IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋ゴム工業株式会社の特許一覧

特開2023-92678脱硫ゴム、ゴム組成物および空気入りタイヤ
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092678
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】脱硫ゴム、ゴム組成物および空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 17/00 20060101AFI20230627BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20230627BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
C08L17/00 ZAB
C08K5/20
B60C1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207838
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 祥平
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131BA02
3D131BA18
3D131BC09
3D131BC51
4J002AC011
4J002AC132
4J002DA036
4J002DJ016
4J002EP007
4J002FD016
4J002FD020
4J002FD030
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD170
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】良好な加硫後物性を示す脱硫ゴム、脱硫ゴムを含有し、加工性に優れたゴム組成物、およびゴム組成物を加硫成形してなるゴム部を備える空気入りタイヤを提供すること。
【解決手段】アルキルアミド基を有する脱硫剤と加硫ゴムとを混合処理してなる脱硫ゴム。該脱硫剤が、炭素数12以上のアルキルアミンのアミド化合物であることが好ましい。該脱硫ゴムを含有するゴム組成物は加工性に優れ、かつ該ゴム組成物の加硫ゴムは加硫後物性に優れるため、空気入りタイヤの原料として好適である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキルアミド基を有する脱硫剤と加硫ゴムとを混合処理してなる脱硫ゴム。
【請求項2】
前記脱硫剤が、炭素数12以上のアルキルアミンのアミド化合物である請求項1に記載の脱硫ゴム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の脱硫ゴムを含有するゴム組成物。
【請求項4】
ゴム組成物中の未加硫ゴム成分の全量を100質量部としたとき、前記脱硫ゴムを1~30質量部含有する請求項3に記載のゴム組成物。
【請求項5】
請求項3または4に記載のゴム組成物を加硫成形してなるゴム部を備える空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な加硫後物性を示す脱硫ゴムおよびゴム組成物、ならびに該ゴム組成物を加硫成形してなるゴム部を備える空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境意識の高まりから、使用済タイヤやその他のゴム製品から生ずる加硫ゴム廃材を再利用することが強く要望されている。
【0003】
下記特許文献1では、脱硫剤がアミン化合物であり、ゴムがEPDMポリマーを含み、硫黄架橋ゴムが、脱硫の間、250~350℃の温度に加熱され、硫黄架橋ゴムの脱硫が5~10MPaの圧力で行われる、再加硫可能な脱硫生成物を得る方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4633988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らが鋭意検討したところ、上記従来技術で得られた脱硫生成物をゴム組成物中に配合した場合、加硫時間やスコーチタイムが著しく短くなるため、ゴム組成物の加工性の点でさらなる改良の余地があることが判明した。加えて、上記従来技術はEPDM系に特化した技術であるため、脱硫ゴムの原料となる加硫ゴムを構成するゴム種に限りがあることが判明した。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、良好な加硫後物性を示す脱硫ゴム、脱硫ゴムを含有し、加工性に優れたゴム組成物、およびゴム組成物を加硫成形してなるゴム部を備える空気入りタイヤを提供することにある。
【0007】
上記課題は下記の如き構成により解決し得る。すなわち本発明は、アルキルアミド基を有する脱硫剤と加硫ゴムとを混合処理してなる脱硫ゴムに関する。
【0008】
