(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092682
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】溶剤系着色インキと溶剤系メジウムとからなる溶剤系グラビアインキセットおよびその利用
(51)【国際特許分類】
C09D 11/03 20140101AFI20230627BHJP
【FI】
C09D11/03
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207843
(22)【出願日】2021-12-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木村 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】藤乘 徳治郎
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AD05
4J039BA20
4J039BA30
4J039BB01
4J039BC34
4J039BE01
4J039BE12
4J039EA48
4J039GA03
(57)【要約】
【課題】本発明は、事前に体質顔料をウレタン樹脂と、有機溶剤中に分散した溶剤系メジウムを溶剤系着色インキと組み合わせることで、インキ被膜の凝集力の低下やドクター摩耗を抑制し、更にはブロッキング防止剤と組み合わせることで、優れたラミネート強度や版かぶり、耐ブロッキング性を有する溶剤系グラビアインキセットを提供することを目的とする。
【解決手段】溶剤系着色インキと溶剤系メジウムとからなる溶剤系グラビアインキセットであって、
前記溶剤系着色インキが、着色顔料、ウレタン樹脂(A)、有機溶剤及び水を含有し、前記溶剤系メジウムが、体質顔料、ウレタン樹脂(B)、有機溶剤及びブロッキング防止剤を含有し、
前記ブロッキング防止剤が、脂肪酸アミド及び/又は炭化水素系粒子である、溶剤系グラビアインキセット。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤系着色インキと溶剤系メジウムとからなる溶剤系グラビアインキセットであって、
前記溶剤系着色インキが、着色顔料、ウレタン樹脂(A)、有機溶剤及び水を含有し、前記溶剤系メジウムが、体質顔料、ウレタン樹脂(B)、有機溶剤及びブロッキング防止剤を含有し、
前記ブロッキング防止剤が、脂肪酸アミド及び/又は炭化水素系粒子である、溶剤系グラビアインキセット。
【請求項2】
ウレタン樹脂(A)及び/又はウレタン樹脂(B)が、二塩基酸とジオールとからなるポリエステルポリオール由来の構成単位を含み、前記二塩基酸が、セバシン酸、コハク酸およびダイマー酸からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1に記載の溶剤系グラビアインキセット。
【請求項3】
体質顔料が、炭酸カルシウム、硫酸バリウム及びシリカからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1または2に記載の溶剤系グラビアインキセット。
【請求項4】
溶剤系メジウム総質量中のウレタン樹脂(B)の固形分質量が、5~20質量%である、請求項1~3いずれかに記載の溶剤系グラビアインキセット。
【請求項5】
溶剤系着色インキ総質量中のウレタン樹脂(A)の固形分質量と、溶剤系メジウム総質量中のウレタン樹脂(B)の固形分質量との質量比が、1:0.5~1:1.8である、請求項1~4いずれかに記載の溶剤系グラビアインキセット。
【請求項6】
溶剤系メジウムが、更に、塩素化ポリオレフィン樹脂を含む、請求項1~5いずれかに記載の溶剤系グラビアインキセット。
【請求項7】
溶剤系着色インキと溶剤系メジウムとの混合物である溶剤系グラビアインキを用いたグラビア印刷方法であって、
前記溶剤系着色インキが、着色顔料、ウレタン樹脂(A)、有機溶剤及び水を含有し、前記溶剤系メジウムが、体質顔料、ウレタン樹脂(B)、有機溶剤及びブロッキング防止剤を含有し、
前記ブロッキング防止剤が、脂肪酸アミド及び/又は炭化水素系粒子であり、
溶剤系着色インキと溶剤系メジウムの混合物100質量%に対して有機溶剤を10~120質量%配合する工程を含む、グラビア印刷方法。
【請求項8】
印刷速度が60~300m/分である、請求項7に記載のグラビア印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶剤系着色インキと溶剤系メジウムとからなる溶剤系グラビアインキセットおよびその印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラビアインキは、紙やプラスチック基材に美粧性、機能性を付与させる目的で広く用いられている。その美粧性の調節手段の一つとして、版の作成条件によって印刷濃度を調整する方法がある。しかし、印刷環境や印刷数量、印刷機の設定の状態による印刷濃度の変化や、印刷デザインごとに求められる印刷濃度が異なるため、印刷の現場では、印刷前や印刷中にグラビアインキに体質顔料などを含むメジウムや着色顔料を含む他色インキを添加して、グラビアインキの濃度調整や調色を行っている。
例えば、特許文献1では、水性系インキを透明な水性系メジウムで希釈し、レベリング性が良好で高精細な印刷物を得る方法が開示されているが、水性系インキは、一般的に、印刷物中の残留水分がラミネート接着剤に含まれるイソシアネートの硬化を阻害しやすく、ラミネート強度が発現しにくい。また、水性系インキに含まれる樹脂は、水溶性確保目的で高極性であり、疎水性である有機顔料との親和性が悪く、分散不良から版かぶりが発生しやすい。
特許文献2では、体質顔料を含む溶剤系インキで安定したラミネート強度を得る方法が開示されているが、体質顔料は、一般的に、インキ被膜の凝集力が低下し、耐ブロッキング性が悪化しやすい。また、樹脂で覆われていない体質顔料は研磨剤として働きやすく、ドクター摩耗が生じやすいため、版かぶりが発生しやすい。
上記の問題から、より高度な印刷適性、インキ被膜物性を満足するグラビアインキが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-183141号公報
【特許文献2】特開2016-94548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、体質顔料をウレタン樹脂と、有機溶剤中に分散した溶剤系メジウムを溶剤系着色インキと組み合わせることで、インキ被膜の凝集力の低下やドクター摩耗を抑制し、更にはブロッキング防止剤と組み合わせることで、優れたラミネート強度や版かぶり、耐ブロッキング性を有する溶剤系グラビアインキとなる溶剤系グラビアインキセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を鑑みて、鋭意検討を行った結果、以下に記載の溶剤系グラビアインキセットを使用することで課題解決できることを見出し、本願発明を成すに至った。
【0006】
本発明は、溶剤系着色インキと溶剤系メジウムとからなる溶剤系グラビアインキセットであって、
前記溶剤系着色インキが、着色顔料、ウレタン樹脂(A)、有機溶剤及び水を含有し、前記溶剤系メジウムが、体質顔料、ウレタン樹脂(B)、有機溶剤及びブロッキング防止剤を含有し、
前記ブロッキング防止剤が、脂肪酸アミド及び/又は炭化水素系粒子である、溶剤系グラビアインキセットに関する。
【0007】
また、本発明は、ウレタン樹脂(A)及び/又はウレタン樹脂(B)が、二塩基酸とジオールとからなるポリエステルポリオール由来の構成単位を含み、前記二塩基酸が、セバシン酸、コハク酸およびダイマー酸からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、上記溶剤系グラビアインキセットに関する。
