより大きい平滑なガラス板
・パレットナイフ(ヘラ):鋼製又はステンレス製の刃を持った柄つきのもの
・化学はかり(計量器):10mgオーダーまで計れるもの
・ビュレット:JIS-R-3505-1994に規定する容量10mLのもの
<材料>
・アマニ油・・・ISO 787-5:1980に規定するもので、具体的には、一級アマニ油(富士フイルム和光純薬社製)を使用
【0148】
<測定方法>
(1)樹脂粒子1gを測定板上の中央部に取り、アマニ油をビュレットから一回に4、5滴ずつ、徐々に樹脂粒子の中央に滴下し、その都度、樹脂粒子及びアマニ油の全体をパレットナイフで充分練り合わせる。
(2)上記の滴下及び練り合わせを繰り返し、樹脂粒子及びアマニ油の全体が固いパテ状の塊になったら1滴ごとに練り合わせて、アマニ油の最後の1滴の滴下によりペースト(樹脂粒子及びアマニ油の混練物)が急激に軟らかくなり、流動を始める点を終点とする。
(3)流動の判定
アマニ油の最後の1滴の滴下により、ペーストが急激に軟らかくなり、測定板を垂直に立てた時にペーストが動いた場合に、ペーストが流動していると判定する。測定板を垂直に立てた時もペーストが動かない場合には、更にアマニ油を1滴加える。
(4)終点に達したときのアマニ油の消費量をビュレット内の液量の減少分として読み取る。
(5)1回の測定時間は7~15分以内に終了するように実施し、測定時間が15分を超えた場合は再測定し、規定の時間内で測定を終了した時の数値を採用する。
(6)上記終点までに滴下したアマニ油の合計量(g)を記録した。アマニ油吸油量は、測定対象の粒子100g当たりのアマニ油の消費量を算出し、mL単位で表した。アマニ油吸油量(mL/100g)は、次の式(2)により算出した。
O=(V/m)×100・・・式(2)
O:アマニ油吸油量(mL/100g)
m:測定対象の粒子の質量(g)
V:滴下したアマニ油の消費量(mL)
(7)上記(1)~(6)の工程を3回行い、算出したアマニ油吸油量の平均値をアマニ油吸油量の測定結果とした。
【0149】
<評価>
上記測定結果のアマニ油吸油量の平均値(以下、単に「アマニ油吸油量」と表記)について、以下の評価基準に従って評価した。アマニ油吸油量が小さすぎる(80mL/100g未満)場合、測定対象の粒子を化粧料に配合して使用する際に皮脂を十分に吸収せず、化粧崩れの原因となる。測定結果及び評価結果を表1に示す。
A:アマニ油吸油量が100mL/100g以上
B:アマニ油吸油量が90mL/100g以上100mL/100g未満
C:アマニ油吸油量が80mL/100g以上90mL/100g未満
D:アマニ油吸油量が80mL/100g未満
【0150】
[平均摩擦係数(MIU)及び摩擦係数の平均偏差(MMD)の測定方法及び評価]
肌に見立てた人工皮革(製品名「サプラーレ」、出光テクノファイン株式会社製)に、測定対象の粒子を2mg/cm2塗布し、10mm角シリコン素材のセンサー部を備えた摩擦感テスター(装置名「KES-SE」、カトーテック株式会社製)を用いて、以下の測定条件に基づき、各測定対象の粒子のMIU及びMMDの測定を5回行った。得られた測定結果の平均値をMIU及びMMDとした。
<摩擦感テスターの測定条件>
・摩擦静荷重 :25gf
・温度 :20.6℃±2℃
・測定距離 :20mm
・湿度 :60%±2℃
・測定速度 :1mm/sec
・センサー :10mm 角センサー
【0151】
MIUが小さいほど、測定対象の粒子を配合した化粧料を塗布した際に滑りやすくなり、MMDが小さいほど、測定対象の粒子を配合した化粧料を塗布した際にざらつきのない滑らかな触感となる。
【0152】
<評価>
上記測定結果のMMDについて、下記の評価基準に従って評価した。MMDが大きすぎる(0.010以上)場合、測定対象の粒子がざらつきのある触感となるため、該測定対象の粒子を化粧料に配合して使用した場合に触感不良となる。
判定結果を表1に示す。
A:MMDが0.010未満
B:0.010以上0.015未満
C:0.015以上0.018未満
D:0.018以上
【0153】
(水に対する接触角の測定)
