(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092658
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】検出装置及び厚さ測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 7/06 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
G01B7/06 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207811
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】時岡 良宜
【テーマコード(参考)】
2F063
【Fターム(参考)】
2F063AA16
2F063BA30
2F063BB02
2F063BB05
2F063BC02
2F063DA01
2F063DA02
2F063DA06
2F063DD03
2F063GA08
(57)【要約】
【課題】渦電流を用いた測定に与える影響を低減しつつ、受信アンプを保護する。
【解決手段】処理装置6は、直列接続された第1検出コイル13及び第2検出コイル14と、第1検出コイル13及び第2検出コイル14が接続された受信アンプ51と、第1検出コイル13及び第2検出コイル14に並列に接続された保護回路52とを備えている。保護回路52は、直列接続された第1抵抗素子53a及び第1ダイオード54aを含み、第1検出コイル13の第1端13aと第2端13bとの間に第1検出コイル13と並列に接続された第1保護回路52Aと、直列接続された第2抵抗素子53b及び第2ダイオード54bを含み、第2検出コイル14の第1端14aと第2端14bとの間に第2検出コイル14と並列に接続された第2保護回路52Bとを有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁コイルによって対象物に誘起された渦電流を検出する、直列接続された第1検出コイル及び第2検出コイルと、
前記第1検出コイル及び前記第2検出コイルが接続された受信アンプと、
前記第1検出コイル及び前記第2検出コイルに並列に接続された保護回路とを備え、
前記第1検出コイルの第1端は、前記受信アンプの非反転入力端子に接続され、
前記第1検出コイルの第2端は、前記第2検出コイルの第1端に接続され、
前記第2検出コイルの第2端は、前記受信アンプの反転入力端子に接続され、
前記保護回路は、直列接続された第1抵抗素子及び第1ダイオードを含み、前記第1検出コイルの前記第1端と前記第2端との間に前記第1検出コイルと並列に接続された第1保護回路と、直列接続された第2抵抗素子及び第2ダイオードを含み、前記第2検出コイルの前記第1端と前記第2端との間に前記第2検出コイルと並列に接続された第2保護回路とを有する検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検出装置において、
前記第1検出コイルの前記第2端及び前記第2検出コイルの前記第1端は、コモン線に接続されている検出装置。
【請求項3】
励磁コイルによって対象物に誘起された渦電流を検出する検出コイルと、
非反転入力端子に前記検出コイルの第1端が接続され、反転入力端子に前記検出コイルの第2端が接続された受信アンプと、
前記検出コイルの前記第1端と前記第2端との間に前記検出コイルと並列に接続された保護回路とを備え、
前記保護回路は、直列接続された抵抗素子及びダイオードを含む検出装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1つに記載の検出装置と、
前記受信アンプの出力電圧に基づいて前記対象物の厚さを求める厚さ導出部とを備える厚さ測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、検出装置及び厚さ測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、対象物に生じた渦電流を検出コイルで検出する装置が知られている。例えば、特許文献1には、コイル部が交流磁場を発生させて対象物に渦電流を誘起すると共に、対象物に誘起された渦電流をコイル部で検出する装置が開示されている。
【0003】
この装置においては、コイル部によって検出された誘導電圧は、検出部に入力され、検出部が出力波形の変化を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述のような渦電流の検出では、検出コイルに生じる誘導起電力を検出する。特に大きな渦電流が発生した直後には、検出コイルに大きな誘導起電力が生じる。その場合、検出コイルが接続された受信アンプにも大きな電圧が入力されることになる。
【0006】
受信アンプを大きな電圧から保護するために、保護回路を設けることが考えられる。しかし、保護回路は、渦電流を用いた測定に影響を与える虞がある。
【0007】
ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、渦電流を用いた測定に与える影響を低減しつつ、受信アンプを保護することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに開示された検出装置は、励磁コイルによって対象物に誘起された渦電流を検出する、直列接続された第1検出コイル及び第2検出コイルと、前記第1検出コイル及び前記第2検出コイルが接続された受信アンプと、前記第1検出コイル及び前記第2検出コイルに並列に接続された保護回路とを備え、前記第1検出コイルの第1端は、前記受信アンプの非反転入力端子に接続され、前記第1検出コイルの第2端は、前記第2検出コイルの第1端に接続され、前記第2検出コイルの第2端は、前記受信アンプの反転入力端子に接続され、前記保護回路は、直列接続された第1抵抗素子及び第1ダイオードを含み、前記第1検出コイルの前記第1端と前記第2端との間に前記第1検出コイルと並列に接続された第1保護回路と、直列接続された第2抵抗素子及び第2ダイオードを含み、前記第2検出コイルの前記第1端と前記第2端との間に前記第2検出コイルと並列に接続された第2保護回路とを有する。
【0009】
また、ここに開示された検出装置は、励磁コイルによって対象物に誘起された渦電流を検出する検出コイルと、非反転入力端子に前記検出コイルの第1端が接続され、反転入力端子に前記検出コイルの第2端が接続された受信アンプと、前記検出コイルの前記第1端と前記第2端との間に前記検出コイルと並列に接続された保護回路とを備え、前記保護回路は、直列接続された抵抗素子及びダイオードを含む。
【0010】
ここに開示された厚さ測定装置は、前記検出装置と、前記受信アンプの出力電圧に基づいて前記対象物の厚さを求める厚さ導出部をさらに備える。
【発明の効果】
【0011】
前記検出装置によれば、渦電流を用いた測定に与える影響を低減しつつ、受信アンプを保護することができる。
【0012】
前記厚さ測定装置によれば、渦電流を用いた測定に与える影響を低減しつつ、受信アンプを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】
図2は、処理装置の制御部の制御系統の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、演算装置の制御部の制御系統の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、渦電流に対応する電圧信号V(t)の時間変化を示すグラフである。
【
図7】
図7は、励磁部に入力されている励磁信号を示すグラフである。
【
図8】
図8は、第1検出コイル及び第2検出コイルに発生する誘導電圧を示すグラフである。
【
図9】
図9は、受信アンプの出力電圧を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、厚さ測定システム100のブロック図である。厚さ測定システム100は、プローブ1と、厚さ測定装置10とを備えている。厚さ測定装置10は、パルス渦電流探傷(PEC:Pulsed Eddy Current)によって対象物9の厚さを測定する。厚さ測定装置10は、プローブ1を制御する処理装置6と対象物9の厚さを求める演算装置8とを備えている。例えば、対象物9は、蒸気又はドレンが流通する金属製の配管である。配管は、円管状に形成されている。
【0016】
プローブ1は、対象物9に渦電流を発生させ且つ発生した渦電流を検出するために用いられる。プローブ1は、非接触型のプローブであり、対象物9に近接して配置される。尚、「非接触型」とは、非接触でも使用可能であることを意味し、接触状態での使用を除外するものではない。プローブ1は、対象物9の表面に対向するように設置される。例えば、プローブ1は、断熱性を有するスペーサ(図示省略)を介して対象物9に設置される。
【0017】
プローブ1は、変動磁場を形成することによって対象物9に渦電流を発生させる。また、プローブ1は、対象物9に発生した渦電流の変化を誘導電圧として検出する。具体的には、プローブ1は、励磁電流による磁束で対象物9に渦電流を誘起させる励磁コイル11と、対象物9の渦電流を検出する検出コイル12とを備える。プローブ1は、励磁コイル11によって対象物9に渦電流を誘起させ、誘起した渦電流を検出コイル12で検出する。プローブ1は、励磁コイル11及び検出コイル12を収容するケーシングをさらに備えていてもよい。
【0018】
この例では、励磁コイル11は、第1励磁コイル11A及び第2励磁コイル11Bを含んでいる。検出コイル12は、第1検出コイル13及び第2検出コイル14を含んでいる。
【0019】
詳しくは、第1励磁コイル11Aの軸心と第1検出コイル13の軸心とが一直線状になるように、第1励磁コイル11Aと第1検出コイル13とが配列されている。このとき、第1検出コイル13の方が第1励磁コイル11Aよりも対象物9の近くに配置されている。第2励磁コイル11B及び第2検出コイル14の位置関係も同様である。尚、第1励磁コイル11Aと第2励磁コイル11Bとを区別しない場合には、単に「励磁コイル11」と称する。第1検出コイル13と第2検出コイル14とを区別しない場合には、単に「検出コイル12」と称する。
【0020】
