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  • 特開-雨水用分水器 図1
  • 特開-雨水用分水器 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092640
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】雨水用分水器
(51)【国際特許分類】
   E03B 3/03 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
E03B3/03 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207783
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】521559256
【氏名又は名称】株式会社日本エジソン
(74)【代理人】
【識別番号】100119367
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 理
(74)【代理人】
【識別番号】100142217
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 宜紀
(72)【発明者】
【氏名】田中 直彦
(57)【要約】
【課題】雨水を有効に利用でき、異物のない水を簡単に得られる雨水用分水器を提供することを目的とする。
【解決手段】
上述の課題を解決するため、雨水用分水器1は、雨水流入部2と、雨水排出部3と、雨水流入部2の下流において第1管4と第2管5に分岐する第1分岐部6と、雨水排出部3の上流において第1管4と第2管5が合流する合流部7と、第1管4の側面より雨水供給管8が分岐する第2分岐部9と、第2分岐部9と合流部7の間において第1管4に設けられ流路を開閉する開閉部材10と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水流入部と、
雨水排出部と
雨水流入部の下流において第1管と第2管に分岐する第1分岐部と、
雨水排出部の上流において第1管と第2管が合流する合流部と、
第1管の側面より雨水供給管が分岐する第2分岐部と、
第2分岐部と合流部の間において第1管に設けら流路を開閉する開閉部材と、を有する雨水用分水器。
【請求項2】
雨水流入部と、
雨水流入部の下流に設けられT型継手よりなる第1分岐部と、
第1分岐部において雨水流入部側と対向する口部に接続される第1管と、
第1分岐部において側部の口部に接続される第2管と、
第1管の中間部に設けられT型継手よりなる第2分岐部と、
第2分岐部において側部の口部に接続される雨水供給管と、
第2分岐部より下において第1管に設けらる開閉バルブと、
開閉バルブより下において第1管に設けられT型継手よりなりその側部の口部に第2管が接続される合流部と、
合流部において第1管と対向する口部に接続される直管よりなる雨水排出部を有するを有する雨水用分水器。
【請求項3】
第1管において開閉バルブの直上に設けられる部分が透明管である請求項2に記載の雨水用分水器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、雨水を有効利用するために雨樋に接続される雨水用分水器に関する。
【背景技術】
【0002】
雨樋は軒に沿った軒樋と、これに続く縦樋を有し、建築物の屋根に降った雨水を排水溝に導く。通常の雨樋では、軒樋によって集められた雨水は、縦樋を通してそのまま排水溝に排出されるので、雨水が活用されることはない。
【0003】