【0008】
また、本発明は、体質顔料が、炭酸カルシウム、硫酸バリウム及びシリカからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、上記溶剤系グラビアインキセットに関する。
【0009】
また、本発明は、溶剤系メジウム総質量中のウレタン樹脂(B)の固形分質量が、5~20質量%である、上記溶剤系グラビアインキセットに関する。
【0010】
また、本発明は、溶剤系着色インキ総質量中のウレタン樹脂(A)の固形分質量と、溶剤系メジウム総質量中のウレタン樹脂(B)の固形分質量との質量比が、1:0.5~1:1.8である、上記溶剤系グラビアインキセットに関する。
【0011】
また、本発明は、溶剤系メジウムが、更に、塩素化ポリオレフィン樹脂を含む、上記溶剤系グラビアインキセットに関する。
【0012】
また、本発明は、溶剤系着色インキと溶剤系メジウムとの混合物である溶剤系グラビアインキを用いたグラビア印刷方法であって、
前記溶剤系着色インキが、着色顔料、ウレタン樹脂(A)、有機溶剤及び水を含有し、前記溶剤系メジウムが、体質顔料、ウレタン樹脂(B)、有機溶剤及びブロッキング防止剤を含有し、
前記ブロッキング防止剤が、脂肪酸アミド及び/又は炭化水素系粒子であり、
溶剤系着色インキと溶剤系メジウムの混合物100質量%に対して有機溶剤を10~120質量%配合する工程を含む、グラビア印刷方法に関する。
【0013】
また、本発明は、印刷速度が60~300m/分である、上記グラビア印刷方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、体質顔料をウレタン樹脂と、有機溶剤中に分散した溶剤系メジウムを溶剤系着色インキと組み合わせることで、インキ被膜の凝集力の低下やドクター摩耗を抑制し、更にはブロッキング防止剤と組み合わせることで、優れたラミネート強度や版かぶり、耐ブロッキング性を有する溶剤系グラビアインキとなる溶剤系グラビアインキセットを提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、溶剤系着色インキと溶剤系メジウムとからなる溶剤系グラビアインキセット、およびそれを用いたグラビア印刷方法であって、前記溶剤系着色インキが、着色顔料、ウレタン樹脂(A)、有機溶剤及び水を含有し、前記溶剤系メジウムが、体質顔料、ウレタン樹脂(B)、有機溶剤及びブロッキング防止剤を含有し、前記ブロッキング防止剤が、脂肪酸アミド及び/又は炭化水素系粒子である。好ましいグラビア印刷方法においては、溶剤系着色インキと溶剤系メジウムの混合物100質量%に対して有機溶剤を10~120質量%配合する工程を含むことで、耐ブロッキング性、版かぶり適性、ラミネート強度の課題解決に有効であることを見出した。すなわち、水を含む溶剤系着色インキと体質顔料およびブロッキング防止剤を含む溶剤系メジウムを配合することで耐ブロッキング性、版かぶり適性、ラミネート強度がより良化するものである。
【0016】
以下に例を挙げて本発明の実施形態を詳細に説明するが、以下に記載する事項は本発明の実施形態の一例ないし代表例であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0017】
本発明の溶剤系グラビアインキセットは、溶剤系着色インキと溶剤系メジウムとを配合しグラビアインキとしたのち、グラビア印刷に用いられる。配合後のグラビアインキは以下、単に「溶剤系グラビアインキ」、「グラビアインキ」または「インキ」と略記する場合があるが同義である。また、溶剤系グラビアインキが印刷された層は「印刷層」、「インキ層」または「インキ被膜」と記載する場合があるが同義である。
【0018】
<溶剤系着色インキ>
本発明の溶剤系グラビアインキセットに用いられる溶剤系着色インキは、着色顔料、ウレタン樹脂(A)、有機溶剤及び水を含有する。
【0019】
<溶剤系メジウム>
本発明の溶剤系グラビアインキセットに用いられる溶剤系メジウムは、体質顔料、ウレタン樹脂(B)、有機溶剤及びブロッキング防止剤を含有する。この溶剤系メジウムは溶剤系着色インキの希釈に用いられる。溶剤系メジウムは、着色顔料を含有しないが、体質顔料を含有する。
【0020】
<着色顔料>
本発明で用いる溶剤系着色インキは着色顔料を含む。当該着色顔料は、有機顔料、無機顔料のいずれでも使用可能である。中でも、無機顔料では酸化チタンを含むもの、有機顔料では、有機化合物、有機金属錯体からなるものの使用が好ましい。なお、溶剤系着色インキは後述する体質顔料を含んでいてもよい。
【0021】
<有機顔料>
上記有機顔料としては、以下の例には限定されないが、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系、カーボンブラック系などの顔料が挙げられる。また、例えば、カーミン6B、レーキレッドC、パーマネントレッド2B、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、カーミンFB、クロモフタルイエロー、クロモフタルレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッド、インダンスロンブルー、ピリミジンイエロー、チオインジゴボルドー、チオインジゴマゼンタ、ペリレンレッド、ペリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、アニリンブラック、ジケトピロロピロールレッド、昼光蛍光顔料等が挙げられる。
【0022】
有機顔料の色相としては黒色顔料、藍色顔料、緑色顔料、赤色顔料、紫色顔料、黄色顔料、橙色顔料、茶色顔料からなる群より選ばれる少なくとも一種を使用することが好ましい。また、黒色顔料、藍色顔料、赤色顔料、黄色顔料、からなる群より選ばれる一種または二種以上を使用することが更に好ましい。有機顔料として具体的な例をカラーインデックス(Colour Index International、略称C.I.)のC.I.ナンバーで以下に示すと、
C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントブラック7
などが挙げられ、一種または二種以上を使用することがより好ましい。
【0023】
<無機顔料>
無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられ、アルミニウムはリーフィングタイプまたはノンリーフィングタイプがあるが、ノンリーフィングタイプが好ましい。
【0024】
<体質顔料>
本発明で用いる溶剤系メジウムは体質顔料を含む。
体質顔料としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、シリカ、タルク、カオリン、クレー等が挙げられる。これらの中では、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、及びシリカから選ばれる一種または二種以上を使用することが好ましく、炭酸カルシウム、硫酸バリウム及びシリカからなる群より選ばれる少なくとも一種を使用することがより好ましい。体質顔料は、平均粒子径0.1μm~6μmが好ましく、0.5μm~5μmがより好ましく、1μm~4μmが更に好ましい。平均粒子径が小さい場合、ドクターで掻きとれないため版かぶりが発生しやすくなり、平均粒子径が大きい場合は、グラビア版のセル内に粒子が入らず、基材へ転移しなくなる。また、モース硬度は1~10が好ましく、2~8がより好ましく、3~7が更に好ましい。モース硬度が小さい場合、印刷時にかかる力で粉砕されやすく、モース硬度が大きい場合、版やドクターの摩耗を促進し、版かぶりが発生しやすくなる。また、屈折率は1.3~2.4が好ましく、1.3~2.2がより好ましく、1.3~2.0が更に好ましい。屈折率が大きい場合、白い濁りが強くなり、印刷物の意匠性が損なわれる可能性が高くなる。