さらに、プローブ1は、励磁コイル11及び検出コイル12に挿入されたコア15を備えていてもよい。コア15は、全体として概ねU字状に形成されている。より詳しくは、コア15は、パーマロイで形成された、概ねU字状の複数の薄板が積層されて形成されている。コア15の一方の端部における直線状の部分は、第1励磁コイル11A及び第1検出コイル13に挿入されている。コア15の他方の端部における直線状の部分は、第2励磁コイル11B及び第2検出コイル14に挿入されている。コア15は、2組の励磁コイル11及び検出コイル12を磁気的に接続している。
【0021】
励磁コイル11は、電流が印加されることによって、その軸心の方向に磁場を形成する。第1励磁コイル11Aと第2励磁コイル11Bとは、軸心の方向において互いに反対向きの磁場、即ち、対象物9に対して反対向きの磁場を形成するように電流が印加される。その結果、コア15には、コア15の長手方向に沿った磁場が形成される。すなわち、コア15の一方の端部がN極となるときには、コア15の他方の端部はS極となる。逆に、コア15の一方の端部がS極となるときには、コア15の他方の端部はN極となる。例えば、第1励磁コイル11Aから対象物9へ向かって磁束が発生し、対象物9から第2励磁コイル11Bへ向かって磁束が発生する。詳しくは、第1励磁コイル11Aから発せられる大部分の磁束は、第1励磁コイル11Aの軸心の方向に出て対象物9内へ入り、対象物9内を略円弧状に通過し、第2励磁コイル11Bの軸心の方向へ向かい第2励磁コイル11Bに入っていく。励磁コイル11に印加する電流を変動させることによって、対象物9に発生する磁場が変動し、対象物9に渦電流が発生する。
【0022】
一方、対象物9のうち検出コイル12の近傍の部分に発生した渦電流によって、検出コイル12を貫通する磁束が形成される。検出コイル12を貫通する磁束が変化すると、検出コイル12に誘導起電力が発生する。検出コイル12は、この誘導起電力を検出することによって、対象物9の渦電流を検出する。つまり、検出コイル12によって誘導起電力を検出することを、渦電流を検出するともいう。尚、第1検出コイル13を貫通する磁束と第2検出コイル14を貫通する磁束とは、対象物9に対して反対向きとなる。
【0023】
処理装置6は、プローブ1を用いて、対象物9に渦電流を発生させ且つ発生した渦電流を検出する。処理装置6は、検出装置の一例である。演算装置8は、処理装置6によって検出された渦電流の継続時間(詳しくは後述するが、渦電流が急激に減衰するまでの時間)に基づいて対象物9の厚さを求める。
【0024】
処理装置6は、例えば、対象物9に近接して配置される。例えば、処理装置6は、スペーサを介して対象物9上に設置される。処理装置6は、送信部61と受信部62と通信部65と制御部66と記憶部67とを有している。
【0025】
送信部61は、励磁コイル11にパルス状の励磁電流を印加する。送信部61は、パルス発生器61aと送信アンプ61bとを有している。パルス発生器61aは、制御部66からの指令に基づいてパルス信号を発生する。送信アンプ61bは、パルス発生器61aからのパルス信号を増幅して、励磁電流として励磁コイル11へ出力する。
【0026】
受信部62は、対象物9の渦電流に応じて検出コイル12に発生する誘導起電力を受信する。受信部62は、検出コイル12に発生する電圧が入力され、該電圧を増幅する受信アンプ51を少なくとも有している。受信部62は、電圧信号にフィルタ処理を施すフィルタをさらに有していてもよい。
【0027】
通信部65は、外部機器と無線通信を行う。例えば、通信部65は、受信部62によって検出された電圧信号(即ち、検出信号)を演算装置8に送信する。
【0028】
制御部66は、処理装置6の全体を制御する。制御部66は、各種の演算処理を行う。例えば、制御部66は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサで形成されている。制御部66は、MCU(Micro Controller Unit)、MPU(Micro Processor Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、PLC(Programmable Logic Controller)、システムLSI等で形成されていてもよい。
【0029】
例えば、制御部66は、送信部61に所定期間だけ励磁電流を出力させる。制御部66は、励磁電流の出力停止後に受信部62を介して検出信号を取得する。制御部66は、受信部62からの検出信号を記憶部67に記憶させ、記憶部67に記憶された検出信号を通信部65を介して演算装置8に適宜、送信する。
【0030】
記憶部67は、制御部66で実行されるプログラム及び各種データを格納している。例えば、記憶部67は、制御プログラムが格納されている。記憶部67は、不揮発性メモリ、HDD(Hard Disc Drive)又はSSD(Solid State Drive)等で形成される。
【0031】
図2は、処理装置6の制御部66の制御系統の構成を示すブロック図である。制御部66は、記憶部67から制御プログラムをメモリに読み出して展開することによって、各種機能を実現する。具体的には、制御部66は、励磁コイル11に励磁電流を印加して対象物9に渦電流を誘起させる励磁部71と、対象物9の渦電流を検出コイル12を介して検出する検出部72として機能する。