接触角測定装置(商品名「Drop Master 300」、協和界面科学株式会社製)を用い、液滴法(静的接触角)及びJIS-R3257-1999に基づき接触角を測定した。
スライドガラス上に、両面テープ(商品名:ナイスタック、登録商標:NW-10S、ニチバン株式会社製)を貼り合わせ、該両面テープ上に測定対象の粒子0.5gをのせて、該両面テープの粘着面に軽く擦り付けた。その後、余分な粒子をブロワーで除去し、水に対する接触角測定用の試験サンプルとした。試験サンプルの水に対する接触角は、以下の測定条件に基づき、接触角測定装置(商品名「Drop Master face」、協和界面科学株式会社製)にて測定した。より詳細には、測定対象の粒子の表面に蒸留水をシリンジで1滴(1μL~5μL)垂らしてから180秒後の水に対する接触角を測定した。測定は各試験サンプルで3回ずつ行い、その平均値を測定対象の粒子の水に対する接触角(以下、「水に対する接触角」と表記)とした。
<接触角測定装置の測定条件>
・室温 :23±1℃
・湿度 :50±5%
・使用した水 :蒸留水
【0154】
<評価>
上記水に対する接触角について、下記の基準に従ってA、B、C及びDで判定した。水に対する接触角が小さすぎる(40°未満)場合、測定対象の粒子の親水性が高くなるため、該粒子を油相に添加した場合に該粒子の凝集が起こりうる。測定結果及び評価結果を表1に示す。水に対する接触角大きすぎる(150°超)場合、測定対象の粒子の疎水性が強すぎるために、該粒子を水相に添加した際に該粒子の凝集が起こりうる。
A:水に対する接触角が90°以上150°以下
B:水に対する接触角が40°以上90°未満
C:水に対する接触角が20°以上40°未満
D:水に対する接触角が20°未満
【0155】
<総合評価>
水に対する接触角(水滴滴下後180秒後)、アマニ油吸油量及び摩擦係数の平均偏差(MMD)の3項目において以下の条件で評価した。なお、比較例1で得られた粒子は多糖類を含有していないため、総合評価はDとした。
A:3項目全てがA評価
B:3項目のうち、A評価が2つ且つB評価が1つ、A評価が1つ且つB評価が2つ、又は、3項目全てがB評価
C:3項目のうち、A若しくはB評価が2つ且つC評価が1つ、A若しくはB評価が1つ且つC評価が2つ、又は、全ての項目がC評価
D:3項目のうち、D評価が1つ以上の場合はD評価
【0156】
(実施例1)
容器に、低粘性澱粉(製品名「ソフトスターチSF-930」、三和澱粉工業株式会社製)10gとイオン交換水90gとを入れ、90℃で攪拌して溶解後に室温まで冷却して、10%澱粉水溶液を作製した。更に、作製した10%澱粉水溶液に、オクテニルコハク酸無水物(OSA、製品名「2-オクテニルコハク酸無水物(cis-,trans-混合物)」、東京化成工業株式会社製)を2g添加し、室温で攪拌して水溶液を作製した。次いで、35℃~40℃の範囲内の温度に維持して攪拌混合しながら、水酸化ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)の4%溶液で、水溶液のpHを6.5~8.0に調整した(表1の反応液pHに該当)。その後、水溶液のpHが変化しなくなるまで5時間反応させた。反応後の水溶液に対してスプレードライヤー(日本ビュッヒ株式会社製の製品名「ミニスプレードライヤーB-290」)を用いて、以下の条件で噴霧乾燥を行い、粉体を得た。
<装置条件>
・水溶液の供給速度:6mL/min
・風量:8m3/min
・入口温度(水溶液が装置内に導入される入口の温度):220℃
・出口温度(水溶液が噴霧乾燥されて粉体として排出される出口の温度):110℃
・滞留時間:2秒
・ノズル:2流体ノズル
【0157】
粉体5gをエタノール10gに分散させた溶液と、塩化アルミニウム1.2gをエタノール20gに分散させた溶液とを混合し、室温で24時間攪拌して反応させた。反応後、減圧濾過で溶媒を除去し、適量のエタノールで洗浄して粒子を得た。
【0158】
得られた粒子のSEM写真を
図1に示す。
