(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092620
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】樹脂ケースの耐振動構造
(51)【国際特許分類】
H05K 5/02 20060101AFI20230627BHJP
H02G 3/14 20060101ALI20230627BHJP
H02G 3/08 20060101ALI20230627BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
H05K5/02 L
H02G3/14
H02G3/08
B60R16/02 610A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207744
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑磨
【テーマコード(参考)】
4E360
5G361
【Fターム(参考)】
4E360AB02
4E360AB12
4E360CA02
4E360EA03
4E360EA12
4E360ED02
4E360ED14
4E360GA28
4E360GB97
4E360GC08
5G361AA06
5G361AB12
5G361AC02
5G361AC03
5G361AD01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】反りなどによるケースの強度低下及び破損などを防ぎ、電気装置の信頼性・安全性の向上を図る樹脂ケースの耐振動構造を提供する。
【解決手段】スナップフィット15a、15bにより接合される樹脂ケース11において、上下ケース12、13は天井部12a、13a、側板12b~12e、13b~13eを備える。上ケース12の側板12b、12dには板金脚16がインサート成形されている。板金脚16は、L字状に形成され、側板12b、12dに固定された固定部16a、取付部16bを備える。取付部16bには、ネジ固定用の貫通孔16cが形成されている。固定部16aの高さは、両ケース12、13の接合時にケース接合面よりも低い位置まで延設されている。下ケース13の側板13b、13dには、凹状部17が形成されている。この凹状部17の底壁17aと固定部16aとの間にはクリアランスが設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の一方のケースと他方のケースとを係合させることによって電気部品を収容する電気装置における樹脂ケースの耐振動構造であって、
前記各ケースは、
前記電気部品を覆う天井部と、
前記天井部の外周縁に立設された側板と、
を備え、
一方の前記ケースの側板には、前記電気装置内の所定部位とのネジ接合に用いる板金脚がインサート成形され、
前記板金脚は、L字状に形成され、
一方の前記ケースの側板に固定され、かつ先端が他方の前記ケースの側板まで延設された固定部と、
前記固定部の先端から外側に延設され、かつ前記ネジ用の貫通孔の形成された取付部と、
を備え、
他方の前記ケースの側板と前記固定部の先端との間にクリアランスが設けられていることを特徴とする樹脂ケースの耐振動構造。
【請求項2】
他方の前記ケースの側板は、前記固定部の先端に対向する凹状部を備え、
前記凹状部の底壁と前記固定部の先端との間に前記クリアランスが設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の樹脂ケースの耐振動構造。
【請求項3】
一方の前記ケースと他方の前記ケースとをスナップフィットによって係合させる
ことを特徴とする請求項1または2記載の樹脂ケースの耐振構造。
【請求項4】
前記電気装置は、電動車両である
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか記載の樹脂ケースの耐振構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電動車両内の電気部品を収容する樹脂ケースの耐振動構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両などの電気装置において、基板等の電気部品を樹脂ケースによって収容する技術として特許文献1が公知となっている。
図1(a)~(e)は、特許文献1の構成例を示している。
【0003】
ここでは樹脂ケース1は、樹脂製の上下ケース2,3をスナップフィット5a,5bによって係合させることで基板4を内部に収容している。この上ケース2にはL字状の板金脚6がインサート成形されている。
【0004】