【0032】
励磁部71は、送信部61に励磁コイル11へ励磁電流を印加させる。具体的には、励磁部71は、パルス発生器61aに指令を出力し、パルス発生器61aにパルス信号を発生させる。その結果、励磁電流が送信アンプ61bから励磁コイル11へ印加される。
【0033】
検出部72は、対象物9の渦電流として、渦電流に対応する電圧信号を検出する。具体的には、検出部72は、検出コイル12の誘導起電力に対応する電圧信号を検出する。さらに詳しくは、検出部72は、励磁コイル11への励磁電流の印加が停止されてから所定の期間、電圧信号の検出を継続する。つまり、検出部72は、励磁コイル11への励磁電流の印加が停止されてからの対象物9の渦電流の計時変化(即ち、過渡変化)を検出している。検出部72は、検出された渦電流、即ち、電圧信号を記憶部67に保存する。以下、説明の便宜上、検出部72によって検出された電圧信号を単に「渦電流」と称する場合がある。例えば、記憶部67に保存された、渦電流に対応する電圧信号も単に「渦電流」と称する。
【0034】
演算装置8は、コンピュータ又はコンピュータネットワーク(所謂、クラウド)で形成されている。演算装置8は、
図1に示すように、通信部81と制御部82と記憶部83とを有している。
【0035】
通信部81は、外部機器と無線通信を行う。例えば、通信部81は、処理装置6からの信号等を受信する。
【0036】
制御部82は、演算装置8の全体を制御する。制御部82は、各種の演算処理を行う。例えば、制御部82は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサで形成されている。制御部82は、MCU(Micro Controller Unit)、MPU(Micro Processor Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、PLC(Programmable Logic Controller)、システムLSI等で形成されていてもよい。
【0037】
記憶部83は、制御部82で実行されるプログラム及び各種データを格納している。例えば、記憶部83は、制御プログラムが格納されている。記憶部83は、不揮発性メモリ、HDD(Hard Disc Drive)又はSSD(Solid State Drive)等で形成される。また、記憶部83は、処理装置6から送信される信号等を保存する。具体的には、記憶部83は、処理装置6によって取得された対象物9の渦電流を保存する。
【0038】
図3は、演算装置8の制御部82の制御系統の構成を示すブロック図である。制御部82は、記憶部83から制御プログラムをメモリに読み出して展開することによって、各種機能を実現する。具体的には、制御部82は、厚さ導出部84として機能する。
【0039】
厚さ導出部84は、対象物9の渦電流の継続時間に基づいて対象物9の厚さを求める。詳しくは詳述するが、励磁コイル11によって対象物9に誘起された渦電流は、対象物9の表面(プローブ1が対向している面)から裏面に浸透し、裏面に到達すると急激に減衰する。対象物9の渦電流の継続時間とは、渦電流が対象物9に誘起されてから急激に減衰するまでの時間である。対象物9の渦電流の継続時間は、対象物9の厚さと相関がある。
【0040】
厚さ導出部84は、処理装置6によって検出された渦電流(具体的には、電圧信号)の継続時間を求める。厚さ導出部84は、継続時間と厚さとの相関関係に基づいて、継続時間から対象物9の厚さを求める。
【0041】
ここで、渦電流と対象物9の厚さとの関係について詳しく説明する。
図4は、渦電流に対応する電圧信号V(t)の時間変化を示すグラフである。
図4のグラフは、両対数グラフである。
図4において、電圧信号V0(t)は、厚さd0を有する対象物9の電圧信号であり、電圧信号V1(t)は、厚さd0よりも薄い厚さd1を有する対象物9の電圧信号である。
【0042】
渦電流は、対象物9に浸透していくのに従って減衰していく。渦電流は、対象物9の表面(プローブ1が対向している面)から裏面に到達するまでの間は徐々に減衰し、裏面に到達すると急激に減衰する。電圧信号V(t)も渦電流と同様の変化を示す。つまり、電圧信号V(t)の過渡変化は、渦電流の過渡変化に相当する。渦電流が対象物9の裏面に達するまでの間の電圧信号V(t)の変化は、両対数グラフ上では直線的(線形的)に表される。その後、電圧信号V(t)は、急激に減衰していく。このように変化する電圧信号V(t)は、以下の式(1)のように表される。
【0043】
【数1】
ここで、Aは、受信アンプ51の増幅率である。nは、電圧信号V(t)の減衰の程度に関連する定数であり、-nは、両対数グラフにおける電圧信号V(t)の傾きを表す。
【0044】
式(1)からもわかるように、電圧信号V(t)は、徐々に減衰するものの時間τまでは継続し、時間τにおいて急激に減衰する。説明の便宜上、τを「継続時間」と称する。継続時間τは、以下の式(2)で表わされる。
【0045】
τ=σμd2 ・・・(2)
ここで、σは、対象物9の導電率であり、μは、対象物9の透磁率であり、dは、対象物9の厚さである。