上記脱硫ゴムにおいて、前記脱硫剤が、炭素数12以上のアルキルアミンのアミド化合物であることが好ましい。
【0009】
また、本発明は前記記載の脱硫ゴムを含有するゴム組成物に関する。
【0010】
さらに、本発明は前記記載のゴム組成物を加硫成形してなるゴム部を備える空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0011】
前記のとおり、従来技術では脱硫剤としてアミン化合物が使用されている。しかしながら、アミン化合物が有するアミノ基は塩基性が強いため、アミン化合物からなる脱硫剤と加硫ゴムとを混合処理してなる脱硫ゴムを配合したゴム組成物は、加硫時間やスコーチタイムが著しく短くなる傾向があった。
【0012】
本発明に係る脱硫ゴムは、脱硫剤と加硫ゴムとを混合処理してなるものであり、該脱硫剤がアルキルアミド基を有する化合物である点が特徴である。アミノ基に比して、アルキルアミド基では窒素原子上の孤立電子対の密度が低下している。このため、アルキルアミド基は、アミノ基に比して塩基性が低く抑えられている。したがって、アルキルアミド基を有する脱硫剤と加硫ゴムとを混合処理してなる脱硫ゴムを配合したゴム組成物は、加硫時間やスコーチタイムを十分に確保できるため、加工性に優れる。加えて、脱硫ゴムをゴム組成物中に配合した場合でも、最適な加硫時間を設定することができるため、該ゴム組成物の加硫ゴムは、加硫後物性に優れる。したがって、該ゴム組成物の加硫ゴムは空気入りタイヤのゴム部として好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る脱硫ゴムは、アルキルアミド基を有する脱硫剤と加硫ゴムとを混合処理してなる。
【0014】
本発明に係る脱硫ゴムの原料として使用する加硫ゴムとして、ジエン系ゴムの加硫ゴムを使用することが好ましい。ジエン系ゴムとしては、特に限定されるものでなく、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合体、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴムなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。ジエン系ゴムとして、好ましくは、天然ゴム、ブタジエンゴムおよびスチレンブタジエンゴム、またはこれらの2種以上のブレンドである。
【0015】
本発明に係る脱硫ゴムの原料として使用する脱硫剤として、アルキルアミド基を有する化合物を使用する。好適には、長鎖アルキルアミン化合物をアミド化した化合物であり、より好適には炭素数12以上のアルキルアミン化合物をアミド化した化合物である。好適な脱硫剤としては、例えばヘキサデシルアミン(炭素数16)をアミド化した化合物、ドデシルアミン(炭素数12)をアミド化した化合物、あるいはステアリルアミン(炭素数18)をアミド化した化合物などが挙げられる。
【0016】
加硫後物性の向上を図る観点から、本発明に係る脱硫ゴムは、アルキルアミド基を有する脱硫剤と加硫ゴムとを混合処理してなる脱硫ゴムであって、加硫ゴムの全量を100質量部としたとき、該脱硫剤の処理量が1~30質量部であることが好ましい。
【0017】
加硫ゴムの原料となる硫黄は通常のゴム用硫黄であればよく、例えば粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを用いることができる。
【0018】
脱硫ゴムの原料となる加硫ゴムとして、ゴム成分および硫黄と共に、必要に応じて加硫促進剤、カーボンブラック、シリカ、シランカップリング剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、加硫遅延剤、有機過酸化物、老化防止剤、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などの通常ゴム工業で使用される配合剤を適宜配合したゴム組成物を加硫したものが使用可能である。
【0019】
カーボンブラックとしては、当業者に公知のカーボンブラックが使用可能であり、例えばSAF、ISAF、HAF、FEF、GPFなどが用いられる。脱硫ゴムの原料となる加硫ゴム中のゴム成分の全量を100質量部としたとき、カーボンブラックの含有量は30~100質量部であることが好ましく、30~60質量部であることがより好ましい。
【0020】
加硫促進剤としては、ゴム加硫用として通常用いられる、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などの加硫促進剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。
【0021】
老化防止剤としては、ゴム用として通常用いられる、芳香族アミン系老化防止剤、アミン-ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などの老化防止剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。
