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特開2023-92686クレーンの吊具振れ角度及び吊具高さの検出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092686
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】クレーンの吊具振れ角度及び吊具高さの検出装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/22 20060101AFI20230627BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20230627BHJP
   G01B 11/26 20060101ALI20230627BHJP
   B66C 13/46 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
B66C13/22 R
G01B11/00 H
G01B11/26 H
B66C13/46 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207849
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】504005781
【氏名又は名称】株式会社日立プラントメカニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】川尻 栄作
(72)【発明者】
【氏名】岸本 至康
【テーマコード(参考)】
2F065
3F204
【Fターム(参考)】
2F065AA06
2F065AA09
2F065AA37
2F065BB15
2F065BB27
2F065DD03
2F065DD16
2F065FF04
2F065FF61
2F065JJ03
2F065MM02
2F065QQ03
2F065QQ24
2F065QQ25
2F065QQ28
2F065QQ29
2F065QQ31
2F065UU05
3F204AA02
3F204BA02
3F204CA01
3F204CA03
3F204DB06
3F204DB09
3F204DC08
3F204EB04
(57)【要約】
【課題】クレーンのワイヤーロープが、カメラと干渉したり、カメラの視界を妨げたりすることがなく、また、カメラのメンテナンスを容易に行うことができるようにしたクレーンの吊具振れ角度及び吊具高さの検出装置を提供すること。
【解決手段】クレーン上のワイヤーロープWRの吊り下げ位置の側方下面に鉛直下方に向けて連続的に撮影するカメラCMを設置し、ワイヤーロープWRで吊り下げられた吊具HKの上面に複数個のマーカーMKを規則性を持たせて配置し、カメラCMに投影された映像に映し出された複数個のマーカー間距離L1を計測することで吊具HKの振れ角度と高さを検出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーン上のワイヤーロープの吊り下げ位置の側方下面に鉛直下方に向けて連続的に撮影するカメラを設置し、ワイヤーロープで吊り下げられた吊具の上面或いは側方上面に複数個のマーカーを規則性を持たせて配置し、カメラに投影された映像に映し出された複数個のマーカー間距離を計測することで吊具の振れ角度と高さを検出するようにしたことを特徴とするクレーンの吊具振れ角度及び吊具高さの検出装置。
【請求項2】
クレーンのワイヤードラムから繰り出されるワイヤーロープから離れた側方のクラブの点検足場の踊り場部分に点検扉を設け、その下にカメラを下方に向けて設置するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のクレーンの吊具振れ角度及び吊具高さの検出装置。
【請求項3】
クレーン上に設置されたカメラから下方を撮影した時、吊具に規則性を持たせて配置した複数個のマーカーの1つの形状と類似形状のマーカー以外の物が撮影画像内に映り込んだ時に、それらのマーカーと類似するすべての撮影映像体の中心点を結ぶ形状が、吊具に規則性を持たせて配置されたマーカーの中心点を結ぶ形状に近くなる物だけを吊具に規則性を持たせて取り付けたマーカーと判断する機能を備えてなることを特徴とする請求項1に記載のクレーンの吊具振れ角度及び吊具高さの検出装置。