【0046】
つまり、継続時間τは、対象物9の厚さdに依存して変化する。対象物9の導電率σ及び透磁率μが一定であると仮定すると、継続時間τは、対象物9の厚さdに依存して変化する。また、継続時間τ及び厚さdが変化しても、τ/d2は、一定である。そのため、既知の厚さd0に対する継続時間τ0と、未知の厚さdに対する継続時間τとがわかれば、以下の式(3)に基づいて、未知の厚さdを求めることができる。式(3)、既知の厚さd0及び継続時間τ0は、記憶部83に保存されている。
【0047】
【数2】
例えば、
図4において電圧信号V0(t),V1(t)を比較すると、厚さd0の対象物9の電圧信号V0(t)は、継続時間τ0まで継続する。対象物9の厚さdがd0からd1に減少すると、継続時間τは、τ0からτ1に減少する。尚、電圧信号V(t)のうち両対数グラフで直線状の部分の変化態様は、式(1)からわかるように厚さdに依存しないので、電圧信号V0(t),V1(t)で実質的に同じである。厚さd0及び継続時間τ0,τ1を式(3)に代入することによって、厚さd1を求めることができる。
【0048】
このような厚さ測定についてフローチャートを用いてさらに詳細に説明する。
図5は、厚さ測定のフローチャートである。
【0049】
厚さ導出部84は、厚さ測定のフローチャートのステップS101において所定の測定周期が到来したか否かを判定する。測定周期は、対象物9の厚さ測定を求める周期である。測定周期が到来していない場合には、厚さ導出部84は、ステップS101の判定を繰り返して、測定周期の到来を待機する。
【0050】
測定周期が到来すると、厚さ導出部84は、処理装置6に指令を出力して、処理装置6に測定データを取得させる。測定データは、対象物9の厚さ測定を行うためのデータであり、具体的には、対象物9の渦電流である。具体的には、処理装置6が演算装置8からの指令を受けると、励磁部71は、ステップS102において、励磁コイル11へ励磁電流を印加して励磁する。励磁コイル11は、励磁電流の印加によって軸心の方向へ磁場を形成する。一方の励磁コイル11と他方の励磁コイル11とは、軸心の方向において互いに反対向きの磁場を形成する。例えば、一方の励磁コイル11から対象物9へ向かって磁束が発生し、対象物9から他方の励磁コイル11へ向かって磁束が発生する。
【0051】
続いて、ステップS103において、励磁部71は、励磁電流の出力を停止させ、検出部72は、対象物9に発生した渦電流の検出を開始する。検出部72は、電圧信号の検出を所定期間継続する。こうして、検出部72は、検出コイル12の誘導起電力の過渡変化(経時変化)、即ち、対象物9に発生する渦電流の過渡変化を検出する。
【0052】
処理装置6は、測定データとしての渦電流を演算装置8へ送信する。演算装置8は、受信した渦電流を記憶部83に保存する。
【0053】
続いて、厚さ導出部84は、ステップS104において、記憶部83に保存された渦電流の継続時間τを求める。さらに、厚さ導出部84は、ステップS105において、継続時間τを式(3)に代入して、対象物9の厚さdを求める。
【0054】
その後、厚さ導出部84は、ステップS106において、厚さ測定を終了するか否かを判定する。例えば、厚さ導出部84は、厚さ測定の終了指令が入力されているか否かを判定する。例えば、ユーザが演算装置8を操作して、厚さ測定の終了を入力する。終了指令が入力されていない場合には、厚さ導出部84は、ステップS101へ戻って、次の測定周期が到来したか否かを判定する。次の測定周期が到来すると、測定データが再び取得され、測定データに基づいて対象物9の厚さdが求められる。つまり、演算装置8は、測定周期ごとに測定データの取得及び対象物9の厚さdの導出を繰り返す。
【0055】
ステップS106において、終了指令が入力されている場合には、厚さ測定が終了される。
【0056】
このように、厚さ測定装置10は、対象物9に渦電流を発生させると共に発生した渦電流を検出し、渦電流の継続時間τに基づいて対象物9の厚さdを求める。
【0057】
続いて、受信部62の構成についてさらに詳しく説明する。
図6は、受信部62の回路図である。
【0058】
受信部62は、受信アンプ51と保護回路52とを有している。受信アンプ51には、第1検出コイル13及び第2検出コイル14が接続されている。保護回路52は、第1検出コイル13及び第2検出コイル14に並列に接続されている。換言すると、保護回路52は、受信アンプ51に並列に接続されている。
【0059】
受信アンプ51は、非反転入力端子(+)と反転入力端子(-)と出力端子とを有するオペアンプである。受信アンプ51には、正電源と負電源とが接続されている。
【0060】
