(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092668
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H02M 1/08 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
H02M1/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207824
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田島 英幸
【テーマコード(参考)】
5H740
【Fターム(参考)】
5H740BA12
5H740BB05
5H740BB09
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK03
5H740MM11
(57)【要約】
【課題】高電圧側で、必要とされる回路機能を組み合わせて1チップ化するとともに、低圧から高圧に高い電源電圧変動除去比を有するレベルシフト動作が可能な半導体装置を提供すること。
【解決手段】定電流発生回路部と、定電流を入力電流とし、第1ミラー電流をミラー電流として生成する第1カレントミラー回路部と、第1ミラー電流がドレイン-ソース間に流れ、定電流発生回路部の電源電圧がベースに印加されるクランプトランジスタ、及び、クランプトランジスタに直列に接続され、前記第1ミラー電流が流れるトランジスタを含むレベルシフト回路部と、トランジスタを入力段とし、第1ミラー電流を複製した第2ミラー電流が流れるトランジスタを出力段とする第2カレントミラー回路部と、第2カレントミラー回路部の出力段のトランジスタの第2ミラー電流を出力する端子に接続される誤差吸収回路部と、を具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定電流発生回路部と、
前記定電流発生回路部が出力する定電流を入力電流とし、第1ミラー電流をミラー電流として生成する第1カレントミラー回路部と、
前記第1ミラー電流がドレイン-ソース間に流れ、前記定電流発生回路部の電源電圧がベースに印加されるクランプトランジスタ、及び、前記クランプトランジスタに直列に接続され、前記第1ミラー電流が流れるトランジスタを含むレベルシフト回路部と、
前記トランジスタを入力段とし、前記第1ミラー電流を複製した第2ミラー電流が流れるトランジスタを出力段とする第2カレントミラー回路部と、
前記第2カレントミラー回路部の前記出力段のトランジスタの前記第2ミラー電流を出力する端子に接続される前記クランプトランジスタの寄生容量に対応する静電容量を有する誤差吸収回路部と、を具備する半導体装置。
【請求項2】
第2カレントミラー回路部の前記入力段のトランジスタ及び前記出力段のトランジスタは、耐圧の異なる複数のトランジスタが電気的に直列接続されて構成され、前記入力段のトランジスタの複数のトランジスタと前記出力段のトランジスタの複数のトランジスタとは同一の電気特性を有するトランジスタが対向して複数接続されて構成される請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記誤差吸収回路部は、前記クランプトランジスタを複製したダミートランジスタの寄生容量であって、ゲート-ソース間が短絡されている前記ダミートランジスタを前記誤差吸収回路部として形成する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ダミートランジスタは、前記出力段のトランジスタの前記第2ミラー電流を入力する端子と前記第2ミラー電流を出力する端子に電気的に並列接続される、請求項3に記載の半導体装置
【請求項5】
前記ダミートランジスタは、ドレイン-ソース間が短絡されている、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2カレントミラー回路部の出力段には複数のトランジスタが含まれ、複数の出力段のトランジスタは相互に並列に電気的に接続され、それぞれの出力段のトランジスタの前記第2ミラー電流を出力する端子に、前記誤差吸収回路部をそれぞれ接続する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1カレントミラー回路部は複数のサブ第1カレントミラー回路部を含み、