【請求項4】
カメラの撮影映像の中心点から斜め方向に存在する吊具に取り付けた複数個のマーカーの中心点が結ぶ多角形形状を、吊具が鉛直に吊り下げられた最も高い位置での多角形形状の映像データと、最も低い位置での多角形形状の映像データとの間で各多角形形状の頂点のラインを結ぶことで、吊具が任意の高さにある状態においてその高さにおける吊具が鉛直位置にある時のマーカー形状と寸法の基準データを作成する機能を備えてなることを特徴とする請求項1に記載のクレーンの吊具振れ角度及び吊具高さの検出装置。
【請求項5】
吊具に取り付けた複数個のマーカーの中心点が描く多角形形状が、吊具が鉛直方向にある時の多角形形状の基準データの形状から測定現在時の多角形形状が変形した度合いから、吊具の鉛直状態からの振れ角度を検出するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のクレーンの吊具振れ角度及び吊具高さの検出装置。
【請求項6】
吊具に取り付けた複数個のマーカーの中心点が描く多角形形状が、カメラに映し出されている位置と、吊具が鉛直方向にある時の多角形形状の基準データの位置とを比較し、吊具の振れている方向を判断するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のクレーンの吊具振れ角度及び吊具高さの検出装置。
【請求項7】
吊具に取り付けた複数個のマーカーの一部がワイヤーロープ等の死角に入り、一部のマーカーが見えなくなった時に、見えているマーカーの横に、見えなくなったマーカーの仮想マーカーを描くことで継続して吊具の振れ角度と高さを算出するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のクレーンの吊具振れ角度及び吊具高さの検出装置。
【請求項8】
クラブ上に2台のカメラを設け、通常は1台のカメラで吊具に取り付けたマーカーの撮影を行い、吊具の振れ角度と高さを算出を行い、通常使用している1台のカメラの視野から吊具に取り付けたマーカーが消失した時に、もう1台のサブカメラに切り替え、該サブカメラの映像とサブカメラから見える視野に対する検出処理データにデータを切り替え、継続して吊具の振れ角度と高さを算出するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のクレーンの吊具振れ角度及び吊具高さの検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンの振れ止め制御の検出装置、吊荷衝突や挟まれ等を防止する安全装置、自動制御の確認装置等の用途で用いられる吊具の振れ角度と高さを検出する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クレーンの吊具の振れ角度と高さを検出する装置には、ワイヤーロープの振れ角度を機械的に検出する方式や、フックの傾斜角度や加速度を検出し、その値を給電装置でクレーン上に信号を伝送される方式が一般に使用されている。
【0003】
ところで、これらの装置に使用される機構の内、機械的部分や給電装置部分は、摩耗などに伴うメンテナンスが必要となるため、これを非接触で光学的に検出する方式が求められており、例えば、特許文献1~4に開示された装置では、クレーン上からカメラで吊具上面のマーカーを視野して吊具の振れ角度を検出する方式などが紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60―2590号公報
【特許文献2】特開2000―255975号公報
【特許文献3】特開2001―10778号公報
【特許文献4】特開2004―18196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、クレーン上にカメラを設置し吊具に取り付けたマーカーを連続的に撮影する方式で吊具の振れ角度及び吊具の高さを検出する方式では、クレーンのワイヤーロープが、カメラと干渉するリスクが生じたり、カメラの視界を妨げたりする等の問題があり、また、カメラのメンテナンスに困難を伴うという問題があった。
【0006】
本発明は、上記従来のクレーンの吊具の振れ角度と高さを検出する装置の有する問題点に鑑み、クレーンのワイヤーロープが、カメラと干渉したり、カメラの視界を妨げたりすることがなく、また、カメラのメンテナンスを容易に行うことができるようにしたクレーンの吊具振れ角度及び吊具高さの検出装置を提供することを第1の目的とする。
