(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092696
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】気象観測装置
(51)【国際特許分類】
G01W 1/08 20060101AFI20230627BHJP
G01P 3/36 20060101ALI20230627BHJP
G01W 1/00 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
G01W1/08 H
G01P3/36 C
G01W1/00 E
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207863
(22)【出願日】2021-12-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 日本気象学会2021年度秋季大会、令和3年12月2日~12月8日、現地開催:三重大学(三重県津市栗真町屋町1577)、オンライン開催(ウェブサイトのアドレス):https://sites.google.com/metsoc.or.jp/atm2021/home、学会発表「新しい降水粒子撮像ゾンデRainscopeの性能評価」
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 日本気象学会2021年度秋季大会、令和3年12月2日~12月8日、現地開催:三重大学(三重県津市栗真町屋町1577)、オンライン開催(ウェブサイトのアドレス):https://sites.google.com/metsoc.or.jp/atm2021/home、学会発表「400MHz帯気象援助局による雲/降水粒子撮像ゾンデ CloudscopeとRainscopeの開発」
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトの掲載日(令和3年11月24日)、ウェブサイトのアドレス(https://mri-2.mri-jma.go.jp/owncloud/s/R6WMFAAPYPGc3kg)、講演予稿集「新しい降水粒子撮像ゾンデRainscopeの性能評価」
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトの掲載日(令和3年11月24日)、ウェブサイトのアドレス(https://mri-2.mri-jma.go.jp/owncloud/s/R6WMFAAPYPGc3kg)、講演予稿集「400MHz帯気象援助局による雲/降水粒子撮像ゾンデCloudscopeとRainscopeの開発」
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、総務省戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)「雲/降水粒子撮像装置ビデオゾンデの1680MHz帯実験局から400MHz帯気象援助局への移行技術の研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000244110
【氏名又は名称】明星電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100209060
【弁理士】
【氏名又は名称】冨所 剛
(72)【発明者】
【氏名】杉立 卓治
(72)【発明者】
【氏名】清水 健作
(57)【要約】 (修正有)
【課題】雲粒子または降水粒子の落下速度を測定することができる気象観測装置を提供する。
【解決手段】検出ユニットは、第1検出センサと、第1検出センサより重力方向下方に離隔して設けられた第2検出センサと、を備える。制御部は、第1検出センサが雲粒子または降水粒子を検出した時点から第2検出センサが雲粒子または降水粒子を検出した時点までの雲粒子または降水粒子の移動時間を測定する。また、制御部は、第1検出センサから第2検出センサまでの重力方向における距離と、測定した移動時間と、に基づいて、雲粒子または降水粒子の見かけの落下速度を算出する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雲粒子または降水粒子を検出する検出ユニットと、
高度検出センサと、
制御部と、
を備えた気象観測装置であって、