第1検出コイル13と第2検出コイル14とは、直列に接続されている。詳しくは、第1検出コイル13は、一端である第1端13aと他端である第2端13bとを有している。第2検出コイル14は、一端である第1端14aと他端である第2端14bとを有している。第1検出コイル13の第2端13bと第2検出コイル14の第1端14aとが接続されている。この例の厚さ測定では励磁コイル11によって形成される磁界の向きは一定なので、対象物9に発生する渦電流によって誘起され、第1検出コイル13及び第2検出コイル14のそれぞれを貫通する誘導磁場の向きも一定である。そのため、対象物9の渦電流を検出する際には、第1検出コイル13及び第2検出コイル14に流れる電流の向きが決まっている。第1検出コイル13では、第2端13bから第1端13aの向きに電流が流れる。すなわち、第1端13aの方が第2端13bよりも電位が高くなる。第2検出コイル14では、第2端14bから第1端14aの向きに電流が流れる。すなわち、第1端14aの方が第2端14bよりも電位が高くなる。第1検出コイル13の第2端13bと第2検出コイル14の第1端14aとが接続されることによって、第1検出コイル13に発生する誘導起電力と第2検出コイル14に発生する誘導起電力とが加算される。
【0061】
第1検出コイル13の第1端13aは、受信アンプ51の非反転入力端子(+)に接続されている。第2検出コイル14の第2端14bは、受信アンプ51の反転入力端子(-)に接続されている。
【0062】
第1検出コイル13の第2端13b及び第2検出コイル14の第1端14aには、コモン線Comが接続されている。コモン線Comは、接地されている。
【0063】
保護回路52は、第1保護回路52Aと第2保護回路52Bとを有する。
【0064】
第1保護回路52Aは、第1検出コイル13の第1端13aと第2端13bとの間に第1検出コイル13と並列に接続されている。言い換えると、第1保護回路52Aは、受信アンプ51の非反転入力端子(+)とコモン線Comとの間に接続されている。第1保護回路52Aは、直列接続された第1抵抗素子53a及び第1ダイオード54aを含んでいる。第1ダイオード54aのアノードが第1端13a側で、第1ダイオード54aのカソードがコモン線Com側となるように、即ち、第1ダイオード54aに順バイアスがかかるように、第1ダイオード54aが接続されている。
【0065】
第2保護回路52Bは、第2検出コイル14の第1端14aと第2端14bとの間に第2検出コイル14と並列に接続されている。言い換えると、第2保護回路52Bは、コモン線Comと受信アンプ51の反転入力端子(-)との間に接続されている。第2保護回路52Bは、直列接続された第2抵抗素子53b及び第2ダイオード54bを含んでいる。第2ダイオード54bのアノードがコモン線Com側で、第2ダイオード54bのカソードが第2端14b側となるように、即ち、第2ダイオード54bに順バイアスがかかるように、第2ダイオード54bが接続されている。
【0066】
さらに、受信アンプ51の非反転入力端子(+)とコモン線Comとの間には、インピーダンス整合のための抵抗素子55aが接続されている。コモン線Comと受信アンプ51の反転入力端子(-)との間には、インピーダンス整合のための抵抗素子55bが接続されている。
【0067】
続いて、受信部62の動作について説明する。
図7は、励磁部71に入力されている励磁信号を示すグラフである。
図8は、第1検出コイル13及び第2検出コイル14に発生する誘導電圧を示すグラフである。
図9は、受信アンプ51の出力電圧を示すグラフである。
【0068】
厚さ測定においては、前述のステップS102において、励磁部71は、励磁コイル11へ励磁電流を印加して、対象物9に渦電流を発生させる。その後、励磁部71が励磁コイル11への励磁電流の印加を停止することによって、検出部72による渦電流の検出が開始される。励磁部71は、励磁信号がONのときに励磁電流を出力する一方、励磁信号がOFFのときに励磁電流の出力を停止する。つまり、
図7に示すように、時間t1において、励磁部71は、励磁電流の出力を停止することによって励磁コイル11による磁場の形成を停止する。このときの磁場の変動によって対象物9に渦電流が発生し、この渦電流によって検出コイル12に誘導起電力が発生する。
【0069】
図8に示すように、第1検出コイル13及び第2検出コイル14には、励磁電流の停止直後に大きな絶対値の誘導電圧が発生する。第1検出コイル13には正の誘導電圧Va(図中の実線)が発生し、第2検出コイル14には負の誘導電圧Vb(図中の破線)が発生する。第1検出コイル13の誘導電圧Vaと第2検出コイル14の誘導電圧Vbとの電圧差(この例では、第1検出コイル13の誘導電圧の絶対値と第2検出コイル14の誘導電圧の絶対値とを加算した電圧)が受信アンプ51への入力電圧となる。
【0070】
このとき、第1保護回路52A及び第2保護回路52Bには、第1ダイオード54a及び第2ダイオード54bの作用によって電流が流れる。
図8においては、第1保護回路52A及び第2保護回路52Bが無い場合の誘導電圧Va及び誘導電圧Vbがそれぞれ二点鎖線で図示されている。第1保護回路52A及び第2保護回路52Bによって、第1検出コイル13の誘導電圧Vaの絶対値及び第2検出コイル14の誘導電圧Vbの絶対値が低減される。結果として、励磁電流の停止直後の受信アンプ51への入力電圧が低減される。
【0071】
一方、
図9に示すように、受信アンプ51の出力電圧Voは、励磁電流の停止後から上昇し、しばらくは上限値で飽和した状態となる。やがて、第1検出コイル13の誘導電圧Va及び第2検出コイル14の誘導電圧Vbの減衰に伴って、受信アンプ51の出力電圧Voも減衰し始める。出力電圧Voが所定の閾値xまで減衰したとき、即ち、時間t2において、継続時間τの測定が開始される。時間t1から時間t2までの時間は、励磁電流が停止されてから継続時間τの測定が開始されるまでに要する時間であり、以下、「測定開始時間」と称する。