【0007】
また、本発明は、上記第1の目的を解決しながら、クレーンの吊具の振れ角度と高さの検出を正確に行うことができるようにしたクレーンの吊具振れ角度及び吊具高さの検出装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記第1の課題を解決するため、本発明のクレーンの吊具振れ角度及び吊具高さの検出装置は、クレーン上のワイヤーロープの吊り下げ位置の側方下面に鉛直下方に向けて連続的に撮影するカメラを設置し、ワイヤーロープで吊り下げられた吊具の上面或いは側方上面に複数個のマーカーを規則性を持たせて配置し、カメラに投影された映像に映し出された複数個のマーカー間距離を計測することで吊具の振れ角度と高さを検出するようにしたことを特徴とする。
このカメラの設置場所の場合、吊具がワイヤーロープから鉛直に吊り下がった状態の位置がカメラから斜め下方に映り、吊具の巻き上げ下げ動作と共に画面上を斜めに移動して
いくため、その移動ラインを基準データとして記憶し、その基準データからの差異で吊具の振れ角度と高さを測定することで、カメラが斜めにズレた位置の吊具の振れ角度と高さを測定できる。
【0009】
この場合において、クレーンのワイヤードラムから繰り出されるワイヤーロープから離れた側方のクラブの点検足場の踊り場部分に点検扉を設け、その下にカメラを下方に向けて設置するようにすることができる。
クレーンのワイヤーロープが、カメラと干渉したり、カメラの視界を妨げたりすることがなく、また、カメラのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0010】
また、上記第2の課題を解決するため、本発明のクレーンの吊具振れ角度及び吊具高さの検出装置は、クレーン上に設置されたカメラから下方を撮影した時、吊具に規則性を持たせて配置した複数個のマーカーの1つの形状と類似形状のマーカー以外の物が撮影画像内に映り込んだ時に、それらのマーカーと類似するすべての撮影映像体の中心点を結ぶ形状が、吊具に規則性を持たせて配置されたマーカーの中心点を結ぶ形状に近くなる物だけを吊具に規則性を持たせて取り付けたマーカーと判断する機能を備えてなることを特徴とする。
【0011】
また、カメラの撮影映像の中心点から斜め方向に存在する吊具に取り付けた複数個のマーカーの中心点が結ぶ多角形形状を、吊具が鉛直に吊り下げられた最も高い位置での多角形形状の映像データと、最も低い位置での多角形形状の映像データとの間で各多角形形状の頂点のラインを結ぶことで、吊具が任意の高さにある状態においてその高さにおける吊具が鉛直位置にある時のマーカー形状と寸法の基準データを作成する機能を備えることができる。
【0012】
また、吊具に取り付けた複数個のマーカーの中心点が描く多角形形状が、吊具が鉛直方向にある時の多角形形状の基準データの形状から測定現在時の多角形形状が変形した度合いから、吊具の鉛直状態からの振れ角度を検出するようにすることができる。
【0013】
また、吊具に取り付けた複数個のマーカーの中心点が描く多角形形状が、カメラに映し出されている位置と、吊具が鉛直方向にある時の多角形形状の基準データの位置とを比較し、吊具の振れている方向を判断するようにすることができる。
【0014】
また、吊具に取り付けた複数個のマーカーの一部がワイヤーロープ等の死角に入り、一部のマーカーが見えなくなった時に、見えているマーカーの横に、見えなくなったマーカーの仮想マーカーを描くことで継続して吊具の振れ角度と高さを算出するようにすることができる。
【0015】
また、クラブ上に2台のカメラを設け、通常は1台のカメラで吊具に取り付けたマーカーの撮影を行い、吊具の振れ角度と高さを算出を行い、通常使用している1台のカメラの視野から吊具に取り付けたマーカーが消失した時に、もう1台のサブカメラに切り替え、該サブカメラの映像とサブカメラから見える視野に対する検出処理データにデータを切り替え、継続して吊具の振れ角度と高さを算出するようにすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のクレーンの吊具振れ角度及び吊具高さの検出装置によれば、クレーンのワイヤーロープが、カメラと干渉したり、カメラの視界を妨げたりすることがなく、また、カメラのメンテナンスを容易に行うことができるとともに、クレーンの吊具の振れ角度と高さの検出を正確に行うことができる。