前記検出ユニットは、第1検出センサと、前記第1検出センサより重力方向下方に離隔して設けられた第2検出センサと、を備え、
前記制御部は、
前記第1検出センサが雲粒子または降水粒子を検出した時点から前記第2検出センサが雲粒子または降水粒子を検出した時点までの雲粒子または降水粒子の移動時間を測定し、
前記第1検出センサから前記第2検出センサまでの重力方向における距離と、前記移動時間と、に基づいて、雲粒子または降水粒子の見かけの落下速度を算出し、
前記高度検出センサの高度データに基づいて、前記第1検出センサで雲粒子または降水粒子を検出した時点における気象観測装置の第1高度と、前記第2検出センサで雲粒子または降水粒子を検出した時点における気象観測装置の第2高度と、を測定し、
前記第1高度及び前記第2高度の高度差と、前記移動時間と、に基づいて、気象観測装置の上昇速度を算出し、
算出された、雲粒子または降水粒子の見かけの落下速度と、気象観測装置の上昇速度と、に基づいて、雲粒子または降水粒子の落下速度を算出する
ことを特徴とする、気象観測装置。
【請求項2】
前記制御部において雲粒子または降水粒子の落下速度を算出した後、前記第1検出センサにおいて雲粒子または降水粒子を再び検出するまでに、所定の不感時間が設けられる
ことを特徴とする、請求項1に記載の気象観測装置。
【請求項3】
前記第1検出センサは、第1発光素子及び第1受光素子から構成され、
前記第2検出センサは、第2発光素子及び第2受光素子から構成され、
前記第1発光素子及び前記第2発光素子と、前記第1受光素子及び前記第2受光素子と、の間に、一対のスリット板が設けられ、
前記一対のスリット板は、前記第1発光素子及び前記第2発光素子と、前記第1受光素子及び前記第2受光素子と、の対向方向に沿って対向しており、
前記一対のスリット板は、前記第1検出センサと対応する高さに設けられた第1スリットと、前記第2検出センサと対応する高さに設けられた第2スリットと、を備える
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の気象観測装置。
【請求項4】
雲粒子または降水粒子を撮影する撮影ユニットをさらに備え、
前記撮影ユニットは、撮影装置と、雲粒子または降水粒子を照らすための光源と、を備え、
前記制御部は、前記光源が発光する発光時間が、前記撮影装置においてシャッタが開状態となっている開時間と一部で重複するように、前記光源がオフ状態からオン状態となる立ち上がり時点及び前記光源がオン状態からオフ状態となる立ち下がり時点を制御する
ことを特徴とする、請求項1ないし3のうちいずれか1つに記載の気象観測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雲粒子または降水粒子の落下速度を測定することが可能な気象観測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、雲粒子または降水粒子(以下、雲粒子/降水粒子とも称す)を観測することができる気象観測装置が、種々提案されている。例えば、特許文献1では、気象観測装置に搭載する雲粒子/降水粒子観測装置として、発光装置からのパルス光によって雲粒子/降水粒子を照らし、該パルス光の発光に合わせて雲粒子/降水粒子の画像撮影を行う雲粒子/降水粒子観測用顕微鏡が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、気象観測装置において、雲粒子/降水粒子を画像撮影するのみならず、雲粒子/降水粒子の落下速度を測定することへの要望が高まっている。しかしながら、気象観測装置で雲粒子/降水粒子の落下速度を測定する方法は、これまでに確立されていない。
【0005】
上記点に鑑み、本発明は、雲粒子または降水粒子の落下速度を測定することができる気象観測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る気象観測装置は、雲粒子または降水粒子を検出する検出ユニットと、高度検出センサと、制御部と、を備える。検出ユニットは、第1検出センサと、第1検出センサより重力方向下方に離隔して設けられた第2検出センサと、を備える。制御部は、第1検出センサが雲粒子または降水粒子を検出した時点から第2検出センサが雲粒子または降水粒子を検出した時点までの雲粒子または降水粒子の移動時間を測定する。また、制御部は、第1検出センサから第2検出センサまでの重力方向における距離と、測定した移動時間と、に基づいて、雲粒子または降水粒子の見かけの落下速度を算出する。さらに、制御部は、高度検出センサの高度データに基づいて、第1検出センサで雲粒子または降水粒子を検出した時点における気象観測装置の第1高度と、第2検出センサで雲粒子または降水粒子を検出した時点における気象観測装置の第2高度と、を測定し、第1高度及び第2高度の高度差と、移動時間と、に基づいて、気象観測装置の上昇速度を算出する。そして、制御部で、算出された、雲粒子または降水粒子の見かけの落下速度と、気象観測装置の上昇速度と、に基づいて、雲粒子または降水粒子の落下速度を算出する。
