(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092633
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】放水銃遠隔制御装置
(51)【国際特許分類】
A62C 27/00 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
A62C27/00 507
A62C27/00 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207769
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000192073
【氏名又は名称】株式会社モリタホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】廖 赤虹
(72)【発明者】
【氏名】大室 健
(72)【発明者】
【氏名】松島 至俊
(72)【発明者】
【氏名】金川 拓也
(72)【発明者】
【氏名】山野 光一
(72)【発明者】
【氏名】坂本 直久
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189AA06
2E189AA10
2E189DA04
(57)【要約】
【課題】使い勝手に優れ、火災環境の高温と浸水に耐えることができ、消防隊員が安全な場所から遠隔で操作することができる放水銃遠隔制御装置を提供すること。
【解決手段】放水銃遠隔制御装置は、消火剤を放射する放水銃10と、放水銃10に取り付けられ、ピストン21を境に区画された容積室を有し作動用流体により作動して放水銃10の向き又は流量を変更するシリンダー20と、放水銃10から離して設置され、作動用流体の供給と不供給との切り替えによりシリンダー20の作動を制御する切替弁30と、切替弁30側に設けられた第一継手60に一端が接続され、シリンダー20側に設けられた第二継手70に他端が接続され、作動用流体が流れる可撓性の輸送管40と、輸送管40が巻回されるホースリール50とを備え、第一継手60は、回転自在のロータリ継手であり、ホースリール50の回転軸と同軸に配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火剤を放射する放水銃と、
前記放水銃に取り付けられ、ピストンを境に区画された容積室を有し作動用流体により作動して前記放水銃の向き又は流量を変更するシリンダーと、
前記放水銃から離して設置され、前記作動用流体の供給と不供給との切り替えにより前記シリンダーの作動を制御する切替弁と、
前記切替弁側に設けられた第一継手に一端が接続され、前記シリンダー側に設けられた第二継手に他端が接続され、前記作動用流体が流れる可撓性の輸送管と、
前記輸送管が巻回されるホースリールと、を備え、
前記第一継手は、回転自在のロータリ継手であり、前記ホースリールの回転軸と同軸に配置されていることを特徴とする放水銃遠隔制御装置。
【請求項2】
前記輸送管を複数有し、複数の前記輸送管が一本の集合管に集約されていることを特徴とする請求項1に記載の放水銃遠隔制御装置。
【請求項3】
前記シリンダーは、前記容積室のそれぞれに外部と連通した連通路を有し、前記連通路に固定絞りが設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の放水銃遠隔制御装置。
【請求項4】
前記放水銃の稼働時において、前記シリンダーの前記容積室には、排出側の前記容積室を除き、前記作動用流体が継続して供給されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の放水銃遠隔制御装置。
【請求項5】
前記シリンダーは、前記ピストンの両側の受圧面積が等しいことを特徴とする請求項4に記載の放水銃遠隔制御装置。
【請求項6】
前記作動用流体は、水、空気、又は水と空気の混合体であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の放水銃遠隔制御装置。
【請求項7】
前記第一継手は、前記輸送管に繋がる複数の流路を有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の放水銃遠隔制御装置。
【請求項8】