これにより、クレーンの振れ止め制御の検出装置、吊荷衝突や挟まれ等を防止する安全
装置、自動制御の確認装置等の用途で用いられる吊具の振れ角度と高さを検出する装置のクレーンへの装備が容易となり、クレーンの安全性や操作性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のクレーンの吊具振れ角度及び吊具高さの検出装置を装備したクレーンの説明図で、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図2】本発明のクレーンの吊具振れ角度及び吊具高さの検出装置を装備した大型のクレーンの説明図である。
図3】吊具上のマーカーをクラブ上のカメラから見た時の図である。
図4】大型のクレーンで吊具上のマーカーをクラブ上のカメラから見た時の図である。
図5】吊具を鉛直位置で上下させた時のマーカーをカメラで見た図である。
図6】マーカーの組み合わせ配置の説明図である。
図7】吊具が振れた時の撮影映像に映るマーカーの形状変化の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のクレーンの吊具振れ角度及び吊具高さの検出装置の実施の形態について、図面を用いて実施例に基づいて説明する。
【0019】
図1に本発明のクレーンの吊具振れ角度及び吊具高さの検出装置を装備したクレーンの一形態を示す。
クラブCB上には巻上装置及び横行装置などのモータIMや減速機GR等が配置され、ワイヤードラムDRからは2本のワイヤーロープWRが巻き下ろされ、フックブロック等の吊具HKに装備された2個のシーブを介して、クラブCB上の1個のシーブSHに掛けられた所謂4本掛けの標準型のクラブCBの構成で、クラブCBはクレーンガーダCGに沿って横行方向Yに移動し、クレーンガーダCGは建屋のランウエイガーダに沿って走行方向Xに動作し、ワイヤードラムDRを回転させると吊具HKが巻上方向(巻下方向)Zに動作し、3軸動作をする標準型の天井走行クレーンを構成している。
【0020】
この天井走行クレーンが、走行方向X或いは横行方向Yに動作するとワイヤーロープWRで吊り下げられた吊具HKが、そのワイヤーロープWRの吊り下げ長さの振り子長周期で、吊具HKが走行方向X或いは横行方向Yに移動した方向に荷振れする。その荷振れが原因となる労働災害や位置決め誤差を小さくするために、振れ角度や振り子長さを検出して荷振れを抑制したり、労働災害を未然に防止するなどの目的で、振れ角度や振り子長さを簡単に検出できる装置が求められていた。
【0021】
本発明のクレーンの吊具振れ角度及び吊具高さの検出装置は、クラブCB上から鉛直に下向きにカメラCMを取り付け、吊具上面にマーカーMKを取り付け、カメラCMで撮影した映像に投影されたマーカーMKの状態で吊具振れ角度及び吊具高さの検出を行う非接触型の検出装置である。
【0022】
この場合、カメラCMの設置場所をマーカーMKの鉛直線上に設置するようにするのがマーカーMKの追尾の上で望ましいが、吊具HKの鉛直線上はワイヤーロープWRに囲まれており、吊具HKが振れた時にワイヤーロープWRがカメラCMに干渉してしまい、このためカメラCMが破損してしまうリスクがある。また、この位置には、上限位置まで吊具HKが巻き上げられた時に吊具HKが重錘WGを持ち上げることで重錘リミットスイッチLSを作動させる直動式過巻防止装置が存在し、カメラCMの設置が困難である。更に、この位置は、ワイヤーロープWRに充填された潤滑油脂が飛散するため、この位置にカメラCMを設置すると、カメラCMのレンズに飛散した油脂が付着し、頻繁にカメラCMのメンテナンスを実施する必要があるが、カメラCMの上方に大きなワイヤードラムDR
があるため、クラブCB上からは、カメラCMに手が届かず、メンテナンス用の足場を頻繁に組み上げる必要が発生してしまう。
このため、本発明のクレーンの吊具振れ角度及び吊具高さの検出装置は、図1(b)に示すように、ワイヤードラムDRから繰り出すワイヤーロープWRから離れた側方のクラブCBの点検足場の踊り場部分に点検扉HCを設け、その下にカメラCMを下方に向けて設置することでワイヤーロープWRとの干渉を避け、簡単にメンテナンスを行えるようにしている。
【0023】