【0072】
ここで、第1保護回路52A及び第2保護回路52Bを流れる電流は、第1検出コイル13及び第2検出コイル14へ帰還する。第1検出コイル13及び第2検出コイル14への帰還電流が大きいと、第1検出コイル13の誘導電圧Va及び第2検出コイル14の誘導電圧Vbの減衰に時間を要し、図中の二点鎖線で示すように出力電圧Voの減衰にも時間を要する。そのため、測定開始時間Tが長くなる虞がある。しかし、第1保護回路52Aは、第1抵抗素子53aを含み、第2保護回路52Bは、第2抵抗素子53bを含んでいる。これら第1抵抗素子53a及び第2抵抗素子53bによって、第1検出コイル13及び第2検出コイル14への帰還電流が低減される。その結果、出力電圧Voの減衰が促進され、測定開始時間Tが短縮される。
【0073】
特に、薄い対象物9の厚さを測定する場合には有効である。
図4の渦電流のグラフは模式的であり、実際には誘導起電力の発生直後の電圧は、大きいので適切に検出されない。そのため、測定開始時間Tに達するまで、
図4に示すような単調に減衰する電圧の変化を観測することができない。つまり、継続時間τを求めることもできない。対象物9の厚さが薄い場合には、継続時間τは短くなる。継続時間τが測定開始時間Tよりも短い場合には、継続時間τを求めることができず、結果として、対象物9の厚さを求めることができない。つまり、測定開始時間Tが短縮されると、渦電流に相当する電圧信号を適切に観測できる時期を早めることができ、薄い対象物9の厚さを求めることができるようになる。
【0074】
尚、受信アンプ51への入力電圧を低減する方法としては、第1保護回路52A及び第2保護回路52Bの代わりに、第1検出コイル13の第1端13aと正電源との間にダイオードを接続し、第2検出コイル14の第2端14bと負電源との間にダイオードを接続する構成が考えられる。第1検出コイル13及び第2検出コイル14に大きな誘導起電力が発生した場合には、第1検出コイル13から正電源側へ、負電源側から第2検出コイル14へ電流が流れ、受信アンプ51への入力電圧が低減される。しかし、この構成においては、ダイオードのリーク電流が誘導電圧の信号に重畳され、それが故に、受信アンプ51の出力電圧Voの温度依存性が大きくなる。
【0075】
それに対し、第1保護回路52A及び第2保護回路52Bを設ける構成では、リーク電流の影響が低減され、受信アンプ51の出力電圧Voの温度依存性が低減される。
【0076】
その結果、受信部62によれば、受信アンプ51への入力電圧を低減し、測定開始時間Tを短縮し、受信アンプ51の出力電圧Voの温度依存性を低減することができる。
【0077】
以上のように、処理装置6(検出装置)は、励磁コイル11によって対象物9に誘起された渦電流を検出する、直列接続された第1検出コイル13及び第2検出コイル14と、第1検出コイル13及び第2検出コイル14が接続された受信アンプ51と、第1検出コイル13及び第2検出コイル14に並列に接続された保護回路52とを備え、第1検出コイル13の第1端13aは、受信アンプ51の非反転入力端子(+)に接続され、第1検出コイル13の第2端13bは、第2検出コイル14の第1端14aに接続され、第2検出コイル14の第2端14bは、受信アンプ51の反転入力端子(-)に接続され、保護回路52は、直列接続された第1抵抗素子53a及び第1ダイオード54aを含み、第1検出コイル13の第1端13aと第2端13bとの間に第1検出コイル13と並列に接続された第1保護回路52Aと、直列接続された第2抵抗素子53b及び第2ダイオード54bを含み、第2検出コイル14の第1端14aと第2端14bとの間に第2検出コイル14と並列に接続された第2保護回路52Bとを有する。
【0078】
また、厚さ測定装置10は、処理装置6(検出装置)と、受信アンプ51の出力電圧Voに基づいて、具体的には渦電流の継続時間に基づいて対象物9の厚さを求める厚さ導出部84を備える。
【0079】
これらの構成によれば、第1検出コイル13及び第2検出コイル14に大きな誘導起電力が発生した場合に、第1ダイオード54a及び第2ダイオード54bの作用によって第1保護回路52A及び第2保護回路52Bに大きな電流が流れるため、受信アンプ51への入力電圧が低減される。このとき、前述の第1検出コイル13の第1端13aと正電源との間にダイオードを接続し、第2検出コイル14の第2端14bと負電源との間にダイオードを接続する構成と異なり、第1ダイオード54a及び第2ダイオード54bがそれぞれ正電源及び負電源に対して接続されていないので、受信アンプ51の出力電圧Voの温度依存性が低減される。さらに、第1保護回路52A及び第2保護回路52Bを流れる電流は、第1抵抗素子53a及び第2抵抗素子53bによって低減される。これにより、第1検出コイル13及び第2検出コイル14への帰還電流が低減され、測定開始時間Tが短縮される。その結果、渦電流を用いた測定、即ち、対象物9の厚さ測定に与える影響を低減しつつ、受信アンプ51を保護することができる。