前記レベルシフト回路部は、複数の当該サブ第1カレントミラー回路部の出力段を構成するトランジスタのそれぞれに電気的に直列接続される複数のクランプトランジスタを含み、当該クランプトランジスタに電気的に直列接続され、前記サブ第1カレントミラー回路部のミラー電流であるサブ第1ミラー電流が流れる複数のトランジスタを含み、
前記第2カレントミラー回路部は、前記サブ第1カレントミラー回路部のミラー電流であるサブ第1ミラー電流が流れる当該トランジスタを入力段とする複数のサブ第2カレントミラー回路部を含み、
前記サブ第2カレントミラー回路部のミラー電流であるサブ第2ミラー電流を出力するトランジスタの出力端のそれぞれに前記誤差吸収回路部が設けられる請求項1に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、例えば、マイルドハイブリッドシステムにおける高電圧側の半導体装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
マイルドハイブリッドシステム用のインバータ等の電力変換装置は、高電圧側にゲートドライバを使用する。当該ゲートドライバは、短絡故障発生時に、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の電力用半導体装置の短絡/過電流を検知し、電力用半導体装置を保護する保護回路を備える。
【0003】
例えば、特許文献1には、高電圧側に、モーターを駆動する電力用半導体装置であるIGBTと、IGBTを駆動するゲートドライバが開示されている。また、通常は、高電圧側にモータに流れる電流を検出する電流検出回路を備える。さらに、電流検出回路は、電流検出回路に電源として印加される電圧をできるだけ低い電圧とし、入力信号とグランド電圧との間の電圧もできるだけ低い電圧とするために、従来は、IGBTの出力電圧を電流検出回路のグランド電圧としてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような回路の工夫にもかかわらず、高電圧側では、モーターを駆動するIGBT、当該IGBTを駆動するゲートドライバ、及び、モータに流れる電流を検出する電流検出回路がそれぞれ個別に必要となり、実装面積が大きくなっている。また、高電圧側では、さまざまな電位を有するグランドが混在するため、高耐圧回路が必要であり、当該高耐圧回路は実装面積が大きくなる傾向がある。さらに、IGBTがスイッチングすると、高い電源電圧変動除去比が必要になり、追加の回路が必要になる場合がある。
【0006】
本発明は、このようなことに鑑みてなされたものである。その目的の一つは、高電圧側で、必要とされる回路機能を組み合わせて1チップ化するとともに、レベルシフト回路及び誤差吸収回路等によって、低圧から高圧に高い電源電圧変動除去比を有するレベルシフト動作が可能な半導体装置を提供することにある。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。代表的な半導体装置は、定電流発生回路部と、定電流発生回路部が出力する定電流を入力電流とし、第1ミラー電流をミラー電流として生成する第1カレントミラー回路部と、第1ミラー電流がドレイン-ソース間に流れ、定電流発生回路部の電源電圧がベースに印加されるクランプトランジスタ、及び、クランプトランジスタに直列に接続され、第1ミラー電流が流れるトランジスタを含むレベルシフト回路部と、トランジスタを入力段とし、第1ミラー電流を複製した第2ミラー電流が流れるトランジスタを出力段とする第2カレントミラー回路部と、第2カレントミラー回路部の出力段のトランジスタの第2ミラー電流を出力する端子に接続されるクランプトランジスタの寄生容量に対応する静電容量を有する誤差吸収回路部と、を具備する。
【発明の効果】
【0008】
一実施形態によれば、高電圧側で、必要とされる回路機能を組み合わせて1チップ化するとともに、レベルシフト回路及び誤差吸収回路等によって、低圧から高圧に高い電源電圧変動除去比を有するレベルシフト動作が可能な半導体装置を提供可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る半導体装置の一例を含むシステムの動作の概要を説明するブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る半導体装置の一例の一部を説明する回路図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る半導体装置の