【0007】
制御部において雲粒子または降水粒子の落下速度を算出した後、第1検出センサにおいて雲粒子または降水粒子を再び検出するまでに、所定の不感時間が設けられる。
【0008】
第1検出センサは、第1発光素子及び第1受光素子から構成される。第2検出センサは、第2発光素子及び第2受光素子から構成される。第1発光素子及び第2発光素子と、第1受光素子及び第2受光素子と、の間に、一対のスリット板が設けられる。一対のスリット板は、第1発光素子及び第2発光素子と、第1受光素子及び第2受光素子と、の対向方向に沿って対向している。一対のスリット板は、第1検出センサと対応する高さに設けられた第1スリットと、第2検出センサと対応する高さに設けられた第2スリットと、を備える。
【0009】
本発明に係る気象観測装置は、雲粒子または降水粒子を撮影する撮影ユニットを備えうる。撮影ユニットは、撮影装置と、雲粒子または降水粒子を照らすための光源と、を備える。制御部は、光源が発光する発光時間が、撮影装置においてシャッタが開状態となっている開時間と一部で重複するように、光源がオフ状態からオン状態となる立ち上がり時点及び光源がオン状態からオフ状態となる立ち下がり時点を制御する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の構成によれば、重力方向に離隔した2つの雲粒子検出センサと、高度検出センサと、の検出データを用いることにより、雲粒子または降水粒子の見かけ上の落下速度と、気象観測装置の上昇速度と、を算出することができるため、雲粒子または降水粒子の落下速度を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係るラジオゾンデの概略側面図である。
【
図2】本実施形態に係るラジオゾンデの概略平面図である。
【
図3】本実施形態に係るラジオゾンデの概略底面図である。
【
図4】本実施形態に係る第1収容体10及び第2収容体20の内部構造を示す側面図である。
【
図5】本実施形態に係る第1収容体10の内部構造を示す平面図である。
【
図6】
図5に示す第1収容体10の内部構造を、
図5に示す矢印Aの方向に見た図である。
【
図7】本実施形態における、雲粒子/降水粒子を撮影する際のタイミングチャートの例である。
【
図8】本実施形態における、雲粒子/降水粒子を撮影する際のタイミングチャートの別の例である。
【
図9】本実施形態における、雲粒子/降水粒子を撮影する際のタイミングチャートの、さらに別の例である。
【
図10】本実施形態における、雲粒子/降水粒子の落下速度を算出するフローを示す。
【
図11】本実施形態における、雲粒子/降水粒子の落下速度を算出するフローの詳細を示す。
【
図12】本実施形態における、雲粒子/降水粒子の撮影フローを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本実施形態に係る気象観測装置の構成について説明する。なお、本実施形態では、気象観測装置としてラジオゾンデを採用した例を示すが、気象観測装置はこれに限られない。
【0013】
(ラジオゾンデの構成)
図1は、本実施形態に係るラジオゾンデの概略側面図である。
図2は、本実施形態に係るラジオゾンデの概略平面図である。
図3は、本実施形態に係るラジオゾンデの概略底面図である。
図1乃至
図3を参照して、ラジオゾンデ100は、後述する検出ユニット及び撮影ユニットを収容する直方体状の第1収容体10と、後述する制御ユニットを収容する直方体状の第2収容体20と、略長方形状の平板30と、を備える。
【0014】
第1収容体10は、平板30の対向面のうち一方に取り付けられる。第1収容体10の天面には、上方に突出した筒部11が設けられる。筒部11の空洞12(開口部12)が、第1収容体10の天面を貫通して、第1収容体10の内部と繋がっている。平面視において、開口部12に対応する位置に、第1収容体10の底面及び平板30を貫通する排出口31が設けられる。開口部12から入り込んだ雲粒子/降水粒子は、第1収容体10の内部に入り、排出口31から外部へと排出される。