図1に示すように、実施例1で得られた粒子は、表面にクレーター状の凹部を有することがわかった。なお、参考図として、実施例1の原料として使用した低粘性澱粉(ソフトスターチSF-930)のSEM写真を
図7に示す。
【0159】
(実施例2)
噴霧乾燥時の入口温度を165℃、出口温度を80℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、粒子を得た。
【0160】
(実施例3)
水酸化ナトリウムの4%溶液で水溶液のpHを4.0~6.5に調整し、噴霧乾燥時の入口温度を120℃、出口温度を60℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、粒子を得た。
【0161】
(実施例4)
オクテニルコハク酸無水物を6g使用し、水酸化ナトリウムの4%溶液で水溶液のpHを7.0~10.5に調整し、噴霧乾燥時の入口温度を120℃、出口温度を60℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、粒子を得た。
【0162】
(実施例5)
オクテニルコハク酸無水物を6g使用し、水酸化ナトリウムの4%溶液で水溶液のpHを6.5~8.0に調整し、噴霧乾燥時の入口温度を120℃、出口温度を60℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、粒子を得た。
【0163】
(実施例6)
オクテニルコハク酸無水物を0.5g使用し、水酸化ナトリウムの4%溶液で水溶液のpHを6.5~8.0に調整し、噴霧乾燥時の入口温度を120℃、出口温度を60℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、粒子を得た。
【0164】
(実施例7)
オクテニルコハク酸無水物を2g使用し、水酸化ナトリウムの4%溶液で水溶液のpHを7.0~10.5に調整し、噴霧乾燥時の入口温度を120℃、出口温度を60℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、粒子を得た。
【0165】
(実施例8)
オクテニルコハク酸無水物を0.5g使用し、水酸化ナトリウムの4%溶液で水溶液のpHを4.0~6.5に調整し、噴霧乾燥時の入口温度を120℃、出口温度を60℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、粒子を得た。
【0166】
(実施例9)
オクテニルコハク酸無水物を2g使用し、水酸化ナトリウムの4%溶液で水溶液のpHを8.0~11.0に調整し、噴霧乾燥時の入口温度を120℃、出口温度を60℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、粒子を得た。得られた粒子のSEM写真を
図3に示す。
【0167】
(実施例10)
オクテニルコハク酸無水物を2g使用し、水酸化ナトリウムの4%溶液で水溶液のpHを6.5~8.0に調整し、噴霧乾燥時の入口温度を120℃、出口温度を60℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、粒子を得た。
【0168】
(実施例11)
オクテニルコハク酸無水物を0.5g使用し、水酸化ナトリウムの4%溶液で水溶液のpHを7.0~10.5に調整し、噴霧乾燥時の入口温度を120℃、出口温度を60℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、粒子を得た。
【0169】
(実施例12)
オクテニルコハク酸無水物を12g使用し、水酸化ナトリウムの4%溶液で水溶液のpHを7.0~10.5に調整し、噴霧乾燥時の入口温度を120℃、出口温度を60℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、粒子を得た。
【0170】
(実施例13)
オクテニルコハク酸無水物を12g使用し、水酸化ナトリウムの4%溶液で水溶液のpHを7.0~10.5に調整し、噴霧乾燥時の入口温度を120℃、出口温度を60℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、粒子を得た。