また、溶剤系メジウム中の体質顔料の含有量は、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。
【0025】
<バインダー樹脂>
本発明の有機溶剤系グラビアインキセットは、バインダー樹脂を含む溶剤系着色インキとバインダー樹脂を含む溶剤系メジウムとからなる。バインダー樹脂とは有機溶剤系グラビアインキセットに用いられる樹脂成分を指し、いわゆる結着樹脂である。そして、本発明におけるバインダー樹脂は、ウレタン樹脂(A)もしくはウレタン樹脂(B)及び、必要に応じて塩化ビニル-酢酸ビニル樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂などの塩素化ポリオレフィンを含むものである。樹脂を含有することで、版かぶり適性、ラミネート強度及び耐ブロッキング性が向上する。
【0026】
<ウレタン樹脂(A)およびウレタン樹脂(B)>
ウレタン樹脂(A)およびウレタン樹脂(B)は、本発明のグラビアインキセットを形成する溶剤系着色インキおよび溶剤系メジウムにおいてラミネート強度の向上、顔料分散性、印刷適性向上の役割を担うものである。
ウレタン樹脂(A)およびウレタン樹脂(B)はウレタン結合を有する樹脂であればよく、公知の樹脂から適宜選択して用いることができる。ウレタン樹脂(A)およびウレタン樹脂(B)としては、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとからなるウレタン樹脂;ポリオールとポリイソシアネートとからなる末端イソシアネートのウレタンプレポリマーと、ポリアミンのような鎖伸長剤とを反応させることにより得られるウレタンウレア樹脂;が挙げられ、好適に用いられる。このようなウレタン樹脂の製造方法としては例えば、特開2013-256551号公報、特開2018-127545号公報、特開2013-213109号公報に記載の方法が挙げられる。
【0027】
<ポリオール>
上記ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ひまし油ポリオール、水素添加ひまし油ポリオール、ダイマージオール、水添ダイマージオールが挙げられる。これらポリオールの中では、ポリエーテルポリオール、及びポリエステルポリオールからなる群より選ばれる一種または二種以上を用いるのが好ましい。
【0028】
<ポリエーテルポリオール>
上記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、及びこれらの共重合体であるポリエーテルポリオールが好適なものとして挙げられる。
【0029】
<ポリエステルポリオール>
上記ポリエステルポリオールとしては、例えば、多塩基酸とジオールの縮合物が挙げられる。ポリエステルポリオールの数平均分子量は、200~5,000であることが好ましい。なおポリオールの数平均分子量は、末端を水酸基として水酸基価から計算する値を意味し、(式1)により求められる。
(式1)
ポリオールの数平均分子量=1,000×56.1× 水酸基の価数/水酸基価
多塩基酸は、例えば、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸、デカン酸、ダイマー酸等の炭素数2~20の二塩基酸が好適に用いられ、セバシン酸、コハク酸、ダイマー酸がより好ましく、セバシン酸、コハク酸が更に好ましい。
ジオールは、分岐状ジオールを含むものが好適に用いられ、上記分岐状ジオールとしては、例えば、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(以下、BEPGと略記する)、2-メチル-1,3-プロパンジオール(以下、MPOと略記する)、3-メチル-1,5-ペンタンジオール(以下、MPDと略記する)、ネオペンチルグリコール(以下、NPGと略記する)、1,2-プロピレングリコール(以下、PGと略記する)、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,3-ブタンジオール、ジプロピレングリコールが挙げられる。
また一実施形態として、上記ジオールは、分岐状ジオールと直鎖状ジオールとを含むことが好ましい。上記直鎖状ジオールとしては、例えば、エチレングリコール(以下、EGと略記する)、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール(以下、1,3-PDと略記する)、1,4-ブタンジオール(以下、1,4-BDと略記する)、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,4-ブチンジオール、1,4-ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールが挙げられる。
中でも、好ましくは炭素数8以下、より好ましくは炭素数6以下の直鎖状ジオールであり、EG、1,3-PD、1,4-BD、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール等が好適に用いられる。
【0030】
<ポリイソシアネート>
上記ポリイソシアネートとしては、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知のポリイソシアネートを使用できる。このようなポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートが挙げられる。これらは3量体となってイソシアヌレート環構造を形成していてもよい。
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートが挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートが挙げられる。
脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加された4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネートが挙げられる。
中でも好ましくは、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネートの3量体からなる群から選ばれる少なくとも一種である。
これらのポリイソシアネートは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0031】
<ポリアミン>
ポリアミンとしては、以下に限定されるものではないが、分子量500以下が好ましく、ジアミン系、多官能アミン系等のものが挙げられる。また、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン、p-フェニレンジアミンなどのジアミン系鎖延長剤の他、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピルジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミンなど水酸基を有するジアミン系鎖延長剤も用いることが出来る。これらの鎖伸長剤は一種または二種以上を混合して用いることができる。また必要に応じて3官能以上の多官能のアミン系鎖延長剤も使用出来る。具体的には、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン:(IBPA、3,3’-ジアミノジプロピルアミン)、トリエチレンテトラミン、N-(3-アミノプロピル)ブタン-1,4-ジアミン:(スペルミジン)、6,6-イミノジヘキシルアミン、3,7-ジアザノナン-1,9-ジアミン、N,N’-ビス(3‐アミノプロピル)エチレンジアミンが挙げられる。中でも好ましくはイソホロンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イミノビスプロピルアミンである。
