(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092685
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】タイヤ製造方法及びタイヤ製造装置
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20230627BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207847
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 優
【テーマコード(参考)】
4F202
4F203
【Fターム(参考)】
4F202AA45
4F202AB03
4F202AG19
4F202AH20
4F202AJ05
4F202AR02
4F202CA21
4F202CB01
4F202CU01
4F202CU12
4F202CV21
4F202CY02
4F203AA45
4F203AB03
4F203AH20
4F203AR02
4F203DA11
4F203DB01
4F203DC01
4F203DD01
4F203DL10
4F203DL12
(57)【要約】
【課題】 ブラダを均等に膨張させることができるタイヤ製造方法及びタイヤ製造装置を提供する。
【解決手段】 タイヤ製造方法は、膨張することによってタイヤの内表面に接するブラダと、タイヤの外表面に接する複数のモールドと、を用いるタイヤ製造方法であって、タイヤの内部でブラダの膨張と収縮とを繰り返す繰返工程と、繰返工程の後に、ブラダがタイヤの内表面の全体に接するように、ブラダを膨張する膨張工程と、繰返工程の後に、タイヤを出し入れするための型開き位置からタイヤを成形するための型閉め位置へ、モールドを移動する移動工程と、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張することによってタイヤの内表面に接するブラダと、前記タイヤの外表面に接する複数のモールドと、を用いるタイヤ製造方法であって、
前記タイヤの内部で前記ブラダの膨張と収縮とを繰り返す繰返工程と、
前記繰返工程の後に、前記ブラダが前記タイヤの内表面の全体に接するように、前記ブラダを膨張する膨張工程と、
前記繰返工程の後に、前記タイヤを出し入れするための型開き位置から前記タイヤを成形するための型閉め位置へ、前記モールドを移動する移動工程と、を含む、タイヤ製造方法。
【請求項2】
前記繰返工程において、前記ブラダが前記タイヤの内表面に接するように、前記ブラダを膨張し、且つ、前記ブラダが前記タイヤの内表面から離れるように、前記ブラダを収縮する、請求項1に記載のタイヤ製造方法。
【請求項3】
前記繰返工程における前記ブラダの内圧の最大値は、前記膨張工程における前記ブラダの内圧の最大値よりも、小さい、請求項2に記載のタイヤ製造方法。
【請求項4】
前記膨張工程において、前記ブラダが前記タイヤの内表面の全体に接した後に、前記移動工程において、移動する前記モールドは、前記タイヤに接する、請求項1~3の何れか1項に記載のタイヤ製造方法。
【請求項5】
膨張することによってタイヤの内表面に接するブラダと、
前記タイヤの外表面に接する複数のモールドと、備え、
請求項1~4の何れか1項に記載のタイヤ製造方法を実行する、タイヤ製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤ製造方法及びタイヤ製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、タイヤ製造方法は、タイヤの内表面に接するブラダと、タイヤの外表面に接する複数のモールドとを用いている(例えば、特許文献1)。そして、ブラダが適切な状態でタイヤに接するように、ブラダを均等に膨張させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、ブラダを均等に膨張させることができるタイヤ製造方法及びタイヤ製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