【0022】
本発明に係る脱硫ゴムは、好適には、せん断力を付与しつつ、加硫ゴムと脱硫剤とを加熱混合処理してなる脱硫ゴムであって、脱硫剤としてアルキルアミド基を有する脱硫剤を使用するものである。このような脱硫ゴムは例えば、せん断力を付与しつつ、加硫ゴムと、アルキルアミド基を有する脱硫剤とを加熱混合することにより製造することができる。加硫ゴムおよび脱硫剤にせん断力を付与する方法としては、当業者において一般的に使用されるロール機、バンバリーミキサー、押出機、ギアポンプ、かみ合い式ミキサー、ニーダー、またはコニーダーを使用し、せん断力を付与しつつ、加硫ゴムと脱硫剤とを加熱混合する方法が挙げられる。本発明においては、加硫ゴムおよび脱硫剤にせん断力を付与する際、ロール機、バンバリーミキサー、押出機、ギアポンプ、かみ合い式ミキサー、ニーダー、およびコニーダーを単独で使用してもよく、あるいはいずれかの装置を併用してもよい。ロール機を使用する場合、例えば脱硫剤と加硫ゴムとを混合しつつ、脱硫剤が加硫ゴムの硫黄架橋部を切断できるように、当業者に公知のロール機に脱硫剤と加硫ゴムとを通す方法などが挙げられる。また、バンバリーミキサーを使用する場合、例えば脱硫剤と加硫ゴムとバンバリーミキサー内に投入し、脱硫剤が加硫ゴムの硫黄架橋部を切断できるように、バンバリーミキサー内で撹拌する方法などが挙げられる。せん断力を付与する際のせん断圧としては、ロール機またはバンバリーミキサー使用時に、混練対象物に付与されるせん断圧でよく、例えば0.1~10MPa程度でよい。
【0023】
加硫ゴムと脱硫剤とを加熱混合する際の加熱温度は100℃以下に制御することが好ましい。加硫ゴムおよび脱硫剤に対し、加熱温度を100℃以下と低く設定し、せん断力を効果的に付与することで、良好な加硫後物性を示す脱硫ゴムおよびゴム組成物を製造することができる。加熱温度は50℃以下とすることが好ましい。
【0024】
得られた脱硫ゴムは、再利用する加硫ゴムの硫黄架橋部が選択的に切断されているため、未加硫(未使用)のゴム成分と混合して使用しても、良好な加硫後物性が得られる。ゴム組成物中の未加硫ゴム成分の全量を100質量部としたとき、脱硫ゴムを1~30質量部含有することが好ましい。脱硫ゴムを配合するゴム組成物を構成し得る、ゴム成分、硫黄、加硫促進剤、カーボンブラック、シリカ、シランカップリング剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、加硫遅延剤、有機過酸化物、老化防止剤、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などは、前記と同様のものが使用可能である。
【0025】
また、脱硫ゴムおよび上記各成分の配合方法は特に限定されず、硫黄および加硫促進剤などの加硫系成分以外の配合成分を予め混練してマスターバッチとし、残りの成分を添加してさらに混練する方法、各成分を任意の順序で添加し混練する方法、全成分を同時に添加して混練する方法などのいずれでもよい。
【0026】
上記脱硫ゴムを含有するゴム組成物は加工性に優れ、かつ加硫後物性に優れる。したがって、本発明に係る脱硫ゴムおよび該脱硫ゴムを含有するゴム組成物は、多量のゴム部を備える空気入りタイヤ用途に特に好適に使用可能である。
【実施例0027】
以下に、この発明の実施例を記載してより具体的に説明する。
【0028】
(脱硫ゴムの原料となる加硫ゴムの調製)
ゴム成分100質量部に対して、表1の配合処方に従い、ダイハン社製ラボミキサーを使用し、第一混合段階で、硫黄および加硫促進剤を除く他の配合剤をゴム成分に添加・混練し、次いで、第二混合段階で、得られた混練物に硫黄と加硫促進剤を添加・混練しゴム組成物を調製した。
【0029】
【表1】
【0030】
表1中の各成分の詳細は、以下のとおりである。
・天然ゴム:STR20
・スチレンブタジエンゴム:旭化成社製「タフデン2000」
・ブタジエンゴム:旭化成社製「NF35」
・カーボンブラック:東海カーボン社製「シースト3」
・シリカ:オリエンタルシリカ社製「ニプシルAQ」
・亜鉛華:三井金属鉱業社製「亜鉛華1種」
・老化防止剤:大内新興化学工業社製「ノクラック6C」
・ステアリン酸:花王社製「ルナックS-20」
・硫黄:細井化学工業社製「ゴム用粉末硫黄150メッシュ」
・加硫促進剤1:大内新興化学工業社製「ノクセラーNS」
・加硫促進剤2:大内新興化学工業社製「ノクセラーD」
【0031】
前記ゴム組成物を150℃、25分間の条件で加硫することにより、シート状の加硫ゴムを製造し、ロール(関西ロール社製6インチロール)を用いて加硫ゴムを粉砕することにより、粉末状の加硫ゴム(NR系)および加硫ゴム(混合系)を調製した。
【0032】
(脱硫ゴムの製造)
粉末状の前記加硫ゴム(NR系)または加硫ゴム(混合系)と脱硫剤とを表2に記載の割合で混合後、ロール表面を25℃に冷却したロール(関西ロール社製6インチロール)を用いて、前記加硫ゴム粉と脱硫剤との混合物を冷却しつつ、最小間隔で40分間、繰り返しロールを通すことにより、実施例1~5および比較例1~5に係る脱硫ゴムを製造した(混合時の加熱温度25℃)。