これらのポリアミンは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
上記ポリアミンは、1級、2級の1価のアミノ基を有する化合物を含んでもよい。これらの化合物は、過剰な反応を停止することを目的とした重合停止剤として機能する。かかる化合物としては例えば、ジ-n-ブチルアミン等のジアルキルアミン類や2-エタノールアミンなどのアミノアルコール類等があげられる。更に、特にウレタン樹脂中にカルボキシル基を導入したいときには、グリシン、L-アラニン等のアミノ酸を重合停止剤として用いることができる。重合停止剤を用いるときには、重合停止剤と鎖延長剤とを一緒に使用して鎖延長反応を行ってもよく、また鎖延長剤によりある程度鎖延長反応を行った後に重合停止剤を単独に添加して重合停止反応を行ってもよい。一方、重合停止剤を用いなくても分子量のコントロールは可能であるが、この場合には鎖延長剤を含む溶液中にプレポリマーを添加する方法が反応制御という点で好ましい。
【0033】
ウレタン樹脂(A)およびウレタン樹脂(B)は、上述のとおり、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールからなる群より選ばれる少なくとも一種のポリオールに由来する構成単位を含むものが好ましい。特にポリエステルポリオールに由来する構成単位が好ましい。
ポリエステルポリオールに由来する構成単位の含有率は、ウレタン樹脂(A)およびウレタン樹脂(B)の固形分質量を基準として、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは55質量%以上、特に好ましくは65質量%以上である。上記含有率であると、版かぶり適性、ラミネート強度、及び耐ブロッキング性に優れるものとなる。
【0034】
ウレタン樹脂(A)およびウレタン樹脂(B)は、印刷適性の観点から、重量平均分子量が10,000~100,000であることが好ましい。また、ガラス転移点は好ましくは0℃以下であり、より好ましくは-60℃~0℃であり、更に好ましくは-40~-5℃である。
ウレタン樹脂(A)およびウレタン樹脂(B)は、印刷適性及びラミネート強度の観点から、アミン価及び/又は水酸基価を有するものが好ましい。アミン価は、好ましくは0.5~20mgKOH/gであり、より好ましくは1~15mgKOH/gである。水酸基価は、好ましくは0.5~30mgKOH/gであり、より好ましくは1~20mgKOH/gである。
【0035】
溶剤系着色インキ総質量中のウレタン樹脂(A)の固形分質量は、ラミネート強度、版かぶり、耐ブロッキング性の観点から、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましい。また、20質量%以下が好ましく、18質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。
溶剤系メジウム総質量中のウレタン樹脂(B)の固形分質量は、ラミネート強度、版かぶり、耐ブロッキング性の観点から、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましい。また、20質量%以下が好ましく、18質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。
【0036】
ラミネート強度、版かぶり、耐ブロッキング性の観点から、溶剤系グラビアインキセットを構成する溶剤系着色インキ中のウレタン樹脂(A)の固形分質量と、溶剤系メジウム総質量中のウレタン樹脂(B)の固形分質量との質量比は、1:0.5~1:1.8が好ましく、1:0.6~1:1.5がより好ましく、1:0.7~1:1.3が更に好ましい。
【0037】
<塩素化ポリオレフィン樹脂>
本発明で用いられる溶剤系メジウムは、耐ブロッキング性、及びラミネート強度向上の観点から、本発明の効果を損なわない範囲で、バインダー樹脂として塩素化ポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。なお、本発明で用いられる溶剤系着色インキが塩素化ポリオレフィン樹脂を含むことを排除するものではない。
塩素化ポリオレフィン樹脂とは、下記一般式(1)で表される、α-オレフィンの重合体の水素を塩素置換した構造を有するものである。
一般式(1)
CH2=CH-R1
(一般式(1)中、R1は炭素数1以上のアルキル基である。)
塩素化ポリオレフィン樹脂は、柔軟性を持つアルキル基を分枝構造として有するため、低温下でも粘稠な液体であり、極少量の使用量で基材接着性を向上させることができる。塩素化ポリオレフィン樹脂のポリオレフィン構造は、特に制限されず、例えば、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン系不飽和炭化水素の単独重合体又は共重合体を含有する樹脂が挙げられる。中でも、ポリプロピレン構造(すなわち塩素化ポリプロピレン構造)を含むものがより好ましい。
この場合、ポリエステル構造単位を有するウレタン樹脂(A)および/またはウレタン樹(B)と併用した場合に優れた耐ブロッキング性、ラミネート強度が得られる。
【0038】
塩素化ポリオレフィン樹脂は、塩素含有率が25~45質量%であることが好ましく、26~40質量%であることがより好ましい。ここで塩素含有率とは、塩素化ポリオレフィン樹脂の質量を基準とした場合の塩素原子の含有量(質量%)をいう。
【0039】
後述する有機溶剤への溶解性の観点から、塩素化ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5,000~40,000である。
耐ブロッキング性の観点から、塩素化オレフィン樹脂の含有率は、着色インキの質量を基準として、好ましくは、0.1~2質量%であり、より好ましくは0.2~1質量%である。
【0040】
<塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂>
本発明で用いられる溶剤系着色インキと溶剤系メジウムは、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂を含んでもよい。
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂とは、塩化ビニルと酢酸ビニルが共重合した樹脂をいう。該塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂の水酸基価は10~200mgKOH/gである。水酸基価は上記範囲内であれば、樹脂の溶解性に優れる。また、ポリウレタン樹脂と組み合わせることにより基材への密着性、皮膜物性、ラミネート強度等に優れる。より好ましくは、30~130mgKOH/gである。
【0041】
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂の重量平均分子量は5,000~100,000のものが好ましく、20,000~70,000が更に好ましい。塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂の固形分100質量%中の酢酸ビニルモノマー由来の構造は、1~30質量%が好ましく、塩化ビニルモノマー由来の構造は、70~95質量%であることが好ましい。ポリウレタン樹脂との併用で耐ブロッキング性、版かぶり適性、ラミネート強度等が良好となるためである。また、塩化ビニルと酢酸ビニルはガラス転移温度が50℃~90℃であることが好ましい。
【0042】
<ブロッキング防止剤>
本発明で用いられる溶剤系メジウムは、ブロッキング防止剤を含み、脂肪酸アミド及び/又は炭化水素系粒子である。なお、本発明で用いられる溶剤系着色インキがブロッキング防止剤を含むことを排除するものではない。