タイヤ製造方法は、膨張することによってタイヤの内表面に接するブラダと、前記タイヤの外表面に接する複数のモールドと、を用いるタイヤ製造方法であって、前記タイヤの内部で前記ブラダの膨張と収縮とを繰り返す繰返工程と、前記繰返工程の後に、前記ブラダが前記タイヤの内表面の全体に接するように、前記ブラダを膨張する膨張工程と、前記繰返工程の後に、前記タイヤを出し入れするための型開き位置から前記タイヤを成形するための型閉め位置へ、前記モールドを移動する移動工程と、を含む。
【0006】
タイヤ製造装置は、膨張することによってタイヤの内表面に接するブラダと、前記タイヤの外表面に接する複数のモールドと、備え、前記のタイヤ製造方法を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】同タイヤ製造装置の膨張工程及び移動工程を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、タイヤ製造装置及びタイヤ製造方法における一実施形態について、
図1~
図5を参照しながら説明する。なお、各図において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0009】
図1に示すように、本実施形態に係るタイヤ製造装置1は、膨張することによってタイヤ10の内表面11に接するブラダ2と、ブラダ2を支持する支持部3と、タイヤ10の外表面12に接する複数のモールド4,5と、モールド4,5に対してタイヤ10を出し入れするローダ6とを備えていてもよい。特に限定されないが、タイヤ製造装置1は、例えば、本実施形態のように、タイヤ加硫装置としてもよい。
【0010】
即ち、タイヤ製造装置1は、例えば、ブラダ2の内部に対して流体(例えば、気体、液体、又は、気体と液体との混合体)を出し入れする流体入出機構(図示していない)と、例えば、モールド4、ローダ6及び流体入出機構等を制御する制御装置(図示していない)とを備えていてもよい。
【0011】
ブラダ2は、例えば、本実施形態のように、弾性を有し、且つ、袋状に形成されていてもよい。そして、例えば、流体入出機構がブラダ2の内部に流体を導入することによって、ブラダ2は、膨張し、また、流体入出機構がブラダ2の内部から流体を導出することによって、ブラダ2は、収縮する。
【0012】
モールド4,5は、例えば、本実施形態のように、上方に配置される第1モールド(上モールド)4と、下方に配置される第2モールド(下モールド)5とを備えていてもよい。そして、モールド4,5は、例えば、移動機構(図示していない)によって、タイヤ10を出し入れするための型開き位置(
図1参照)と、タイヤ10を成形するための型閉め位置(
図5参照)との間を移動する。
【0013】
これにより、モールド4,5が型開き位置に位置するときに、モールド4,5の内部が開放される一方で、モールド4,5が型閉め位置に位置するときに、モールド4,5の内部が閉鎖され、その結果、タイヤ10を成形する成形室が形成される。なお、特に限定されないが、本実施形態においては、第1モールド4が、ブラダ2及び第2モールド5に対して、上下方向に移動する。
【0014】
本実施形態に係るタイヤ製造装置1の構成については以上の通りであり、次に、本実施形態に係るタイヤ製造装置1を用いたタイヤ製造方法について、
図1~
図5を参照しながら説明する。なお、例えば、制御装置は、タイヤ製造装置1の各部を制御することによって、以下のタイヤ製造方法を実行してもよい。
【0015】
図1に示すように、第1モールド4が型開き位置に位置した状態で、ローダ6は、未加硫のタイヤ10を第2モールド5の内部に取り入れる(取入工程)。このとき、例えば、未加硫のタイヤ10の上下方向(タイヤ軸方向)の中心は、ブラダ2の上下方向の基準位置(例えば、中心)に合わされていてもよい。
【0016】
そして、
図2及び
図3に示すように、ブラダ2の内部に流体が出し入れされることによって、ブラダ2は、タイヤ10の内部で膨張と収縮とを繰り返す(繰返工程)。このとき、例えば、ブラダ2の内圧の最大値は、第1圧力P1となるように設定されている。これにより、繰返工程において、ブラダ2の内圧が第1圧力P1となったときに、即ち、ブラダ2の内体積が最大となったときに、ブラダ2は、タイヤ10の内表面11の一部に接している(
図3参照)。
【0017】
一方で、繰返工程において、ブラダ2が収縮し、ブラダ2の内体積が最小となったときに、ブラダ2は、タイヤ10の内表面11から離れている(
図2参照)。これにより、例えば、ブラダ2を十分に伸縮させることができる。また、例えば、ブラダ2が収縮したときに、ブラダ2における、タイヤ10に接する部分が、リセットされる。
【0018】
その後、