図2に示されていない構成を含む回路図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る半導体装置をトランジスタベースで示した回路図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係る半導体装置の実験結果の一例である。
【
図6】
図6は、実施形態1に係る半導体装置の実験結果の一例である。
【
図7】
図7は、実施形態2に係る半導体装置の一例を示す回路図である。
【
図8】
図8は、実施形態3に係る半導体装置の一例を示す回路図である。
【
図9】
図9は、実施形態4に係る半導体装置の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の実施形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0011】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0012】
また、実施の形態の各機能ブロックを構成する回路素子は、特に制限されないが、公知のCMOS(相補型MOSトランジスタ)等の集積回路技術によって、単結晶シリコンのような半導体基板上に形成される。
【0013】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。さらに、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0014】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る半導体装置を含むシステムの動作の概要を説明するブロック図である。
図1のシステムは、一例として車載のマイルドハイブリッドシステムを示している。
図1のモータM1は、車を補助的に移動させる3相のモータである。
図1は、3相のうち代表的に1相を示している。絶縁層ILを介して、
図1の左側は低電圧領域であり、低電圧の一例として12ボルト(V)を示している。しかしながら、低電圧領域のバッテリB3は12Vに限定されるわけではない。例えば、バッテリB3の電圧は16V等の電圧であってもよい。
【0015】
低電圧領域を示す12ボルト(V)ドメイン領域(12V Domain Region)は、低電圧バッテリ、例えば、12VのバッテリB3によって制御される回路領域である。電圧管理集積回路(PMIC:Power Management Interated Circuit)210は、12ボルトドメイン領域で使用される回路に必要な電源電圧を生成する。例えば、12ボルトドメイン領域のPMIC210は、コントローラ220の電源電圧として5Vの電圧を生成することが可能である。
【0016】
絶縁層ILを介して、
図1の右側は高電圧領域であり、高電圧の一例として48ボルト(V)(最大約70V)のバッテリB2によって制御される領域を示している。高電圧領域は、車を補助的に移動させるためのモータM1を駆動するために、高電圧バッテリ、例えば、48ボルト(V)(最大約70V)のバッテリB2を備える回路領域である。
【0017】
高電圧領域は、ゲートドライバユニット(GDU)110、モータM1に流れる電流を検出する電流検出ユニット(CSU)120、モータM1、モータM1を駆動するスイッチング電圧を生成する駆動トランジスタ131、132等を具備する。GDU110及びCSU120は1チップに一体化されており、後述するレベルシフト回路部125を含み、誤差吸収回路をさらに付加するので、低圧から高圧に高い電源電圧変動除去比を有するレベルシフト動作が可能な半導体装置100となっている。
【0018】
GDU110は、モータM1を駆動させる駆動トランジスタ131、132を交互にスイッチングさせるための駆動パルスを生成する。GDU110は、バッファ111、112、インバータ113、及び、レベルシフタ114を含む。コントローラ220から出力されるパルス信号は、バッファ111を介してインバータ113及びレベルシフタ114に入力される。インバータ113の出力パルスは、駆動トランジスタ132のゲートに入力される。出力パルスがハイの場合には、駆動トランジスタ132がONになり、駆動トランジスタ132のドレインは絶対グランドと電気的に接続される。出力パルスがローの場合には、駆動トランジスタ132がOFFになり、駆動トランジスタ132のドレインは駆動トランジスタ131のソースの電圧になる。