板金脚6は、上ケース2の側板2aに固定された固定部6aと、固定部6aの先端から外側水平方向に延設された取付部(平面部)6bとを有している。この取付部6bにはネジ止め用の貫通孔6cが形成されている。この貫通孔6cを介して電気装置内の板金部(図示省略)にネジで取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように特許文献1の樹脂ケース1は、電気装置内の板金部(図示省略)にネジで取り付けられるものの、特に電気装置が電動車両の場合には同車両の運転時に板金脚6を介して振動を受ける。
【0007】
ところが、上下ケース2,3は、スナップフィット5a,5bの結合で係合しているため、振動を受けたときに上下ケース2,3間にずれが生じやすい。このとき板金脚6に所定の強度をもたせるため、取付部6bの高さは上下ケース2,3の接合面より低い位置にあり、
図4(a)(b)に示すように、固定部6aの先端内面が下ケース3の側板3aの外面に対向する。
【0008】
その結果、
図2(a)中の矢印Pに示すように、振動によって固定部6aの先端内面が側板3aの外面に繰り返し当たることとなる。そのため、
図2(b)中の矢印Q方向の荷重が側板3aに加わって、下ケース3に
図2(c)中の矢印Rに示す反りが生じ、下ケース3に強度低下および破損などが生じるおそれがある。また、電気装置の周囲温度変化に伴う樹脂ケース1の変形が生じた場合も、同様に下ケース3に強度低下および破損を生じるおそれもある。
【0009】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされ、反りなどによるケースの強度低下および破損などを防ぐことで電気装置の信頼性・安全性を向上させることを解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)樹脂製の一方のケースと他方のケースとを係合させることによって電気部品を収容する電気装置における樹脂ケースの耐振動構造であって、
前記各ケースは、
前記電気部品を覆う天井部と、
前記天井部の外周縁に立設された側板と、
を備え、
一方の前記ケースの側板には、前記電気装置内の所定部位とのネジ接合に用いる板金脚がインサート成形され、
前記板金脚は、L字状に形成され、
一方の前記ケースの側板に固定され、かつ先端が他方の前記ケースの側板まで延設された固定部と、
前記固定部の先端から外側に延設され、かつ前記ネジ用の貫通孔の形成された取付部と、
を備え、
他方の前記ケースの側板と前記固定部の先端との間にクリアランスが設けられていることを特徴としている。
【0011】
(2)本発明の一態様は、他方の前記ケースの側板が前記固定部の先端に対向する凹状部を備え、
前記凹状部の底壁と前記固定部の先端との間に前記クリアランスが設けられていることを特徴としている。
【0012】
(3)本発明の他の態様は、一方の前記ケースと他方の前記ケースとをスナップフィットによって係合させることを特徴としている。本発明のさらに他の態様は、前記電気装置が電動車両であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、反りなどによるケースの強度低下および破損などを防ぐことで電気装置の信頼性・安全性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)は従来ケースの斜視図、(b)は同底面図、(c)は同分解斜視図、(d)は同下ケースの斜視図、(e)は同下ケースの平面図。
【
図2】(a)は従来ケースの反りのメカニズムを示す斜視図、(b)は同下ケースの底面図、(c)は同下ケースの側面図、(d)は同下ケースの平面図。
【
図3】(a)は本発明の実施形態に係る樹脂ケースの斜視図、(b)は同分解斜視図、(c)は同分解斜視図、(d)は同下ケースの斜視図、(e)は同下ケースの平面図。
【
図4】(a)(c)は従来ケースと
図3の樹脂ケースとの変更点を示すそれぞれの下ケースの平面図、(b)(d)は同底面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る樹脂ケースの耐振動構造を説明する。この樹脂ケースは、電動車両などの電気装置内に設置され、基板等の電気部品の収納に用いられる。例えばリレーボックス・ヒューズボックスなどの箱体、即ち電気接続箱(エレクトリック・ジャンクション・ブロック)などとして使用することができる。
【0016】
図3(a)~(c)中の11は、本実施形態の樹脂ケースを示している。この樹脂ケース11は、
図3(a)~(c)に示すように、基板14を樹脂製の上下ケース12,13の接合によって内部に収容している。この上下ケース12,13の接合には、特許文献1と同様にスナップフィット構造を採用している。
【0017】
上ケース12は、断面凹状に形成され、基板14を覆う天井部12aと、天井部12aの外周縁に立設された四方の側板12b~12eとを有している。この側板12cには基板14のコネクタ部20用の凹部12fが形成されている一方、側板12b,12dには一対のスナップフィット15aが設けられている。