図4に示すように、ブラダ2の内圧が第1圧力P1から第2圧力P2へ上昇されることによって、ブラダ2は、さらに膨張する(膨張工程)。なお、特に限定されないが、第2圧力P2は、例えば、第1圧力P1の110%~130%としてもよい。そして、ブラダ2の内圧が第2圧力P2まで上昇した後、ブラダ2の内圧が第2圧力P2で維持される。これにより、ブラダ2は、タイヤ10の内表面11の全体に接する。
【0019】
このように、膨張工程の前に、予めブラダ2を伸縮させる繰返工程が行われているため、ブラダ2が偏って膨張することを抑制することができる。これにより、例えば、ブラダ2がタイヤ10の内表面11の全体に接したときに、ブラダ2を均等に膨張させることができている。したがって、例えば、ブラダ2が局所的に伸長して損傷する(例えば、均一に伸長できずに必要な機能を果たせなくなる)ことを抑制することができる。
【0020】
しかも、繰返工程において、ブラダ2における、タイヤ10に接する部分が、リセットされているため、膨張工程において、ブラダ2が予め伸縮した後で、ブラダ2が、タイヤ10に接した部分を基準にして膨張することによって、ブラダ2は、タイヤ10の内表面11の全体に接する。これにより、例えば、タイヤ10に対するブラダ2の接する位置を適切な位置にすることができる。
【0021】
そして、第1モールド4は、型開き位置から、
図5に示すように、型閉め位置へ移動する(第1移動工程)。このとき、ブラダ2がタイヤ10の内表面11の全体に接した後に、第1モールド4は、タイヤ10に接している。これにより、第1モールド4がタイヤ10に接したときに、タイヤ10がモールド4,5に対して移動したとしても、タイヤ10がブラダ2に対して位置ずれすることを抑制することができる。
【0022】
なお、第1モールド4の移動の開始は、例えば、ブラダ2がタイヤ10の内表面11の全体に接する前でもよく、また、例えば、ブラダ2がタイヤ10の内表面11の全体に接した後でもよい。即ち、ブラダ2がタイヤ10の内表面11の全体に接した後に、第1モールド4がタイヤ10に接するように、第1モールド4が移動すればよい。
【0023】
そして、例えば、ブラダ2の内部に加熱媒体(例えば、蒸気)が導入されることによって、タイヤ10は、加硫される(加硫工程)。このとき、ブラダ2の内部の圧力は、第2圧力P2よりも高い第3圧力P3まで上昇される。その後、第1モールド4が型開き位置まで移動し(第2移動工程)、ローダ6は、加硫されたタイヤ10を第2モールド5の内部から取り出す(取出工程)。
【0024】
以上より、タイヤ製造装置1は、本実施形態のように、膨張することによってタイヤ10の内表面11に接するブラダ2と、前記タイヤ10の外表面12に接する複数のモールド4,5と、備え、前記のタイヤ製造方法を実行する。
【0025】
そして、タイヤ製造方法は、本実施形態のように、膨張することによってタイヤ10の内表面11に接するブラダ2と、前記タイヤ10の外表面12に接する複数のモールド4,5と、を用いるタイヤ製造方法であって、前記タイヤ10の内部で前記ブラダ2の膨張と収縮とを繰り返す繰返工程と、前記繰返工程の後に、前記ブラダ2が前記タイヤ10の内表面11の全体に接するように、前記ブラダ2を膨張する膨張工程と、前記繰返工程の後に、前記タイヤ10を出し入れするための型開き位置から前記タイヤ10を成形するための型閉め位置へ、前記モールド4を移動する移動工程と、を含む、という方法が好ましい。
【0026】
斯かる方法によれば、タイヤ10の内部でブラダ2の膨張と収縮とが繰り返された後に、ブラダ2が膨張して、ブラダ2がタイヤ10の内表面11の全体に接する。これにより、膨張工程において、ブラダ2が偏って膨張することを抑制することができるため、ブラダ2を均等に膨張させることができる。
【0027】
また、タイヤ製造方法においては、本実施形態のように、前記繰返工程において、前記ブラダ2が前記タイヤ10の内表面11に接するように、前記ブラダ2を膨張し、且つ、前記ブラダ2が前記タイヤ10の内表面11から離れるように、前記ブラダ2を収縮する、という方法が好ましい。
【0028】
斯かる方法によれば、ブラダ2が収縮したときに、ブラダ2がタイヤ10の内表面11から離れるため、ブラダ2における、タイヤ10に接する位置が、リセットされる。これにより、膨張工程において、ブラダ2がタイヤ10の内表面11の全体に接したときに、タイヤ10に対するブラダ2の接する位置を適切な位置にすることができる。