前記第二継手は、差し金具と受け金具とを有し、前記差し金具と前記受け金具との結合が不意に解かれることを防止する不意離脱防止機構が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の放水銃遠隔制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火に用いる放水銃を遠隔から制御する放水銃遠隔制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火災規模が大きくなると、強い輻射熱や熱気により消防隊員が火点に接近して放水することが困難となる。そのような問題への対処として、放水銃を遠隔から制御する方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、方位角および/または仰角を可変し得る放水銃を回線内蔵型ホースを介してポンプ車に接続し、回線内蔵型ホースの途中に放水銃の方位角および/または仰角の制御を行なう中間制御部を設け、中間制御部と放水銃との電気的接続をホース内の回線を介して行うようにした放水銃の遠隔操作装置が開示されている。
また、特許文献2には、油圧、あるいはガス圧を受けてノズルを旋回駆動させる旋回駆動用アクチュエータと、油圧、あるいはガス圧を受けてノズルを俯仰駆動させる俯仰駆動用アクチュエータと、旋回駆動量検出器と、俯仰駆動量検出器と、操作手段の旋回操作量を検出して電気信号を出力する旋回操作量検出器と、操作手段の俯仰操作量を検出して電気信号を出力する俯仰操作量検出器と、補正旋回駆動信号を旋回駆動用アクチュエータに出力する旋回駆動制御手段と、補正俯仰駆動信号を俯仰駆動用アクチュエータに出力する俯仰駆動制御手段とを備えた遠隔操作型放水銃が開示されている。
また、特許文献3には、放水銃の俯仰及び旋回を、消火用水の圧力を利用し、かつ遠隔操縦にて行うようにしてなる放水銃の遠隔操縦装置が開示されている。
また、特許文献4には、空気圧により操作部から遠距離にある駆動部のアクチュエータを作動させる放水銃の空気圧回路の応答性を向上させた、放水銃における空気圧遠隔操作装置が開示されている。
また、非特許文献1には、大規模火災の消火を想定して試作した水圧制御の遠隔操作式放水銃が開示され、当該遠隔操作式放水銃は、2本の水圧シリンダーを含む本体と、遠隔操作のためのコントロールバルブ及びホースリールを含む操作台と、放水銃本体からコントロールバルブに送達される加圧水が流れる1本のホースと、旋回用と起伏用の2本のシリンダーに所要の圧力を伝える2本のホースを備えていると共に、ホースリールは、それら計3本のホースを別々に巻き取るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平01-265978号公報
【特許文献2】特公平06-034838号公報
【特許文献3】特開昭52-061398号公報
【特許文献4】特公昭56-008624号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】輪千正,外2名,“遠隔操作式放水銃の研究試作”,消防科学研究所報,2号(昭和40年),インターネット<URL:https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/hp-gijyutuka/shyohou2/02/02-09.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ごみ処理施設や工場においては、火災発生が予想される場所が事前に特定され電源も確保しやすいため、電動式の遠隔制御放水銃が多く使用される。一方、それ以外の場所、例えば道路上で大きな火災が発生した場合は、電源を確保できず電動式の遠隔制御放水銃は使用できないこともある。また、消火設備が設けられている大規模建物や、さらにはごみ処理施設や工場においても、火災規模が既設の消火設備の能力を超えることがあり、その場合は消防隊員による消火が必要となるが、電源を確保できなければ電動式の遠隔制御放水銃は使用できない。
ここで、特許文献1に記載の放水銃の遠隔操作装置は、放水銃の方位角及び仰角の制御に電気を用いるものであり、電源を確保できない場合は利用できない。
また、特許文献2に記載の遠隔操作型放水銃は、ノズルの旋回及び俯仰駆動を油圧で行うことから油圧モータや油圧制御回路等が必要となり構成が複雑化する。
また、特許文献3に記載の放水銃の遠隔操縦装置は、放水銃の俯仰及び旋回に消火用水の圧力を利用するものであるが、俯仰用シリンダ及び旋回用シリンダに消火用水の一部を導入するための電磁弁が放水銃の近傍に配置された制御箱に内蔵されているため、火災環境における高温や浸水により電磁弁に不具合が生じる懸念がある。
また、特許文献4に記載の空気圧遠隔操作装置は、放水銃の操作が空気圧に限定され、水等の液体を用いることはできない。
また、非特許文献1に記載の遠隔操作式放水銃は、ホースリールの軸心に左右より旋回、起伏作動の圧力調整をする加圧水のパイプが結合され、軸心を通じて2本のホースに結合されているものであるため、ホースの巻き取りや展開がスムーズに行えない場合があり得る。