図2は、ワイヤーロープWRの掛け数の多い大型の天井走行クレーンを示した図である。
掛け数の多い天井走行クレーンは、直動式過巻防止装置に重錘WGをワイヤーロープWRに通すと、重錘WGが隣のワイヤーロープWRと干渉したり、或いは絡んでしまう等の不具合が生じるので、重錘バーWL方式を用いる場合が多い。
この場合、上限位置で重錘バーWLが吊具HKの上を跨いでいるので、カメラCMを吊具の鉛直線上のクラブCBの下面に取り付けると、重錘バーWLがカメラCMの視界を大きく妨げ、吊具HK上面が全く見えないので、カメラCMの設置位置を、図1のクレーンと同様に、ワイヤードラムDRから側方に離れた位置に設置するようにしている。
【0024】
図1図2に示すように、カメラCMをワイヤードラムDRから離れた側方に取り付けると、カメラCMから見える画像は、図1の場合は、図3に示す画像となり、図2の場合は、図4に示す画像となり、いずれの場合もカメラ設置点CPから斜めにズレた位置に吊具HKやマーカーMKが映し出される。
図1の構造のクレーンについては、図3に示すとおり、重錘WGが吊具HKの上面に当たる部分を避けて、吊具HKの上面の端にマーカーMKを取り付けている。
なお、図3に示すような小型の吊具HKの場合は、以下の図2の構造のクレーンのように、ワイヤーロープWRの外側にマーカーMKを取り付けると、吊具HKの取り扱い時にマーカーMKが邪魔になるのと、吊具HKの重量バランスが悪くなるので、ワイヤーロープWRの内側に取り付けるのが望ましい。
図2の構造のクレーンについては、図4に示すとおり、重錘バーWLが吊具HKの上面のワイヤーロープWR内側の全面の何処かに当たる構造であるので、マーカーMKはワイヤーロープWRの外側に取り付け、その対角面に重量バランス用のバランス荷重BWを取り付けている。
【0025】
クレーン上のカメラCMから見える吊具HK上のマーカーMKで、吊具HKの振れ角度と高さを検出するためには、基準点を定める必要があり、吊具HKが鉛直上のある基準高さにある状態の映像データを元に基準点の基準データを作成、記録する。
この時、マーカーMKの鉛直線上方にカメラCMを設置する場合は、吊具HKが鉛直線上のどの高さにある場合も、マーカーMKはカメラCMの画像の中央に映し出されるため、比較的容易なシステムとすることができるが、本実施例においては、カメラCMを実際に設置可能なワイヤードラムDRから離れた側方に取り付けるようにしていることから、図3又は図4に示すように、斜めからマーカーMKを見ることになり、吊具HKの巻き上げ下げ動作に伴い、マーカーMKが映し出される位置が移動する。
【0026】
図3又は図4に示すように、カメラCMが斜めからマーカーMKを見る視野において、吊具HKを鉛直方向に移動させた場合、カメラCMが撮影したマーカーMKの画像は、図5に示すとおり、最も高い位置の吊具鉛直位置ZP1から、中間高さ位置の吊具鉛直位置ZP2を経て、最も低い位置の吊具鉛直位置ZP3へと映し出される位置が斜めに移動し、位置と大きさと見える形状がリニアに変化する。
そこで、吊具HKが鉛直方向に移動する時、各高さでの複数の各マーカーMKの中心点を結ぶ多角形形状が、多角形形状が斜めに大きさと形状を変化する状態を、多角形形状の
頂点の変化のラインを結び、そのラインを吊具HKの鉛直位置の初期の基準データとして記憶し、吊具HKが任意の高さにある状態において、多角形形状の頂点の変化のラインから、その高さにおけるマーカーMKの鉛直位置での多角形形状の基準データとして生成することで、吊具HKの振れ角度と高さの検出を可能としている。
なお、最も高い位置の吊具鉛直位置ZP1と最も低い位置の吊具鉛直位置ZP3を結ぶラインは、カメラCMが映す画像の歪みにより直線的な変化にはならないので、中間高さ位置の吊具鉛直位置ZP2は複数点の高さで記憶することが望ましい。
このように、カメラCMから斜めに見たマーカーMKが吊具HKが鉛直方向に移動した時の状態を基準データとして、その基準データからの差を見ることで、斜め方向からのカメラCMの視野で、吊具HKの振れ角度と高さの検出を可能とし、カメラの設置場所をクラブCB上の設置が容易な場所に設置することを可能にしている。
【0027】
ところで、本発明のクレーンの吊具振れ角度及び吊具高さの検出装置においては、吊具HKに取り付けるマーカーMKは、図6に示すとおり、複数枚のマーカーMKを規則正しく配置していることを特徴としている。そして、本実施例では、3枚の円形のマーカーMKを均等のマーカー間距離L1で配置し、3枚の円形のマーカーMKの中心点を結ぶと一辺の長さがマーカー間距離L1の正三角形となるように、規則的な配置をしている。