【0043】
<脂肪酸アミド>
前記脂肪酸アミドは、脂肪酸残基とアミド基を有するものであれば特に限定されない。脂肪酸アミドは溶剤系グラビアインキセットを構成する溶剤系着色インキおよび溶剤系メジウムでは溶解、あるいは分散されているが、印刷後には印刷被膜の表面に配向し、滑り性を発現させて印刷ロールで重なる基材に対する耐ブロッキング性を向上させると考えられる。なお本説明は技術的考察に基づくものであり、発明を何ら限定するものではない。
【0044】
脂肪酸アミドとしては、例えば、モノアミド、置換アミド、ビスアミド、メチロールアミド、およびエステルアミド等が挙げられ、耐ブロッキング性が向上するため、モノアミド、置換アミド、およびビスアミドからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。脂肪酸アミドの含有量は、溶剤系グラビアインキセットを構成する溶剤系着色インキおよび溶剤系メジウム100重量%中0.01~0.8重量%であることが好ましい。含有量が0.8重量%以下となるとラミネート外観およびラミネート強度が良好となり、更にラミネート阻害となることはない。また、含有量が0.01重量%以上であれば、耐ブロッキング性が良好となる。なお、含有量として更に好ましくは0.02~0.5重量%である。
【0045】
<モノアミド>
モノアミドは下記一般式(2)で表される。
一般式(2)
R2-CONH2
(式中、R2は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表す。)
モノアミドとしては例えば、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等が挙げられる。
【0046】
<置換アミド>
置換アミドは下記一般式(3)で表される。
一般式(3)
R3-CONH-R4
(式中、R3およびR4は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表し、同一でも異なっていても良い。)
置換アミドとしては例えば、N-オレイルパルミチン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド等が挙げられる。
【0047】
<ビスアミド>
ビスアミドは下記一般式(4)あるいは一般式(5)で表される。
一般式(4)
R5-CONH-R6-HNCO-R7
一般式(5)
R8-NHCO-R9-CONH-R10
(式中、R5、R7、R8、およびR10は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表し、同一でも異なっていても良く、R6およびR9は炭素数1~10のアルキレン基またはアリーレン基を表す。)
ビスアミドとしては例えば、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミド等が挙げられる。
【0048】
<メチロールアミド>
メチロールアミドは下記一般式(6)で表される。
一般式(6)
R11-CONHCH2OH
(式中、R11は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表す。)
メチロールアミドとしては例えば、メチロールパルミチン酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘン酸アミド、メチロールヒドロキシステアリン酸アミド、メチロールオレイン酸アミド、メチロールエルカ酸アミド等が挙げられる。
【0049】
<エステルアミド>
エステルアミドは、下記一般式(7)で表される。
一般式(7)
R12-CONH-R13-OCO-R14
(式中、R12およびR14は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表し、同一でも異なっていても良く、R13は炭素数1~10のアルキレン基またはアリーレン基を表す。)
エステルアミドとしては例えば、ステアロアミドエチルステアレート、オレイロアミドエチルオレアレート等が挙げられる。
【0050】
なお、前記アリーレン基としてはフェニレン基、トルイレン基、m-キシリレン基から選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0051】
脂肪酸アミドの融点は、50℃~150℃であることが好ましい。
該当するものとしては、モノアミドとしては例えば、ラウリン酸アミド(融点87℃)、パルミチン酸アミド(融点100℃)、ステアリン酸アミド(融点101℃)、ベヘン酸アミド(融点110℃)、ヒドロキシステアリン酸アミド(融点107℃)、オレイン酸アミド(融点75℃)、エルカ酸アミド(融点81℃)等が挙げられる。
置換アミドとしては例えば、N-オレイルパルミチン酸アミド(融点68℃)、N-ステアリルステアリン酸アミド(融点95℃)、N-ステアリルオレイン酸アミド(融点67℃)、N-オレイルステアリン酸アミド(融点74℃)、N-ステアリルエルカ酸アミド(融点69℃)等が挙げられる。
ビスアミドとしては例えば、メチレンビスステアリン酸アミド(融点142℃)、エチレンビスステアリン酸アミド(融点145℃)、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(融点145℃)、エチレンビスベヘン酸アミド(融点142℃)、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド(融点140℃)、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド(融点142℃)、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド(融点135℃)、エチレンビスオレイン酸アミド(融点119℃)、エチレンビスエルカ酸アミド(融点120℃)、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド(融点110℃)、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド(融点141℃)、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミド(融点136℃)、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド(融点118℃)、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミド(融点113℃)等が挙げられる。
メチロールアミドとしては例えば、メチロールステアリン酸アミド(融点110℃)等が挙げられる。
エステルアミドとしては例えば、ステアロアミドエチルステアレート(融点82℃)等が挙げられる。上記の中でも、ラミネート強度を維持するために分子量が200~800のものが好ましい。更に好ましくは250~700である。
【0052】
また、脂肪酸アミドを構成する脂肪酸としては、炭素数12~22の飽和脂肪酸および/または炭素数16~25の不飽和脂肪酸が好ましく、炭素数16~18の飽和脂肪酸および/または炭素数18~22の不飽和脂肪酸がより好ましい。飽和脂肪酸として特に好ましくはラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ヒドロキシステアリン酸であり、不飽和脂肪酸として特に好ましくはオレイン酸、エルカ酸である。
パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、エルカ酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の脂肪酸からなる脂肪酸アミドが最も好ましい。