【0033】
【表2】
【0034】
表2中の各脱硫剤の詳細は、以下のとおりである。
・脱硫剤1:東京化成社製「ステアリルアミン」(炭素数18)
・脱硫剤2:「ステアリルアミンのアセチル化物」(アルキルアミド基を有する脱硫剤、炭素数20)
・脱硫剤3:「ヘキサデシルアミンのBoc化合物」(アルキルアミド基を有する脱硫剤、炭素数21)
・脱硫剤4:東京化成社製「ヘキサデシルアミン」(炭素数16)
・脱硫剤5:東京化成社製「ドデシルアミン」(炭素数12)
・脱硫剤6:「ドデシルアミンのアセチル化」(アルキルアミドを有する脱硫剤、炭素数14)
なお、上記脱硫剤2、脱硫剤3および脱硫剤6は以下の方法により製造した。
【0035】
(脱硫剤2)
ステアリルアミン10.8g、東京化成社製ピリジン6gをナカライテスク製酢酸エチル500mlに溶解させた。この溶液に東京化成社製無水酢酸5gを室温で攪拌しながら滴下した後、80℃に加熱し4時間攪拌を続けた。攪拌終了後沈殿物を濾別した濾液を10%クエン酸水溶液(クエン酸はナカライテスク製)100mlで3回洗浄後、ナカライテスク社製無水硫酸マグネシウムを適量加えて脱水した。無水硫酸マグネシウムを濾別後、溶液を減圧下で濃縮しスラリーを得た。これを濾過し、固体をヘキサン(ナカライテスク製)で洗浄した後真空乾燥することにより、下記式(1)に記載の脱硫剤2を得た。
【化1】
【0036】
(脱硫剤3)
ヘキサデシルアミン9.64g、ナカライテスク社製炭酸水素ナトリウム3.5gをナカライテスク社製ジクロロメタン200mlに溶解させた。この溶液に東京化成社製ジターシャリーブチルジカルバメート8.72gをジクロロメタン100mlに溶解させた溶液を室温で攪拌しながら滴下し、終夜攪拌を続けた。攪拌終了後沈殿物を濾別した濾液を10%クエン酸水溶液(クエン酸はナカライテスク社製)100mlで3回洗浄後、ナカライテスク社製無水硫酸マグネシウムを適量加えて脱水した。無水硫酸マグネシウムを濾別後、溶液を減圧下で濃縮しスラリーを得た。これを濾過し、固体をヘキサン(ナカライテスク社製)で洗浄した後、真空乾燥することにより、下記式(2)に記載の脱硫剤3を得た。
【化2】
【0037】
(脱硫剤6)
ドデシルアミン5.6g、東京化成社製ピリジン2.4gをナカライテスク社製酢酸エチル300mlに溶解させた。この溶液に東京化成社製無水酢酸3.1gを室温で攪拌しながら滴下した後、80℃に加熱し4時間攪拌を続けた。攪拌終了後沈殿物を濾別した濾液を10%クエン酸水溶液(クエン酸はナカライテスク社製)100mlで3回洗浄後、ナカライテスク社製無水硫酸マグネシウムを適量加えて脱水した。無水硫酸マグネシウムを濾別後、溶液を減圧下で濃縮しスラリーを得た。これを濾過し、固体をヘキサン(ナカライテスク社製)で洗浄した後、真空乾燥することにより、下記式(3)に記載の脱硫剤6を得た。
【化3】
【0038】
(ゴム組成物の調製)
ゴム成分100質量部に対して、表3の配合処方に従って各成分を配合し、ダイハン社製ラボミキサーを用いて混練し、実施例1~5および比較例1~5で製造した脱硫ゴムを含有するゴム組成物を調整した。
【0039】
表3中の各成分の詳細は、以下のとおりである。
・天然ゴム:STR20
・カーボンブラック:東海カーボン社製「シースト3」
・亜鉛華:三井金属鉱業社製「亜鉛華1種」
・老化防止剤:大内新興化学工業社製「ノクラック6C」
・ステアリン酸:花王社製「ルナックS-20」
・硫黄:細井化学工業社製「ゴム用粉末硫黄150メッシュ」
・加硫促進剤:大内新興化学工業社製「ノクセラーNS」
【0040】
(脱硫ゴムを含有するゴム組成物の加工性および加硫ゴムの加硫後物性評価(300%伸長応力))
実施例1~4および比較例1~4で製造した脱硫ゴムを含有するゴム組成物のスコーチタイムを以下の方法で測定することにより、加工性を評価した。
・スコーチタイム:JIS K6300-1に準拠したムーニー粘度計により、ゴム組成物のスコーチタイム(t5)を測定した。評価は、比較例1の値を100とした指数評価を行い、数値が大きいほどスコーチタイムが長く、加工性に優れることを意味する。
【0041】
次いで、得られたゴム組成物について、150℃、25分間の条件で加硫して所定形状の試験片を作製し、得られた試験片を用いて以下の試験を行った。
・300%伸長応力:JIS K6251に準拠した引張試験(JIS3号ダンベル)で300%伸長応力を測定した。評価は、比較例1の値を100とした指数評価を行い、数値が大きいほど加硫後物性に優れることを意味する。
【0042】
【表3】
【0043】
表3の結果から、実施例1~5で製造した脱硫ゴムを含有するゴム組成物は、比較例1~5で製造した脱硫ゴムを含有するゴム組成物に比して加工性に優れることがわかる。加えて、実施例1~5で製造した脱硫ゴムを含有するゴム組成物の加硫ゴム(加硫ゴム3~6および10)は、比較例1~5で製造した脱硫ゴムを含有するゴム組成物の加硫ゴム(加硫ゴム1~2、7~9)に比して、加硫後物性に優れることがわかる。