【0018】
また、側板12b,12dは、スナップフィット15a間に板金脚16がインサート成形されている。この板金脚16は、L字状に形成され、側板12bに固定された一端側の固定部16aと、固定部16aの先端から外側水平方向に延設された他端側の取付部(平面部)16bとを有している。
【0019】
この固定部16aの基端は側板12b,12dに固定されている一方、先端は下ケース13まで延設されている。したがって、取付部16bの高さは、上下ケース12,13の接合面より低い位置となっている。この取付部16bはネジ止め用の貫通孔16cが貫通形成され、貫通孔16cを介して電気装置内の板金部にネジで取り付けられる。
【0020】
下ケース13は、断面凹状に形成され、
図3(b)~(e)に示すように、前記電気部品を覆う天井部13aと、天井部13aの外周縁に立設された四方の側板13b~13eとを有し、側板13cにはリブ13f,13gが立設されている。また、側板13b,13dには、スナップフィット15aの対応位置に一対のスナップフィット15bが設けられている。
【0021】
さらに側板13b,13dは、スナップフィット15b間に凹状部17が形成されている。この凹状部17は、側板13b,13dから内方向に折曲形成された左右の側壁17bと、両側壁17bの先端間の底壁17aとを有している。この底壁17aは、固定部16aの先端と対向配置され、
図4(c)中の矢印Sに示すように、側板13b,13dから「1mm」ほど窪んで配置されている。
【0022】
したがって、上下ケース12,13をスナップフィット15a,15bによって係合させて接合した場合、
図4(d)に示すように、固定部16aの先端と底壁17aとの間に「1mm」ほどのクリアランス(隙間)19が生じる。
【0023】
このような樹脂ケース1の耐振動構造によれば、固定部16aの先端内面が底壁17aの外面に対向するものの、前記矢印Pの装置振動時に板金脚16の移動距離が「1mm未満」であれば、固定部16aは底壁17aに当たらなくなる。
【0024】
その結果、特許文献1のように電気装置の振動時に板金脚16の固定部16aが下ケース13に繰り返し当たって前記矢印Qの荷重が加わることがなく、スナップフィット構造における下ケース12の前記矢印R方向の反りや上下ケース12,13のズレなどが防止される。したがって、下ケース13の強度低下・破損などによる基板14の露出・短絡などが防止でき、この点で電気装置の信頼性・安全性を向上させることが可能となる。
【0025】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載された範囲内で変形して実施することができる。例えば下ケース13の側板13b,13dに板金脚16が設けられた構成では、上ケース12の側板12d,12dに凹状部17を形成すればよい。
【0026】
また、クリアランス19は「1mm」の距離に限定されず、装置振動の大きさに応じて底壁17aの位置を成形時に調整することで適宜に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0027】
11…樹脂ケース
12…上ケース
12a,13a…天井部
12b~12e,13a~13e…側板
12f…凹部
13…下ケース
14…基板
15a,15b…スナップフィット
16…板金脚
16a…固定部
16b…取付部
16c…貫通孔
17…凹状部
17a…底壁
17b…側壁
19…クリアランス
【手続補正書】
【提出日】2023-04-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気装置において、樹脂製の一方のケースと他方のケースとを係合させることによって電気部品を収容する樹脂ケースの耐振動構造であって、
前記各ケースは、
前記電気部品を覆う天井部又は底板部と、
前記天井部又は底板部の外周縁に立設された側板と、
を備え、
一方の前記ケースの側板には、前記電気装置内の所定部位とのネジ接合に用いる板金脚がインサート成形され、
前記板金脚は、L字状に形成され、
一方の前記ケースの側板に固定され、かつ先端が他方の前記ケースの側板まで延設された固定部と、
前記固定部の先端から外側に延設され、かつ前記ネジ用の貫通孔の形成された他端部側の取付部と、
を備え、
他方の前記ケースの側板と前記固定部の先端との間にクリアランスが設けられ、
他方の前記ケースの側板は、前記固定部の先端に対向する凹状部を備え、
前記凹状部の底壁と前記固定部の先端との間に前記クリアランスが設けられている
ことを特徴とする樹脂ケースの耐振動構造。
【請求項2】
一方の前記ケースと他方の前記ケースとをスナップフィットによって係合させる
ことを特徴とする請求項1記載の樹脂ケースの耐振構造。
【請求項3】
前記電気装置は、電動車両である
ことを特徴とする請求項1または2記載の樹脂ケースの耐振構造。