そこで、本発明は、使い勝手に優れ、火災環境の高温と浸水に耐えることができ、消防隊員が安全な場所から遠隔で操作することができる放水銃遠隔制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の放水銃遠隔制御装置は、消火剤を放射する放水銃10と、放水銃10に取り付けられ、ピストン21を境に区画された容積室を有し作動用流体により作動して放水銃10の向き又は流量を変更するシリンダー20と、放水銃10から離して設置され、作動用流体の供給と不供給との切り替えによりシリンダー20の作動を制御する切替弁30と、切替弁30側に設けられた第一継手60に一端が接続され、シリンダー20側に設けられた第二継手70に他端が接続され、作動用流体が流れる可撓性の輸送管40と、輸送管40が巻回されるホースリール50とを備え、第一継手60は、回転自在のロータリ継手であり、ホースリール50の回転軸と同軸に配置されていることを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の放水銃遠隔制御装置において、輸送管40を複数有し、複数の輸送管40が一本の集合管100に集約されていることを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の放水銃遠隔制御装置において、シリンダー20は、容積室のそれぞれに外部と連通した連通路23を有し、連通路23に固定絞り24が設けられていることを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の放水銃遠隔制御装置において、放水銃10の稼働時において、シリンダー20の容積室には、排出側の容積室を除き、作動用流体が継続して供給されることを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項4に記載の放水銃遠隔制御装置において、シリンダー20は、ピストン21の両側の受圧面積が等しいことを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の放水銃遠隔制御装置において、作動用流体は、水、空気、又は水と空気の混合体であることを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の放水銃遠隔制御装置において、第一継手60は、輸送管40に繋がる複数の流路を有することを特徴とする。
請求項8記載の本発明は、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の放水銃遠隔制御装置において、第二継手70は、差し金具76と受け金具77とを有し、差し金具76と受け金具77との結合が不意に解かれることを防止する不意離脱防止機構が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、使い勝手に優れ、火災環境の高温と浸水に耐えることができ、消防隊員が安全な場所から遠隔操作可能な放水銃遠隔制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施例による放水銃遠隔制御装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による放水銃遠隔制御装置は、消火剤を放射する放水銃と、放水銃に取り付けられ、ピストンを境に区画された容積室を有し作動用流体により作動して放水銃の向き又は流量を変更するシリンダーと、放水銃から離して設置され、作動用流体の供給と不供給との切り替えによりシリンダーの作動を制御する切替弁と、切替弁側に設けられた第一継手に一端が接続され、シリンダー側に設けられた第二継手に他端が接続され、作動用流体が流れる可撓性の輸送管と、輸送管が巻回されるホースリールとを備え、第一継手は、回転自在のロータリ継手であり、ホースリールの回転軸と同軸に配置されているものである。
本実施の形態によれば、第一継手がロータリ継手でありホースリールの回転軸と同軸に配置されていることで、輸送管の巻き取りと展開を迅速に行うことができる。また、第一継手は、切替弁からシリンダーへ向けて供給される作動用流体を、ホースリールの回転に伴い回転しながら連続して通過させることもできる。また、放水銃の遠隔操作は作動用流体の流体圧を利用して行うため、高温や多量の水にさらされる過酷な火災環境下においても使用することができる。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による放水銃遠隔制御装置において、輸送管を複数有し、複数の輸送管が一本の集合管に集約されているものである。
本実施の形態によれば、ホースリールによる輸送管の巻き取りと展開をより一層迅速に行うことができる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態は、第1又は第2の実施の形態による放水銃遠隔制御装置において、シリンダーは、容積室のそれぞれに外部と連通した連通路を有し、連通路に固定絞りが設けられているものである。
本実施の形態によれば、作動用流体の圧力が加えられたときにシリンダー内の空気が流体圧により自動的に連通路から排出されるため、消防隊員が消火活動を始める前にガス抜きを実施する手間を省き、消火活動をより早く開始することができる。