【0171】
(実施例14)
オクテニルコハク酸無水物を6g使用し、水酸化ナトリウムの4%溶液で水溶液のpHを4.0~6.5に調整し、噴霧乾燥時の入口温度を120℃、出口温度を60℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、粒子を得た。
【0172】
(実施例15)
オクテニルコハク酸無水物を12g使用し、水酸化ナトリウムの4%溶液で水溶液のpHを4.0~6.5に調整し、噴霧乾燥時の入口温度を120℃、出口温度を60℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、粒子を得た。
【0173】
(比較例1)
脱イオン水1000gに対してピロリン酸カルシウム15gを分散させた水性媒体を、攪拌機、温度計を備えた2L重合器に加え、さらにラウリル硫酸ナトリウム0.02gを加えた。これに予め調製しておいたメタクリル酸メチル(MMA)260g(単官能ビニルモノマー)、エチレングリコールジメタクリレート(EDGMA)40g(多官能ビニルモノマー)、メタクリル変性シリコーンオイル40g(メタクリル変性シリコーンオイル系ビニルモノマー、信越化学工業株式会社製、製品名「X-22-174DX」)及びアゾビスイソブチロニトリル0.9g(重合性開始剤)からなる混合液を重合器中に加えた。次いで、混合液を、攪拌機(特殊機化工業株式会社製の製品名「T.Kホモミキサー」)で水性媒体中に分散することにより、10μm程度の液滴径の懸濁液を調製した。攪拌機で攪拌しながら、懸濁液を65℃に加熱し6時間重合を行った後、100℃に昇温し、100℃で2時間加熱し、室温まで冷却した。得られた懸濁液を濾過、洗浄、乾燥して粒子を得た。得られた粒子のSEM写真を
図4に示す。
【0174】
(比較例2)
固形分が5質量%の竹由来セルロースナノファイバー(CNF、中越パルプ工業株式会社製の製品名「nanoforest(登録商標)」)50gにイオン交換水128gを加えた後、メカニカルスターラーにて撹拌し、セルロースナノファイバーを分散させた。この分散液を、超音波ホモジナイザー(BRANSON社製、型式SONIFIER450)により撹拌しながら5分間分散させることで、噴霧乾燥用の水溶液を作製した。作製した水溶液に対して、噴霧乾燥時の入口温度を180℃、出口温度を110℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、粒子を得た。
【0175】
(比較例3)
馬鈴薯澱粉(製品名「美幌」、東海デキストリン株式会社製)100gをイオン交換水130gに攪拌懸濁し、オクテニルコハク酸無水物(製品名「2-オクテニルコハク酸無水物(cis-,trans-混合物)」、東京化成工業株式会社製)を3g添加し、42℃で攪拌混合しながら水酸化ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)の3%溶液でpHを7.5に調節しながら6時間反応させ、澱粉懸濁液を得た。その後、硫酸アルミニウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)2gを適量のイオン交換水で溶解させ、硫酸アルミニウム溶液を作製した。次いで、上記澱粉懸濁液に該硫酸アルミニウム溶液を添加し、室温で30分間攪拌混合した。反応後、水酸化ナトリウムでpHを6.5に中和し、ドラムドライヤー(製品名「ジョンミルダー(JM-D02型)」、ジョンソンボイラ株式会社製)を用いて、以下の条件で脱水乾燥を行い、粉体を得た。得られた粉体のSEM写真を
図5に示す。
<装置条件>
・蒸気圧力:0.55MPA
・ドラム温度:158℃
・回転数:4.45rpm
【0176】
(比較例4)