【0019】
GDU110は、バッテリB2の高電圧よりも低い電圧を電源電圧VLとして印加する。例えば、電源電圧VLの一例には5Vが挙げられるが、電源電圧VLの値は5Vに限定されるわけではない。汎用ICの電源電圧を、電源電圧VLとして採用することが可能である。電源電圧VLを3V~6Vの間の電圧値に設定することも可能である。
【0020】
レベルシフタ114は、駆動トランジスタ131をスイッチングさせるために、駆動トランジスタ131のゲートに印加される電圧を上昇させるために使用される。上昇電圧値は、バッテリB2の出力電圧及び駆動トランジスタ131の電気的特性等によって決定されることができる。レベルシフタ114の出力信号は、バッファ112に入力され、バッファ112の出力パルスは、駆動トランジスタ132のゲートに入力される。バッファ112の出力パルスとインバータ113の出力パルスは、反転関係にあるため、駆動トランジスタ131と駆動トランジスタ132のON/OFFも時間軸で反転した関係になる。すなわち、駆動トランジスタ131がOFFの場合には、上述したように駆動トランジスタ132がONになり、モータM1には電流が流れない。また、駆動トランジスタ131がONの場合には、駆動トランジスタ132がOFFになり、モータM1にはバッテリB2を介して電流が流れる。このような、駆動トランジスタ131及び駆動トランジスタ132のスイッチングによって、モータM1が回転し、モータM1が搭載される車両等が移動可能になる。
【0021】
CSU120は、モータM1に流れる電流を電圧として検出し、検出した電圧をコントローラ220に出力する機能を有する。モータM1に流れる電流は抵抗R1を流れるので、抵抗R1の両端に検出電圧が発生する。検出電圧は、増幅器121を介し、図示しないADコンバータによってアナログ信号からデジタル信号に変換され、変換されたデジタル信号がコントローラ220に入力され、コントローラ220がモータM1の駆動状態を監視する。コントローラ220は、モータM1の駆動状態に基づいて、上述したパルス信号をバッファー111に出力する。
【0022】
CSU120は、増幅器121に安定した電源を供給するために、BGR(Band Gap Reference)回路部124、IREF回路部123、LDO(Low Drop Out)回路部122、及び、レベルシフト回路部125を具備する。増幅器121は抵抗R1に発生する電圧を検出するので、ブートストラップ電圧VBSTからフローティンググランドFGNDまでの電圧を処理する可能性がある。したがって、増幅器121の電源電圧にも、ブートストラップ電圧VBSTとフローティンググランドFGNDが入力されることが好ましい。また、ブートストラップ電圧VBSTからの電圧降下を低下させるために、LDO回路部122を設けることが好ましい。本実施形態のLDO回路部122については、後述する。さらに、LDO回路部122には、LDO回路部122の基準電圧を生成するための定電流を生成するIREF回路部123を接続することが好ましい。本実施形態のIREF回路部123についても、後述する。また、IREF回路部123において生成される定電流を生成するための一定電圧を生成するBGR回路部124を設けることが好ましい。BGR回路は公知の技術であるため詳細な説明を省略する。また、IREF回路部123とLDO回路部122に印加される電源電圧の差をシフトさせるレベルシフト回路部125を設けることが好ましい。
【0023】
BGR回路部124、IREF回路部123、および、LDO回路部122は、増幅器121と電気的に接続されるので、ブートストラップ電圧VBSTが電源電圧として供給されることで、不要な回路部分を必要とすることはないことが考えられる。しかし、前述したように、ブートストラップ電圧VBSTは高電圧なために、ブートストラップ電圧VBSTを印加したBGR回路部124およびIREF回路部123は高耐圧回路となるので、半導体チップに占める面積が大きくなる。したがって、電流検出ユニット(CSU)120とゲートドライバユニット(GDU)110とを1チップ化しても、全体的な面積の削減には逆効果となってしまう。
【0024】