本発明のクレーンの吊具振れ角度及び吊具高さの検出装置では、カメラCMで撮影した映像に映し出された複数枚のマーカーMKの各マーカーMKの中心点を結ぶ多角形形状の各辺のマーカー間距離L1を測定することで、カメラCMとマーカーMK間の距離と角度を割り出して、吊具HKの振れ角度と高さを割り出している。
【0028】
ここで、1枚のマーカーMKの大きさでカメラCMとマーカー間の距離を割り出そうとすると、吊具HKが巻上方向(巻下方向)Zに移動する時にカメラCMの焦点がズレる位置が存在し、焦点がズレることでマーカーMKの輪郭がぼやけてマーカーMKの大きさを大きく検出してしまうために誤差が生じてしまう。
ところで、カメラCMの焦点がズレてマーカーMKの輪郭がぼやけても、その映像から割り出されるマーカーMKの中心点はズレないので、図5に示すとおり、マーカー間距離L1を測定することにより、カメラCMの焦点ズレの影響を受けずにカメラCMとマーカーMKの距離である吊具の高さを測定することを特徴としている。
【0029】
また、天井クレーンが存在する生産工場や倉庫等では、クレーン下の設備や製品や端材等に円形や四角形の単純形状の物が点在している。クラブCB上のカメラCMから下を撮影すると、マーカーMKと類似形状の物が一緒に写り込んでしまう。
本実施例では、画像に映し出された円形の物体の中心点をすべてピックアップし、それらの点の中から最も正三角形に近い配置の3つの点を吊具HKのマーカーMKの中心点と認識することにより、それ以外の類似形状品を除外しており、複数のマーカーMK群を規則正しく配置しておくことにより、正しくマーカーMKのみを正しく捕捉できるようにしている。
【0030】
ところで、図3図4のように見えている状態から、吊具HKが大きく振れたり、吊具HKが回転し捻じれたりすると、マーカーMKがワイヤーロープWRの陰に入ってしまいマーカーMKを見失ってしまう。マーカーMKが1枚しかない場合は、1枚のマーカーMKを見失うと機能停止になってしまうが、本発明のクレーンの吊具振れ角度及び吊具高さの検出装置においては、複数枚のマーカーMKを規則正しく配置しているので、一部のマーカーMKを見失ったとしても、その見失ったマーカーMKと規則正しく組み合わされた他の見え続けているマーカーMKを追尾することが可能で、その追尾しているマーカーMKの横に、配置規則と消失前の消失したマーカーMKの形状とマーカーMKの移動速度値などの情報を用いることによって、コンピュータ上に仮想マーカーを描くことができ、これで一部のマーカーMKを見失ったとしても、継続して吊具の振れ角度と高さを検出でき
るようにしている。
【0031】
図7を用いて、クラブCBに固定のカメラCMと吊具HKの相対位置角度による吊具HK上のマーカーMKの見え方について説明する。
吊具HKに取り付けたマーカーMKを真下にカメラ鉛直位置NPに見た時は、3つのマーカーMKの3つの中心点が結ぶ線が囲む形状は正三角形に見える。
この時、吊具HKが走行方向Xの正方向+X或いは逆方向-X、若しくは横行方向Yの正方向+Y或いは、逆方向-Yに、或いは走行方向Xと横行方向Yの複合状態で振れて吊具HKの位置が移動すると、正三角形だったマーカーMKの中心点が描く形状が変形した三角形にカメラの映像として投影される。この三角形の変形具合でカメラからの角度を検出することができる。
【0032】
ところで、吊具HKがクラブCBのワイヤーロープWRの支点から鉛直方向に吊り下がった吊具鉛直位置ZPは、カメラ鉛直位置NPから斜めにズレた位置にあり、マーカーMKの中心点が描く三角形がすでに斜め視野により変形した形状になっている。
したがって、吊具鉛直位置ZPの位置の三角形を初期の基準データから生成し、その基準データの三角形からの変形の度合いで吊具HKの傾きを算出する。
ここで、吊具鉛直位置ZPの位置の三角形は、前述のとおり、吊具の高さにより、図5に示すように、三角形も変形していく。したがって、その高さでの基準データから生成した三角形からの変形度合いで振れ角度の検出を行う。
角度の検出は、カメラCMが投影した画像に映るマーカーMKの位置から検出することも可能であるが、カメラに映る画像にはレンズの歪みが含まれているので、マーカーMKの中心点が描く三角形の変形度合いで振れ角度を検出する方が、より正確な検出ができる。