10gのイオン交換水にオクテニルコハク酸ナトリウム(「乳華W」、日澱化学株式会社製)5gを入れて撹拌を行いながら、ミリスチン酸カリウムをイオン交換水に溶解させた30wt%溶液0,25g及び塩化アルミニウム六水和物をイオン交換水に溶解させた12.5wt%溶液0,5gを添加し、30分撹拌を続けて反応させた。反応物を含むスラリーをNo.1のろ紙で減圧ろ過し、10gのイオン交換水に反応物を加えて、撹拌により分散させて水洗浄を室温で10分行った。さらに反応物を含むスラリーをNo.1のろ紙で減圧ろ過し、粉体を得た。水洗浄と減圧ろ過をさらに2回繰り返し行った。洗浄後、反応物をオーブンを用いて、40℃で12時間乾燥を行い、粒子を得た。得られた粒子のSEM写真を
図6に示す。
【0177】
(比較例5)
市販品のオクテニルコハク酸澱粉アルミニウム塩(日澱化學株式会社製の製品名「オクティエ」)のSEM写真を
図8に示す。
【0178】
(比較例6)
馬鈴薯澱粉(製品名「美幌」、日澱化学株式会社製)100gをイオン交換水130gに攪拌懸濁し、オクテニルコハク酸無水物(製品名「2-オクテニルコハク酸無水物(cis-,trans-混合物)」、東京化成工業株式会社製)を3g添加し、42℃で攪拌混合しながら水酸化ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)の3%溶液でpHを7.5に調節しながら6時間反応させ、澱粉懸濁液を得た。その後、硫酸アルミニウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)2gを適量のイオン交換水で溶解させ、硫酸アルミニウム溶液を作製した。次いで、得られた澱粉懸濁液にイオン交換水200gを追加し(高粘度で攪拌不可のため)、更に上記硫酸アルミニウム溶液を添加し、室温で30分間攪拌混合し、分散液を作製した。反応後、水酸化ナトリウムで、該水溶液のpHを6.5に調整した。次いで、実施例1と同様の条件で、スプレードライヤー(日本ビュッヒ株式会社社製の製品名「ミニスプレードライヤーB-290」)を用いて分散液を噴霧乾燥しようとしたが、該スプレードライヤーのノズルが詰まったため、粉体を全く得ることができなかった。スプレードライヤーのノズルが詰まったのは、分散液中に粒径の大きな凝集物が多く存在していたためであると推測される。
【0179】
(比較例7)
馬鈴薯澱粉(製品名「美幌」、日澱化学株式会社製)100gをイオン交換水130gに攪拌懸濁し、90℃に加温して糊化させ、更にイオン交換水230gを追加して流動性のある溶液した。次いで、該溶液にオクテニルコハク酸無水物(製品名「2-オクテニルコハク酸無水物(cis-,trans-混合物)」、東京化成工業株式会社製)を3g添加し、42℃で攪拌混合しながら水酸化ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)の3%溶液でpHを7.5に調節しながら6時間反応させ、澱粉糊液を得た。その後、硫酸アルミニウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)2gを適量のイオン交換水で溶解させ、硫酸アルミニウム溶液を作製した。次いで、得られた澱粉糊液にイオン交換水200gを追加し、更に上記硫酸アルミニウム溶液を添加し、室温で30分間攪拌混合し、水溶液を作製した。反応後、水酸化ナトリウムでpHを6.5に調整した。次いで、実施例1と同様の条件で、スプレードライヤー(日本ビュッヒ株式会社社製の製品名「ミニスプレードライヤーB-290」)を用いて水溶液を噴霧乾燥しようとしたが、噴霧乾燥の途中で該スプレードライヤーのノズルが詰まったため、わずかな粉体しか得ることができなかった。
【0180】
比較例7で得られた粉体のSEM写真を
図9に示す。凹凸形状でない粗大粒子が多く含まれていた。
図9に示すように、比較例7で得られた粉体は、実施例1で得られた粒子とは表面の形状が異なる粗大粒子であることがわかった。
【0181】
わずかに得られた粉体を用いて表面形状の観察及び、水に対する接触角の測定を行った。なお、粉体の回収量が不足していたため、アマニ油吸油量を測定することができなかった。
【0182】
各実施例及び各比較例の結果を表1に示す。
【0183】