そこで、本実施形態では、レベルシフト回路部125によって、BGR回路部124およびIREF回路部123の電源電圧に低電圧を印加することによって、CSU120とGDU110とを1チップ化した場合の当該1チップの面積を削減した。
図1において、低電圧の一例として、バッファ111及びインバータ113の電源電圧VLが挙げられる。また、電源電圧VLには3~6Vの電圧が挙げられるが、電源電圧VLは当該電圧に限定されるわけではない。
【0025】
また、LDO回路部122には上述した誤差吸収回路部が設けられるが、
図1では図示せずに、
図3以降において誤差吸収回路部の詳細を説明する。
【0026】
図2は、本実施形態に係る半導体装置において、LDO回路部122に誤差吸収回路部が設けられていない構成の詳細な回路を示す回路図である。
図2は、
図1の絶縁層ILを介した低電圧領域を省略している。
図2において、BGR回路部124とLDO回路部122との間にIREF回路部123、及び、トランジスタTr3、Tr4、Tr5を含むレベルシフト回路部125が存在する。なお、GDU110は、
図1において詳述したので、重複した説明を省略する。また、モータM1は簡略化して、一相分のインダクタンスL1を用いて示している。また、BGR回路部124とREF回路部123の電源に低電圧として印加される電源電圧を5Vとして回路図が記載されている。
【0027】
BGR回路部124から出力される定電圧を用いてIREF回路部123が一定電流である電流Isを出力する。IREF回路部123の定電流を発生する原理は公知の技術であるので、詳細な説明を省略する。電流Isは、ゲートとドレイン間が短絡されたトランジスタTr1と、トランジスタTR2によって構成される第1カレントミラー回路部125_1を流れる。したがって、トランジスタTR2にもミラー電流として電流Isが流れる。すなわち、トランジスタTr3、トランジスタTr4、および、トランジスタTr5にも電流Isが流れる。なお、トランジスタTr3の耐電圧>>トランジスタTr4の耐電圧>トランジスタTr5の耐電圧である。一例として、トランジスタTr3の耐電圧は、バッテリB2の電圧以上であることが好ましく、トランジスタTr5の耐電圧は、バッテリB1の電圧以上であることが好ましい。トランジスタTr3が高耐圧であり、トランジスタTr3のゲート電圧が低電圧であれば、トランジスタTr3のソースの電圧は(低電圧(5V)-ゲート閾値電圧)となるので、トランジスタTr3はクランプトランジスタとして機能する。したがって、BGR回路部124及びREF回路部123を低電圧領域で設計可能となる。なお、トランジスタTr4及びトランジスタTr5によってカスコードカレントミラー回路を構成することでLDO回路部122を流れるコピー電流の精度を向上させることが可能になる。一例として、トランジスタTr3の耐電圧は100Vであり、トランジスタTr5の耐電圧は100Vであるが、トランジスタTr3の耐電圧とトランジスタTr5の耐電圧はこれらの電圧に限定されるわけではない。
【0028】
しかしながら、高耐圧であるトランジスタTr3のドレイン側の寄生容量CD3も大きくなるので、寄生容量CD3に流れる電流Isubも大きな値になる。電流Isubが大きくなると、電流Isubが電流Isに印加されて流れるので、レベルシフトしたLDO回路部122の出力電圧の変動が大きくなり、増幅器121の出力が安定せずに、コントローラ220が正確なモータM1の駆動電流を検出できない場合が発生する。そこで、本実施形態では、LDO回路部122にトランジスタTr3をコピーしたダミートランジスタを設けて、電流Isに印加されて流れる電流Isubをダミートランジスタの寄生容量に流れるようにした。ダミートランジスタについては、以下の
図3の記載において詳述する。なお、ダミートランジスタは上述した誤差吸収回路部の一例である。例えば、ダミートランジスタの寄生容量を容量値とするコンデンサも誤差吸収回路部の一例となり得る。また、トランジスタTr3には寄生容量CS3も形成されるが、トランジスタTr3のソース電圧は低電圧であるので、寄生容量CD3と容量値が近い寄生容量CS3に流れる電流の大きさは、寄生容量CD3に流れる電流よりも小さい。したがって、以下の記載においては電流Isubを中心に説明する。
【0029】
また、第2カレントミラー回路部125_1はトランジスタTr4及びTr5を入力段とし、入力段に対して2つの出力段を持つ。第2カレントミラー回路部125_1の第1出力段はトランジスタTr6及びTr7を含み、第2出力段はトランジスタTr8及びTr9を含み、各出力段には(電流Is+電流Isub)がミラー電流として流れる。