引用文献1には、筒状の雨水導入部、中間部及び放流水排出部を有する主管と、主管の一方側面に中心間隔をおいて穿設された一対の開口に連通された分岐部と合流部間を繋ぐ連結部を有する筒状のバイパス管と、分岐部と合流部間でバイパス管と重ならない他側面に穿設された開口に連通された筒状の利用水分岐管とを備え、中間部の分岐部との連通箇所近接位置に網が配設され、中間部の合流部との連通箇所寄り位置に中心部に排出口を有する受皿が配設され、利用水分岐管に着脱可能なろ材が充填された筒状のろ過室が装着され、利用水分岐管先端に主利用水排出口を備えた雨水利用樋が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-2077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の雨水利用樋によれば、屋根面に降った雨水は、軒樋から上部縦樋に流入し雨水導入部に到達し、網を通過し沈殿部を経て受皿の受け部に到達する。通常降雨量が少ない場合は、降雨開始と共に先ず屋根及び空中に滞留した粉塵、砂、落ち葉、ごみ、鳥類の糞等の異物が雨水と共に流下するので、生活用水等に利用することなく全部下水に排出される(同文献の0013段落)。この場合、異物を含む水だけでなく、全ての水が利用されることなく排出されてしまう。また、受皿に異物が詰まった場合に、異物の取り出しが容易ではない。特許文献1には、中間部の受皿側方位置に点検口が穿設されこと(0011段落、図5)、および、点検口を設けたことにより側方より容易に点検し、掃除用具により簡易に清掃作業が可能でる(0013段落)と記載されている。しかし、点検「口」という穴を「穿設」するとなると、受皿より下に設けなければならない。受皿より上だと、その点検口から水が漏れ出すので、利用水分岐管へ供給されなくなる。一方、異物は受皿の上に溜まるので、受皿の下にある点検口からは異物の溜まった状況を確認することも、あるいは、溜まった異物を取り出すこともできない。
【0006】
この発明は、雨水を有効に利用でき、異物のない水を簡単に得られる雨水用分水器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するため、この発明の雨水用分水器は、雨水流入部と、雨水排出部と、雨水流入部の下流において第1管と第2管に分岐する第1分岐部と、雨水排出部の上流において第1管と第2管が合流する合流部と、第1管の側面より雨水供給管が分岐する第2分岐部と、第2分岐部と合流部の間において第1管に設けら流路を開閉する開閉部材と、を有する。
【0008】
また、第1分岐部と第2分岐部と合流部をそれぞれT型継手とし、第1分岐部において雨水流入部側と対向する口部に第1管を、側部の口部に第2管をそれぞれ接続し、第2分岐部の側部の口部に雨水供給管を接続し、合流部の第1管と対向する口部雨水排出部を接続し、側部の口部に第2管を接続することによって、既成の配管用の組み合わせに構成することができる。さらに、第1管において開閉バルブの直上に設けられる部分が透明管とすることによって、開閉バルブにおける異物の堆積状況を容易に確認することができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明の雨水用分水器は、縦樋の途中に取り付けることによって、雨水を有効利用することができる。雨水に含まれる異物は第1管の途中に設けられた開閉装置の上に溜まり、その上澄みのきれいな水を利用することができる。開閉装置の上に溜まった異物は開閉装置を開くことによって、簡単に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】雨水用分水器を示す断面図である。。
図2】雨水用分水器の使用例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明を実施するための形態について図面に基づいて説明する。図1は雨水用分水器を示す断面図である。雨水用分水器1は、雨水流入部2と、雨水排出部3と、第1管4と第2管5を有する。雨水流入部2の下流には、第1管4と第2管5に分岐する第1分岐部6が設けられる。また、雨水排出部3の上流には、第1管4と第2管5が合流する合流部7が設けられる。さらに、第1管4の途中には、第1管4の側面より雨水供給管8が分岐する第2分岐部9が設けられ、第2分岐部9と合流部7の間には第1管4の流路を開閉する開閉部材10が設けられている。
【0012】
雨水用分水器1の構造について、さらに詳しく説明する。雨水用分水器1は、最上部を雨水流入部2とし、最下部を雨水排出部3とし、その間に主管である第1管4が設けられている。そして、雨水用分水器1の上部分には第1分岐部6があり、そこから側方にバイパス管である第2管5が分岐する。そして、雨水用分水器1の下端付近には合流部7があり、第2管5が側方に接続される。すなわち、第2管5は第1分岐部6に始まり、合流部7で終わる。この間は、第1管4と第2管5が並列する。