【0033】
ここで、吊具HKの高さはマーカーMKの中心点が描く三角形の一辺の長さで検出するが、斜めに見た視野では、三角形が変形しているので、その三角形を正三角形に補正してからその一辺の距離を検出することで、カメラCMとマーカーMK間の距離を検出することができ、吊具HKの高さを検出することができる。
【0034】
図7に示すとおり、マーカーMKが描く三角形は、視野角度が付くことで変形する形が、その角度の反対側の対角上にも同じ三角形が発生する。
つまり、角度は三角形の変形具合で算出し、吊具が移動している方向は、カメラの映像にマーカーMKが映っている画面上のエリアで判断する。
【0035】
ここで、カメラCMの他にサブカメラCSを設け、マーカーMKがワイヤーロープWRの陰に入り消失するリスクを軽減したり、システムの2重化でシステムの信頼性を向上する方法がある。
この場合、通常はメインとなるカメラCMのみで吊具の振れ角度と高さを検出しているが、マーカーMKを消失したり、メインのカメラに異常を検知したりした時に、サブカメラに切り替える。
この時、メインのカメラCMとサブカメラCSから見えるマーカーMKの視野角度が異なるので、図5の吊具鉛直位置ZPのマーカーMKの基準データがメインのカメラCMとサブカメラCSで異なり、振れ角度によるマーカーMKの映り方もメインのカメラCMとサブカメラCSで異なるので各々で個別にデータを持つ必要がある。
そして、通常はメインのカメラCMの単独のシステムのみで吊具HKの振れ角度と高さを検出し、メインのカメラCMがマーカーMKを消失したり不具合が生じたりすると、メインのカメラCMの画像と検出処理データを、サブカメラCSの画像と検出処理データに切り替えて検出を継続させることができる。
【0036】
ここで、マーカーMKの形状は円形に限定されず、四角形や星形でもよく、また、複数のマーカーは3枚のマーカーMKをマーカーMKの中心点が描く形が正三角形になるよう配置する(2枚だと線しか描けず面にならないこと、4枚以上の正多角形だと、隣り合う点と対角上の点との距離が異なる距離になるため、すべてのマーカーMKの中心点距離が同じ値になる正三角形が最も望ましい配置、枚数であるといえる。)ものに限定されず、複数枚のマーカーMKを規則性のある配置をすれば、その枚数や、配置方法を限定するものではない。
【0037】
また、本実施例では、吊具HKは、クレーンで標準的に用いられるフックブロックを想定して記載しているが、吊具HKが掴み機構を有するものや、吸着機構を有するものなど、その形状に限定するものではない。
【0038】
以上、本発明のクレーンの吊具振れ角度及び吊具高さの検出装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のクレーンの吊具振れ角度及び吊具高さの検出装置は、クレーンのワイヤーロープが、カメラと干渉したり、カメラの視界を妨げたりすることがなく、また、カメラのメンテナンスを容易に行うことができるとともに、クレーンの吊具の振れ角度と高さの検出を正確に行うことができることから、クレーンの振れ止め制御の検出装置、吊荷衝突や挟まれ等を防止する安全装置、自動制御の確認装置等の用途で用いられる吊具の振れ角度と高さを検出する装置に広く用いることができる。
特に、カメラの設置場所をクラブ平面上のどの位置に設置してもよいこと、マーカーを複数枚とすることでマーカーとその他の類似形状品との見分け可能とし、マーカーの焦点ズレによる誤差やマーカーの見失い等の不具合を解消し、更に、マーカーの中心点が描く形状の変形により角度検出の精度を向上し、産業上有効に利用できるようにしている。
【符号の説明】
【0040】
CM カメラ
CS サブカメラ
MK マーカー
CB クラブ
HK 吊具
WR ワイヤーロープ
LS 重錘リミットスイッチ
WG 重錘
WL 重錘バー
SH シーブ
CG クレーンガーダ
HC 点検扉
IM モータ
GR 減速機
DR ワイヤードラム
BW バランス荷重
CP カメラ設置点
L1 マーカー間距離
NP カメラ鉛直位置
ZP 吊具鉛直位置
ZP1 最も高い位置の吊具鉛直位置
ZP2 中間高さ位置の吊具鉛直位置
ZP3 最も低い位置の吊具鉛直位置
X 走行方向
Y 横行方向
Z 巻上方向(巻下方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7