【0015】
第2収容体20は、平板30の対向面のうち第1収容体10と異なる面に取り付けられる。第2収容体20は、平板30の排出口31を避けた位置に取り付けられる。第1収容体10及び第2収容体20と、平板30と、の取付方法には、接着剤等の適宜な方法が採用される。
【0016】
平板30の側面には、平板30の短手方向中央に対して対称な位置に、複数の脚部32が設けられる。脚部32にはスリットが設けられており、このスリットに、バルーンを繋ぐための複数の吊り索(図示しない)がそれぞれ取り付けられる。
【0017】
(第1収容体及び第2収容体の内部構造)
第1収容体10及び第2収容体20の内部構造について、
図4~6を参照して、以下に説明する。
図4は、本実施形態に係る第1収容体10及び第2収容体20の内部構造を示す側面図である。
図5は、本実施形態に係る第1収容体10の内部構造を示す平面図である。
図6は、
図5に示す第1収容体10の内部構造を、
図5に示す矢印Aの方向に見た図である。
【0018】
(第1収容体の内部構造)
第1収容体10の内部は、平板30の短手方向に離隔して平板30の長手方向に延びる一対の板状のホルダ13と、一対のホルダ13を繋ぐ複数の棒状のスペーサ14と、を備える。ホルダ13及びスペーサ14によって形成された空間内に、雲粒子/降水粒子の落下速度を算出するために用いられる、雲粒子/降水粒子を検出する検出ユニットと、雲粒子/降水粒子を撮影するために用いられる撮影ユニットと、が設けられる。
【0019】
(検出ユニットについて)
検出ユニットは、第1検出センサ15と、第1検出センサ15から重力方向下方に離隔して配置される第2検出センサ16と、を備える。第1検出センサ15は、第1発光素子15Aと、第1発光素子15Aと対応する高さに設けられた第1受光素子15Bと、を備える。第2検出センサ16は、第2発光素子16Aと、第2発光素子16Aと対応する高さに設けられた第2受光素子16Bと、を備える。第1検出センサ15及び第2検出センサ16としては、赤外線センサなど、検出センサとして好適な素子が用いられる。
【0020】
第1発光素子15A及び第2発光素子16Aと、第1受光素子15B及び第2受光素子16Bと、の間には、一対の長方形状のスリット板17、18が配置される。一対のスリット板17、18は、第1発光素子15A及び第2発光素子15Bと、第1受光素子16A及び第2受光素子16Bと、の対向方向に沿って対向して、平面視において開口部12を挟む位置に配置される。一対のスリット板17、18はそれぞれ、重力方向に離隔した位置に、第1スリット17A、18Aと、第2スリット17B、18Bと、を備える。第1スリット17A、18Aは、第1検出センサ15(第1発光素子15A及び第1受光素子15B)と対応する高さに設けられ、第1発光素子15Aからの光を通過させる。第2スリット17B、18Bは、第2検出センサ16(第2発光素子16A及び第2受光素子16B)と対応する高さに設けられ、第2発光素子16Aからの光を通過させる。
【0021】
検出ユニットは、第1検出センサ15と、第1検出センサ15から重力方向下方に離隔して配置される第2検出センサ16と、を用いることによって、雲粒子/降水粒子の落下速度を算出することができる。まず、雲粒子/降水粒子が開口部12から入り込んでいない場合、各発光素子15A、16Aからの光は、一対のスリット板17、18の各スリット17A、17B、18A、18Bを通過して、対応する受光素子15B、16Bで受光される。一方、雲粒子/降水粒子が開口部12から入り込むと、雲粒子/降水粒子が一対のスリット板17、18の間を落下し、第1スリット17A・18Aを通過する光,第2スリット17B・18Bを通過する光、の順に光を遮って、排出口31から排出される。すなわち、第1スリット17A、18Aを通過する光が第1受光素子15Bで受光されなかった時点から、第2スリット17B、18Bを通過する光が第2受光素子16Bで受光されなかった時点までの時間を、第1検出センサ15の高さから第2検出センサ16の高さまで雲粒子/降水粒子が落下するのに要する時間(以下、移動時間と称す)として検出することができる。この移動時間で、第1検出センサ15から第2検出センサ16までの高さ(距離)を除することにより、雲粒子/降水粒子の落下速度を検出することができる。なお、本実施形態では、第1検出センサ15の高さを第1スリット17A、18Aの高さと同視することができ、第2検出センサ16の高さを第2スリット17B、18Bの高さと同視することができる。