【0012】
本発明の第4の実施の形態は、第1から第3のいずれか一つの実施の形態による放水銃遠隔制御装置において、放水銃の稼働時において、シリンダーの容積室には、排出側の容積室を除き、作動用流体が継続して供給されるものである。
本実施の形態によれば、シリンダー内において火災の熱で発生する水蒸気や混入した空気を大気へ排出し、シリンダーをより安定的に制御することができる。
【0013】
本発明の第5の実施の形態は、第4の実施の形態による放水銃遠隔制御装置において、シリンダーは、ピストンの両側の受圧面積が等しいものである。
本実施の形態によれば、シリンダーに作動用流体による圧力をかけ続けても、ピストンを所望の位置に停止させることができるため、シリンダーによる放水銃の制御を安定的に行うことができる。
【0014】
本発明の第6の実施の形態は、第1から第5のいずれか一つの実施の形態による放水銃遠隔制御装置において、作動用流体は、水、空気、又は水と空気の混合体であるものである。
本実施の形態によれば、入手や取り扱いが比較的容易な流体を作動用流体として用いることができる。
【0015】
本発明の第7の実施の形態は、第1から第6のいずれか一つの実施の形態による放水銃遠隔制御装置において、第一継手は、輸送管に繋がる複数の流路を有するものである。
本実施の形態によれば、作動用流体を迅速に切替弁からシリンダーへ供給することができる。
【0016】
本発明の第8の実施の形態は、第1から第7のいずれか一つの実施の形態による放水銃遠隔制御装置において、第二継手は、差し金具と受け金具とを有し、差し金具と受け金具との結合が不意に解かれることを防止する不意離脱防止機構が設けられているものである。
本実施の形態によれば、第二継手を用いた輸送管等の結合及び解除を簡便に行えると共に、差し金具が受け金具から意図せず離脱してしまうことを防止できる。
【実施例0017】
以下、本発明の一実施例による放水銃遠隔制御装置について説明する。
図1は本実施例による放水銃遠隔制御装置の構成図、
図2は放水銃の概念図、
図3は放水銃の銃身の概念図である。
放水銃遠隔制御装置は、消火剤を放射する放水銃10と、ピストン21を有し放水銃10の向き又は流量の変更に用いるシリンダー20と、シリンダー20の作動制御に用いる切替弁30と、シリンダー20と切替弁30とを繋ぎ作動用流体が流れる可撓性の輸送管40と、輸送管40が巻回されるホースリール50と、切替弁30側に設けられた第一継手60と、シリンダー20側に設けられた第二継手70を備える。シリンダー20は放水銃10に取り付けられ、切替弁30は放水銃10から十分に離して配置される。
輸送管40を流れる作動用流体は、切替弁30を介して外部から供給される流体であり、シリンダー20の作動に用いられる。輸送管40は、例えば耐圧ナイロンチューブである。第一継手60には輸送管40の一端が接続され、第二継手70には輸送管40の他端が接続される。第一継手60と切替弁30は切替弁連絡管41で接続され、第二継手70とシリンダー20はシリンダー連絡管42で接続される。切替弁連絡管41と輸送管40とシリンダー連絡管42は、作動用流体が流れる一続きの流路を形成する。
【0018】
シリンダー20は、銃身11を左右(水平方向)に動かす第一シリンダー20Aと、ノズル12を上下(鉛直方向)に動かす第二シリンダー20Bと、ノズル12の放射流量を変える第三シリンダー20Cの三つが設けられている。また、切替弁30は、第一シリンダー20Aと二つの流路で繋がる第一切替弁30Aと、第二シリンダー20Bと二つの流路で繋がる第二切替弁30Bと、第三シリンダー20Cと二つの流路で繋がる第三切替弁30Cの三つが設けられている。
このように、切替弁連絡管41と輸送管40とシリンダー連絡管42とからなる一続きの流路は、一対のシリンダー20と切替弁30に対して二つずつ割り当てられている。
【0019】
各切替弁30には、弁90に一端が接続される供給管80から作動用流体として用いる流体が供給される。切替弁30は例えば電磁弁であり、消防隊員が持つコントローラ等から送信された信号に基づいて開閉し、作動用流体の供給と不供給との切り替えによりシリンダー20の作動を制御する。なお、切替弁30は、消防隊員が直接操作できる手動弁でもよい。
供給管80は、消防車に接続したホースから分岐させた構成とすることもでき、その場合は、消防車から送出される消火剤の一部を作動用流体として利用できる。シリンダー20の作動用流体として消防車の圧力水等を利用することで、様々な火事現場において作動用流体を容易に確保可能となる。
【0020】
各シリンダー20の内部はピストン軸22に軸支されたピストン21を境に二つの容積室に区切られており、両容積室それぞれにシリンダー連絡管42の一端が接続されている。