【0013】
第1分岐部6は3本の管を接続できる継手であり、雨水流入部2の下流に設ける。雨水流入部2の下端に設けてもよく、雨水流入部2に続いて第1管4の上部分を設けた上でさらにその下に設けてもよい。本例では第1管4の上部分を設けている。この第1分岐部6には、雨水流入部2の下端または第1管4の上部分と第1管4の中間部分が接続される他に、第2管5の開始部が接続される。つまり、この第1分岐部6において第1管4と第2管5に分岐する。雨水流入部2または第1管4の上部分と中間部分は方向を変えずになるべく真直ぐに並ぶのが好ましく、第2管5はその並びに対して曲がるように方向が変化することが好ましく、図1に示すように直角に曲がるように接続されることが好ましい。
【0014】
合流部7も3本の管を接続できる継手であり、第1管4の下部分と雨水排出部3が真っ直ぐに並ぶように接続され、側方を向いた口には第2管5の終端部が接続される。つまり、この第1分岐部6において第1管4と第2管5が合流する。
【0015】
さらに、第1管4は第2分岐部9においても、雨水供給管8と分岐する。第2分岐部9も3本の管を接続できる継手であり、その側方の口に雨水供給管8の一端部が接続される。第2分岐部9は第1分岐部6よりも低く、しかも、開閉部材10よりも高い位置に設けられる。
【0016】
雨水供給管8は雨水を利用するために供給する管である。金属や硬質プラスチックの管でもよいが、ビニールホースやジャバラ管などの柔軟な管でもよい。雨水供給管8の他端部は雨水貯蔵部材25に繋がっている。
【0017】
第1管4には第2分岐部9よりも下に開閉部材10が設けられる。開閉部材10は第1管4の外から開閉を操作できるものであればよく、例えば電磁弁でもよいが、簡易な構造の開閉バルブが好ましい。開閉部材10が閉じたときは、第1管4の流路は遮断される。このとき、第1管4の第2分岐部9から開閉部材10にかけて、雨水の一時貯留部11が形成される。この箇所においては、第1管4は内部が観察できるようになっていることが好ましい。開閉部材10が開いたときは流路も開く。
【0018】
図2は雨水用分水器の使用例を示す概念図である。建築物20の軒に沿って軒樋21が設けられており、屋根22に降った雨水は軒樋21に集められる。また、建築物20の外壁に沿って縦樋23が設けられていて、縦樋23の上端は軒樋21に繋がっている。軒樋21に集められた雨水は縦樋23を通って下降する。これらは、通常の雨樋とかわることはない。
【0019】
この発明の雨水用分水器1は縦樋23の途中に設けられる。縦樋23の上側部分23aは軒樋21に接続されている。この上側部分23aの下端部に雨水用分水器1の雨水流入部2の上端部が接続される。また、縦樋23の下側部分23bは排水溝24につながっている。この下側部分23bの上端部に雨水用分水器1の雨水排出3の下端部が接続される。
【0020】
雨水用分水器1の雨水供給管8は雨水貯蔵部材25に接続されている。雨水貯蔵部材25は上部が密閉されたタンクでもよい。また、上部が開放されている水槽や、蓋などで開閉可能に閉じられるような容器であってもよい。上部が密閉されていない容器の場合は、その上縁の高さは、第1分岐部6の位置よりも高く設定される。また、雨水貯蔵部材25の下部には、貯蔵された水を取り出すための給水口26が設けられている。
【0021】
次に、雨水用分水器1の作用について説明する。屋根に降った雨水は、軒樋21を通り、さらに縦樋の上側部分を通って雨水用分水器1の雨水流入部2に流入する。雨の降り始めの時点で、雨水用分水器1のいずれの部分にも雨水はない状態であるとする。このとき、雨水は第1分岐部6において第1管4へ流入する。さらに、第2分岐部9においても第1管4へ流入する。
【0022】
第1管4の下方部分、すなわち、第2分岐部9から開閉部材10までの部分は雨水の一時貯留部11となっている。最も初期の雨水は、屋根22や軒樋21に積もった埃や砂などの異物を多く含んでいる場合がある。その雨水はまずこの一時貯留部11に流入する。ここで、開閉部材10は閉じた状態になっており、下向きの流路は遮断されている。雨水に含まれている異物は、開閉部材10の上に沈殿し、一時貯留部11に留まる。