【0053】
<炭化水素粒子>
本発明で用いられるブロッキング防止剤として、炭化水素系粒子を含有することができる。また、脂肪酸アミドとの併用も好ましい。炭化水素系粒子は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンが挙げられる。常温25℃で流動状ものと固体のものがあるが、固体のものが好ましい。中でも融点が85~120℃のものがより好ましい。
【0054】
<水>
本発明で用いられる溶剤系着色インキは、版かぶり適性の観点から、水を含有し、印刷インキ総質量中に0.1~10質量%含有することが好ましい。0.1~8質量%の範囲であることがより好ましい。なお、溶剤系メジウムが、水を含むことを排除するものではない。
【0055】
<有機溶剤>
本発明で用いられる溶剤系着色インキと溶剤系メジウムは、液状媒体として有機溶剤を含む。使用される有機溶剤としては、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといったケトン系有機溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、エステル系有機溶剤、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、などのアルコール系有機溶剤など公知の有機溶剤を使用できる。中でも、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤を含まない有機溶剤(ノントルエン系有機溶剤)がより好ましい。更に好ましくは芳香族系有機溶剤および/またはメチルエチルケトン(以下「MEK」と表記する)などのケトン系有機溶剤を含まない有機溶剤である。
すなわち、有機溶剤中にエステル系有機溶剤を主成分(50質量%以上)として含有することが好ましい。特にエステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤を含むものが好ましい。
【0056】
(溶剤系着色インキの製造方法)
本発明の溶剤系グラビアインキセットで用いられる溶剤系着色インキは、着色顔料、ウレタン樹脂(A)、有機溶剤及び水、さらに必要に応じて、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂等をあらかじめ撹拌混合機により混ぜておき、更にその混合物を分散機を用いて顔料分散工程を経て、得られた分散体に、必要に応じて、ウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂溶液、水、ブロッキング防止剤、各種添加剤や有機溶剤等を追加混合して製造できる。分散機としては一般に使用される、例えばローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミル、ビーズミルなどを用いることができる。顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度などを適宜調節することにより、調整することができる。
【0057】
(溶剤系メジウムの製造方法)
本発明の溶剤系グラビアインキセットで用いられる溶剤系メジウムは、体質顔料、ウレタン樹脂(B)、有機溶剤等を撹拌混合機により混ぜておき、ブロッキング防止剤、必要に応じて、塩素化ポリプロピレン樹脂溶液、水各種添加剤や有機溶剤等を追加混合して本発明の溶剤系メジウムを製造できる。
【0058】
溶剤系メジウムの粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から25℃において、10mPa・s以上であることが好ましく、溶剤系メジウム製造時や印刷時の作業性効率の観点から1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。また、20~500mPa・sであると、なお好ましい。上記粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定された粘度値を採用できる。
【0059】
(グラビア印刷方法)
本発明の溶剤系グラビアインキセットは、溶剤系着色インキに溶剤系メジウムを配合する。溶剤系メジウムの配合量は、耐ブロッキング性、版かぶり、ラミネート強度の観点から、溶剤系着色インキに対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、最も好ましくは60質量%以上である。また、好ましくは400質量%以下、より好ましくは300質量%以下、更に好ましくは200質量%以下、最も好ましくは150質量%以下である。
溶剤系着色インキと溶剤系メジウムの配合方法に特に制限はないが、好ましくは、溶剤系着色インキ総質量中のウレタン樹脂(A)の固形分質量と、溶剤系メジウム総質量中のウレタン樹脂(B)の固形分質量との質量比が、1:0.5~1:1.8である。
【0060】
有機溶剤の配合比については、版かぶりの観点から、溶剤系着色インキと溶剤系メジウムの混合物100質量%に対して有機溶剤を10~120質量%が好ましく、30~100質量%がより好ましく、40~90質量%が更に好ましい。
【0061】
グラビアインキの粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から25℃において、10mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業効率の観点から1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。20~500mPa・sであることがなお好ましい。上記粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定された粘度値を採用できる。
【0062】
(グラビア印刷版)
本発明における溶剤系グラビアインキをグラビア印刷する場合、グラビア版を用いて印刷される。本発明においてグラビア版は金属製の円筒状のものであり、彫刻または腐蝕・レーザーにて凹部を各色で作成される。彫刻とレーザーは使用に制限は無く、柄に合わせて任意に設定が可能である。線数としては100線~300線/インチのものが適宜使用され、線数の大きいものほど高精細な印刷が可能である。
(グラビア印刷機)
グラビア印刷機は、上記グラビア版を具備した印刷機を好適に使用できる。通常色ごとに印刷ユニットが設置されており、各ユニットにはグラビア版が輪転すると同時にインキを掻き取るドクターブレードが配置され、基材は各印刷ユニットを通過して凹版印刷されたのちにフィルム巻取り物となる。場合に応じてグラビア版にファニッシャーロールを使用することが可能である。また、各ユニットには乾燥オーブンが設けられており、印刷された基材がオーブンを通って乾燥される。乾燥温度は通常40~60℃程度である。
【0063】
印刷速度としては、版かぶりの観点から、60~300m/分が好ましく、100~270m/分がより好ましく、130~250m/分が更に好ましい。
【0064】
(基材1)
本発明における溶剤系グラビアインキを適用できる基材としては、ポリエチレンおよびポリプロピレンその他のポリオレフィン基材、ポリカーボネート基材、ポリエステル基材(ポリエチレンテレフタレートやポリ乳酸など)、ポリスチレン基材、AS樹脂(スチレンアクリロニトリルコポリマー)もしくはABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレンポリマー)等のポリスチレン系基材、ポリアミド基材、ポリ塩化ビニル基材、ポリ塩化ビニリデンの各種基材、セロハン基材、紙基材もしくはアルミニウム箔基材など、もしくはこれらの複合材料からなるフィルム状、またはシート状のものがある。中でも、ガラス転移温度が高いポリエステル基材、ポリアミド基材が好適に用いられる。
【0065】