シリンダー20の各容積室には、外部と連通した連通路23が設けられ、連通路23には固定絞り24が配置されている。各容積室から大気につながり固定絞り24が介在する連通路23が設けられていることで、作動用流体の圧力が加えられたときにシリンダー20内の空気が流体圧により自動的に連通路23から排出されるため、消防隊員が消火活動を始める前にガス抜きを実施する手間を省き、消火活動をより早く開始することができる。また、連通路23から作動用流体の一部が継続的に排出されることにより、シリンダー20に一定流量の作動用流体を継続して供給することが可能となるため、特に作動用流体が水である場合は、火災環境下におけるシリンダー20の温度上昇を抑制することができる。
また、固定絞り24に代えて、或いは固定絞り24と併せて、微小流量の噴霧ノズルを連通路23に設け、作動用流体が水である場合は、排出される作動用流体がシリンダー20に噴霧されるようにすることもできる。この噴霧は、シリンダー20の温度上昇を抑制する自衛噴霧となる。
【0021】
作動用流体は、水、空気、又は水と空気の混合体であることが好ましい。これにより、入手や取り扱いが比較的容易な流体を作動用流体として用いることができる。
また、特に作動用流体を水とする場合、放水銃10が消火剤を放射している間は、シリンダー20の各容積室に、排出(排水)側となる容積室を除いて、水が継続して供給されるようにすることが好ましい。これにより、放水銃10の稼働時にシリンダー20内において火災の熱で発生する水蒸気や混入した空気が大気へ排出され、シリンダー20をより安定的に制御することができる。
シリンダー20は、ピストン21の両側の受圧面積が等しい形状としている。これにより、シリンダー20に作動用流体による圧力をかけ続けても、ピストン21を所望の位置に停止させることができるため、シリンダー20による放水銃10の制御を安定的に行うことができる。
【0022】
図2及び
図3に示すように、放水銃10にはシリンダー20が取り付けられる。放水銃10の銃身11は、第一シリンダー20Aのピストン21の往復動によって回転する旋回用回転部13と、第二シリンダー20Bのピストン21の往復動によって回転する俯仰用回転部14が設けられており、旋回と俯仰(起伏)の2自由度を有する。また、放水銃10のノズル12には、放射流量を変えるための第三シリンダー20Cが設けられている。
【0023】
図4は集合管に集約した輸送管を示す概念図、
図5はホースリールの概念図である。
すべての輸送管40は可撓性の集合管100内に収容されている。集合管100は、一端に集合管側オスねじ101を備え、他端に集合管側メスねじ102を備える。集合管側オスねじ101と集合管側メスねじ102は、それぞれ差し金具76の第二継手側メスねじ73(
図7参照)と第一継手60の第一継手側オスねじ63(
図6参照)に連結する。
集合管100はホースリール50に巻き取って収納可能であり、使用時にはホースリール50から集合管100を展開して先端(一端)を第二継手70の受け金具77(
図7参照)に接続する。
なお、集合管100は例えば消火活動に使用可能な保形ホースであり、ホースリール50は当該保形ホースを巻き取るホース巻き取り装置である。
ホースリール50の回転軸には回転自在のロータリ継手である第一継手60が片側外方へ突出して同軸に設けられており、ホースリール50の回転軸が回転すると第一継手60も回転する。第一継手60をロータリ継手としてホースリール50の回転軸と同軸に配置し、また複数の輸送管40を一本の集合管100に集約することにより、回転不能の継手を用いる場合や、輸送管40を個別にホースリール50に巻く場合と比べて、輸送管40の巻き取りと展開を迅速に行うことができる。
また、本実施例においては、集合管100と輸送管40との間や輸送管40同士の間に作動用流体を流している。これにより集合管100が輸送管の一つとしての役割も果たすため、集合管100内に配置する輸送管40の本数を一本減らすことができる。また、集合管100を流れる作動用流体が水である場合は、集合管100内に配置された輸送管40がその水で冷却されるため、耐熱性の向上にも寄与する。
また、集合管100には、火点を撮影するカメラ等に接続される通信ケーブルを収容することもできる。集合管100に収容することにより、通信ケーブルを熱や浸水等から保護して火点の画像データ等を安定して消防隊員等に伝送することができる。
【0024】
図6は第一継手の内部構造を示す図である。
第一継手60は、一端が切替弁30に接続される切替弁連絡管41の他端が接続される切替弁連絡管継手61と、輸送管40の一端が接続される一端側輸送管継手62と、集合管側メスねじ102と接続する第一継手側オスねじ63を有し、内部には作動用流体が流れる第一流路64が輸送管40の数に対応して複数形成されている。また、周方向における第一流路64に隣接してOリング65が配置されている。なお、一端側輸送管継手62は計6個設けられているが、
図6ではその内の1個だけを図示している。