【0023】
そして、雨水が一時貯留部11を満たし、水位が第2分岐部9の高さに達した後は、続く雨水は雨水供給管8に流入する。こうして、異物の少ない清潔な雨水が雨水供給管8を通って、雨水貯蔵部材25に供給される。この場合も、流入してくる雨水に含まれる異物の多くは第2分岐部9において一時貯留部11の方に進行し、開閉部材10の上に沈殿していく。
【0024】
雨水が一時貯留部11を満たした後は、雨水供給管8を介して雨水貯蔵部材25に達する流路が形成される。雨水は第2管5へはほとんど流れず、第1管4や雨水供給管8を介して雨水貯蔵部材25に供給される。雨水が雨水貯蔵部材25を満たすとき(タンク式の場合)や水位が第2分岐部9の高さに達した時(上部開放の容器の場合)は、雨水供給管8へ流れなくなり、第1管4の水位が上昇する。そして、水位が第1分岐部6に達すると、雨水は第2管5に流入し、合流部7を通って、雨水排出部8から排水溝24に排出される。したがって、雨水が一時貯留部11を満たしたり、あるいは上限の高さまで水位が達した場合に、特に切り替え作業など行うことなく、余分な雨水を排出することができる。この間に、雨水貯蔵部材11の水を使用すれば、雨水貯蔵部材25の水位が下がるが、その場合には雨水貯蔵部材25の水位が回復するまで、雨水は雨水供給管8に流れる。
【0025】
雨水貯蔵部材25に貯められた雨水は、異物を取り除かれたきれいな水であり、さまざまな用途に再利用できる。本例では、雨水貯蔵部材25は屋内に設けられているので、例えば、水洗トイレや洗濯用などに使用してもよい。また、雨水貯蔵部材25は屋外に設けてもよく、洗車や植物栽培などに使用してもよい。
【0026】
開閉装置10を閉じた状態を継続すると、一時貯留部11に異物が沈殿し続ける。この場合、開閉装置10を一時的に開いて、一時貯留部11の水を下に排出することによって、異物を簡単に排出できる。異物を含んだ水は、雨水排出部3を経て排出される。
【0027】
さらに、雨水用分水器の実施例について説明する。雨水用分水器1は上述の構造および作用を有するが、これを配管用として普及している一般的な部材を組み合わせて構成することができる。
【0028】
図1に示す例では、雨水流入部2と雨水排出部3は円筒の塩ビ管を使用している。第2管5は上下の水平管5a,5bと垂直管5cは円筒の塩ビ管を使用し、これらを塩ビのエルボ継手5d,5eで連結している。第1管4も塩ビ管が使用されているが、一時貯留部11には透明パイプが使用されていて、異物の溜まった状況が外部から観察できるようになっている。第1管4と第2管5は同じ太さでもよいが、本例では第2管5の方には第1管4よりも細い管を使用しており、第1管4から突き出す距離を短くし、雨水用分水器1の全体の幅を小さくしている。雨水供給管8は曲げることが可能なジャバラ管を使用している。
【0029】
第1分岐部6、合流部7,第2分岐部9には、塩ビのT字継手が使用されている。また、雨水流入部2の上端部および雨水排出部3の下端部には角丸継手が取り付けられていて、相手方用の接続箇所は、設置される縦樋と寸法に合せている。開閉装置10には、塩ビ配管用の開閉バルブを使用し、特に簡易バルブを使用している。簡易バルブを使用することによって、ハンドルの操作で簡単に開閉を行うことができる。
【0030】
以上、配管用の一般的な部材によって構成している。これらの部材は安価で、しかも入手が容易である。水量や設置場所などの条件に合せて、適切な部材を選択し、適宜組み合わせることによって、簡単に施工することができる。
【0031】
雨水流入部2に透明パイプを使用するので、異物の溜まり具合が簡単に観察できる。そして、異物が溜まったことを確認したら、簡易バルブのハンドルを操作して流路を開き、異物を簡単に排出することができる。
【符号の説明】
【0032】
1.雨水用分水器
2.雨水流入部
3.雨水排出部
4.第1管
5.第2管
6.第1分岐部
7.合流部
8.雨水供給管
9.第2分岐
10.開閉部材
11.一時貯留部
20.建築物
21.軒樋
22.屋根
23.縦樋(竪樋)
24.排水溝
25.雨水貯蔵部材
26.給水口
図1
図2