【0030】
さらに、第1カレントミラー回路部125_1のミラー電流Isに、誤差となる変電電流である電流Isubが印加されて、LDO回路部122に変動電流が流れるので、増幅器121に印加される電源電圧がVsupply1のように変動してしまう。増幅器121に印加される電源電圧が変動すると、増幅器121の出力も変動してしまうので、電流Isubを吸収する誤差吸収回路部が必要となる。
【0031】
図3は、LDO回路部122にトランジスタTr3をコピーしたダミートランジスタTr10およびTr11を誤差吸収回路部として設けた回路図である。トランジスタTr4及びTr5に流れる電流Is+電流Isubは、第2カレントミラー回路部の出力段を構成するトランジスタTr6及びTr7に流れる。同様に、トランジスタTr4及びTr5に流れる電流Is+電流Isubは、第2カレントミラー回路部の出力段を構成するトランジスタTr8及びTr9に流れる。トランジスタTr8及びTr9に流れる電流によって、演算増幅器OP1の電源電圧が供給される。したがって、上述したように、トランジスタTr8及びTr9に流れる電流が変動すると演算増幅器OP1の電源電圧も変動し、演算増幅器OP1の出力電圧が影響を受ける(例えば、
図2のVsupply1のように変動する)。また、トランジスタTr6及びTr7に流れる電流によって、演算増幅器OP1の基準電圧が形成される。したがって、トランジスタTr6及びTr7に流れる電流が変動すると、基準電圧が変動し、演算増幅器OP1の出力電圧が影響を受ける(例えば、
図2のVsupply1のように変動する)。
【0032】
そこで、電流Isubを吸収するための誤差吸収回路部としてダミートランジスタTr10を設ける。ダミートランジスタTr10には寄生容量CD10およびCS10が形成される。そこで、ダミートランジスタTr10のドレインをトランジスタTr9のソース及びトランジスタTr8のドレインに電気的に接続し、ダミートランジスタTr10のゲート及びソースをトランジスタTr9のドレインに電気的に接続する。すると、電流Isubのほとんどが、寄生容量CS10に電流Isub_replicaとして吸収される。
【0033】
同様に、電流Isubを吸収するための誤差吸収回路部としてダミートランジスタTr11を設ける。ダミートランジスタTr11には寄生容量CD11およびCS11が形成される。そこで、ダミートランジスタTr11のドレインをトランジスタTr7のソース及びトランジスタTr6のドレインに電気的に接続し、ダミートランジスタTr11のゲート及びソースをトランジスタTr7のドレインに電気的に接続する。すると、電流Isubのほとんどが、寄生容量CS11に電流Isub_replicaとして吸収される。
【0034】
寄生容量CS10及び寄生容量CS11によって、LDO回路部122の出力電圧は電圧Vsupply2のように電圧Vsupply1よりも変動が小さい電圧となる。
【0035】
図4は、
図3の演算増幅器OP1の内部を模式的に示した回路図である。演算増幅器OP1は、差動入力段を構成するトランジスタTr17、Tr18、Tr19及びTr20、利得段を構成するトランジスタTr15、出力段を構成するトランジスタTr16、定電流を供給するトランジスタTr12及びTr13、並びに、ダミートランジスタTr14を含む。ダミートランジスタTr14に形成される寄生容量CD14及びCS14によって電流Isubを吸収する。なお、電流Isubのほとんどが、寄生容量CS14に電流Isub_replicaとして吸収される。
【0036】
実施形態1によれば、高電圧側で、必要とされる回路機能を組み合わせて1チップ化するとともに、レベルシフト回路及び誤差吸収回路によって、低圧から高圧に高い電源電圧変動除去比を有するレベルシフト動作が可能な半導体装置を提供可能になる。
【0037】
(実験例1)
図5は、本実施形態によって構成された半導体装置においてダミートランジスタを形成しない場合、及び、ダミートランジスタを形成した場合の各部の電流を測定した結果である。
図5においてフローティンググランドFGNDが0Vとブートストラップ電圧との間でスイッチングされるパルス波形が示されている。フローティンググランドFGNDのパルス波形の立上りにおいて、電流Isは回路の浮遊インダクタンス成分により、スパイク状の電流が正負に発生する。また、フローティンググランドFGNDのパルス波形の立下がりにおいても、電流Isは回路の浮遊インダクタンス成分により、スパイク状の電流が正負に発生する。