【0029】
また、タイヤ製造方法においては、本実施形態のように、前記繰返工程における前記ブラダ2の内圧の最大値は、前記膨張工程における前記ブラダ2の内圧の最大値よりも、小さい、という方法が好ましい。
【0030】
斯かる方法によれば、繰返工程におけるブラダ2の内圧の最大値が、膨張工程におけるブラダ2の内圧の最大値よりも、小さいため、繰返工程において、ブラダ2は、タイヤ10の内表面11の一部に接する。そして、膨張工程において、ブラダ2が、当該部分を基準にして膨張するため、タイヤ10に対するブラダ2の接する位置を適切な位置にすることができる。
【0031】
また、タイヤ製造方法においては、本実施形態のように、前記膨張工程において、前記ブラダ2が前記タイヤ10の内表面11の全体に接した後に、前記移動工程において、移動する前記モールド4は、前記タイヤ10に接する、という方法が好ましい。
【0032】
斯かる方法によれば、ブラダ2がタイヤ10の内表面11の全体に接した後に、モールド4が移動してタイヤ10に接する。これにより、モールド4がタイヤ10に接したときに、タイヤ10がブラダ2に対して位置ずれすることを抑制することができる。
【0033】
なお、タイヤ製造装置1及びタイヤ製造方法は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、タイヤ製造装置1及びタイヤ製造方法は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0034】
(1)上記実施形態に係るタイヤ製造装置1及びタイヤ製造方法においては、繰返工程において、ブラダ2がタイヤ10の内表面11に接するように、ブラダ2を膨張し、且つ、ブラダ2がタイヤ10の内表面11から離れるように、ブラダ2を収縮する、という構成である。しかしながら、タイヤ製造装置1及びタイヤ製造方法は、斯かる構成に限られない。
【0035】
例えば、繰返工程において、ブラダ2がタイヤ10の内表面11に常に接するように、ブラダ2を膨張し且つ収縮する、という構成でもよい。また、例えば、繰返工程において、ブラダ2がタイヤ10の内表面11に常に離れるように、ブラダ2を膨張し且つ収縮する、という構成でもよい。
【0036】
(2)また、上記実施形態に係るタイヤ製造装置1及びタイヤ製造方法においては、繰返工程におけるブラダ2の内圧の最大値は、膨張工程におけるブラダ2の内圧の最大値よりも、小さい、という構成である。しかしながら、タイヤ製造装置1及びタイヤ製造方法は、斯かる構成に限られない。例えば、繰返工程におけるブラダ2の内圧の最大値は、膨張工程におけるブラダ2の内圧の最大値と、同じ、という構成でもよい。
【0037】
(3)また、上記実施形態に係るタイヤ製造装置1及びタイヤ製造方法においては、膨張工程において、ブラダ2がタイヤ10の内表面11の全体に接した後に、第1移動工程において、移動するモールド4は、タイヤ10に接する、という構成である。しかしながら、タイヤ製造装置1及びタイヤ製造方法は、斯かる構成に限られない。例えば、膨張工程において、ブラダ2がタイヤ10の内表面11の全体に接する前に、第1移動工程において、移動するモールド4は、タイヤ10に接する、という構成でもよい。
【0038】
(4)また、上記実施形態に係るタイヤ製造装置1及びタイヤ製造方法においては、複数のモールド4,5は、第1モールド(上モールド)4及び第2モールド(下モールド)5から成る、という構成である。しかしながら、タイヤ製造装置1及びタイヤ製造方法は、斯かる構成に限られない。例えば、複数のモールドは、タイヤ10のサイドウォールに接する上モールド及び下モールドと、タイヤ周方向に並べられ、タイヤ10のトレッドに接する横モールドとから成る、という構成でもよい。
【0039】
(5)なお、タイヤ製造装置1及びタイヤ製造方法によって製造されるタイヤ10は、特に限定されず、例えば、バイアスタイヤであってもよく、また、例えば、ラジアルタイヤであってもよい。なお、ラジアルタイヤと比較して、バイアスタイヤは、一般的に、加硫時のタイヤ径方向の拡張が大きく、また、当該拡張をするために必要となる力も大きい。したがって、特に限定されないが、タイヤ製造装置1及びタイヤ製造方法によって製造されるタイヤ10がバイアスタイヤであることが好ましい。
【符号の説明】
【0040】
1…タイヤ製造装置、2…ブラダ、3…支持部、4…第1モールド、5…第2モールド、6…ローダ、10…タイヤ、11…内表面、12…外表面