【0022】
ここで、雲粒子/降水粒子の検出を行う際、ラジオゾンデ100はバルーン(図示しない)に引っ張られて上昇している。そのため、上述にて算出された雲粒子/降水粒子の落下速度は、見かけ上の落下速度に過ぎず、雲粒子/降水粒子の実際の落下速度を求める際には、ラジオゾンデ100の上昇速度を考慮する必要がある。そこで、第1収容体10の外壁に、高度検出センサ19(例えばGPSセンサ)を設け、第1スリット17A、18Aを通過する光が第1受光素子15Bで受光されなかった時点における高度と、第2スリット17B、18Bを通過する光が第2受光素子16Bで受光されなかった時点における高度と、を測定することとした。これらの高度の差を算出し、上述の移動時間で除することにより、ラジオゾンデ100の上昇速度を算出することができる。そして、雲粒子/降水粒子の見かけ上の落下速度から、ラジオゾンデ100の上昇速度を減ずることにより、雲粒子/降水粒子の(実際の)落下速度を算出することができる。以降、「雲粒子/降水粒子の見かけ上の落下速度」を「雲粒子/降水粒子の仮落下速度」と称し、雲粒子/降水粒子の(実際の)落下速度と区別する。なお、高度検出センサ19は、第1収容体10の外壁に配置する必要はなく、ラジオゾンデ100の任意の位置に配置してよい。
【0023】
なお、上述の実施形態のように一対のスリット板17、18を設けなくてもよい。この構成であっても、第1検出センサ15と、第2検出センサ16と、高度検出センサ19と、の検出データを用いて、雲粒子/降水粒子の落下速度を算出することができる。ただし、一対のスリット板17、18を設けることにより、外乱光の影響を少なくできるため、より精度よく雲粒子/降水粒子の落下速度を算出することができる。
【0024】
雲粒子/降水粒子の落下速度の算出後は、所定のデッドタイム(不感時間)経過後に、第1検出センサ15における雲粒子/降水粒子の検出を再開することが好ましい。雲粒子/降水粒子は、雲中にある程度偏在していると考えられる。そのため、雲粒子/降水粒子の落下速度の算出直後に雲粒子/降水粒子の検出を再開する場合と比べ、デッドタイム(不感時間)を設けた方が、雲粒子/降水粒子の検出再開時において、第1検出センサ15と第2検出センサ16との間に雲粒子/降水粒子が存在する可能性を低めることができる。これにより、雲粒子/降水粒子の検出再開後、第1検出センサ15で検出される雲粒子/降水粒子と第2検出センサ16で検出される雲粒子/降水粒子とが相違する可能性を低めることができ、より精度よく雲粒子/降水粒子の落下速度を算出することができる。
【0025】
雲粒子/降水粒子の落下速度は、複数回の算出結果を平均することによって求めてもよい。これにより、測定条件における雲粒子/降水粒子の落下速度の算出結果のばらつきを抑制することができる。
【0026】
(撮影ユニットについて)
撮影ユニットは、撮影装置としてのカメラ41と、光源42と、を備える。カメラ41は、上下一対の可動スペーサ43に挟まれる位置に配置され、一対の可動スペーサ43を繋ぐ支持フレーム44によって支持される。カメラ41は、開口部12から入り込んだ雲粒子/降水粒子を撮影できるよう、
図5のA方向に見た場合(
図6)において、一対のスリット板17、18の間に配置される。光源42は、スリット板17の2本の側辺のうちカメラ41に近い側辺から延びる第1フィン17Cに、重力方向に離隔して2つ設けられる。スリット板18にも、光源42が同様の配置で、スリット板18の2本の側辺のうちカメラ41に近い側辺から延びる第1フィン18Cに設けられる。開口部12から入り込んだ雲粒子/降水粒子を、光源42から放たれた撮影光によって照らし、カメラ41によって撮影することで、雲粒子/降水粒子を撮影することができる。光源42としては、例えばLEDライトなどを用いることができる。
【0027】
ここで、従来の雲粒子/降水粒子の撮影方法においては、カメラ41のシャッタが閉状態から開状態となる立ち上がり時点と同一またはそれよりも早いタイミングで、光源42をオフ状態からオン状態へと立ち上げ、カメラ41のシャッタが開状態から閉状態となる立ち下がり時点と同一またはそれよりも遅いタイミングで、光源42をオン状態からオフ状態へと立ち下げていた。これにより、カメラ41のシャッタが開状態となっている時間(以下、開時間とも称す)の全体に亘って、常に光源42が発光して雲粒子/降水粒子が露光していた。しかしながら、この方法では、雲粒子/降水粒子が受ける光量が過多となり、輪郭が不明瞭な雲粒子/降水粒子が撮影されてしまう。