【0080】
また、第1検出コイル13の第2端13b及び第2検出コイル14の第1端14aは、コモン線Comに接続されている。
【0081】
この構成によれば、第1検出コイル13の誘導電圧と第2検出コイル14の誘導電圧との電圧差が受信アンプ51へ入力される。
【0082】
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0083】
前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0084】
例えば、厚さ測定装置10の構成も一例に過ぎない。処理装置6と演算装置8は、一体的に構成されていてもよい。すなわち、1つの装置が処理装置6及び演算装置8の機能を有していてもよい。また、処理装置6と演算装置8とが有線で接続されていてもよい。また、1つの演算装置8に対して複数の処理装置6が接続されていてもよい。また、演算装置8は、無線又は有線により接続された他の装置に対して、演算した厚さに関するデータを送信するようにしてもよい。
【0085】
プローブ1は、前述の構成に限られない。例えば、プローブ1は、2組の励磁コイル11及び検出コイル12を備えているが、励磁コイル11及び検出コイル12は、1組でもよく、3組以上であってもよい。励磁コイル11と検出コイル12とはそれぞれの軸心が一直線状になるように配置されていなくてもよい。励磁コイル11と検出コイル12とはそれぞれの軸心が一直線状になるように配置される場合、検出コイル12よりも励磁コイル11の方が対象物9の近くに配置されてもよい。また、プローブ1は、コア15を備えていなくてもよい。
【0086】
さらに、厚さ測定装置10による厚さ測定は、一例に過ぎない。PECによる厚さ測定方法は、様々であるので、任意の測定手法を採用することができる。
【0087】
受信部62は、一例に過ぎない。例えば、
図10に示すように、受信部262の受信アンプ51は、単電源オペアンプであってもよい。
図10の例では、検出コイル12は、第1検出コイル13を1つだけ含んでいる。保護回路52は、第1保護回路52Aを1つだけ含んでいる。受信アンプ51の反転入力端子(-)は、接地されている。また、第1検出コイル13の第2端13bも接地されている。つまり、処理装置6は励磁コイル11によって対象物9に誘起された渦電流を検出する第1検出コイル13(検出コイル)と、非反転入力端子(+)に第1検出コイル13の第1端13aが接続され、反転入力端子(-)に第1検出コイル13の第2端13bが接続された受信アンプ51と、第1検出コイル13の第1端13aと第2端13bとの間に第1検出コイル13と並列に接続された第1保護回路52A(保護回路)とを備え、第1保護回路52Aは、直列接続された第1抵抗素子53a(抵抗素子)及び第1ダイオード54a(ダイオード)を含む。このような構成であっても、受信アンプ51への入力電圧を低減し、測定開始時間Tを短縮し、受信アンプ51の出力電圧Voの温度依存性を低減することができる。
【0088】
フローチャートは、一例に過ぎない。フローチャートにおけるステップを適宜、変更、置き換え、付加、省略等を行ってもよい。また、フローチャートにおけるステップの順番を変更したり、直列的な処理を並列的に処理したりしてもよい。
【0089】
本明細書中に記載されている構成要素により実現される機能は、当該記載された機能を実現するようにプログラムされた、汎用プロセッサ、特定用途プロセッサ、集積回路、ASICs(Application Specific Integrated Circuits)、CPU(a Central Processing Unit)、従来型の回路、及び/又はそれらの組合せを含む、回路(circuitry)又は演算回路(processing circuitry)において実装されてもよい。プロセッサは、トランジスタ及びその他の回路を含み、回路又は演算回路とみなされる。プロセッサは、メモリに格納されたプログラムを実行する、プログラマブルプロセッサ(programmed processor)であってもよい。
【0090】
本明細書において、回路(circuitry)、ユニット、手段は、記載された機能を実現するようにプログラムされたハードウェア、又は実行するハードウェアである。当該ハードウェアは、本明細書に開示されているあらゆるハードウェア、又は、当該記載された機能を実現するようにプログラムされた、又は、実行するものとして知られているあらゆるハードウェアであってもよい。
【0091】
当該ハードウェアが回路(circuitry)のタイプであるとみなされるプロセッサである場合、当該回路、手段、又はユニットは、ハードウェアと、当該ハードウェア及び又はプロセッサを構成する為に用いられるソフトウェアの組合せである。
【符号の説明】
【0092】
10 厚さ測定装置
11 励磁コイル
12 検出コイル
13 第1検出コイル
13a 第1端
13b 第2端
14 第2検出コイル
14a 第1端
14b 第2端
51 受信アンプ
52 保護回路
52A 第1保護回路
52B 第2保護回路
53a 第1抵抗素子
53b 第2抵抗素子
54a 第1ダイオード
54b 第2ダイオード
84 厚さ導出部
9 対象物