6個の切替弁連絡管継手61のうちの5個は第一継手60の長軸に対して垂直に設けられ、1個は第一継手側オスねじ63が設けられている端部とは反対の端部において第一継手60の長軸と平行に設けられている。また、6個の一端側輸送管継手62は、第一継手側オスねじ63が設けられている端部へ頭を向けて第一継手60の長軸と平行に設けられている。
第一継手60の長軸に対して垂直に設けられている5個の切替弁連絡管継手61のうち、第一継手側オスねじ63に近い方から数えて1番目と2番目には第一切替弁30Aにつながる切替弁連絡管41の他端が接続され、3番目と4番目には第二切替弁30Bにつながる切替弁連絡管41の他端が接続され、5番目には第三切替弁30Cにつながる切替弁連絡管41の他端が接続される。また、第一継手60の長軸と平行に設けられている1個の切替弁連絡管継手61には、第三切替弁30Cにつながる切替弁連絡管41の他端が接続される。
切替弁連絡管継手61から流入した作動用流体は、第一流路64を経て一端側輸送管継手62を通り、輸送管40へ流れる。なお、本実施例においては上述のように集合管100に輸送管としての機能も持たせており、第一継手60の長軸と平行に設けられている切替弁連絡管継手61から流入した作動用流体は、第一流路64を経て一端側輸送管継手62を通り、集合管100内の隙間へ流れるようにしている。
ロータリ継手である第一継手60は、第一継手側オスねじ63が設けられている側がホースリール50の回転に伴い回転する。回転しながら連続して作動用流体を通過させることも可能である。
また、各輸送管40に繋がる複数の流路を第一継手60が有することで、作動用流体を迅速に切替弁30からシリンダー20へ供給することができる。
【0025】
図7は第二継手の内部構造を示す図である。
第二継手70は、一端がシリンダー20に接続されるシリンダー連絡管42の他端が接続されるシリンダー連絡管継手71と、輸送管40の他端が接続される他端側輸送管継手72と、集合管側オスねじ101と接続する第二継手側メスねじ73を有し、内部には作動用流体が流れる第二流路74が輸送管40の数に対応して複数形成されている。また、周方向における第二流路74に隣接してOリング75が配置されている。なお、他端側輸送管継手72は計6個設けられているが、
図7ではその内の1個だけを図示している。
6個のシリンダー連絡管継手71のうちの5個は第二継手70の長軸に対して垂直に設けられ、1個は第二継手側メスねじ73が設けられている端部とは反対の端部において第二継手70の長軸と平行に設けられている。また、6個の他端側輸送管継手72は、第二継手側メスねじ73が設けられている端部へ頭を向けて第二継手70の長軸と平行に設けられている。
第二継手70の長軸に対して垂直に設けられている5個のシリンダー連絡管継手71のうち、第二継手側メスねじ73に近い方から数えて1番目と2番目には第一シリンダー20Aにつながるシリンダー連絡管42の他端が接続され、3番目と4番目には第二シリンダー20Bにつながるシリンダー連絡管42の他端が接続され、5番目には第三シリンダー20Cにつながるシリンダー連絡管42の他端が接続される。また、第二継手70の長軸と平行に設けられている1個のシリンダー連絡管継手71には、第三シリンダー20Cにつながるシリンダー連絡管42の他端が接続される。
他端側輸送管継手72から流入した作動用流体は、第二流路74を経てシリンダー連絡管継手71を通り、シリンダー連絡管42を流れる。なお、集合管100内の隙間を流れてきた作動用流体は、第二継手70の長軸と平行に設けられているシリンダー連絡管継手71を通って第三シリンダー20Cにつながるシリンダー連絡管42へ流れる。
【0026】
第二継手70は、差し金具76と受け金具77を備える差込式の継手である。差込式の継手は結合及び解除が簡便である反面、衝撃やホースの引っ掛かり等により押し輪78が解除の方向に動いて意図せず結合が解除されてしまう可能性がある。そのため第二継手70には、差し金具76と受け金具77との結合が不意に解かれることを防止する不意離脱防止機構を備えることが好ましい。
不意離脱防止機構としては、例えば、特開2016-014477号公報に記載されているように、差し金具76の外周面に滑り止め溝を設け、押し輪78の内周面と外周面との間に隙間を設けることが挙げられる。これにより、差し金具76が受け金具77から意図せず離脱してしまうことを防止できる。
【0027】
以上説明した放水銃遠隔制御装置を用いることで、放水銃による放射を担当する消防隊員は、火点付近に放水銃10を設置してコントローラ等により遠隔操作することで、輻射熱や熱気により被害を受けることなく火点に向けて消火剤を放射し続けることができる。
また、放水銃遠隔制御装置は、放水銃10の方向転換や放射量調節を水や空気等の流体圧を利用して行うため、高温や多量の水にさらされる過酷な火災環境下においても使用することができる。
また、切替弁30を放水銃10から十分離して設置可能であるため、高温や多量の水にさらされることによる切替弁30の故障を防止できる。また、操作を担当する消防隊員も放水銃10から十分離れて放水を制御することができる。