【0028】
そこで、本発明者らは鋭意検討を重ね、カメラ41の開時間のうち、光源42が発光している時間を短くする(すなわち、カメラ41の開時間と光源42の発光時間とを一部で重複させる)ことにより、雲粒子/降水粒子が受ける光量を抑制することができ、輪郭が明瞭な雲粒子/降水粒子を撮影できることに想到した。
【0029】
光源42がオフ状態からオン状態となる時点(立ち上がり時点)、及び/または、光源42がオン状態からオフ状態となる時点(立ち下がり時点)を調整することで、雲粒子/降水粒子の露光時間を短くし、雲粒子/降水粒子が受ける光量を適切に調整することができる。その一例を、
図7に示す。
図7は、本実施形態における、雲粒子/降水粒子を撮影する際のタイミングチャートの例である。
図7を参照して、光源42がオフ状態からオン状態となる立ち上がり時点を、カメラ41のシャッタが閉状態「0」から開状態「1」となる立ち上がり時点t1よりも遅延時間Δtだけ遅いタイミングt2に設定した。光源42がオン状態からオフ状態となる立ち下がり時点を、カメラ41のシャッタが開状態「1」から閉状態「0」となる立ち下がり時点t3より遅いタイミングt4に設定した。この方法によれば、雲粒子/降水粒子の露光時間を遅延時間Δtだけ短くすることができるため、雲粒子/降水粒子が受ける光量を抑制することができ、輪郭が明瞭な雲粒子/降水粒子を撮影することができる。
【0030】
なお、上述のタイミングチャートは一例であり、カメラ41の開時間と光源42の発光時間とを一部で重複させることができれば、光源42の立ち上げ及び立ち下げのタイミングは、
図7に示すものに限られない。例えば、
図8に示すように、光源42がオフ状態からオン状態となる立ち上がり時点を、カメラ41のシャッタが閉状態「0」から開状態「1」となる立ち上がり時点t1よりも早いタイミングt2´に設定し、光源42がオン状態からオフ状態となる立ち下がり時点を、カメラ41のシャッタが開状態「1」から閉状態「0」となる立ち下がり時点t3よりΔt´だけ早いタイミングt4´に設定してもよい。このタイミングであっても、雲粒子/降水粒子の露光時間を時間Δt´だけ短くすることができるため、雲粒子/降水粒子が受ける光量を抑制することができ、輪郭が明瞭な雲粒子/降水粒子を撮影することができる。
【0031】
さらに、
図9に示すように、光源42がオフ状態からオン状態となる立ち上がり時点を、カメラ41のシャッタが閉状態「0」から開状態「1」となる立ち上がり時点t1よりもΔtaだけ遅いタイミングt2´´に設定し、光源42がオン状態からオフ状態となる立ち下がり時点を、カメラ41のシャッタが開状態「1」から閉状態「0」となる立ち下がり時点t3よりΔtbだけ早いタイミングt4´´に設定してもよい。このタイミングであっても、雲粒子/降水粒子の露光時間を時間Δ(ta+tb)だけ短くすることができるため、雲粒子/降水粒子が受ける光量を抑制することができ、輪郭が明瞭な雲粒子/降水粒子を撮影することができる。
【0032】
/降水粒子の露光時間や光源42の発光量は、雲粒子/降水粒子の鮮明な撮影画像が得られるように、適宜設定する。
【0033】
一対のスリット板17、18は、第1フィン17C、18Cのほか、第1フィン17C、18Cが設けられた側辺とは異なる側辺から延びる第2フィン17D、18Dと、上辺から延びる第3フィン17E、18Eと、下辺から延びる第4フィン17F、18Fと、を備える。上記各フィンは、一対のスリット板17、18の対向方向側に傾斜している。この構成によれば、光源42からの撮影光が各フィンに反射して、雲粒子/降水粒子を間接的に照らすことができる。そのため、光源42での消費電力を抑制しつつ、鮮明な輪郭の雲粒子/降水粒子を撮影することができる。
【0034】
平面視で開口部12を挟んで光源42と反対の側に、R形状に形成された一対の反射鏡45が、重力方向の上下角部に設けられる。反射鏡45を設けることにより、光源42から発された光が、反射鏡45に反射して、開口部12から入り込んだ雲粒子/降水粒子を間接的に照らすことができる。そのため、光源42での消費電力を抑制しつつ、鮮明な輪郭の雲粒子/降水粒子を撮影することができる。
【0035】