【0038】
電流(Is+Isub:実線)は、上記Isに加えて、寄生容量CD3を充放電するためのパルス状の電流Isubが加わった波形である。電流Isubは、約1.750μs(t1及びt2の値)の間で発生し、約8.4μAの電流値であった。また、ダミートランジスタの寄生容量には、電流Isubと同等の期間に、同等の電流値を有する電流Isub_replicaが流れることが確認される。電流Isub_replicaが流れる結果、電流Iout(破線)に示されるように、変動区間は約0.005μsに短縮され、変動する電流値は約3.5μAまで低減した。なお、電流Ioutは
図3の基準電圧を生成するために、抵抗R2に流れる電流である。
【0039】
(実験例2)
図6は、本実施形態によって構成された半導体装置においてダミートランジスタを形成しない場合、及び、ダミートランジスタを形成した場合の各部の電流を電圧として測定した結果である。
図5と同様に、
図6の上部にはフローティンググランドFGNDが0Vとブートストラップ電圧との間でスイッチングされるパルス波形が示されている。LDO出力変動は、LDO回路部122の出力電圧の変動を示す。ダミートランジスタを形成しない場合のLDO出力変動は、約152mVのピーク値を示している。しかし、ダミートランジスタを形成した場合のLDO出力変動は、約17mVのピーク値を示している。すなわち、増幅器121の出力電圧のフルスケールを1Vとし、PSRRを-20dBとした場合に、ダミートランジスタを形成しない場合の出力変動は約1.5%となり、ダミートランジスタを形成した場合の出力変動は約0.17%となる。増幅器121の仕様では出力変動は0.3%未満であるので、ダミートランジスタを形成することによって、増幅器121の出力変動仕様を満たすことが可能になる。
【0040】
上述したように、実施形態1によれば、高電圧側で、必要とされる回路機能を組み合わせて1チップ化するとともに、レベルシフト回路部及び誤差吸収回路部を設けることによって、低圧から高圧に高い電源電圧変動除去比を有するレベルシフト動作が可能な半導体装置を提供可能になる。
【0041】
(実施形態2)
実施形態1では、ダミートランジスタを第2カレントミラー回路部の出力段を形成するトランジスタと電気的に並列接続していた。すなわち、ダミートランジスタのドレイン及びソースを第2カレントミラー回路部の出力段を形成するトランジスタのソース及びドレインに並列的に接続していた。しかし、実施形態2では、ダミートランジスタのドレイン、ゲート及びソースの3端子を接続し、第2カレントミラー回路部の出力段を形成するトランジスタの出力端子(ドレイン又はソース)に接続する構成を
図7に示す。ダミートランジスタのドレイン、ゲート及びソースの3端子を接続することによって、ダミートランジスタのドレイン側の寄生容量と、当該ダミートランジスタのソース側の寄生容量が加算されるので、ダミートランジスタの面積を低減することが可能になる。例えば、実施形態2のダミートランジスタの形成面積を、実施形態1のダミートランジスタの形成面積の半分にしても、実施形態1と同様の出力変動を実現可能になる。
【0042】
図7は、誤差吸収回路部となるダミートランジスタTr10のドレイン、ゲート及びソースの3端子を接続し、第2カレントミラー回路部の出力段を形成するトランジスタTr9の出力端子となるドレインに、当該接続された端子を接続した構成を示す。また、ダミートランジスタTr11のドレイン、ゲート及びソースの3端子を接続し、第2カレントミラー回路部の出力段を形成するトランジスタTr9の出力端子となるドレインに、当該接続された端子を接続した構成を示す。キャパシタC9は、ダミートランジスタTr11のソース側の寄生容量CS11及びドレイン側の寄生容量CD11を加算した容量を有する。また、キャパシタC10は、ダミートランジスタTr10のソース側の寄生容量CS10及びドレイン側の寄生容量CD10を加算した容量を有する。
【0043】
実施形態2の構成によれば、誤差吸収回路部となるダミートランジスタのドレイン側の寄生容量と、当該ダミートランジスタのソース側の寄生容量が加算される。したがって、ダミートランジスタの面積を低減することが可能になる。例えば、実施形態2のダミートランジスタの形成面積を、実施形態1のダミートランジスタの形成面積の半分にしても、実施形態1と同様の出力変動を実現可能になる。