上記基材は、金属酸化物などを表面に蒸着コート処理および/またはポリビニルアルコールなどコート処理が施されていてもよく、例えば、酸化アルミニウムを基材表面に蒸着させた凸版印刷株式会社製GL-AEや、大日本印刷株式会社製IB-PET-PXB等が挙げられる。さらに、必要に応じて帯電防止剤、紫外線防止剤などの添加剤を処理したものや、基材の表面をコロナ処理あるいは低温プラズマ処理したものなども使用することができる。
【0066】
(積層体)
本発明における溶剤系グラビアインキを基材1上に印刷してなる印刷物は、例えば、基材2を、ラミネート加工して積層体とすることができる。
本実施形態の積層体は、前記印刷物の印刷面にイミン系、イソシアネート系、ポリブタジエン系、チタン系などの各種アンカーコート剤を塗布後、溶融ポリエチレン樹脂を介してプラスチック基材を積層する通常のエクストルージョンラミネート(押し出しラミネート)法、印刷面にウレタン系等の接着剤を塗工し、その上にプラスチック基材を積層するドライラミネート法(以下DLラミネートと省略)やノンソルベントラミネート法、また印刷面に直接溶融ポリプロピレンを圧着して積層するダイレクトラミネート法等、公知のラミネート工程により得ることができる。
【0067】
ノンソルベントラミネート法とは、固形分100質量%の接着剤を印刷物の印刷面に塗布し、シーラントと圧着して積層する方法である。接着剤としては、ドライラミネート用接着剤と同様にポリオール成分/ポリイソシアネート成分の2液型が主流であり、具体的には東洋モートン株式会社製・EA-373A/B等が挙げられる。無溶剤型ラミネート方式における一般的な接着剤の固形分塗布量は、用途に応じて1~5g/m2が好ましく、一般的には1.5~3.5g/m2の範囲である。
【0068】
(基材2)
ラミネート加工により印刷物と貼り合せる基材2としては、基材1で示した前記各種フィルム、セロハンなどの透明基材が挙げられる。具体的には、三井化学東セロ株式会社製TUX-FCD(LLDPE)、東レ株式会社製ZK93KM(CPP)等がある。また、包装材料として積層体のガスバリア性、水蒸気バリア性等を向上させる目的で、金属箔あるいは金属蒸着フィルム等を用いることもあり、金属箔としてはアルミニウム箔が好ましい。金属蒸着フィルムとしてはアルミニウム蒸着フィルムが好ましく、例えば、麗光株式会社製ダイアラスター(アルミニウム蒸着PET)、東レ株式会社製2203(アルミニウム蒸着CPP)等がある。なお、PETはポリエチレンテレフタラートフィルムを表し、LLDPEは直鎖状低密度ポリエチレンフィルム、CPPは未延伸のポリプロピレンフィルムを表す。
【実施例0069】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、以下の実施態様は本発明のごく一例であり、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部および%は、特に注釈の無い場合、質量部および質量%を表す。
【0070】
(アミン価の測定方法)
アミン価は、樹脂1g中に含有するアミノ基を中和するのに必要とする塩酸の当量と同量の水酸化カリウムのmg数でJISK0070に準じて以下の方法に従って求めた。
試料を0.5~2g精秤した(試料固形分:Sg)。精秤した試料にメタノール/メチルエチルケトン=60/40(質量比)の混合溶液50mLを加え溶解させた。得られた溶液に指示薬としてブロモフェノールブルーを加え、得られた溶液を0.2mol/Lエタノール性塩酸溶液(力価:f)で滴定を行なった。溶液の色が緑から黄に変化した点を終点とし、この時の滴定量(AmL)を用い、下記(式2)によりアミン価を求めた。
(式2)
アミン価=(A×f×0.2×56.108)/S [mgKOH/g]
【0071】
(数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)の測定方法)
数平均分子量(Mn)と質量平均分子量(Mw)の測定は、昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「ShodexGPC System-21」を用いた。GPCは溶媒に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、溶媒としてはテトラヒドロフラン、分子量の決定はポリスチレン換算で行った。
【0072】
(水酸基価の測定方法)
JISK0070に記載の方法に従って求めた。
【0073】
[合成例1](ウレタン樹脂A1の合成)
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、セバシン酸とネオペンチルグリコールとを質量比1:1で縮重合して得られた数平均分子量2,000のポリエステルポリオール22部およびイソホロンジイソシアネート(以下IPDIとも略す)5部、並びに、酢酸エチル20部を仕込み、窒素気流下に120℃で6時間反応させ、末端イソシアネートプレポリマーの溶液を得た。次いでイソホロンジアミン(以下IPDAとも略す)1.5部、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン(以下AEAとも略す)1部、ジブチルアミン(以下DBAとも略す)0.5部、酢酸エチル35部およびイソプロピルアルコール(以下IPAとも略す)15部を混合したものへ、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶液を室温で徐々に添加し、次に50℃で1時間反応させ、固形分30%、質量平均分子量62,000、水酸基価18.0mgKOH/g、アミン価4.5mgKOH/gのウレタン樹脂A1溶液を得た。
【0074】
[合成例2](ウレタン樹脂A2の合成)
表1に示す原料を用い、合成例1と同様の方法により、ウレタン樹脂溶液A2を得た。なお、表1中の略称は下記の通りである。
・NPG/SuA:ネオペンチルグリコールとコハク酸の縮合物であるポリエステルポリオール 数平均分子量2000
・NPG/AdA:ネオペンチルグリコールとアジピン酸の縮合物であるポリエステルポリオール 数平均分子量2000
・NPG/SeA:ネオペンチルグリコールとセバシン酸の縮合物であるポリエステルポリオール 数平均分子量2000
・NPG/DiA:ネオペンチルグリコールとダイマー酸の縮合物であるポリエステルポリオール 数平均分子量2000
【0075】
[合成例3](ウレタン樹脂B1の合成)
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、コハク酸とネオペンチルグリコールとを質量比1:1で縮重合して得られた数平均分子量2,000のポリエステルポリオール20部、1,3プロパンジオール(以下1,3PDとも略す)2部およびIPDI5部、並びに、酢酸エチル20部を仕込み、窒素気流下に120℃で6時間反応させ、末端イソシアネートプレポリマーの溶液を得た。次いでIPDA1.5部、AEA1部、DBA0.5部、酢酸エチル35部およびIPA15部を混合したものへ、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶液を室温で徐々に添加し、次に50℃で1時間反応させ、固形分30%、質量平均分子量62,000、水酸基価18.0mgKOH/g、アミン価4.5mgKOH/gのウレタン樹脂B1溶液を得た。
【0076】
[合成例4~6](ウレタン樹脂B2~B4の合成)
表1に示す原料を用い、合成例3と同様の方法により、ウレタン樹脂溶液B2~B4を得た。
【0077】
以下の製造例において、その他樹脂として以下のものを用いた。
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂溶液:塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂(日信化学社製 ソルバインAL 重合度300、数平均分子量22,000、Tg76℃)30部を酢酸エチル70部に混合溶解させたもの