可動スペーサ43の両端は、一対のホルダ13の長手方向に等間隔に複数形成された固定穴46に固定されている。可動スペーサ43を固定する固定穴46を変更すると、カメラ41を前後に動かすことができるため、雲粒子/降水粒子に焦点が合う位置までカメラ41の位置を調整できる。これにより、雲粒子/降水粒子の画像を、より明瞭にすることができる。
【0036】
(第2収容体の内部構造)
第2収容体20は、検出ユニット、撮影ユニット及び高度検出センサ19で得られたデータの処理・送信を行う制御ユニットを収容する。制御ユニットは、制御部21と、送信器22と、電源23と、を備える。制御部21は、検出ユニット及び撮影ユニットで得られたデータの処理を行う。送信器22は、制御部21で処理されたデータを、第2収容体20の外壁から延びるアンテナ24を介して送信する。電源23は、第2収容体20内の制御部21及び送信器22等に電力を供給する。検出ユニット、撮影ユニット及び高度検出センサ19で得られたデータは、配線穴25を通って第1収容体10内と第2収容体20内を繋ぐ配線によって、制御部21に送られる。
【0037】
(雲粒子/降水粒子の実際の落下速度を算出するフロー)
図10及び
図11に、本実施形態における、雲粒子/降水粒子の落下速度を算出するフローを示す。
図11は、
図10のS1を詳細に説明するフローである。まず、開口部12から入り込んだ雲粒子/降水粒子が第1検出センサ15において検出されると(S11 Yes)、制御部21は、時間の計測を開始するとともに(S12)、高度検出センサ19からの高度データに基づいて、第1検出センサ15で雲粒子/降水粒子が検出された時点における高度H1を測定する(S13)。第1雲粒子検出センサ15を通過した雲粒子/降水粒子が第2検出センサ16で検出されると(S14 Yes)、制御部21は、S12から継続していた、時間の計測を終了するとともに(S15)、高度検出センサ19からの高度データに基づいて、第2検出センサ16で雲粒子/降水粒子が検出された時点における高度H2を測定する(S16)。制御部21で計測された計測時間は、上述の「移動時間」に相当する。
【0038】
予め、第1スリット17A、18Aから第2スリット17B、18Bまでの高さ(すなわち第1検出センサ15から第2検出センサ16までの高さ)を求めておき、制御部21において、この高さをS15の計測時間で除することにより、雲粒子/降水粒子の仮落下速度Sfを算出する(S17)。また、S13で測定された高度H1と、S16で測定された高度H2と、の差をS15の計測時間で除することにより、ラジオゾンデ100の上昇速度Saを算出する(S18)。そして、S17で算出された雲粒子/降水粒子の仮落下速度Sfから、S18で算出されたラジオゾンデ100の上昇速度Saを減ずることにより、雲粒子/降水粒子の落下速度Spを算出する(S19)。
【0039】
図10に戻って、雲粒子/降水粒子の落下速度Spを算出(S1)した後は、所定のデッドタイム(不感時間)を経過した後(S2 Yes)、第1検出センサ15における雲粒子/降水粒子の検出が再開される。
【0040】
(雲粒子/降水粒子の撮影フロー)
図12に、本実施形態における、雲粒子/降水粒子の撮影フローを示す。光源42のオンからオフ及びオフからオンへの切り替わりのタイミングについては、
図7に示すタイミングチャートに従うものとする。開口部12から入り込んだ雲粒子/降水粒子が第1検出センサ15において検出されると(S31 Yes)、制御部21により、カメラ41のシャッタが閉状態から開状態へと切り替えられる(S32)。シャッタが開状態となってから所定時間Δtが経過すると(S33 Yes)、制御部21によって光源42がオフ状態からオン状態へと切り替わり(S34)、光源42から雲粒子/降水粒子への撮影光の照射が開始される。ここでいう「所定時間Δt」とは、上述の「遅延時間」に相当する。その後、制御部21によって、カメラ41のシャッタが開状態から閉状態へと切り替えられ(S35)、さらにその後、光源42がオン状態からオフ状態へと切り替えられて(S36)、撮影光の照射が終了する。
【符号の説明】
【0041】
第1検出センサ 15 第2検出センサ 16 第1発光素子 15A 第1受光素子 15B 第2発光素子 16A 第2受光素子 16B 一対のスリット板 17、18 第1スリット 17A、18A 第2スリット 17B、18B 高度検出センサ 19 制御部 21 カメラ 41 光源 42 ラジオゾンデ 100