【0044】
(実施形態3)
実施形態3は、実施形態1及び実施形態2のLDO回路部122を電流制御のプリドライバ回路部126に適用した実施形態である。プリドライバ回路部126のカレントミラー回路の出力段の出力電流の変動幅が十分小さいので、駆動トランジスタTr16のゲートに流れ込む電流の変動が小さくなり、駆動トランジスタTr16のスルーレートが向上することが可能となる。
【0045】
(実施形態4)
実施形態4を
図9に示す。実施形態4は、第1カレントミラー回路部125_1にサブ第1カレントミラー回路部125_1_1及び125_1_2を含み、第2カレントミラー回路部125_2にサブ第2カレントミラー回路部125_2_1及び125_2_2を含む構成を示す。なお、
図9において、サブ第1カレントミラー回路部125_1_1は出力段のトランジスタTr16だけを示し、サブ第1カレントミラー回路部125__1_2は出力段のトランジスタTr17だけを示す。
【0046】
また、レベルシフト回路部125―1は、サブ第1カレントミラー回路部125_1_1の出力段のトランジスタTr16に電気的に直列接続されるクランプトランジスタであるトランジスタTr18を含む。同様に、レベルシフト回路部125―2は、サブ第1カレントミラー回路部125_1_2の出力段のトランジスタTr17に電気的に直列接続されるクランプトランジスタであるトランジスタTr19を含む。
【0047】
さらに、レベルシフト回路部125―1は、クランプトランジスタであるトランジスタTr18に電気的に直列接続され、サブ第1カレントミラー回路部125_1_1のミラー電流であるサブ第1ミラー電流が流れるトランジスタTr20及びトランジスタTr22を含む。トランジスタTr20及びトランジスタTr22は、サブ第2カレントミラー回路部125_2_1の入力段を形成する。また、レベルシフト回路部125―2は、クランプトランジスタであるトランジスタTr19に電気的に直列接続され、サブ第1カレントミラー回路部125_1_2のミラー電流であるサブ第1ミラー電流が流れるトランジスタTr21及びトランジスタTr23を含む。トランジスタTr21及びトランジスタTr23は、サブ第2カレントミラー回路部125_2_2の入力段を形成する。
【0048】
サブ第2カレントミラー回路部125_2_1の出力段は、直列接続されたトランジスタTr24及びTr26によって形成される。サブ第2カレントミラー回路部125_2_1のミラー電流であるサブ第2電流を次段に供給するトランジスタTr26の出力端(
図9ではドレイン)には、誤差吸収回路部としてのダミートランジスタであるトランジスタTr28が形成される。トランジスタTr28はクランプトランジスタであるトランジスタTr18と構造が同一のダミートランジスタである。
【0049】
サブ第2カレントミラー回路部125_2_2の出力段は、直列接続されたトランジスタTr25及びTr27によって形成される。サブ第2カレントミラー回路部125_2_2のミラー電流であるサブ第2電流を次段に供給するトランジスタTr27の出力端(
図9ではドレイン)には、誤差吸収回路部としてのダミートランジスタであるトランジスタTr29が形成される。トランジスタTr29はクランプトランジスタであるトランジスタTr19と構造が同一のダミートランジスタである。
【0050】
上記第4実施形態によれば、本開示のレベルシフト回路部、及び、誤差吸収回路部を2段のカスコードのカレントミラー回路に適用することが可能になる。
【0051】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、例えば、上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記の実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0052】
100 半導体装置
123 定電流発生回路部
125_1 第1カレントミラー回路部
Tr3、Tr18、Tr19 クランプトランジスタ
125 レベルシフト回路部
125_2 第2カレントミラー回路部
Tr10、Tr11、Tr14、Tr28、Tr29 ダミートランジスタ(誤差吸収回路部)
125_1_1、125_1_2 サブ第1カレントミラー回路部
125_2_1、125_2_2 サブ第2カレントミラー回路部