塩素化ポリオレフィン樹脂溶液:スーパークロン390S(日本製紙ケミカル社製 塩素含有率36質量%)50部を酢酸エチル50部に混合溶解させたもの
【0078】
以下の製造例において、ブロッキング防止剤として以下のものを用いた。
脂肪酸アミド:ラウリン酸アミド(融点87℃)
炭化水素系粒子:(ポリエチレン系、融点107℃)
【0079】
[溶剤系着色インキ製造例1]
C.I.ピグメントブルー15:3を10部、ウレタン樹脂A1を40部、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂溶液5部、塩素化ポリオレフィン樹脂溶液1部、混合溶剤(酢酸プロピル(NPAC)/IPA=70/30(質量比))41部を撹拌混合しサンドミルで練肉した後、水2部、ブロッキング防止剤である脂肪酸アミド0.5部、炭化水素系粒子0.5部を撹拌混合し、溶剤系着色インキC1を得た。
【0080】
[溶剤系着色インキ製造例2]
C.I.ピグメントブルー15:3を10部、ウレタン樹脂A2を40部、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂溶液5部、塩素化ポリオレフィン樹脂溶液1部、混合溶剤(酢酸プロピル(NPAC)/IPA=70/30(質量比))41部を撹拌混合しサンドミルで練肉した後、水2部、ブロッキング防止剤である脂肪酸アミド0.5部、炭化水素系粒子0.5部を撹拌混合し、溶剤系着色インキC2を得た。
【0081】
[溶剤系メジウム製造例1]
シリカを10部、ウレタン樹脂B1を40部、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂溶液5部、塩素化ポリオレフィン樹脂溶液1部、混合溶剤(酢酸プロピル(NPAC)/IPA=70/30(質量比))41部、水2部、脂肪酸アミド0.5部、炭化水素粒子0.5部を撹拌混合し、溶剤系メジウムM1を得た。
【0082】
[溶剤系メジウム製造例2~12](溶剤系メジウムM2~M12の製造)
表2に示す原料および仕込み比率で、溶剤系メジウム製造例1と同様の方法により、溶剤系メジウムM2~M12を得た。
【0083】
[比較製造例1]
C.I.ピグメントブルー15:3を10部、ウレタン樹脂A2を40部、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂溶液5部、混合溶剤(酢酸プロピル(NPAC)/IPA=70/30(質量比))45部を撹拌混合しサンドミルで練肉し、溶剤系着色インキCC1を得た。
【0084】
[比較製造例2]
C.I.ピグメントブルー15:3を10部、ジョンクリルPDX-7775(アクリルポリマーエマルション)を27部、水63部を撹拌混合しサンドミルで練肉し、水系着色インキCC2を得た。
【0085】
[比較製造例3]
ウレタン樹脂B3を40部、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂溶液5部、塩素化ポリオレフィン樹脂溶液1部、混合溶剤(酢酸プロピル(NPAC)/IPA=70/30(質量比))52部、水2部を撹拌混合し、溶剤系メジウムMM1を得た。
【0086】
[比較製造例4]
シリカを10部、ジョンクリルPDX-7775(アクリルポリマーエマルション)を27部、水63部を撹拌混合し、水系メジウムMM2を得た。
【0087】
[実施例1](インキS1の製造)
溶剤系着色インキC1を50部、溶剤系メジウムM3を50部、混合溶剤(NPAC / IPA = 70 / 30)50部を攪拌混合し、インキS1を得た。
【0088】
[実施例2~23](インキS2~S23の製造)
表3に示す原料および仕込み比率で、実施例1と同様の方法により、インキS2~S22を得た。
【0089】
[比較例1](インキSS1の製造)
溶剤系着色インキCC1を50部、溶剤系メジウムMM1を50部、混合溶剤(NPAC / IPA = 70 / 30)50部を攪拌混合し、インキSS1を得た。
【0090】
[比較例2](インキSS2の製造)
水系着色インキCC2を50部、水系メジウムMM2を50部、水50部を攪拌混合し、インキSS2を得た。
【0091】
(グラビアインキの印刷)
外気温35℃、湿度50%の環境下において、上記実施例および比較例で得られたインキの粘度を混合溶剤(酢酸プロピル/IPA=70/30(質量比))で、ザーンカップ#3(離合社製)における粘度が13.5秒になるように調整した。この調整したインキを175Lコンプレスト130°の彫刻ヘグラビア版(3~100%グラデーション)およびファニッシャーロールを備えたグラビア印刷機にて80m/分の回転速度で30分間空転させた。その後、片面コロナ処理ポリエステル(PET)フィルム(東洋紡社製E5100)のコロナ処理面に、印刷速度が200m/分で高速印刷(12,000m)して50~60℃ で乾燥し、実施例および比較例で得られたインキに対応する印刷物をそれぞれ得た。
【0092】
(ラミネート加工)
実施例および比較例で得られたインキに対応する印刷物の印刷層上に、ポリエーテルウレタン系ラミネート接着剤(東洋モートン社製TM320/CAT13B)を固形分30%の酢酸エチル溶液を、乾燥後の接着剤層が2.0g/m2となるように塗工・乾燥した後、接着剤層に厚さ50μmの未延伸ポリエチレン(PE)を貼り合わせてドライラミネート加工を行って実施例および比較例で得られたインキに対応するラミネート積層体を得た。
【0093】
(評価)
上記実施例および比較例で得られたインキ、印刷物およびラミネート積層体を用いて以下の特性評価を行った。
【0094】
(耐ブロッキング性)
印刷物を4cm×4cmに切り出し、このサンプルの印刷面と同じ大きさの未印刷フィルムの非処理面とを重ね合わせて、温度40℃、相対湿度80%の雰囲気下で10kgfの荷重をかけた。24時間後それを引き剥がし、印刷面からのインキ被膜の取られ具合を目視で判定した。
5(優):印刷面のインキ被膜が全く剥離せず、剥離抵抗の小さいもの
4(良):インキ被膜の剥離面積が1%以上5%未満であり、剥離抵抗の小さいもの
3(可):インキ被膜の剥離面積が5%以上20%未満のもの
2(不可):インキ被膜の剥離面積が20%以上50%未満のもの
1(劣):インキ被膜が50%以上剥離するもの
なお、3~5は実用上問題がない範囲である。
【0095】
(版かぶり適性)
実施例および比較例で得られたインキを用いて、版かぶり性評価を行った。なお、希釈溶剤はNPAC:IPA=80:20とし、粘度をザーンカップ#3で16秒(25℃)とし、印刷機における版の空転90分後の版かぶり部分の面積を目視判定し、評価を行った。
5(優):版かぶり面積が0%以上5%未満である
4(良):版かぶり面積が5%以上10%未満である
3(可):版かぶり面積が10%以上15%未満である
2(不可):版かぶり面積が15%以上30%未満である
1(劣):版かぶり面積が30%以上である
なお、3~5は実用上問題がない範囲である。
【0096】
(DLラミネート強度)
実施例および比較例で得られたラミネート積層体を15mm幅に切り出し、インキ層(印刷層)と基材面で剥離させた後、剥離強度(ラミネート強度)をインテスコ社製201万能引張り試験機にて測定した。
判定基準
5(優):引張強度が1.0N/15mm以上である
4(良):引張強度が0.6N/15mm以上、1.0N/15mm未満である
3(可):引張強度が0.4N/15mm以上、0.6N/15mm未満である
2(不可):引張強度が0.2N/15mm以上、0.4N/15mm未満である
1(劣):引張強度が0.2N/15mm未満である
なお、3~5は実用上問題がない範囲である。
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】